説明

懸垂搬送装置

【課題】 物品を吊り下げた状態で搬送可能とすると共に搬送する物品をアキュムレート可能とし、さらに、磨耗粉等を生じずにクリーンな環境で物品を搬送可能とする懸垂搬送装置を提供することである。
【解決手段】 水平方向に配設される駆動プーリと従動プーリと前記プーリ間に懸架される無端ベルトとをそれぞれ備える搬送手段10A、10Bを、同一速度で同一方向に走行するベルト面を相対向して所定間隔離反して併設すると共に、前記相対向するベルト面にそれぞれ、上部に平面状突出部3aを備えるアタッチメント部材3を装着し、相対向する前記アタッチメント部材の前記平面状突出部3aに前記物品の一部を載置して物品本体を吊り下げた状態で搬送する構成の懸垂搬送装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を吊り下げた状態で搬送する懸垂搬送装置に関し、特に、搬送する物品をアキュムレート可能とすると共に、磨耗粉等を生じずにクリーンな環境で物品を搬送可能とする懸垂搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を吊り下げた状態で搬送する装置として、一対の搬送チェーンの間にボトルのネック部を保持して搬送する搬送チェーン装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記の搬送チェーン装置では、チェーンの各ピースに取り付けられた低摩擦材で物品を保持している。しかしながら、チェーンを用いているので、チェーンとスプロケット、あるいは、チェーンリンク部で磨耗粉が発生し、医療関連物品や食関連物品等の異物混入を嫌う物品を搬送することは好ましくない。
【0003】
【特許文献1】特開平10−35847号公報(第1−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吊り下げた状態で搬送すると姿勢が安定し、搬送が容易となる物品がある。例えば、円筒形状の本体胴部にフランジを有するシリンジの場合は、幅広のフランジ部を利用して吊り下げた状態で搬送することができる。
また、多数のシリンジを連続して搬送し、次の工程に順次供給する際には、一時貯留したり搬送を停止する必要も生じる場合がある。そのために、吊り下げた状態で連続して搬送可能であると共に、そのままの姿勢で自動的にアキュムレート可能な搬送装置であることが好ましい。
【0005】
さらには、シリンジは医療関連物品であるので、搬送中に異物が混入しないことが肝要である。
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、物品を吊り下げた状態で搬送可能とすると共に搬送する物品をアキュムレート可能とし、さらに、磨耗粉等を生じずにクリーンな環境で物品を搬送可能とする懸垂搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、相対向して配設される一対の搬送手段間に物品を吊り下げた状態で保持して搬送する懸垂搬送装置であって、水平方向に配設される駆動プーリと従動プーリと前記プーリ間に懸架される無端ベルトとをそれぞれ備える搬送手段を、同一速度で同一方向に走行するベルト面を相対向して所定間隔離反して併設すると共に、前記相対向するベルト面にそれぞれ、上部に平面状突出部を備えるアタッチメント部材を装着し、相対向する前記アタッチメント部材の前記平面状突出部に前記物品の一部を載置して物品本体を吊り下げた状態で搬送することを特徴としている。
【0007】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、相対向して同一方向に同一速度で走行する前記アタッチメント部材の平面状上部に物品の一部を載置して本体を吊り下げた状態で搬送することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記一対の搬送手段の搬送方向出口側において、一方の搬送手段を長くして突出させ、突出した搬送手段と協働して前記物品を搬送するフィードスクリューを前記ベルト面に対向して並行して配設すると共に、前記一対の搬送手段の下流側の前記平面状突出部のそれぞれの延長線上に略連続するように、物品を吊り下げ状態に支持するガイドプレートをそれぞれ配設したことを特徴としている。
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、一対の搬送手段の搬送方向出口側でも、フィードスクリューを回転駆動することで、物品を連続して吊り下げ状態で搬送することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、それぞれのベルトの走行位置を規制するベルトガイドをそれぞれのベルトの裏面側に設けて、相対向する前記アタッチメント部材間の離間距離を一定としていることを特徴としている。
