説明

成形機におけるタイバーの移動位置検出方法

【課題】ダイカストマシン等の成形機のダイプレートに金型を着脱するとき、邪魔にならない位置へと移動されるタイバーの移動位置を検出できるようにし、所定位置に速やか且つ正確にタイバーを移動できるようにし、作業性を向上する。
【解決手段】固定金型4の取り付けられる固定ダイプレート3とテールストック5とに4本のタイバー6を架設し、固定ダイプレート3に形成した孔部3aにタイバー6の一方を挿通して、タイバー6の第1のネジ部6aに第1のナット15を締結して固定ダイプレート3にタイバー6を固定する。上方2本のタイバーの移動位置と第1のナット15の回転数を検出する検出手段23を備えることで、タイバーの移動位置を正確に検出でき、タイバーを邪魔にならない位置へ高速で移動することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシンや射出成形機等の成形機に備えられたタイバーの位置検出方法に関し、特にタイバー近傍の所定位置に金型を組み付ける際、邪魔にならない位置へタイバーを移動することが可能なタイバーの移動位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金型のキャビティに溶融金属材料を射出充填して鋳造製品を得るダイカストマシンがある。一般的なダイカストマシンの金型装置においては、固定金型の装着される固定ダイプレートの4隅と型開閉用の駆動源となるサーボモータなどの設けられたテールストックの4隅に4本のタイバーを掛け渡し、タイバーの端部に形成した螺子部にナットを締結などして、固定台ダイプレートとテールストックの各々にタイバーを掛け渡すようにして固定を行っている。固定ダイプレートとテールストックとの間には、タイバーに摺動自在に可動ダイプレートが配設され、可動ダイプレートに装着された可動金型は前進されることで固定金型に対して型締された際には、タイバーが引き伸ばされた状態となり、その弾性復元力によって金型の締め付けが強固に行われる。
【0003】
前述した複数のタイバーを備えたダイカストマシンでは、固定ダイプレートや可動ダイプレートに比較的大型な金型を取り付けたり取り外したりするに際し、タイバーが邪魔となりそのままでは金型の着脱が行えない場合がある。そのため、金型を着脱するときに、複数本あるうちの何れかのタイバーをその長手方向に引き抜いて移動できるようにした構造のダイカストマシンが存在し、例えば、特許文献1には、複数本のタイバーを備え、金型を着脱するに際しタイバーを引き抜くことができるダイカストマシン等の成形機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−203338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1などの周知のダイカストマシンによれば、タイバーを引き抜き可能に設けることで、比較的大型な金型であってもタイバーが邪魔になることなく、ダイプレートに金型を装着することができるものであるが、比較的大型な金型を装着する際には、タイバーを引き抜いたり(抜き動作)、元の所定位置へと戻す(入り動作)、といった煩雑な作業が必要となることから、タイバーを所定位置へ速やか且つ正確に移動できるようにすることが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ダイカストマシン等の成形機のダイプレートに金型を着脱するとき、邪魔にならない位置へと移動されるタイバーの移動位置を検出できるようにし、所定位置に速やか且つ正確にタイバーを移動することで作業性を向上させた成形機におけるタイバーの移動位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る成形機におけるタイバーの移動位置検出方法の発明は、
固定金型の取り付けられる固定ダイプレートとテールストックに複数本のタイバーを架設し、
前記固定ダイプレートに形成した孔部に前記タイバーの一方を挿通して、該タイバーの第1のネジ部に第1のナットを締結して前記固定ダイプレートに前記タイバーの一方を螺合して固定し、
前記テールストックに形成した孔部に前記タイバーの他方を挿通して、該タイバーの第2のネジ部に第2のナットを締結して前記テールストックに前記タイバーの他方を螺合して固定し、
