説明

感熱記録用顕色剤組成物及び該感熱記録用顕色剤組成物を含有する感熱記録材料

【課題】画像部の保存性、特に耐水性、耐湿熱性に優れ、さらに、未発色部の保存性、特に耐熱性に優れた感熱記録材料を得ることができる顕色剤組成物及び該顕色剤組成物を含有する感熱記録材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(a)を含有する感熱記録用顕色剤組成物であって、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下である感熱記録用顕色剤組成物、及び上記感熱記録用顕色剤組成物と、発色物質として無色又は淡色のロイコ染料とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェニルスルホン架橋型化合物からなる感熱記録用顕色剤組成物及び該感熱記録用顕色剤組成物を含有する感熱記録材料に関し、さらに詳しくは、本発明は、画像部及び未発色部の保存性に共に優れた感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に支持体上に電子供与性の無色若しくは淡色の染料前駆体と電子受容性の顕色物質とを主成分とする感熱発色層を設けたもので、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光などで加熱することにより、染料前駆体と顕色物質とが瞬時に反応し、記録が生じる。このような感熱記録材料は、古くより開発が進められ、例えば、通常は無色であるが、加熱又は赤外線照射により顕色する組成物として、ラクトン、ラクタム又はサルトン型の無着色染料ベースを用い、さらに有機酸及び熱可融性物質を塗布した熱感応複写シート(特許文献1)や、室温では固体のフェノール性物質が、サーモグラフ温度で液化又は気化することによりラクトンと反応して記録を生じさせる感熱記録材料(特許文献2)が提案されている。
【0003】
このような感熱記録材料は、比較的簡易な装置で記録が得られ、保守が容易であること、騒音の発生が少ないことなどの利点があり、各種携帯端末などのサーマルプリンター、超音波エコーなどに付属する医療画像プリンター、心電図や分析機器などのサーモペンレコーダー、航空券、乗車券、商品のPOSラベルなどに利用されている。
【0004】
感熱記録材料には、発色性に優れ、低熱量で高濃度に発色すること、得られた画像の保存性に優れること、未発色部の白度が保持されることなどのさまざまな特性が要求される。特に、電子レンジ加工食品ラベル、駐車券、配送ラベル、チケットなどは、記録画像の信頼性が特に重要であり、耐可塑剤性、耐湿熱性、耐熱性などの保存安定性が要求されるため、さまざまな化合物で顕色物質としての保存安定性が検討されている。
【0005】
例えば高感度で地肌のかぶりが少なく、記録像の保存性、とりわけ耐水性、耐可塑剤性に優れた感熱記録材料が得られる顕色物質として、α,α'−ビス[4−(p−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−p−キシレン、α,α'−ビス[4−(p−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−m−キシレン若しくはα,α'−ビス[4−(p−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−o−キシレンを含有する感熱記録材料が提案されている(特許文献3)。また、発色画像の保存安定性、特に耐可塑剤性、耐油性、耐光性、耐湿熱性に優れた感熱記録材料の顕色物質として、ジヒドロキシジフェニルスルホンとアルキレンジクロライドやα,α'−ジクロロキシレンなどとの反応物であるジフェニルスルホン架橋型化合物が例示されている(特許文献4)。しかしながら、これらの化合物は、未発色部の耐熱性が不十分であり、また、顕色物質の高保存性という要求が十分に満たされているとは言えない。本発明者は、画像部の保存安定性、特に耐湿熱性、耐油性に優れた感熱記録用顕色物質として、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、ジヒドロキシジフェニルスルホンに対して等モル以下の4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニルとの重縮合反応生成物であるジフェニルスルホン架橋型化合物の使用を提案(特許文献5)したが、耐水性、耐湿熱性にさらに優れた効果を有する顕色剤の開発が求められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭43−4160号公報
【特許文献2】特公昭45−14039号公報
【特許文献3】特開平7−149713号公報
【特許文献4】特開平10−29969号公報
【特許文献5】特開2008−280283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、画像部の保存性、特に耐水性、耐湿熱性に優れ、さらに、未発色部の保存性、特に耐熱性に優れた感熱記録材料を得ることができる顕色剤組成物及び該顕色剤組成物を含有する感熱記録材料の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、検討を重ねた結果、感熱記録用顕色剤組成物として有用なジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニルとの重縮合反応生成物は、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(a)と、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)と、未反応のジヒドロキシジフェニルスルホンとを含有し、このうち、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)が、画像部の耐水性、耐湿熱性を劣化させ、画像濃度を低下させる原因物質であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