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、相対向する前記アタッチメント部材間の離間距離を、搬送する物品に対応した適当な距離に設定可能であり、物品を安定して吊り下げ状態で搬送することができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記物品がシリンジであって、円筒胴部のシリンジバレルと該バレルの先端部に形成されるフランジを有しており、前記離間距離を、前記シリンジバレルは挿通自在であるが前記フランジは挿通不可とする程度とし、前記フランジを前記アタッチメント部材の平面状上部に載置して、前記シリンジバレルを吊り下げた状態で搬送することを特徴としている。
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、シリンジのフランジ部を相対向するアタッチメント部材に載置して、バレル部をアタッチメント部材間に吊り下げた状態に支持するので、シリンジを搬送手段から落下することなく、安定した姿勢を保ったまま搬送することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記無端ベルトが歯付きベルトであり、前記アタッチメント部材が前記歯付きベルトの1歯分のピッチごとに分断されて前記ベルトにネジ止めされており、隣接するアタッチメント部材同士が非接触状態となる程度の幅寸法とされていることを特徴としている。
上記の構成を有する請求項5に係る発明によれば、搬送手段を駆動しても、アタッチメント部材同士が擦れ合わず磨耗粉が生じないので、シリンジ等の医療関連物品をクリーンな状態で搬送することが可能となる。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記アタッチメント部材が低摩擦材料から形成されていることを特徴としている。
上記の構成を有する請求項6に係る発明によれば、低摩擦状態で吊り下げた構成となっているので、搬送する物品を停止させても、停止される物品と走行するアタッチメント部材間で滑りが発生し、互いに磨耗しないので、物品をアキュムレートすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記したように本発明によれば、上部に平面状突出部を備えるアタッチメント部材を装着して、相対向して同一方向に同一速度で走行する前記アタッチメント部材の平面状上部に物品の一部を載置して本体を吊り下げた状態で搬送する構成としたので、物品を吊り下げた状態で搬送可能とすると共に搬送する物品をアキュムレート可能とし、さらに、磨耗粉等を生じずにクリーンな環境で物品を搬送可能とする懸垂搬送装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る懸垂搬送装置の実施の形態について、図1から図4に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る懸垂搬送装置の要部拡大図を示している。図2は本発明に係る懸垂搬送装置の全体平面図を示し、図3は概略側面図を示している。図4は要部の拡大平面図である。
【0015】
図1に示すように、懸垂搬送装置1は物品を吊り下げた状態で搬送する装置であり、例えば、前記物品として、シリンジバレル2Aとフランジ2Bを有するシリンジ2を吊り下げた状態で搬送することができる。
この時に、搬送ベルトとなる無端ベルト4の外周部にアタッチメント部材3を装着して、該アタッチメント部材3に前記フランジ2Bを載置するようにしている。つまり、無端ベルト4が直接シリンジ2を保持して搬送するのではなく、前記無端ベルト4に装着されるアタッチメント部材3がシリンジ2を保持する構成である。
前記アタッチメント部材3はその上部に平面状突出部3aを備えており、相対向して配設される一対の前記アタッチメント部材3のそれぞれの平面状突出部3a間に渡って前記フランジ2Bが載置されている。また、相対向するアタッチメント部材3によりシリンジ2を保持して搬送するよう、相対向するアタッチメント部材3を同一方向に同一速度で走行させる構成としている。
【0016】
