説明

感熱記録材料の評価方法およびサーマルプリンタ

【課題】 簡易且つ高い精度で感熱記録材料のヘッドに対する汚れを評価する。
【解決手段】感熱記録材料10を搬送するプラテンロール20と、感熱記録材料を押圧して前記感熱記録材料に熱を供与するヘッド30と、前記感熱記録材料を前記サーマルプリンタによって印字して前記ヘッドに対する感熱記録材料の汚れを評価する感熱記録材料の評価方法であって、前記サーマルプリンタは、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点Bと前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点Aとの前記感熱記録材料の搬送方向における間隔が100μm〜750μmであり、且つ、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点が、前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターのヘッドに対する感熱記録材料の汚れ性を評価する感熱記録材料の評価方法およびこれに用いられるサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料を用いた画像形成方法によれば、例えば、まず露光等により感熱記録材料に潜像を形成し、更にサーマルヘッドから感熱記録材料に熱を供与することで、画像が形成される。このような画像形成方法においては、感熱記録材料に熱を供与するためにサーマルヘッド表面と感熱記録材料表面とを接触させる必要がある。
【0003】
このため、大量の感熱記録材料の記録をおこなっていくと、感熱記録材料上の埃等の汚れや、熱の供与によって感熱記録材料から析出した成分やがサーマルヘッドに付着してしまう。サーマルヘッドに付着した汚れは、新たに搬送されてきた感熱記録材料に画像を形成する際に、感熱記録材料表面に付着してしまい、いわゆる、感熱記録材料の「ヘッド汚れ」となる。
【0004】
ヘッド汚れは、特に感熱記録材料自体から析出した成分によるところが多く、ヘッド汚れに対する耐性が感熱記録材料に求められている。このような感熱記録材料のヘッド汚れに対する耐性を評価するためには、従来から種々の方法が用いられている。
【0005】
前記感熱記録材料のヘッド汚れに対する耐性を評価するためには、まず通常時よりも感熱記録材料にヘッド汚れがつきやすい環境で画像を記録し、ヘッド汚れを促進させ、その後ヘッド汚れの程度を評価する。
従来から用いられている評価方法としては、大量のサンプルを印画して、ヘッド汚れの程度を評価する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、このような方法の場合には大量のサンプル(例えば距離に換算すると500m以上)を印画するための時間とコストがかかるといった問題がある。
【0006】
また、印画エネルギーを高くしてサンプルを印画し、ヘッド汚れを促進させる方法も用いられている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、印画エネルギーを高くすると、サンプルに与える熱量が高くなることから、サンプルの物性を変えてしまう恐れがある。
【0007】
更に、サンプルを高温高湿状態で保持(サーモ処理)し、その後印画することでヘッド汚れを促進させる方法も用いられている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、サーモ処理を施す場合にもサンプルの物性が変化する場合がある。
【0008】
一方、サーマルヘッドを有するサーマルプリンタとしては、プリンタの小型化に伴う印字品質への悪影響を抑えることを目的として、サーマルヘッドの発熱体がプラテンロールの中心に対して感熱紙の搬送方向の反対方向にずれた位置に形成されたサーマルプリンタが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0009】
【特許文献1】特開2004−82573号公報
【特許文献2】特開2002−86911号公報
【特許文献3】特開平11−293269号公報
【特許文献4】特開平5−169688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、感熱記録材料のヘッド汚れを評価する場合には、ある程度ヘッド汚れを促進させる必要があるが、現状においては大幅な時間やコストが必要であったり、感熱記録材料自体の物性自体にも影響を与える場合が多く、簡易に感熱記録材料のヘッド汚れを評価できる方法が求められていた。
【0011】
上述の問題を解決すべく、本発明は簡易且つ高い正確性で感熱記録材料のヘッドに対する汚れを評価することのできる感熱記録材料の評価方法およびこれに用いられるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
<1> 感熱記録材料を搬送するプラテンロールと、前記プラテンロール上に配置された前記感熱記録材料を押圧して前記感熱記録材料に熱を供与するヘッドと、を備えるサーマルプリンタを用い、前記感熱記録材料を前記サーマルプリンタによって印字して前記ヘッドに対する感熱記録材料の汚れを評価する感熱記録材料の評価方法であって、前記サーマルプリンタは、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔が100μm〜750μmであり、且つ、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点が、前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とする感熱記録材料の評価方法である。
