説明

感熱記録材料

【課題】本発明は、耐水性及びバリア性に優れた感熱記録材料を提供することを主な目的とする。
【解決手段】支持体上にロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層、並びに接着剤を含有する保護層を備えた感熱記録材料において、感熱記録層中にヒドラジド化率が40〜90モル%、且つ平均分子量が10000〜100000であるポリアクリル酸ヒドラジドを含有し、保護層中に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と顕色剤との発色反応を利用した感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無色乃至は淡色のロイコ染料と有機または無機の顕色剤との発色反応を利用し、熱により両発色物質を接触せしめて発色像を得るようにした感熱記録材料はよく知られている。かかる感熱記録材料は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトで且つその保守も比較的容易であるため、ファクシミリや各種プリンタ等の記録媒体としてのみならず、ラベルやハンディターミナル等の幅広い分野において使用されている。
【0003】
その利用分野の拡大と記録機器の多様化や高性能化に伴い、記録媒体の使用環境も過酷になりつつあり、記録画像の画質や記録感度だけでなく、保存安定性や耐水性に優れた品質を有するものが求められている。
【0004】
従来から感熱記録材料の耐水性を高めるために、保護層の接着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを用い、架橋剤としてヒドラジン系化合物を保護層に含有させることが提案されている(特許文献1、2)。また、保護層にアセトアセチル変性ポリビニルアルコールとヒドラジド系化合物を含有させることも提案されている(特許文献3)。しかしながら、これらは、保護層用塗液にポリビニルアルコールと架橋剤が同時に存在しているため、保護層用塗液が増粘し易く安定性(ポットライフ)が悪いという問題点がある。
【0005】
保護層用塗液の安定性の問題を解決する手段として、感熱記録層にヒドラジド系化合物を含有し、保護層の接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールまたはジアセトン変性ポリビニルアルコールを用いることが提案されている(特許文献4、5)。これらは、塗液安定性が高く塗布適性は良好であるものの、耐水性が不十分であったり、ヒドラジド化合物により発色性が低下するといった問題がある。
【0006】
ヒドラジド系化合物以外の架橋剤としては、例えば、多官能セミカルバジド化合物(特許文献6)、エポキシ基を有する化合物(特許文献7)が挙げられるが、十分な耐水性を有するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−073892号公報
【特許文献2】特開2008−213259号公報
【特許文献3】特開2001−121815号公報
【特許文献4】特開2004−249528号公報
【特許文献5】特開平11−314457号公報
【特許文献6】特開2010−058307号公報
【特許文献7】特開2000−168232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、バリア性及び耐水性に優れた感熱記録材料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を種々検討した結果、支持体上に、ロイコ染料と顕色剤を含有する感熱記録層と、接着剤を含有する保護層を備えた感熱記録材料において、感熱記録層中にヒドラジド化率が40〜90モル%、且つ平均分子量が10000〜100000であるポリアクリル酸ヒドラジドを含有し、保護層中に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記の感熱記録材料に係る。
【0010】
項1:支持体上にロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層、並びに接着剤を含有する保護層を備えた感熱記録材料において、感熱記録層中にヒドラジド化率が40〜90モル%、且つ平均分子量が10000〜100000であるポリアクリル酸ヒドラジドを含有し、保護層中に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする感熱記録材料。
【0011】
項2:前記ポリアクリル酸ヒドラジドの含有量が前記保護層中のアセトアセチル変性ポリビニルアルコール100質量部に対して0.2〜20質量部である、項1に記載の感熱記録材料。
【0012】
項3:前記保護層中のアセトアセチル変性ポリビニルアルコールの重合度が1000〜3000である、項1または2に記載の感熱記録材料。
【0013】
項4:前記感熱記録層中にカルボニル基を含むポリビニルアルコールを含有し、前記カルボニル基を含むポリビニルアルコールの含有割合が感熱記録層の全固形量中1〜5質量%である、項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【0014】
項5:前記カルボニル基を含むポリビニルアルコールがアセトアセチル変性ポリビニルアルコールである、項4に記載の感熱記録材料。
【0015】
項6:支持体と感熱記録層の間に、有機顔料及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種と接着剤を含有する下塗り層を備えた、項1〜5のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明の感熱記録材料は、バリア性及び耐水性に優れている。また、記録感度及び印字画質にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明では、感熱記録層中にヒドラジド化率が40〜90モル%、且つ平均分子量が10000〜100000であるポリアクリル酸ヒドラジドを含有する。これにより、バリア性及び耐水性に優れた感熱記録材料を得ることができる。ポリアクリル酸ヒドラジドは、N−アミノポリアクリルアミドやアクリル酸ヒドラジド共重合物とも呼ばれるものであり、高分子構造を有するため、分子内に架橋点となり得るヒドラジド基を多数有する。このため、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールとの反応性が特段に高く、本発明においては、保護層中にアセトアセチル変性ポリビニールを含有させることにより、感熱記録層と保護層の間でポリアクリル酸ヒドラジドとアセトアセチル変性ポリビニルアルコールが膜構造を形成し、密着強度を高めるとともに、保護層成分が感熱記録層へ浸透することを防いで層間分離を向上する効果が大きく、均一な層が形成されると考えられ、バリア性や耐水性に顕著な効果が得られるとともに、塗液の安定性を損なうこともない。
