説明

成形機の射出装置

【課題】移動ロッドの負荷を低減できる成形機の射出装置を提供する。
【解決手段】射出装置1は、プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7を有する。射出シリンダ装置7は、前方部分がプランジャ5に連結された射出ピストン23と、射出ピストン23の後方部分を摺動可能に収容するシリンダチューブ21とを有し、シリンダチューブ21の内部はピストン部23bにより前方のロッド側室21rと後方のヘッド側室21hとに区画されている。また、射出装置1は、射出シリンダ装置7に作動液を供給可能な液圧装置9と、射出ピストン23を前方へ押すことが可能な移動ロッド11と、移動ロッド11を駆動可能な駆動装置13とを有している。そして、移動ロッド11は、射出ピストン23に対して軸方向に移動可能に挿入され、先端部11bがヘッド側室21hから隔離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の射出装置に関する。成形機は、例えば、ダイカストマシンや射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
成形材料を押し出すプランジャを液圧機器と電動機との組み合わせにより駆動する、いわゆるハイブリッド式の射出装置が知られている(例えば特許文献1)。具体的には、特許文献1では、プランジャを駆動する射出シリンダ装置と、当該射出シリンダ装置のシリンダチューブの後方に挿入され、射出シリンダ装置の射出ピストンを前方へ押し出し可能な移動ロッドと、当該移動ロッドを駆動する電動機とを有する射出装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の射出装置は、低速射出においては、電動機により移動ロッドを前進させ、移動ロッドにより射出ピストンを押し出す。また、当該射出装置は、高速射出や増圧においては、上記の電動機の駆動を継続しつつ、アキュムレータから射出ピストンの背後に作動液を供給する。すなわち、アキュムレータからの高圧の作動液により射出ピストンを前進させ、さらに、その作動液を移動ロッドにより加圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−73708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術では、高速射出や増圧において、作動液の高い圧力が移動ロッドの先端に移動ロッドを後退させる力として作用する。その結果、例えば、電動機を大型化せざるを得ない。
【0006】
本発明の目的は、移動ロッドの負荷を低減できる成形機の射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る成形機の射出装置は、キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、前方部分が前記プランジャに連結された射出ピストンと、当該射出ピストンの後方部分を摺動可能に収容するシリンダチューブとを有し、前記シリンダチューブの内部が前記射出ピストンの前記後方部分により前方のロッド側室と後方のヘッド側室とに区画された射出シリンダ装置と、前記ヘッド側室に作動液を供給可能な液圧装置と、前記シリンダチューブの後方に挿入され、前記射出ピストンを前方へ押すことが可能な移動ロッドと、前記移動ロッドを前記シリンダチューブに対して軸方向に駆動可能な駆動装置と、を有し、前記移動ロッドは、前記射出ピストンに対して軸方向に移動可能に挿入され、先端が前記ヘッド側室から隔離されている。
【0008】
好適には、前記駆動装置は、回転式の電動機と、前記電動機の回転を並進運動に変換して前記移動ロッドに伝達する伝達機構と、を有する請求項1に記載の成形機の射出装置。
【0009】
好適には、低速射出においては、前記駆動装置から前記射出ピストンに駆動力を付与し、前記液圧装置からは前記射出ピストンに駆動力を付与せず、高速射出及び増圧においては、前記駆動装置からは前記射出ピストンに駆動力を付与せず、前記液圧装置から前記射出ピストンに駆動力を付与するように、前記駆動装置及び前記液圧装置を制御する制御装置を更に有する。
【0010】
好適には、前記移動ロッドは、前記射出ピストンに対して前方から後方へ係合する係合部を有し、前記射出ピストンに係合した前記移動ロッドを後退させることによって成形後の前記プランジャの後退を行うように前記駆動装置を制御する制御装置が設けられている。
【0011】
好適には、前記液圧装置は、高速射出時に前記ヘッド側室に作動液を供給可能なアキュムレータを有し、前記制御装置は、前記射出ピストンの後退に伴って前記ヘッド側室から排出される作動液を前記アキュムレータに供給し、前記アキュムレータを充填するように前記駆動装置及び前記液圧装置を制御する。
【0012】
好適には、前記液圧装置は、前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを連通するランアラウンド回路を有する。
【0013】
好適には、前記液圧装置は、前記ロッド側室から排出される作動液の流量を調整可能な流量制御弁を有する。
【0014】
好適には、複数の前記駆動装置が、前記移動ロッドに対して並列に、且つ、前記移動ロッドに対して回転対称の位置に設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動ロッドの負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るダイカストマシンの射出装置の要部の構成を示す模式図。
【図2】図1の射出装置の動作を説明する図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るダイカストマシンの射出装置の要部の構成を示す模式図。
【図4】図3の射出装置の動作を説明する図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るダイカストマシンの射出装置の要部の構成を示す模式図。
【図6】図5の射出装置の動作を説明する図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るダイカストマシンの射出装置の要部の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、説明対象の実施形態において、既に説明された実施形態の構成と同様若しくは類似する構成については、既に説明された実施形態と同一の符号を付し、また、説明を省略することがある。
【0018】
<第1の実施形態>
(射出装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイカストマシンDC1の射出装置1の要部の構成を示す図である。
【0019】
射出装置1は、不図示の型締装置に保持された固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯(溶融状態の金属材料)を射出・充填する装置である。
【0020】
射出装置1は、キャビティ105に連通するスリーブ3と、スリーブ3内において溶湯をキャビティ105へ押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7と、射出シリンダ装置7を作動液(例えば油)の供給により駆動するための液圧装置9と、を有している。
【0021】
また、射出装置1は、射出シリンダ装置7を液圧装置9とは異なる駆動源により駆動するために、移動ロッド11と、移動ロッド11を駆動する駆動装置13とを有している。駆動装置13は、例えば、回転式の射出用電動機15と、射出用電動機15の回転を並進運動に変換して移動ロッド11に伝達する伝達機構17とを有している。さらに、射出装置1は、液圧装置9及び駆動装置13を制御する制御装置19を有している。
【0022】
以下、概ね上記の列挙順に詳細を説明する。
【0023】
スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。プランジャ5は、スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。
【0024】
スリーブ3に形成された給湯口3aから溶湯がスリーブ3内に供給された状態で、プランジャチップ5aがスリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動する(前進する)ことにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
【0025】
(液圧式駆動系の構成:射出シリンダ装置7、液圧装置9等)
射出シリンダ装置7は、例えば、増圧式の射出シリンダ装置により構成されており、シリンダチューブ21と、シリンダチューブ21の内部を摺動可能な射出ピストン23及び増圧ピストン25とを有している。
【0026】
射出シリンダ装置7は、プランジャ5に対して同軸に配置され、射出ピストン23は、プランジャ5に継手27を介して連結され、シリンダチューブ21は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、射出ピストン23のシリンダチューブ21に対する移動により、プランジャ5はスリーブ3内を前進又は後退する。
