説明

感熱記録層用塗液の製造方法

【課題】 染料、顕色剤及び増感剤の分散液を塗布してなる感熱記録層を有する感熱記録体の製造において、湿式粉砕を行ったミルから分散液を効率よく取出して、これら分散液の製造を効率よく行うことができる方法を提供する。
【解決手段】 染料、顕色剤及び増感剤の各分散液を平均径が0.3mm以下のメディアを用いて湿式粉砕した後にメディアとを遠心分離するセパレータを用いて分散液を取出す。これにより感熱記録層用塗液を効率的に製造することができ、その結果品質の高い感熱記録体を効率的に製造することが可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録品質(画質、感度)が高い感熱記録体を製造するために、感熱記録層を形成するための染料の分散液、顕色剤の分散液及び増感剤の分散液を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録体は一般に無色ないし淡色の染料とフェノール性化合物等の顕色剤とを混合し、バインダー、充填剤、感度向上剤、滑剤及びその他の助剤を添加して得られた塗液を、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工したものである。
従来から、微細な粒子に粉砕した染料、顕色剤あるいは増感剤を用いて各材料の反応性を向上させ、感熱記録体を高画質化、高感度化することが行われている。このような各材料の粉砕及び分散には各種のミルが用いられているが、より効率的に微粒子化するために径が0.3mm以下の分散メディアが用いられている(特許文献1、2等)。
しかし、これから分散液を取出すためにはメディアと分散液とを分離する工程が必要となるが、このようにメディアが微細になるに従ってその分離は困難になる。その分離のために、例えば、スクリーンタイプのセパレータ(特許文献1)やスリットタイプ(又は、ギャップタイプともいう。)のセパレータ(特許文献2)等が用いられている。
一方、分散液の製法として、遠心力によりメディアと分散液とを分離する方法を取り入れた粉砕機が開発されており、粉砕機にメディアを局在させることにより大量の分散液を処理することを可能にしている(特許文献3〜5)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−168965
【特許文献2】特開平3−73382(特許第2543596号)
【特許文献3】特開平4−61635
【特許文献4】特許第3703148号
【特許文献5】特開2003−144950
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スクリーンタイプやスリットタイプのセパレータ(分離機構)を使用した場合には、磨耗により小粒径化したメディアやその粉砕物がスクリーンの網目部分等に詰まり、分散液の製造工程にセパレータの洗浄や機能回復に多大な工数と時間が費やされるなどの問題がある。また、感熱記録体の感熱記録層に用いる材料の分散液の作成に粒子径の小さなメディアを用いることが良いことがわかってきたが、メディア径が小さいとメディアが感熱記録層に混入し、白抜けの問題(印字できない箇所が白く残る不具合)が発生し、その対策が求められてきた。
本発明は、染料、顕色剤及び増感剤の分散液を塗布してなる感熱記録層を有する感熱記録体の製造において、湿式粉砕を行ったミルから、分散液を効率よく取出して、これら分散液の製造を効率よく行い、かつ白抜けの問題の無い感熱記録層用の塗液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、遠心力の作用によりメディアと分散液に分離するセパレータを用いることにより、ビーズミルからメディアを含まない分散液を効果的に取出すことができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、感熱記録層を有する感熱記録材料を製造するための、染料の分散液、顕色剤の分散液及び増感剤の分散液を混合して成る感熱記録層用塗液の製造方法であって、染料の分散液、顕色剤の分散液又は増感剤の分散液の少なくとも一つが、粉砕メディアと共にビーズミルで湿式粉砕され、遠心力の作用によりメディアと分散液に分離してビーズミルから排出されたことを特徴とする感熱記録材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、染料、顕色剤、増感剤の少なくとも一つを湿式粉砕により粒度分布がシャープになるように微粒化し、湿式粉砕に用いた微細なメディアやその粉砕物が詰まる恐れのあるスクリーンやギャップタイプのセパレータを用いることなく分散液を取出すことが可能になり、高画質かつ記録感度に優れた感熱記録体を安定的かつ効率的に製造することを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用される分散液とメディアとを遠心分離するセパレータの断面図の一例を図1に示す。