説明

成形型

【課題】成形体の形状にかかわらず、キャビティ内のエア抜きを首尾良く行うことができ、転写性よく成形体を製造できる成形型を提供すること。
【解決手段】冷却により固化する液体原料の成形に用いられる成形型10である。第1の型20及び第2の型30を有し、これらが突き合わせ面Pにおいて突き合わされることで、内部に成形用のキャビティ40及びキャビティ40に通ずるゲート41が形成されるように構成されている。ゲート41をキャビティ40の最下部に配置するとともに、キャビティ40を挟んでゲート41と反対側の位置であって、かつ突き合わせ面P以外の位置に、突き合わせ面Pと平行に延びるエアベント70,71を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却により固化する液体原料の成形に用いられる成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、所定形状のキャビティ及び該キャビティに通ずる溶融石鹸の供給路を備えた成形型を具備する石鹸の製造装置を提案している(例えば特許文献1参照)。この成形型によれば、該成形型への溶融石鹸の充填が完了した時点において、該成形型の供給路内に溶融石鹸が滞留したり残存したりすることを効果的に防止できる。
【0003】
この成形型を用いた石鹸の製造方法においては、図10に示すように、割り型201,202を組み付けて構成された成形型200の下部からキャビティ203内に溶融石鹸を供給し、上方に向けて該溶融石鹸を充填していく。充填された溶融石鹸はキャビティ内の空気を上方に押し上げていく。押し上げられた空気は、割型の突き合わせ面Pに形成されたエアベントVを通じて外部へ放出される。この場合、エアベントVを通じての空気の抜けが不十分であると、キャビティ203の上部Tに空気溜まりが生じることがあり、この空気溜まりに起因して成形品の形状がキャビティの形状に追従できず、転写性に優れた外観を有する成形品を得ることができないことがある。特に、キャビティ203の上部Tにおける成形品の抜き勾配が小さい場合には、空気溜まりが一層発生しやすくなる傾向にある。また、溶融樹脂と異なり、溶融石鹸は粘度が低いので、該溶融石鹸がエアベントVに詰まりやすいという課題もある。
【0004】
ところで、成形型におけるエアベントに関する技術として、ガス抜き孔の壁面に付着したタールの除去を容易に行うための技術が特許文献2において提案されている。同文献に記載の成形型では、可動金型及び固定金型のいずれか一方に、ガスベント入子をそのガスベントギャップ部がキャビティ内に臨むようにして組み込むとともに、このガスベント入子を組み込んだ金型の型移動方向と平行な側面部に、ガスベント入子を介してガス抜き孔の開口部を直接開設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−089650号公報
【特許文献2】特開平07−040396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の技術は、ガス抜き孔の壁面に付着物が付着することを前提とし、該付着物の除去を容易に行うことを目的としており、付着物が付着することを根本的に解決するものではない。また、同文献に記載の成形型では、ガスベントギャップ部を配置する位置によっては、エア溜まりが発生する可能性があり、成形体の外観を優れたものにすることができない場合がある。
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、冷却により固化する液体原料の成形に用いられる成形型であって、
突き合わせ面において突き合わされる第1の型と第2の型とを有し、これらが突き合わせ面において突き合わされることで、内部に成形用のキャビティ及び該キャビティに通ずるゲートが形成されるように構成されており、
ゲートをキャビティの最下部に配置するとともに、キャビティを挟んでゲートと反対側の位置であって、かつ突き合わせ面以外の位置に、突き合わせ面と平行に延びるエアベントを設けた成形型を提供することによって、前記の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成形型によれば、目的とする成形体の形状にかかわらず、キャビティ内のエア抜きを首尾良く行うことができ、転写性よく成形体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の成形型を用いて製造される成形体の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の成形型の一実施形態を、型開した状態で、突き合わせ面と平行な方向から見た縦断面図である。
【図3】図3は、本発明の成形型の一実施形態を、型閉した状態で、突き合わせ面と平行な方向から見た縦断面図である。
【図4】図4は、可動型20の一部をなすベントブロックの要部を示す斜視図である。
【図5】図5は、固定型30の一部をなすベントブロックの要部を示す斜視図である。
【図6】図6は、図3に示す型閉した状態の成形型において、キャビティ内からベントブロックを見上げた状態を示す図である。
