説明

成形ロールチョックの引き出し方法

【課題】 短い時間で段積みが可能な成形ロールチョックの引き出し方法を提供する。
【解決手段】 電縫管の成形ロールスタンド11から、電縫管製造ライン13と直交する方向に下ロールチョック25、26、左右対となるサイドロールチョック22、23及び上ロールチョック18、19の順に段積みされた成形ロールチョック10を引き出す方法であって、上ロールチョック18、19を成形高さ位置から上昇限位置Jまで上昇し、下ロールチョック25、26を成形高さ位置から下降限位置Kまで下降し、左右対となるサイドロールチョック22、23を成形水平位置から段積み可能位置まで水平移動した後、下ロールチョック25、26を上昇して、段積み可能位置にある左右対となるサイドロールチョック22、23を下ロールチョック25、26上に段積みし、次に、上ロールチョック18、19をサイドロールチョック22、23上に段積みする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形ロールチョックが組付けられた電縫管の成形ロールスタンドから、電縫管製造ラインと直交する方向に下ロールチョック、左右対となるサイドロールチョック及び上ロールチョックの順に段積みされた成形ロールチョックを引き出す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電縫管の成形ロールスタンドにおいて、段積みされた複数のロール及びロールチョックよりなる成形ロールチョックを電縫管の流れラインと直交する方向に出入りさせる形態のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図7(c)に示すように、特許文献1に記載された電縫管の成形ロールスタンド170においては、上ロールと上ロールチョック171、左右のサイドロールと左右のサイドロールチョック172及び下ロールと下ロールチョック173を段積みして成形ロールチョック174を構成している。
図7の(a)〜(d)は、成形ロールチョック174の段積みフローを示している。
成管終了時(即ち、段積み開始前)の状態(工程(a))から、まず上ロールと上ロールチョック171を下降させ、成形高さ位置175にある左右のサイドロールと左右のサイドロールチョック172上に段積みし(工程(b))、次に、下ロールと下ロールチョック173を上昇させ、上ロールと上ロールチョック171及び左右のサイドロールと左右のサイドロールチョック172を下ロールと下ロールチョック173上に段積みして、一体化した成形ロールチョック174とし(工程(c))、最後に、成形ロールチョック174を若干上昇させて、引き出し高さ位置176に移動させ、成形ロールチョック174を引き出し可能な状態(工程(d))とする。なお、ロールチョック間のいずれの段積みにおいても、嵌合部に相互嵌入するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特許第3145480号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の電縫管の成形ロールスタンド170における成形ロールチョック174の引き出し方法においては、未だ解決すべき以下のような問題があった。
相互嵌入による各ロールチョックの段積みの順序を、上から順に行うので、上ロールと上ロールチョック171が工程(a)から工程(b)では下降し、一方、工程(c)から工程(d)では上昇するため、上下方向に重複する移動があり、この結果、段積み時間が長くかかるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、短い時間で段積みが可能な成形ロールチョックの引き出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る成形ロールチョックの引き出し方法は、電縫管製造ライン上に配置され、上ロールを保持した上ロールチョック、左右対となるサイドロールをそれぞれ保持した左右対となるサイドロールチョック、及び下ロールを保持した下ロールチョックから構成される成形ロールチョックが組付けられた電縫管の成形ロールスタンドから、前記電縫管製造ラインと直交する方向に、前記下ロールチョック、前記左右対となるサイドロールチョック及び前記上ロールチョックの順に段積みされた前記成形ロールチョックを引き出す方法であって、前記上ロールチョックを成形高さ位置から上昇限位置まで上昇し、前記下ロールチョックを成形高さ位置から下降限位置まで下降し、前記左右対となるサイドロールチョックを成形水平位置から段積み可能位置まで水平移動した後、前記下ロールチョックを上昇して、段積み可能位置にある前記左右対となるサイドロールチョックを該下ロールチョック上に段積みし、次に、前記上ロールチョックを前記サイドロールチョック上に段積みする。