【0018】
ポリアクリル酸ヒドラジドのヒドラジド化率としては、40〜90モル%であり、50〜80モル%が好ましい。ヒドラジド化率とは、構造式の中のカルボン酸の数に対して、−NHNHがついている数の比率(モル%)として定義され、ヒドラジド化率が40モル%未満では、架橋点となり得るヒドラジドが分子内に少ないため十分な耐水性を得ることができない。
【0019】
ポリアクリル酸ヒドラジドは、例えば、ポリアクリル酸アミド、またはポリアクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステルとヒドラジンとを反応させる事により生成されるポリマーであり、例えば、下記式(1)で表される。式中、m+n=100モル%であり、nの値をヒドラジド化率(モル%)と定義する。
【0020】
【化1】

【0021】
ポリアクリル酸ヒドラジドの平均分子量としては、10000〜100000であり、20000〜90000が好ましい。平均分子量が10000未満では十分な耐水性を得ることができず、100000を超えるとポリアクリル酸ヒドラジドの水溶性が低下し、溶媒としての大量の水が必要になる。そのため、塗液の濃度が低下し乾燥に時間を要するため、バリア性が低下する。
【0022】
本発明における平均分子量とは、GPC(ゲルバーミエーションクロマトグラフィー)で分析した数平均分子量である。測定機器は、LC10Aシステム(島津製作所製)、カラム:TSK−GEL α−2500、TSK−GEL α−4000、TSK−GEL α−6000(東ソー株式会社製)、スタンダード:ポリエチレンオキシド(TSKstandardPEOキット、東ソー株式会社製)である。
【0023】
感熱記録層中のポリアクリル酸ヒドラジドの含有量は、保護層中のアセトアセチル変性ポリビニルアルコール100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜20質量部がより好ましく、0.2〜15質量部が更に好ましい。0.1質量部以上とすることにより、バリア性と耐水性を向上できる。一方、20質量部以下とすることにより、ヒドラジド化合物による発色性低下を抑制し、記録感度と印字画質を向上できる。
【0024】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の架橋剤を併用することができる。架橋剤としては、例えば、ポリアクリル酸以外のヒドラジド系化合物、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、及び塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物または硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー等が挙げられる。
【0025】
感熱記録用塗液に使用される接着剤としては、水溶性バインダー及び水分散性バインダーのいずれの水性バインダーも使用することができる。水溶性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、及びカゼイン等の水溶性高分子が挙げられる。水分散性バインダーとしては、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリル化ウレタン、アクリル−シリコン複合体、及びアクリル−シリコン−ウレタン複合体等の疎水性重合体のラテックス等が挙げられる。
【0026】
なかでも、カルボニル基を含むポリビニルアルコールを含有することが好ましく、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。カルボニル基を含有するポリビニルアルコールとポリアクリル酸ヒドラジドを併用することにより、感熱記録層の耐水性を向上できる。
【0027】
感熱記録層中のカルボニル基を含むポリビニルアルコールの含有割合は、感熱記録層の全固形量中1〜5質量%が好ましい。1質量%以上とすることにより耐水性を向上できる。一方、5質量%以下とすることにより、カルボニル基を含むポリビニルアルコールとポリアクリル酸ヒドラジドの反応性を抑え、感熱記録層用塗液を増粘させることなく、塗布適性を高めて印字画質を向上できる。
【0028】
本発明における感熱記録層は、各種公知のロイコ染料及び顕色剤を含有することができる。その他、必要に応じて、増感剤、保存性改良剤、顔料、各種助剤等を含有してもよい。ロイコ染料の具体例としては、例えば、黒色発色を与えるロイコ染料として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アリニノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−2−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ〕−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ〕−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ブチルアミノ)−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン等が挙げられる。また、必要に応じて、黒とは異なる色調に発色する、例えば赤、赤紫、オレンジ、青、緑等の発色色調を与えるロイコ染料を使用してもよい。
【0029】
ロイコ染料はこれらに限定されるものではなく、2種以上を併用することもできる。かかるロイコ染料の使用量としては、特に限定されず、感熱記録層の全固形量中3〜30質量%程度が好ましい。
【0030】
