説明

成形品取出装置

【課題】リンク機構に沿って配線される電線を省略して、耐久性及び安全性に優れた成形品取出装置を提供する。
【解決手段】成形品取出装置に、ギアードモータ52によって水平面内で回転駆動される第1リンク3と、この第1リンク3の先端部に回転自在に取り付けられ、水平面内で移動されるアーム4と、一端が本体移動部2に回転可能に取り付けられ、他端がアーム4の長手方向の適所に回転可能に連結された第2リンク7とからなるリンク機構を設ける。アーム4には、把持機構5を駆動する把持用エアシリンダ75及び把持機構5の動作を規制する把持用メカニカルバルブ90、反転機構6を駆動する反転用ロータリアクチュエータ101及び反転機構6の動作を規制する反転用メカニカルバルブ104を搭載し、これらの各機器にエア配管110で圧力空気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシンから鋳造品を取り出す成形品取出装置に係り、特に、鋳造品を把持する把持機構及び把持した鋳造品を反転する反転機構の可動限界位置を検出する検出手段の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の成形品取出装置として、ダイカストマシンの適所に着脱可能に取り付けられる駆動ボックスの上面に、鋳造品の把持機構及び反転機構を備えたメインアームと、一端が駆動ボックスに回転可能に保持され、他端がメインアームの適所に回転可能に連結された補助リンクとからなるリンク機構を備え、このリンク機構を駆動ボックス内に内蔵された駆動機構にて駆動するものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
メインアームには、把持機構を所定の可動範囲内で往復駆動する把持用アクチュエータと、当該把持用アクチュエータの可動限界を検出するリミットスイッチ又は近接スイッチと、反転機構を所定の可動範囲内で往復駆動する反転用アクチュエータと、当該反転用アクチュエータの可動限界を検出するリミットスイッチ又は近接スイッチとが備えられており、これらの各リミットスイッチ又は近接スイッチには、リンク機構に沿って駆動ボックスから配線された電線が接続される。また、把持用アクチュエータ及び反転用アクチュエータとして電動アクチュエータを用いる場合には、これと同様に、リンク機構に沿って駆動ボックスから配線された電線がこれらの各アクチュエータに接続される。
【特許文献1】実公平2−33970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の成形品取出装置は、リンク機構に沿って駆動ボックスから延びる電線が配線されているので、稼働中に断線を生じやすく、メンテナンスに多大の労力を要したり、ダイカストマシンの稼働効率を低下させるという問題がある。また、電線が断線すると、最悪の場合には、電気火花を生じるので、安全上の問題も生じる。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リンク機構に沿って配線される電線を省略して、耐久性及び安全性に優れた成形品取出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、この目的を達成するため、第1に、鋳造品の把持機構及び反転機構を備えたアームと、当該アームをダイカストマシン外の所定位置と型開きされた金型間の所定位置との間で往復駆動するリンク機構と、前記把持機構の可動限界位置を検出する把持用位置検出手段と、前記反転機構の可動限界位置を検出する反転用位置検出手段とを備えた成形品取出装置において、
前記把持用位置検出手段として、前記把持機構が所定の可動限界位置に至ったとき、前記把持機構に備えられた操作子により空気流路が切り換えられる把持用メカニカルバルブと、当該把持用メカニカルバルブの空気流路が前記操作子により切り換えられたときの空気流路の圧力を検出する把持用圧力スイッチを備えると共に、前記反転用位置検出手段として、前記反転機構が所定の可動限界位置に至ったとき、前記反転機構に備えられた操作子により空気流路が切り換えられる反転用メカニカルバルブと、当該反転用メカニカルバルブの空気流路が前記操作子により切り換えられたときの空気流路の圧力を検出する把持用圧力スイッチを備えるという構成にした。