セパレータとしては、微粒化された分散液とメディアが遠心分離ローター内で、回転している遠心分離ローターの遠心力によって、分散液とメディアの比重差から、メディアはストークスの沈降速度Vtでローター外周方向へ放出される。ローターは複数枚の羽根を有し、ローターの回転によりローターの外向きに分散液の流れを形成させるものが好ましい。
一方、分散液はローター外周から軸中心に向かって速度vで流入する。原理的にVtがvより大きくなれば分離可能となる。
このセパレータはスケールアップも容易であり、分散液の流れを遮るスクリーンやギャップを使用しないことから詰まりの問題が発生せず、安定した粉砕/分散、高流量/多回数の処理、マイルドな粉砕/分散処理することができるため、シャープかつ微粒子な染料、顕色剤及び増感剤分散液を得ることができる。
【0008】
また、本発明のようなセパレータを用いる場合、分散液の粉砕処理後の粘度が重要である。これは、粉砕処理を受けた分散液の粘度が著しく高い場合、メディアは運動し難くなり粉砕/分散効率が低下するのに加えて遠心分離ローターで生み出す遠心力がメディアに伝わり難くなり、メディアが分散液に混入したまま排出されてしまうからである。
分散液の粉砕処理後の粘度として、B型粘度計を用いて、液温30℃、回転数60rpm、ローターNo.2の条件で測定した粘度が500mPa・s以下とすることにより、このような問題を回避できる。
一方、分散液の流量を高く設定した場合に起こりやすい傾向にあるため、メディアを分離できる範囲の流量を適宜調整する方法もあるが、生産効率が低下するため、上記粘度管理の方法を用いることが好ましい。
【0009】
なお、分散液の粉砕処理後の粘度は、分散液に含有するバインダーを適宜選択すること調整することができ、一般的に、分散液中に含有するバインダーと使用されているポリビニルアルコールの場合、好ましい重合度は300〜2000、より好ましくは500〜1200である。
本発明において、ローターの周速(最外周部の速度)は5〜30m/s、より好ましくは5〜20m/sの範囲である。ローターの周速が5m/s未満の場合、染料や顕色剤、増感剤の粉砕に時間がかかり非効率である。また、30m/s以上の場合、分散液に過度なシェアがかかってしまうため凝集を引き起こすことが懸念される。
本発明において、使用するメディアの粒子径は、得ようとする所望の粒子径(染料、顕色剤、増感剤)によって適宜選択すれば良いが、シャープな粒度分布かつ微粒化を進めるためには0.03〜0.3mm、特に0.03〜0.2mmの範囲が好ましい。メディアの材質とは通常ガラス、ジルコニア、アルミナなどから選択される。
【0010】
上記のようなセパレータは、ビーズミルと分散液の排出口との間に設けられていればよく、ビーズミルが内蔵してもよいし、ビーズミルの外部に設けてもよい。
ビーズミルとしては、ボールミル、アトライター、サンドミル、サンドグラインダー、グレーンミル、パールミル、マターミル、アニラーミル、コボールミル、タワーミル、ダイナミックミル、OBミル、アペックスミル、スーパーアペックスミル、ウルトラアペックスミル、MSCミル、SCミル及び三本ロールミル等を用いることができる。
分散対象物をこれらのビーズミルを用いて湿式粉砕処理する。
【0011】
本発明において、粉砕/分散室内におけるメディア粒子の見かけの充填率は、好ましくは50〜95容積%、より好ましくは60〜90容積%である。メディア粒子の充填率を上記範囲にすることにより、染料や顕色剤、増感剤の粉砕/分散効率もよく、またショートパスも防止することができる。
本発明において、染料、顕色剤あるいは増感剤を粉砕する際の処理温度は50℃以下にすることが望ましい。50℃以上で、染料、顕色剤あるいは増感剤を処理した場合、染料、顕色剤あるいは増感剤は、熱により再凝集や変性などを引き起こすため、発色感度が低下する。この凝集による発色感度の低下は、90%の粒子の大きさで評価することができ、目標とする平均粒径に対して、2倍以下が好ましい。また、染料、顕色剤、増感剤の分散液を50℃以上で混合した場合、混合した塗料が着色するため、それぞれ50℃以下に冷却してから使用する必要があり、生産効率が低下する。