【0027】
シリンダチューブ21は、射出シリンダ部21aと、射出シリンダ部21aの後方に接続された増圧シリンダ部21bとを有している。射出シリンダ部21a及び増圧シリンダ部21bは、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。
【0028】
射出ピストン23は、プランジャ5に継手27を介して連結されるロッド部23aと、射出シリンダ部21aを摺動するピストン部23bとを有している。ロッド部23aは、プランジャ5に連結される小径ロッド部23aaと、小径ロッド部23aaよりも大径の大径ロッド部23abとを有している。
【0029】
小径ロッド部23aa、大径ロッド部23ab及びピストン部23bの断面形状は、例えば、円形である。大径ロッド部23abは、その径が射出シリンダ部21aの径よりも小さく、また、射出シリンダ部21aの前方から射出シリンダ部21a外へ突出している。
【0030】
射出シリンダ部21aの内部は、ピストン部23bにより、ロッド部23aが延び出る側のロッド側室21rと、その反対側のヘッド側室21hとに区画されている。ヘッド側室21hに作動液が供給されることにより、射出ピストン23は前進(プランジャ5側へ移動)可能である。
【0031】
なお、特に図示しないが、ロッド部23aと射出シリンダ部21aの前方の開口との間のシール、ピストン部23bと射出シリンダ部21aとの間のシールは、Vパッキン等の適宜な部材を用いて行われてよい。
【0032】
増圧シリンダ部21bは、射出シリンダ部21aのヘッド側室21h側に接続され、また、射出シリンダ部21aよりも大径に形成されている。
【0033】
増圧ピストン25は、射出シリンダ部21aの内部(ヘッド側室21h)を摺動可能な小径ピストン部25aと、増圧シリンダ部21bの内部を摺動可能な大径ピストン部25bと、増圧シリンダ部21bの外部後方へ延出する後方部25cとを有している。
【0034】
増圧シリンダ部21bの内部は、大径ピストン部25bにより、射出シリンダ部21a側の前側室21fと、その反対側の後側室21gとに区画されている。また、大径ピストン部25bの後側室21gにおける受圧面積は、小径ピストン部25aの前側室21fにおける受圧面積よりも大きい。
【0035】
従って、前側室21fの圧抜きを行うと、小径ピストン部25aのヘッド側室21hにおける受圧面積と、大径ピストン部25bの後側室21gにおける受圧面積との差に起因して、増圧ピストン25は、後側室21gの作動液から受ける圧力よりも高い圧力をヘッド側室21hの作動液に加えることが可能である。すなわち、射出シリンダ装置7は、増圧機能を有している。
【0036】
なお、特に図示しないが、小径ピストン部25aと射出シリンダ部21aとの間のシール、大径ピストン部25bと増圧シリンダ部21bとの間のシール、後方部25cと増圧シリンダ部21bの後方の開口との間のシールは、Vパッキン等の適宜な部材を用いて行われてよい。
【0037】
液圧装置9は、作動液を貯留するタンク29と、射出シリンダ装置7に作動液を供給するためのアキュムレータ31と、アキュムレータ31を充填するためのポンプ33と、ポンプ33を駆動する充填用電動機35とを有している。
【0038】
タンク29は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク29は、射出シリンダ装置7から排出される作動液を受け入れ、また、ポンプ33を介してアキュムレータ31に作動液を供給する。
【0039】
アキュムレータ31は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ31は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ31内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧され、その蓄圧された圧力により作動液を供給する。
【0040】
ポンプ33は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。また、ポンプ33は、ロータやピストンの1周期の運動における吐出量が、固定された定容量ポンプであってもよいし、可変とされた可変容量ポンプであってもよい。ポンプ33は、1方向に作動液を吐出できれば十分であるが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。
【0041】
充填用電動機35は、直流モータでも交流モータでもよい。また、充填用電動機35は、誘導モータや同期モータ等の適宜なモータにより構成されてよい。充填用電動機35は、例えば、サーボモータとして構成されており、充填用電動機35の回転を検出するエンコーダ37と、充填用電動機35に電力を供給するサーボドライバ(サーボアンプ)39と共にサーボ機構を構成している。
【0042】
なお、後述する動作の説明において、充填用電動機35が停止しているとき、充填用電動機35は、トルクフリーの状態とされてもよいし、一定位置に停止するように制御されてもよいし、ブレーキを含んで構成され、ブレーキが使用されてもよい。射出装置の具体的な構成及び充填用電動機35が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよい。
【0043】
液圧装置9は、射出シリンダ装置7、タンク29、アキュムレータ31及びポンプ33を互いに接続する複数の流路、及び、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数の弁を有している。複数の流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。液圧装置9は、具体的には、例えば、以下に述べる流路及び弁を有している。
【0044】
液圧装置9は、アキュムレータ31とヘッド側室21hとを接続する第1流路41と、ロッド側室21rとタンク29とを接続する第2流路43とを有している。
【0045】
従って、射出装置1は、アキュムレータ31から第1流路41を介してヘッド側室21hへ作動液を供給して射出ピストン23を前進させることができる。また、このとき、射出ピストン23の前進に伴ってロッド側室21rから押し出される作動液は、第2流路43を介してタンク29に排出される。
【0046】
液圧装置9は、アキュムレータ31と後側室21gとを接続する第3流路45と、前側室21fとロッド側室21rとを接続する第4流路47とを有している。なお、第3流路45のアキュムレータ31側の一部は第1流路41のアキュムレータ31側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0047】
前側室21fは、第4流路47、ロッド側室21r及び第2流路43を介してタンク29に接続されており、圧抜きが可能となっている。なお、第4流路47に代えて、前側室21fとタンク29とを直接的に接続する流路が設けられてもよい。
【0048】
射出装置1は、アキュムレータ31から第3流路45を介して後側室21gに作動液を供給するとともに、第4流路47を利用して前側室21fの圧抜きを行うことにより、上述した増圧ピストン25の増圧作用を利用して、アキュムレータ31の圧力よりも高い圧力をヘッド側室21hに付与することができる。
【0049】
液圧装置9は、ポンプ33の吐出口とアキュムレータ31とを接続する第5流路49を有している。なお、第5流路49のアキュムレータ31側の一部は第1流路41のアキュムレータ31側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0050】
射出装置1は、ポンプ33から第5流路49を介してアキュムレータ31に作動液を供給することにより、アキュムレータ31を蓄圧することができる。
【0051】
液圧装置9は、ヘッド側室21hとタンク29とを接続する第6流路51を有している。なお、第6流路51は、ヘッド側室21h側の一部が第1流路41のヘッド側室21h側の一部と共用され、タンク29側の一部が第2流路43のタンク29側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0052】
射出装置1は、射出ピストン23の後退に伴ってヘッド側室21hから押し出される作動液を第6流路51を介してタンク29へ排出することができる。
【0053】
液圧装置9は、後側室21gとタンク29とを接続する第7流路53を有している。第7流路53は、後側室21g側の一部が第3流路45の後側室21g側の一部と共用され、タンク29側の一部が第2流路43のタンク29側の一部と共用され、これら共用部分の中間部分が第6流路51の中間部分と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0054】
射出装置1は、増圧ピストン25の後退に伴って後側室21gから押し出される作動液を第7流路53を介してタンク29へ排出することができる。
【0055】
液圧装置9は、ポンプ33とロッド側室21rとを接続する第8流路55を有している。なお、第8流路55は、ロッド側室21r側の一部が第2流路43のロッド側室21r側の一部と共用され、ポンプ33側の一部が第5流路49のポンプ33側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0056】