前記第2のネジ部に第2のナットを固定した状態で、タイバー引き抜き手段により前記複数本のタイバーのうち少なくとも1本のタイバーを、前記第1のナットから前記テールストック側に抜き出すことが可能な成形機において、
前記タイバー引き抜き手段には、前記抜き出されるタイバーに対応する前記第1のナットを回転駆動するナット用モータと、
該ナット用モータの回転速度を低速と高速に切り替える速度切替手段と、
前記第1のナットの回転量と前記抜き出されるタイバーの抜き出し方向の移動位置を検出する検出手段と、
該検出手段で検出された前記移動位置を記憶する記憶手段と、
前記ナット用モータにより前記第1のナットから抜き出された前記タイバーをさらに前記抜き出し方向に抜き出すインバータモータとを備え、
前記第1のナットから前記少なくとも1本のタイバーの第1のネジ部を抜き出してからさらに当該少なくとも1本のタイバーを前記抜き出し方向に抜き動作される際、
前記ナット用モータの高速回転により前記第1のナットから前記少なくとも1本のタイバーの第1のネジ部を高速で抜き出し、該抜き出しの完了が前記検出手段で検出された時、前記インバータモータが高速回転され、前記少なくとも1本のタイバーが前記ネジ抜き方向に高速で引き抜かれた後、
当該高速で引き抜かれた少なくとも1本のタイバーが抜き動作の完了する手前位置で低速移動されるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る成形機におけるタイバーの移動位置検出方法の発明は、
固定金型の取り付けられる固定ダイプレートとテールストックに複数本のタイバーを架設し、
前記固定ダイプレートに形成した孔部に前記タイバーの一方を挿通して、該タイバーの第1のネジ部に第1のナットを締結して前記固定ダイプレートに前記タイバーの一方を螺合して固定し、
前記テールストックに形成した孔部に前記タイバーの他方を挿通して、該タイバーの第2のネジ部に第2のナットを締結して前記テールストックに前記タイバーの他方を螺合して固定し、
前記第2のネジ部に第2のナットを固定した状態で、タイバー引き抜き手段により前記複数本のタイバーのうち少なくとも1本のタイバーを、前記第1のナットから前記テールストック側に抜き出すことが可能な成形機において、
前記タイバー引き抜き手段には、前記抜き出されるタイバーに対応する前記第1のナットを回転駆動するナット用モータと、
該ナット用モータの回転速度を低速と高速に切り替える速度切替手段と、
前記第1のナットの回転量と前記抜き出されるタイバーの抜き出し方向の移動位置を検出する検出手段と、
該検出手段で検出された前記移動位置を記憶する記憶手段と、
前記ナット用モータにより前記第1のナットから抜き出された前記タイバーをさらに前記抜き出し方向に抜き出すインバータモータとを備え、
前記第1のナットから前記少なくとも1本のタイバーの第1のネジ部を抜き出してからさらに当該少なくとも1本のタイバーを前記抜き出し方向に抜き動作される際、
前記ナット用モータの高速回転により前記第1のナットから前記少なくとも1本のタイバーの第1のネジ部を高速で抜き出し、該抜き出しの完了が前記検出手段で検出された時、前記インバータモータが高速回転され、前記少なくとも1本のタイバーが前記ネジ抜き方向に高速で引き抜かれた後、
当該高速で引き抜かれた少なくとも1本のタイバーが抜き動作の完了する手前位置で低速移動されるようにし、
該抜き動作の完了したタイバーを元の状態に戻すため、前記第1のナットに前記タイバーの第1のネジ部を入り動作する際には、
前記インバータモータを高速回転させて、前記タイバーを前記入り動作方向に高速で移動させ、前記検出手段でパルスのカウントにより予め検出され前記記憶手段に記憶されていた前記第1のナットに前記第1のネジ部が接触するその手前位置へ、該第1のネジ部を有するタイバーが達した時、前記インバータモータが高速回転から低速回転に減速され、前記入り動作方向に前記タイバーの第1のネジ部を前記第1のナットに対し低速でネジ込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本成形機におけるタイバーの移動位置検出方法の発明によれば、比較的大きな金型をダイプレートに装着するに際し、タイバーが邪魔にならない位置へ高速で移動することができるので、ダイプレートへの金型の着脱作業を速やか且つ容易に行うことができ、作業性を向上することができる。