本発明では、ロイコ染料を固体分散微粒子状態として使用する場合、水を分散媒体として、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩及びこれらの誘導体等の水溶性高分子のほか、必要に応じて界面活性剤、消泡剤等と共に、サンドミル、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によって粉砕し、分散媒体中に分散させた分散液とし、この分散液を感熱記録層用塗液の調製に用いることができる。また、ロイコ染料を溶剤に溶解した後、この溶液を水中で上記水溶性高分子を安定化剤として乳化分散後、この乳化液から溶剤を蒸発させロイコ染料を固体微粒子化して使用することもできる。いずれの場合も固体分散微粒子状態で使用するロイコ染料の分散粒子の平均粒子径は、適切な記録感度を得るために0.2〜3.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0μmである。
【0031】
本発明におけるロイコ染料の使用方法として、前記固体分散微粒子状態で使用する以外に、有機高分子とロイコ染料とからなる複合粒子としても使用することができる。複合粒子の作製については、公知の方法により可能である。例えば、前記有機高分子がポリウレア及びポリウレア−ポリウレタンの少なくとも1種である複合粒子の作製方法について以下に述べる。前記複合粒子は、ロイコ染料、並びに重合によりポリウレア及びポリウレア−ポリウレタンの少なくとも1種を形成することができる多価イソシアネート化合物等の高分子形成性原料を、100℃以下の沸点を有する水不溶性有機溶剤に溶解混合し、この有機溶剤溶液をポリビニルアルコール等の親水性保護コロイド溶液中に平均粒子径が0.5〜3μm程度となるように乳化分散し、更に必要によりポリアミン等の反応性物質を混合後、この乳化分散液を加熱して前記有機溶剤を揮発除去し、その後、前記高分子形成性原料を高分子化することにより調製されたもの、或いは前記ロイコ染料を高分子形成性原料に溶解し、この溶解液を前記の方法で平均粒子径が0.5〜3μm程度に乳化分散後、前記高分子形成性原料を高分子化することにより調製される。
【0032】
本発明における顕色剤としては、公知の化合物を使用することができる。かかる顕色剤の具体例としては、例えば、4−tert−ブチルフェノール、4−アセチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル等のフェノール性化合物、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール性化合物、または安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の多価金属との塩等の有機酸性物質、N−p−トルエンスルホニル−N’−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N−p−トルエンスルホニル−N’−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のウレア化合物が挙げられる。
【0033】
本発明において、感熱記録層中のロイコ染料と顕色剤の使用比率は、ロイコ染料と顕色剤の種類に応じて適宜選択すべきもので、特に限定するものではないが、一般にロイコ染料1質量部に対して好ましくは1〜7質量部程度、より好ましくは1〜6質量部程度の顕色剤が使用される。
【0034】
更に、感熱記録層には白色度及び画像均一性を向上させるため、白色度が高く、平均粒径が10μm以下の微粒子顔料を含有させることもできる。顔料の具体例としては、例えばカオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、酸化チタン、酸化亜鉛、珪藻土、微粒子状無水シリカ、活性白土等の無機顔料、スチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、生澱粉粒子等の有機顔料が挙げられる。顔料の含有量は、発色濃度を低下させない程度の量、即ち感熱記録層の全固形分に対して50質量%以下が好ましい。
【0035】
更に、感熱記録層には記録感度を高めるための増感剤を含有させることもできる。増感剤の具体例としては、例えばステアリン酸アミド、メトキシカルボニル−N−ステアリン酸ベンズアミド、N−ベンゾイルステアリン酸アミド、N−エイコサン酸アミド、エチレンビステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N−メチロールステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジオクチル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、2−ナフチルベンジルエーテル、m−ターフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸−ジ−p−メチルベンジル、シュウ酸−ジ−p−クロロベンジル、p−ベンジルビフェニル、トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(2−メチルフェノキシ)エタン、p−メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4−ジ(フェニルチオ)ブタン、p−アセトトルイジド、p−アセトフェネチジド、N−アセトアセチル−p−トルイジン、ジ(β−ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p−ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1−イソプロピルフェニル−2−フェニルエタン等が例示される。これらの増感剤の含有量は特に限定されないが、一般に顕色剤1質量部に対して4質量部以下程度の範囲で調節するのが望ましい。
【0036】
更に、感熱記録層には記録像の保存性を高めるための保存性改良剤を含有させることもできる。かかる保存性改良剤の具体例としては、例えば2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−(2,2−プロピリデン)ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メトキシ−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(5−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−クロロ−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メトキシ−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4’’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−チオビス(3−メチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸ソーダ等が挙げられる。
