説明

成形材料

相互侵入ポリマーの混合物を含有する成形材料に関する。第1相は架橋したイソブテンポリマーを含有し、第2相は(メタ)アクリルユニット及び/又はビニル芳香族ユニットを含有する強化性ポリマーを含有する。前記第1相は、平均的に少なくとも1.4つの官能基をこの分子中に有するイソブテンポリマーと、平均的に少なくとも2つの官能基をこの分子中に有する架橋剤との反応生成物であり、前記基は、前記イソブテンポリマーの官能基に対して相補的な官能性である。前記成形材料は、建物の屋根ふきのために、又は衝撃強さを改質したポリスチレン又はポリメチルメタクリラートとして殊に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、架橋したアルキレンポリマーの第1相と、(メタ)アクリラートユニット及び/又はビニル芳香族ユニットを含有する強化性ポリマーの第2相とを有する相互侵入ポリマーの混合物を含有する成形材料に関する。
【0002】
ポリイソブテンゴムは、特別な特性、例えば低い気体透過性及び水蒸気透過性、高い弾性及び非常に低い温度までの低温柔軟性において優れている。ポリイソブテンは優れた耐候性及び耐UV性を有する。ただし前記ポリイソブテンゴムのある種の特性、例えば耐溶媒性又は機械的強度は、大抵の適用にとって満足のいくものでない。
【0003】
その一方で、熱可塑性樹脂、例えばポリスチレン又はポリメチルメタクリラートは高い引張強さを有する。前記ポリイソブテンゴムと前記ポリスチレンの前記特性とを組み合わせることが望まれている。
【0004】
例えばPaul D.R.及びBarlow J.W.,J.Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.,18,109(1980)及びKrause S.「PolymerBlends」1,66,Paul D.R.及びNewman S.Hrsg.,Academic Press New York (1978)から、ポリアルキレンポリマーとアタクチックポリスチレンが完全に非相容性であることが公知である。前記ポリマーの物理的な混合物は不均一であり、かつこの不足した混和性のために、前記の純粋な成分の両方のガラス転移温度を示す。
【0005】
前記ポリマーを分子レベルで混合し、かついわゆる相互侵入網目を得ることを、架橋したポリアルキレンポリマーをスチレンで膨潤させ、前記スチレンを引き続きin situで重合することにより試みた。但し、達成可能な膨潤率は制限され、かつこの方法により10%よりも大幅に高いポリスチレン割合を前記網目中に導入することは可能でなかった。更に、これに関連した特性改質は安定でなく、かつ熱的な負荷の際には分離現象のために消えてしまう。
【0006】
US−A6,005,051はポリイソブテン含有多成分ポリマー網目を記載する。この際これは、複数の化学的に異なった共有結合配列を有する唯一の網目である。
【0007】
本発明の基礎となる課題は、(メタ)アクリラートユニット及び/又はビニル芳香族ユニットを含有する、強化性ポリマー中のポリアルキレンからなる網目であって、その際この両方の相の相対量が広い範囲で変化することが可能であり、かつこの両方の相の相互貫入が十分に良好であり、かつ前記網目形成の際に分離現象が生じない網目を準備することである。
【0008】
本発明により前記課題は、架橋したイソブテンポリマーの第1相と、(メタ)アクリルユニット及び/又はビニル芳香族ユニットを含有する強化性ポリマーの第2相とを有する相互侵入ポリマーの混合物を含有し、その際前記第1相が、平均的に少なくとも1.4つの官能基をこの分子中に有するイソブテンポリマーと、平均的に少なくとも2つの官能基をこの分子中に有する架橋剤との反応生成物を含有する成形材料であって、前記基が、前記イソブテンポリマーの官能基に対して相補的な官能性である、成形材料によって解決された。前記成形材料は更なる相互侵入ポリマー、例えばポリマー相容化剤を含有してよい。
【0009】
本発明による成形材料の製造のために、例えば
(i)前記強化性ポリマーを構成するモノマーを、第1相の存在下でラジカル重合させるか、又は
(ii)前記イソブテンポリマー、前記架橋剤、及び前記強化性ポリマーを構成するモノマーを混合し、同時に又は互いに順番に、前記イソブテンポリマーと前記架橋剤との反応及び前記モノマーのラジカル重合を開始させることを実施してよい。
【0010】
本発明による成形材料中の前記第1相対前記第2相の質量割合は、一般的には5:95〜95:5、有利には5:95〜80:20、特に30:70〜70:30である。前記イソブテンポリマー相の高い割合を有する本発明による成形材料(例えば、前記第1相対前記第2相の質量割合60:40〜80:20を有する)の場合には、前記ポリイソブテンのバリアー特性が十分に得られる;前記強化性ポリマーのこの割合は必要な破断点伸びを提供する。前記強化性ポリマーの高含量を有する成形材料(例えば、前記第1相対第前記2相の質量割合5:95〜25:75を有する)は、堅く、かつあまり伸びない;前記イソブテンポリマー相はこの際衝撃強さ改質に役立つ。衝撃強さ改質のための使用の際には、前記イソブテンポリマー相は目的に応じて、少ない架橋密度を有する。このような有利な本発明の実施態様は、衝撃強さ改質したポリスチレン又はポリメチルメタクリラートである。
【0011】
前記イソブテンポリマーは(その架橋の前に)イソブテンユニットを少なくとも80質量%、特に少なくとも90質量%、とりわけ有利には少なくとも95質量%含有する。イソブテンユニットの他に前記イソブテンポリマーは、オレフィン性不飽和モノマーのユニット(カチオン重合条件下でイソブテンと共重合可能である)も含有してよい。前記共重合体はポリマー中でランダムに分散しているか又はブロックとして配置されていてよい。共重合可能なモノマーとして、特にビニル芳香族、例えばスチレン、C〜C−アルキルスチレン、例えばα−メチルスチレン、3−及び4−メチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレン、並びに5〜10個のC原子を有するイソオレフィン、例えば2−メチルブテン−1、2−メチルペンテン−1、2−メチルヘキセン−1、2−エチルペンテン−1、2−エチルヘキセン−1及び2−プロピルヘプテン−1が考慮される。
【0012】
有利には、前記イソブテンポリマーは、数平均分子量500〜50000、特に1000〜20000、特に有利には2000〜10000を前記架橋前に有する。
【0013】
前記イソブテンポリマーは官能基を有し、前記基は、前記架橋剤の相補的な官能基と共有結合の形成下で反応してよい。前記イソブテンポリマーの官能基は前記ポリマー骨格の長さにわたり分散していてよく、かつ例えば前記ポリマーの骨組み中又は側鎖中に配置されていてよいが、前記イソブテンポリマーの官能基が前記イソブテンポリマーの分子末端のみに配置されている場合に、良好な弾性特性の獲得のためには有利である。
【0014】