【0007】
このように、把持機構の可動限界位置を検出する第1検出手段及び反転機構の可動限界位置を検出する第2検出手段として、空気圧を利用した機器を用いると、リミットスイッチ又は近接スイッチを用いた場合とは異なり、リンク機構に沿って電線を配線する必要がなく、断線による電気火花の発生ということがあり得ないので、作業環境の安全性を高めることができる。また、第1及び第2の検出手段として、空気圧を利用した機器を用いると、電線に代えて空気配管が必要になるが、この種の空気配管としては、電線よりも格段に耐久性に優れたものが市場に提供されているので、これを用いることによって、高い耐久性を確保することができる。
【0008】
本発明は第2に、前記第1の成形品取出装置において、前記把持機構の駆動源及び前記反転機構の駆動源として、空気圧で駆動する空気式アクチュエータを用いるという構成にした。
【0009】
このように、可動限界位置の検出手段として空気圧を利用した機器を用いるだけでなく、把持機構や反転機構の駆動源として空気式アクチュエータを用いると、リンク機構に沿わせていた電線を全て空気配管に置き換えることができるので、成形品取出装置の耐久性と安全性とをより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成形品取出装置は、把持機構の可動限界位置を検出する第1検出手段及び反転機構の可動限界位置を検出する第2検出手段として、空気圧を利用した機器を用いるので、リミットスイッチ又は近接スイッチ等の電気部品を用いた場合とは異なり、リンク機構に沿って電線を配線する必要がない。よって、電線類の断線や、断線による電気火花の発生ということが本質的にあり得ず、電気部品を用いた成形品取出装置に比べて、作業環境の安全性を高めることができる。また、電線よりも耐久性に優れた空気配管を配置するので、この空気配管を含む第1及び第2の検出手段のメンテナンスを容易化できると共に、第1及び第2の検出手段の故障によるダイカストマシンの稼働停止をなくすことができて、ダイカストマシンの稼働効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〈成形品取出装置の外観構成及び動作〉
まず、実施形態に係る成形品取出装置の外観構成及び動作を、図1乃至図7にしたがって説明する。図1は実施形態に係る成形品取出装置の初期状態を示す斜視図、図2は実施形態に係る成形品取出装置のアーム前進時の状態を示す斜視図、図3は実施形態に係る成形品取出装置の鋳造品把持時の状態を示す斜視図、図4は実施形態に係る成形品取出装置の横行時の状態を示す斜視図、図5は実施形態に係る成形品取出装置のアーム反転時の状態を示す斜視図、図6は実施形態に係る成形品取出装置のダイカストマシンへの取付状態を示す図、図7はダイカストマシンに備えられたブラケットと本体固定部の連結状態を示す要部断面図である。
【0012】
これらの図に示すように、本例の成形品取出装置は、ダイカストマシンに固定される本体固定部1と、本体固定部1と一体に組み合わされ、本体固定部1に対して一方向に往復移動可能に構成された本体移動部2と、本体移動部2内に備えられた図示しないギアードモータによって水平面内で回転駆動される第1リンク3と、この第1リンク3の先端部に回転自在に取り付けられ、水平面内で移動されるアーム4と、アーム4に備えられた鋳造品の把持機構5及び反転機構6と、一端が本体移動部2に回転可能に取り付けられ、他端がアーム4の長手方向の適所に回転可能に連結された第2リンク7と、本体移動部2の上面に固定され、アーム4の原点位置を規制する第1アームストッパ8と、同じく本体移動部2の上面に固定され、第1リンク3の可動端位置を規制する第2アームストッパ9と、一端が本体移動部2に取り付けられた支柱10と、支柱10の先端に連結された梁部材11と、梁部材11に設定された第1及び第2の近接スイッチ取付部材12,13と、これら第1及び第2の近接スイッチ取付部材12,13の先端部に設定された近接スイッチ14,15と、所要の電源装置及びエア源装置が内蔵され、本体移動部2の外面に取り付けられた駆動ボックス16とから主に構成されている。
【0013】