【化1】

すなわち、本発明は、
[1]下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(a)を含有する感熱記録用顕色剤組成物であって、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下であることを特徴とする感熱記録用顕色剤組成物、
【化2】

[2]上記[1]項に記載の感熱記録用顕色剤組成物と、発色物質として無色又は淡色のロイコ染料とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなることを特徴とする感熱記録材料、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像部の保存性、特に、耐水性、耐湿熱性に優れ、さらに未発色部の保存性、特に耐熱性に優れた感熱記録用顕色剤組成物を提供することができ、さらに該感熱記録用顕色剤組成物を用いてなる感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の感熱記録用顕色剤組成物(以下、単に「顕色剤組成物」と称することがある。)について説明する。
[顕色剤組成物]
本発明の顕色剤組成物は、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(a)を含有する感熱記録用顕色剤組成物であって、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下であることを特徴とする。
【0012】
【化3】

本発明の顕色剤組成物は、ジフェニルスルホン架橋型化合物(a)、副生成物であるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)、及び未反応のジヒドロキシジフェニルスルホンの混合物を含む。上記ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することができる。
このような成分を含む本発明の顕色剤組成物は、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニルとの反応により得ることができる。
なお、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)は、ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニルとの等モル反応物のメチレンハライド基が加水分解することにより生成したものと考えられる。
【0013】
本発明の顕色剤組成物が優れた耐水性、耐湿熱性を有するものであるためには、耐水性、耐湿熱性劣化の原因物質であるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下であることを要する。ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%を超える顕色剤組成物を用いた感熱記録材料においては、画像部の耐水性、耐湿熱性が不十分となり、画像部の濃度低下を生じる。この作用機構の詳細は不明であるが、アルコール性水酸基を有するジフェニルスルホン架橋型化合物(b)は、両末端基がフェノール性水酸基のジフェニルスルホン架橋型化合物(a)に比べて、水との親和性が強く、水に溶解し易いため、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)を含有することにより感熱熱記録材料の耐水性及び耐湿熱性が弱まり、画像部の濃度が低下するものと考えられる。なお、一般式(2)において、nは1又は2の整数である。nが3以上のジフェニルスルホン架橋型化合物(b)は水溶性が低いため、顕色剤組成物中に混在しても、画像部の耐水性、耐湿熱性に与える影響は無視しうると考えられる。
【0014】
(ジフェニルスルホン架橋型化合物)
本発明の顕色剤組成物におけるジフェニルスルホン架橋型化合物は、ジヒドロキシジフェニルスルホンと、4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニル(ハロメチルとしては、クロロメチル又はブロモメチルが好ましい)とを、溶媒及び塩基性物質の存在下、脱ハロゲン化水素反応させることにより製造することができる。反応温度としては50℃以上、溶媒の還流温度以下であることが好ましい。用いるジヒドロキシジフェニルスルホンとしては、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、及び、これらの混合物を挙げることができる。これらの中で、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、画像部の保存性に優れ、さらに、未発色部の耐熱性を有する顕色剤組成物を得ることができるので特に好適に用いることができる。
【0015】
前記反応系で用いることができる塩基性物質として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジンなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基性物質の使用量は、用いる反応溶媒により重合様式が異なるため適宜選択する必要があるが、4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニルの2.0〜3.0モル倍であることが好ましく、2.1〜2.6モル倍であることがより好ましい。塩基性物質の使用量が前記未満では反応率が低下するおそれがある。一方、前記上限を上回る塩基性物質を使用しても、反応性が変わらないばかりか、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の副生量が増加するおそれがある。
【0016】