相補的な官能基の様々な組み合わせは当業者に公知であり、前記基は共有結合の形成下で相互に反応してよい。例えば前記イソブテンポリマーの官能基及び前記架橋剤の官能基は対になって、イソシアナート反応基/イソシアナート基、又はオレフィン性不飽和基/ヒドロシリル基の中から選択される。前記イソシアナート反応基として、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基及びカルボキシル基が考慮され、その中でヒドロキシル基が有利である。本発明による成形材料の有利な実施態様において、前記第1相は従って、(i)オレフィン性不飽和基を有するイソブテンポリマーとヒドロシリル基を有する架橋剤との反応生成物、又は(ii)ヒドロキシル基を有するイソブテンポリマーとイソシアナート基を有する架橋剤との反応生成物を含有する。
【0015】
前記イソブテンポリマー、適した架橋剤並びに前記強化性ポリマーは、有利な実施態様に基づいてより詳細に説明される。
【0016】
イソブテンポリマー
末端不飽和イソブテンは目的に応じて、その他の末端官能基、例えばヒドロキシル基を有するポリイソブテンのための出発材料でもあり、というのはこのオレフィン性不飽和基は容易にその他の官能基、例えばヒドロキシル基へと変換されてよいからである。
【0017】
オレフィン性不飽和基は例えば、2〜6つの炭素原子を有する、脂肪族不飽和基、例えばビニル、アリル、メチルビニル、メタリル、プロペニル、2−メチルプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル;又は環式不飽和炭化水素残基、例えばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、及びシクロヘキセニルである。有利には、末端の、アリル基、メタリル基、2−メチルプロペニル基又はシクロプロペニル基を有するイソブテンポリマーである。
【0018】
適したイソブテンポリマーは、US4,946,889,US4,327,201,US5,169,914,EP−A−206756,EP−A−265053中に、並びにJ.P.Kennedy,B.Ivan,「Designed Polymers by Carbocationic Macromolecular Engineering」,Oxford University Press,New York,1991.中に含まれて記載されている方法により製造されてよい。前記イソブテンポリマーはイソブテンのリビングカチオン重合により製造される。この使用した開始系は一般的にはルイス酸及び「開始剤」、即ち容易に置換可能な脱離基を有する有機化合物を含有し、これは前記ルイス酸とカルボカチオン又はカチオン性錯体を形成する。前記開始剤は一般的には第三ハロゲン化物、第三エステル又はエーテル、又はアリル位のハロゲン原子、アリル位のアルコキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物である。前記カルボカチオン又はカチオン性錯体は、連続的にイソブテン分子を前記カチオン中心に付加し、これにより成長ポリマー鎖が発達し、その末端はカルボカチオン又は前記開始剤の脱離基によって停止される。前記開始剤は1官能性又はそれ以上の官能性であってよく、その際後者の場合にはポリマー鎖は一方向以上に成長する。相応して、これをイニファー(Inifer)、ビニファー(Binifer)、トリニファー(Trinifer)その他と呼ぶ。
【0019】
末端の二重結合を有するイソブテンポリマーは、様々な方法で得られてよい。オレフィン性不飽和イニファー分子から出発してよい。1つ以上の末端二重結合を一分子当たりに有するポリイソブテン分子を得るためには、遠位(distal)の鎖末端に、同様にオレフィン性二重結合を導入するか、又は2つ以上のリビングポリマー鎖をカップリングさせてもよい。両方の可能性は以下に詳細に説明されている。
【0020】
又は、オレフィン性二重結合を有しない開始剤分子から出発して、かつこの遠位の鎖末端をエチレン性不飽和基の形成下で停止させ、その際例えば、前記反応性鎖末端を停止剤と反応させ、前記剤がこの鎖末端に1つのエチレン性不飽和基を付加させるか、又は前記反応鎖末端がこのような基に変換されるように適したように処理する。
【0021】
オレフィン性二重結合を有しない、適した開始剤は、式AYによって示され、その際Aは、4つまでのベンゼン環を有するn−価の芳香族残基であり、これは縮環せずに、例えばベンゼン、ビフェニル又はテルフェニルであり、又は縮環して、例えばナフタレン、アントラセン、フェナトレン又はピレンであり、又は3〜20つの炭素原子を有するn−価の脂肪族の線形又は分枝状の残基である。YはC(R)(R)Xであり、その際R及びRは相互に独立して、水素、C〜Cアルキル、特にメチル、又はフェニルであり、かつXはハロゲン、C〜Cアルコキシ又はC〜Cアシルオキシである(Aが脂肪族残基である場合には、Rはフェニルであるという条件下で)。nは2〜4の整数、特に2又は3である。適した例は、p−ジクミルクロリド、m−ジクミルクロリド又は1,3,5−トリクミルクロリドである。
【0022】
オレフィン性二重結合を有するイニファーとして、例えば式I
【0023】
【化1】

[前記式中、
Xはハロゲン、C〜Cアルコキシ又はC〜Cアシルオキシ、かつ
nは1、2又は3である]の化合物が適する。
【0024】
式Iの特に適した化合物は、3−クロロシクロペンテンである。
【0025】
ルイス酸として、共有結合の金属ハロゲン化物及び半金属ハロゲン化物(電子対ギャップを有する)が考慮される。これらは一般的にはチタン、スズ、アルミニウム、バナジウム又は鉄のハロゲン化合物並びにホウ素のハロゲン化物の中から選択される。特に有利なルイス酸はチタンテトラクロリド、エチルアルミニウムジクロリド及び三塩化ホウ素であり、かつ分子量5000超に関して、特にチタンテトラクロリドである。
【0026】
前記重合を電子供与体の存在下で実施することが適することが示された。供与体としてピリジン及び立体障害されたピリジン誘導体並びに特に有機ケイ素化合物が有利である。前記重合は通常は溶媒中又は溶媒混合物中で実施され、例えば脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素並びにハロゲン化炭化水素中で実施される。特に、脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素とハロゲン化炭化水素との混合物、例えばジクロロメタン/n−ヘキサン、ジクロロメタン/メチルシクロヘキサン、ジクロロメタン/トルエン、クロロメタン/n−ヘキサン及び類似物が適することが示された。
【0027】
遠位の鎖末端にオレフィン性二重結合を導入するためには、前記反応性の鎖末端と停止剤とを反応させ、前記停止剤は前記鎖末端にオレフィン性不飽和基を付加させるか、又は前記反応鎖末端がこのような基に変換されるように適したように処理する。
【0028】
最も単純な実施態様においては、前記鎖末端を脱ハロゲン化水素反応にかけ、例えば熱処理によって、例えば70〜200℃の温度への加熱によって、又は塩基との処理によって、脱ハロゲン化水素にかけてよい。適した塩基は、例えばアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、及びカリウム−tert−ブタノラート、塩基性の酸化アルミニウム、アルカリ金属水酸化物、たとえは水酸化ナトリウム、及び第三アミン、例えばピリジン又はトリブチルアミン(参照、Kennedy et al.,Polymer Bulletin 1985,13,435−439)である。有利には、ナトリウムメタノラートが使用される。