第1リンク3及び第2リンク7の長さ関係、及びアーム4に対する第2リンク7の連結位置は、第1リンク3を回転したとき、アーム4が型開状態にあるダイカストマシンDMの固定側金型と可動側金型との間に、各金型の金型面に対して略平行な方向から進入できるように調整される。本例の成形品取り出し装置においては、第1リンク3よりも第2リンク7の方が長尺に形成されており、第2リンク7は、アーム4の中心位置よりも後部寄りに連結されている。
【0014】
本体移動部2と支柱10との間、支柱10と梁部材11との間、並びに梁部材11と第1及び第2の近接スイッチ取付部材12,13との間には、ボルトを締め付けることによって各部材どうしを固定し、ボルトを緩めることによって各部材の位置関係を変更可能にする締結手段17が設けられており、これらの締結手段17を適宜締結又は解除することによって、近接スイッチ14,15を所要の位置に配設できるようになっている。近接スイッチ14,15は、把持機構5がダイカストマシン側から原点位置側に戻る工程において、把持機構5に鋳造品が把持されているか否かを検出可能な位置に設定される。なお、近接スイッチ14,15に接続される電線は、支柱10、梁部材11、並びに第1及び第2の近接スイッチ取付部材12,13の外面に沿って配線することもできるし、これらの各部材10,11,12,13が中空体で形成されている場合には、それらの内部空間内を通すこともできる。電線を各部材の内部空間内に通すと、電線の劣化や断線を抑制できるので、成形品取出装置の耐久性を高めることができる。
【0015】
本例の成形品取出装置は、図6に示すように、ダイカストマシンDMにねじ止めされたブラケットBRT上に載置される。また、図7に示すように、ブラケットBRTの末端部に設けられた送りねじSを本体固定部1に開設されたねじ孔21に螺合し、送りねじSを図示しないハンドル等で回転することにより、ダイカストマシンDMと沿う方向に若干量移動できるようになっている。これにより、本例の成形品取出装置は、ダイカストマシンDMに対する位置決めがなされる。
【0016】
以下、このように構成された成形品取出装置の動作について説明すると、待機状態にあるときには、図1に示すように、本体固定部1に対して本体移動部2が最も接近した位置に移動しており、アーム4の末端部が第1アームストッパ8の近傍に位置している。また、この状態においては、鋳造品把持部である第1及び第2のフィンガ18,19が開いた状態にある。この状態からギアードモータを起動すると、第1リンク3が回転駆動され、図2に示すように、アーム4、把持機構5、反転機構6及び第2リンク7が一体となって図示しないダイカストマシン側に移動される。フィンガ18,19がダイカストマシン内の所定位置に至ったとき、ギアードモータが停止され、第1リンク3は第2アームストッパ9に最も接近した位置で停止する。次いで、把持機構5が駆動され、図3に示すように、フィンガ18,19の先端部が内向きに回動される。これにより、ダイカストマシンにて鋳造された鋳造品Pが、フィンガ18,19にて把持される。次いで、本体固定部1と本体移動部2との間に張り渡された図示しないエアシリンダが伸長する方向に駆動され、図4に示すように、本体固定部1に対して本体移動部2と駆動ボックス16とが一体となって、固定側金型に対する可動側金型の配列方向に移動される(本明細書においては、この動作を「横行」という。)。これにより、固定側金型から鋳造品Pが取り出される。次いで、ギアードモータを逆回転し、第1リンク3を介してアーム4を所定の鋳造品排出位置まで後退させる。この過程で、把持機構5により鋳造品Pが把持されているか否かが近接スイッチ14,15で検出され、近接スイッチ14,15により鋳造品Pが検出された場合には、反転機構6を駆動して、図5に示すように、把持機構5を90°反転し、しかる後に、把持機構5を駆動してフィンガ18,19の先端部を拡開し、鋳造品Pを図示しない所定の鋳造品受けに受け渡す。
【0017】
〈本体固定部及び本体移動部の構成〉
次に、本体固定部1及び本体移動部2の構成を、図8乃至図11にしたがって説明する。図8は実施形態に係る本体固定部1及び本体移動部2の組立状態の平面図、図9は図8のA−A断面図、図10は図8のB−B断面図、図11は本体固定部1に対する本体移動部2の移動状態を示す説明図である。
【0018】