前記反応系で用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;グリコール類のモノアルキルエーテル類;グリコール類のジアルキルエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン等のエステル類;N−メチルホルムアミド、N、N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族系炭化水素類、及びこれらの混合溶媒を挙げることができるが、さらに、水とアルコール類との混合溶媒又は水と芳香族炭化水素類との混合溶媒を用いることもできる。水との混合溶媒として用いるアルコール類としては、イソプロパノール、エタノール、メタノールが好ましく、特にイソプロパノールが好ましい。水とアルコール類との混合溶媒を用いる場合、重合反応終了後、アルコールを留去し、結晶をろ別することにより、反応により生成したハロゲン化水素の塩基性物質による中和物、例えば塩化ナトリウムなどは水に溶解させることができ、効率よく反応生成物と分離することができる。本発明の顕色剤組成物が、ナトリウムやカリウムのような金属イオンを1000質量ppmを超えて含有すると、該化合物を用いた感熱記録材料の耐水性が低下したり、感熱記録材料を印刷する際にヘッドが摩耗したりすることがあるので、金属分の管理は重要である。
【0017】
ジフェニルスルホン架橋型化合物の製造において、ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニルとのモル比は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミドのように反応生成物が溶解する溶媒を用いた場合と、水とアルコール類との混合溶媒を用いた場合とでは、重合様式が異なるため適宜選択する必要がある。水とアルコール類の混合溶媒を用いた場合、該反応モル比は10:2〜10:6であることが好ましい。水とアルコール類との混合溶媒を用いることにより、一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(a)の溶解度が下がり、mの値が大きいほど析出し易くなるため、m=3以上の重合反応は進行が特に遅くなり、mが6以下のジフェニルスルホン架橋型化合物(a)を効率よく得ることができる。ジヒドロキシジフェニルスルホンに対する4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニルの量が前記下限値未満であると、反応混合物中の未反応のジヒドロキシジフェニルスルホンの量が増加するおそれがある。ジヒドロキシジフェニルスルホンに対する4,4'−ビス(ハロメチル)ビフェニルの量が前記上限値を超えると、反応生成物中のジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の副生量が多くなるおそれがあるので好ましくない。
【0018】
ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)は、メチレンハライド基の加水分解により生じるため、水とアルコール類との混合溶媒を用いることによりジフェニルスルホン架橋型化合物(b)を生成するおそれがある。しかし、水とアルコール類との混合溶媒を用いることにより、反応生成物と塩化ナトリウム等のハロゲン化水素中和塩とを効率よく分離でき、さらに、一般式(1)においてmが6以下のジフェニルスルホン架橋型化合物(a)を効率よく得ることが可能となる。そのため、重縮合反応を水とアルコール類との混合溶媒中で実施し、反応生成物中のジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下であれば、そのまま本発明の感熱記録用顕色剤組成物として用い、加水分解により生じたジフェニルスルホン架橋型化合物(b)が、反応生成物の3質量%を超える場合には、これを洗浄により除去する方法が、ジフェニルスルホン架橋型化合物(a)を含有し、且つジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下の顕色剤組成物を効率的よく得る方法として有効である。
【0019】
ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%を超える顕色剤組成物は、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)を溶解し、ジフェニルスルホン架橋型化合物(a)は溶解しないか、ほとんど溶解しない有機溶媒を用いて精製することにより、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下の顕色剤組成物とすることができる。
このような目的に用いる有機溶媒として、炭素数1〜4の分岐あるいは直鎖アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなどを挙げることができる。これらの有機溶媒は単独で用いることができ、2種以上を混合して用いることもできる。中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノールはジフェニルスルホン架橋型化合物(b)を選択的に溶解するため好ましく用いることができる。
【0020】
有機溶媒の使用量は、顕色剤組成物に対して、質量比で3〜10倍量であることが好ましい。有機溶媒の量が前記下限値より少ないとスラリー粘度が高くなり過ぎて、ろ過及び洗浄に支障を来すおそれがあり、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)を十分に除去できない場合がある。一方、前記上限値を超えて有機溶媒を添加しても洗浄効果は変わらず、経済性が損なわれるおそれがある。ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下の顕色剤組成物は、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%を超える顕色剤組成物に、前記比率の有機溶媒を加え、好ましくは60℃〜還流温度に加熱して混合の後、25℃〜40℃程度まで冷却して、これをろ過し、必要に応じ、前記溶媒を用いてろ過残渣をさらに洗浄した後、乾燥することにより得ることができ、必要に応じて、この操作を繰り返すことができる。前記洗浄時の加熱温度が60℃未満ではジフェニルスルホン架橋型化合物(b)が有機溶剤に十分溶解しないおそれがあり、前記ろ過温度が25℃未満まで下がると、有機溶媒に溶解したジフェニルスルホン架橋型化合物(b)が再析出し、分離できなくなるおそれがある。前記精製操作を、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下の顕色剤組成物に対して実施し、顕色剤組成物中のジフェニルスルホン架橋型化合物(a)の純度を高めることもできる。