射出装置1は、ポンプ33から第8流路55を介してロッド側室21rに作動液を供給することにより、射出ピストン23を後退させることができる。また、ロッド側室21rに供給された作動液は、第4流路47を介して前側室21fに供給され、増圧ピストン25の後退に寄与する。
【0057】
液圧装置9は、第1流路41に設けられたサーボバルブ57を有している。サーボバルブ57は、入力された電圧に応じた開口度で開くことにより、流量を無段階で調整可能である。また、サーボバルブ57は、開口度に応じた信号を出力可能であり、その信号に基づいてフィードバック制御がなされることによりサーボ機構を構成する。サーボバルブ57は、例えば、圧力補償付の流量制御弁により構成されている。サーボバルブ57は、ヘッド側室21hへ供給される作動液の流量を制御して射出シリンダ装置7の動作(速度)を制御可能であり、いわゆるメータイン回路を構成している。
【0058】
液圧装置9は、第1逆止弁VLA〜第6逆止弁VLFを有している。このうち、第1逆止弁VLA〜第5逆止弁VLEは、パイロット圧力が導入されて制御されるものである。パイロット圧力としては、例えば、不図示の液圧回路を介してアキュムレータ31の圧力が利用される。第1逆止弁VLA〜第6逆止弁VLFの配置及び機能は、具体的には以下のとおりである。
【0059】
第1逆止弁VLAは、第1流路41に設けられている。第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ31側からヘッド側室21h側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第1逆止弁VLAは、開くためのパイロット圧力が導入されているときは双方の流れを許容し、閉じるためのパイロット圧力が導入されているときは双方の流れを禁止する。
【0060】
第2逆止弁VLBは、第2流路43に設けられている。第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されていないときは、ロッド側室21r側からタンク29側への作動液の流れを許容し、その反対側の流れを禁止する。また、第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0061】
第3逆止弁VLCは、第3流路45に設けられている。第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ31側から後側室21g側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第3逆止弁VLCは、開くためのパイロット圧力が導入されているときは双方の流れを許容し、閉じるためのパイロット圧力が導入されているときは双方の流れを禁止する。
【0062】
第4逆止弁VLDは、第5流路49に設けられている。第4逆止弁VLDは、パイロット圧力が導入されていないときは、ポンプ33側からアキュムレータ31側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第4逆止弁VLDは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0063】
第5逆止弁VLEは、第6流路51(第7流路53)に設けられている。第5逆止弁VLEは、パイロット圧力が導入されていないときは、タンク29側からヘッド側室21h(後側室21g)側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第5逆止弁VLEは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを許容する(開かれる)。
【0064】
第6逆止弁VLFは、第5流路49と第8流路55との共用部分に設けられている。第6逆止弁VLFは、ポンプ33からアキュムレータ31及びロッド側室21r側への作動液の流れを許容し、その反対側の流れを禁止する。
【0065】
上記の他、液圧装置9は、ポンプ33の作動液を中子用のシリンダ装置等の適宜な装置に送出するための流路及び制御弁を有していてもよい。
【0066】
(電動式駆動系の構成:移動ロッド11、伝達機構17、射出用電動機15等)
移動ロッド11は、シリンダチューブ21の後方に挿入され、射出ピストン23を前方へ押し出し可能に設けられている。具体的には、以下のとおりである。
【0067】
移動ロッド11は、一定の断面形状で延びるロッド本体11aと、ロッド本体11aの先端に設けられた先端部11bとを有している。ロッド本体11a及び先端部11bの断面形状は、例えば、円形である。先端部11bは、ロッド本体11aよりも径が大きく形成されており、外周面がロッド本体11aの外周面よりも外側に突出している(フランジが設けられている。)。先端部11bの先端面は、例えば、平面とされている。
【0068】
増圧ピストン25には、ロッド本体11aが摺動可能に挿通される貫通孔25hが形成されている。貫通孔25hは、例えば、ロッド本体11aに対する摺動抵抗を低減するために、貫通方向の中央側が拡径されている。なお、この拡径された部位には、例えば、潤滑油(作動液)が満たされている。
【0069】
射出ピストン23には、ロッド本体11aが摺動可能に挿通される摺動孔23eと、移動ロッド11の先端部11bを収容可能な収容部23fとが形成されている。
【0070】
収容部23fの内部前方端面は、先端部11bが当接可能な被当接部23gとなっている。被当接部23gは、例えば、平面とされている。収容部23fは、摺動孔23eよりも径が大きく形成されており、収容部23fの内部後方端面は、先端部11bが前方から後方へ係合する被係合部23kとなっている。被係合部23kは、例えば、平面とされている。
【0071】
移動ロッド11は、先端部11bを射出ピストン23の被当接部23gに当接させて前進することにより、射出ピストン23を前進させることが可能である。また、移動ロッド11は、先端部11bを射出ピストン23の被係合部23kに当接させて後退することにより、射出ピストン23を後退させることが可能である。
【0072】
なお、先端部11bが被当接部23gに当接する位置から先端部11bが被係合部23kに当接する位置までの先端部11bの収容部23fに対する移動可能距離Lは、後述する高速射出における射出ピストン23のストロークよりも大きく設定されている。
【0073】
収容部23fは、先端部11bよりも径が大きく形成されており、収容部23fの内周面と先端部11bの外周面との間には隙間が形成されている。従って、先端部11bは、収容部23f内を非接触で移動する。
【0074】
収容部23fは、摺動孔23eとロッド本体11aとがシールされていることによって、ヘッド側室21hと隔離されている。従って、先端部11bには、ヘッド側室21hの作動液の圧力は作用しない。
【0075】
収容部23fは、例えば、大径ロッド部23abに形成された不図示の開口を介してロッド側室21rと通じている。従って、収容部23f内は作動液で満たされ、ロッド側室21rと同等の圧力とされる。また、収容部23f内の作動液は、移動ロッド11の収容部23fに対する挿入及び引抜きに伴って、ロッド側室21rに排出若しくはロッド側室21rから補給される。なお、収容部23fとロッド側室21rとを連通する不図示の開口は、射出ピストン23のうち、射出ピストン23が前進限に位置するときにもロッド側室21r内に位置する部分に形成される。
【0076】
射出用電動機15は、回転式の電動機であり、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転可能なロータとを有している。なお、射出用電動機15は、充填用電動機35と同様に、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。射出用電動機15は、例えば、サーボモータとして構成されており、射出用電動機15の回転を検出するエンコーダ59と、射出用電動機15に電力を供給するサーボドライバ61と共にサーボ機構を構成している。
【0077】
なお、後述する動作の説明において、射出用電動機15が停止しているとき、射出装置の具体的な構成及び射出用電動機15が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよいことは、充填用電動機35と同様である。
【0078】
伝達機構17は、例えば、ねじ機構により構成され、移動ロッド11に固定されたねじ軸63と、ねじ軸63に螺合し、射出用電動機15により回転駆動されるナット65とを有している。
【0079】
ねじ軸63は、移動ロッド11から移動ロッド11の背後の同芯上に延びている。なお、移動ロッド11及びねじ軸63は、一体的に形成されていてもよいし、別個に形成されて互いに固定されていてもよい。特に図示しないが、ねじ軸63は、適宜な方法(例えばスプラインの形成)により回転が規制されている。
【0080】
ナット65は、例えば、射出用電動機15の不図示のロータに固定(一体化)されている。射出用電動機15は、ナット65をねじ軸63に螺合させた状態で、ねじ軸63に対して同心状に配置されている。
【0081】
ナット65が射出用電動機15によって回転駆動されると、ねじ軸63には、軸方向への駆動力が付与される。これにより、ねじ軸63は、軸方向へ移動し、移動ロッド11は、前進若しくは後退する。
