説明

感熱記録材料

【課題】高濃度で発色し、画像部及び未発色部の保存安定性に優れた感熱記録材料を提供する。
【解決手段】無色又は淡色のロイコ染料からなる発色物質と顕色剤とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料であって、前記顕色剤として3種類のビスフェノール系化合物の中から選ばれる少なくとも1種と、特定構造を有するジフェニルスルホン架橋型化合物とを、質量比80:20〜25:75の割合で混合して用いる感熱記録材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料に関する。更に詳しくは、高濃度で発色し、かつ画像部及び未発色部の保存性に優れた感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に支持体上に電子供与性の無色若しくは淡色の染料前駆体と電子受容性の顕色物質とを主成分とする感熱発色層を設けたもので、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光などで加熱することにより、染料前駆体と顕色物質とが瞬時に反応し、記録材料が得られる。このような感熱記録材料は、古くより開発が進められ、例えば、紙面に特殊な塗被を施して、通常は無色であるが、加熱又は赤外線照射により顕色する組成物からなる熱感応性複写シートとして、反応顕色成分がラクトン、ラクタム又はサルトン型の無着色染料ベース、有機酸及び熱可融性物質よりなる熱感応複写シートが提案されている(特許文献1参照)。また、耐湿性及びプリント安定性が改良され、耐湿性の改良により塗布された記録形成成分の乾燥及び作製中における着色を防ぐことができる感熱記録材料として、記録形成ユニットがクリスタル・バイオレット・ラクトン及びフェノール性物質を有する支持体シート材料よりなり、該フェノール性物質は室温では固体、サーモグラフ温度では液化又は気化し、ラクトンと反応して記録を生じ、該ラクトン及びフェノール性物質はポリビニルアルコール中に分散している感熱記録材料が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
このような感熱記録材料は、比較的簡易な装置で記録が得られ、保守が容易であること、騒音の発生が少ないことなどの利点があり、各種携帯端末などのサーマルプリンター、超音波エコーなどに付属する医療画像プリンター、心電図や分析機器などのサーモペンレコーダー、航空券、乗車券、商品のPOSラベルなどに利用されている。
感熱記録材料には、発色性に優れ、低熱量で高濃度に発色すること、得られた画像の保存性に優れること、未発色部の白度が保持されることなどのさまざまな特性が要求される。特に、電子レンジ加工食品ラベル、駐車券、配送ラベル、チケットなどには、記録画像の信頼性が重視されるため、耐可塑剤性、耐湿性、耐熱性などの保存安定性が要求される。このために、感熱記録材料の顕色剤として、さまざまな化合物が検討されている。
【0004】
例えば高感度で地肌のかぶりが少なく、記録像の保存性、とりわけ耐水性、耐可塑剤性に優れた感熱記録材料が得られる顕色剤として、α,α'−ビス[4−(p−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−p−キシレン、α,α'−ビス[4−(p−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−m−キシレン若しくはα,α'−ビス[4−(p−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−o−キシレンを含有する感熱記録材料が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、これらの化合物でも、発色部及び未発色部の保存安定性が十分とは言えない。
【特許文献1】特公昭43−4160号公報
【特許文献2】特公昭45−14039号公報
【特許文献3】特開平7−149713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで、高濃度で発色し、画像部及び未発色部の保存安定性に優れた感熱記録材料を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のジヒドロキシフェニル系化合物と特定のジフェニルスルホン架橋型化合物を用いて、少なくとも2種類の顕色剤を含有する感熱発色層を支持体上に設けることにより、高濃度に発色し、画像部及び未発色部の保存性に優れた感熱記録材料が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、無色又は淡色のロイコ染料からなる発色物質と顕色剤とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料であって、前記顕色剤として、(a)下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)で表されるジヒドロキシフェニル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種と、(b)下記一般式(4)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物とを、質量比80:20〜25:75の割合で混合して用いることを特徴とする感熱記録材料、
【化1】

を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高濃度で発色し、画像部の保存性、特に耐水性、耐可塑剤性にすぐれ、さらに未発色部の保存性、特に耐熱性にも優れた感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[顕色剤]
本発明においては、顕色剤として、(a)下記の式(1)、式(2)及び式(3)
【化2】

で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシフェニル系化合物と、(b)下記一般式(4)
【化3】

(式中、nは1〜6の整数を表す。)
で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物を併用することにより、(a)ジヒドロキシフェニル系化合物のみを使用したときに比べて、画像部の保存安定性を顕著に向上させることができる。また、(b)ジフェニルスルホン架橋型化合物のみを使用したときに比べて、発色濃度を顕著に向上させることができる。
(a)ジヒドロキシフェニル系化合物と(b)ジフェニルスルホン架橋型化合物との配合割合は、質量比80:20〜25:75である。(b)ジフェニルスルホン架橋型化合物の含有割合がこの範囲よりも少なくなると、画像部の保存性が低下し、含有割合がこの範囲よりも多くなると画像部の発色濃度が低下するおそれがある。(a)成分と(b)成分の好ましい含有割合は、70:30〜30:70である。
【0010】
((b)ジフェニルスルホン架橋型化合物)