【0029】
又は、前記鎖末端はトリアルキルアリルシラン化合物、例えばトリメチルアリルシランの添加によって停止されてよい。前記アルキルシランの使用は、前記ポリマー鎖末端へのアルキル残基の導入下で、前記重合の中断を生じる(参照、EP264214)。
【0030】
更なる実施態様において、前記反応性鎖末端を共役ジエン、例えばブタジエン(参照、DE−A40 25961)又は非共役ジエン、例えば1,9−デカジエン又はアルケニルオキシスチレン、例えばp−ヘキシルオキシスチレン(参照、JP−A−4−288309)と反応させる。
【0031】
更なる実施態様において、カップリング剤の添加により2つ以上のリビングポリマー鎖をカップリングさせる。「カップリング」は、前記反応鎖末端間での化学結合の形成を意味し、これにより2つ以上のポリマー鎖は1つの分子に結合する。カップリングにより得られたこの分子は、分子末端又は星型分子の分枝の末端に開始剤の基、例えばシクロペンテニル基を有する、対称的なテレケリック分子又は星型分子である。
【0032】
適したカップリング剤は例えば少なくとも2つの、同一又は異なる二重結合に対してアリル位に配置した逃電子性脱離基、例えばトリアルキルシリル基を有し、これにより、脱離基が離脱し及び前記二重結合がシフトする協奏的な反応において、反応性鎖末端の前記カチオン中心が付加されてよい。その他のカップリング剤は少なくとも1つの共役系を有し、これに、反応性の鎖末端の前記カチオン中心が安定なカチオンの形成下で求電子的に付加してよい。脱離基、例えばプロトンの離脱によって次に、前記共役系の再形成下で、前記ポリマー鎖に対する安定なσ−結合が生じる。前記共役系の複数は不活性なスペーサーによって相互に結合していてよい。
【0033】
適したカップリング剤は以下である:
(i)酸素、硫黄、及び窒素から選択されたヘテロ原子を有する少なくとも2つの複素5員環を有する化合物、例えば少なくとも2つのフラン環を有する有機化合物、例えば
【0034】
【化2】

[前記式中、RはC〜C10アルキレンであり、有利にはメチレン又は2,2−プロパンジイル];
(ii)少なくとも2つの、アリル位のトリアルキルシリル基を有する化合物、例えば1,1−ビス(トリアルキルシリルメチル)エチレン、例えば1,1−ビス(トリメチルシリルメチル)エチレン、ビス[(トリアルキルシリル)−プロペニル]ベンゼン、例えば
【0035】
【化3】

[前記式中、Meはメチルである]、
(iii)共役して、そのつど2つの芳香族環へと配置された少なくとも2つのビニリデン基を有する化合物、例えばビス−ジフェニルエチレン、例えば
【0036】
【化4】

である。
【0037】
適したカップリング剤の記載は以下の文献箇所にある;前記カップリング反応は以下に記載された反応と同様の方法で実施されてよい:
R.Faust,S.Hadjikyriacou,Macromolecules 2000,33,730−733;R.Faust,S.Hadjikyriacou,Macromolecules 1999,32,6393−6399;R.Faust,S.Hadjikyriacou,Polym.Bull.1999,43,121−128;R.Faust,Y.Bae,Macromolecules 1997,30,198;R.Faust,Y.Bae,Macromolecules 1998,31,2480;R.Storey,Maggio,Polymer Preprints 1998,39,327−328;W099/24480;US5,690,861及びUS5,981,785。
【0038】
前記カップリングは通常はルイス酸の存在下で行われ、その際、前記の本来の重合反応の実施のためにも使用可能であるルイス酸が適する。前記カップリング反応の実施のためには更に、前記の本来の重合反応の実施のために使用される同様の溶媒及び温度も適する。有利には、前記カップリングを従ってワンポット法として、前記重合反応に引き続き、同一の溶媒中で、前記重合のために使用したルイス酸の存在下で実施してよい。
【0039】
ヒドロキシル末端イソブテンポリマー
末端のヒドロキシル基を有するイソブテンポリマーは、末端の二重結合を有するイソブテンポリマーから、ヒドロホウ素化、及び引き続く酸化により得られてよい。この適したヒドロホウ素化剤は、特にボラン(BH)それ自体、又はジイソアミルボラン又は9−ボラビシクロ−[3.3.1]ノナン(9−BBN)である。当業者に公知には、ボランは主にそのダイマーの形で、ジボラン(B)で存在する。「ボラン」の概念は、前記ボランのダイマー及びより大きなオリゴマーを含む。
【0040】
有利には、ボランはin situで、適した前駆体、特にBHアニオンのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の前駆体と、ホウ素三ハロゲン化物との反応によって生産される。一般的には、水素化ホウ素ナトリウム及び三フッ化ホウ素又はそのエーテラートが使用され、というのはこれはこの場合良好に入手可能でかつ貯蔵可能な物質であるからである。有利には、前記ヒドロホウ素化剤は従って、水素化ホウ素ナトリウム及び三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エーテラートの組み合わせである。
【0041】
通常は前記ヒドロホウ素化を溶媒中で実施する。前記ヒドロホウ素化のための適した溶媒は、例えば非環式エーテル、例えばジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はジオキサン並びに炭化水素、例えばヘキサン又はトルエン又はこれらの混合物である。
【0042】
通常はこの形成したポリイソブテニルボランは単離されない。前記の最初のヒドロホウ素化生成物の、酸化剤、特にアルカリ性過酸化水素での処理で、アルコールを得、前記アルコールは形式的には、前記不飽和イソブテンポリマーの反マルコフニコフ−水和化生成物に相応する。
【0043】
ヒドロシリル基を有する架橋剤
この架橋剤は少なくとも2つ、有利には少なくとも3つのSiH基(ヒドロシリル基)を分子中に有する化合物である。1つのケイ素原子に結合した2つの水素原子は、2つのヒドロシリル基として見なされる。有利にはポリシロキサンを使用し、前記ポリシロキサンは例えば以下の線形又は環式構造を有してよい:
【0044】
【化5】

[前記式中、m及びnは整数であり、これに以下が当てはまる:10≦(m+n)≦50、2≦m、及び0≦n;及びRはC〜C20−炭化水素残基であり、前記残基は1つ又は複数のフェニル基を含有してよい];
【0045】
【化6】

[前記式中、m及びnは整数であり、これに以下が当てはまる:10≦(m+n)≦50、m≦0、及びn ≦0;及びRはC〜C20炭化水素残基であり、前記残基は1つ又は複数のフェニル基を含有してよい];
【0046】