分散液を冷却する方法に特に制限は無いが、粉砕室のジャケット部に冷却媒体を循環させて冷却する方法が簡便である。温度制御の方法についても特に制限は無いが、冷却媒体を循環させる場合には、その流量や温度を制御すればよく、その方法は分散液の温度をセンサーを用いて計測しその値により自動制御してもよいし、簡単には、冷却媒体や流量や温度を変更しながら分散処理時に最も高くなる分散液排出口において分散液の温度を測定して所望の分散液温度をもたらす条件を決めてもよい。
冷却媒体としては、水、エチレングリコールなどの通常の冷却媒体を使用することができる。
【0012】
ビーズミルによる粉砕/分散操作の前に、前処理として従来の粉砕/分散操作、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル、サンドグラインダー、グレーンミル、パールミル、マターミル、アニラーミル、コボールミル、タワーミル、ダイナミックミル、OBミル、アペックスミル、SCミル及び三本ロールミルなど、種々の変形型や呼称があり、これらの中でもさらに多くの変形種類があるが、これらによる分散操作を施してもよい。また、本発明のビーズミルによる分散操作は、このビーズミルを直列につなげて連続分散方式とすることや循環させて複数回パスさせる分散方式としてもよい。また、従来の粉砕/分散処理の後に本発明のビーズミルでオンライン/オフライン処理することも可能である。
【0013】
分散液とメディアとを遠心分離するセパレータを備えたビーズミルの具体例としては、寿工業(株)製のスーパーアペックスミル(SAM−05型、SAM−1型、SAM−2型、SAM−5型、SAM−10型、SAM−30型)、ウルトラアペックスミル(UAM−015型、UAM−05型、UAM−1型、UAM−2型、UAM−5型、UAM−10型)、三井鉱山(株)製MSCミル(MSC100)などが挙げられる。特に三井鉱山(株)製MSCミルは、粉砕室長さ/粉砕室径(L/D)が1/3と従来の粉砕機(L/D=1以上)と比較して非常に小さく、メディアの偏りや排出側への過度な力を発生しない構造となっているため、再凝集が生じ難くマイクロメディア本来の性能を引き出して均一な粉砕/分散を行うことができる。
【0014】
染料、顕色剤及び増感剤の分散を行う際に使用する分散媒としては一般には水溶性高分子化合物の水溶液を使用する。例えば、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼインなどの水溶性高分子の他、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのエマルジョンやスチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体などのラテックスなども挙げられる。
【0015】
これらの分散剤(固形分)は、分散対象物(染料、顕色剤、増感剤)1重量部に対して、0.01〜1.0部の量で用いると微粒子化と分散性の向上及び分散液の安定性に有利であるため好ましい。少なすぎる場合、凝集を引き起こし、分散液の安定性に劣る。また、多すぎる場合は、減感作用による感度低下など品質に悪影響を及ぼすため好ましくない。
分散液中の分散対象物(染料、顕色剤、増感剤)の濃度は、通常20〜70重量%程度である。
【実施例】
【0016】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお説明中、「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
実施例1
顕色剤分散液(4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン 6.0部、ポリビニルアルコール(重合度:500) 10%水溶液 18.8部、水 11.2部)、ロイコ染料分散液(3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(ODB−2) 3.0部、ポリビニルアルコール(重合度:500) 10%水溶液 6.9部、水3.9部)及び増感剤分散液(シュウ酸ジベンジル 6.0部、ポリビニルアルコール(重合度:500) 10%水溶液 18.8部、水 11.2部)は、分散液温度を30〜40℃にして平均粒径が0.7μmになるようにアトライター及びサンドグラインダー(1mm径のガラスビーズ)で前処理(粗粉砕)を行った。