本発明において、顕色剤の一成分として用いる(b)成分の一般式(4)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物は、例えば、ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニル(ハロメチルとしては、クロロメチル又はブロモメチルが好ましい)とを、塩基性物質の存在下、溶媒を用いて脱ハロゲン化水素反応させることにより製造することができる。反応温度としては50℃以上、溶媒の還流温度以下であることが好ましい。用いるジヒドロキシジフェニルスルホンとしては、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、これらの混合物を挙げることができる。これらの中で、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、画像部の保存性、特に耐湿熱性、耐可塑剤性に優れ、さらに、未発色部の耐熱性を有する顕色物質を得ることができるので特に好適に用いることができる。
【0011】
前記塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジンなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;グリコール類のモノアルキルエーテル類;グリコール類のジアルキルエーテル類;アセトン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン等のエステル類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族系炭化水素類、及びこれらの混合溶媒などを挙げることができるが、さらに水との混合溶媒を用いることもできる。水との混合溶媒には、アルコール類及び芳香族炭化水素類が好ましい。一般式(4)に示すジフェニルスルホン架橋型化合物中にナトリウムやカリウムのような金属イオンが1000質量ppmを超えて含有すると、該化合物を用いた感熱記録材料の耐水性が低下したり、感熱記録材料を印刷する際にヘッドが摩耗したりすることがあるので金属分の管理は重要である。
【0012】
本発明に用いる式(1)で表される化合物としては「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]、式(2)で表される化合物としては「ビスフェノールC」[本州化学工業(株)製]、式(3)で表される化合物としては「ビスフェノールAP」[本州化学工業(株)製]などの市販品を入手することができる。
【0013】
本発明において、式(1)、式(2)又は式(3)で表される(a)ジヒドロキシフェニル系化合物又はこれらの混合物と、(b)一般式(4)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物との併用に加えて、発色性、画像部の保存性と白紙部の保存性を損なわない範囲で、さらに他の顕色物質を併用することができる。他の顕色物質としては、例えば、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−アリルオキシジフェニルスルホン、3,3'−ジアリル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシフェニルスルホン酸フェニルエステルなどのヒドロキシフェニルスルホン類、フェニルスルホン酸の誘導体、スルホンアミド尿素化合物などを挙げることができる。
【0014】
[発色物質]
本発明において、感熱発色層に含有させる発色物質として用いる無色又は淡色のロイコ染料に特に制限はなく、例えば、フルオラン誘導体、キナゾリン誘導体、フタリド誘導体、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。これらのロイコ染料の中で、フルオラン誘導体は、発色性が良好なので特に好適に用いることができる。フルオラン誘導体であるロイコ染料としては、例えば、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2',4'−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−エチル−N−(4−メチルフェニル)]アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−ペンチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−ヘキシル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチル−N−ブチルアミノ−7−(2'−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−クロロフルオラン、3−ピロジリル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2'−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(2'−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ブチルアミノ−7−(2'−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオランなどを挙げることができる。
これらのロイコ染料は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良く、また感熱発色層に含有させる発色物質の量は、目的とする感熱記録材料の特性に応じて、適宜選択することができる。
【0015】
[増感剤]
本発明の感熱記録材料においては、感熱発色層にさらに増感剤を含有させることができる。用いる一般的増感剤に特に制限はないが、例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(3−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(4−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、2−ベンジルオキシナフタレン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(4−メチルベンジル)、シュウ酸ジ(4−クロロベンジル)、4−アセチルベンジル、N−フェニルトルエンスルホンアミド、トルエンスルホンサンナフチル、p−ベンジルビフェニル、m−テルフェニル、4,4'−ジプロポキシジフェニルスルホン、4,4'−ジイソプロポキシジフェニルスルホン、4,4'−ジアリルオキシジフェニルスルホン、2,4'−ジプロポキシジフェニルスルホン、2,4'−ジイソプロポキシジフェニルスルホン、2,4'−ジアリルオキシジフェニルスルホン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、テレフタル酸ベンジルなどを挙げることができる。これらの増感剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