本体固定部1は、図8乃至図10に示すように、下面にねじ孔22が開設された架台23と、架台23の上方にこれと一体に形成された無蓋箱状の機構部24とから構成されている。機構部24の前壁25と架台23の後壁26の間には、所定の間隔を隔てて第1ねじ軸28及び第2ねじ軸29が平行に配設されると共に、各ねじ軸28,29の上方には、これと平行に第1ガイドバー30及び第2ガイドバー31が配設されている。
【0019】
第1ねじ軸28には、第1横行用ストッパ32が螺合されており、この第1横行用ストッパ32の上部には、第1ガイドバー30が貫通されている。これと同様に、第2ねじ軸29には、第2横行用ストッパ33が螺合されており、この第2横行用ストッパ33の上部には、第2ガイドバー31が貫通されている。したがって、図示しないハンドル等で第1ねじ軸28を回転することによって、本体固定部1に対する第1横行用ストッパ32の設定位置を変更することができ、本体移動部2の後退位置を規制できると共に、図示しないハンドル等で第2ねじ軸29を回転することによって、本体固定部1に対する第2横行用ストッパ33の設定位置を変更することができ、本体移動部2の前進位置を規制することができる。
【0020】
本体移動部2は、図8及び図10に示すように、本体固定部1に対して摺動可能に組み合わされる摺動部41と、摺動部41の側方にこれと一体に形成された箱状のモータ機構部42とから構成されており、第1及び第2のリニアガイドレール49,50を介して、本体固定部1に摺動可能に取り付けられる。本体固定部1と摺動部41との間には、図8に示すように、横行用エアシリンダ34の固定端34aと可動端34bとがそれぞれ連結されており、この横行用エアシリンダ34を伸長すると、図11に示すように、本体固定部1に対してモータ機構部42が離隔する方向に横行し、横行用エアシリンダ34を収縮すると、本体固定部1に対してモータ機構部42が接近する方向に横行する。
【0021】
摺動部41の下面には、図8及び図9に示すように、本体固定部1に設けられた第1横行用ストッパ32により切換操作が行われる第1横行用近接スイッチ43と、第1横行用ストッパ32と本体移動部2との衝突を防止する第1横行用ショックアブソーバ44とを備えた第1移動部材45、及び、本体固定部1に設けられた第2横行用ストッパ33により切換操作が行われる第2横行用近接スイッチ46と、第2横行用ストッパ33と本体移動部2との衝突を防止する第2横行用ショックアブソーバ47とを備えた第2移動部材48とが取り付けられる。第1移動部材45には、第1ねじ軸28の貫通孔及び第1ガイドバー30の貫通孔が開設されており、この第1移動部材44は、横行用エアシリンダ34の伸縮に応じて、これらの各貫通孔に貫通された第1ねじ軸28及び第1ガイドバー30に沿って移動される。また、第2移動部材48には、第2ねじ軸29の貫通孔及び第2ガイドバー31の貫通孔が開設されており、この第2移動部材48は、横行用エアシリンダ34の伸縮に応じて、これらの各貫通孔に貫通された第2ねじ軸29及び第2ガイドバー31に沿って移動される。
【0022】
そして、横行用エアシリンダ34が収縮したときには、第1移動部材45に備えられた第1横行用近接スイッチ43が本体固定部1に設けられた第1横行用ストッパ32に近接して、第1横行用近接スイッチ43から横行用エアシリンダ34の停止信号が出力されると共に、第1横行用ショックアブソーバ47によって第1横行用ストッパ32と本体移動部2との衝突が防止される。また、横行用エアシリンダ34が伸長したときには、第2移動部材48に備えられた第2横行用近接スイッチ46が本体固定部1に設けられた第2横行用ストッパ33に近接して、第2横行用近接スイッチ46から横行用エアシリンダ34の停止信号が出力されると共に、第2横行用ショックアブソーバ47によって第2横行用ストッパ33と本体移動部2との衝突が防止される。
【0023】
図8乃至図10に示すように、モータ機構部42の内部には、モータ取付フランジ51が水平に設けられており、このモータ取付フランジ51の下面には、電動モータ52aの出力側にギアボックス52bが付設されたギアードモータ52が取り付けられている。また、モータ機構部42の上面には、第1リンク3の設定部53と、第2リンク7の設定部54と、支柱10の設定部55とが形成されており、第1リンク3の設定部53には、軸受56を介して、第1リンク3を回転駆動するモータ軸57が回転可能に保持されている。ギアボックス52bの出力軸は、モータ取付フランジ51に開設された透孔を貫通してモータ取付フランジ51の上方に配置され、カップリング58を介して、モータ軸57と接続される。