【図7】図7は、型彫り部の抜き勾配を示す図である。
【図8】図8は、型彫り部の最低部とエアベントの位置関係を示す図である。
【図9】図9(a)及び(b)は、本発明の成形型の別の実施形態を示す要部拡大模式図及び断面図であり、図9(c)は縦穴とベントピンとの位置関係を示す図である。
【図10】図10は、従来の成形型を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の成形型で成形される成形体の一例の斜視図が示されている。同図に示す成形体100は、互いに平行面になっている上面100A及び下面(図示せず)を有する扁平な略円柱状の形状をしている。成形体100は、高さ方向の略中央部100Cの位置において最大径を有している。そして略中央部100Cから上面100A及び下面(図示せず)に向かうに連れて漸次縮径している。この成形体100は例えば石鹸であり得る。成形体100が石鹸である場合には、その原料となる各成分を混合してなる混合物を、所定温度に加熱溶解させ、それによって得られた溶融石鹸を、以下に述べる成形型内で固化させることで、好適に製造される。
【0012】
図2及び図3に示すように、成形型10は、第1の型としての可動型20と、第2の型としての固定型30とを有している。可動型20は、複数のブロックを組み付けて構成されている。固定型30も同様であり、やはり複数のブロックを組み付けて構成されている。可動型20と固定型30とは、それらが突き合わせ面Pにおいて突き合わされることで、内部に成形用のキャビティ40及び該キャビティ40に通ずるゲート41が形成されるように構成されている。
【0013】
複数のブロックを組み付けて構成される可動型20は、可動プラテン21に直接固定される主ブロック22を備えている。主ブロック22は一体に形成されており、離型ブロー用入子23が主ブロック22の中央部に組み込まれ、配置されている。可動型20は更に、ゲート41側に位置する主ブロック22A側に直接固定されるランナブロック24と、ゲート41とは反対側に位置する主ブロック22B側に直接固定されるベントブロック25と、可動プラテン21内に形成された導管21aに連通する離型ブロー用入子23とを備えている。これらの各ブロックが組み付けられることで、可動型20には、突き合わせ面Pから凹陥した型彫り部26が形成される。離型ブロー用入子23には、導管21aに連通し、かつ型彫り部26の表面に開口する孔が設けられている。この孔を通じて型の外部からエアを吹き込むことで、成形体の離型を促進させる(後述する離型ブロー用入子33についても同様である。)。
【0014】
一方、固定型30は、固定プラテン31に直接固定される主ブロック32を備えている。主ブロック32はゲート41側に位置する主ブロック32A側と、ゲート41側と反対側に位置する主ブロック32B側とが一体に形成されており、離型ブロー用入子33が主ブロック32の中央部に組み込まれ、配置されている。固定型30は更に、主ブロック32B側に直接固定されるベントブロック35と、固定プラテン31内に形成された導管31aに連通する離型ブロー用入子33を備えている。離型ブロー用入子33には、導管31aに連通し、かつ型彫り部36の表面に開口する孔が設けられている。これらの各ブロックが組み付けられることで、固定型30には、突き合わせ面Pから凹陥した型彫り部36が形成される。固定型30は、これらのブロックに加えてスプルブッシュ34も備えている。
【0015】
図3に示すように、可動型20と固定型30とを突き合わせた状態においては、キャビティ40の最下部においてゲート41が開口している。ゲート41は、成形型10の上下方向に延びるランナ42に連通している。ランナ42は、成形型10の横方向に延びるスプル43に連通している。溶融石鹸等の液体原料(図示せず)は、スプル43、ランナ42及びゲート41を通じて、キャビティ40の下部から上方へ向かってキャビティ40内に充填される。
【0016】
図4には、可動型20の一部をなすベントブロック25の斜視図が示されている。ベントブロック25は、第1の面51、及び第1の面51と反対側に位置する第2の面52を有する。第1の面51と第2の面52とは平行になっている。第1の面51は、ベントブロック25が可動型20に組み付けられたときに、主ブロック22B側と対向する面である。第2の面52は、可動型20の突き合わせ面Pをなすものであり、固定型30と対向する面である。先に述べたとおり、第2の面52は第1の面51と平行になっているので、第1の面51は突き合わせ面Pと平行になっている。
【0017】
ベントブロック25の第1の面51には、成形型10の上下方向に延びる浅底の第1溝部53が形成されている。また、第1の面51には、成形型10の上下方向に延びる第2溝部54も形成されている。第2溝部54は、第1溝部53と同数形成されている。第2溝部54は、第1溝部53よりも深底になっている。第1溝部53は、その延びる方向の一端が、キャビティ40に開口している。第1溝部53の他端は、第2溝部54に連通している。一方、第2溝部54は、その一端が第1溝部53に連通しており、他端が成形型10の外部に開口している。図4においては、3本の第1溝部53は同幅であるが、同幅でなくともよい。また、互いに結合して一体となり、1本又は2本の長幅の溝部を形成していてもよい。3本の第2溝部54についても同様であり、図4ではすべて同幅であるが、同幅でなくともよい。また、互いに結合して一体となり、1本又は2本の長幅の溝部を形成していてもよい。このように、ベントブロック25の第1の面51には、成形型10の上下方向に延び、かつ途中で深さの変わる3本の溝部が形成されている。