【0007】
本発明に係る成形ロールチョックの引き出し方法において、前記左右対となるサイドロールチョックの上面及び下面にはそれぞれ、先端部に嵌入部が形成された複数個の支持ロッドを設け、前記左右対となるサイドロールチョックの上面及び下面に対向する前記上ロールチョックの下部及び前記下ロールチョックの上部にはそれぞれ、前記複数個の支持ロッドの嵌入部が嵌入するロッド嵌入孔を形成してもよい。
本発明に係る成形ロールチョックの引き出し方法において、前記下ロールチョックに設けられた複数の車輪が転動し、かつロール交換用レールに接続する機内レールを上昇することにより前記下ロールチョックの上昇を行ってもよい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜3記載の成形ロールチョックの引き出し方法においては、上ロールチョックを成形高さ位置から上昇限位置まで上昇し、下ロールチョックを成形高さ位置から下降限位置まで下降し、左右対となるサイドロールチョックを成形水平位置から段積み可能位置まで水平移動した後、下ロールチョックを上昇して、段積み可能位置にある左右対となるサイドロールチョックを下ロールチョック上に段積みし、次に、上ロールチョックをサイドロールチョック上に段積みするので、上下方向に重複する移動が無く、この結果、短い時間で成形ロールチョックの段積みができる。
【0009】
特に、請求項2記載の成形ロールチョックの引き出し方法においては、左右対となるサイドロールチョックの上面及び下面にはそれぞれ、先端部に嵌入部が形成された複数個の支持ロッドを設け、左右対となるサイドロールチョックの上面及び下面に対向する上ロールチョックの下部及び下ロールチョックの上部にはそれぞれ、複数個の支持ロッドの嵌入部が嵌入するロッド嵌入孔を形成しているので、支持ロッドの嵌入部とロッド嵌入孔とにより確実に段積みできると共に、各チョック間の相対的な横移動を防止することができる。
【0010】
請求項3記載の成形ロールチョックの引き出し方法においては、下ロールチョックに設けられた複数の車輪が転動し、かつロール交換用レールに接続する機内レールを上昇することにより下ロールチョックの上昇を行うので、ロールチョックの上昇手段をコンパクトに構成できると共に、成形ロールチョックを迅速に引き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る成形ロールチョックの引き出し方法を適用する成形ロールチョックが組付けられた電縫管の成形ロールスタンドを備えたインナースタンド式圧延機の斜視図、図2は同成形ロールチョックが引き出された電縫管の成形ロールスタンドを備えたインナースタンド式圧延機の斜視図、図3は成形ロールチョックが組付けられた電縫管の成形ロールスタンドの正面図、図4は成形ロールチョックの分解斜視図、図5(A)、(B)はそれぞれ、成形ロールチョックのオフライン組替時及びオンラインセット時の斜視図、図6は成形ロールチョックの段積みフローの模式的な説明図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る成形ロールチョックの引き出し方法を適用する成形ロールチョック10が組付けられたインナースタンド式圧延機12の電縫管の成形ロールスタンド(外側ハウジング)11の構成について説明する。
成形ロールスタンド11は電縫管製造ライン13上に配置されており、図2に示すように、成形ロールスタンド11の内側には、電縫管製造ライン13と直交するロール交換ライン14に面した側に開口部15を有する平面視してU字状のインナースタンド16が組み込まれている。なお、説明を簡略にするため、電縫管製造ライン13の方向を前後方向、ロール交換ライン14の方向を左右方向、前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向と定義する。
【0013】