【0010】
また、タイバーを引き抜いた状態からネジ込み位置へ戻すに際し、タイバーのネジ部をナットに螺合して所定位置になるよう締結を完了させるときには、タイバーがナットに低速でネジ込まれ所定位置への締結が正確に行われる一方で、こうした締結時などの正確な動作が要求されないときには、タイバーを高速で移動することができるから、タイバーを移動させるときの動作の正確性と、金型を着脱するに際しタイバーを移動させるときの移動作業効率とを両立して得ることができる。
【0011】
また、検出手段によりナットの回転量とタイバーの抜き出し方向の移動位置をパルスのカウントに基づき認識することができるので、例えば、タイバーの移動を途中で中断したとしても、現在のタイバーの位置に合った動作を再開することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】金型の型開状態を示すダイカストマシンの概略構成図である。
【図2】金型の型閉状態を示すダイカストマシンの概略構成図である。
【図3】金型を交換するときにタイバーの抜き動作を完了させた状態を示すダイカストマシンの概略構成図である。
【図4】上方2本のタイバーが抜き動作される際のそのタイバーと第1のナットの動作を示す説明図である。
【図5】上方2本のタイバーが入り動作される際のそのタイバーと第1のナットの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1〜図5により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0014】
図1〜図3は、本発明の一例のダイカストマシン1を示しており、これら各図において、(a)はダイカストマシンの断面を正面側から視た状態を示す正面断面図、(b)はダイカストマシンの断面を右側から視た状態を示す右断面図、(c)はダイカストマシンの断面を左側から視た状態を示す左断面図であり、図示の簡略化のためハッチングは図示省略したものであるが、図1は型開き状態を示し、図2は型閉状態でタイバーを引き抜く前の状態を示し、図3は金型を交換するときにタイバーの抜き動作を完了した状態を示したものである。
【0015】
図1〜図3に示すように、ダイカストマシン1には、機台2、この機台2上に固定された固定ダイプレート3、この固定ダイプレート3に装着された固定金型4、ダイカストマシン1の稼動時には機台2上に固定される一方で型厚調整時には機台2上で進退可能なテールストック5、このテールストック5と固定ダイプレート3の4隅にそれぞれ架設された4本のタイバー6、タイバー6に摺動自在に挿通され、固定ダイプレート3とテールストック5との間で進退可能な可動ダイプレート7、可動ダイプレート7に装着され固定金型4と型開閉される可動金型8、テールストック5に設けられた図示しない型開閉用サーボモータの回転を直線運動に変換するボールネジ機構の直動部9、及び、テールストック5と可動ダイプレート7とを連結し、その力の入力端であるクロスヘッド10aに直動部9の端部が固定されたトグルリンク機構10、後述するタイバー引き抜き手段等が備えられている。
【0016】
また、固定ダイプレート3に形成した孔部3aには、タイバー6の一方が挿通されており、タイバー6の一方に形成された第1のネジ部6aに第1のナット15を螺合し、固定ダイプレート3に対しタイバー6の一方が固定され、また、テールストック5に形成した孔部5aには、タイバー6の他方が挿通されており、タイバー6の他方に形成された第2のネジ部6bに第2のナット16を螺合し、テールストック5に対しタイバー6の他方が固定されている。
【0017】
20は、第2のネジ部6bに第2のナット16を固定した状態において、複数本のタイバーのうち上方2本のタイバー6を、第1のナット15からテールストック側(図3(a)に示す左側)に同時に抜き出すことが可能な前述したタイバー引き抜き手段である。
【0018】