【0082】
なお、駆動装置13は、射出シリンダ装置7の一部として設けられていてもよい。換言すれば、射出用電動機15は、ビルトインモータとして設けられていてもよい。
【0083】
(制御系)
制御装置19は、例えば、CPU67、ROMやRAM等のメモリ69、入力回路71、及び、出力回路73を含んで構成されている。CPU67は、メモリ69に記憶されたプログラムを実行し、入力回路71を介して入力される入力信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を出力回路73を介して出力する。
【0084】
入力回路71に信号を入力するのは、例えば、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置75、エンコーダ37及び59、射出ピストン23の位置を検出するピストン位置センサ79、サーボバルブ57、移動ロッド11の位置を検出するロッド位置センサ81、ヘッド側室21hの圧力を検出するヘッド圧力センサ83、及び、アキュムレータ31の圧力を検出するアキュムレータ圧力センサ85である。
【0085】
出力回路73が信号を出力するのは、例えば、ユーザに情報を表示する表示器77、サーボドライバ39及び61、サーボバルブ57、及び、各種の弁へのパイロット圧力の導入を制御する不図示の液圧回路である。
【0086】
ピストン位置センサ79は、シリンダチューブ21に対する射出ピストン23の位置を検出するものであり、プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。ピストン位置センサ79は、例えば、射出ピストン23に固定され若しくは形成され、射出ピストン23の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、ピストン位置センサ79、又は、制御装置19は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
【0087】
ロッド位置センサ81は、シリンダチューブ21に対する移動ロッド11の位置を検出するものである。ロッド位置センサ81は、例えば、移動ロッド11に固定され若しくは形成され、移動ロッド11の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、ロッド位置センサ81、又は、制御装置19は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
【0088】
ヘッド圧力センサ83は、ヘッド側室21hの圧力を検出することにより、プランジャ5が溶湯に加える圧力を間接的に検出するものである。また、アキュムレータ圧力センサ85は、アキュムレータ31の充填完了などの判定に利用される。
【0089】
(射出装置の動作)
図2は、射出装置1の動作を説明する図である。図2において、横軸は時間を示している。また、実線Lvは射出速度の変化を示し、実線Lpは射出圧力の変化を示している。実線Lv及びLpが描かれたグラフにおいて、縦軸は射出速度及び射出圧力の大きさを示している。また、当該グラフの下方においては、射出ピストン23、移動ロッド11、射出用電動機15、サーボバルブ57及び充填用電動機35の動作を示している。
【0090】
射出装置1は、概観すると、低速射出、高速射出、及び、増圧(昇圧)を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ5を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ5を前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ5の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
【0091】
(低速射出:t0〜t1)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、図1に示す状態となっている。すなわち、射出ピストン23及び増圧ピストン25は、後退限等の初期位置に位置している。移動ロッド11は、射出ピストン23の収容部23fの前方まで挿入されており、先端部11bが射出ピストン23の被当接部23gに当接している。射出用電動機15及び充填用電動機35は停止している。アキュムレータ31は蓄圧が完了している。サーボバルブ57及び第1逆止弁VLA〜第5逆止弁VLEは、アキュムレータ31からの作動液の放出が禁止されている限り適宜な状態とされてよいが、例えば、サーボバルブ57は閉じられ、閉じるパイロット圧力が導入可能な逆止弁は閉じるパイロット圧力が導入され、開くパイロット圧力のみが導入可能な逆止弁はパイロット圧力が導入されていない。
【0092】
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯がスリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置19は、射出用電動機15を駆動して、移動ロッド11を前進させる。また、制御装置19は、第2逆止弁VLBへの閉じるパイロット圧力の導入を停止する。
【0093】
これにより、射出ピストン23(プランジャ5)は、移動ロッド11により前方へ押し出される。また、射出ピストン23の前進に伴ってロッド側室21rから排出された作動液は、第2逆止弁VLBを介して、タンク29へ排出される。
【0094】
なお、射出ピストン23の前進に伴って容積が拡大するヘッド側室21hには、例えば、第1逆止弁VLAへの閉じるパイロット圧力の導入が停止されることにより、タンク29の作動液が第5逆止弁VLE及び第1逆止弁VLAを介して補給される。また、比較的低速で駆動されるポンプ33からヘッド側室21hに作動液が補給されるように流路及び弁が設けられてもよい。
【0095】
プランジャ5の速度は、射出用電動機15の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置19は、ピストン位置センサ79(ロッド位置センサ81でもよい)により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、射出用電動機15の回転数をフィードバック制御する。
【0096】
(高速射出:t1〜t2)
制御装置19は、ピストン位置センサ79の検出値に基づくプランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、射出用電動機15を停止する。また、制御装置19は、第1逆止弁VLAへの閉じるパイロット圧力の導入を停止するとともに、サーボバルブ57を適宜な開度で開く。
【0097】
これにより、アキュムレータ31からサーボバルブ57及び第1逆止弁VLAを介してヘッド側室21hに作動液が供給され、射出ピストン23は比較的高速で前進する。その結果、プランジャ5によりスリーブ3内の溶湯がキャビティ105に高速に射出される。
【0098】
なお、移動ロッド11は、シリンダチューブ21に対して停止しているので、シリンダチューブ21に対して前進する射出ピストン23に対しては、相対的に、後方に移動する。
【0099】
収容部23fにおいては、移動ロッド11が移動することにより、作動液を収容可能な容積が拡大する。そして、収容部23fは、大径ロッド部23abに形成された不図示の開口を介してロッド側室21rから作動液が補給される。
【0100】
ロッド側室21rは、射出ピストン23の前進に伴って容積が縮小される。本実施形態では、収容部23fの容積の拡大量はロッド側室21rの縮小量よりも小さく(移動ロッド11の断面積はピストン部23bのロッド側室21rにおける受圧面積よりも小さく)、収容部23f及びロッド側室21r全体としての容積は縮小する。そして、余剰な作動液は、ロッド側室21rから第2逆止弁VLBを介してタンク29に排出される。
【0101】
プランジャ5の速度は、サーボバルブ57の開口度の調整により制御される。なお、低速射出時と同様に、適宜にフィードバック制御がなされてもよい。
【0102】
(減速射出:t2〜t3)
溶湯がキャビティ105にある程度充填されると、プランジャ5は、その充填された溶湯から反力を受けて減速される。なお、各部の動作は、高速射出時と同様である。ただし、充填時の衝撃を緩和するために、プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときにサーボバルブ57の開口度を小さくするなど、適宜な減速制御がなされてもよい。
【0103】
(増圧:t3〜t4)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置19は、第3逆止弁VLCへの閉じるパイロット圧力の導入を停止する。増圧開始条件は、例えば、ヘッド圧力センサ83により検出される射出圧力の検出値が所定の値に到達したこと、又は、ピストン位置センサ79により検出されるプランジャ5の検出位置が所定の位置に到達したことである。
【0104】
第3逆止弁VLCへの閉じるパイロット圧力の導入が停止されることにより、アキュムレータ31から第3逆止弁VLCを介して後側室21gに作動液が供給される。また、前側室21fの作動液は、第4流路47及びロッド側室21rを介してタンク29へ排出可能である。
