説明

成分測定装置

【課題】光透過性部材の汚れの検出を精度良く行うことができ、測定精度が高い成分測定装置を提供する。
【解決手段】成分測定装置1は、いわゆる黒レベルチェック方式で光透過性部材45の汚れ検出を行う。すなわち、チップ5を測光部4の先端部に装着しない状態、例えば、測光部4の先端部に何も装着しない開放状態か、または、遮光性を有するテストチップを測光部4の先端部へ装着したテストチップ装着状態で、測光部4の発光素子41から光を照射し、受光素子42で受光して、受光素子42での受光光量に基づいて、光透過性部材45の汚れを検出する。この場合、受光素子42での受光光量が、予め設定されたしきい値より大きい場合に、光透過性部材45に汚れ有りと判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血糖値の測定のような、目的とする成分の量および/または性質を測定する成分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血糖値の測定を行う血糖測定装置(血中成分測定装置)が知られている。この血糖測定装置は、血中のブドウ糖量に応じて呈色する試験部位の呈色の度合いを光学的に測定(測色)して血糖値を定量化するものである。
【0003】
このような従来の血糖測定装置では、試験紙の測色は、発光素子および受光素子を備える測光部において、試験紙に光を照射しその反射光の強度を測定することにより行われている。
【0004】
ところで、測光部には、前記光および前記反射光を通過させる通路が形成され、この通路は、測光部の試験紙に臨む部分において開口している。
【0005】
このような成分測定装置の測光部に、埃や異物が入り込んでしまうという問題について従来より検討が行われている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0006】
また、埃の装置内部への侵入を防ぐため、測光部の前面に透明板を設けるものが提案されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
【0007】
しかしながら、前記透明板には、例えば、塵、埃、指紋、血液等の汚れが付着することがあり、この汚れにより、血糖値の測定結果にバラツキ等が生じ、測定精度が低下することがある。このため、前記透明板の汚れの検出が行われる。
【0008】
従来の汚れ検出においては、いわゆる白レベルチェック方式が採用されている。この白レベルチェック方式は、測光部の先端側に白色パターンが設置された状態で、透明板に汚れが付着すると、白色パターンでの反射光の光量と、透明板での反射光の光量との合計値が減少するという原理を用いたものである。
【0009】
すなわち、白レベルチェック方式の汚れ検出では、例えば、試験紙(白色)を備えるチップを装着し、測光部の発光素子から光を照射し、受光素子で受光して、受光素子での受光光量に基づいて、透明板の汚れを検出する。この場合、受光素子での受光光量が、予め設定されたしきい値より小さい場合に、透明板に汚れ有りと判別する。
【0010】
しかしながら、前記白レベルチェック方式の汚れ検出では、試験紙での強い反射光と、透明板の汚れ部からの微弱な反射光とが混ざり、前記透明板の汚れを精度良く検出することはできない。
【0011】
【特許文献1】特開平3−95438号公報
【特許文献2】特開平3−95439号公報
【特許文献3】特開平3−95431号公報
【特許文献4】特開平3−95440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、光透過性部材の汚れの検出を精度良く行うことができ、測定精度が高い成分測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)〜(18)の本発明により達成される。
【0014】
(1)試験部位を備える成分測定用チップの該試験部位を測色して検体中の所定成分の量および/または性質を測定する成分測定装置であって、
前記成分測定用チップを着脱自在に装着するチップ装着部と、
前記測定の際、前記成分測定用チップの前記試験部位へ光を照射する発光素子と、前記試験部位で反射された反射光を受光する受光素子と、前記発光素子および前記受光素子を収納、保持するホルダーとを有する測光部と、
前記測光部からの信号に基づいて前記所定成分の量および/または性質を求める制御手段とを備え、
前記ホルダーには、前記光および前記反射光が通過する通路が形成され、前記ホルダーの前記試験部位に臨む部分に、光透過性部材が設けられており、
前記チップ装着部に前記成分測定用チップが装着される前に当該成分測定装置の電源が投入された場合に、前記測光部の前記発光素子から光を照射し、前記受光素子で受光し、前記制御手段において、該受光素子での受光光量に基づいて前記光透過性部材の汚れ検出を行い、前記受光素子での受光光量がしきい値より大きい場合に、前記光透過性部材に汚れ有りと判別するよう構成されていることを特徴とする成分測定装置。
【0015】
(2)前記チップ装着部への前記成分測定用チップの装着の有無を判別する手段を有する上記(1)に記載の成分測定装置。
【0016】
(3)前記測光部より入力された測光データを記憶する記憶手段を有し、
前記所定成分の測定終了後、前記チップ装着部から前記成分測定用チップが取り外されると、前記光透過性部材の汚れ検出を行い、その結果を前記記憶手段に記憶するよう構成されている上記(1)または(2)に記載の成分測定装置。
【0017】
(4)前記チップ装着部に前記成分測定用チップが装着された状態で当該成分測定装置の電源が投入された場合に、前記光透過性部材の汚れ検出を行わずに、前記記憶手段に記憶されている前回の前記所定成分の測定終了後に行った汚れ検出の結果を代用するよう構成されている上記(3)に記載の成分測定装置。
【0018】
(5)前記光透過性部材の汚れ検出の結果を報知する報知手段を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0019】
(6)試験部位を測色して検体中の所定成分の量および/または性質を測定する成分測定装置であって、
前記試験部位を備えるチップを着脱自在に装着するチップ装着部と、
前記測定の際、前記チップの前記試験部位へ光を照射する発光素子と、前記試験部位で反射された反射光を受光する受光素子と、前記発光素子および前記受光素子を収納、保持するホルダーとを有する測光部と、
前記チップ装着部に着脱自在に装着され、遮光性を有するテストチップとを備え、
前記ホルダーには、前記光および前記反射光が通過する通路が形成され、前記ホルダーの前記試験部位に臨む部分に、光透過性部材が設けられており、
前記テストチップを前記チップ装着部に装着した状態で、前記測光部の前記発光素子から光を照射し、前記受光素子で受光し、該受光素子での受光光量に基づいて、前記光透過性部材の汚れを検出する汚れ検出手段を有し、
前記汚れ検出手段は、前記光透過性部材の汚れの検出において、前記受光素子での受光光量が、しきい値より大きい場合に、前記光透過性部材に汚れ有りと判別するよう構成されていることを特徴とする成分測定装置。
【0020】
(7)前記テストチップは、前記チップ装着部の先端側を覆う蓋状の部分を有する上記(6)に記載の成分測定装置。
【0021】
(8)前記テストチップの少なくとも前記蓋状の部分は黒色または暗色である上記(7)に記載の成分測定装置。
【0022】
(9)前記テストチップを前記チップ装着部に装着した状態において、前記チップ装着部の先端から、前記蓋状の部分の先端側の内壁までの長さは、10mm以上である上記(7)または(8)に記載の成分測定装置。
【0023】
(10)試験部位を測色して検体中の所定成分の量および/または性質を測定する成分測定装置であって、
前記試験部位を備えるチップを着脱自在に装着するチップ装着部と、
前記測定の際、前記チップの前記試験部位へ光を照射する発光素子と、前記試験部位で反射された反射光を受光する受光素子と、前記発光素子および前記受光素子を収納、保持するホルダーとを有する測光部とを備え、
前記ホルダーには、前記光および前記反射光が通過する通路が形成され、前記ホルダーの前記試験部位に臨む部分に、光透過性部材が設けられており、
前記測光部の前記発光素子から光を照射し、前記受光素子で受光し、該受光素子での受光光量に基づいて、前記光透過性部材の汚れを検出する汚れ検出手段を有し、
前記汚れ検出手段は、前記光透過性部材の汚れの検出において、前記受光素子での受光光量が、しきい値より大きい場合に、前記光透過性部材に汚れ有りと判別するよう構成されていることを特徴とする成分測定装置。