【化7】

[前記式中、m及びnは整数であり、これに以下が当てはまる:10≦(m+n)≦20、2≦m≦20、及び0≦n≦18;及びRはC〜C20炭化水素残基であり、前記残基は1つ又は複数のフェニル基を含有してよい];
架橋剤として、少なくとも2つのヒドロシリル基を分子中に有する有機化合物、例えば式
QX
[前記式中、Qは、2〜2000つの炭素原子を有する1〜4価の有機残基を示し、かつXは少なくとも1つのヒドロシリル基を含有する基を示す]も使用してよい。
【0047】
Xは例えば以下の式:
【0048】
【化8】

[前記式中、m及びnは整数であり、これに以下が当てはまる:1≦(m+n)≦50、1≦m及びn≦0;及びRはC〜C20炭化水素残基であり、前記残基は1つ又は複数のフェニル基を含有してよい];
【0049】
【化9】

[前記式中、m及びnは整数であり、これに以下が当てはまる:0≦(m+n)≦50、m≦0及びn≦0;及びRはC〜C20炭化水素残基であり、前記残基は1つ又は複数のフェニル基を含有してよい];
【0050】
【化10】

[前記式中、m及びnは整数であり、これに以下が当てはまる:1≦(m+n)≦19、1≦m≦19及び0≦n≦18;及びRはC〜C20炭化水素残基であり、前記残基は1つ又は複数のフェニル基を含有してよい]
の線形又は環式ポリシロキサン残基である。
【0051】
Xは更に、少なくとも1つのヒドロシリル基を含有し、かつ前記ポリシロキサンには分類されていない基であってよく、、例えば:
−Si(H)(Alk)3−n
(Alk=メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、又はフェニル、及びn=1〜3);
−Si(CHSi(CHH、
−Si(CHCHCHSi(CHH、
−Si(CHSi(CH)H
−Si(CH−C−Si(CHH、
−Si(CHNHSi(CHH、
−Si(CHN[Si(CHH]
−Si(CHOC(CH)=NSi(CHH及び
−Si(CHNC(CH)=NSi(CHH。
【0052】
適した架橋剤の特定の例は、ドデシルオキシテトラ(メチルヒドロシロキシ)ドデカン、ドデシルオキシテトラ(ジメチルシロキシ)−テトラ(メチルヒドロシロキシ)−ドデカン、オクチルオキシテトラ(ジメチルシロキシ)−テトラ(メチルヒドロシロキシ)−オクタン、パラ−ビス(ジメチルシリル)−ベンゼン、ビス(ジメチルシリル)エタン、ビス(ジメチルシリル)ブタン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,−テトラエチルジシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7,−オクタエチルテトラシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェニルジシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7,−オクタフェニルテトラシロキサン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、 1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−5,7−ジフェニル−テトラシロキサン、1,3−ジメチル−5,5,7,7−テトラフェニル−テトラシロキサン、又はこれらと2000つまでの炭素原子を有するジオレフィン又はポリオレフィンとの反応生成物(前記反応生成物が少なくとも2つ超のヒドロシリル基を有するという条件下で)である。
【0053】
通常は前記架橋の際に、ヒドロシリル化触媒が共に使用される。任意の適した触媒は、特に貴金属ベース、有利には白金ベースの触媒である。これには、クロロ白金酸、白金元素、固定キャリアー、例えば酸化アルミニウム、ケイ酸又は活性炭上の白金、白金−ビニルシロキサン-錯体、例えばPt(ViMeSiOSiMeVi)及びPt[(MeViSiO)、白金−ホスフィン錯体、例えばPt(PPh及びPt(PBu、白金−ホスフィット錯体、例えばPt[P(OPh)及びPt[P(OBu)(前記式中、Meはメチル、Buはブチル、Viはビニル、Phはフェニル及びn及びmは整数である)、白金アセチルアセトナトが属する。その他のヒドロシリル化触媒はRhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl、NiCl及びTiClである。前記触媒は通常は、イソブテンポリマー中のオレフィン性不飽和基1モルに対して10−1〜10−8モル、有利には10−2〜10−6モルの量で使用される。
【0054】
イソシアナート基を有する架橋剤
この実施態様において、前記架橋剤は、2官能性以上のイソシアナートであり、前記イソシアナートは有利には、ジイソシアナート、ジイソシアナートのビウレット(Biurethen)及びシアヌラート並びにポリオールに付加したジイソシアナートのアダクトから選択されている。適したジイソシアナートは通常は4〜22つのC原子を有する。前記ジイソシアナートは通常は、脂肪族、脂環式、及び芳香族ジイソシアナート、例えば1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナートヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサン、1,2−、1,3−及び1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4−及び2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、4,4′−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアナート(=1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン)、2,4−及び2,6−トルイルエンジイソシアナート、テトラ−メチレン−p−キシリレンジイソシアナート(=1,4−ビス(2−イソシアナトプロパ−2−イル)ベンゼン)、4,4′−ジイソシアナトジフェニルメタン、有利には1,6−ジイソシアナトヘキサン及びイソホロンジイソシアナート及びこれらの混合物である。有利な化合物は、脂肪族ジイソシアナートの前記シアヌラート及びビウレット、特に前記シアヌラートを含む。特に有利な化合物は前記イソホロンジイソシアナートの前記イソシアヌラート及び前記ビウレット、及び前記1,6−ジイソシアナトヘキサンの前記イソシアヌラート及び前記ビウレットである。ポリオールに付加したジイソシアナートのアダクトの例は、上述のジイソシアナートが、グリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパンに付加したアダクト、例えばトリメチロールプロパンに付加したトルイレンジイソシアナートのアダクト、又はトリメチルプロパン及び/又はグリセリンに付加した1,6−ジイソシアナトヘキサン又はイソホロンジイソシアナートのアダクトである。
【0055】