図1に示すロール組付位置Xにおいて、インナースタンド16の内部には、成形ロールチョック10が成形位置に組付けられている。図4及び図5(A)、(B)に示すように、成形ロールチョック10は、上、下ロール17、24と、サイドロール20、21と、上、下ロール17、24の両軸端部を回転自在に支承するそれぞれ対となる上、下ロールチョック18、19及び25、26と、サイドロール20、21の軸端部を回転自在に支承するそれぞれ対となるサイドロールチョック22、23とから構成されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、インナースタンド16の開口部15には、上下動するサイドロール駆動部27が嵌合されており、成形ロールチョック10の引き出し時に、下ロールチョック25、26、左右対となるサイドロールチョック22、23及び上ロールチョック18、19の順に段積みされた成形ロールチョック10は、サイドロール駆動部27を上昇して開口部15を開けることによって、ロール組付位置Xからロール交換位置Yに向けてロール交換ライン14上を移動することができるようになっている。
【0015】
サイドロール駆動部27は、インナースタンド16の開口部15を開放して成形ロールチョック10のインナースタンド16への出し入れを可能とする出入可能位置である上方位置xと、インナースタンド16の開口部15を閉じてインナースタンド16の剛性を高めて、サイドロール20を駆動可能なロール駆動位置である下方位置yとの間で上下動可能に構成されている。
【0016】
インナースタンド式圧延機12の成形ロールスタンド11の構成について具体的に説明する。
図1及び図2に示すように、成形ロールスタンド11は、床面F上に設けられた矩形状の基礎板28上の角部にそれぞれ立設される4本の側柱29を備えており、前後方向の側柱29間の内面の中間高さ位置には、インナースタンド16が取付けられている。
【0017】
図1〜図3に示すように、インナースタンド16は、それぞれ前後方向に平行間隔をあけて配置された対となる前垂直部材30及び後垂直部材31と、前垂直部材30及び後垂直部材31の右端部同士を一体的に連結するサイドロール駆動部32とを備えている。前垂直部材30及び後垂直部材31の左端部同士は、昇降自在なサイドロール駆動部27によって連結されている。サイドロール駆動部27は成形ロールスタンド11の上部に設けられたロール駆動部昇降装置33によって昇降されるようになっている。
【0018】
成形ロールスタンド11の前後の側柱29の上端部同士は上部横架フレーム34によって相互に連結されており、成形ロールスタンド11の内部の上部には左右対となる吊下フレーム35が配設されており、それぞれの吊下フレーム35の中央部は、上部横架フレーム34の中央部に載置したロールチョック吊下用シリンダ(バランスシリンダ)36の作動ロッド(図示せず)の下端部に連結されている。
【0019】
図1〜図5に示すように、吊下フレーム35の前、後両側部には、上ロールチョック18、19の上部の前、後側に形成された係止突起部37、38に着脱自在に係止される吊下フック39、40が取付けられている。一方、上部横架フレーム34の左、右側部には、圧下装置駆動用モータ41によって同期して作動する圧下装置42、43が載置されており、圧下装置42、43の下端に取付けられた圧下ブロック44は、上ロールチョック18、19の上面45、46に圧接されている。かかる構成によって、ロールチョック吊下シリンダ36により上ロール17を吊下しながら、圧下装置42、43により上ロールチョック18、19を圧下することができる。
【0020】
図1〜図3に示すように、成形ロールスタンド11の下部には、駆動モータ47によって同期して駆動される対となる圧上装置48、49が配設されており、圧上装置48、49のラム50上に、下ロールチョック25、26の下面51が昇降自在に載置支持されている。
また、成形ロールスタンド11の下部において、インナースタンド16の下部にはレール昇降ガイド52が固着されており、レール昇降ガイド52には、前後方向に平行間隔をあけて配置された対となる機内レール53、54が取付けられている。
【0021】
一方、基礎板28には、機内レール53、54を昇降するレール昇降シリンダ55、56が設置されている。対となる下ロールチョック25、26の下部には、機内レール53、54上を転動可能な成形ロールチョック10の車輪57が4個取付けられている。
かかる構成によって、段積みにより一体化された成形ロールチョック10は、インナースタンド16からロール交換ライン14に向けて出入することができる。