【0024】
また、モータ機構部42の上面には、モータ軸57の回転方向及び回転量を検出するためのエンコーダ59が設定されており、このエンコーダ59の外周は、カバー60にて覆われている。エンコーダ59の回転軸であるエンコーダ軸59aは、モータ機構部42に開設された透孔を貫通して、モータ機構部42の内部に配置されている。モータ軸57には、エンコーダ軸59aを回転駆動するための平歯車61が形成されており、エンコーダ軸59aには、平歯車61と噛み合う平歯車62が形成されている。したがって、モータ軸57の回転は、平歯車61,62を介してエンコーダ軸59aに伝達され、エンコーダ59にてその回転方向及び回転量が検出される。このように、エンコーダ軸59aを下向きにして、モータ機構部42の上面にエンコーダ59を取り付けると、エンコーダ軸59aを上向きにした場合に比べて、空気中の水分が凝縮してできる水滴がエンコーダ59内に侵入しにくくなるので、水滴の侵入に起因するエンコーダ59の故障を防止することができる。また、本例の成型品取出装置においては、エンコーダ59の外周をカバー60にて覆ったので、外部からの水滴の侵入を防止でき、エンコーダ59の防水性をより高めることができる。
【0025】
なお、図1乃至図5に示すように、第2リンク7の設定部54には、第2リンク7の一端が回転可能に設定され、支柱10の設定部55には、支柱10の一端が回転可能に設定される。
【0026】
〈アームの構成〉
次に、アーム4の構成を、図12乃至図17にしたがって説明する。図12は実施形態に係るアーム4の平面方向から見た一部断面図、図13は実施形態に係るアーム4の側面方向から見た一部断面図、図14は実施形態に係るアーム4の端面図、図15は把持駒88の構成と動作を示す説明図、図16は第1リンク3及びアーム4に沿って配設されるエア配管の配管図、図17は実施形態に係る成形品取出装置に備えられるエア回路の回路図である。
【0027】
上述のように、アーム4には、鋳造品Pの把持機構5と反転機構6とが備えられる。把持機構5は、図12及び図13に示すように、円筒形に形成されたアーム本体71と、軸受72,73を介してアーム本体71内に回転可能に収納された内筒74と、内筒74に固定され、内筒74と共にアーム本体71に対して回転する把持用エアシリンダ75と、把持用エアシリンダ75の固定部75aに相平行に取り付けられた2枚のフィンガプレート76,77と、把持用エアシリンダ75の可動部であるフィンガロッド78と、フィンガプレート76,77の先端部に固定されたフィンガロッド78の案内部材79と、フィンガロッド78に連結ピン80,81を介して連結され、フィンガプレート76,77の内面に沿って摺動するフィンガカム82と、フィンガカム82にハの字状に形成された2つの駆動ピン案内溝83,84と、連結ピン85を介してフィンガプレート76,77に揺動可能に取り付けられた第1及び第2のフィンガ18,19と、これら第1及び第2のフィンガ18,19の末端部に取り付けられ、フィンガカム82に形成された2つの駆動ピン案内溝83,84内にそれぞれ挿入された駆動ピン86,87と、第1及び第2のフィンガ18,19の先端部に取り付けられ、限定された角度範囲内で揺動する把持駒88と、一端がフィンガカム82に固定され、他端が把持用エアシリンダ75の固定部75aに向けられた把持用メカニカルバルブの操作子89と、この操作子89に作動部を向けて把持用エアシリンダ75の固定部75aに取り付けられた把持用メカニカルバルブ90と、これら操作子89及び把持用メカニカルバルブ90を一体に覆うカバー91とから構成されている。把持用メカニカルバルブ90は、把持用エアシリンダ75が収縮され、操作子89がフィンガカム82と共に把持用エアシリンダ75の固定部75a側に戻ったとき、操作子89によって操作されて、エア流路を開状態に切り替える。
【0028】
把持駒88は、フィンガ18,19の先端部に設けられたボルト92に、小ねじ93にて取り付けられおり、把持駒88とフィンガ18,19との間には、テンションばね94が設定されている。ボルト92には、図15に示すように、平面上の面取り95が施されており、小ねじ93の先端部は、面取り95に達しない位置に規制されている。したがって、把持駒88は、ボルト92に対して所定の角度、例えば±7.5°の範囲で揺動することができる。