前記イソブテンポリマーのイソシアナート反応基と、前記架橋剤のイソシアナート基との間の反応を促進するためには、公知の触媒、例えばジブチルスズジラウラート、スズ−(II)−オクトアート、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]−オクタン又はアミン、例えばトリエチルアミンが使用されてよい。これらは典型的には、前記架橋剤の質量に対して、10−5〜10−2gの量で使用される。
【0056】
前記架橋密度は、前記ポリイソシアナートの官能性の変化、前記ポリイソシアナートの、ヒドロキシル末端イソブテンポリマーに対するモル割合の変化によって、又は1官能性の、イソシアナート基に対する反応性化合物、例えば一価のアルコール、例えばエチルヘキサノール又はプロピルヘプタノールの併用によって制御されてよい。
【0057】
強化性ポリマー
本発明による成形材料の第2相は、(メタ)アクリルモノマー又はビニル芳香族モノマーのラジカル重合によって得られるポリマーによって形成される。適したモノマーの例は、スチレン、有利にはC〜Cアルキル残基で核アルキル化したスチレン、例えばα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミド又はメタクリルアミド、アルキル残基中に1〜4つのC原子を有するアルキルアクリラート及びアルキルメタクリラート、例えば特にメチルメタクリラートである。有利には、+20℃より高い、有利には+50℃より高いガラス転移温度を有するポリマー又はコポリマーを産生するモノマー及びモノマー混合物が使用される。
【0058】
ある種の特性を有する官能性ポリマーを製造するためには、前記第2相の前記モノマーはイオン性モノマーを含有してもよい。例えば、アニオン性側基を有するモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸又は有利にはビニルスルホン酸又はスチレンスルホン酸が考慮され、その際前記酸性基の中では、全体的に又は部分的に中和されていてよく、かつ例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩の形で存在してよい;又は、カチオン性側基を有するモノマーでは、例えば(2−(アクリロイルオキシ)エチル)トリメチルアンモニウムクロリドが考慮される。
【0059】
この強化性ポリマーは(メタ)アクリルモノマー又はビニル芳香族モノマーに加えて、異なるモノマーを含有してよい。前記(メタ)アクリルモノマー又はビニル芳香族モノマーは一般的には、構成性モノマーの、少なくとも20質量%、有利には少なくとも50質量%、特に少なくとも70質量%を形成し、例えば20〜40質量%は、その特性が主に前記ポリイソブテンの特性に似ている材料のためであり、その機械的特性はしかし、前記強化性ポリマーの存在によって改善されていて、又は70〜90質量%は衝撃強さ改質した材料のためである。特に有利には、モノマー混合物として、スチレン又はメチルメタクリラート少なくとも50質量%を含有する混合物が使用されてよい。
【0060】
有利には、架橋性モノマーが併用される。これには特に、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が当てはまり、例えば二価のアルコールと、αβ−モノエチレン性不飽和C〜C10モノカルボン酸とのジエステルである。前記化合物の例は、アルキレングリコールジアクリラート及びアルキレングリコールジメタクリラート、例えばエチレングリコールジアクリラート、1,3−ブチレン−グリコールジアクリラート、1,4−ブチレングリコールジアクリラート、プロピレングリコールジアクリラート、ジビニルベンゼン、ビニルメタクリラート、ビニルアクリラート、アリルメタクリラート、アリルアクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリラート、トリシクロデセニル(メタ)アクリラート、N,N’−ジビニルイミダゾリン−2−オン又はトリアリルシアヌラートである。前記架橋性モノマーは通常は、前記の強化性ポリマーを構成するモノマーの総量に対して、0.1〜30質量%、有利には1〜20質量%、特に2〜15質量%の量で使用される。
【0061】
本発明による成形材料の製造のためには、前記の強化性ポリマーを構成するモノマーを、架橋イソブテンポリマーからなる前もって製造された網目の存在下で又は前記イソブテンポリマーの同時の架橋下でラジカル重合させる。
【0062】
前記重合を、ラジカル形成開始剤を使用して、又は、代替的に、高エネルギー放射、例えばUV放射又は電子線放射によって開始させる。前記開始剤は通常は、前記の強化性ポリマーのモノマーの総量に対して、0.1〜2質量%の量で使用される。過酸化物化合物、アゾ化合物又はアゾ過酸化物化合物の種類からの適した開始剤は当業者に公知であり、かつ市販されている。
【0063】
適した開始剤の例として、ジ−tert−ブチルオキシピバラート、過酸化ジデカノイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジアセチル、ジ−tert−ブチルペルオクトアート、過酸化ジベンゾイル、tert−ブチルペルアセタート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、tert−ブチルペルベンゾアート、ジ−tert−ブチルペルオキシド、1,1−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル2,5−ビス−(ベンゾイルペルオキシ)−ヘキサン、1,4−ジ−(tert−ブチルペルオキシカルボニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、ジ−tert−ブチルジペルオキシアゼラート、又はジ−tert−ブチルペルオキシカルボナートが挙げられる。このうち、過酸化ジラウロイル、過酸化ジベンゾイル、tert−ブチルペルベンゾアート、及びtert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナートが有利である。
【0064】
前記重合は通常は高温で行われ、その際温度範囲は40〜180℃、有利には60〜120℃が適している。有利には、前記温度を段階的に高めてもよい。前記重合が高エネルギー放射によって開始される場合には、より低い温度、例えば周囲温度もまた適している。
【0065】
前記重合は通常は塊状重合として行われる。溶媒は場合により併用されてよい。このために、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ペンタン、イソペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジイソブテン、トリイソブテン、テトライソブテン、ペンタイソブテン、ヘキサイソブテン又はこれらの混合物、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン又はこれらの混合物が適する。前記重合を、可塑剤又は可塑剤混合物、例えば脂肪族又は芳香族のアルコールのフタラート及びアジパート、例えばジ−(2−エチルヘキシル)アジパート、ジ(2−エチルヘキシル)フタラート、ジイソノニルアジパート、又はジイソノニルフタラートの存在下で実施してもよい。前記の選択された架橋系の前記イソブテンポリマー及び前記架橋剤の官能基が、水に敏感でない場合には、前記重合は同時の架橋下で、水性の懸濁重合としても実施してもよい。