【0018】
ベントブロック25の第2の面52も、第1の面と同様に構成されており、浅底の第1溝部(図示せず)と、該第1溝部よりも深底の第2溝部55とが形成されている。各第1溝部と各第2溝部55とは連通しており、それによって第2の面52には、成形型10の上下方向に延び、かつ途中で深さの変わる3本の溝部が形成される。これら3本の溝部は、その一端がキャビティ40に開口し、他端が成形型10の外部に開口している。
【0019】
図5には、固定型30の一部をなすベントブロック35の斜視図が示されている。ベントブロック35は、第1の面61、及び第1の面61と反対側に位置する第2の面62を有する。第1の面61と第2の面62とは平行になっている。第1の面61は、ベントブロック35が固定型30に組み付けられたときに、主ブロック32B側と対向する面である。第2の面62は、固定型30の突き合わせ面Pをなすものであり、可動型20と対向する面である。先に述べたとおり、第2の面62は第1の面61と平行になっているので、第1の面61は突き合わせ面Pと平行になっている。
【0020】
ベントブロック35の第1の面61には、成形型10の上下方向に延びる浅底の第1溝部63が形成されている。また、第1の面61には、成形型10の上下方向に延びる第2溝部64も形成されている。第2溝部64は、第1溝部63と同数形成されている。第2溝部64は、第1溝部63よりも深底になっている。第1溝部63は、その延びる方向の一端が、キャビティ40に開口している。第1溝部63の他端は、第2溝部64に連通している。一方、第2溝部64は、その一端が第1溝部63に連通しており、他端が成形型10の外部に開口している。図5においては、3本の第1溝部63は同幅であるが、同幅でなくともよい。また、互いに結合して一体となり、1本又は2本の長幅の溝部を形成していてもよい。3本の第2溝部64についても同様であり、図5においてはすべて同幅であるが、同幅でなくともよい。また、互いに結合して一体となり、1本又は2本の長幅の溝部を形成していてもよい。このように、ベントブロック35の第1の面61には、成形型10の上下方向に延び、かつ途中で深さの変わる3本の溝部が形成されている。ベントブロック35の第2の面62は、第1の面61と異なり平面になっており、溝部は形成されていない。
【0021】
図6には、図3に示す型閉した状態の成形型10において、キャビティ40内からベントブロック25,35を見上げた状態が示されている。可動型20においては、主ブロック22B側とベントブロック25とが組み付けられることで、それらの当接面において、第1の溝部53及び第2の溝部54(図4参照)に由来するスリット形状の可動側エアベント70が形成される。可動側エアベント70は3本形成され、それらの一端はキャビティ40に開口し、他端は成形型10の外部に開口している。つまり可動側エアベント70は、成形型10において、キャビティ40と成形型10の外部とを連通している。
【0022】
引き続き図6を参照すると、固定型30においては、主ブロック32B側とベントブロック35とが組み付けられることで、それらの当接面において、第1の溝部63及び第2の溝部64(図5参照)に由来するスリット形状の固定側エアベント71が形成される。固定側エアベント71は3本形成され、それらの一端はキャビティ40に開口し、他端は成形型10の外部に開口している。つまり固定側エアベント71は、先に述べた可動側エアベント70と同様に、成形型10において、キャビティ40と成形型10の外部とを連通している。
【0023】
更に図6に示すように、可動型20と固定型30とがそれらの突き合わせ面Pにおいて突き合わされることで、可動型20のベントブロック25の第2の面52と、固定型30のベントブロック35の第2の面62とが当接して、ベントブロック25の第2の面52に形成された第1の溝部及び第2の溝部55(図4参照)に由来するスリット形状の中央エアベント72が形成される。中央エアベント72は、先に述べた可動側エアベント70及び固定側エアベント71と同様に、成形型10において、キャビティ40と成形型10の外部とを連通している。
【0024】
図6及び先に説明した図3から明らかなように、本実施形態の成形型10においては、ゲート41をキャビティ40の最下部に配置するとともに、キャビティ40を挟んでゲート41と反対側の位置であって、かつ突き合わせ面P以外の位置に、突き合わせ面Pと平行に延びる可動側エアベント70及び固定側エアベント71を設けている。これらの可動側エアベント70,71に加えて、突き合わせ面Pの位置に中央エアベント72も設けている。可動側エアベント70及び固定側エアベント71におけるキャビティ開口端70a,71aは、中央エアベント72におけるキャビティ開口端72aよりも低い位置にある(図3参照)。