【0024】
(11)前記光透過性部材の汚れの検出は、前記チップを前記チップ装着部に装着しない状態で行われる上記(6)ないし(10)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0025】
(12)当該成分測定装置に電源が投入されると、前記光透過性部材の汚れ検出が行われるよう構成されている上記(6)ないし(11)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0026】
(13)前記光透過性部材の汚れ検出を行う汚れ検出モードを有する上記(6)ないし(12)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0027】
(14)記憶手段を有し、
前記測定の後、光透過性部材の汚れ検出を行い、その結果を前記記憶手段に記憶するよう構成されている上記(6)ないし(13)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0028】
(15)前記光透過性部材の汚れ検出を行わない場合に、前記記憶手段に記憶されている情報を利用するよう構成されている上記(14)に記載の成分測定装置。
【0029】
(16)前記チップ装着部に前記チップが装着された状態で当該成分測定装置に電源が投入された場合には、前記光透過性部材の汚れ検出を行わずに、前記記憶手段に記憶されている情報を利用するよう構成されている上記(14)に記載の成分測定装置。
【0030】
(17)前記光透過性部材の汚れ検出の結果を報知する報知手段を有する上記(6)ないし(16)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0031】
(18)前記光透過性部材は、シール部材を介して前記通路を密閉するよう設置されている上記(6)ないし(17)のいずれかに記載の成分測定装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、光透過性部材の汚れを精度良く検出することができる。
【0033】
これにより、光透過性部材が汚れた状態での測定を防止することができ、測定精度を向上させることができる。
【0034】
また、光透過性部材を有しているので、測光部の通路内(測光部の内部)に、埃や検体等が侵入するのを確実に防止でき、目的とする血中成分量の測定を、高い測定精度で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の成分測定装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明するが、本発明の成分測定装置の一実施形態を説明する前に、まず、本発明の成分測定装置に装着して使用されるチップ(成分測定用チップ)の一実施形態について説明する。
【0036】
図16は、チップの構成を示す縦断面図、図17は、図16に示すチップを成分測定装置に装着した状態を示す縦断面図である。なお、以下では、図16および図17中の下側を「基端」、上側を「先端」として説明する。
【0037】
図16に示すチップ5は、有底筒状のチップ本体51と、このチップ本体51の底部511から突出した細管52と、チップ本体51内に設置された試験部位である試験紙53とで構成されている。
【0038】
チップ本体51は、試験紙53を支持するとともに、チップ5を、後述する成分測定装置1が備える測光部4の先端部(チップ装着部)へ装着する装着部を構成するものである。
【0039】
チップ本体51は、底部511と、胴部513と、胴部513の基端外周に形成されたフランジ514とで構成されている。また、底部511の内側には、試験紙53を固定する台座部512が形成されている。試験紙53は、その外周部(固定部533)において、例えば融着または接着剤による接着等の方法により台座部512に固定される。
【0040】
胴部513は、チップ5を成分測定装置1の測光部4の先端部へ装着する装着部を構成する。すなわち、図17および図18に示すように、チップ本体51の胴部513の内側に、測光部4(ホルダー43)の先端部を嵌合して、チップ5を成分測定装置1の測光部4へ装着する。以下、図17に示す状態を、「チップ装着状態」と言う。
【0041】
細管52は、血液(検体)を採取するためのものであり、その内部には、検体導入流路520が形成されている。この検体導入流路520は、試験紙53に対しほぼ直交する方向に延在しており、その先端には検体流入口523、その基端には検体流出口527がそれぞれ形成されている。
【0042】
チップ本体51の底部511内面の台座部512より外周側の位置には、チップ装着状態で、試験紙53とホルダー43との非接触を確保する離間手段として、スペーサー56が形成されている。
【0043】
このスペーサー56は、底部511の内面に周方向に沿って配置された複数(例えば90°間隔で4個)の凸部で構成されており、図17に示すように、チップ装着状態で、測光部4のホルダー43の先端に当接して、ホルダー43の先端が試験紙53に接触することを阻止する。
【0044】
このようなスペーサー56を設けたことにより、試験紙53が保護されるとともに、試験紙53上に展開された血液が測光部4に付着して汚染することが防止される。
【0045】
また、スペーサー56は、チップ装着状態で、ホルダー43の先端に当接して、試験紙53と測光部4の発光素子41および受光素子42との離間距離を一定に保つ機能も有している。これにより、前記距離が変動し光学的特性にバラツキが生じることによる測定誤差を少なくすることができ、測定精度の向上に寄与する。
【0046】
なお、チップ5は、フランジ514や細管52を有するものに限らず、例えば、平板状、シート状、スティック状のものであってもよい。
【0047】
以上のようなチップ本体51および細管52は、所定の剛性を有する剛性材料で構成されている。このような剛性材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール等またはこれらのうちの1種以上を含むポリマーアロイ、ポリマーブレンド等の各種樹脂材料が挙げられる。このなかでも、検体を迅速に導入、展開するのに特に適したものとして、アクリル系樹脂等の親水性の高い材料または親水化処理されたものが好ましい。
【0048】
親水化処理としては、例えばプラズマ処理、グロー放電、コロナ放電、紫外線照射等の物理活性化処理の他、界面活性剤、水溶性シリコン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の付与(塗布)等により行うことができる。
【0049】
試験紙53は、血液(検体)を吸収可能な担体に、試薬(発色試薬)を担持(含浸)させたものである。この担体は、好ましくは多孔性膜(シート状多孔質基材)で構成されている。この場合、多孔性膜は、血液中の赤血球を濾過できる程度の孔径を有するものが好ましい。
【0050】
多孔性膜による担体を用いることにより、含浸させる試薬が特にオキシダーゼ反応のように酸素を基質として反応する過程を含む試薬系の場合に、血液が試験紙53上に展開後、血液受容側が血液で覆われた状態でも、反応側(反対面)より大気中の酸素が供給されるので、反応を迅速に進ませることができ、よって、血液を除去することなく発色状態を検出することができる。
【0051】
試験紙53の担体としては、多孔性膜の他に、例えば、不織布、織布、延伸処理したシート等のシート状多孔質基材が挙げられる。
【0052】
多孔性膜等の担体の構成材料としては、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリスルホン類またはセルロース類等が挙げられるが、試薬を溶解した水溶液を含浸させたり、血液の採取時には血液の吸収・展開を迅速に行うため、親水性を有する材料または、親水化処理されたものが好ましい。なお、親水化処理としては、前述した方法と同様のものが挙げられる。
【0053】
担体(多孔質膜)に含浸する試薬としては、血糖値測定用の場合、グルコースオキシダーゼ(GOD)と、ペルオキシダーゼ(POD)と、例えば4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジンのような発色剤(発色試薬)とが挙げられ、その他、測定成分に応じて、例えばアスコルビン酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ等の血中の目的成分(所定成分)と反応するものと、前記と同様の発色剤(発色試薬)とが挙げられる。また、さらにリン酸緩衝液のような緩衝剤が含まれていてもよい。なお、試薬の種類、成分については、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0054】
