説明

成形機

FTPサーバープログラムやHTTPサーバープログラム等の周知のサーバープログラムを利用して、パーソナルコンピュータ等の外部端末装置から成形機の内部データが取得される。成形機は、HTTPサーバープログラム(18)を内蔵すると共に射出成形機の内部データを保存するためのメモリ(12〜15)を有する制御器(10)を有する。HTTPサーバープログラムにより任意の外部機器(30)を通信回線を介して制御器(10)と接続し、成形機から内部データを取得し、外部機器(30)に表示する。HTTPサーバープログラムに代えて、FTPサーバープログラムが用いられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形機に係わり、特にネットワークに接続されて外部機器との通信を行うことのできる成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
成形機を備えた成形工場において、成形機の金型が変更される毎に必要となる成形条件データや、成形品の良否判別などに用いる実績値(ロギング)データや、波形データ等の内部データは、射出成形機の外部に取り出され、外部の記憶装置に蓄積される。このような成形機に関するデータを成形機から取り出して管理することは、成形工場を管理するうえで重要な要素である。
【0003】
また、ある成形品を成形するための成形機に関する成形条件データを、同じ成形品を成形する別の成形機に移し換えることができれば、成形条件の設定作業が容易になる。従来、成形条件データ、実績値データ、波形データ等の成形機の内部データは、ディスク記録媒体や、メモリカードなどの記憶媒体を介し成形機の外部に取り出していた。
【0004】
ディスク記録媒体やメモリカードなどの記憶媒体は記憶容量が限られており、大容量のデータを一括して記録することはできない。また、成形機の内部データを外部に取り出す際の記憶媒体へのデータの記録にはかなりの時間を必要とする。
【0005】
従来、成形機に内蔵されている動作プログラムソフトを変更する場合には、成形機の動作プログラムが記録されているROM本体や、読み書き可能なシリコンディスク本体を交換することで、動作プログラムの変更を行っていた。したがって、遠隔地にある成形機の動作プログラムを変更する際は、更新する新たなプログラムをネットワーク等の通信手段で送ることはできず、動作プログラムが記録された記憶媒体を遠隔地に送らなければならなかった。このため、成形機のメンテナンスを実行しようとする場合には長時間を要し、成形機のメンテナンスに費やされる費用が増大していた。
【0006】
なお、成形機と外部機器との間でデータのやりとりをする際、RS232C、OPC、SPI規格などを用いた通信プログラムによるデータ操作が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、成形機と外部機器との間で相互にデータ通信を行うためには通信仕様を決めなければならず、また、接続する外部機器に対してそれぞれ外部機器上で動作する成形機用通信プログラムを作成しなければならない。
【特許文献1】特開平10−113965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、FTPサーバープログラムやHTTPサーバープログラム等の周知のサーバープログラムを利用して、パーソナルコンピュータ等の外部端末装置から成形機の内部データを取得可能にすることにある。
【0008】
本発明はまた、外部端末装置から成形機内に格納された種々の内部データを確認可能にすることで、オペレータのメンテナンス作業の負担を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、特定のサーバープログラムを内蔵すると共に成形機の内部データを保存するための記憶部を有する制御部を備え、該特定のサーバープログラムは、外部端末装置を通信回線を介して該制御部と接続し、該制御部の記憶部に格納された内部データを該外部端末装置に送信することを特徴とする成形機が提供される。
【0010】
特定のサーバープログラムはHTTPサーバープログラム又はFTPサーバープログラムであることが好ましい。また、内部データを前記HTTPサーバープログラムによりHTMLファイルデータに変換するようにしてもよい。制御部に動作を制御するための成形機動作プログラムが内蔵されている場合、該成形機動作プログラムにより内部データをHTMLファイルデータに変換するようにしてもよい。
【0011】
また、内部データは、成形条件データ、実績値データ、波形データ、成形機状態データ、取扱い説明書用データ、成形機の仕様一覧データの少なくとも1種類を含むこととしてもよい。取扱い説明書用データ及び成形機の仕様一覧データはHTTPサーバープログラムにより固定のHTMLファイルデータに変換され、成形条件データ、実績値データ、波形データ及び成形機状態データは、成形機動作プログラムによりHTMLファイルデータに変換されてもよい。
【0012】
また、内部データは表示部に表示される画面データとしてもよい。
【0013】