【0022】
図3、図4及び図5(A)、(B)に示すように、下ロールチョック25、26の上部の4角部にはロッド載置面58〜61及び62〜65が形成されており、図5(A)で示すオフライン組替時では、ロッド載置面58〜61及び62〜65上には、段積み可能位置にあるサイドロールチョック22、23の下面に取付けられた支持ロッド66〜69及び70〜73が載置されている。
【0023】
なお、支持ロッド70(66〜69及び71〜73も同じ)は、図3の拡大図に示すように、先端部に縮径された円柱状の嵌入部82が形成されており、一方、ロッド載置面62(58〜61及び63〜65も同じ)には、支持ロッド70の嵌入部82が挿通されるロッド嵌入孔83が形成されている。嵌入部82が嵌入孔83に嵌入された状態で、ロッド嵌入孔83の上端周囲のリング状の載置面84に、嵌入部82の上端周囲のリング状の載置面85が当接するように構成されている。
かかる構成によって、図5(A)に示すように、オフライン組替時には、段積み可能位置にあるサイドロールチョック22、23を、支持ロッド66〜69及び70〜73を介して、下ロールチョック25、26上に段積み支持することができる。
【0024】
図4及び図5(A)、(B)に示すように、下ロールチョック25、26のロッド載置面58〜61及び62〜65から左右方向内側に所定距離だけ離れた位置には、それぞれ支持ロッド66〜69及び70〜73が落ち込むロッド嵌入部74〜77及び78〜81が形成されている。かかる構成によって、図5(A)から図5(B)に示すように、サイドロールチョック22、23をそれぞれ左右方向内側の成形水平位置に移動させることによって、支持ロッド66〜69及び70〜73をロッド嵌入部74〜77及び78〜81に落ち込ませて、下ロールチョック25、26を所定の成形位置まで移動することを可能にする。
【0025】
一方、上ロールチョック18、19の下端部の前、後部にはそれぞれロッド当接ブロック86、87及び88、89が形成されており、図5(A)で示すオフライン組替時では、これらのロッド当接ブロック86、87及び88、89は、サイドロールチョック22、23の上面に取付けられた支持ロッド90、91及び92、93に当接支持されている。支持ロッド91(90、92、93も同じ)と上ロールチョック18、19のロッド当接ブロック87(86、88、89も同じ)との取り合いは、支持ロッド70とロッド載置面62との取り合いと同様、図3に示すように、支持ロッド91の嵌入部98がロッド当接ブロック87のロッド嵌入孔99に挿通されるようになっている。
【0026】
なお、支持ロッド91の嵌入部98の下端のリング状の載置面98aにロッド嵌入孔99の下端のリング状の載置面99aが当接するようになっている。かかる構成によって、図5(A)に示すように、オフライン組替時には、上ロールチョック18、19を、支持ロッド90、91及び92、93を介してサイドロールチョック22、23上に支持することができる。
【0027】
また、図4及び図5(A)、(B)に示すように、ロッド当接ブロック86、87及び88、89から幅(左右)方向内側に所定距離だけ離れた位置にはそれぞれ、支持ロッド90、91及び92、93が嵌入するロッド嵌入部94、95及び96、97が形成されている。かかる構成によって、図5(B)に示すように、サイドロールチョック22、23を左右方向内側(成形水平位置)に移動させることによって、支持ロッド90、91及び92、93をロッド嵌入部94、95及び96、97に落ち込ませて、上ロールチョック18、19を所定の成形位置まで移動することを可能にする。
【0028】
図1及び図2に示すように、ロール駆動部昇降装置33によって昇降されるサイドロール駆動部27は、前後方向に伸延する昇降ブロック100と、昇降ブロック100内にサイドロールチョック22に向けて進退自在に配設される進退ラム101と、進退ラム101を駆動するためのロール駆動モータ102とを備えており、ロール駆動モータ102を駆動して進退ラム101を進退させることによって、サイドロールチョック22を水平移動させることができる。
【0029】
ロール駆動部昇降装置33においては、昇降ブロック100の前後方向両側部はインナースタンド16を構成する前垂直部材30及び後垂直部材31の内面に摺動自在に当接されており、昇降ブロック100の外端面には、前垂直部材30及び後垂直部材31の外面間の幅より広い幅を有する横長の閉鎖フランジ103が連設されている。昇降ブロック100の上面には、ロール駆動部昇降シリンダ104の作動ロッド105の先端部が取付けられている。