【0013】
前記<1>の感熱記録材料の評価方法によれば、前記ヘッドの押圧部を、前記プラテンロールの押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向における下流側にずらすことで、印画時における前記ヘッドから前記感熱記録材料に加えられる圧力を減らすことができる。従って、これと同時に前記感熱記録材料から受けるヘッドへの圧力も減ることになる。通常、ヘッドから感熱記録材料に圧力が加えられていると、その圧力に応じて感熱記録材料による自浄作用が生じ、ヘッドに汚れが付着しにくくなる。これに対し、本発明のようにヘッドへの圧力を低減させると、感熱記録材料による自浄作用が弱まり、ヘッドに汚れが付着しやすくなるため、結果として感熱記録材料に対するヘッド汚れを促進させることができる。
【0014】
<2> 前記サーマルプリンタは、前記ヘッドの位置と前記プラテンロールの位置とが調整可能なことを特徴とする前記<1>の感熱記録材料の評価方法である。
【0015】
前記<2>の感熱記録材料の評価方法よれば、前記ヘッドとプラテンロールの位置が調整可能であるため、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔を調整することができる。
【0016】
<3> 前記サーマルプリンタは、前記ヘッドを移動させることにより、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との間隔を調整可能なことを特徴とする前記<1>または<2>の感熱記録材料の評価方法である。
【0017】
前記<3>の感熱記録材料の評価方法によれば、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との間隔の調整を、前記ヘッドを移動させることによっておこなうことができるため、簡易な構成において前記間隔を調整することができる。
【0018】
<4> 複数の前記感熱記録材料を用いることを特徴とする前記<1>〜<3>の感熱記録材料の評価方法である。
【0019】
前記<4>の感熱記録材料の評価方法によれば、複数の前記感熱記録材料を用いて感熱記録材料の評価を行うことができる。
【0020】
<5> 30〜50mの長さの前記感熱記録材料を用いることを特徴とする前記<1>〜<4>の感熱記録材料の評価方法である。
【0021】
前記<5>の感熱記録材料の評価方法によれば、30〜50mという長さが短い少量の感熱記録材料であっても、十分に感熱記録材料のヘッド汚れを評価することができる。
【0022】
<6> 感熱記録材料を搬送するプラテンロールと、前記プラテンロール上に配置された前記感熱記録材料を押圧して前記感熱記録材料に熱を供与するヘッドと、を備えたサーマルプリンタであって、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔が100μm〜750μmであり、且つ、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点が、前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とするサーマルプリンタである。
【0023】
前記<6>に記載のサーマルプリンタによれば、感熱記録材料に対する前記ヘッドの圧力を低減させて、感熱記録材料を印画することができることから、本発明の感熱記録材料の評価方法を好適に実施することが出来る。
【0024】
<7> 前記ヘッドと前記プラテンロールとを所望の位置に調整する調整手段を有することを特徴とする前記<6>のサーマルプリンタである。
【0025】
前記<7>に記載のサーマルプリンタによれば、前記ヘッドとプラテンロールの位置が調整可能であるため、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔を調整することができる。
【0026】
<8> 前記調整手段は、前記ヘッドを移動させるヘッド移動手段を有し、前記ヘッド移動手段によって前記ヘッドを移動させることにより、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との間隔を調整可能なことを特徴とする前記<7>のサーマルプリンタである。
【0027】
前記<8>のサーマルプリンタによれば、ヘッド移動手段を設けることで、ヘッドをサーマルプリンタに設置したまま、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔を調整することができる。
【0028】
<9> 更に、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との位置関係を表示する表示手段を有することを特徴とする前記<6>〜<8>のサーマルプリンタである。
【0029】
前記<9>のサーマルプリンタによれば、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との位置関係を表示手段によって表示することで、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点とのずれ幅を容易に知ることができる。
【0030】
<10> 前記ヘッドに対する感熱記録材料の汚れの評価に用いられることを特徴とする前記<6>〜<9>のサーマルプリンタである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、本発明は簡易且つ高い精度で感熱記録材料のヘッドに対する汚れを評価することのできる感熱記録材料の評価方法およびこれに用いられるサーマルプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