【0029】
一方、反転機構6は、図12及び図14に示すように、アーム本体71の末端部に取り付けられた空気式の反転用ロータリアクチュエータ101と、先端部が把持用エアシリンダ75に連結された反転用ロータリアクチュエータ101の回転軸102と、この回転軸102の末端部に取り付けられた反転用メカニカルバルブの操作子103と、反転用ロータリアクチュエータ101の固定部に取り付けられた反転用メカニカルバルブ104と、これら操作子103及び反転用メカニカルバルブ104を一体に覆うカバー105とから構成されている。反転用メカニカルバルブ104は、反転用ロータリアクチュエータ101が回転駆動されて、第1及び第2のフィンガ18,19が図5に示す反転状態から図1に示す起立状態に戻ったとき、操作子103によって操作されて、エア流路を開状態に切り替える。
【0030】
上述した把持用エアシリンダ75、把持用メカニカルバルブ90、反転用ロータリアクチュエータ101及び反転用メカニカルバルブ104には、図16に示すように、第2リンク7及びアーム4に沿って、エア流路を構成するエア配管110が配設される。このエア配管110の適所には、スピードコントローラ111が開設される。なお、図16中の符号112は、エア配管110の端部を機器に接続するニップルを示している。エア配管110としては、柔軟性及び耐摩耗性に優れたポリウレタンチューブ、特に好ましくは、補強用のFRコートが多層に施されたポリウレタンチューブが用いられる。これにより、長期間の安定した使用が可能になる。
【0031】
上述した横行用エアシリンダ34、把持用エアシリンダ75、把持用メカニカルバルブ90、反転用ロータリアクチュエータ101、反転用メカニカルバルブ104及びエア配管110を含むエア回路は、図17に示すように構成される。即ち、駆動ボックス16には、フィルタレギュレータ121と、横行用エアシリンダ34への圧力空気の供給を制御する横行用ソレノイドバルブ122と、把持用エアシリンダ75への圧力空気の供給を制御する把持用ソレノイドバルブ123と、反転用ロータリアクチュエータ101への圧力空気の供給を制御する反転用ソレノイドバルブ124と、把持用メカニカルバルブ90と、把持用メカニカルバルブ90の出口側の圧力を検出する把持用圧力スイッチ125と、反転用メカニカルバルブ104と、反転用メカニカルバルブ104の出口側の圧力を検出する反転用圧力スイッチ126とが備えられており、エア源127から供給される圧力空気は、フィルタレギュレータ121を介して、横行用ソレノイドバルブ122、把持用ソレノイドバルブ123及び把持用ソレノイドバルブ124に供給される。
【0032】
把持用ソレノイドバルブ123は、常時B室側に切り換えられており、把持用エアシリンダ75は、伸長した状態になっている。このときには、把持用メカニカルバルブ90が操作子89によって操作されず、把持用メカニカルバルブ90の切換位置がB室側になっているので、把持用圧力スイッチ125は、把持用メカニカルバルブ90からの圧力信号を検出しない。よって、把持用ソレノイドバルブ123には把持用圧力スイッチ125の検出信号が出力されず、把持用ソレノイドバルブ123の切換位置はB室側に保たれる。第1リンク3が回転され、アーム4が図2に示す所定の位置に至ると、エンコーダ59の出力信号に基づいて算出された図示しない制御装置からの制御信号により、把持用ソレノイドバルブ123の切換位置がB室側に切り換えられ、把持用エアシリンダ75が収縮する。そして、把持用メカニカルバルブ90が操作子89によって操作された段階で、把持用メカニカルバルブ90の切換位置がA室側に切り換えられ、把持用圧力スイッチ125によって把持用メカニカルバルブ90からの圧力信号が検出される。把持用圧力スイッチ125の検出信号は、把持用ソレノイドバルブ123に出力され、把持用ソレノイドバルブ123の切換位置をB室側に切り換える。これによって、把持用エアシリンダ75を定位置で停止させることができる。
【0033】