【0021】
次に、本発明の感熱記録材料について説明する。
[感熱記録材料]
本発明の感熱記録材料は、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下である本発明の感熱記録用顕色剤組成物と、無色又は淡色のロイコ染料からなる発色物質とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなるものである。
【0022】
(発色物質)
本発明において、感熱発色層に含有させる発色物質として用いる無色又は淡色のロイコ染料に特に制限はなく、例えば、フルオラン誘導体、キナゾリン誘導体、フタリド誘導体、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。これらのロイコ染料の中で、フルオラン誘導体は、発色性が良好なので特に好適に用いることができる。
【0023】
フルオラン誘導体であるロイコ染料としては、例えば、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2',4'−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−エチル−N−(4−メチルフェニル)]アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−ペンチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−ヘキシル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチル−N−ブチルアミノ−7−(2'−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−クロロフルオラン、3−ピロジリル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2'−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(2'−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ブチルアミノ−7−(2'−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオランなどを挙げることができる。
これらのロイコ染料は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良く、また感熱発色層に含有させる発色物質の量は、目的とする感熱記録材料の特性に応じて、適宜選択することができる。
【0024】
(顕色物質)
本発明は、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下のジフェニルスルホン架橋型化合物を顕色剤組成物として用いるものであるが、従来公知の顕色物質を併用して用いることもできる。本発明の顕色剤組成物と従来公知の顕色物質とを併用することにより、公知の顕色物質の発色性を損なうことなく、画像部の保存性と未発色部の保存性をより向上させることが可能となる。
【0025】
併用できる顕色物質に特に制限はなく、例えば、α−ナフトール、β−ナフトール、4−オクチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,5−ジプロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルペンタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,6−ビス(4−ヒドロキベンゾイルオキシメチル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(2−ヒドロキシ−4−クロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4'−ヒドロキベンゾイルオキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキベンゾイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(3'−ヒドロキベンゾイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2'−ヒドロキベンゾイルオキシ)シクロヘキサン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエン、4,4'−チオビスフェノール、4,4'−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−クロロフェノール)、4,4'−チオビス(6−t−ブチル−2−メチルフェノール)、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘブタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、4,4'−ジフェノールスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3'−ジアリル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−イソプロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−エトキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−メチル−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−メチル−3',4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス−2,4(フェニルスルホニル)フェノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンジエチルエーテル縮合物、4,4'−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、N−(p−トルエンスルホニル)−N'−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素、N−(4'−ヒドロキシフェニルチオ)アセチル−2−ヒドロキシアニリン、N−(4'−ヒドロキシフェニルチオ)アセチル−4−ヒドロキシアニリン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシフタル酸ジベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、5−ヒドロキシイソフタル酸エチル、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチル、N,N'−ジフェニルチオ尿素、N,N'−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N'−(3−p−ブトキシフェニル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N'−(p−ブトキシフェニル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N'−フェニル尿素、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などを本発明の顕色剤組成物に併用することができる。
【0026】
(増感剤)
本発明の感熱記録材料には、必要に応じて、感熱発色層に増感剤を含有させることができる。用いることができる増感剤に特に制限はないが、感熱記録材料に一般的に用いられている増感剤として、例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(3−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(4−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、2−ベンジルオキシナフタレン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(4−メチルベンジル)、シュウ酸ジ(4−クロロベンジル)、4−アセチルベンジル、N−フェニルトルエンスルホンアミド、トルエンスルホン酸ナフチル、p−ベンジルビフェニル、m−テルフェニル、4,4'−ジプロポキシジフェニルスルホン、4,4'−ジイソプロポキシジフェニルスルホン、4,4'−ジアリルオキシジフェニルスルホン、2,4'−ジプロポキシジフェニルスルホン、2,4'−ジイソプロポキシジフェニルスルホン、2,4'−ジアリルオキシジフェニルスルホン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、テレフタル酸ベンジルなどを挙げることができる。これらは単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
(画像安定剤)
本発明の感熱記録材料においては、感熱発色層にさらに画像安定化剤を含有させることができる。用いる画像安定化剤に特に制限はなく、例えば、4−ベンジルオキシ−4'−(2−メチルグリシジルオキシ)−ジフェニルスルホン、4,4'−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチル−4,4'−スルホニルジフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、ポリヒドロキシ安息香酸などのポリエステル構造を有する化合物、ウレアウレタンなどのウレタン構造を有する物質、ポリ(フェニルスルホン)エーテルなどのポリエーテル構造を有する物質などを挙げることができる。これらの画像安定化剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
(填料、その他添加剤)
本発明の感熱記録材料においては、必要に応じて、感熱発色層に填料を含有させることができる。用いる填料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、クレー、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、表面処理されたシリカなどの無機填料や、ポリスチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、シリコーン樹脂粒子、セルロース粉末、スチレン/メタクリル酸共重合体粒子、塩化ビニリデン系樹脂粒子、スチレン/アクリル共重合体粒子、プラスチック球状中空微粒子などの有機填料などを挙げることができる。これらの填料は1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
本発明の感熱記録材料においては、必要に応じて、他の添加剤を感熱発色層に含有させることができる。含有させる添加剤としては、例えば、ステアリン酸エステルワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸亜鉛などの滑剤、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール系紫外線吸収剤、グリオキザールなどの耐水化剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料などを挙げることができる。