次に、試験紙53の形状、構造について説明する。試験紙53の形状は、円形が好ましいが、これに限定されず、その他、例えば楕円形、正方形、長方形、菱形等の四角形、三角形、六角形、八角形等、必要に応じ選択して用いることができる。
【0055】
また、図16に示すように、試験紙53の外周部、すなわち環状の凸部532のさらに外周側には、固定部533が形成されており、試験紙53は、この固定部533において、融着または接着剤による接着等の方法によりチップ本体51の台座部512に固定されている。
【0056】
また、検体流出側端部525の端面に、試験紙53を融着または接着剤による接着等の方法により固定することもできる。これにより、試験紙53をさらに安定的にチップ本体51に支持、固定することができ、また、試験紙53の変形(湾曲、歪み、波打ち等)により隙間が生じ、血液の展開を妨げることも防止される。
【0057】
図18は、チップ5を用いて血液を採取するときの状態を示す側面図である。同図に示すように、血液の採取は、まず、指先(または耳たぶ)等を針やメス等で穿刺し、この穿刺部から皮膚上に少量(例えば1〜6μL程度)の血液18を流出させる。
【0058】
一方、成分測定装置1が備える測光部4の先端部(チップ装着部)にチップ5を装着し、細管52の検体流入側端部521の端面を皮膚に当接させる。指先の血液18は、溝522内を経て検体流入口523へ至り、毛細管現象により吸引されて検体導入流路520内を基端方向へ流れ、検体流出口527へ到達する。このとき、指先の血液18は、溝522の側面開口部(細管52の外周面に開放した部分)から有効に吸入されるので、皮膚状で過剰に散らされることもなく、ロスも少ない。
【0059】
試験紙53上への血液の展開が完了すると、血液中の目的成分(例えばブドウ糖)と試験紙53に担持された試薬とが反応し、目的成分の量に応じて呈色する。この呈色した試験紙53を測色して、呈色の強度を測定することにより、血液中の目的成分量(血糖値)が求まる。
【0060】
なお、試験部位として試験紙を用いて説明したが、これに限られることなく、目的成分により、反射光の変化するものであれば用いることができる。
【0061】
次に、本発明の成分測定装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0062】
<第1実施形態>
まず、本発明の成分測定装置の第1実施形態について説明する。
【0063】
図1は、本発明の成分測定装置の第1実施形態の内部構造を示す平面図、図2は、図1に示す成分測定装置の断面側面図、図3は、図1に示す成分測定装置のブロック図、図4は、図1に示す成分測定装置の測光部の構成を示す縦断面図である。なお、以下では、図1、図2および図4中の左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
【0064】
ここで、本発明の要部(特徴)は、光透過性部材45の汚れ検出であるが、本発明の理解を容易にするため、まずは、成分測定装置1の構造(構成)や動作(作用)を一通り説明し、その後、光透過性部材45の汚れ検出について説明する。
【0065】
これらの図に示す成分測定装置(血中成分測定装置)1は、ケーシング2を有し、このケーシング2内には、プリント基板3が配置されている。また、ケーシング2の先端部には、測光部4が設けられている。ケーシング2の窓部には、液晶表示装置(LCD)9が設置されている。この液晶表示装置9は、後述する光透過性部材45の汚れ検出の結果を報知する報知手段としても機能する。
【0066】
プリント基板3上には、マイクロコンピュータで構成される制御手段10が搭載されており、成分測定装置1の諸動作を制御する。この制御手段10には、測光部4からの信号に基づいて目的とする血中成分(例えばブドウ糖)を算出する演算部が内蔵されている。この演算部は、必要に応じて、例えばヘマトクリット値補正計算、温度補正計算等も行う。
【0067】
測光部4は、発光素子(発光ダイオード)41と、受光素子(フォトダイオード)42とを有しており、これらは、ホルダー43に収納、保持されている。発光素子41は制御手段10と電気的に接続され、受光素子42は、図示しない増幅器およびA/D変換器49を介して制御手段10と電気的に接続されている。
【0068】
発光素子41は、制御手段10からの信号により作動し、所定の時間間隔でパルス光を発する。このパルス光は、例えば、その周期が0.5〜3.0msec程度、1パルスの発光時間が0.05〜0.3msec程度とされる。
【0069】
また、このパルス光の波長は、好ましくは500〜720nm程度、より好ましくは580〜650nm程度とされる。
【0070】
ホルダー43(測光部4)の先端部には、前述したような試験紙53を内蔵するチップ(成分測定用チップ)5が着脱自在に装着される。具体的には、ホルダー43の先端から所定の位置には、リング状(円環状)の嵌合部44が突出形成されており、チップ5をホルダー43の先端部に装着した状態(チップ装着状態)で、嵌合部44にチップ本体51の基端部が嵌合し、チップ5がホルダー43に固定される(図17参照)。すなわち、本実施形態では、ホルダー43の先端部(後述する第1の通路431および第2の通路432が開口する測光部4の端部)がチップ装着部を構成している。
【0071】
このチップ装着状態で、ホルダー43の先端面は、チップ5が備える試験紙53に対面する(臨む)。そして、この状態で、発光素子41を点灯させると、発光素子41から発せられた光は試験紙53に照射され、試験紙53で反射された反射光は、受光素子42に受光され、光電変換される。受光素子42からは、その受光光量に応じたアナログ信号が出力され、所望に増幅された後、A/D変換器49にてデジタル信号に変換され、制御手段10に入力される。
【0072】
この測光部4の構成については、後に詳述する。
【0073】
また、成分測定装置1は、電源部6、電源電圧検出部7、スイッチ回路8、制御発振部11、時計発振部12、データ記憶部(記憶手段)13、ブザー出力部14、外部出力部15および温度測定部16を有している。
【0074】
電源部6には、電池61が装填される。電源電圧検出部7は、この電池61の電圧を検出し、検出された電圧値(検出値)を制御手段10へ出力する。これにより、電池61の残量をチェックすることができる。
【0075】
スイッチ回路8は、以下のような種々のスイッチの入力を検出し、その信号を制御手段10へ入力する。スイッチの種類としては、電源スイッチ、測定スイッチ、呼出スイッチ、記憶データ読出スイッチ、時刻設定・変更スイッチ、リセットスイッチ、ブザー作動/不作動選択スイッチ、50Hz/60Hz商用電源周波数選択スイッチ等が挙げられる。
【0076】
電源スイッチは、操作ボタン31の押圧により、オン/オフすることができる。また、その他のスイッチは、操作ボタン31、操作部材32、33、34等のうちのいずれか1つまたは2つ以上を組み合わせて操作することにより作動させることができる。
【0077】
制御発振部11は、タイマーを構成するもので、一定時間間隔のクロックパルスを発振し、制御手段10のマイクロコンピューター(マイクロプロセッシングユニット:MPU)の動作用基準信号の供給を行う。
【0078】
時計発振部12は、絶対時間(日時)を特定する時計を構成するもので、一定時間間隔のクロックパルスを発振し、制御手段10が内蔵する時計制御回路の動作用基準信号の供給を行う。
【0079】
データ記憶部13は、第1メモリー(RAM)、第2メモリー(ROM)および書き換え可能な不揮発性メモリーである第3メモリー(不揮発性RAM)を備えている。測光部4より入力された測光値(測光データ)は、所定のフォーマットに従って第1メモリーに記憶される。
【0080】
また、第2メモリーには、測光値から求められた吸光度と、目的とする血中成分量との関係(検量線)が予めテーブル化されて記憶されているとともに、各しきい値がそれぞれ記憶されている。
【0081】
第3メモリーには、個々の装置ごとに固有の校正値が予め記憶されている。ここで言う固有の校正値には、例えば、反射光量の規定値、吸光度計算の補正係数等がある。
【0082】