【0105】
従って、上述したように、増圧ピストン25の増圧機能により、後側室21gの作動液の圧力よりも高い圧力がヘッド側室21hに付与される。そして、射出圧力は終圧に到達する。また、射出速度は、キャビティ105に溶湯が完全に充填されることにより0となる。
【0106】
なお、第1逆止弁VLAは、閉じるパイロット圧力が導入される。ただし、第1逆止弁VLAは、ヘッド側室21hの圧力が高くなることにより自閉するから、後述するアキュムレータ31の充填の開始などの適宜な時期までは、パイロット圧力が導入されなくてもよい。
【0107】
また、先端部11bの移動可能距離Lは、高速射出及び増圧における射出ピストン23の移動距離よりも大きく設定されており、射出ピストン23が停止するまでの間に先端部11bが射出ピストン23の被係合部23kに当接して射出ピストン23の移動を阻害することはない。
【0108】
(保圧:t4〜t5)
制御装置19は、射出圧力が終圧となっている状態を維持する。この間に、溶湯は冷却されて凝固する。溶湯が凝固すると、制御装置19は、サーボバルブ57を閉じ、第2逆止弁VLB及び第3逆止弁VLCに閉じるパイロット圧力を導入する。これにより、アキュムレータ31から後側室21gへの液圧の供給及びロッド側室21rからタンク29への作動液の排出が停止され、保圧は終了する。
【0109】
なお、制御装置19は、適宜に溶湯が凝固したか否かを判定する。例えば、制御装置は、終圧が得られた時点等の所定の時点から所定の時間が経過したか否かにより、溶湯が凝固したか否か判定する。
【0110】
(製品突き出し)
特に図示しないが、保圧終了後、固定金型101から成形品を取り出すときに、プランジャ5によってビスケットを押し出してもよい。当該動作は、例えば、高速射出又は増圧と同様に各種の弁を制御して、アキュムレータ31からヘッド側室21h又は後側室21gへ作動液を供給して行われてよい。また、例えば、適宜に流路及び弁を設け、ポンプ33からヘッド側室21h又は後側室21gへ作動液を供給して行われてもよい。
【0111】
(アキュムレータ充填:t6〜t7)
制御装置19は、第4逆止弁VLDへの閉じるパイロット圧力の導入を停止し、また、サーボバルブ57を開く。そして、充填用電動機35を駆動する。これにより、ポンプ33から吐出された作動液が第4逆止弁VLD及びサーボバルブ57を介してアキュムレータ31に供給され、アキュムレータ31の蓄圧が行われる。
【0112】
アキュムレータ圧力センサ85の検出圧力が所定の蓄圧完了圧力に到達するなど、アキュムレータ31の蓄圧の完了条件が満たされると、制御装置19は、充填用電動機35を停止し、第4逆止弁VLDへ閉じるパイロット圧力を導入し、サーボバルブ57を閉じる。
【0113】
(プランジャ後退:t8〜t11)
制御装置19は、射出用電動機15を射出時とは逆方向に回転させ、移動ロッド11を後退させる。そして、移動ロッド11の先端部11bが射出ピストン23の後方の被係合部23kに当接すると(t9)、射出ピストン23も後退を始める。
【0114】
なお、射出ピストン23の後退に伴ってヘッド側室21hから押し出される作動液は、例えば、第1逆止弁VLA及び第5逆止弁VLEに開くパイロット圧力が導入されることにより、第1逆止弁VLA及び第5逆止弁VLEを介してタンク29に排出される。
【0115】
また、射出ピストン23の後退に伴って容積が拡大するロッド側室21rへの作動液の補給は、例えば、比較的低速で回転されるポンプ33によってなされる。第2逆止弁VLBを開くパイロット圧力を導入可能な逆止弁により構成しておき、ロッド側室21rの負圧を利用してタンク29からロッド側室21rへ作動液を補給してもよい。
【0116】
その後、制御装置19は、ロッド位置センサ81の検出値に基づいて移動ロッド11が後退限に到達したことを検出すると、射出用電動機15を停止する(t10)。ここで、移動ロッド11の後退限は、図1に示す、射出ピストン23の前方の被当接部23gに当接する位置であるから、移動ロッド11が後退限に到達しても、射出ピストン23は後退限に到達しない。
【0117】
そこで、制御装置19は、充填用電動機35を適宜な回転数で回転させ始め(t10)、ポンプ33からロッド側室21rに作動液を供給する。これにより、射出ピストン23は後退を継続する。なお、移動ロッド11は、停止しているが、後退する射出ピストン23に対して、相対的に、前進する。
【0118】
その後、制御装置19は、ピストン位置センサ79の検出値に基づいて射出ピストン23が後退限に到達したことを検出すると(t11)、充填用電動機35の回転を停止する。なお、このとき、移動ロッド11の先端部11aは射出ピストン23の被当接部23gに当接する。
【0119】
増圧ピストン25は、射出ピストン23の後退と同時に後退される。例えば、増圧ピストン25は、移動ロッド11若しくはポンプ33によって射出ピストン23を後退させるときに、ヘッド側室21hの作動液の排出を禁止することによって、ヘッド側室21hから圧力を受けて後退する。若しくは、増圧ピストン25は、ポンプ33によって射出ピストン23を後退させるときに、ロッド側室21rに供給された作動液が第4流路47を介して前側室21fに供給されることによって後退する。
【0120】
なお、増圧ピストン25の後退に伴って後側室21gから押し出される作動液は、例えば、第3逆止弁VLC及び第5逆止弁VLEに開くパイロット圧力が導入されることにより、第3逆止弁VLC及び第5逆止弁VLEを介してタンク29に排出される。
【0121】
また、制御装置19は、増圧ピストン25が後退限に到達したことを、ピストン位置センサ79等の検出値から推定可能である。増圧ピストン25が後退限に到達したときにオン又はオフされるリミットスイッチが設けられるなどしてもよい。
【0122】
以上の実施形態によれば、ダイカストマシンDC1の射出装置1は、キャビティ105に溶湯を押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7とを有する。射出シリンダ装置7は、前方部分(小径ロッド部23aa)がプランジャ5に連結された射出ピストン23と、射出ピストン23の後方部分(ピストン部23b)を摺動可能に収容するシリンダチューブ21とを有し、シリンダチューブ21の内部はピストン部23bにより前方のロッド側室21rと後方のヘッド側室21hとに区画されている。また、射出装置1は、射出シリンダ装置7に作動液を供給可能な液圧装置9と、シリンダチューブ21の後方に挿入され、射出ピストン23を前方へ押すことが可能な移動ロッド11と、移動ロッド11をシリンダチューブ21に対して軸方向に駆動可能な駆動装置13とを有している。そして、移動ロッド11は、射出ピストン23に対して軸方向に移動可能に挿入され、先端部11bがヘッド側室21hから隔離されている。
【0123】
従って、ヘッド側室21hに高圧の作動液を供給して射出ピストン23を駆動するときなどにおいて、移動ロッド11の先端部11bにはヘッド側室21hの作動液が作用しない。その結果、例えば、射出用電動機15を小型化して、コストダウンを図ることができる。
【0124】
射出装置1は、低速射出においては、駆動装置13から射出ピストン23に駆動力を付与し、液圧装置9からは射出ピストン23に駆動力を付与せず、高速射出及び増圧においては、駆動装置13からは射出ピストン23に駆動力を付与せず、液圧装置9から射出ピストン23に駆動力を付与するように、駆動装置13及び液圧装置9を制御する制御装置19を更に有する。
【0125】
従って、駆動装置13と液圧装置9とを協働制御する必要が無く、制御系が簡素である。その結果、低速射出速度の安定、高速射出における昇速性能及び増圧における昇圧性能の向上・安定が図られる。また、高速射出及び増圧において駆動装置13が使用されないことから、ねじ軸63を短くすることができる。
【0126】
移動ロッド11は、射出ピストン23に対して前方から後方へ係合する係合部(先端部11b)を有する。制御装置19は、射出ピストン23に係合した移動ロッド11を後退させることによって成形後のプランジャ5の後退を行うように駆動装置13を制御する。従って、射出用電動機15の有効利用が図られる。例えば、作動液を送出する充填用電動機35の負担が軽減され、省エネルギーが期待される。
【0127】
<第2の実施形態>
(射出装置の構成)
図3は、第2の実施形態の射出装置201の要部の構成を示す図である。なお、図3においては、図示の都合上、タンク29を複数位置に図示している。ただし、実際に複数のタンクが配置されてもよい。
【0128】
射出装置201は、射出ピストン23の後退を全て移動ロッド11によって行う点、このときにヘッド側室21h等から排出される作動液をアキュムレータ31に供給してアキュムレータ31を充填する点が、第1の実施形態の射出装置1と相違する。また、上記の相違点の結果、ポンプ33等が不要になっている。具体的には、以下のとおりである。
【0129】
駆動装置213において、伝達機構217のねじ軸263は、第1の実施形態のねじ軸63よりも長く形成されている。その長さの差は、先端部11bの収容部23f内における移動可能距離Lと同等以上である。また、ナット65(射出用電動機15)は、そのねじ軸263の延長分に応じた距離で第1の実施形態よりも後方に配置されてる。
【0130】