【0030】
かかる構成によって、ロール駆動部昇降シリンダ104を駆動することによって、サイドロール駆動部27を、円滑にかつ確実に、図2に示す成形ロールチョック出入可能位置である上方位置xと、図1に示すロール駆動位置である下方位置yとの間で昇降することができる。サイドロール駆動部27を上方に移動することによって、成形ロールチョック10の出入作業を容易かつ確実に行なうことができる。
【0031】
実施の形態におけるその他の構成について説明すると、図1及び図2に示すように、ロール交換ライン14上には一端がインナースタンド式圧延機12の左側部に接続され、前後方向に間隔をあけて配置された対となるロール交換用レール106が配設されており、ロール交換用レール106の延長線上にはロール交換用シリンダ107が配設されている。ロール交換用シリンダ107のロッドの先端部には、成形ロールチョック10の下ロールチョック25の左端部に設けられた連結金具(図示せず)に着脱可能な連結金具107aが取付けられている。ロール交換用レール106の他端を構成するレール端部108は、ローラ交換ライン14と直交する方向に敷設された対となる横行レール109、110上を移動する横行台111上に載置されている。横行台111には成形ロールチョック横行用シリンダ112が連結されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、インナースタンド16の右端部にはサイドロール21を駆動するためのサイドロール駆動部113が取付けられており、サイドロール駆動部113は動力伝達軸114を介して、成形ロールスタンド11 の上部横架フレーム34に取付けられているロールチョック駆動用モータ115に連動連結されている。
【0033】
図3には図示していないが、インナースタンド16は成形ロールスタンド11に対して着脱自在に連結されており、必要に応じて、インナースタンド16自体もロール交換ライン14を介して外部に引き出すことができるように構成されている。また、インナースタンド16には、サイドロールチョック22、23をクランプするコッターを出し入れするためのシリンダを備えたコッター手段が取付けられている。なお、コッターは、図3〜図5に示すように、サイドロールチョック22、23の側面に取付けられた摺動突起117、118と嵌合可能な構成となっている。
【0034】
次に、成形ロールチョック10が組付けられた電縫管の成形ロールスタンド11を備えたインナースタンド式圧延機12に適用した、本発明の一実施の形態に係る成形ロールチョックの引き出し方法について、図1〜図3及び特に、図6を参照して説明する。
図6の工程(a)は成管終了時、即ち、成形ロールチョック10の取り出し開始前の状態を表している。この状態より、圧下装置42、43の下端に取付けられた圧下ブロック44を上限に移動させた後、ロールチョック吊下用シリンダ36により、吊下フック39、40を介して上ロールチョック18、19を成形高さ位置から上昇限位置Jまで上昇させる。
【0035】
一方、圧上装置48、49のラム50を下限に移動させ、下ロールチョック25、26を成形高さ位置から下降限位置Kに下降する。本実施の形態では下降限位置Kにおいて、下ロールチョック25、26の車輪57と機内レール53、54との隙間を約10mm設けている。なお、図6の工程(a)では、下ロールチョック25、26は既に下降限位置Kにある状態を表している。ここで、成形高さ位置とは成形時の上、下ロールチョック18、19及び25、26の高さを、上昇限位置Jとは上ロールチョックの18、19がロールチョック吊下用シリンダ36によって上昇可能な高さを、下降限位置Kとは下ロールチョック25、26の下降可能な高さを表している。
【0036】
サイドロールチョック22(23も同じ)を成形ロールチョック10の段積み可能位置に水平移動する(図5(A)、(B)参照)。即ち、本実施の形態では、サイドロールチョック22を成形時位置(図5(B))から(段積み可能位置+約5mm)まで左右方向外側に後退させる(図5(A))。
【0037】
従動側(ワークサイド)のサイドロール駆動部27のインナースタンド16に対するクランプを開とした後、ロール駆動部昇降シリンダ104によりサイドロール駆動部27を上方位置xまで上昇する。