タイバー引き抜き手段20には、抜き出しの行われる上方2本のタイバー6に対応した上方2つの第1のナット15を、駆動伝達機構21を介して回転駆動するナット用モータ22、第1のナット15の回転量(詳しくは回転数)と前記抜き出される2本のタイバー6の抜き出し方向の移動位置をパルスとしてカウントすることが可能な検出手段23、この検出手段23で検出された第1のナット15の回転数と引き抜かれるタイバー6の移動位置をパルスのカウントとして記憶する記憶手段24、ナット用モータ22の回転駆動により第1のナット15から抜き出された(螺脱された)2本のタイバー6を後述するボールネジ機構30等を介してさらに抜き出し方向(図3(a)に示す左側)に抜き出すインバータモータ25、インバータモータ25とナット用モータ22との回転速度を低速や高速に切り替えさらに停止することができる速度切替手段26、保持枠27に回転自在に設けられた回転部としてのネジ軸28とこのネジ軸28に螺合されたナット部29からなり回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構30、及びボールネジ機構30のナット部29と前記上方2本のタイバー6とを一体に連結した連結部材31等を備えている。なお、本実施形態においては、図1〜図3に示すように、インバータモータ25はテールストック5に装着され、ナット用モータ22は固定ダイプレート3に装着されており、また、ボールネジ機構30のネジ軸28の基端には半円の鉄板32が固定されており、ネジ軸28が一回転されると半円の鉄板32が同様に回転され、その近傍に固定された前記検出手段23に構成される近接スイッチ23aは、ネジ軸28が一回転される毎にONとOFFを一回行い、パルスのカウントを行い、上方2本のタイバー6の移動位置を検出する。なお、1パルスのカウントで、ネジ軸28の回転に伴い、ナット部29及び連結部材31を介し移動されるタイバーの移動距離は10mmとなっていて、図2に示す上方2本のタイバーの位置においては、パルスのカウントは0となっている。また、前記第1のナット15にはこれと同心円状に図示しないナット回転ギヤが設けられており、ナット回転ギヤの円周方向の一端に装着した検出スイッチによって、第1のナット15の回転量(詳しくは回転数)が検出手段23で検出されるようになっている。
【0019】
ここでダイプレート3,7に比較的大型の金型を取り付ける際に、4本のうち上方2本のタイバー6を邪魔にならない位置へ2本同時に引き抜くときの抜き動作について、図4に基づき以下に説明する。図4の上段は、引き抜かれる2本のタイバーに対応する上方2つの第1のナット15の回転動作(高速・低速・停止)を示し、下段は、引き抜かれる2本のタイバー6が抜き動作され移動されるときの抜き動作(高速・低速・停止)を示している。
【0020】
図2に示したダイカストマシン1の状態において、先ず速度切替手段26がナット用モータ22の回転駆動を動作制御し、抜き動作を行おうとする上方2本のタイバー6に対応した停止された状態の上方2つの第1のナット15を低速で回転させ、この回転に伴い、予めパルスのカウントとして記憶手段24に記憶しておいたタイバー入限OFFの位置(パルスカウント:数値は28)Aに前記上方2本のタイバーが移動されると、続いて上方の第1のナット15は速度切替手段26により低速から高速に回転される。そして、高速回転され第1のナット15から上方2本のタイバー6の第1のネジ部6aの螺脱(抜き出し)が、抜き完了(B)として、パルスのカウント(パルスカウント:650)に基づき検知手段23の近接スイッチ23aで検出されると、このタイミングで、前記上方2本のタイバー6に対応する2つの第1のナット15は速度切替手段26によるナット用モータ22の動作制御により高速から低速回転され、且つ、第1のナット15から第1のネジ部6aの抜き出された(螺脱の完了された)停止状態にある2本のタイバー6は、速度切替手段26によるインバータモータ25の動作制御によりネジ軸28が高速回転され、その駆動力がボールネジ機構30のナット部29、連結部材31の順に伝達され高速で上方2本のタイバー6が移動(図2に示す左側)され、予め記憶手段24に記憶させておいたタイバー抜き減速位置C(タイバー6の抜き動作が完了する僅かに手前位置(パルスカウント:数値は60)に上方2本のタイバー6が達すると、インバータモータ25は低速で回転され、上方2本のタイバー6は抜き動作が完了する所定位置までは低速で移動されてゆき、所定位置(図3に示した状態)で停止されることで抜き動作が完了(パルスカウント:数値は134)する。