【0037】
感熱記録層用塗液中には、必要に応じて下記のワックス類、金属石鹸、有色染料、有色顔料、蛍光染料、撥油剤、消泡剤及び粘度調節剤等の助剤を含有させることができる。
【0038】
ワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバロウワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、及びポリエチレンワックス等のワックス類、並びに例えばステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体等を挙げることができる。
【0039】
金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0040】
感熱記録層は、一般に水を分散媒体とし、ボールミル、アトライター、サンドミル等の粉砕機によりロイコ染料と顕色剤をそれぞれ、必要に応じて増感剤及び保存安定剤と一緒または別々に、分散して得た分散液を用いて、更に接着剤、界面活性剤、必要により助剤とを混合することにより調製された感熱記録層用塗液を、支持体上に塗布及び乾燥することにより形成される。
【0041】
感熱記録層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、カーテンコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また、感熱記録層用塗液の塗布量は特に限定されず、固形分塗布量で1〜12g/m程度が好ましく、2〜10g/mがより好ましく、2.5〜5.5g/mが特に好ましい。なお、感熱記録層は必要に応じて2層以上に分けることができ、各層の組成、塗布量を変えることもできる。
【0042】
本発明では、保護層中に接着剤として、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有する。これにより、バリア性及び耐水性を高めることができる。また、保護層には、サーマルヘッドに対するスティッキングを防止する目的で、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸亜鉛のような滑剤を添加することが好ましく、紫外線吸収剤を含むこともできる。また光沢のある保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。
【0043】
保護層中のアセトアセチル変性ポリビニルアルコールの重合度は、1000〜3000が好ましく、1500〜3000がより好ましい。1000以上とすることにより、表面強度やバリア性を向上できる。一方、3000以下とすることにより、保護層用塗液の粘度を増加させることなく、塗布適性を高めて印字画質を向上できる。また、本発明の効果を損なわない範囲で水溶性バインダー及び/または合成樹脂エマルジョンを主成分とする水分散性バインダーを併用することもできる。
【0044】
水溶性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、及びカゼイン等の水溶性高分子が挙げられる。
【0045】
水分散性バインダーとしては、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリル化ウレタン、アクリル−シリコン複合体、及びアクリル−シリコン−ウレタン複合体等の疎水性重合体のラテックス等が挙げられる。
【0046】
接着剤の含有割合は、総計で、保護層の全固形量中10〜80質量%程度が好ましく、20〜75質量%程度がより好ましい。10質量%以上とすることにより、バリア性ばかりでなく、表面強度を高めて紙粉の発生を減少できる。一方、80質量%以下とすることにより、スティッキングを抑制できる。
【0047】
水溶性バインダーと水分散性バインダーを併用する場合、その使用比率は、水溶性バインダー100質量部に対して水分散性バインダーが5〜100質量部程度である。
【0048】
本発明における保護層は、各種の顔料を含有することができる。顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、無定形シリカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン等の無機顔料、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、生澱粉粒子等の有機顔料が挙げられる。なかでも、カオリン、水酸化アルミニウムは可塑剤や油等の薬品に対するバリア性の低下が少なく、しかも記録濃度の低下も小さいため、好ましい。
【0049】
顔料の含有割合は、保護層の全固形量中5〜80質量%程度であり、特に10〜70質量%程度の範囲が好ましい。5質量%以上とすることにより、サーマルヘッドとの滑りを向上し、スティッキングやヘッド粕を抑制できる。一方、80質量%以上とすることにより、バリア性を向上して、保護層としての機能を大幅に高められる。
【0050】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、保護層に架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、例えばグリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジド系化合物並びに過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、及び塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物または硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー等が挙げられる。
【0051】
助剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等の滑剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、スルホン変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムアセチレングリコール系化合物、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、エーテル型界面活性剤、或いはベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等の両性系界面活性剤等の界面活性剤、疎水性ポリカルボン酸共重合物、紫外線吸収剤、蛍光染料、着色染料、離型剤、酸化防止剤等が挙げられる。助剤の使用量は、広い範囲から適宜設定することができる。
【0052】
保護層は、一般に水を媒体とし、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、必要によりその他の接着剤、顔料、助剤を混合することにより調製された保護層用塗液を、感熱記録層上に塗布及び乾燥することにより形成される。
【0053】
保護層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、カーテンコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また、保護層用塗液の塗布量は特に制限はなく、乾燥重量で0.3〜10g/m程度、特に0.5〜8g/m程度であれば所望の品質を達成できる。なお、保護層は必要に応じて2層以上に分けることができ、各層の組成、塗布量を変えることもできる。
【0054】
本発明においては、支持体と感熱記録層との間に下塗り層を設けることもできる。下塗り層は、有機顔料及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種と接着剤を含有することができる。これにより、特に紙支持体において、感熱記録層用塗液の浸透を抑えて、均一な塗布面を形成でき、本発明の効果を遺憾なく発揮することができる。顔料及び接着剤としては、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。支持体上に下塗り層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、カーテンコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。下塗り層用塗液の塗布量としては、乾燥重量が1〜20g/m、好ましくは3〜12g/mの範囲で調整される。
【0055】
本発明における各塗液は、カーテンコーター法で同時多層塗布することもできる。これにより、感熱記録体の生産効率を高め、製造時の消費エネルギーをより低減させることができる。一方、逐次塗布においては、ポーラスな状態の感熱記録層中へ保護層用塗液が浸み込むため、保護層の塗布量を上げてバリア性を確保すると感度が低下する等の弊害を起こしてしまう。これに対して、同時多層塗布では層間混合を抑制できるので、より少ない塗布量でバリア性等の品質を向上することができる。ここで、同時多層塗布とは、2層以上の層を塗布するに際し、上下層を同時に塗布する方法であり、下層を塗布した後に乾燥することなく上層を塗布する方法を含む。
【0056】
カーテンコーター法とは、塗液を流下して自由落下させ支持体に非接触で塗布する方法であり、本発明においては、スライドカーテン法、カップルカーテン法、ツインカーテン法等の公知のものを採用することができ、特に制限されるものではない。また、特開2006−247611号公報に記載のように、カーテンヘッドから塗液を下向きに噴出させて斜面上で塗液層を形成させ、斜面の終端部の下向きのカーテンガイド部から塗液のカーテンを形成してウエブ面上に塗液層を移行させることもできる。
【0057】
本発明における支持体としては、例えば上質紙、アート紙、合成紙、PETフィルム、不織布中質紙、コート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等のほか、各種透明支持体等も適宜選択して使用することができる。
【0058】
本発明では、各層を形成し終えた後、また全ての層を形成し終えた後の任意の過程でスーパーカレンダーによる平滑化処理を施すこともできる。更に、本発明においては、感熱記録材料の付加価値を高めるために、加工を施し、より高い機能を付与した感熱記録材料とすることができる。
【0059】
例えば、製品の付加価値をより一層高めるため、多色感熱記録材料とすることもできる。一般に多色感熱記録材料は、加熱温度の差、または熱エネルギーの差を利用する試みであり、一般に、支持体上に異なる色調に発色する高温発色層と低温発色層を積層して構成されたものであって、これらを大別すると消色型と加色型の2種類、マイクロカプセルを用いた方法及び有機高分子とロイコ染料からなる複合粒子を使用して多色感熱記録材料を製造する方法がある。
【0060】
また、感熱記録層と反対側の裏面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等の塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙として使用することができる。或いは磁気加工を施すことにより裏面に磁気記録可能な層を有する感熱記録材料とすることもできる。特に、粘着加工、及び磁気加工を施したものは感熱ラベルや、感熱磁気乗車券等の用途に有用である。また、裏面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット用紙、ノーカーボン用紙、静電記録紙、ゼログラフィ用紙としての機能を付与し、両面記録が可能な記録体とすることもできる。勿論、両面感熱記録材料とすることもできる。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)を用いて体積平均粒子径を測定した。
【0062】
実施例1
・下塗り層用塗液の調製
吸油量110ml/100gの焼成カオリン40部、プラスチック中空粒子エマルジョン(商品名:AE852、固形分濃度26%、中空率80%、平均粒子径1.0μm、JSR社製)230部、接着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:L−1571、固形分濃度45%、旭化成社製)30部、完全鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA124、重合度2400、クラレ社製)の15%水溶液30部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)の5%水溶液2部、及び水60部からなる組成物を混合して下塗り層用塗液を得た。