外部端末装置は外部コンピュータであって、特定のサーバープログラムとしてHTTPサーバープログラムを内蔵し、外部コンピュータにはWebブラウザプログラムが設けられることとしてもよい。代わりに、外部端末装置は外部コンピュータであって、特定のサーバープログラムとしてFTPサーバープログラムを内蔵し、外部コンピュータにはFTP外部用プログラムが設けられることとしてもよい。
【0014】
外部端末装置と制御部との間で双方向通信が可能であり、外部端末装置から制御部側へ成形機動作プログラムを送信して更新を行うことができるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、射出成形機等の成形機内へサーバー機能を組み込むことにより、成形機とサーバーとの間の通信を、ネットワークを介することなく直接成形機内で行なうことができる。したがって、成形機の制御部とサーバーの間の通信が切断されることがなく、データ送信の信頼性を向上することができる。
【0016】
本発明の他の目的、効果、利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことにより、一層明瞭となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用された成形機としての射出成形機と外部機器との接続を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による射出成形機において制御動作を実行する制御器の機能ブロック図である。
【図3】射出成形機の内部データを外部機器で参照する場合に外部機器のディスプレイに表示されるトップページの表示例を示す図である。
【図4】射出成形機の内部データを外部機器で参照する場合における実績値データの表示例を示す図である。
【図5】射出成形機の内部データを外部機器で参照する場合における成形条件データの表示例を示す図である。
【図6】射出成形機の内部データを外部機器で参照する場合における現在の射出成形機の画面表示例を示す図である。
【図7】射出成形機の内部データを外部機器で参照する場合における取扱い説明書用データの画面表示例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による射出成形機において制御動作を実行する制御器の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0018】
1 射出成形機
2 ネットワーク
3 パーソナルコンピュータ
4 制御器
5 サーバー機能部
6 記憶部
10,20 制御器
30 外部機器
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明が適用された成形機と外部機器との接続関係について、図1を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された成形機としての射出成形機1と、外部機器2との接続を示す図である。
【0020】
本発明が適用された射出成形機1は、イーサネット(登録商標)等のネットワーク2を介して外部機器であるパーソナルコンピュータ3に接続される。従来、パーソナルコンピュータ3と射出成形機1との間にはサーバー装置が介在していたが、本発明が適用された射出成形機1は内部にサーバー機能を有しており、サーバー装置を配置する必要はない。
【0021】
従来、射出成形機1はサーバー装置により管理されていた。すなわち、射出成形機1に関するデータはサーバー装置に蓄積され、例えば、射出成形機1に関するデータをパーソナルコンピュータ3のような外部機器から取得するには、サーバー装置にアクセスして所望のデータを入手するように構成されていた。この場合、射出成形機1で得られた成形条件等のデータは、必ずサーバー装置に送信されなければならない。例えば、サーバー装置と射出成形機1との間の通信に障害が発生すると、射出成形機1のデータはサーバー装置に送信することができず、パーソナルコンピュータ3等の外部機器から射出成形機1のデータを取得することはできなくなってしまう。
【0022】
そこで、本発明では、図1に示すように、射出成形機1の制御器4に、サーバー機能部5及び記憶部6を設け、射出成形機1自体がサーバー機能を有するように構成している。これにより、射出成形機1とパーソナルコンピュータ3との間のネットワーク2上に単独のサーバー装置を介在させる必要がなくなり、ネットワーク2を介した射出成形機1とサーバー装置との通信は必ずしも必要ではなくなる。すなわち、射出成形機1の記憶部6にデータが蓄積され、蓄積されたデータはサーバー機能部5により管理される。そして、パーソナルコンピュータ3は、射出成形機1のサーバー機能部5に直接アクセスして記憶部6からデータを取り出すことができる。
【0023】
サーバー機能部5と記憶部6とは制御器4内のデータ転送によりデータを授受するので、ネットワーク等による通信のように通信チャネルをその都度確立する必要はない。したがって、射出成形機1の制御部4内のデータ転送の信頼性は、サーバーPCを介した通信の信頼性よりはるかに高く、通信の障害によるデータの喪失を防止することができる。
【0024】
次に、本発明を射出成形機に適用した第1の実施の形態について、図1を参照しながら説明する。図1は、射出成形機において制御動作を実行する制御器の機能ブロック図である。
【0025】