【0021】
次に、所定位置へ抜き出された上方2本のタイバー6を元の状態に戻すため、前記上方2つの第1のナット15に対し、これに対応する上方2本のタイバー6の第1のネジ部6aをネジ込むときの入り動作について、図5に基づき以下に説明する。
【0022】
図5の上段は、引き抜かれた2本のタイバー6の入り動作(高速・低速・停止)を示し、下段は、第1のナットの回転動作(高速・低速・停止)を示している。図3に示したダイカストマシン1の状態において、図5に示すように、ナット用モータ22の低速回転とインバータモータ25の高速回転とを同時にスタートさせると、速度切替手段26によるインバータモータ25の動作制御によりこのインバータモータ25は高速回転され、それに伴い、上方2本のタイバー6が抜き動作とは逆(入り動作)に高速で移動され、予めパルスのカウントとして記憶手段24に記憶しておいた、上方2つの第1のナット15に対し、上方2本のタイバー6の第1のネジ部6aが接触する僅かに手前の位置である入り減速位置(パルスカウント:55)Dに達すると、速度切替手段26によりインバータモータ25は高速から低速回転され、上方2本のタイバー6は低速移動される。続いて、上方2本のタイバー6の第1のネジ部6aがこれに対応する第1のナット15に接触する入り回転高速位置(パルスカウント:15)Eに達すると、速度切替手段26による動作制御によりナット用モータ22は低速から高速回転され、これに伴い前記上方2本のタイバー6は、元の状態に戻る位置(パルスカウント:0)の僅かに手前位置である入り回転減速位置(パルスカウント:5)Fに達するまで高速移動される。そして、入り回転減速位置(パルスカウント:5)Fに達すると、速度切替手段26によりナット用モータ22は高速から低速回転され、上方2本のタイバー6は、抜き動作前の元の位置(パルスカウント:0)に移動され停止されることで入り動作が完了する(図2に示した状態)。
【0023】
以上のように、本実施形態におけるタイバー6の移動位置検出方法によれば、固定金型4の取り付けられる固定ダイプレート3とテールストック5に複数本のタイバーを架設し、記固定ダイプレート3に形成した孔部3aにタイバー6の一方を挿通して、このタイバー6の第1のネジ部6aに第1のナット15を締結して固定ダイプレート3にタイバー6の一方を螺合して固定し、テールストック5に形成した孔部5aにタイバー6の他方を挿通して、このタイバー6の第2のネジ部6bに第2のナット16を締結してテールストック5にタイバー6の他方を螺合して固定し、第2のネジ部6bに第2のナット16を固定した状態で、タイバー引き抜き手段20により前記複数本のタイバーのうち上方2本のタイバー6を、図3に示すように、第1のナット15からテールストック5側に抜き出すことが可能な成形機たるダイカストマシン1において、タイバー引き抜き手段20には、抜き出されるタイバー6に対応する第1のナット15を回転駆動する固定ダイプレート3に装着されたナット用モータ22と、このナット用モータ22の回転速度を低速と高速に切り替える速度切替手段26と、第1のナット15の回転量(回転数)と抜き出されるタイバー6の抜き出し方向の移動位置をパルスでカウントする検出手段23と、この検出手段23で検出されたパルスのカウントを記憶する記憶手段24と、ナット用モータ22により第1のナット15から抜き出されたタイバー6をさらに前記抜き出し方向に抜き出すテールストック5に装着されたインバータモータ25とを備え、第1のナット15から前記上方2本のタイバー6の第1のネジ部6aを抜き出してからさらに当該2本のタイバーを抜き出し方向に抜き動作する際において、ナット用モータ22の高速回転により第1のナット15から前記上方2本のタイバー6の第1のネジ部6aを高速で抜き出し、この抜き出しの完了が検出手段23でパルスのカウントに基づき検出された時、インバータモータ25が高速回転され、前記上方2本のタイバー6がネジ抜き方向に高速で引き抜かれた後に、この高速で引き抜かれた2本のタイバー6が抜き動作の完了する手前位置で低速移動されるようにし、また、抜き動作の完了したタイバー6を元の状態に戻すため、第1のナット15にタイバー6の第1のネジ部6aを入り動作する際においては、インバータモータ25を高速回転させて、前記上方2本のタイバー6を入り動作方向に高速で移動させ、検出手段23でパルスのカウントにより予め検出され記憶手段24に記憶されていた第1のナット15に第1のネジ部6aが接触するその手前位置へ、これに対応する第1のネジ部6aを有するタイバー6の先端が達した時、インバータモータ25が高速回転から低速回転に減速され、入り動作方向に上方2本のタイバー6の第1のネジ部6aを、これに対応する第1のナット15に対し低速でネジ込むようにしたから、比較的大きな金型4,8をダイプレート3,7に装着するに際し、タイバー6が邪魔にならない位置へ高速で移動することができるので、ダイプレート3,7への金型4,8の着脱作業を速やか且つ容易に行うことができ、作業性を向上することができる。
【0024】
さらに、上方2本のタイバー6を引き抜いた状態から所定位置へ戻すに際し、タイバー6の第1のネジ部6aを第1のナット15に螺合して所定位置になるよう締結を完了させるときには、タイバー6が第1のナット15に低速でネジ込まれ所定位置への締結が正確に行われる一方で、こうした締結時などの正確な動作が要求されないときには、上方2本のタイバー6を高速で移動することができるから、タイバー6を移動させるときの動作の正確性と、金型を着脱するに際しタイバー6を移動させるときの移動作業効率とを両立して得ることができる。
【0025】
さらに、検出手段23により上方2本のタイバー6に対応する第1のナット15の回転量とこれに対応するタイバー6の抜き出し方向の移動位置をパルスのカウントに基づき検出手段23が認識することができるので、例えば、タイバー6の移動を途中で中断したとしても、現在のタイバーの位置がどの位置にあるかを検出手段23で判別させることができ、現在のタイバー6の位置に合った動作を再開することが可能となる。
【0026】
さらに、タイバー6の入り動作が完了するときには、その僅か手前で第1のナット15の回転動作が低速状態で行われるので、第1のナット15にこれに対応するタイバー6の締結が完了するときの衝撃を緩和することができる。
【0027】
以上、本実施形態の一例を詳述したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、タイバー入限OFF、入り減速位置、入り回転減速位置等の位置を、ダイカストマシンの図示しない画面上でパルスカウントとして任意に手入力等で設定できるにしてもよい。また、本実施形態では、成形機としてダイカストマシンを一例として説示したが、ダイカストマシン1だけでなく、射出成形機等の成形機であってもよい。さらに、抜き動作及び入り動作されるタイバー6は、上方2本に限定するものではなく、1本でもよく、また、上方に限らず側部や下方のものとしてもよく、着脱される金型の大きさや形状に応じて適宜選定できるようにしてもよい。また、タイバーの移動位置をパルスのカウント値として検出できるようにしたが、タイバーの移動位置が検出される例えばリミットスイッチ等でもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 成形機(ダイカストマシン)
3 固定ダイプレート
3a 孔部(固定ダイプレートに形成した孔部)
4 固定金型
5 テールストック
5a 孔部(テールストックに形成した孔部)
6 タイバー
6a 第1のネジ部
6b 第2のネジ部
15 第1のナット
16 第2のナット
20 タイバー引き抜き手段
22 ナット用モータ
23 検出手段
24 記憶手段
25 インバータモータ
26 速度切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型の取り付けられる固定ダイプレートとテールストックに複数本のタイバーを架設し、
前記固定ダイプレートに形成した孔部に前記タイバーの一方を挿通して、該タイバーの第1のネジ部に第1のナットを締結して前記固定ダイプレートに前記タイバーの一方を螺合して固定し、
前記テールストックに形成した孔部に前記タイバーの他方を挿通して、該タイバーの第2のネジ部に第2のナットを締結して前記テールストックに前記タイバーの他方を螺合して固定し、