反転用ソレノイドバルブ124は、常時B室側に切り換えられており、反転用ソレノイドバルブ124は、把持機構5を直立状態に保持する特定の一方向に回転する状態になっている。このときには、反転用メカニカルバルブ104が操作子103によって操作されず、反転用メカニカルバルブ104の切換位置がB室側になっているので、反転用圧力スイッチ126は、反転用メカニカルバルブ104からの圧力信号を検出しない。よって、反転用ソレノイドバルブ124には反転用圧力スイッチ126の検出信号が出力されず、反転用ソレノイドバルブ124の切換位置はB室側に保たれる。ダイカストマシンDMから鋳造品Pが取り出され、アーム4が図5に示す所定の位置に至ると、エンコーダ59の出力信号に基づいて算出された図示しない制御装置からの制御信号により、反転用ソレノイドバルブ124の切換位置がB室側に切り換えられ、反転用ロータリアクチュエータ101が把持部5を反転する方向に回転する。そして、反転用メカニカルバルブ104が操作子103によって操作された段階で、反転用メカニカルバルブ104の切換位置がA室側に切り換えられ、反転用圧力スイッチ126によって反転用メカニカルバルブ104からの圧力信号が検出される。反転用圧力スイッチ126の検出信号は、反転用ソレノイドバルブ124に出力され、反転用ソレノイドバルブ124の切換位置をB室側に切り換える。これによって、反転用ロータリアクチュエータ101を定位置で停止させることができる。
【0034】
横行用ソレノイドバルブ122は、常時B室側に切り換えられており、横行用エアシリンダ34は、収縮した状態になっている。把持機構5によって鋳造品Pが把持されると、図示しない制御装置からの制御信号により、横行用ソレノイドバルブ122の切換位置がA室側に切り換えられ、横行用エアシリンダ34が伸長して、アーム4の横行動作が実行される。
【0035】
このように構成された本例のアーム4は、鋳造品Pを把持する以前においては、把持用エアシリンダ75が収縮されており、フィンガロッド78が案内部材79に案内されてアーム本体71側に移動している。また、それに伴い、駆動ピン86,87が駆動ピン案内溝83,84に案内されて、駆動ピン案内溝83,84の先端側、即ち、ハの字状に形成された駆動ピン案内溝83,84の溝間隔が狭い方に移動している。したがって、第1及び第2のフィンガ18,19は、先端部が開いた状態になっている。図2に示すように、第1及び第2のフィンガ18,19がダイカストマシンDM内の所定の位置まで移動されると、図示しない制御装置からの指令によって、把持用エアシリンダ75に圧力空気が供給される。これによって、把持用エアシリンダ75が伸長し、フィンガロッド78が案内部材79に案内されて第1及び第2のフィンガ18,19側に移動すると共に、駆動ピン86,87が駆動ピン案内溝83,84に案内されて、駆動ピン案内溝83,84の末端側、即ち、ハの字状に形成された駆動ピン案内溝83,84の溝間隔が広い方に移動する。これにより、第1及び第2のフィンガ18,19は、連結ピン85を中心として先端部が接近するように動作する。これにより、把持駒88による鋳造品Pの把持が可能になる。
【0036】
このように、本例の成形品取出装置は、アーム4に電気部品を一切搭載せず、空気圧を利用した機器のみを搭載するので、リンク機構に沿わせていた電線を全て空気配管に置き換えることができ、成形品取出装置の耐久性と安全性とを高めることができる。また、本例の成形品取出装置は、フィンガロッド78の先端部を案内部材79にて保持すると共に、駆動ピン86,87の先端部を駆動ピン案内溝83,84にて保持しているので、把持機構5の剛性を高めることができ、把持用エアシリンダ75の駆動時における把持機構各部の動作安定性を高めることができる。よって、把持機構5による鋳造品Pの把持を確実なものにすることができる。さらに、本例の成形品取出装置は、第1及び第2のフィンガ18,19の先端部に鋳造品Pの把持駒88を限定された角度範囲内で揺動可能に取り付けるので、当初、各把持駒88が鋳造品Pの表面に均等に当接されない場合にも、最終的には、鋳造品Pの表面に倣って各把持駒88が揺動し、鋳造品Pの表面に各把持駒88が均等に当接される。よって、鋳造品Pを確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態に係る成形品取出装置の初期状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る成形品取出装置のアーム前進時の状態を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る成形品取出装置の鋳造品把持時の状態を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る成形品取出装置の横行時の状態を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る成形品取出装置のアーム反転時の状態を示す斜視図である。