【0030】
(感熱記録材料の製造)
本発明の感熱記録材料の製造方法に特に制限がなく、例えば、発色物質、顕色物質、及び必要に応じて添加する増感剤、画像安定化剤、その他の成分を適当な結合剤とともに、水媒体などの媒体中に分散させて感熱発色層の塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に塗布し、乾燥することにより製造することができる。発色物質、顕色物質、増感剤を含有する分散液は、発色物質を含有する分散液、顕色物質を含有する分散液及び増感剤を含有する分散液をそれぞれ個別に調製したのち、これらの分散液を混合することにより調製することが好ましい。各分散液中において、発色物質、顕色物質及び増感剤は、微粒子化して分散していることが望ましいので、これらの分散液の調製には、サンドミル、ボールミルなどを用いることが好ましい。
【0031】
<結合剤>
使用する結合剤に特に制限はなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メトキシセルロース、エチルセルロースル、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール頬;ゼラチン、カゼイン、澱粉、アルギン酸などの天然高分子類;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール/アクリルアミドブロック共重合体、ポリビニルピロリドン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂などを挙げることができる。これらの結合剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0032】
(支持体、アンダーコート層、バックコート層)
本発明の感熱記録材料に使用する支持体には特に制限はなく、例えば、中性紙や酸性紙などの紙、合成紙、古紙パルプを用いた再生紙、フィルム、不織布、織布などを挙げることができる。
本発明の感熱記録材料においては、支持体上に、さらに、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、クレー、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、表面処理されたシリカなどの無機填料や、ポリスチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、シリコーン樹脂粒子、セルロース粉末、スチレン/メタクリル酸共重合体粒子、塩化ビニリデン系樹脂粒子、スチレン/アクリル共重合体粒子、プラスチック球状中空微粒子などの有機填料などを含むアンダーコート層やバックコート層を設けることが好ましい。アンダーコート層やバックコート層を設けることにより、断熱層として作用し、サーマルヘッド等からの熱エネルギーの効率的活用による感度向上をもたらすことができる。特に、プラスチック球状中空微粒子を含むアンダーコート層やバックコート層は、熱感度を効果的に向上させることができるので好適に用いられる。
【0033】
なお、プラスチック球状中空微粒子とは、熱可塑性樹脂を殻としており、内部に空気その他の気体を含有してすでに発泡状態となっている微小中空粒子であり、平均粒子径は0.2〜20μm程度のものである。この平均粒子径(粒子外径)が0.2μmより小さいものは、任意の中空率にすることが難しいなどの生産上の問題があってコスト面で難点があり、逆に20μmより大きいものは塗布乾燥後の表面平滑性が低下するためにサーマルヘッドとの密着性が低下し、熱感度向上効果が低下する。したがって、該粒子は粒子径が前記範囲にあると共に粒子径のバラツキが少ないものが好ましい。さらにこのプラスチック球状中空粒子は、その断熱効果を勘案すると中空率は、40%以上のものが好ましく、90%以上のものがさらに好ましい。中空率が低いものは、断熱効果が不充分なためサーマルヘッドからの熱エネルギーが支持体を通じて感熱記録材料の外へ放出され、熱感度向上効果が劣る。なお、ここで言う「中空率」とは、中空微粒子の外径と内径の比であり、下記で表されるものである。
中空率(%)=[(中空微粒子の内径)/(中空微粒子の外径)]×100
プラスチック球状中空微粒子は、前記したように熱可塑性樹脂を殻とするものであるが、該樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエンあるいはそれらの共重合体樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に塩化ビニリデンとアクリロニトリルを主体とする共重合体樹脂が好ましい。
【0034】
アンダーコート層やバックコート層に使用する結合剤に特に制限はなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メトキシセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;ゼラチン、カゼイン、澱粉、アルギン酸などの天然高分子類;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール/アクリルアミドブロック共重合体、ポリビニルピロリドン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂などを挙げることができる。
【0035】
本発明の感熱記録材料においては、さらに必要に応じて、感熱発色層の上に、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール類などの水溶性樹脂や、スチレン−ブタジエン共重合体、テルペン樹脂などの水溶性エマルジョンや非水溶性樹脂、それらの樹脂に填料、イソシアネート類、不飽和化合物などのモノマーやオリゴマーと架橋剤を加えてオーバーコート層を形成することができる。