【0025】
成形型10をこのように構成することで、該成形型10を用いて液体原料を成形すると、ゲート41を通じてキャビティ40内に充填された液体原料は、その液面が次第に上昇し、それに連れてキャビティ40内の空気が、各エアベントを通じて型外へ押し出される。そしてキャビティ40内が満充填に近い状態では、キャビティ40の上部に空気溜まりが発生しやすいところ、本実施形態の成形型10では、中央エアベント72だけでなく、可動側エアベント70及び固定側エアベント71が形成されているので、これら両エアベント70,71の作用によって、空気抜きが首尾良く行われ、空気溜まりの発生を効果的に防止することができる。その結果、キャビティ40の形状を正確に転写した形状の成形体を製造することができる。また、エアベント70,71,72の詰まりも起こりにくい。
【0026】
上述した空気溜まりは、可動型20の型彫り部26及び固定型30の型彫り部36のうちの少なくとも一方の形状が、成形型10をその突き合わせ面Pと平行に視た状態で、図7に示すように、キャビティ40を挟んでゲート41と反対側の位置における抜き勾配θが12度以下、特に8度以下である形状になっている場合に生じやすい。しかし、上述の可動側エアベント70及び固定側エアベント71を有する本実施形態の成形型10によれば、そのような形状の型彫り部が形成されていても、空気溜まりの発生を効果的に防止することができる。
【0027】
キャビティ40内への液体原料の充填に伴う空気溜まりの発生を一層効果的に防止する観点から、エアベント70及びエアベント71のうちの少なくとも一方の形成位置が、成形型10をその突き合わせ面Pと平行に視た状態で、図8に示すように、型彫り部の最底部26a,36aを基準として、該最底部26a,36aと同位置にあるか、又は最底部26a,36aから型彫深さD1,D2の1/2以内にあることが好ましい。このような位置に可動側エアベント70及び固定側エアベント71を形成すると、液体原料の充填の最終状態でキャビティ40内から抜けきれなかった空気が、エアベント70及びエアベント71から一層押し出されやすくなることから、空気溜まりが発生しづらくなる。
【0028】
エアベント70及びエアベント71はそのクリアランスが10〜100μm、特に30〜70μmであることが、空気溜まりの発生の防止及びエアベント70,71の詰まりの防止の観点から好ましい。中央エアベント72のクリアランスに関しても同様である。これらのエアベント70,71,72のクリアランスは同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0029】
図2及び図3に示すように、可動側エアベント70は、可動型20の主ブロック22内に形成された導管22aと連通している。同様に、固定側エアベント71は、固定型30の主ブロック32内に形成された導管32aと連通している。各導管22a,32aは、高圧空気源(図示せず)と連通している。この高圧空気源から空気を各導管22a,32aに送り込むことで、該導管22a,32aを通じて可動側エアベント70及び固定側エアベント71内をエアブローすることができる。このエアブローによって、これらのエアベント70,71内に意図せず蓄積した溶融石鹸又はこの固化物を型外へ排出することができる。それによって、エアベント70,71の目詰まりを効果的に防止することができる。エアブローは、成形型10の型開時に行うことが有効である。
【0030】
図9(a)〜(c)には、本発明の成形型の別の実施形態が示されている。同図に示す成形型10においては、可動型20及び固定型30の天面において開口し、キャビティ40へ垂下する縦孔44が形成されている。縦孔44の下端は開口してキャビティ40に連通している。縦孔44の下端の開口は、成形型10をその突き合わせ面Pと平行に視た状態で、該開口の周縁のうち、突き合わせ面Pから最も離れた位置44aが、型彫り部36の最底部36aと同位置又は該最低部よりも突き合わせ面P寄りに位置するように形成されている。なお図9においては、固定型30側のみが示されているが、可動型20も同様の構成になっていてもよい。縦孔44の断面は円形になっている。この縦孔44には、該縦孔44の直径と略同じ直径を有する円柱状のベントピン45が挿入可能になっている。
【0031】
図9(c)に示すように、ベントピン45は、その側面に2つの面取り部45a,45bを有する。面取り部45a,45bは、ベントピン45を、その軸線に沿って平面状に面取りした部位である。したがって、面取り部45a,45bは平面になっており、ベントピン45の軸線方向に延びている。2つの面取り部45a,45bは互いに平行になっている。
【0032】