ブザー出力部14は、制御手段10からの信号に基づいて、ブザーを作動させ、音を発する。
【0083】
外部出力部15は、求められた目的とする血中成分量等のデータを、例えばパソコンのような外部装置へ出力するためのものである。この場合、外部出力部15は、例えばRS232Cのような通信ドライバーを内蔵している。また、赤外線通信を行う場合には、外部出力部15は、赤外線発光素子およびその駆動回路を内蔵している。
【0084】
温度測定部16は、環境温度を測定し得る温度センサー(サーミスタ)を備えている。温度測定部16では、随時温度測定がなされ、その温度情報は、データ記憶部13の第1メモリーに記憶される。また、第1メモリーから読み出された温度情報は、制御手段10へ入力され、目的とする血中成分量の温度補正計算に利用される。
【0085】
次に、図4に基づいて、測光部4について説明する。
【0086】
前述したように、測光部4は、発光素子41および受光素子42が固定(固着)されたホルダー(測光ブロック)43を備えている。このホルダー43には、発光素子41が発する光を通過させ、試験紙53に案内する第1の通路431と、この光が試験紙53で反射された反射光を通過させ、受光素子42に案内する第2の通路432とが形成されている。
【0087】
第1の通路431と第2の通路432とは、ホルダー43の先端部で1つとなった(合流した)後、ホルダー43の先端において開放(開口)している。これにより、ホルダー43の先端には、第1の通路431および第2の通路432が開放する開口部433が形成されている。
【0088】
この開口部433の形状は、円形が好ましいが、その他、例えば楕円形、正方形、長方形、菱形等の四角形、三角形、六角形、八角形等、必要に応じ選択することができる。
【0089】
ホルダー43の先端部(チップ装着状態で試験紙53に臨む部分)には、開口部433がほぼ中央に位置するように、凹部434が形成されている。
【0090】
また、凹部434の外周には、この凹部434に連通し、凹部434よりも深く形成された環状凹部435が形成されている。
【0091】
この環状凹部435内にOリング46が収納され、かつ、凹部434内に光透過性部材45が収納、固定されている。これにより、ホルダー43の第1の通路431および第2の通路432(以下、単に「通路」と言う。)は、Oリング46を介して光透過性部材45により密閉されている。
【0092】
なお、光透過性部材45のホルダー43への固定(固着)方法としては、例えば、嵌合、融着、螺合、接着剤による接着等の方法が挙げられる。
【0093】
このような構成により、チップ装着状態で、光透過性部材45は、試験紙53とホルダー43(測光部4)の通路とを隔離する。
【0094】
この成分測定装置1では、ホルダー43の通路が密閉されているので、通路内への水や血液(検体)の侵入が確実に防止される。これにより、目的とする血中成分量の測定を、高い測定精度で行うことができる。
【0095】
また、ホルダー43の通路の密閉性が確保されているので、例え、ホルダー43(測光部4)や光透過性部材45の先端面に、血液等が付着した場合でも、消毒用アルコールや水等の洗浄液により洗浄して、これらを容易かつ確実に除去することもできる。
【0096】
また、前述したように、チップ5には、試験紙53に供給された血液が測光部4等へ付着するのを防止するための各種の工夫がなされているが、本発明の成分測定装置1では、測光部4に付着した血液等を容易に除去できることから、チップ5の構成の簡略化を図ることができ、チップ5のコスト低減にも寄与する。
【0097】
本実施形態では、光透過性部材45は、平板状をなしており、その先端面(試験紙53側の面)がホルダー43の先端面とほぼ同一平面上に位置している。このような構成により、前記洗浄液による洗浄の際に、ホルダー43と光透過性部材45との境界部付近に、埃や血液等が残存するのを防止することができる。
【0098】
この光透過性部材45の厚さ(平均)は、その構成材料等によっても若干異なり、特に限定されないが、0.1〜10mm程度であるのが好ましく、0.3〜3mm程度であるのがより好ましい。光透過性部材45の厚さが薄過ぎると、強度が低下するおそれがあり、一方、光透過性部材45の厚さが厚過ぎると、測光部4が大型化し好ましくない。
【0099】
また、光透過性部材45の形状は、開口部433に対応した形状であるのが好ましく、光透過性部材45の寸法は、開口部433を覆うことができる程度の大きさであればよい。
【0100】
このような光透過性部材45の構成材料としては、例えば、各種ガラス材料、各種樹脂材料等が挙げられる。
【0101】
また、ホルダー43の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール等またはこれらのうちの1種以上を含むポリマーアロイ、ポリマーブレンド等の各種樹脂材料、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、ステンレス鋼等の各種金属材料が挙げられる。
【0102】
なお、光透過性部材45は、平板状のものに限定されず、例えば、レンズ形状のものであってもよい。
【0103】
また、光透過性部材45の表面には、任意の目的のコート層が1層以上形成されていてもよい。このコート層は、例えば、測定精度を向上させる目的、光透過性部材45のキズ付きを防止する目的等の目的で設けることができる。
【0104】
測定精度を向上させる観点からは、コート層として、例えば、発光素子41が発する光が光透過性部材45の表面(基端面)で反射されるのを防止する反射防止コート(ARコート)や、試験紙53で反射された反射光が光透過性部材45の表面(先端面)で反射されるのを防止する反射防止コート、外乱光(特に赤外光)が測定精度に大きく影響を与えることから、例えば720nm以下の波長の光を選択的に透過させるローパスフィルタや、500〜720nm程度(発光素子41が発する光の波長に対応する)の波長の光を選択的に透過させるバンドパスフィルタ等を設けるのが好ましい。
【0105】
また、光透過性部材45のキズ付きを防止する観点からは、コート層として、例えば、Si系材料、Al系材料、多官能アクリル系材料、ウレタン樹脂系材料、メラミン樹脂系材料等を主材料とする強化コート層(ハードコート層)を設けるのが好ましい。
【0106】
Oリング46は、弾性材料で構成され、その縦断面における径(直径)が環状凹部435の深さより大きくなるよう設定されている。これにより、光透過性部材45を凹部434内に設置した状態で、Oリング46は、ホルダー43および光透過性部材45の双方と確実に密着するようになる。これにより、ホルダー43の通路の密閉性(液密性または気密性)の向上を図ることができ、前述した効果をより向上させることができる。
【0107】
このような弾性材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0108】
なお、Oリング46の設置位置は、図示のものに限定されず、例えば、光透過性部材45の外周部とすることもできる。
【0109】
次に、本発明の成分測定装置1の要部(特徴)である光透過性部材45の汚れ検出について説明する。
【0110】
この成分測定装置1は、測光部4の発光素子41から光を照射し、受光素子42で受光し、受光素子42での受光光量に基づいて、光透過性部材45の汚れを検出するよう構成されている。
【0111】
この光透過性部材45の汚れ検出において、受光素子42で受光する光は、後述するように、主に、発光素子41から発せられ、光透過性部材45やそれに付着した、例えば、塵、埃、指紋、血液等の汚れで反射した反射光等である。前述したように、受光素子42からは、その受光光量に応じたアナログ信号が出力され、所望に増幅された後、A/D変換器49にてデジタル信号に変換され、制御手段10に入力される。制御手段10は、この入力された受光素子42での受光光量に応じた値を示すデジタル信号に基づいて、所定の処理(判別等)を行って、光透過性部材45の汚れ検出を行う。従って、制御手段10により、汚れ検出手段の主要部が構成される。
【0112】
この成分測定装置1では、光透過性部材45の汚れ検出において、いわゆる黒レベルチェック方式が採用されている。この黒レベルチェック方式の原理について説明する。
【0113】
図4に示す測光部4の先端部に何も装着しない開放状態において、光透過性部材45に汚れが付着していない場合には、測光部4の発光素子41から発せられた光は、受光素子42へは、実質的に入射しない(反射物がない)。