《感熱記録材料の評価方法》
本発明の感熱記録材料の評価方法(以下、「本発明の評価方法」という場合がある。)は、 感熱記録材料を搬送するプラテンロールと、前記プラテンロール上に配置された前記感熱記録材料を押圧して前記感熱記録材料に熱を供与するヘッドと、を備えるサーマルプリンタを用い、前記感熱記録材料を前記サーマルプリンタによって印字して前記ヘッドに対する感熱記録材料の汚れを評価する感熱記録材料の評価方法であって、
前記サーマルプリンタは、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔が100μm〜750μmであり、且つ、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点が、前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の評価方法によれば、感熱記録材料におけるヘッド汚れの評価を簡易且つ短時間並びに低コストで行うことができる。また、本発明の評価方法によれば感熱記録材料の物性を変化させることなく評価を行うことができることから、精度の高い評価を行うことができる。
以下、本発明の評価方法について説明する。
【0034】
まず、本発明の評価方法の基準となる「プラテンロールの感熱記録材料に対する押圧点」および「ヘッドの感熱記録材料に対する押圧点」とについて説明する。
通常、感熱記録材料に画像を形成するサーマルプリンタは、プラテンロールとサーマルヘッドの間に介在する感熱記録材料を、サーマルヘッドによってプラテンロールの表面に向けて押圧しながら熱を供与する。従来のサーマルプリンタにおける、プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点(以下、単に「プラテンロールの押圧点」いう場合がある。)と、サーマルヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点(以下、単に「ヘッドの押圧点」という場合がある。)との関係について図1を用いて説明する。図1は、従来のサーマルプリンタの感熱記録材料の搬送方向に対するプラテンロールの押圧点とヘッドの押圧点との位置関係を説明するための断面図である。
【0035】
従来から用いられているサーマルプリンタおいては、図1に示すように、プラテンロール20の回転に従って感熱記録材料10が搬送されており、サーマルヘッドユニット30に備えられたサーマルヘッド30Aがプラテンロール20上の感熱記録材料10を押圧することで、サーマルヘッド30Aから感熱記録材料10へと熱を供与することができる。また、サーマルヘッドユニット30は、サーマルヘッド30Aと、サーマルヘッド30Aに熱を供与するための指示部材30Bとから構成されている。
【0036】
ここで、「プラテンロールの押圧点」とは、図1に示すようにプラテンロール20の表面と感熱記録材料10とが接触する領域中の任意の点である。従来のサーマルプリンタにおいては、プラテンロール20の中心(図1における点X)と、サーマルヘッド30Aの感熱記録材料10との接触点(図1における点B)とを結んだ直線を中心軸Cとした際に、この中心軸Cと、点B上における感熱記録材料10の搬送方向(図1における矢印Y)とが垂直に交わる位置にサーマルヘッド30Aが位置している場合、前記プラテンロール20の押圧点(図1における点A)は前記中心軸C上に位置することになる。
また、「ヘッドの押圧点」とは、図2に示すように感熱記録材料10を押圧する役割を担うサーマルヘッド30Aの表面に位置する点であって、サーマルヘッド30Aと感熱記録材料10との接触領域Vの中心点を意味する。図1においては、点Bがヘッドの押圧点となる。
尚、図1に示すように側面方向から観察した場合、プラテンロール20と感熱記録材料10とが一箇所で接している場合には、その接点をプラテンロール20の押圧点とみなす。
【0037】
また、プラテンロール20と感熱記録材料10との接触面積やサーマルヘッド30Aと感熱記録材料10との接触面積が大きい場合であっても、従来のサーマルプリンタでは、プラテンロール20の中心点Xと、サーマルヘッド30Aの感熱記録材料10との接触点Bとを結んだ中心軸Cに対して、点B上における感熱記録材料10の搬送方向(図1における矢印Y)が垂直に交わる位置にサーマルヘッド30Aが位置している場合には、前記プラテンロールの押圧点(図1における点A)少なくとも1点が中心軸C上に位置することになる。
【0038】
次に、本発明の評価方法における、プラテンロールの押圧点と、ヘッドの押圧点との関係について図3を用いて説明する。図3は、本発明のサーマルプリンタの感熱記録材料の搬送方向に対するプラテンロールの押圧点とヘッドの押圧点との位置関係を説明するための断面図である。
【0039】
まず、本発明の評価方法において「ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔が100μm〜750μmであり、且つ、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点が、前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に配置されている」とは、以下の状態を意味する。