ベントピン45は、その面取り部45a,45bが、突き合わせ面Pと平行になるように縦孔44内に挿入される。このような方向性をもってベントピン45を縦孔44に挿入した状態においては、図9(c)に示すように、面取り部45a,45bと縦穴44の壁面との間に2カ所のエアベント46a,46bが形成される。エアベント46a,46bは、突き合わせ面と平行に延びている。エアベント46a,46bは、先の実施形態と同様に、その形成位置が、成形型10をその突き合わせ面Pと平行に視た状態で、型彫り部の最底部36aを基準として、該最底部36aと同位置にあるか、又は最低部36aから型彫り深さの1/2以内であることが好ましい。
【0033】
本実施形態の成形型10においては、突き合わせ面Pの位置に、突き合わせ面Pと平行に延びる中央エアベント47が形成されていてもよい。
【0034】
本実施形態の成形型10によれば、先に説明した実施形態の成形型と同様の効果が奏される。また、本実施形態の成形型10によれば、成形型10を製造するときの加工工数を低減できるという、先の実施形態の成形型では奏されない有利な効果も奏される。
【0035】
以上の各実施形態で用いたベントブロック及びベントピンの材料としては、ステンレス、PVD法によって金属の表面に窒化クロムなどのセラミック膜を被覆したもの、メッキ法によって金属の表面にニッケルやクロムなどを被覆したものなどが挙げられる。これらの材料は耐食性が高いので、成形の原料として用いる液体原料が例えば腐食性を有するものである場合に、効果を発揮する。そのような腐食性を有する液体原料としては、後述する溶融石鹸等を挙げることができる。
【0036】
本発明の成形型によって成形される液体原料としては、各種の熱可塑性樹脂の溶融液や溶融石鹸を挙げることができる。特に溶融石鹸は、熱可塑性樹脂の溶融液に比べて粘度が低くエアベントが詰まりやすい傾向にあるが、本発明の成形型を用いることで、そのような詰まりが起こりにくくなる。
【0037】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態においては、可動型及び固定型の両方にエアベントを形成したが、型彫り部の形状によっては、可動型及び固定型のうちの一方にのみエアベントを形成すればよい場合もある。
【0038】
また、前記の実施形態においては、成形型における第1の型として可動型20を用い、第2の型として固定型30を用いたが、これに代えて第1の型及び第2の型としていずれも可動型を用いてもよい。
【0039】
また、図2及び図3に示す実施形態の成形型においては、可動側エアベント70が3個形成されていたが、この数はこれに限られず、成形体の形状に応じ、1個若しくは2個又は4個以上であってもよい。固定側エアベント71及び中央エアベント72に関しても同様である。
【符号の説明】
【0040】
10 成形型
20 可動型
30 固定型
40 キャビティ
41 ゲート
70 可動側エアベント
71 固定側エアベント
72 中央エアベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却により固化する液体原料の成形に用いられる成形型であって、
突き合わせ面において突き合わされる第1の型と第2の型とを有し、これらが突き合わせ面において突き合わされることで、内部に成形用のキャビティ及び該キャビティに通ずるゲートが形成されるように構成されており、
ゲートをキャビティの最下部に配置するとともに、キャビティを挟んでゲートと反対側の位置であって、かつ突き合わせ面以外の位置に、突き合わせ面と平行に延びるエアベントを設けた成形型。
【請求項2】
エアベントの形成位置が、成形型をその突き合わせ面と平行に視た状態で、型彫り部の最底部を基準として、型彫深さの1/2以内である請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
エアベントが、該エアベントをエアブローするための高圧空気源と連通している請求項1又は2に記載の成形型。
【請求項4】
エアベントはそのクリアランスが10〜100μmである請求項1ないし3のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項5】
突き合わせ面の位置にも、該突き合わせ面と平行に延びるエアベントを更に設けた請求項1ないし4のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項6】
第1の型及び第2の型の少なくとも一方の型彫り部は、成形型をその突き合わせ面と平行に視た状態で、キャビティを挟んでゲートと反対側の位置における抜き勾配θが12度以下である形状になっている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項7】
突き合わせ面以外の位置に設けたエアベントにおけるキャビティ開口端の位置が、突き合わせ面の位置に設けたエアベントにおけるキャビティ開口端の位置よりも低くなっている請求項6に記載の成形型。
【請求項8】
液体原料が溶融石鹸であり、該溶融石鹸の冷却によって固形石鹸を成形するために用いられる請求項1ないし7のいずれか一項に記載の成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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