【0114】
これに対し、前記開放状態において、図5に示すように光透過性部材45に汚れ19が付着している場合には、測光部4の発光素子41から発せられた光は、その一部が汚れ19で反射し、その微弱な反射光が、受光素子42へ入射する。
【0115】
このため、前記開放状態においては、光透過性部材45の汚れが多いほど、受光素子42での受光光量は増大する。
【0116】
また、測光部4の先端部(先端側)に、黒色(暗色)パターンが設置された状態では、発光素子41から発せられた光は、その黒色パターンでは実質的に反射しないので、この場合も前記と同様に、光透過性部材45の汚れが多いほど、受光素子42での受光光量は増大する。
【0117】
本実施形態における光透過性部材45の汚れ検出では、チップ5を測光部4の先端部に装着しない状態、例えば、測光部4の先端部に何も装着しない開放状態か、または、後述する遮光性を有するテストチップを測光部4の先端部へ装着したテストチップ装着状態で、測光部4の発光素子41から光を照射し、受光素子42で受光して、受光素子42での受光光量に基づいて、光透過性部材45の汚れを検出する。この場合、受光素子42での受光光量が、予め設定されたしきい値より大きい場合に、光透過性部材45に汚れ有りと判別する。なお、しきい値は、例えば、諸条件に応じて、実験的に求めることができる。
【0118】
ここで、本発明において、「受光素子42での受光光量が予め設定されたしきい値より大きい」とは、前記受光素子42での受光光量をa、前記しきい値をbとしたとき、a>bの場合に限らず、a≧bの場合も含まれる。すなわち、本発明では、a>bの場合に、光透過性部材45に汚れ有りと判別するよう構成してもよく、また、a≧bの場合に、光透過性部材45に汚れ有りと判別するよう構成してもよい。
【0119】
次に、白レベルチェック方式に対する黒レベルチェック方式の優位性を説明する。
【0120】
図6は、光透過性部材45の汚れ具合(汚れ状態)を換えたときの黒レベルチェック方式における特性を示すグラフ、図7は、光透過性部材の汚れ具合(汚れ状態)を換えたときの白レベルチェック方式における特性を示すグラフである。
【0121】
図6のグラフにおいて、縦軸は、汚れによる測定値の変動率を示す。横軸は、後述する遮光性を有するテストチップを測光部4の先端部に装着したときの受光素子42での受光光量を示す。
【0122】
また、図7のグラフの縦軸は、図6と同様であり、横軸は、未使用のチップ5を測光部の先端部に装着したときの受光素子での受光光量を示す。
【0123】
図7に示すように、白レベルチェック方式の場合には、例えば、図示のようにしきい値を設定すると、測定OK表示となる場合であっても変動率が80%台である可能性があり、汚れを適確に検出するためのしきい値を設定することが困難である。
【0124】
これに対し、図6に示すように、黒レベルチェック方式の場合には、測定値の変動率と、受光素子42での受光光量との相関が高く、しきい値を設定するのが容易であり、汚れを正確に検出することができる。
【0125】
次に、光透過性部材45の汚れ検出の際に用いられるテストチップについて説明する。
【0126】
図8は、図1に示す成分測定装置にテストチップを装着した状態であって、そのテストチップの実施形態(構成例)を示す平面図、図9は、図8に示すテストチップの断面平面図である。なお、以下では、図8および図9中の左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
【0127】
これらの図に示すように、テストチップ(蓋)20は、遮光性を有しており、測光部4の先端部に、着脱自在に装着される。
【0128】
本実施形態では、テストチップ20の全体形状は、円筒状(筒状)をなし、その内部に、仕切り板21が形成されている。テストチップ20を測光部4の先端部に装着する際は、テストチップ20の基端部を測光部4の先端部に嵌合する。このテストチップ20の仕切り板21および仕切り板21の基端側の部分により、測光部4の先端部の先端側を覆う蓋状の部分が構成される。
【0129】
テストチップ20の色としては、例えば、黒色または暗色が挙げられるが、黒色が好ましい。この場合、テストチップ20の全体を黒色または暗色としてもよいが、テストチップ20の前記蓋状の部分が黒色または暗色であればよい。
【0130】
このテストチップ20を測光部4の先端部に装着することにより、発光素子41から発せられた光のテストチップ20での反射や、外部からの光のテストチップ20内への入射が防止され、これによって、不要な光が受光素子42へ入射してしまうのを防止することができる。
【0131】
また、テストチップ20を測光部4の先端部に装着した状態において、測光部4の先端部の先端からテストチップ20の仕切り板21の内壁までの長さaは、10mm以上であるのが好ましい。
【0132】
長さaを10mm以上にすることにより、発光素子41から発せられた光がテストチップ20で反射して受光素子42へ入射してしまうのをより確実に防止することができる(理想的な無反射状態またはそれに極めて近い状態となる)。
【0133】
なお、テストチップ20の形状は、これに限らず、そのテストチップ20を装着する成分測定装置1に適した形状をとることができる。
【0134】
前記テストチップ20の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、所定の剛性を有する剛性材料等を用いることができる。このような剛性材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール等またはこれらのうちの1種以上を含むポリマーアロイ、ポリマーブレンド等の各種樹脂材料が挙げられる。
【0135】
以上述べた、この成分測定装置1は、測定を行う通常測定モードと、光透過性部材45の汚れ検出を行う汚れ検出モードとを有している。
【0136】
時刻設定・変更スイッチがオンした状態で、電源スイッチがオンすると(電源が投入されると)、汚れ検出モードに設定され、また、時刻設定・変更スイッチがオフした状態で、電源スイッチがオンすると、通常測定モードに設定される。
【0137】
図10は、通常測定モードにおいて、光透過性部材45に汚れがない場合における受光素子42での受光光量と、操作手順との関係を示すタイミングチャート、図11は、通常測定モードにおいて、光透過性部材45に汚れがある場合における受光素子42での受光光量と、操作手順との関係を示すタイミングチャート、図12は、通常測定モードにおいて、受光素子42での受光光量と、操作手順との関係を示すタイミングチャートである。なお、図10、図11および図12には、それぞれ、実際には発光素子41から光が発せられないときでも、発光素子41から光が発せられたものとして、受光素子42での受光光量が示されている。
【0138】
通常測定モードにおいては、図10に示すように、電源スイッチがオンすると、測光部4の先端部にチップ5が装着されていない場合には、前述した汚れ検出を行う。
【0139】
汚れがあるか否かは、前述したように、受光素子42での受光光量で判別することができる。
【0140】
そして、汚れなしの場合は、測光部4の先端部にチップ5が装着されると、汚れがなく、測定が可能である旨を示す「OK」を液晶表示装置9に表示する。
【0141】
チップ5が装着されているか否かは、受光素子42での受光光量で判別することができる。すなわち、チップ5が装着されている場合は、チップ5が装着されていない場合に比べ、受光素子42での受光光量が大きくなるので、予め所定値を設定しておき、受光素子42での受光光量がこの所定値より大きい場合は、チップ5が装着されていると判別し、受光素子42での受光光量がこの所定値より小さい場合は、チップ5が装着されていないと判別する。
【0142】
操作者(使用者)は、前記「OK」表示を見て、汚れがなく、測定が可能であることを把握することができ、前述した所定の操作を行う。
【0143】
なお、チップ5の試験紙53上へ血液が展開されると、前記受光素子42での受光光量は、小さくなる。
【0144】
一方、図10に示すように、汚れありの場合には、測光部4の先端部にチップ5が装着されると、汚れがあり、測定が不可能である旨を示す警報を液晶表示装置9に表示(点灯)する。
【0145】
操作者は、前記警報表示を見て、汚れがあり、測定が不可能であることを把握することができ、例えば、光透過性部材45を拭いたり、また、洗浄する作業を行う。これにより、光透過性部材45の汚れが除去される。
【0146】