次にこれら顕色剤分散液、ロイコ染料分散液、及び増感剤分散液を、それぞれ別々にビーズミル(寿工業(株)社製ウルトラアペックスミルUAM−015型、分散液とメディアとを遠心分離するセパレータ内蔵型)を用いて、0.05mm径のジルコニアビーズを充填率80%(粉砕室容積0.17L)、ローター周速12m/秒、流量11L/Hr(流量/粉砕室容積=64.7:この値が大きいほど粉砕機規模に対する流量が大きい)、分散液排出口の分散液温度が約40℃になる条件で、滞留時間(単位体積当りの分散液が粉砕室内で磨砕処理された時間)が5分になるまで湿式粉砕を行った。
このビーズミルは、縦型で下部はローターとジャケット付きのステーターから成り、原液を下部のミルに供給し、上部は下部で生成する分散液/メディア混合物を遠心力を利用して分散液のみを分離して上部の排出口から排出する構造を有する。
粉砕の終わった分散液をこの排出口のみから回収した。
【0017】
各分散液の物性を下記に示す。なお、各粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置、分散液粘度はB型粘度計(TOKIMEC INC.製VISCOMETER、液温30℃、回転数60rpm、ローターNo.2)を用いて測定した。
また、各分散液を297メッシュの篩(目開き:0.048mm)を通して、篩上の残渣の有無を評価することにより、分散液中に混入したメディアの有無を評価した。
【0018】
A−1液(顕色剤分散液)
平均粒径:0.41μm(分散粒子の90%が粒径0.58μm以下)
分散液粘度:210mPa・s
B−1液(ロイコ染料分散液)
平均粒径:0.30μm(分散粒子の90%が粒径0.45μm以下)
分散液粘度:180mPa・s
C−1液(増感剤分散液)
平均粒径:0.34μm(分散粒子の90%が粒径0.53μm以下)
分散液粘度:145mPa・s
粉砕処理後、各分散液をスクリーン処理(297メッシュ)した結果、A−1液、B−1液、C−1液全てにビーズ混入は認められなかった。
【0019】
次いで、カオリン(50%分散液) 30.0部、顕色剤分散液 36.0部、ロイコ染料分散液 13.8部、増感剤分散液 36.0部、ポリビニルアルコール 10%水溶液 25部、ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製商品名:ハイドリンZ−7−30、固形分30%)3.0部の割合で分散液を混合して感熱記録層用塗液とした。
【0020】
一方、焼成カオリン(エンゲルハード社製商品名:アンシレックス90)100部、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(固形分48%) 40部、ポリビニルアルコール 10%水溶液 30部、水 160部からなる配合物を攪拌分散して、下塗層塗液を調製し、この下塗層塗液を支持体(60g/mの基紙)の片面に塗布した後、乾燥を行ない、塗布量10.0g/mの下塗層塗工紙を得た。
次いで、この下塗層塗工紙の下塗層上に上記感熱記録層塗液を塗布量6.0g/mとなるように塗布した後、乾燥を行ない、このシートをスーパーカレンダーで平滑度が500〜700秒になるように処理して感熱記録体を得た。得られた感熱記録体に、大倉電機社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.27及び0.42mJ/dotで印字した。記録部の画像濃度はそれぞれ0.97及び1.49mJ/dotであり、白抜けや印字ムラもなく、均一に発色していた。
【0021】
実施例2
顕色剤分散液(A液)、ロイコ染料分散液(B液)を横型サンドミル((株)シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルTYPE KDL)を用いて、0.5mm径のジルコニアビーズを充填率80%(粉砕室容積1.40L)、ローター周速12m/秒、流量18L/Hr(流量/粉砕室容積=12.9:この値が大きいほど粉砕機規模に対する流量が大きい)、0.2mmギャップセパレーター使用の条件で、滞留時間が5分になるまで湿式粉砕を行った。なお各分散液は実施例1と同様にして前処理(粗粉砕)を行った。
その結果、下記に示す物性の分散液を得た。
A−2液(顕色剤分散液)
平均粒径:0.51μm(分散粒子の90%が粒径1.22μm以下)
分散液粘度:630mPa・s
B−2液(ロイコ染料分散液)
平均粒径:0.41μm(分散粒子の90%が粒径0.95μm以下)
分散液粘度:580mPa・s
粉砕処理後、各分散液をスクリーン処理(297メッシュ)した結果、A−2液、B−2液にビーズ混入は認められなかった。