【0066】
前記重合を、前もって架橋したイソブテンポリマーの存在下で実施する場合には、前記ゴム状イソブテン網目は、前記の製造した成形品の所望の形態で、又は破砕した形で、例えば顆粒として存在してよい。前記ゴム状イソブテン網目を、前記の第2相の前記の強化性ポリマーを形成するモノマーで十分に平衡化するか又は膨潤させる。より良好な膨潤のために、上述の溶媒の1つの併用も有利である。所望する場合には、前記製造方法のこの段階で、助剤が混入されてもよい。前記の平衡化又は膨潤の後に、前記重合を適したように、例えば温度上昇により開始させてよい。
【0067】
前記の前もって架橋したイソブテンポリマーの、破砕した、例えば顆粒化した状態での使用は、前記の強化性ポリマーが熱可塑性であり、即ち非架橋であるかあまり架橋していない場合に、特に有利である。この場合には、前記ポリイソブテン網目は、前記熱可塑性樹脂の衝撃強さ改質を生じる。
【0068】
又は、前記イソブテンポリマー、前記架橋剤、必要な場合には架橋触媒及び助剤、及び前記強化性ポリマーを構成するモノマーを混合し、同時に又は互いに順番に、前記イソブテンポリマーと前記架橋剤との間の反応及び前記モノマーのラジカル重合を開始することを行ってよい。前記成分の混合物を適したように、型中に注入し、かつ例えば温度上昇によって硬化させてよい。前記イソブテンポリマーと前記架橋剤との間の反応及び前記モノマーのラジカル重合の連続的な開始は、例えば段階的な温度上昇によって達成されてよい。
【0069】
前記の本発明による成形材料はその他に通常の助剤、例えば充填剤、希釈剤又は安定剤を含有してよい。
【0070】
前記第1相と前記第2相との相容性を改善するために、ポリマー相容化剤の併用が所望されてもよい。前記相容化剤として特にポリエーテルユニット、ポリエステルユニット、又はポリアミドユニットを有するポリマーが適する。適したポリマー相容化剤は、例えばポリエチレングリコールである。前記ポリマー相容化剤は有利には架橋している。前記ポリマー相容化剤は、このように第1相に貫入する網目を形成してよい。前記ポリマー相容化剤と前記イソブテンポリマーとのこの架橋は、前記ポリマー相容化剤及び前記イソブテンポリマーが、同一の架橋剤と反応する、適した官能基を有する場合に同時に起こってよい。従って、例えばヒドロキシル末端ポリイソブテン及びポリエチレングリコールを混合し、かつ2官能性又はそれ以上の官能性のイソシアナートと一緒に架橋させてよい。
【0071】
適した充填剤は、例えばケイ酸、コロイドケイ酸、炭酸カルシウム、カーボンブラック、二酸化チタン、雲母、及びこれに類似するものである。
【0072】
適した希釈剤は、例えばポリブテン、液状ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン、パラフィンオイル、ナフテナート、アタクチックポリプロピレン、ジアルキルフタラート、反応性希釈剤、例えばアルコール及びオリゴイソブテンである。
【0073】
適した安定剤は、例えば2−ベンゾチアゾリル硫化物、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンジカルボキシラート、ジエチルアセチレンジカルボキシラート、BHT、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンEである。
【0074】
本発明による成形材料は任意の形状で製造されてよく、例えばシート又は膜として、又はばら材、例えば球体、ペレット、円柱体、粉体及びその類似物として製造されてよい。
【0075】
その抜群に低い気体透過性及び水蒸気透過性並びにその機械的安定性、特にクラック形成に対する機械的安定性及び、尖った、例えば鈍い物体による貫入に対する機械的安定性に基づいて、本発明による成形材料は特に、建物の屋根ふきのための材料又は成形品の製造に適する。これらは、前記目的に対して、帯状シート又はプレートへと調製されてよい。更に前記成形材料は特に以下のように使用可能である;煙突の目張りのため、自動車構造体又は温室及びグリーンハウス、サンルームの窓ガラスの製造のための衝撃強さ改質したポリメチルメタクリラートとして;又は押出適用、深絞り適用、ブロー成形適用、又は射出成形適用による成形品の製造のための衝撃強さ改質したポリスチレンとして。
【0076】
本発明による成形材料からなる成形品は、容易に相互に結合し、その際この接合部の前記気体透過性及び水蒸気透過性及び前記機械的特性は十分に、
(i)上記で定義したイソブテンポリマーと上記で定義した架橋剤とからの硬化可能な混合物を製造し、
(ii)前記成形品の結合すべき表面と、前記混合物を接触させ、かつ
(iii)前記混合物を硬化させる
場合に、前記成形材料のものに相応する。
【0077】
前記の硬化可能な混合物は有利には、少ない層厚でのより容易な設置のために適した粘性に調節すべく、溶媒及び/又は反応性希釈剤を含有する。このために、脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ペンタン、イソペンタン、シクロヘキサン、又はメチルシクロヘキサン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、又はキシレン、並びにハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン又はジクロロエタン、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、及びその他の希釈剤、例えば低分子イソブテンオリゴマー、例えば数平均分子量112〜1000を有する低分子イソブテンオリゴマー、又はこれらの混合物が適する。この設置のために、前記混合物を前反応させてよいが、完全な硬化までさせてはいけない。
【0078】
接着のために、前記成形品、例えば帯を、相対してその辺で突き合わせるか又は距離をとって配置し、かつ前記硬化可能な混合物を、前記の接しているか又は隣接している表面上に及び/又は前記表面の間のギャップに設けてよい。前記硬化可能な混合物を、成形品の結合すべき表面、例えば帯状シートの辺の領域上に設けてもよく、次にこの2つめの成形品を、前記の処理表面と接触させてよく、例えば2つめの帯状シートを、この辺で重なり合って配置させてよい。前記硬化はほとんどの場合、周囲温度でも十分に素早く起こり、所望であれば、高温を適用してよい。
【0079】
本発明は、添付した図及び以下の実施例によってより具体的に示される(以下に、ポリイソブテンは時折PIBと略称される)。
【0080】
図1は、様々な質量割合のPIB/ポリスチレン相を有する相互侵入網目のための温度に依存した損失係数(tanδ)を示す。
【0081】
図2は、様々な質量割合のPIB/ポリスチレン相を有する相互侵入網目のための温度に依存した貯蔵弾性率を示す。
【0082】