従って、駆動装置213は、図3の状態から更に移動可能距離Lで移動ロッド11を後退させることが可能である。すなわち、駆動装置213は、先端部11bが射出ピストン23の被係合部23kに当接した状態で、射出ピストン23が後退限に到達する位置まで、移動ロッド11を後退させることが可能である。
【0131】
液圧装置209においては、ポンプ33及び当該ポンプ33に係る構成が削除されている。削除されたポンプ33に係る構成は、具体的には、充填用電動機35、エンコーダ37、サーボドライバ39、第5流路49、第8流路55、第4逆止弁VLD、第2逆止弁VLB、及び、第6逆止弁VLFである。
【0132】
また、ロッド側室21r及び前側室21fは、タンク29のみに接続されている。なお、ロッド側室21r及び前側室21fのタンク29への接続においては、第1の実施形態と同様に、第2流路43及び第4流路47が用いられてもよい。アキュムレータ31等からタンク29への流れを禁止する弁としては、第1の実施形態の第5逆止弁VLEに代えて、第6逆止弁VLFと同様にパイロット圧が導入されない第7逆止弁VLGが設けられている。
【0133】
(射出装置の動作)
図4は、射出装置201の動作を説明する、図2と同様の図である。ただし、図4においては、充填用電動機35に対応する動作図はない。
【0134】
(低速射出〜保圧:t0〜t5)
制御装置19による、液圧装置209及び駆動装置13の制御は、第1の実施形態から削除された弁の制御が不要な点以外は、第1の実施形態と同様である。
【0135】
(プランジャ後退及びアキュムレータの充填:t16〜t18)
制御装置19は、時点t16において、第1の実施形態の時点t8と同様に、射出用電動機15を射出時とは逆方向に回転させ、移動ロッド11を後退させる。そして、移動ロッド11の先端部11bが射出ピストン23の後方の被係合部23kに当接すると(t17)、射出ピストン23も後退を始める。
【0136】
一方、制御装置19は、射出ピストン23(移動ロッド11)が後退するとき、まず、サーボバルブ57及び第3逆止弁VLCに開くパイロット圧力を導入する。従って、射出ピストン23の後退に伴って、増圧ピストン25は、ヘッド側室21hの作動液からの圧力を受けて、後側室21gの作動液をアキュムレータ31に押し出しつつ後退する。
【0137】
その後、制御装置19は、ロッド位置センサ81の検出値若しくは適宜なリミットスイッチ等により増圧ピストン25が後退限に到達したことを検知すると、第3逆止弁VLCに閉じるパイロット圧力を導入し、第1逆止弁VLAに開くパイロット圧力を導入する。そして、射出ピストン23は、ヘッド側室21hの作動液をアキュムレータ31に押し出しつつ後退を継続する。
【0138】
なお、移動ロッド11が射出ピストン23から引き抜かれて行くことに伴って作動液を収容する容積が拡大する収容部23f(t16〜t17)、増圧ピストン25が後退することによって容積が拡大する前側室21f、及び、射出ピストン23が後退することに伴って容積が拡大するロッド側室21r(t17〜t18)には、負圧によりタンク29から作動液が補給される。
【0139】
制御装置19は、ピストン位置センサ79(ロッド位置センサ81でもよい)の検出値により射出ピストン23が後退限に到達したことを検知すると、射出用電動機15を停止し、サーボバルブ57を閉じ、第1逆止弁VLAに閉じるパイロット圧力を導入する。
【0140】
(次サイクル準備:t18〜)
特に図示しないが、制御装置19は、射出用電動機15を射出時と同様の方向に駆動する。従って、先端部11bを射出ピストン23の後方の被係合部23kに当接させていた移動ロッド11は、前進する。
【0141】
そして、制御装置19は、ロッド位置センサ81の検出値により、先端部11bが射出ピストン23の前方の被当接部23gに当接する位置まで到達したことを検知すると、射出用電動機15を停止させる。
【0142】
なお、移動ロッド11が射出ピストン23に挿入されて行くことにより収容部23fから押し出された作動液は、ロッド側室21rを介してタンク29へ排出される。
【0143】
以上の第2の実施形態によれば、移動ロッド11は、射出ピストン23に対して軸方向に移動可能に挿入され、先端部11bがヘッド側室21hから隔離されていることから、第1の実施形態と同様に、移動ロッド11の先端部11bに高圧の作動液が作用することが抑制される。
【0144】
制御装置19は、射出ピストン23に係合した移動ロッド11を後退させることによって成形後のプランジャ5の後退を行い、射出ピストン23の後退に伴ってヘッド側室21hから排出される作動液をアキュムレータ31に供給するように液圧装置209及び駆動装置213を制御する。従って、第1の実施形態よりも更に射出用電動機15の有効利用が図られる。例えば、アキュムレータ31の充填に係る充填用電動機35の省略等が可能であり、省エネルギーが期待される。
【0145】
<第3の実施形態>
(射出装置の構成)
図5は、第3の実施形態の射出装置301の要部の構成を示す図である。
【0146】
射出装置301は、ロッド側室21rから排出された作動液をヘッド側室21hに還流するためのランアラウンド回路が構成されている点、及び、サーボバルブ57が、ロッド側室21rから排出される作動液の流量を制御可能な位置に設けられ、いわゆるメータアウト回路が構成されている点が第1の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0147】
液圧装置309は、ロッド側室21rとヘッド側室21hとを接続する第9流路352を有している。なお、第9流路352のロッド側室21r側の一部は、第2流路43のロッド側室21r側の一部と共用され、第9流路352のヘッド側室21h側の一部は、第1流路41のヘッド側室21h側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。第9流路352により、ランアラウンド回路が構成されている。
【0148】
第9流路352には、ランアラウンド回路をオン・オフするための第8逆止弁VLHが設けられている。第8逆止弁VLHは、パイロット圧力が導入されていないときは、ロッド側室21rからヘッド側室21hへの作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第8逆止弁VLHは、パイロット圧力が導入されているときは双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0149】
サーボバルブ57は、例えば、第9流路352のロッド側室21r側の、第2流路43との共用部分に配置されている。
【0150】
なお、液圧装置309は、後側室21gの作動液を排出するための第10流路354及び当該第10流路354の流れを制御する第9逆止弁VLIを有している。第9逆止弁VLIは、パイロット圧力が導入されていないときは、後側室21gからの作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第9逆止弁VLIは、パイロット圧力が導入されているときは双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0151】
第1逆止弁VLX及び第3逆止弁VLYは、第1の実施形態の第1逆止弁VLA及び第3逆止弁VLCと同様の構成であってもよいが、図5では、閉じるためのパイロット圧力のみが導入される逆止弁とされている。
【0152】
射出装置301は、ロッド側室21rの圧力を検出するロッド圧力センサ84を有している。制御装置19は、ヘッド圧力センサ83及びロッド圧力センサ84の検出する圧力に基づいて、プランジャ5が溶湯に加える圧力を算出可能である。
【0153】
(射出装置の動作)
図6は、射出装置301の動作を説明する、図2と同様の図である。
【0154】
制御装置19による制御は、サーボバルブ57、第8逆止弁VLH及び第9逆止弁VLIの制御を除いて、概ね、第1の実施形態と同様である。以下では、主として、第1の実施形態との相違を説明し、第1の実施形態との共通の制御・動作については説明を省略する。
【0155】
(低速射出〜減速射出:t0〜t3)
低速射出の開始前において、第8逆止弁VLH及び第9逆止弁VLIは、適宜な状態とされていてよいが、例えば、パイロット圧が導入されて閉じられている。
【0156】
制御装置19は、低速射出の開始時において、サーボバルブ57を開き、また、第8逆止弁VLHへのパイロット圧力の導入を停止する。これにより、ランアラウンド回路がオンとされる。一方、第1の実施形態において閉じるパイロット圧力の導入が停止された第2逆止弁VLBは、閉じるパイロット圧力の導入が継続される。
【0157】
従って、ロッド側室21rから排出された作動液は、タンク29へは流れず、第8逆止弁VLHを介してヘッド側室21hに還流される。ロッド側室21rの受圧面積がヘッド側室21hの受圧面積よりも小さいことに起因する作動液の不足分は、例えば、比較的低速で駆動されるポンプ33から第6逆止弁VLFを介して補充される。ヘッド側室21hの負圧によってタンク29から作動液が補給されるように流路及び弁が設けられてもよい。なお、ランアラウンド回路は、高速射出及び減速射出においてもオンの状態が継続される。
【0158】
(増圧〜保圧:t3〜t5)