【0063】
・ロイコ染料と増感剤の混合分散液(A液)の調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン25部、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン20部、スルホン変性ポリビニルアルコールの20%水溶液25部、及び水30部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が0.9μmになるまで粉砕してロイコ染料と増感剤の混合分散液を得た。得られた混合分散液を、以下、A液ともいう。
【0064】
・顕色剤分散液(B液)の調製
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン45部、スルホン変性ポリビニルアルコールの20%水溶液25部、及び水30部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が1.5μmになるまで粉砕して顕色剤分散液を得た。得られた顕色剤分散液を、以下、B液ともいう。
【0065】
・感熱記録層用塗液の調製
A液60部、B液70部、軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石化学工業社製)の60%水分散液10部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH42、昭和電工社製)の60%水分散液15部、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン2200、奥多摩工業社製)の60%水分散液10部、完全鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA−124、重合度2400、鹸化度98.5モル%、クラレ社製)の15%水溶液40部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、重合度:1000、日本合成化学工業社製)の15%水溶液15部、ステアリン酸亜鉛の30%水分散液10部、グリセリンエステル系エマルジョン型消泡剤(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製)5%水分散液5部、更にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)の10%水溶液5部、ポリアクリル酸ヒドラジド(平均分子量:20000、ヒドラジド化率:80モル%)の10%水溶液20部及び水90部からなる組成物を混合撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0066】
・保護層用塗液の調製
カオリン(商品名:UW−90、BASF社製)50部を水100部に分散して得られた分散物と、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ―410、重合度:2400、日本合成化学工業社製)の10%水溶液600部、ステアリン酸亜鉛の30%水分散液10部、更にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)の10%水溶液10部からなる組成物とを混合して保護層用塗液を得た。
【0067】
・感熱記録材料の作製
坪量60g/mの上質紙の片面に、下塗り層用塗液を乾燥後の塗布量が6g/mとなるように塗布及び乾燥し、その上に感熱記録層用塗液を4g/mとなるように塗布及び乾燥し、その上に保護層用塗液を3g/mとなるように塗布及び乾燥した後、スーパーカレンダー処理を行い、感熱記録材料を得た。
【0068】
実施例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ポリアクリル酸ヒドラジドのヒドラジド化率を80モル%に代えて50モル%とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0069】
実施例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ポリアクリル酸ヒドラジドの平均分子量を20000に代えて90000とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0070】
実施例4
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ポリアクリル酸ヒドラジドの10%水溶液の量を20部に代えて1部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0071】
実施例5
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ポリアクリル酸ヒドラジドの10%水溶液の量を20部に代えて0.5部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0072】
実施例6
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ポリアクリル酸ヒドラジドの10%水溶液の量を20部に代えて60部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0073】
実施例7
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、完全鹸化ポリビニルアルコールの15%水溶液の量を40部に代えて60部とし、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールの15%水溶液を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0074】
実施例8