[画像安定化剤]
本発明の感熱記録材料においては、感熱発色層にさらに画像安定化剤を含有させることができる。用いる画像安定化剤に特に制限はなく、例えば、4−ベンジルオキシ−4'−(2−メチルグリシジルオキシ)−ジフェニルスルホン、4,4'−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチル−4,4'−スルホニルジフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、ポリヒドロキシ安息香酸などのポリエステル構造を有する化合物、ウレアウレタンなどのウレタン構造を有する物質、ポリ(フェニルスルホン)エーテルなどのポリエーテル構造を有する物質などを挙げることができる。これらの画像安定化剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0017】
[填料、その他添加剤]
本発明の感熱記録材料においては、必要に応じて、感熱発色層に填料を含有させることができる。用いる填料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、クレー、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、表面処理されたシリカなどの無機填料や、ポリスチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、シリコーン樹脂粒子、セルロース粉、スチレン/メタクリル酸共重合体粒子、塩化ビニリデン系樹脂粒子、スチレン/アクリル共重合体粒子、プラスチック球状中空微粒子などの有機填料などを挙げることができる。これらの填料は1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
本発明の感熱記録材料においては、必要に応じて、他の添加剤を感熱発色層に含有させることができる。含有させる添加剤としては、例えば、ステアリン酸エステルワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸亜鉛などの滑剤、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール系紫外線吸収剤、グリオキザールなどの耐水化剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤,蛍光染料などを挙げることができる。
【0019】
[感熱記録材料の製造]
本発明の感熱記録材料の製造方法に特に制限がなく、例えば、発色物質、顕色剤、及び必要に応じて添加する増感剤、画像安定化剤、その他の成分を適当な結合剤とともに、水媒体などの媒体中に分散させて感熱発色層の塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に塗布し、乾燥することにより製造することができる。発色物質、顕色剤、増感剤を含有する分散液は、発色物質を含有する分散液、顕色剤を含有する分散液及び増感剤を含有する分散液をそれぞれ個別に調製したのち、これらの分散液を混合することにより調製することが好ましい。各分散液中において、発色物質、顕色剤及び増感剤は、微粒子化して分散していることが望ましいので、これらの分散液の調製には、サンドミル、ボールミルなどを用いることが好ましい。
【0020】
(結合剤)
前記結合剤に特に制限はなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メトキシセルロース、エチルセルロースル、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;ゼラチン、カゼイン、澱粉、アルギン酸などの天然高分子類;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール/アクリルアミドブロック共重合体、ポリビニルピロリドン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂などを挙げることができる。これらの結合剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
[支持体、アンダーコート層、バックコート層]
本発明の感熱記録材料に使用する支持体には特に制限はなく、例えば、中性紙や酸性紙などの紙、合成紙、古紙パルプを用いた再生紙、フィルム、不織布、織布などを挙げることができる。
本発明の感熱記録材料においては、支持体上に、さらに、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、クレー、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、表面処理されたシリカなどの無機填料や、ポリスチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、シリコーン樹脂粒子、セルロース粉末、スチレン/メタクリル酸共重合体粒子、塩化ビニリデン系樹脂粒子、スチレン/アクリル共重合体粒子、プラスチック球状中空微粒子などの有機填料などを含むアンダーコート層やバックコート層を設けることが好ましい。アンダーコート層やバックコート層を設けることにより、断熱層として作用し、サーマルヘッド等からの熱エネルギーの効率的活用による感度向上をもたらすことができる。特に、プラスチック球状中空微粒子を含むアンダーコート層やバックコート層は、熱感度を効果的に向上させることができるので好適に用いられる。
【0022】
なお、プラスチック球状中空微粒子とは、熱可塑性樹脂を殻としており、内部に空気その他の気体を含有してすでに発泡状態となっている微小中空粒子であり、平均粒子径は0.2〜20μm程度のものである。この平均粒子径(粒子外径)が0.2μmより小さいものは、任意の中空率にすることが難しいなどの生産上の問題があってコスト面で難点があり、逆に20μmより大きいものは塗布乾燥後の表面平滑性が低下するためにサーマルヘッドとの密着性が低下し、熱感度向上効果が低下する。したがって、該粒子は粒子径が前記範囲にあると共に粒子径のバラツキが少ないものが好ましい。さらにこのプラスチック球状該中空粒子は、その断熱効果を勘案すると中空率は、40%以上のものが好ましく、90%以上のものが更に好ましい。中空率が低いものは、断熱効果が不充分なためサーマルヘッドからの熱エネルギーが支持体を通じて感熱記録材料の外へ放出され、熱感度向上効果が劣る。なお、ここでは言う「中空率」とは、中空微粒子の外径と内径の比であり、下記で表されるものである。
中空率(%)=[(中空微粒子の内径)/(中空微粒子の外径)]×100
プラスチック球状中空微粒子は、前記したように熱可塑性樹脂を殻とするものであるが、該樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエンあるいはそれらの共重合体樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に塩化ビニリデンとアクリロニトリルを主体とする共重合体樹脂が好ましい。