【図6】実施形態に係る成形品取出装置のダイカストマシンへの取付状態を示す図である。
【図7】ダイカストマシンに備えられたブラケットと本体固定部の連結状態を示す要部断面図である。
【図8】実施形態に係る本体固定部1及び本体移動部2の組立状態の平面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】図8のB−B断面図である。
【図11】本体固定部に対する本体移動部の移動状態を示す説明図である。
【図12】実施形態に係るアームの平面方向から見た一部断面図である。
【図13】実施形態に係るアームの側面方向から見た一部断面図である。
【図14】実施形態に係るアームの端面図である。
【図15】把持駒の構成と動作を示す説明図である。
【図16】第1リンク及びアームに沿って配設されるエア配管の配管図である。
【図17】実施形態に係る成形品取出装置に備えられるエア回路の回路図である。
【符号の説明】
【0038】
1 本体固定部
2 本体移動部
3 第1リンク
4 アーム
5 把持機構
6 反転機構
7 第2リンク
14,15 近接スイッチ
16 駆動ボックス
18,19 フィンガ
34 横行用エアシリンダ
52 ギアードモータ
59 エンコーダ
60 カバー
75 把持用エアシリンダ
76,77 フィンガプレート
78 フィンガロッド
79 フィンガロッド案内部材
80,81 連結ピン
82 フィンガカム
83,84 駆動ピン案内溝
86,87 駆動ピン
88 把持駒
89 把持用メカニカルバルブの操作子
90 把持用メカニカルバルブ
101 反転用ロータリアクチュエータ
103 反転用メカニカルバルブの操作子
104 反転用メカニカルバルブ
110 エア配管
121 フィルタレギュレータ
122 横行用ソレノイドバルブ
123 把持用ソレノイドバルブ
124 反転用ソレノイドバルブ
125 把持用圧力スイッチ
126 反転用圧力スイッチ
127 エア源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造品の把持機構及び反転機構を備えたアームと、当該アームをダイカストマシン外の所定位置と型開きされた金型間の所定位置との間で往復駆動するリンク機構と、前記把持機構の可動限界位置を検出する把持用位置検出手段と、前記反転機構の可動限界位置を検出する反転用位置検出手段とを備えた成形品取出装置において、
前記把持用位置検出手段として、前記把持機構が所定の可動限界位置に至ったとき、前記把持機構に備えられた操作子により空気流路が切り換えられる把持用メカニカルバルブと、当該把持用メカニカルバルブの空気流路が前記操作子により切り換えられたときの空気流路の圧力を検出する把持用圧力スイッチを備えると共に、前記反転用位置検出手段として、前記反転機構が所定の可動限界位置に至ったとき、前記反転機構に備えられた操作子により空気流路が切り換えられる反転用メカニカルバルブと、当該反転用メカニカルバルブの空気流路が前記操作子により切り換えられたときの空気流路の圧力を検出する把持用圧力スイッチを備えたことを特徴とする成形品取出装置。
【請求項2】
前記把持機構の駆動源及び前記反転機構の駆動源として、空気圧で駆動する空気式アクチュエータを用いたことを特徴とする請求項1に記載の成形品取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−99714(P2010−99714A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274773(P2008−274773)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)