実施例1の保護層用塗液の調製において、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ―410、重合度:2400、日本合成化学工業社製)の10%水溶液600部に代えて、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ―200、重合度:1000、日本合成化学工業社製)の15%水溶液400部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0075】
実施例9
実施例1の支持体を坪量60g/mの上質紙から、坪量90g/mの合成紙に変更し、下塗り層を塗布しない以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0076】
比較例1
実施例1の保護層用塗液の調製において、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールの10%水溶液に代えて、ジアセトン変性ポリビニルアルコール(商品名:DF−20、重合度:2000、日本酢ビ・ポバール社製)の10%水溶液とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0077】
比較例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ポリアクリル酸ヒドラジドの10%水溶液に代えて、アジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0078】
比較例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ポリアクリル酸ヒドラジドの10%水溶液を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
【0079】
かくして得られた感熱記録材料について、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0080】
(記録感度及び印字画質)
感熱記録用シミュレーター(TH−PMD、大倉電気社製)を用いて、印加エネルギー0.15mJ/dotにて記録した。ベタ記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。記録感度は、1.0以上が好ましく、0.9以上であれば実用上問題ないレベルである。また、ベタ記録部の印字画質を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:抜けがなく画質が極めて優れている。
○:抜けがほとんど見られず、画質が良好である。
△:抜けが見られるが、画質が実用レベルである。
×:抜けが著しく多く見られ、画質が悪く実用上問題である。
【0081】
(バリア性)
100%エタノールを感熱記録面に塗布し、地肌部のカブリを目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:かぶりが見られない。
○:若干のかぶりが見られるが良好。
△:かぶりが見られるが実用レベル。
×:かぶりが著しく見られ、実用上問題である。
【0082】
(耐水性)
感熱記録面に水を1滴滴下し、その直後に指で10回擦り、表面上の指の感触及び目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:表面の剥れがなく、ヌメリもない。
○:表面の剥れはないが、多少のヌメリがある。
△:ヌメリがあり、表面が少し剥がれるが実用レベルである。
×:ヌメリが酷く、塗布層が完全に剥れてしまい、実用上問題である。
【0083】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0084】
支持体上にロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層、並びに接着剤を含有する保護層を備えた感熱記録材料において、感熱記録層中にヒドラジド化率が40〜90モル%、且つ平均分子量が10000〜100000であるポリアクリル酸ヒドラジドを含有し、保護層中に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有することにより、バリア性及び耐水性に優れ、また、記録感度及び印字画質にも優れた感熱記録材料を提供でき、ファクシミリや各種プリンタの記録媒体としてのみならず、ラベルやハンディターミナル等の幅広い分野に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層、並びに接着剤を含有する保護層を備えた感熱記録材料において、感熱記録層中にヒドラジド化率が40〜90モル%、且つ平均分子量が10000〜100000であるポリアクリル酸ヒドラジドを含有し、保護層中に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸ヒドラジドの含有量が前記保護層中のアセトアセチル変性ポリビニルアルコール100質量部に対して0.2〜20質量部である、請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記保護層中のアセトアセチル変性ポリビニルアルコールの重合度が1000〜3000である、請求項1または2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
前記感熱記録層中にカルボニル基を含むポリビニルアルコールを含有し、前記カルボニル基を含むポリビニルアルコールの含有割合が感熱記録層の全固形量中1〜5質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項5】
前記カルボニル基を含むポリビニルアルコールがアセトアセチル変性ポリビニルアルコールである、請求項4に記載の感熱記録材料。
【請求項6】
支持体と感熱記録層の間に、有機顔料及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種と接着剤を含有する下塗り層を備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感熱記録材料。

【公開番号】特開2013−56484(P2013−56484A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196620(P2011−196620)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】