【0023】
アンダーコート層やバックコート層に使用する結合剤に特に制限はなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メトキシセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;ゼラチン、カゼイン、澱粉、アルギン酸などの天然高分子類;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール/アクリルアミドブロック共重合体、ポリビニルピロリドン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂などを挙げることができる。
本発明の感熱記録材料においては、さらに必要に応じて、感熱発色層の上に、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール類などの水溶性樹脂や、スチレン−ブタジエン共重合体、テルペン樹脂などの水溶性エマルジョンや非水溶性樹脂、それらの樹脂に填料、イソシアネート類、不飽和化合物などのモノマーやオリゴマーと架橋剤を加えてオーバーコート層を形成することができる。
本発明の感熱記録材料は、色調の異なる発色物質をそれぞれ感熱発色層として多層形成した多色感熱記録材料とすることができる。
【実施例】
【0024】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって、なんら限定されるものではない。
なお、実施例において、反応物組成及び化合物組成は、以下の条件にて測定した。
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件)
クロマトグラフ:東ソー(株)製、「HLC−8020」
カラム:東ソー(株)製、TSK gel G2000H×L + TSK gel G3000H×L
カラム温度:40℃
移動層:ジメチルホルムアミド
流量:1.0ml/分
検出器:RI
(DSCの測定条件)
DSC本体:(株)島津製、「DSC−50」
昇温条件(ファーストラン):室温から250℃、10℃/分
降温条件(ファーストラン):250℃から室温、30℃/分
昇温条件(セカンドラン):室温から250℃、10℃/分
【0025】
また、実施例及び比較例において、作製した感熱記録材料の性能は、次の方法により評価した。
(1)耐水性
作製した感熱記録材料に、感熱印字装置[(株)大倉電気製]を用いて、印字電圧20V、パルス巾3msで発色させ、発色させた部分(画像部)の色濃度を反射濃度計[マクベス社製、「RD−918」]を用いて測定した。次に、20℃の蒸留水で24時間浸漬させ、1時間風乾させた後の色濃度を測定した。
(2)耐可塑剤性
作製した感熱記録材料に、感熱印字装置[(株)大倉電気製]を用いて、印字電圧20V、パルス巾3msで発色させ、発色させた部分(画像部)の色濃度を反射濃度計[マクベス社製、「RD−918」]を用いて測定した。次に、画像部に塩ビラップを3枚重ね、さらに一般紙10枚を重ね、約1.96N/cm2となるように重りをのせたものを、20℃、65%RHで6時間放置したのち色濃度を測定した。
(4)耐熱性
作製した感熱記録材料の、発色させていない部分(未発色部)の色濃度と、感熱印字装置[(株)大倉電気製]を用いて、印字電圧20V、パルス巾3msで発色させた部分(画像部)の色濃度を反射濃度計[マクベス社製、「RD−918」]を用いて測定した。次に90℃で24時間放置した後、色濃度を測定した。
【0026】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン[日華化学社製、商品名「BPS−H」]100g、イソプロパノール250gを入れ、溶解させた。続いて、水酸化ナトリウム18.0gを溶解させた水溶液250gを加え、60℃まで加熱した後、4,4'−ビス(クロロメチル)−1,1'−ビフェニル50gを添加し、加熱還流状態(86℃)で8時間撹拌した。その後、希塩酸水溶液を滴下し中和したのち、イソプロパノールを留去し、80℃で結晶を減圧ろ過し、60℃の熱水100gで結晶を洗浄した。得られた結晶に200gのメタノールを加え、3時間加熱還流後、40℃まで冷却し、結晶を減圧ろ過により単離した。乾燥したところ白色の反応生成物が95g得られた。
DSC測定のセカンドランでTgは117℃であった。また、この反応生成物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー[東ソー社製]で測定し、次のような組成であることを確認した。
【化4】

a=1:保持時間 17.2分:面積% 39.4
a=2:保持時間 16.3分:面積% 24.7
a=3:保持時間 15.5分:面積% 7.9
a=4:保持時間 15.0分:面積% 6.4
a=5:保持時間 14.6分:面積% 5.2
a=6:保持時間 14.2分:面積% 3.7
【0027】
実施例1
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液10質量部、水30質量部を、サンドミルを用いて4時間微粉砕して分散させることにより、発色物質分散液(A液)を調製した。合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物5質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]5質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液10質量部、水30質量部を、サンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させることにより、顕色剤分散液(B液)を調製した。シリカゲル[水沢化学(株)製、「P527」]10質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液10質量部、水30質量部を、サンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させることにより、シリカゲル分散液(C液)を調製した。ステアリン酸亜鉛10質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液10質量部、水30質量部を、サンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させることにより、ステアリン酸亜鉛分散液(D液)を調製した。非発泡性プラスチック微小中空粒子(固形分24質量%、平均粒径3μm、中空度90%) 40質量部、スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス[日本ゼオン(株)製、「Nipol(登録商標)LX438C」]10質量部、水50質量部を、ディスパーを用いて撹拌混合させることにより、樹脂液(E液)を調製した。次に、A液5質量部、B液20質量部、C液20質量部及びD液2.5質量部を、ディスパーを用いて撹拌混合し発色層の塗布液を調製した。また、C液5質量部及びE液10質量部を、ディスパーを用いて撹拌混合しアンダーコート層の塗布液を調製した。