図3は、PIB/ポリスチレン相70/30の質量割合を有する連続的な相互侵入網目のための温度に依存した損失係数(tanδ)及び貯蔵弾性率を示す。
【0083】
図4は、相互侵入PIB/ポリスチレン−網目からなるシート1つ、接着接合部を有するシート1つ、及びPIB網目1つのための温度に依存した損失係数(tanδ)を示す。
【0084】
図5は、相互侵入PIB/ポリスチレン−網目からなるシート1つ、接着接合部を有するシート1つ、及びPIB網目1つのための温度に依存した貯蔵弾性率を示す。
【0085】
実施例1
α,β−ジヒドロキシポリイソブテン1g(Mn4200)をアルゴン保護雰囲気下で、スチレン1.1ml及びジビニルベンゼン120μl(スチレンに対して11質量%)を溶解させた。前記混合物を過酸化ベンゾイル5mg(スチレンに対して0.5質量%)、Desmodur(R)N3300(Bayerのポリイソシアナート、平均してイソシアナート基21.8g/製品100g;ポリイソブテンに対して11質量%)110mg及びジブチルスズジラウラート28μlと混合し、十分に混合した。前記混合物を型中に移し、これは2つのガラスプレートからなり、これは0.5mmの厚さのテフロンガスケットによって離れて固定されている。前記型を、クリップでとめて、かつ温度制御を有する炉中に配置した。この温度を60℃で6h、次に80℃で2h、引き続き100℃で2h維持した。前記型を前記炉から取り出し、冷却させ、かつ前記試験体を脱型した。
【0086】
半透明の、DSC決定によればガラス転移温度(Tg)−71℃又は+80℃を有する柔軟性のシートを得た(比較のため、ジビニルベンゼン11質量%を有する純粋なポリスチレンは+108℃のTg、スチレン非存在下の、架橋したα,β−ジヒドロキシポリイソブテンはー67℃のTgを有する)。この得られた相互侵入網目は、PIB/ポリスチレン相の質量割合約50/50を有する。
【0087】
実施例2
実施例1を繰り返したが、その際この量は、PIB/ポリスチレン相の質量割合30/70を有する相互侵入網目を得るように選択した。−65℃及び+90℃のガラス転移温度を有する、半透明の柔軟性のシートを得た。
【0088】
同様に、PIB/ポリスチレン相の質量割合90/10〜10/90を有する相互侵入網目を製造してよい。
【0089】
様々な相互侵入網目のこの機械的な特性を、動的機械分析によって決定した。この結果を以下の表及び図1及び図2にまとめた。この貯蔵弾性率(E′)及び損失弾性率(E′′)はエネルギー貯蔵を特徴付け、これらは弾性的な挙動によって貯蔵されるか、又は分子の摩擦プロセスによって熱に変換される。前記材料は前記損失係数tanδ(=E′′/E′)に基づいて、特徴付けられる。tanδが高まるほど、前記材料は倉庫中での振動の減衰のためにより良好となる。ポリスチレン含量の上昇と共に前記貯蔵弾性率は上昇するようである。
【0090】
実施例3
α,ω−ジヒドロキシポリイソブテン(Mn4200)2g、Desmodur(R) N3300 220mg及びジブチルスズジラウラート56μlを混合し、次に6h、60℃でテフロン型中で架橋させた。前記架橋及び脱型後、ゴム弾性のシートを得た。前記シートを12h、溶液中に浸漬し、前記溶液はスチレン、ジビニルベンゼン(11質量%、スチレンに対して)及び過酸化ベンゾイル(0.5質量%、スチレンに対して)を含有する。前記のゴム弾性のシートを、前記型中に再度置き、炉中で2h、80℃で、次に2h、100℃で硬化させた。前記型を前記炉から取り出し、冷却させた。半透明の柔軟性のシートを得、これはポリイソブテン約70質量%を含有した。
【0091】
この動的機械分析の結果を図3に示した。
【0092】
実施例4
α,ω−ジヒドロキシポリイソブテン(Mn4200)2g、Desmodur(R) N3300 220mg及びジブチルスズジラウラート56μlを混合し、ジクロロメタン1.1g中に溶解させた。
【0093】
実施例2と同様に製造されたシートから、1×2cmの帯を切り取った。2つの帯を、狭い幅を有するテフロン基材上に、その間に約0.3mmの間隔が残るように、互いに隣接して配置した。前記の製造された溶液を、前記帯の間のギャップ中に、かつそれぞれ0.3cmの幅で、前記帯の隣接した表面上に分散させた。この配置を12h、室温でそのままにした。前記溶液の塗布部では、前記帯の厚さは0.22mm、より厚かった。
【0094】
この動的機械分析の結果は図4及び図5に示されている。前記の接着した試験体及び前記の1つの試験体は十分に同一に振る舞うことを確認した。更なる試験において、前記の接着した試験体を、二日間、沸点に達した水中に入れ、次にソクスレー抽出器中で、沸点に達したジクロロメタンで抽出した。前記の接着結合の機械的強度又は品質の劣化がないことを確認した。
【0095】
実施例5
α,ω−ジヒドロキシポリイソブテン(Mn4200)1gを、アルゴン保護雰囲気下でスチレン1.1ml中に溶解させた。前記混合物と、過酸化ベンゾイル5mg(0.5質量%、スチレンに対して)、Desmodur(R) N3300 110mg及びジブチルスズジラウラート28μlとを混合し、よく混合した。前記混合物を型中に移し、これは2つのガラスプレートからなり、これは0.5mmの厚さのテフロンガスケットによって離れて固定されている。前記型を、クリップでとめて、かつ温度制御を有する炉中に置いた。この温度を60℃で6h、次に80℃で2h、引き続き100℃で2h維持した。前記型を前記炉から取り出し、冷却させ、かつ前記試験体を脱型した。白い、柔軟性のシートを得た。
【0096】
実施例6
実施例5と同様に、PIB/ポリスチレン相の異なる質量割合を有する相互侵入網目を製造した。
【0097】
この動的機械分析の結果は、以下の表にまとめられている。
【0098】
【表1】

(1)ジクロロメタン中での48時間のソクスレー抽出
(2)Tgを、tanδの最大での動的機械分析により決定した。
(3)25℃で。
【0099】
実施例7
実施例1に記載したように混合物を製造し、これをシリンジ中に充填した。このピストンの押しにより、約0.8mmの直径を有するつながった粘性のストランドを押出し、これは加熱域を介して移送され、前記加熱域中では、前記ストランドの進入と脱出との間の温度は、周囲温度から120℃へと、かつ再度周囲温度へと変化した。前記加熱域の約5分間での進行後、半透明の柔軟性繊維状材料を得た。
【0100】
実施例8
α,ω−ジヒドロキシポリイソブテン(Mn4200)1gを、アルゴン保護雰囲気下で、メチルメタクリラート(MMA)4g及びエチレングリコールジメタクリラート120μl(3質量%、MMAに対して)中に溶解させた。前記混合物を過酸化ベンゾイル20mg(MMAに対して0.5質量%)、Desmodur(R)N3300(Bayerのポリイソシアナート、平均してイソシアナート基21.8g/製品100g;ポリイソブテンに対して11質量%)110mg及びジブチルスズジラウラート28μlと混合し、十分に混合した。前記混合物を型中に移し、これは2つのガラスプレートからなり、これは0.5mmの厚さのテフロンガスケットによって離れて固定されている。前記型を、クリップでとめて、かつ温度制御を有する炉中に置いた。この温度を60℃で6h、次に80℃で1h維持した。前記型を前記炉から取り出し、冷却させ、かつ前記試験体を脱型した。