サイドロールチョック22(23も同じ)のガイドを開とし、ロール交換用シリンダ107のロッドを伸ばして連結金具107aを挿入限位置に待機させる。
【0038】
レール昇降シリンダ55、56により機内レール53、54を上昇させることによって、工程(b)から工程(c)に示すように、最初に下ロールチョック25、26を上昇させ、段積み可能位置にあるサイドロールチョック22、23を下ロールチョック25、26上に嵌入、段積みする。
引き続きレール昇降シリンダ55、56により機内レール53、54を上昇させることによって、工程(c)から工程(d)に示すように、段積みされた下ロールチョック25、26及びサイドロールチョック22、23を一体的に上昇させ、上ロールチョック18、19を段積み可能位置にあるサイドロールチョック22、23に嵌入、段積みする。これにより、成形ロールチョック10として一体化が完了する。
【0039】
更に、機内レール53、54により成形ロールチョック10を引き出し高さ位置Hまで少し上昇させ、上ロールチョック18、19の係止突起部37、38と吊下フック39、40との接地面を離して、成形ロールチョック10を機内レール53、54上に預ける。
本実施の形態では、一例として、機内レール53、54の上昇ストロークSR =250mm、下ロールチョック25、26の上昇ストロークSB =240mm、サイドロールチョック22、23の上昇ストロークSS =200mm、上ロールチョック18、19の上昇ストロークSU =20mmとしている。
【0040】
サイドロールチョック22、23のクランプ用コッターを開とし、上スピンドルポジショナーを閉とした後、ロール交換用シリンダ107を駆動し、機内レール53、54及び機内レール53、54と接続された対となるロール交換用レール106上を転動する車輪57を介して、成形ロールチョック10をロール組付位置Xからロール交換位置Y(横行台111上)まで移動する。
【0041】
成形ロールチョック横行用シリンダ112により横行台111を後側にシフトさせて、ロール交換用レール106から成形ロールチョック10を取り外す。その後、新しい段積みされた成形ロールチョック10をロール交換用レール106に載置し、再度、ロール交換用シリンダ107を駆動して、新しい成形ロールチョック10をロール交換位置Yからロール組付位置Xまで取り込み、前記工程と逆の工程により、新しい成形ロールチョック10をインナースタンド式圧延機12のインナースタンド16内に装入して組み付け、ロール成形設定作業を行う。
【0042】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の成形ロールチョックの引き出し方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
段積みのために、サイドロールチョックの上面及び下面に支持ロッドを設けたが、これに限定されず、必要に応じて、支持ロッドの代わりにその他の構造でロールチョックを段積みすることもできる。
【0043】
支持ロッドの先端部に嵌入部を形成し、対応する相手側にロッド嵌入孔を形成したが、これに限定されず、必要に応じて、嵌入部及びロッド嵌入孔を形成しなくてもよい。
ロールチョックの上昇を機内レールの上昇により行ったが、これに限定されず、必要に応じて、別の手段によりロールチョックを上昇することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態に係る成形ロールチョックの引き出し方法を適用する成形ロールチョックが組付けられた電縫管の成形ロールスタンドを備えたインナースタンド式圧延機の斜視図である。
【図2】同成形ロールチョックが引き出された電縫管の成形ロールスタンドを備えたインナースタンド式圧延機の斜視図である。
【図3】成形ロールチョックが組付けられた電縫管の成形ロールスタンドの正面図である。
【図4】成形ロールチョックの分解斜視図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ、成形ロールチョックのオフライン組替時及びオンラインセット時の斜視図である。
【図6】成形ロールチョックの段積みフローの模式的な説明図である。