また、通常測定モードにおいては、図12に示すように、測定が終了し、測光部4の先端部からチップ5が取り外されると、前述した汚れ検出を行う。この汚れ検出の結果は、データ記憶部13の第3メモリーに記憶される。
【0147】
そして、一旦、電源スイッチがオフし(電源が遮断され)、再度、電源スイッチがオンすると、測光部4の先端部にチップ5が装着されている場合、すなわち、チップ5が装着された状態で電源スイッチがオンした場合には、汚れ検出を行わずに、前記第3メモリーに記憶されている情報(前回の測定終了後に行った汚れ検出の結果)を利用する。
【0148】
すなわち、前回の測定終了後に行った汚れ検出の結果が、汚れなしの場合には、汚れがなく、測定が可能である旨を示す「OK」を液晶表示装置9に表示する。
【0149】
一方、前回の測定終了後に行った汚れ検出の結果が、汚れありの場合には、汚れがあり、測定が不可能である旨を示す警報を液晶表示装置9に表示(点灯)する。
【0150】
また、汚れ検出モードにおいては、電源スイッチがオンすると、液晶表示装置9に、汚れ検出モードに設定されていることが表示される。
【0151】
使用者は、テストチップ20を測光部4の先端部に装着する。この状態で、呼出スイッチがオンすると、前述した汚れ検出を行う。
【0152】
そして、汚れなしの場合は、汚れがない旨を示す「YES」を液晶表示装置9に表示する。
【0153】
操作者は、前記「YES」表示を見て、汚れがないことを把握することができる。
【0154】
一方、汚れありの場合には、汚れがある旨を示す「NO」を液晶表示装置9に表示する。
【0155】
操作者は、前記「NO」表示を見て、汚れがあることを把握することができ、例えば、光透過性部材45を拭いたり、また、洗浄する作業を行う。これにより、光透過性部材45の汚れが除去される。そして、操作者は、例えば、再度、前述した汚れ検出を行うための操作を行い、これにより、前述した汚れ検出が行われる。
【0156】
また、汚れ検出モードには、さらに汚れの度合いを表示(例えば、数値化して表示)する汚れ検出詳細モードがある。汚れ検出モードにおいて、時刻設定・変更スイッチがオンした状態で、呼出スイッチがオンすると、汚れ検出詳細モードに設定される。
【0157】
汚れ検出詳細モードにおいては、前記汚れ検出モードと同様に、使用者は、テストチップ20を測光部4の先端部に装着する。この状態で、呼出スイッチがオンすると、前述した汚れ検出を行う。
【0158】
そして、汚れなしの場合は、汚れがない旨を示す「YES」を液晶表示装置9に表示する。
【0159】
一方、汚れありの場合には、汚れがある旨を示す「NO」を液晶表示装置9に表示するとともに、その汚れの度合いとして、受光素子42での受光光量を数字で液晶表示装置9に表示する。
【0160】
これにより、操作者は、前記液晶表示装置9に表示された受光素子42での受光光量の値(数字)を見て、汚れの程度を把握することができ、その汚れの程度に応じた適切な措置をとることができる。
【0161】
次に、成分測定装置1の制御手段10の制御動作(作用)について、図13〜図15を参照しつつ説明する。
【0162】
図13〜図15は、図1に示す成分測定装置1の制御手段10の制御動作を説明するためのフローチャートであって、図13および図14には、それぞれ、通常測定モードにおける制御動作、図15には、汚れ検出モードにおける制御動作が示されている。なお、説明の簡素化と理解の容易化のため、図13〜図15には、それぞれ、判断(判定)ステップの一部を通常のステップのように記載し、また、操作者の動作の一部をステップとして示した。
【0163】
まず、通常測定モードにおける成分測定装置1の制御手段10の制御動作を説明する。
【0164】
前述したように、時刻設定・変更スイッチがオフした状態で、電源スイッチがオンすると、通常測定モードに設定され、図13に示すように、測光部4の先端部にチップ5が装着されているか否かが判断され(ステップS101)、チップ5が装着されている場合には、ステップS105に進み、チップ5が装着されていない場合には、ステップS102に進む。
【0165】
ステップS102では、発光素子41を1秒周期で間欠的に複数回発光し、それぞれにおいて、前述した汚れ検出を行う。
【0166】
そして、前記複数回の検出において、一度でも汚れ無しを確認できた場合には、汚れ無しと判別し、その旨を示すフラグAを立てる(A=1)。
【0167】
一方、前記複数回の検出において、一度も汚れ無しを確認できなかった場合(前記複数回の検出のすべてにおいて、受光素子42での受光光量が、予め設定されたしきい値より大きい場合)には、汚れ有りと判別し、フラグAを立てない(A=0)。
【0168】
なお、ステップS102での発光素子41の発光は、1秒周期に限定されないことは、言うまでもない。
【0169】
次いで、チップ5が測光部4の先端部にチップ5が装着されると(ステップS103)、フラグA=1か否かを判断し(ステップS104)、フラグA=1の場合には、汚れがなく、測定が可能である旨を示す「OK」を液晶表示装置9に表示し(ステップS106)、次の処理(例えば、測定)へ移行する。
【0170】
一方、フラグA=0の場合には、汚れがあり、測定が不可能である旨を示す汚れの警報を液晶表示装置9に表示(点灯)し(ステップS107)、次の処理へ移行する。
【0171】
また、前記ステップS105では、フラグC=1か否かを判断し、フラグC=1の場合には、前記ステップS106へ移行し、ステップS106以降を実行し、フラグC=0の場合には、前記ステップS107へ移行し、ステップS107以降を実行する。
【0172】
なお、前記フラグCについては、後で述べるが、フラグCの情報(フラグCが1であるか、または、0であるか)は、データ記憶部13の第3メモリーに記憶されており、電源スイッチがオフしても消去されず、前記ステップS105の判断に先立って、第3メモリーから読み出される。
【0173】
図14に示すように、測定が終了し、測定値が液晶表示装置9に表示され(ステップS201)、使用済みのチップ5が測光部4の先端部から取り外されると(ステップS202)、発光素子41を1秒周期で間欠的に複数回発光し、それぞれにおいて、前述した汚れ検出を行う(ステップS203)。
【0174】
そして、前記複数回の検出において、一度でも汚れ無しを確認できた場合には、汚れ無しと判別し、その旨を示すフラグCを立て(C=1)、フラグCの情報(C=1)を、データ記憶部13の第3メモリーに記憶する。
【0175】
一方、前記複数回の検出において、一度も汚れ無しを確認できなかった場合(前記複数回の検出のすべてにおいて、受光素子42での受光光量が、予め設定されたしきい値より大きい場合)には、汚れ有りと判別し、フラグCを立てず(C=0)、フラグCの情報(C=0)を、データ記憶部13の第3メモリーに記憶する。
【0176】
なお、ステップS203での発光素子41の発光は、1秒周期に限定されないことは、言うまでもない。
【0177】
次いで、電源スイッチがオフすると(ステップS204)、フラグC=0か否かを判断し(ステップS205)、フラグC=1の場合には、次の処理へ移行する。なお、厳密には、電源スイッチは、必要な処理が終了した後にオフする。
【0178】
一方、フラグC=0の場合には、後述するステップS206へ進み、ステップS206を実行した後、次の処理へ移行する。
【0179】
ここで、前記ステップS202において使用済みのチップ5が測光部4の先端部から取り外されない場合には、前記ステップS203が実行されず、フラグC=0となっている。
【0180】
すなわち、使用済みのチップ5が測光部4の先端部に装着された状態で電源スイッチがオフすると(ステップS204)、前記ステップS205においてフラグC=0と判別され、ステップS206に進む。
【0181】
ステップS206では、発光素子41を1秒周期で間欠的に複数回発光し(30秒間)、それぞれにおいて、前述した汚れ検出を行う。
【0182】
そして、前記複数回の検出において、一度でも汚れ無しを確認できた場合には、汚れ無しと判別し、その旨を示すフラグCを立て(C=1)、フラグCの情報(C=1)を、データ記憶部13の第3メモリーに記憶する。
【0183】
一方、前記複数回の検出において、一度も汚れ無しを確認できなかった場合(前記複数回の検出のすべてにおいて、受光素子42での受光光量が、予め設定されたしきい値より大きい場合)には、汚れ有りと判別し、フラグCを立てず(C=0)、フラグCの情報(C=0)を、データ記憶部13の第3メモリーに記憶する。
【0184】