坪量60g/m2の上質紙に、アンダーコート層の塗布液を乾燥塗布量が3g/m2となるように塗布し、乾燥してアンダーコート塗布紙を得た。このアンダーコート層上に、発色層の塗布液を乾燥塗布量が5g/m2となるように塗布し、乾燥し、1MPaの圧力でカレンダー処理して本発明の感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0028】
実施例2
市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]の代わりに、市販品「ビスフェニールC」[本州化学工業(株)製]を用いて顕色剤分散液(B)液を調製した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0029】
実施例3
市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]の代わりに、市販品「ビスフェニールAP」[本州化学工業(株)製]を用いて顕色剤分散液(B)液を調製した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0030】
実施例4
合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物5質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]5質量部の代わりに、合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物3質量部、市販品「ビスフェノールAP」[本州化学工業(株)製]7質量部用いて顕色剤分散液(B)液を調製した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0031】
実施例5
合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物5質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]5質量部の代わりに、合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物7質量部、市販品「ビスフェノールAP」[本州化学工業(株)製]3質量部用いて顕色剤分散液(B)液を調製した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0032】
比較例1
合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物5質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]5質量部の代わりに、合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物10質量部を用いて顕色剤分散液(B)液を調製した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0033】
比較例2
合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物5質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]5質量部の代わりに、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]10質量部用いて顕色剤分散液(B)液を調製した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0034】
比較例3
合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物5質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]5質量部の代わりに、合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物1質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]9質量部を用いて顕色剤分散液(B)液を調製した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0035】
比較例4
合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物5質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]5質量部の代わりに、合成例1で得られたジフェニルスルホン架橋型化合物8質量部、市販品「ビスフェノールA」[三井化学(株)製]2質量部を用いて顕色剤分散液(B)液を調製した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。結果を第1表に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
第1表の結果から、本発明に係る各化合物を顕色剤として用いた感熱記録材料は、画像の色濃度、耐水性、耐可塑剤性、耐熱性及び地肌の耐熱性に優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の感熱記録材料は、感度が良好で発色性が優れており、低い印字エネルギーでも高濃度に発色するので、携帯端末の小電流、高速印字などにも十分に対応することができる。また、本発明の感熱記録材料は、画像部の耐熱保存性、耐水性に優れるので、印刷後に乾熱や湿熱がかかる厳しい環境下で、例えば、電子レンジ加熱食品ラベル、駐車券、配送ラベルなどに使用されても、記録された情報を安定して保持することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無色又は淡色のロイコ染料からなる発色物質と顕色剤とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料であって、前記顕色剤として、(a)下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)で表されるジヒドロキシフェニル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種と、(b)下記一般式(4)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物とを、質量比80:20〜25:75の割合で混合して用いることを特徴とする感熱記録材料。
【化1】


【公開番号】特開2010−149373(P2010−149373A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329359(P2008−329359)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】