A−1液とB−1液をA−2液とB−2液に代えて実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0022】
実施例3
増感剤分散液(C液)を実施例1と同様にして前処理(粗粉砕)した後、横型サンドミル((株)シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミルTYPE KDL)を用いて、0.5mm径のジルコニアビーズを充填率80%(粉砕室容積1.40L)、ローター周速12m/秒、流量18L/Hr(流量/粉砕室容積=12.9:この値が大きいほど粉砕機規模に対する流量が大きい)、0.2mmギャップセパレーター使用の条件で、滞留時間(単位体積当りの分散液が粉砕室内で粉砕処理された時間)が5分になるまで湿式粉砕を行った。
その結果、下記に示す物性の分散液を得た。
C−2液(増感剤分散液)
平均粒径:0.45μm(分散粒子の90%が粒径1.07μm以下)
分散液粘度:400mPa・s
粉砕処理後、スクリーン処理(297メッシュ)した結果、C−2液にビーズ混入は認められなかった。
B−1液とC−1液をB−2液とC−2液に代えて実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0023】
実施例4
A−1液とC−1液をA−2液とC−2液に代えて実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0024】
実施例5
実施例1の0.05mm径のジルコニアビーズを0.3mm径のジルコニアビーズに変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。なお、得られた顕色剤分散液(A−3)、ロイコ染料分散液(B−3)、増感剤分散液(C−3)の分散液の物性は以下の通りであった。
その結果、下記に示す物性の分散液を得た。
A−3液(顕色剤分散液)
平均粒径:0.45μm(分散粒子の90%が粒径0.85μm以下)
分散液粘度:300mPa・s
B−3液(ロイコ染料分散液)
平均粒径:0.35μm(分散粒子の90%が粒径0.73μm以下)
分散液粘度:270mPa・s
C−3液(増感剤分散液)
平均粒径:0.39μm(分散粒子の90%が粒径0.78μm以下)
分散液粘度:230mPa・s
粉砕処理後、各分散液をスクリーン処理(297メッシュ)した結果、A−3液、B−3液、C−3液全てにビーズ混入は認められなかった。
【0025】
実施例6
実施例1の分散剤であるポリビニルアルコールの重合度を500から1700に変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。なお、得られた顕色剤分散液(A−6)、ロイコ染料分散液(B−6)、増感剤分散液(C−6)の分散液の物性は以下の通りであった。
A−6液(顕色剤分散液)
平均粒径:0.41μm(分散粒子の90%が粒径0.62μm以下)
分散液粘度:780mPa・s
B−6液(ロイコ染料分散液)
平均粒径:0.32μm(分散粒子の90%が粒径0.50μm以下)
分散液粘度:850mPa・s
C−6液(増感剤分散液)
平均粒径:0.35μm(分散粒子の90%が粒径0.57μm以下)
分散液粘度:700mPa・s
粉砕処理後、各分散液をスクリーン処理(297メッシュ)した結果、A−6液、B−6液、C−6液全てに若干のビーズ混入が認められた。
【0026】
比較例1
A−1液、B−1液及びC−1液をそれぞれA−2液、B−2液及びC−2液に代えて実施例1と同様に感熱記録体を作製した。
【0027】
比較例2
比較例1の0.5mm径のジルコニアビーズを0.4mm径のジルコニアビーズに変更したが、粉砕機の内圧が規格上限を超えたため流量を12.6L/Hr(流量/粉砕室容積=9.0:この値が大きいほど粉砕機規模に対する流量が大きい)とした。他の条件については、比較例1と同様にして感熱記録体を得た。なお、得られた顕色剤分散液(A−4)、ロイコ染料分散液(B−4)、増感剤分散液(C−4)の分散液の物性は以下の通りであった。
その結果、下記に示す物性の分散液を得た。
A−4液(顕色剤分散液)
平均粒径:0.49μm(分散粒子の90%が粒径1.08μm以下)
分散液粘度:600mPa・s
B−4液(ロイコ染料分散液)
平均粒径:0.40μm(分散粒子の90%が粒径0.88μm以下)
分散液粘度:560mPa・s
C−4液(増感剤分散液)
平均粒径:0.42μm(分散粒子の90%が粒径0.95μm以下)