即ち、本発明のサーマルプリンタのプラテンロールの押圧点Aとヘッドの押圧点Dとの位置関係を側面から観察した場合に、上述の従来のサーマルプリンタと同様に、プラテンロール20の中心点Xとプラテンロールの押圧点Aとヘッドの押圧点Dとが同一直線(中心軸C)上にあり、且つ、ヘッドの押圧点D上における感熱記録材料10の搬送方向と中心軸Cとが垂直に交わる状態(点F上にヘッドの押圧点Dがあると仮定した状態)から、ヘッドの押圧点Dを前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に、プラテンロール20の押圧点A上でプラテンロール20の周に接する接線Qに沿って平行移動させた(図3において接線Qと平行関係にある矢印Tに沿って移動させた)状態であり、プラテンロール20の押圧点Aとヘッドの押圧点Dとの間隔(図3における距離W)が100μm〜750μmの状態である。
ここで、プラテンロールの押圧点とヘッドの押圧点との感熱記録材料の搬送方向における間隔(各押圧点間の間隔)は、プラテンロール20の中心(図3における点X)とプラテンロール20の押圧点Aとを通過する中心軸Cと、サーマルヘッド30Aの押圧点Dを通過し且つ中心軸Cと平行な直線(図3における点線E)との距離(図3において矢印Wで示される距離)を意味する。
【0040】
このように本発明の評価方法においては、図3に示すように、プラテンロール20の中心(図3における点X)と、プラテンロール20の押圧点(図3における点A)と、サーマルヘッド30Aの押圧点(図3における点D)とが一つの線上に位置せず、各押圧点の間に一定の距離が生じている。
【0041】
本発明の評価方法においては、前記各押圧点間の距離が100μm〜750μmである。前記各押圧点間の距離が100μm未満であると、十分なよごれの促進効果が得られず、750μmを超えると、画像がかすれ、印画としての機能を果たすことができなくなってしまう。
更に、本発明の評価方法においては図3に示すようにサーマルヘッド30Aの押圧点がプラテンロール20の押圧点よりも感熱記録材料10の搬送方向の下流側に設置される。このようにヘッドの押圧点を感熱記録材料の搬送方向の下流側に設置することで、ペーパーの自浄作用が抑えられ、ヘッドに固着する汚れを促進させることができる。
【0042】
本発明の評価方法によれば、プラテンロールの押圧点とヘッドの押圧点との距離を上述の範囲とし、ヘッドの押圧点を感熱記録材料の搬送方向の下流側に設置することで、通常のサーマルプリンタを用いた場合に比してヘッド汚れの発生を促進することができる。
また、本発明の評価方法によれば、例えば、複数の感熱記録材料(サンプル)を連続的または断続的に印画し、印画後のサンプル表面を観察することでヘッド汚れの程度を評価することができる。本発明の評価方法によれば、ヘッド汚れが促進されていることから、30〜50m程度と長さの短い少量のサンプルを用いた場合であっても十分にヘッド汚れの評価を行うことができる。
【0043】
本発明の評価方法は、実際に感熱記録材料を用いるシステムと同様の環境で温度および湿度を決定することが好ましい。また、更にヘッド汚れの発生を促進したい場合には、感熱記録材料の物性が変わらない範囲で高温高湿環境下に設定してもよい。
【0044】
また、本発明の評価方法においては、連続してサンプルに印画して評価を行ってもよいが、印画と冷却工程とを交互に繰り返して評価することもできる。冷却工程をはさみ間欠的に印画をおこなうことで、汚れ固着をさらに促進させることが出来る。また、印画と冷却工程とを交互に繰り返す場合には、例えば、9cm印画した後、7分間冷却し、再度印画するといったパターンがヘッド温度を初期状態に戻すといった観点から好ましい。
【0045】
次いで、本発明に用いられるサーマルプリンタについて説明する。
本発明のサーマルプリンタは、感熱記録材料を搬送するプラテンロールと、前記プラテンロール上に配置された前記感熱記録材料を押圧して前記感熱記録材料に熱を供与するヘッドと、を備えたサーマルプリンタであって、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔が100μm〜750μmであり、且つ、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点が、前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とする。
【0046】
本発明のサーマルプリンタにおけるプラテンロールおよびヘッドについては従来公知のものを適宜選定して用いることができる。
具体的には、前記プラテンロールとしては、硬度が30〜50°、外径が11〜20mmのものを用い、ヘッドへの押し圧が0.044〜0.0056kg/mmとなるように設置することが好ましい。
また、前記ヘッドとしては、ヘッド保護膜として炭化ケイ素系若しくは窒化ケイ素系の膜を有するものがヘッド汚れ促進の観点から好ましい。
【0047】
また、ヘッド汚れを測定するための感熱記録材料は公知のものを適宜用いることができる。前記感熱記録材料とは、通常、支持体上に単数または複数の感熱記録層を有するものである。前記感熱記録層には、発色成分がふくまれており、例えば、ジアゾ化合物およびカプラーを利用したジアゾ系発色成分や、電子受容性化合物および電子供与性化合物を利用したロイコ系発色成分等が挙げられる。また、前記支持体としては、従来公知の支持体が用いられ、例えば、紙類やPET等のプラスティックフィルムなどを用いることができる。
【0048】
本発明の評価方法にヘッド汚れ評価のサンプルとして用いられる感熱記録材料の幅は、前記ヘッドの幅に対して78〜105%であることが好ましく、プラテンの幅に対しては82〜95%であることが好ましい。
【0049】