前記第2のネジ部に第2のナットを固定した状態で、タイバー引き抜き手段により前記複数本のタイバーのうち少なくとも1本のタイバーを、前記第1のナットから前記テールストック側に抜き出すことが可能な成形機において、
前記タイバー引き抜き手段には、前記抜き出されるタイバーに対応する前記第1のナットを回転駆動するナット用モータと、
該ナット用モータの回転速度を低速と高速に切り替える速度切替手段と、
前記第1のナットの回転量と前記抜き出されるタイバーの抜き出し方向の移動位置を検出する検出手段と、
該検出手段で検出された前記移動位置を記憶する記憶手段と、
前記ナット用モータにより前記第1のナットから抜き出された前記タイバーをさらに前記抜き出し方向に抜き出すインバータモータとを備え、
前記第1のナットから前記少なくとも1本のタイバーの第1のネジ部を抜き出してからさらに当該少なくとも1本のタイバーを前記抜き出し方向に抜き動作される際、
前記ナット用モータの高速回転により前記第1のナットから前記少なくとも1本のタイバーの第1のネジ部を高速で抜き出し、該抜き出しの完了が前記検出手段で検出された時、前記インバータモータが高速回転され、前記少なくとも1本のタイバーが前記ネジ抜き方向に高速で引き抜かれた後、
当該高速で引き抜かれた少なくとも1本のタイバーが抜き動作の完了する手前位置で低速移動されるようにしたことを特徴とする成形機におけるタイバーの移動位置検出方法。
【請求項2】
固定金型の取り付けられる固定ダイプレートとテールストックに複数本のタイバーを架設し、
前記固定ダイプレートに形成した孔部に前記タイバーの一方を挿通して、該タイバーの第1のネジ部に第1のナットを締結して前記固定ダイプレートに前記タイバーの一方を螺合して固定し、
前記テールストックに形成した孔部に前記タイバーの他方を挿通して、該タイバーの第2のネジ部に第2のナットを締結して前記テールストックに前記タイバーの他方を螺合して固定し、
前記第2のネジ部に第2のナットを固定した状態で、タイバー引き抜き手段により前記複数本のタイバーのうち少なくとも1本のタイバーを、前記第1のナットから前記テールストック側に抜き出すことが可能な成形機において、
前記タイバー引き抜き手段には、前記抜き出されるタイバーに対応する前記第1のナットを回転駆動するナット用モータと、
該ナット用モータの回転速度を低速と高速に切り替える速度切替手段と、
前記第1のナットの回転量と前記抜き出されるタイバーの抜き出し方向の移動位置を検出する検出手段と、
該検出手段で検出された前記移動位置を記憶する記憶手段と、
前記ナット用モータにより前記第1のナットから抜き出された前記タイバーをさらに前記抜き出し方向に抜き出すインバータモータとを備え、
前記第1のナットから前記少なくとも1本のタイバーの第1のネジ部を抜き出してからさらに当該少なくとも1本のタイバーを前記抜き出し方向に抜き動作される際、
前記ナット用モータの高速回転により前記第1のナットから前記少なくとも1本のタイバーの第1のネジ部を高速で抜き出し、該抜き出しの完了が前記検出手段で検出された時、前記インバータモータが高速回転され、前記少なくとも1本のタイバーが前記ネジ抜き方向に高速で引き抜かれた後、
当該高速で引き抜かれた少なくとも1本のタイバーが抜き動作の完了する手前位置で低速移動されるようにし、
該抜き動作の完了したタイバーを元の状態に戻すため、前記第1のナットに前記タイバーの第1のネジ部を入り動作する際には、
前記インバータモータを高速回転させて、前記タイバーを前記入り動作方向に高速で移動させ、前記検出手段でパルスのカウントにより予め検出され前記記憶手段に記憶されていた前記第1のナットに前記第1のネジ部が接触するその手前位置へ、該第1のネジ部を有するタイバーが達した時、前記インバータモータが高速回転から低速回転に減速され、前記入り動作方向に前記タイバーの第1のネジ部を前記第1のナットに対し低速でネジ込むことを特徴とする成形機におけるタイバーの移動位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206807(P2011−206807A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76711(P2010−76711)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)