【0101】
同様に、PIB/PMMA相の様々な質量割合を有する相互侵入網目を製造した。
【0102】
この動的機械分析の結果は、以下の表にまとめられている。
【0103】
【表2】

(1)Tgを、tanδの最大での動的機械分析により決定した。
(2)25℃で
(3)25℃で。
【0104】
実施例9
α,ω−ジヒドロキシポリイソブテン(Mn4200)2g、Desmodur(R) N3300 220mg、ジブチルスズジラウラート56μlを混合し、次に60℃で6h、テフロン型中で架橋させた。架橋及び脱型後、ゴム弾性シートを得た。このシートを12h、MMA、エチレングリコールジメタクリラート(3質量%、MMAに対して)及び過酸化ベンゾイル(0.5質量%、MMAに対して)を含有する溶液中に浸漬した。前記ゴム弾性シートを再度、前記型中に配置し、炉中で2h、80℃で、次に2h、100℃で硬化させた。前記炉から前記型を取り出し、冷却させた。半透明の柔軟性のシートを得、これはPMMA30質量%及びポリイソブテン70質量%を含有する。
【0105】
動的機械分析の際に、このtanδ曲線において3つの転移を、−22℃、+11℃、及び+135℃で観察した。この−22℃及び+135℃での転移は、前記PIB分子鎖及びPMMA分子鎖の運動に帰属してよい。この+11℃での転移は、新規のPIBリッチな相の出現を示すようである。
【0106】
実施例10
α,ω−ジヒドロキシポリイソブテン(Mn4200)0.4gを、アルゴン保護雰囲気下でメチルメタクリラート(MMA)1.6ml中に溶解させた。前記混合物と、過酸化ベンゾイル(0.5質量%、MMAに対して)8mg、Desmodur(R) N3300 37mg、ジブチルスズジラウラート1.1μl及びトルエン300μlとを混合し、十分に混合した。前記混合物を型中に移し、これは2つのガラスプレートからなり、これは0.5mmの厚さのテフロンガスケットによって離れて固定されている。前記型を、ボルトで固定し、かつ温度制御を有する炉中に配置した。この温度を1h、60℃に、次に1h、80℃に維持した。前記型を炉から取り出し、冷却させ、前記試験体を脱型した。半透明の柔軟性のシートを得た。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、様々な質量割合のPIB/ポリスチレン相を有する相互侵入網目のための温度に依存した損失係数(tanδ)を示す図である。
【図2】図2は、様々な質量割合のPIB/ポリスチレン相を有する相互侵入網目のための温度に依存した貯蔵弾性率を示す図である。
【図3】図3は、PIB/ポリスチレン相70/30の質量割合を有する連続的な相互侵入網目のための温度に依存した損失係数(tanδ)及び貯蔵弾性率を示す図である。
【図4】図4は、相互侵入PIB/ポリスチレン−網目からなるシート1つ、接着接合部を有するシート1つ、及びPIB網目1つのための温度に依存した損失係数(tanδ)を示す図である。
【図5】図5は、相互侵入PIB/ポリスチレン−網目からなるシート1つ、接着接合部を有するシート1つ、及びPIB網目1つのための温度に依存した貯蔵弾性率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋したイソブテンポリマーの第1相と、(メタ)アクリルユニット及び/又はビニル芳香族ユニットを含有する強化性ポリマーの第2相とを有する相互侵入ポリマーの混合物を含有する成形材料であって、その際前記第1相が、平均的に少なくとも1.4つの官能基をこの分子中に有するイソブテンポリマーと、平均的に少なくとも2つの官能基をこの分子中に有する架橋剤との反応生成物を含有し、前記基が、前記イソブテンポリマーの官能基に対して相補的な官能性である、成形材料。
【請求項2】
前記第1相対前記第2相の質量割合は、5:95〜80:20である、請求項1記載の成形材料。
【請求項3】
前記イソブテンポリマーは、イソブテンユニットを少なくとも80質量%含有する、請求項1又は2記載の成形材料。
【請求項4】
前記イソブテンポリマーの前記官能基は、前記イソブテンポリマーの分子末端のみに配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項5】
前記イソブテンポリマーは、数平均分子量500〜50000を前記架橋前に有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項6】
前記架橋剤は平均的に少なくとも2.5つの官能基を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項7】
前記イソブテンポリマーの官能基及び前記架橋剤の官能基は対になって、ヒドロキシル基/イソシアナート基、又はオレフィン性不飽和基/ヒドロシリル基の中から選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項8】
前記強化性ポリマーは、スチレンユニット及び/又はメチルメタクリラートユニットを含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項9】
前記強化性ポリマーは、架橋性モノマーのユニットを含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項10】
衝撃強さを改質したポリスチレン又はポリメチルメタクリラートとしての使用のための、前記第1相対前記第2相の質量割合5:95〜25:75を有する、請求項8又は9記載の成形材料。
【請求項11】
(i)前記強化性ポリマーを構成するモノマーを、前記第1相の存在下でラジカル重合させるか、又は
(ii)前記イソブテンポリマー、前記架橋剤、及び前記強化性ポリマーを構成するモノマーを混合し、同時に又は互いに順番に、前記イソブテンポリマーと前記架橋剤との反応及び前記モノマーのラジカル重合を開始させる、請求項1記載の成形材料の製造方法。
【請求項12】
建物の屋根ふきのための材料又は成形品の製造のための、請求項1記載の成形材料の使用。
【請求項13】
(i)請求項1で定義したイソブテンポリマーと請求項1で定義した架橋剤とからの硬化可能な混合物を製造し、
(ii)前記成形品の結合すべき表面と、前記混合物を接触させ、かつ
(iii)前記混合物を硬化させる、
請求項1記載の成形材料からなる少なくとも2つの成形品の結合のための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−502878(P2007−502878A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523605(P2006−523605)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009312
【国際公開番号】WO2005/019285
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】