また、本発明の評価方法に用いられるサーマルプリンタは、前記ヘッドの位置と前記プラテンロールの位置とが調整可能なことが好ましい。このため、本発明のサーマルプリンタは、前記ヘッドと前記プラテンロールとを所望の位置に調整する調整手段を有することが好ましい。このような調整手段を設けた場合、通常の印画ができるように各押圧点間の距離を0〜750μmに設定可能なように構成し、評価モード時には上述の範囲で各押圧点間の距離を有するが、通常時モードにおいては、その距離を0とできるように構成してもよい。
【0050】
特に、本発明の評価方法に用いられる前記サーマルプリンタは、前記ヘッドを移動させることにより、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との間隔を調整可能なように構成されることが好ましい。このため、本発明のサーマルプリンタは、前記調整手段に、前記ヘッドを移動させるヘッド移動手段を設けて、前記ヘッド移動手段によって前記ヘッドを移動させることにより、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との間隔を調整可能なように構成することが好ましい。
【0051】
このように調整手段およびヘッド移動手段を設けることで、ヘッドをサーマルプリンタにセットしたままでヘッドの搬送方向における移動量を調整することで、本発明の評価方法における各押圧点間の距離を調整することができる。
【0052】
また、ヘッドから感熱記録材料へ熱を供与するための印画エネルギーは、感熱記録材料の表面に面荒れが発生してしまうほどのエネルギーをかけることは好ましくないため、形成される画像の発色の諭度が実際の系の範囲に収まる程度のエネルギーであることが好ましい。具体的な印画エネルギーとしては、例えば、15〜95mJ/mm2が好ましい。
【0053】
また、本発明の評価方法において感熱記録材料に印画するパターンは、特に限定はなく、一定のパターンやベタ画像であってもよいが、例えば、主走査方向に印画率を段階的に異なる画像を形成すると、様々な画像を形成した場合と同等の結果を得ることが出来る。また、細線や実技画像を加えることもできる。更に、本発明の評価方法において感熱記録材料に印画する際には、印画開始後何mの部分かを示す情報を、印画パターン中に組み込むことも好ましい。このような機能を設けることで、無人で印画した場合であっても、後に何mの時点でヘッド汚れによる印画障害が発生したかを判断することができる。
【0054】
また、本発明のサーマルプリンタには、印画した感熱記録材料を排出した後、感熱記録材料が順序よく堆積されるようにストックする機能を設けることが好ましい。このような機能を設けることで、無人で印画した場合であっても、後にどの時点でヘッド汚れによる印画障害が発生したかを判断することができる。
【0055】
また、本発明のサーマルプリンタには、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との位置関係を表示する表示手段を設けることが好ましい。この場合、各押圧点間の距離を実験者が直接測定する必要がなく、表示機能により各押圧点のずれを容易に判断することができる。
【0056】
更に、本発明のサーマルプリンタには、上述の感熱記録材料に含まれるジアゾ系発色成分等を定着させるためにランプ等の露光手段を設けてもよい。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を用いて本発明の評価方法について具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
サーマルプリンタとしては、サーマルヘッドの押圧点を、プラテンロールの押圧点に対して感熱記録材料の搬送方向の下流側に100μm移動させたデジタルプリンタ(商品名:NC−1000、富士写真フイルム(株)製)を用いた。この際、サーマルヘッドは炭化ケイ素系の保護膜を有するものであり、プランテンロールには硬度45°、外径18mmのものを用い、押し圧を0.046kg/mmに設定した。
【0059】
次いで、75mJ/mm2の印画エネルギーで通常時(各押圧点間の距離が0)に印画した場合と同様の記録濃度となるようにサーマルヘッドへのエネルギーを調整し、評価用のサンプルA(特願2005−149490号の比較例1に記載の多色感熱記録材料1と同様の構成を有する、保護層にポリビニルアルコールを用い、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセルを含む光透過率調整層を有する感熱記録材料)およびサンプルB(特願2005−149490号の実施例1に記載の多色感熱記録材料5と同様の構成を有する、サンプルAから光透過率調整層の紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセルを除いた 感熱記録材料)を用意し、これらについて搬送速度0.5m/minで連続的に印画した。この際、用いた印画パターンは、黒、グレー、および、黒と白とのストライプ、並びに、自然画および細線を含むものであった。また、印画環境は常温常湿下でおこなった。
【0060】
尚、サンプルAおよびBについては、各々600m印画し、30mおよび500mの部位のサンプル表面を目視によって観察して下記の基準に従ってヘッド汚れの程度を評価した。結果を下記表1に示す。
〔基準〕
○:ヘッド汚れによる画像障害が発生していなかった。
△:ヘッド汚れによる軽微な画像障害が発生していた。
×:ヘッド汚れによる強い画像障害が発生していた。
【0061】
[比較例1]
実施例1において、サーマルヘッドの位置を通常時とした(ヘッドの押圧点とプラテンロールの押圧点との距離が0とした)以外は実施例1と同様にして、各サンプルについて画像を形成し、ヘッド汚れの程度を評価した。結果を下記表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
各サンプルのヘッド汚れに対する評価は2つのサンプルを同条件で印画し、その相対差を比較することによっておこなうことができる。前記表1からわかるように、本発明の評価方法によれば、各サンプルが30mの時点でヘッド汚れの評価をおこなうことができたのに対し、サンプルBでは30mの時点では両者の評価をおこなうことができず、500m時点ではじめて両者の比較をすることができた。
【0064】
以上のように、本発明の評価方法によれば、サーマルプリンタのヘッドに対する感熱記録材料の汚れの評価を容易且つ短時間でおこなうことができる。また、本発明の評価方法によれば、大量のサンプルを用いる必要がないことからコスト面においても有利である。更に、本発明の評価方法によれば、感熱記録材料の物性を変化させることなく、ヘッド汚れを促進させることができることから、高い精度のデータをえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】従来のサーマルプリンタの感熱記録材料の搬送方向に対するプラテンロールの押圧点とヘッドの押圧点との位置関係を説明するための断面図である。
【図2】本発明におけるヘッドの押圧点を示す説明図である。
【図3】本発明のサーマルプリンタの感熱記録材料の搬送方向に対するプラテンロールの押圧点とヘッドの押圧点との位置関係を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 感熱記録材料
20 プララテンロール
30 サーマルヘッドユニット
30A サーマルヘッド
30B 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱記録材料を搬送するプラテンロールと、前記プラテンロール上に配置された前記感熱記録材料を押圧して前記感熱記録材料に熱を供与するヘッドと、を備えるサーマルプリンタを用い、前記感熱記録材料を前記サーマルプリンタによって印字して前記ヘッドに対する感熱記録材料の汚れを評価する感熱記録材料の評価方法であって、
前記サーマルプリンタは、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔が100μm〜750μmであり、且つ、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点が、前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とする感熱記録材料の評価方法。
【請求項2】
前記サーマルプリンタは、前記ヘッドの位置と前記プラテンロールの位置とが調整可能なことを特徴とする請求項1に記載の感熱記録材料の評価方法。
【請求項3】
前記サーマルプリンタは、前記ヘッドを移動させることにより、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との間隔を調整可能なことを特徴とする請求項1または2に記載の感熱記録材料の評価方法。
【請求項4】
複数の前記感熱記録材料を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録材料の評価方法。
【請求項5】
30〜50mの長さの前記感熱記録材料を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録材料の評価方法。
【請求項6】
感熱記録材料を搬送するプラテンロールと、前記プラテンロール上に配置された前記感熱記録材料を押圧して前記感熱記録材料に熱を供与するヘッドと、を備えたサーマルプリンタであって、
前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との前記感熱記録材料の搬送方向における間隔が100μm〜750μmであり、且つ、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点が、前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点よりも前記感熱記録材料の搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記ヘッドと前記プラテンロールとを所望の位置に調整する調整手段を有することを特徴とする請求項6に記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
前記調整手段は、前記ヘッドを移動させるヘッド移動手段を有し、前記ヘッド移動手段によって前記ヘッドを移動させることにより、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との間隔を調整可能なことを特徴とする請求項7に記載のサーマルプリンタ。
【請求項9】
更に、前記ヘッドの前記感熱記録材料に対する押圧点と前記プラテンロールの前記感熱記録材料に対する押圧点との位置関係を表示する表示手段を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項10】
前記ヘッドに対する感熱記録材料の汚れの評価に用いられることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−98658(P2007−98658A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288904(P2005−288904)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】