分散液粘度:350mPa・s
粉砕処理後、各分散液をスクリーン処理(297メッシュ)した結果、A−4液、B−4液、C−4液全てにビーズ混入は認められなかった。
【0028】
比較例3
比較例1の0.5mm径のジルコニアビーズを0.3mm径のジルコニアビーズに変更したが、粉砕機の内圧が規格上限を超えたため流量を7.2L/Hr(流量/粉砕室容積=5.1:この値が大きいほど粉砕機規模に対する流量が大きい)とした。ただし、滞留時間(単位体積当りの分散液が粉砕室内で粉砕処理された時間)が3分の時点でビーズの目詰まりが発生したため処理を終了した。他の条件については、比較例1と同様にして感熱記録体を得た。なお、得られた顕色剤分散液(A−5)、ロイコ染料分散液(B−5)、増感剤分散液(C−5)の分散液の物性は以下の通りであった。
その結果、下記に示す物性の分散液を得た。
A−5液(顕色剤分散液)
平均粒径:0.48μm(分散粒子の90%が粒径1.02μm以下)
分散液粘度:580mPa・s
B−5液(ロイコ染料分散液)
平均粒径:0.37μm(分散粒子の90%が粒径0.85μm以下)
分散液粘度:550mPa・s
C−5液(増感剤分散液)
平均粒径:0.40μm(分散粒子の90%が粒径0.88μm以下)
分散液粘度:350mPa・s
粉砕処理後、各分散液をスクリーン処理(297メッシュ)した結果、A−5液、B−5液、C−5液全てにビーズ混入は認められなかった。
【0029】
上記の実施例と比較例で得られた感熱記録体について以下のような評価を行った。
<記録感度評価>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.27mJ/dot及び0.42mJ/dotで印字した。記録部の画像濃度及び地肌濃度は、マクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定し評価した。
<画質評価:白抜け・印字ムラ>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.27mJ/dotで印字した。記録部を下記の基準にて目視評価を行った。
(1)印字ムラ
◎:印字ムラが全くなく、均一に発色している
○:僅かに印字ムラがあるが、均一に発色している
△:印字ムラがあるが、ほぼ均一に発色している
×:印字ムラが顕著である
(2)白抜け
○:白抜けがなく、均一に発色している
△:白抜けがあるが、ほぼ均一に発色している
×:白抜けが顕著である
【0030】
感熱記録体の評価結果を表1に示す。
この表から明らかなように、感熱記録層を小さなメディア径を持つメディアを用いて得た分散液を用いて作成した感熱記録体は、記録感度がよく印字ムラがない、一方、分散液の粘度が高い場合には、メディアの混入によると思われる白抜けが発生し、品質が劣る。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のセパレータ(遠心分離)の一例を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱記録層を有する感熱記録材料を製造するための、染料の分散液、顕色剤の分散液及び増感剤の分散液を混合して成る感熱記録層用塗液の製造方法であって、染料の分散液、顕色剤の分散液又は増感剤の分散液の少なくとも一つが、粉砕メディアと共にビーズミルで湿式粉砕され、遠心力の作用によりメディアと分散液に分離してビーズミルから排出されたことを特徴とする感熱記録材料の製造方法。
【請求項2】
メディアの平均粒径が0.03〜0.20mmである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記各分散液の粉砕後の粘度が、B型粘度計(液温30℃、回転数60rpm、ローターNO.2)で測定して500mPa・s以下である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビーズミルが分散液を遠心力の作用によりメディアと分散液に分離するためのセパレータを内蔵する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
分散液を遠心力の作用によりメディアと分散液に分離するためのセパレータが、前記ビーズミルの外部に設けられた請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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