このように、使用済みのチップ5が測光部4の先端部に装着された状態で電源スイッチがオフした場合でも、前記ステップS206により、汚れ検出がなされる。
【0185】
なお、ステップS206での発光素子41の発光は、1秒周期に限定されず、また、発光素子41の発光継続時間も30秒には限定されないことは、言うまでもない。
【0186】
前記データ記憶部13の第3メモリーに記憶されたフラグCの情報(フラグCが1であるか、または、0であるか)は、次回、電源スイッチがオンしたとき、ステップS105の判断において利用される。
【0187】
すなわち、次回、チップ5が測光部4の先端部に装着された後(装着された状態で)、電源スイッチがオンしたとき、前記ステップS105の判断に先立って、第3メモリーから読み出され、ステップS105の判断において利用される。
【0188】
これにより、チップ5が測光部4の先端部に装着された状態で、電源スイッチがオンした場合でも、1回前の測定の際に得られた光透過性部材45の汚れに関する情報(警報等)を表示することができる。
【0189】
次に、汚れ検出モードにおける成分測定装置1の制御手段10の制御動作を説明する。なお、汚れ検出詳細モードについては、説明を省略する。
【0190】
前述したように、時刻設定・変更スイッチがオンした状態で、電源スイッチがオンすると、図15に示すように、汚れ検出モードに設定され(ステップS301)、テストチップ20が測光部4の先端部に装着され(ステップS302)、呼出スイッチがオンすると(ステップS303)、発光素子41を1回発光し、前述した汚れ検出を行う(ステップS304)。
【0191】
そして、汚れ無しを確認できた場合には、汚れ無しと判別し、その旨を示すフラグBを立てる(B=1)。
【0192】
一方、汚れ無しを確認できなかった場合(受光素子42での受光光量が、予め設定されたしきい値より大きい場合)には、汚れ有りと判別し、フラグBを立てない(B=0)。
【0193】
なお、ステップS304での発光素子41の発光は、1回に限定されないことは、言うまでもない。
【0194】
次いで、フラグB=1か否かを判断し(ステップS305)、フラグB=1の場合には、汚れがない旨を示す「YES」を液晶表示装置9に表示し(ステップS306)、次の処理へ移行する。
【0195】
一方、フラグB=0の場合には、汚れがある旨を示す「NO」等の汚れに関する情報を液晶表示装置9に表示し(ステップS307)、次の処理へ移行する。
【0196】
以上説明したように、この成分測定装置1によれば、黒レベルチェック方式を採用して光透過性部材45の汚れを検出するので、光透過性部材45の汚れを精度良く検出することができる。
【0197】
これにより、光透過性部材45が汚れた状態での測定を防止することができ、測定精度を向上させることができる。
【0198】
<第2実施形態>
次に、本発明の成分測定装置の第2実施形態について説明する。
【0199】
図19は、本発明の成分測定装置の第2実施形態の測光部の構成を示す断面図である。
【0200】
以下、第2実施形態の成分測定装置について説明するが、前記第1実施形態の成分測定装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0201】
第2実施形態では、測光部4の構成が異なり、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。すなわち、図19に示す測光部4は、押え部材47が追加されている点で、前記第1実施形態の測光部4と異なる。
【0202】
押え部材47は、光透過性部材45をホルダー43に対して固定するものである。この押え部材47は、光透過性部材45に当接する当接部471と、当接部471と一体的に形成された胴部473とで構成されている。
【0203】
胴部473は、押え部材47をホルダー43の先端部へ装着する装着部を構成する。すなわち、図19に示すように、押え部材47の胴部473の内側に、ホルダー43の先端部を挿入して、押え部材47をホルダー43へ装着する。
【0204】
環状凹部435内にOリング46を、凹部434内に光透過性部材45をそれぞれ収納した状態で、押え部材47をホルダー43の先端部に装着すると、当接部471が光透過性部材45に当接し、これをホルダー43に向かって押圧する。また、Oリング46は、その弾性力により光透過性部材45を当接部471に向かって押圧する。これにより、光透過性部材45は、ホルダー43に対して固定される。
【0205】
また、ホルダー43の先端部外周には、複数のリング状の凹部で構成される接着剤溜り436が設けられている。この接着剤溜り436内に接着剤が供給され、これにより、押え部材47はホルダー43に対して固定(固着)される。
【0206】
なお、押え部材47のホルダー43への固定(固着)の方法は、接着剤による接着による方法に代わり、例えば、融着、嵌合、螺合等の方法を用いてもよい。押え部材47をホルダー43に対して、嵌合や螺合の方法により固定すると、光透過性部材45やOリング46を、必要時に取替えることができ便利である。
【0207】
また、胴部473の基端外周には、チップ装着状態で、チップ5の基端部が嵌合する嵌合部44が形成されている。
【0208】
当接部471は、平板状をなしており、そのほぼ中央には、発光素子41が発する光、および試験紙53で反射された反射光が通過する開口部472が形成されている。
【0209】
この開口部472は、その横断面形状が先端(外側端部)から基端(内側端部)までの任意の位置においてほぼ等しい形状(相似形)をなしているが、先端から基端に向かって横断面積が連続的に漸減している。すなわち、開口部472の内面が当接部471(当接部471の先端面および基端面)に対して所定角度(図19中θ)で傾斜している。
【0210】
このような構成により、押え部材47の先端面に指等が接触した場合でも、この指等が光透過性部材45の先端面(外側面)に接触するのを防止できるという効果(接触防止効果)が得られる。
【0211】
また、例えば、光透過性部材45の先端面や開口部472の内面に、埃や血液等が付着した場合や、光透過性部材45の先端面に指等が接触し、油脂(指紋)等が付着した場合でも、これらを容易かつ確実に除去することができるという効果が得られる。
【0212】
開口部472の横断面形状は、光透過性部材45の形状(平面視形状)とほぼ等しく、また、開口部472の横断面積(平均)は、光透過性部材45の面積より若干小さく設定されるのが好ましい。これにより、前記光および反射光の通過を妨げることなく、当接部471(押え部材47)により光透過性部材45を確実に押圧して、ホルダー43に対して固定することができる。また、前記接触防止効果を十分に発揮させることもできる。
【0213】
かかる観点からは、開口部472の横断面積(平均)は、0.1〜100mm程度であるのが好ましい。
【0214】
また、本実施形態では、開口部472の基端の開口面積が、光透過性部材45の面積より若干小さく設定されるのが好ましい。
【0215】
特に、図19に示すように、開口部472の基端(内側端部)の開口面積は、ホルダー43の通路の開口面積より大きく設定されているのが好ましい。これにより、光透過性部材45の先端面や開口部472の内面に付着した汚れ等の付着物を除去した際に、光透過性部材45と開口部472との境界部付近に若干の付着物が残存した場合でも、発光素子41からの光および試験紙53で反射された反射光の光路の妨げとなるのを防止することができ、その結果、測定精度の低下を防止することができる。
【0216】
なお、開口部472は、その横断面積が先端から基端に向かって段階的に減少する構成であってもよく、横断面積が減少する部分を部分的に有する構成であってもよい。
【0217】
図19に示すように、縦断面における開口部472の内面同士の最大離間距離(開口部472の横断面形状が円形の場合、最大直径)をL[mm]とし、開口部472の厚さ(本実施形態では、当接部471の厚さに対応する)をL[mm]としたとき、L/Lが0.1以上なる関係を満足するのが好ましく、0.1〜0.4なる関係を満足するのがより好ましい。これにより、前記接触防止効果が好適に発揮される。
【0218】
当接部471の平均厚さ(開口部472の厚さ)Lは、押え部材47の構成材料等によっても若干異なり、特に限定されないが、0.1〜10mm程度であるのが好ましい。当接部471の厚さが薄過ぎると、当接部471(押え部材47)の強度が低下するおそれがあるとともに、前記接触防止効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、当接部471の厚さを前記上限値を超えて厚くすると、測光部4が大型化し好ましくない。