【図7】従来例に係る成形ロールチョックの段積みフローの模式的な説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10:成形ロールチョック、11:成形ロールスタンド、12:インナースタンド式圧延機、13:電縫管製造ライン、14:ロール交換ライン、15:開口部、16:インナースタンド、17:上ロール、18:上ロールチョック、19:上ロールチョック、20、21:サイドロール、22:サイドロールチョック、23:サイドロールチョック、24:下ロール、25:下ロールチョック、26:下ロールチョック、27:サイドロール駆動部、28:基礎板、29:側柱、30:前垂直部材、31:後垂直部材、32:サイドロール駆動部、33:ロール駆動部昇降装置、34:上部横架フレーム、35:吊下フレーム、36:ロールチョック吊下用シリンダ、37、38:係止突起部、39、40:吊下フック、41:圧下装置駆動用モータ、42、43:圧下装置、44:圧下ブロック、45、46:上面、47:駆動モータ、48、49:圧上装置、50:ラム、51:下面、52:レール昇降ガイド、53、54:機内レール、55、56:レール昇降シリンダ、57:車輪、58〜61:ロッド載置面、62〜65:ロッド載置面、66〜69:支持ロッド、70〜73:支持ロッド、74〜77:ロッド嵌入部、78〜81:ロッド嵌入部、82:嵌入部、83:ロッド嵌入孔、84:載置面、85:載置面、86、87:ロッド当接ブロック、88、89:ロッド当接ブロック、90、91:支持ロッド、92、93:支持ロッド、94、95:ロッド嵌入部、96、97:ロッド嵌入部、98:嵌入部、98a:載置面、99:ロッド嵌入孔、99a:載置面、100:昇降ブロック、101:進退ラム、102:ロール駆動モータ、103:閉鎖フランジ、104:ロール駆動部昇降シリンダ、105:作動ロッド、106:ロール交換用レール、107:ロール交換用シリンダ、107a:連結金具、108:レール端部、109、110:横行レール、111:横行台、112:成形ロールチョック横行用シリンダ、113:サイドロール駆動部、114:動力伝達軸、115:ロールチョック駆動用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電縫管製造ライン上に配置され、上ロールを保持した上ロールチョック、左右対となるサイドロールをそれぞれ保持した左右対となるサイドロールチョック、及び下ロールを保持した下ロールチョックから構成される成形ロールチョックが組付けられた電縫管の成形ロールスタンドから、前記電縫管製造ラインと直交する方向に、前記下ロールチョック、前記左右対となるサイドロールチョック及び前記上ロールチョックの順に段積みされた前記成形ロールチョックを引き出す方法であって、
前記上ロールチョックを成形高さ位置から上昇限位置まで上昇し、前記下ロールチョックを成形高さ位置から下降限位置まで下降し、
前記左右対となるサイドロールチョックを成形水平位置から段積み可能位置まで水平移動した後、
前記下ロールチョックを上昇して、段積み可能位置にある前記左右対となるサイドロールチョックを該下ロールチョック上に段積みし、次に、前記上ロールチョックを前記サイドロールチョック上に段積みすることを特徴とする成形ロールチョックの引き出し方法。
【請求項2】
請求項1記載の成形ロールチョックの引き出し方法において、前記左右対となるサイドロールチョックの上面及び下面にはそれぞれ、先端部に嵌入部が形成された複数個の支持ロッドを設け、前記左右対となるサイドロールチョックの上面及び下面に対向する前記上ロールチョックの下部及び前記下ロールチョックの上部にはそれぞれ、前記複数個の支持ロッドの嵌入部が嵌入するロッド嵌入孔を形成したことを特徴とする成形ロールチョックの引き出し方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の成形ロールチョックの引き出し方法において、前記下ロールチョックに設けられた複数の車輪が転動し、かつロール交換用レールに接続する機内レールを上昇することにより前記下ロールチョックの上昇を行うことを特徴とする成形ロールチョックの引き出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−297423(P2006−297423A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119906(P2005−119906)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男