増圧及び保圧においては、制御装置19は、第8逆止弁VLHへ閉じるパイロット圧力を導入し、ランアラウンド回路をオフとする。また、第2逆止弁VLBへの閉じるパイロット圧力の導入を停止し、ロッド側室21rの圧力を第1の実施形態と同様にタンク圧とする。従って、第1の実施形態と同様に増圧及び保圧が行われる。
【0159】
(アキュムレータ充填:t6〜t7)
サーボバルブ57の開閉が不要な点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0160】
(プランジャ後退:t8〜t10)
制御装置19は、第1の実施形態と同様に、移動ロッド11の後退(t8〜t10)と、ポンプ33からロッド側室21rへの作動液の供給(t10〜t11)とを行うことにより、射出ピストン23を後退させる。ただし、ロッド側室21rへの作動液の供給に際して、サーボバルブ57は開かれる(t8〜t11)。
【0161】
なお、ヘッド側室21hの作動液は、特に図示しないが、例えば、第1の実施形態と同様に、ヘッド側室21hとタンク29とを接続する流路に設けられた弁が開かれることにより、タンク29に排出される。第10流路354は、第9逆止弁VLIよりもヘッド側室21h側が不図示の流路を介してタンク29と接続されており、第9逆止弁VLIへの閉じるパイロット圧力が停止されることにより、後側室21gの作動液はタンク29に排出される。
【0162】
以上の第3の実施形態によれば、移動ロッド11は、射出ピストン23に対して軸方向に移動可能に挿入され、先端部11bがヘッド側室21hから隔離されていることから、第1の実施形態と同様に、移動ロッド11の先端部11bに高圧の作動液が作用することが抑制される。
【0163】
また、ランアラウンド回路が設けられていることから、アキュムレータ31の少容量化とタンク29の作動液の少量化が図られる。さらに、メータアウト回路によってブレーキ性能を向上させることができる。
【0164】
<第4の実施形態>
図7は、第4の実施形態の射出装置401の要部の構成を示す図である。
【0165】
射出装置401は、射出シリンダ装置407が、単動式とされている点、収容部23fに作動液が満たされない点、及び、駆動装置13が2組設けられている(2組の駆動装置13を含む駆動装置413が設けられている)点が第3の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0166】
射出シリンダ装置407は、上述のように、単動式とされている。すなわち、射出シリンダ装置407のシリンダチューブ421は、他の実施形態の射出シリンダ部21aに相当する部分のみを有し、増圧シリンダ部21bに相当する部分を有していない。また、射出シリンダ装置407は、射出ピストン423のみを有し、増圧ピストン25を有していない。
【0167】
なお、射出シリンダ装置407が単動式であることに対応して、液圧装置409においては、増圧シリンダ部21bに対する作動液の供給及び排出のための構成(第3流路45、第4流路47、第10流路354、これら流路に設けられる弁等)は、設けられていない。
【0168】
射出ピストン423の収容部23fは、ロッド部423aに形成された気体用孔423hを介して、シリンダチューブ421の外部に通じている(例えば大気開放されている。)。従って、収容部23fにおいては、気体(例えば空気)が満たされ、移動ロッド11の収容部23fに対する進入又は退出に伴って収容部23fの容積が縮小又は拡大すると、収容部23fは、気体用孔423hを介して気体が排出又は供給される。
【0169】
気体用孔423hの一端は、収容部23fの適宜な位置に開口し、他端は、ロッド部423aのうち射出ピストン423が後退限に位置するときにおいてもシリンダチューブ21から露出している位置に開口している。例えば、気体用孔423hは、一端が被当接部23gの中央において開口し、当該一端から大径ロッド部423ab及び小径ロッド部423aaを軸方向に延びた後、小径ロッド部423aaを半径方向に延び、他端が小径ロッド部423aaの外周面において開口する。
【0170】
駆動装置413において、各ねじ軸63(各駆動装置13)は、移動ロッド11に対して平行に(並列に)配置され、その後方側端部が移動ロッド11の後方側端部と連結部材418によって連結されている。また、2本のねじ軸63(2つの駆動装置13)は、移動ロッド11に対して互いに回転対称の位置に配置されている。すなわち、移動ロッド11を中心として2つの駆動装置13を180°回転させても、2つのねじ軸63の位置は同様の位置となる。2つの駆動装置413は、移動ロッド11が傾斜しないように、制御装置19によって同期制御される。
【0171】
第4の実施形態の射出装置401の動作は、第3の実施形態の動作から、増圧ピストン25の駆動に係る部分が省略されたものでよい。なお、増圧は、溶湯がキャビティ105に概ね充填された後、ヘッド側室21hの圧力がアキュムレータ31の圧力に近づいて行くことにより行われる。
【0172】
以上の第4の実施形態によれば、移動ロッド11は、射出ピストン423に対して軸方向に移動可能に挿入され、先端部11bがヘッド側室21hから隔離されていることから、第1の実施形態と同様に、移動ロッド11の先端部11bに高圧の作動液が作用することが抑制される。
【0173】
また、2つの駆動装置13が、移動ロッド11に対して並列に、且つ、移動ロッド11に対して回転対称の位置に設けられていることから、移動ロッド11に対して駆動装置13を直列に配置する第1〜第3の実施形態に比較して、射出シリンダ装置407の後方のスペースを短くすることができ、且つ、第1〜第3の実施形態と同様に、移動ロッド11を傾かせる力が発生することが抑制される。
【0174】
収容部23f内は、気体が満たされてシリンダチューブの外部に開放されていることから、作動液の総量の縮小による省力化、射出ピストン423の軽量化等の効果が得られる。
【0175】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0176】
上述した実施形態は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第4の実施形態の単動式の射出シリンダ装置は、第1〜第3の実施形態の1軸の駆動装置を有する及び/又は収容部(23f)に作動液が満たされる射出装置に適用されてもよいし、逆に、第1〜第3の実施形態の増圧式の射出シリンダ装置は、第4の実施形態の2軸の駆動装置を有する及び/又は収容部に作動液が満たされない射出装置に適用されてもよい。また、例えば、第1〜第3の実施形態の1軸の駆動装置と、第4の実施形態の収容部に作動液が満たされない射出シリンダ装置とが組み合わされてもよいし、第4の実施形態の2軸の駆動装置と、第1〜第3の実施形態の収容部に作動液が満たされる射出シリンダ装置とが組み合わされてもよい。第2の実施形態の、射出ピストンに係合した移動ロッド11の後退によってアキュムレータ31を充填する構成及び動作は、第1の実施形態等の移動ロッド11によって射出ピストン23を中途まで後退させるものに適用されてもよいし、第3の実施形態のメータアウト回路やランアラウンド回路を有する液圧装置に適用されてもよいし、第4の実施形態の駆動装置に適用されてもよい。また、第1の実施形態等の移動ロッド11によって射出ピストン23を後退させ、ヘッド側室21hの作動液をタンク29へ排出する構成及び動作は、第2の実施形態の射出ピストン23を後退限まで後退させる構成及び動作に適用されてもよい。
【0177】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
【0178】
駆動装置は、好適には電動機を含むものである。ただし、駆動装置は、必ずしも電動機を含むものに限定されず、駆動力を生じる種々の方式のものとされてよい。また、駆動装置は、電動機と液圧シリンダとが一体化されたハイブリッドアクチュエータであってもよい。電動機は、回転式のものに限定されず、リニアモータであってもよい。なお、リニアモータの場合には、伝達機構を介さずに、リニアモータの駆動力が直接に移動ロッドに伝達されてもよい。
【0179】
電動機が回転式のものである場合に、電動機の回転を並進運動に変換して移動ロッドに伝達する伝達機構(変換機構)は、ねじ機構に限定されない。例えば、ラック・ピニオン機構であってもよい。
【0180】
伝達機構がねじ機構である場合において、ねじ機構は、移動ロッドにナットが固定され、ねじ軸の回転によって移動ロッドを駆動するものであってもよい。また、ねじ機構は、ナット若しくはねじ軸が電動機のロータに固定されるものに限定されず、歯車機構等を介して電動機の回転が伝達されるものであってもよい。
【0181】
1又は複数の駆動装置は、移動ロッドを傾ける力が生じることを抑制する観点から、実施形態のように、移動ロッドに対して同軸、若しくは、回転対称の位置に並列に配置されることが好ましい。ただし、1つの駆動装置が移動ロッドに対して並列に配置されるなど、駆動装置は、移動ロッドに対して適宜な位置に配置されてよい。
【0182】
また、複数の駆動装置が移動ロッドに対して回転対称の位置に並列に配置される場合、駆動装置の数は2つに限定されない。例えば、3つの駆動装置(並進運動の開始点)が移動ロッド回りに120°間隔で配置されてもよいし、4つの駆動装置が移動ロッド回りに90°間隔で配置されてもよい。換言すれば、回転対称は、2回対称に限定されず、3回対称若しくは4回対称であってもよい。