【0219】
以上のような押え部材47の構成材料としては、前記ホルダー43で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0220】
以上、本発明の成分測定装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0221】
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0222】
また、本発明では、発光素子と受光素子は1組に限られることなく、複数用いることができる。さらに、成分測定のための発光素子と受光素子とは別に、汚れ検出用の発光素子と受光素子を設けることができるが、成分測定と汚れ検出を同じ素子により行うことが好ましい。成分測定においては、用いる光の波長への汚れの影響が重要だからである。
【0223】
また、前記実施形態では、検体として血液を挙げて説明したが、検体はこれに限らず、その他、例えば尿、リンパ液、髄液、唾液等の体液またはその希釈液、濃縮液であってもよい。
【0224】
また、測定目的とする成分(所定成分)は、ブドウ糖(血糖値)に限らず、例えば、コレステロール、尿酸、クレアチニン、乳酸、ヘモグロビン(潜血)、各種アルコール類、各種糖類、各種タンパク質、各種ビタミン類、ナトリウム等の各種無機イオン等であってもよい。
【0225】
また、前記実施形態では、所定成分の量を測定するものとして説明したが、本発明では、所定成分の性質を測定するものであってもよく、また、所定成分の量および性質の双方を測定するものであってもよい。
【0226】
また、前記実施形態では、シール材としてOリング(弾性材料で構成されたシール材)を用いる場合を代表に説明したが、シール材には、各種樹脂材料等のシール性を有する材料(例えば接着剤)を用いることもできる。
【0227】
また、前記実施形態では、試験紙を備えるチップを装着して使用する成分測定装置について説明したが、本発明の成分測定装置は、スティック状、シート状等のチップを用いるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】本発明の成分測定装置の第1実施形態の内部構造を示す平面図である。
【図2】図1に示す成分測定装置の断面側面図である。
【図3】図1に示す成分測定装置のブロック図である。
【図4】図1に示す成分測定装置の測光部の構成を示す縦断面図である。
【図5】図1に示す成分測定装置の測光部の構成を示す縦断面図である。
【図6】光透過性部材の汚れ具合(汚れ状態)を換えたときの黒レベルチェック方式における特性を示すグラフである。
【図7】光透過性部材の汚れ具合(汚れ状態)を換えたときの白レベルチェック方式における特性を示すグラフである。
【図8】図1に示す成分測定装置にテストチップを装着した状態であって、そのテストチップの実施形態(構成例)を示す平面図である。
【図9】図8に示すテストチップの断面平面図である。
【図10】通常測定モードにおいて、光透過性部材に汚れがない場合における受光素子での受光光量と、操作手順との関係を示すタイミングチャートである。
【図11】通常測定モードにおいて、光透過性部材に汚れがある場合における受光素子での受光光量と、操作手順との関係を示すタイミングチャートである。
【図12】通常測定モードにおいて、受光素子42での受光光量と、操作手順との関係を示すタイミングチャートである。
【図13】図1に示す成分測定装置の制御手段の制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】図1に示す成分測定装置の制御手段の制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】図1に示す成分測定装置の制御手段の制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図16】チップの構成を示す縦断面図である。
【図17】図16に示すチップを成分測定装置に装着した状態を示す縦断面図である。
【図18】図16に示すチップを用いて血液を採取するときの状態を示す側面図である。
【図19】本発明の成分測定装置の第2実施形態の測光部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0229】
1 成分測定装置
2 ケーシング
3 プリント基板
31 操作ボタン
32、33、34 操作部材
4 測光部
41 発光素子
42 受光素子
43 ホルダー
431 第1の通路
432 第2の通路
433 開口部
434 凹部
435 環状凹部
436 接着剤溜り
44 嵌合部
45 光透過性部材
46 Oリング
47 押え部材
471 当接部
472 開口部
473 胴部
49 A/D変換器
5 チップ
51 チップ本体
511 底部
512 台座部
513 胴部
514 フランジ
52 細管
520 検体導入流路
521 検体流入側端部
522 溝
523 検体流入口
525 検体流出側端部
526 溝
527 検体流出口
53 試験紙
531 凸部
532 環状の凸部
533 固定部
54 間隙
55 検体溜り
56 スペーサー
6 電源部
61 電池
7 電源電圧検出部
8 スイッチ回路
9 液晶表示装置
10 制御手段
11 制御発振部
12 時計発振部
13 データ記憶部
14 ブザー出力部
15 外部出力部
16 温度測定部
18 血液
19 汚れ
20 テストチップ
21 仕切り板
S101〜S107 ステップ
S201〜S206 ステップ
S301〜S307 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験部位を備える成分測定用チップの該試験部位を測色して検体中の所定成分の量および/または性質を測定する成分測定装置であって、
前記成分測定用チップを着脱自在に装着するチップ装着部と、
前記測定の際、前記成分測定用チップの前記試験部位へ光を照射する発光素子と、前記試験部位で反射された反射光を受光する受光素子と、前記発光素子および前記受光素子を収納、保持するホルダーとを有する測光部と、
前記測光部からの信号に基づいて前記所定成分の量および/または性質を求める制御手段とを備え、
前記ホルダーには、前記光および前記反射光が通過する通路が形成され、前記ホルダーの前記試験部位に臨む部分に、光透過性部材が設けられており、
前記チップ装着部に前記成分測定用チップが装着される前に当該成分測定装置の電源が投入された場合に、前記測光部の前記発光素子から光を照射し、前記受光素子で受光し、前記制御手段において、該受光素子での受光光量に基づいて前記光透過性部材の汚れ検出を行い、前記受光素子での受光光量がしきい値より大きい場合に、前記光透過性部材に汚れ有りと判別するよう構成されていることを特徴とする成分測定装置。
【請求項2】
前記チップ装着部への前記成分測定用チップの装着の有無を判別する手段を有する請求項1に記載の成分測定装置。
【請求項3】
前記測光部より入力された測光データを記憶する記憶手段を有し、
前記所定成分の測定終了後、前記チップ装着部から前記成分測定用チップが取り外されると、前記光透過性部材の汚れ検出を行い、その結果を前記記憶手段に記憶するよう構成されている請求項1または2に記載の成分測定装置。
【請求項4】
前記チップ装着部に前記成分測定用チップが装着された状態で当該成分測定装置の電源が投入された場合に、前記光透過性部材の汚れ検出を行わずに、前記記憶手段に記憶されている前回の前記所定成分の測定終了後に行った汚れ検出の結果を代用するよう構成されている請求項3に記載の成分測定装置。
【請求項5】
前記光透過性部材の汚れ検出の結果を報知する報知手段を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−25316(P2009−25316A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254243(P2008−254243)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【分割の表示】特願2003−201933(P2003−201933)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】