本発明の感熱記録材料は、色調の異なる発色物質をそれぞれ感熱発色層として多層形成した多色感熱記録材料とすることができる。
【実施例】
【0036】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
なお、実施例において、反応物組成及び化合物組成は、以下の条件にて測定した。
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件)
クロマトグラフ:東ソー(株)製、「HLC−8020」
カラム:昭和電工(株)製、「KF802」に東ソー(株)製、「TSK gel G3000H×L」を2本直列に接続。
カラム温度:50℃
移動相:ジメチルホルムアミド
流量:1.0ml/分
検出器:RI
(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定条件)
クロマトグラフ:(株)島津製作所製、「SPD−10AVP」
カラム:(株)島津ジーエルシー製、「Shim−Pack CLC−ODS」
φ6.0mm×0.15m
カラム温度:50℃
移動相:50質量%アセトニトリル水(0.3質量%リン酸)
流量:1.0ml/分
検出器:UV(254nm)
【0037】
また、実施例及び比較例において、作製した感熱記録材料の効果は、次の方法により評価した。
(1)耐水性
作製した感熱記録材料に、感熱印字装置[(株)大倉電気製]を用いて、印字電圧20V、パルス巾3msで発色させ、発色させた部分(画像部)の色濃度を反射濃度計[マクベス社製、「RD−918」]を用いて測定した。次に、20℃の水に24時間浸漬したのち20℃、65%RHで2時間風乾し、画像部の色濃度を測定し、次式により保存率を求めた。
保存率(%)=[(試験後の色濃度/試験前の色濃度)]×100
(2)耐湿熱性
作製した感熱記録材料に、感熱印字装置[(株)大倉電気製]を用いて、印字電圧20V、パルス巾3msで発色させ、発色させた部分(画像部)の色濃度を反射濃度計[マクベス社製、「RD−918」]を用いて測定した。次に、60℃、相対湿度80%で24時間放置したのち、画像部の色濃度を測定し、次式により保存率を求めた。
保存率(%)=[(試験後の色濃度/試験前の色濃度)]×100
(3)耐熱性
作製した感熱記録材料の、発色させていない部分(未発色部)の色濃度を反射濃度計[マクベス社製、「RD−918」]を用いて測定した。次に90℃又は100℃で24時間放置した後、色濃度を測定した。
【0038】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン[日華化学社製、商品名「BPS−P(T)」]100g、イソプロパノール200gを入れ、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンを溶解させた。続いて、水酸化ナトリウム24gを溶解した水溶液300gを加え、60℃まで加熱した後、4,4'−ビス(クロロメチル)−1,1'−ビフェニル50gを添加し、加熱還流状態で3時間撹絆した。その後、水酸化ナトリウム4gを追加し、さらに2時間撹拌した。次いで、50℃まで冷却して希塩酸水溶液を滴下し中和した後、再度加熱し、イソプロパノールを留去した。60℃で結晶を減圧ろ過し、60℃の熱水100gで結晶を洗浄した。得られた結晶にメタノール50gと水250gを加え、1時間加熱還流後、40℃まで冷却し、減圧ろ過により結晶を単離した。乾燥したところ白色の反応生成物98gが得られた。
この反応生成物の組成をゲルパーミエーションクロマトグラフィー[東ソー社製]で測定し、次の組成であることを確認した。
【0039】
【化4】

m=0:保持時間 28.6分:ピーク面積比(%) 3
m=1:保持時間 26.0分:ピーク面積比(%) 42
m=2:保持時間 24.5分:ピーク面積比(%) 22
m=3:保持時間 23.5分:ピーク面積比(%) 8
m=4:保持時間 22.7分:ピーク面積比(%) 7
m=5:保持時間 22.1分:ピーク面積比(%) 7
m=6:保持時間 21.6分:ピーク面積比(%) 6
【0040】
【化5】

HPLCによる上記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の測定でn=1のリテンションタイムは、9.2分、n=2のリテンションタイムは15.3分であった。また、合成例1の反応生成物をHPLCで測定した結果、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有率は、4.5質量%であった。単離したジフェニルスルホン架橋型化合物(b)を1H−NMR(使用溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド)で測定し、5.2ppmに(−CH2O−)のシングレットピークを、4.6ppmに(−CH2OH)のシングレットピークを、6.7〜7.8ppmに(Aromatic ring−H)のピークを確認した。
【0041】
実施例1(メタノールによる洗浄)
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、合成例1で得た結晶の乾燥物50gとメタノール250gを加え、加熱還流状態で3時間撹絆した。35℃まで冷却し、結晶を減圧ろ過し、メタノール50gで結晶を洗浄した。これを乾燥して白色結晶45gを得た。この結晶中の一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有率は1.2質量%であった。
【0042】
実施例2(イソプロパノールによる洗浄)
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、合成例1で得た結晶の乾燥物50gとイソプロパノール250gを加え、加熱還流状態で3時間撹拌した。35℃まで冷却し、結晶を減圧ろ過し、イソプロパノール50gで結晶を洗浄した。これを乾燥して白色結晶45gを得た。この結晶中の一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有率は2.5質量%であった。