図2に示す平面図から明らかなように、本発明に係る懸垂搬送装置1は、相対向して配設される一対の搬送手段間に物品を吊り下げた状態で保持して搬送する装置であって、水平方向に配設される駆動プーリ5Aと従動プーリ5Bと前記プーリ間に懸架される無端ベルト(例えば歯付きベルト4A)とをそれぞれ備える搬送手段10A、10Bを、同一速度で同一方向に走行するベルト面を相対向して所定間隔離反して併設している。そして、前記相対向するベルト面にそれぞれ、上部に平面状突出部3aを備えるアタッチメント部材3を装着し、相対向する前記アタッチメント部材の前記平面状突出部3aに前記物品の一部を載置して物品本体を吊り下げた状態で搬送している。
また、前記一対の搬送手段10A、10Bの搬送方向出口側において、一方の搬送手段10Aを長くして突出させ、突出した搬送手段10Aと協働して前記物品を搬送するフィードスクリュー8を前記ベルト面に対向して並行して配設している。この際に、搬送手段の出口側には、前記一対の搬送手段の下流側の前記平面状突出部のそれぞれの延長線上に略連続するように、物品を吊り下げ状態に支持するガイドプレート6、7をそれぞれ配設している。
【0017】
つまり、搬送手段10Aの出口側には、アタッチメント部材3の平面状突出部3aに連続するようにガイドプレート7を配設し、搬送手段10Bの出口側にはガイドプレート6を配設している。
そのために、搬送手段出口側においても、シリンジ2のフランジ2Bを前記ガイドプレート6、7が受ける構成となり、シリンジ2を落下させることなく連続して搬送することができる。
前記ガイドプレート6、7は、本実施の形態で示すように、吊り下げられるシリンジ2が軽く滑るような低摩擦の滑り板材を配設するだけでもよいが、コンベア等の搬送力を有する部材を用いることもできる。
【0018】
図3に示すように、フランジ2Bをアタッチメント部材3に載置して、シリンジバレル2Aを下向きに吊り下げた状態で搬送しているシリンジ2は、搬送方向の出口部にてそのフランジ2Bがガイドプレート6、7に載置されると共に、フィードスクリュー8の回転により搬送を続行することができる。
前記フィードスクリュー8は、搬送するシリンジ2の外径に対応したスクリュー部を備えており、多数のシリンジ2を一定間隔毎に連続して搬送することができる。前記フィードスクリュー8が停止しておれば、吊り下げられているシリンジ2を搬送しないことは明らかであり、次工程に必要な数量のシリンジ2を、要求に応じて、その回転速度に応じた速度で搬送するよう制御することもできる。
【0019】
シリンジ2を吊り下げた状態で搬送するために、図1に示すアタッチメント部材3の平面状突出部3a間の離間距離dを、前記シリンジバレル2Aの外径Daよりも大きく、前記フランジ2Bの外径Dよりも小さな寸法としている。つまり、シリンジバレル2Aは挿通自在であるが前記フランジ2Bは挿通不可とする程度の離間距離としている。また、前記離間距離dを所定範囲に規制するベルトガイド9を、それぞれのベルト4、4の裏面側に設けている。
前記ベルトガイド9は、無端ベルト4が低摩擦状態で当接可能な材質が好ましい。つまり、前記ベルト4が走行する際に、摺動抵抗が小さく、前記ベルト4とベルトガイド9とが磨耗せず、双方共が磨耗扮を生じない材質が好ましく、この条件を満たせば、ステンレスやアルミ等の金属製でも、ポリアセタール等の樹脂製でも構わない。
【0020】
本実施の形態では、前記無端ベルト4が歯付きベルト4Aであり、前記アタッチメント部材3が前記歯付きベルト4Aの1歯分のピッチごとに分断されて前記ベルトにネジ止めしている。また、前記アタッチメント部材3の幅を、隣接するアタッチメント部材同士が非接触状態となる程度の幅寸法としている。
歯付きベルト4Aを用いは搬送装置であれば、潤滑用グリースも不要であり、磨耗粉も生じないので、シリンジ等の医療関連物品を搬送する搬送手段として好適である。
【0021】
図4の拡大平面図から明らかなように、歯付きベルト4Aの1歯分のピッチごとに分断されて前記ベルトにネジ止めされているアタッチメント部材3の幅L1は、歯付きベルト4Aの1ピッチ分の長さL2よりも短い寸法とされている。
そのために、多数のアタッチメント部材3を連続して設けても、隣接するアタッチメント部材同士が非接触状態となり、前記歯付きベルト4Aが駆動されても、擦れ合うこともなく磨耗粉も生じないことになる。
また、前記アタッチメント部材3は、シリンジ2を吊り下げた状態で搬送するが、下流側の要求に応じてシリンジ2の搬送を中断してアキュムレートする場合も生じるので、走行している前記アタッチメント部材3と前記シリンジ2とが磨耗しないような低摩擦材料から形成されていることが好ましい。
【0022】
上記の低摩擦材料としては、ステンレス等の金属、または、ポリアセタール、ポリアミド、超高密度ポリエチレン等の樹脂が用いられる。または、金属や樹脂等に低摩擦樹脂をコーティングした材料を用いることもできる。