【0183】
第1〜第3の実施形態では、増圧ピストン25にシリンダチューブ21から延出する後方部25cが設けられたが、後方部は省略されてもよい。なお、この場合、移動ロッドは、増圧ピストンの貫通孔(25h)との間、及び、増圧シリンダ部21bの後方端の開口との間の双方においてシールされる。また、単動式シリンダにおいて、第1〜第3の実施形態の増圧ピストンと同様に、射出ピストンに、シリンダチューブから突出する後方部が設けられてもよい。
【0184】
実施形態では、移動ロッドの先端は拡径しており、後退時に射出ピストンに係合可能であった。しかし、このような先端の拡径は無くてもよい。また、射出ピストンにおいても、収容部(23f)が摺動孔(23e)よりも拡径して被係合部(23k)が形成される必要はない。
【0185】
射出ピストンは、プランジャに連結され、シリンダチューブ内を摺動可能という一般的な構成に加え、移動ロッドの先端により押圧される被押圧部(被当接部23g)と、被押圧部の後方において、移動ロッドの先端をヘッド側室から隔離する隔離部分(ピストン部23b及び摺動孔23eを含む部分)と、被押圧部と隔離部分とを連結する部分(射出ピストン23の収容部23fを形成する筒状部分)とを有すれば、その形状は適宜に変形されてよい。
【0186】
例えば、実施形態では、射出ピストン23は、収容部23fを形成する筒状部分を有したが、当該筒状部分は、被当接部23gとピストン部23bとを連結する複数本の棒状部材に代えられてもよい。
【0187】
また、例えば、摺動孔23eは、貫通方向の長さがピストン部23bの軸方向の長さよりも短くされ、収容部23fは、ピストン部23bの内部まで延び、できるだけ移動可能距離Lが長くなるようにされてもよい。
【0188】
また、例えば、実施形態では、大径ロッド部23abがシリンダチューブ21との間をシールされつつ延出したが、小径ロッド部23aaがシリンダチューブ21との間をシールされつつ延出してもよい。
【0189】
また、例えば、高速射出における収容部23fの容積の拡大量とロッド側室21rの容積の縮小量とが同一となるように、若しくは、高速射出における収容部23fの容積の拡大量がロッド側室21rの容積の縮小量よりも大きくなるように、収容部23f等の大きさが設定されてもよい。
【0190】
第2の実施形態において例示したように、射出ピストンは、射出ピストンに係合した移動ロッドの後退によって後退限まで後退可能であるから、ロッド側室(21r)は、作動液により満たされている必要はない。例えば、ロッド側室は、シリンダチューブに形成された孔を介してシリンダチューブの外部に開放されていてよい。なお、第4の実施形態のように作動液が満たされない射出ピストンの収容部(23f)は、このようなロッド側室と連通されることにより、外部に開放されてもよい(気体用孔423hは省略されてよい。)。
【0191】
射出ピストンの収容部(23f)は、第4の実施形態において例示したように、射出ピストンのシリンダチューブから露出している部分に形成されたポートを介して、外部と接続されてよい。この場合において、収容部は、ポートを介して作動液が供給・排出されてもよい。
【0192】
移動ロッドの先端は射出ピストンに直接に当接しなくてもよい。例えば、移動ロッドの先端と、射出ピストンの被押圧部(被当接部23g)と間に他の部材が介在してもよい(ただし、他の部材は、射出ピストン若しくは移動ロッドに固定されていれば、その一部であると捉えることができる。)。また、例えば、移動ロッドの先端が収容部に摺動するように構成されるとともに、被押圧部と移動ロッドの先端との間の作動液の排出・補充が制御可能に構成され、移動ロッドの先端と射出ピストンの被押圧部と間に作動液が介在してもよい。
【0193】
液圧装置は、適宜に構成することができ、種々の流路の接続及び共用、並びに、種々の弁の配置は、適宜に変更可能である。作動液の流れを制御する弁としてパイロット式の逆止弁を多用したが、逆止弁に代えて、方向切換弁等の他の制御弁が用いられてもよい。
【0194】
実施形態において述べたように、移動ロッドは、高速射出等においては駆動されないことが好ましい。ただし、移動ロッドは、高速射出等において駆動されてもよい。このとき、移動ロッドは、射出ピストンに当接するなどして射出ピストンの前進に寄与してもよいし、射出ピストンの前進速度よりも遅く、射出ピストンの前進に寄与しなくてもよい。また、低速射出若しくは高速射出は、多段変速により実現されるものであってもよい。
【0195】
移動ロッドは、射出ピストンの後退に寄与しなくてもよい。例えば、ポンプからロッド側室に作動液を供給することのみによって射出ピストンを後退させてもよい。なお、この場合において、移動ロッドは、射出ピストンの後退を阻害しないように、適宜なタイミング及び速度で射出用電動機により後退させられることが好ましい。
【0196】
アキュムレータの充填を伴わない射出ピストンの後退は、アキュムレータの充填の前に行われてもよいし、アキュムレータの充填と同時に行われてもよいし、アキュムレータの充填の後に行われてもよい。
【0197】
各部材は、一体的に形成されてもよいし、複数の部材から構成されてもよい。例えば、射出ピストンにおいて、小径ロッド部、大径ロッド部及びピストン部は、互いに別個に形成されて互いに固定されてもよいし、小径ロッド部及び大径ロッド部、若しくは、大径ロッド部及びピストン部が一体的に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0198】
1…射出装置、5…プランジャ、7…射出シリンダ装置、9…液圧装置、11…移動ロッド、13…駆動装置、21…シリンダチューブ、21h…ヘッド側室、21r…ロッド側室、23…射出ピストン、105…キャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、
前方部分が前記プランジャに連結された射出ピストンと、当該射出ピストンの後方部分を摺動可能に収容するシリンダチューブとを有し、前記シリンダチューブの内部が前記射出ピストンの前記後方部分により前方のロッド側室と後方のヘッド側室とに区画された射出シリンダ装置と、
前記ヘッド側室に作動液を供給可能な液圧装置と、
前記シリンダチューブの後方に挿入され、前記射出ピストンを前方へ押すことが可能な移動ロッドと、
前記移動ロッドを前記シリンダチューブに対して軸方向に駆動可能な駆動装置と、
を有し、
前記移動ロッドは、前記射出ピストンに対して軸方向に移動可能に挿入され、先端が前記ヘッド側室から隔離されている
成形機の射出装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、
回転式の電動機と、
前記電動機の回転を並進運動に変換して前記移動ロッドに伝達する伝達機構と、
を有する請求項1に記載の成形機の射出装置。
【請求項3】
低速射出においては、前記駆動装置から前記射出ピストンに駆動力を付与し、前記液圧装置からは前記射出ピストンに駆動力を付与せず、
高速射出及び増圧においては、前記駆動装置からは前記射出ピストンに駆動力を付与せず、前記液圧装置から前記射出ピストンに駆動力を付与するように、
前記駆動装置及び前記液圧装置を制御する制御装置を更に有する
請求項1又は2に記載の成形機の射出装置。
【請求項4】
前記移動ロッドは、前記射出ピストンに対して前方から後方へ係合する係合部を有し、
前記射出ピストンに係合した前記移動ロッドを後退させることによって成形後の前記プランジャの後退を行うように前記駆動装置を制御する制御装置が設けられている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項5】
前記液圧装置は、高速射出時に前記ヘッド側室に作動液を供給可能なアキュムレータを有し、
前記制御装置は、前記射出ピストンの後退に伴って前記ヘッド側室から排出される作動液を前記アキュムレータに供給し、前記アキュムレータを充填するように前記駆動装置及び前記液圧装置を制御する
請求項4に記載の成形機の射出装置。
【請求項6】
前記液圧装置は、前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを連通するランアラウンド回路を有する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項7】
前記液圧装置は、前記ロッド側室から排出される作動液の流量を調整可能な流量制御弁を有する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の射出装置。
【請求項8】
複数の前記駆動装置が、前記移動ロッドに対して並列に、且つ、前記移動ロッドに対して回転対称の位置に設けられている
請求項1〜7のいずれか1項に記載の射出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−179609(P2012−179609A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42029(P2011−42029)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【特許番号】特許第4782250号(P4782250)
【特許公報発行日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)