【0043】
実施例3
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液10質量部、水30質量部を、サンドミルを用いて4時間微粉砕して分散させることにより、発色物質分散液(A液)を調製した。実施例1で得られた白色結晶10質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液10質量部、水30質量部を、サンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させることにより、顕色物質分散液(B液)を調製した。シリカゲル[水沢化学(株)製、「P527」]10質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液10質量部、水30質量部を、サンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させることにより、シリカゲル分散液(C液)を調製した。ステアリン酸亜鉛10質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液10質量部、水30質量部を、サンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させることにより、ステアリン酸亜鉛分散液(D液)を調製した。非発泡性プラスチック微小中空粒子(固形分24質量%、平均粒径3μm、中空度90%)40質量部、スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス[日本ゼオン(株)製、「Nipol(登録商標)LX438C」]10質量部、水50質量部を、ディスパーを用いて撹絆混合させることにより、樹脂液(E液)を調製した。
次に、A液5質量部、B液20質量部、C液20質量部及びD液2.5質量部を、ディスパーを用いて撹拌混合し発色層の塗布液を調製した。また、C液5質量部及びE液10質量部を、ディスパーを用いて撹絆混合しアンダーコート層の塗布液を調製した。
坪量60g/m2の上質紙に、アンダーコート層の塗布液を乾燥塗布量が3g/m2となるように塗布し、乾燥してアンダーコート塗布紙を得た。このアンダーコート層上に、発色層の塗布液を乾燥塗布量が5g/m2となるように塗布し、乾燥し、0.98MPaの圧力でカレンダー処理して本発明の感熱記録材料を作製し、評価を行った。
【0044】
実施例4
実施例1で得られた白色結晶10質量部の代わりに、実施例2で得られた白色結晶10質量部を用いて顕色物質分散液(B液)を調製した以外は、実施例3と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。
【0045】
比較例1
実施例1で得られた白色結晶10質量部の代わりに、合成例1で得られた反応生成物10質量部を用いて顕色物質分散液(B液)を調製した以外は、実施例3と同様にして感熱記録材料を作製し、評価を行った。
実施例3、4及び比較例1の感熱記録材料の評価結果を第1表に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
水の存在下での重縮合反応生成物は、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)を含有するが、メタノール、エタノール又はイソプロパノールで洗浄することにより、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量を下げることが可能であり、特にメタノールでの洗浄効果が良好であった。
また、第1表に示すとおり、実施例3(化合物(b)含有量:1.5質量%)と実施例4(化合物(b)含有量:2.4質量%)の画像部の耐水性、耐湿熱性及び未発色物の耐熱性は、共に良好であり、両者間に効果の差が認められないことから、ジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下であれば、ジフェニルスルホン架橋型化合物(a)を含有する顕色剤組成物を用いた感熱記録材料は、一定の耐水性、耐湿熱性を示すことが確認された。このような顕色剤組成物は、未発色部(地肌)の保存安定性にも優れている。それに対して、顕色剤組成物中のジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%を超える比較例1(化合物(b)含有量:4.5質量%)は画像部の耐水性、耐湿熱性に劣り、実施例3、4の効果と比較して顕著な差が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の感熱記録材料は、画像部の耐水性、耐湿熱性に優れるので、印刷後に水分や湿熱がかかる環境下、例えば、電子レンジ加熱食品ラベル、駐車券、配送ラベルなどに使用されても、記録された情報を安定して保持することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(a)を含有する感熱記録用顕色剤組成物であって、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(b)の含有量が3質量%以下であることを特徴とする感熱記録用顕色剤組成物。
【化1】

【請求項2】
請求項1に記載の感熱記録用顕色剤組成物と、発色物質として無色又は淡色のロイコ染料とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなることを特徴とする感熱記録材料。

【公開番号】特開2011−56793(P2011−56793A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208998(P2009−208998)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】