低摩擦材料からなるアタッチメント部材3としておれば、アキュムレートされているシリンジ2と前記アタッチメント部材3が擦れ合っても、摩擦も弱く、磨耗粉も生じない。そのために、本発明に係る懸垂搬送装置によれば、異物の発生のないクリーン環境での搬送とアキュムレートが可能となる。
歯付きベルト4A自体を低摩擦材料で形成して、直接シリンジ2を吊り下げて搬送することも可能であるが、本実施の形態にように、低摩擦材料からなるアタッチメント部材3を歯付きベルト4Aに装着した搬送装置とすると、適当な特性を有する低摩擦材料を選別
して使用可能であり、さらにクリーンな環境で使用可能となる搬送装置を構成することができ好適である。
【0023】
上記したように、本発明に係わる懸垂搬送装置によれば、十分なアキューム性を得るために、低摩擦材料を用いてシリンジの吊り下げ搬送を行う際に、より低摩擦な特性を有するアタッチメント部材を使用することで、搬送とアキュムレートの際に発生する磨耗粉を最小限に抑制することが可能とる。そのために、より高レベルのクリーン度が要求されるシリンジの搬送装置として使用可能となる。
さらには、フィードスクリュー部にてアキュムレートされても、アタッチメント部材上を滑りながら円滑に支持される構成であるので、前後のシリンジバレル同士が突き当たることもなく傷付けることもない。そのために、搬送不良とならずに、安定した姿勢を維持して搬送可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る懸垂搬送装置の要部拡大図を示している。
【図2】本発明に係る懸垂搬送装置の全体平面図を示している。
【図3】本発明に係る懸垂搬送装置の概略側面図を示している。
【図4】本発明に係る懸垂搬送装置要部の拡大平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 懸垂搬送装置
2 シリンジ
2A シリンジバレル
2B フランジ
3 アタッチメント部材
3a 平面状突出部
4 無端ベルト
5A 駆動プーリ
5B 従動プーリ
6 ガイドプレート
7 ガイドプレート
8 フィードスクリュー
9 ベルトガイド
10A、10B 搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向して配設される一対の搬送手段間に物品を吊り下げた状態で保持して搬送する懸垂搬送装置であって、水平方向に配設される駆動プーリと従動プーリと前記プーリ間に懸架される無端ベルトとをそれぞれ備える搬送手段を、同一速度で同一方向に走行するベルト面を相対向して所定間隔離反して併設すると共に、前記相対向するベルト面にそれぞれ、上部に平面状突出部を備えるアタッチメント部材を装着し、相対向する前記アタッチメント部材の前記平面状突出部に前記物品の一部を載置して物品本体を吊り下げた状態で搬送することを特徴とする懸垂搬送装置。
【請求項2】
前記一対の搬送手段の搬送方向出口側において、一方の搬送手段を長くして突出させ、突出した搬送手段と協働して前記物品を搬送するフィードスクリューを前記ベルト面に対向して並行して配設すると共に、前記一対の搬送手段の下流側の前記平面状突出部のそれぞれの延長線上に略連続するように、物品を吊り下げ状態に支持するガイドプレートをそれぞれ配設したことを特徴とする請求項1に記載の懸垂搬送装置。
【請求項3】
それぞれのベルトの走行位置を規制するベルトガイドをそれぞれのベルトの裏面側に設けて、相対向する前記アタッチメント部材間の離間距離を一定としていることを特徴とする請求項1または2に記載の懸垂搬送装置。
【請求項4】
前記物品がシリンジであって、円筒胴部のシリンジバレルと該バレルの先端部に形成されるフランジを有しており、前記離間距離を、前記シリンジバレルは挿通自在であるが前記フランジは挿通不可とする程度とし、前記フランジを前記アタッチメント部材の平面状上部に載置して、前記シリンジバレルを吊り下げた状態で搬送することを特徴とする請求項3に記載の懸垂搬送装置。
【請求項5】
前記無端ベルトが歯付きベルトであり、前記アタッチメント部材が、前記歯付きベルトの1歯分のピッチごとに分断されて前記ベルトにネジ止めされており、隣接するアタッチメント部材同士が非接触状態となる程度の幅寸法とされていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の懸垂搬送装置。
【請求項6】
前記アタッチメント部材が低摩擦材料から形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の懸垂搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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