図1において、制御器10(図1に示す制御器4に相当)は、成形機動作プログラムを格納した成形機プログラムメモリ11を有する。制御器10は、成形機プログラムメモリ11の他に、内部データ用メモリとして、成形機状態データHTMLファイルメモリ12、波形データHTMLファイルメモリ13、実績値(ロギング)データHTMLファイルメモリ14、成形条件データHTMLファイルメモリ15を備える。つまり、本実施の形態では射出成形機の内部データとして、成形機状態データ、波形データ、実績値(ロギング)データ、成形条件データを想定している。これらの他に、射出成形機の取扱い方を説明するための取扱い説明書データ、射出成形機の各部の仕様を示した仕様一覧データは、固定HTMLファイルメモリ16に保存されている。上記のメモリは各々を別個の記憶装置で構成する必要はなく、1つの記憶装置で実現されてもよい。
【0026】
制御器10は、成形機プログラムメモリ11から読み出した成形機動作プログラムに基づいて制御動作を実行する。制御器10は、制御動作実行中には射出成形機の制御対象部の各部に設けられた複数のセンサから得られる複数の検出信号を用いてショット毎の監視を行う。本実施の形態においても、監視の対象となるのは、センサから得られる検出信号のみではなく、制御器で監視の対象となる値をその都度算出して算出された値と検出信号で示された検出値とを合わせて実績値として扱う。
【0027】
制御器10は、イーサネット(登録商標)等のネットワークを介してパーソナルコンピュータのような外部機器(外部端末装置)30と通信を行うために、ネットワークインターフェース用の入出力部17を備えると共に、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)サーバープログラム18を搭載している。HTTPサーバープログラム18は、内部データ用メモリにおける各HTMLファイルメモリ、固定HTMLファイルメモリ16にアクセスして固定HTMLファイルメモリ16に格納されているデータの読み出しあるいは変更を行う。HTTPサーバープログラム18は、図1におけるサーバー機能部5として機能する。
【0028】
次に、制御器10及び制御器10内部の各部の機能について説明する。
【0029】
1.制御器10は、成形機動作プログラムとHTTPサーバープログラムを同時に実行する。
【0030】
2.成形機動作プログラムは、制御動作の実行に伴い、成形機内部データをHTML形式で記述した、成形機状態データファイル、波形データファイル、実績値(ロギング)データファイル、成形条件データファイル等の画面連接データを自動作成し、作成した画面連接データを対応するHTMLファイルメモリ12〜15に保存する。なお、上記各データファイルの自動作成はHTTPサーバープログラム18により行われてもよく、また、HTMLファイルの作成だけを行うHTMLファイル作成用プログラムを設けてファイル作成を行わせてもよい。
【0031】
3.外部機器30は制御器10とネットワークインターフェース用の入出力部17を介して接続可能にされている。
【0032】
4.外部機器30は、HTTPの通信仕様に基づき、Webブラウズができるプログラム(例えば、ウィンドウズ(登録商標)でのIEなど)で制御器10内部の決められたアドレスにあるHTMLファイルメモリ12〜15を参照することができる。
【0033】
5.外部機器30はまた、成形機動作プログラムが自動作成するHTMLファイルを参照するだけでなく、取扱い説明書用データ、成形機の仕様一覧データ等が記述された、固定HTMLファイルの参照をも行うことができる。これらの取扱い説明書用データ、成形機の仕様一覧データ等は出荷段階で作成されている固定データである。
【0034】
6.HTTPサーバープログラム18は、メモリの記憶領域のファイル階層上のHTMLファイルを参照することにより、メモリの記憶領域内にある成形条件データHTMLファイルや、波形データHTMLファイルや、実績値(ロギング)データHTMLファイルなどを送信することができる。
【0035】
以上説明したように、HTTPの通信仕様も一般的であり、その通信クライアントプログラムは、ウィンドウズ(登録商標)のようなオペレーティングシステムを搭載したコンピュータ等の外部機器において、容易に入手可能なプログラムであり、プログラム作成の手間が省ける。
【0036】
また、HTTPの通信仕様も非常に高度なセキュリティ性を有しており、制御器内部のメモリを非合法的なアクセス等から保護することができる。HTTPの仕様に準じた通信を行うことで、大容量のデータをファイル形式で欠落することなくやり取りすることができる。各射出成形機に固有のIPアドレスを設定し、射出成形機相互間に通信ネットワーク形態を形成することで、外部機器は同時に複数台の射出成形機と通信を行うことが可能であり、各射出成形機の内部データを集中管理することができる。また、イーサネット(登録商標)等のネットワークインターフェースを使用した通信を行うことで、遠隔地の射出成形機の内部データを参照することができる。
【0037】
次に、外部機器30から制御器10のメモリにアクセスして外部機器30のディスプレイに内部データを表示させる場合の表示例について説明する。
【0038】
図3は、外部機器30のディスプレイにおけるWebブラウザプログラムのトップページの表示例を示す。トップページには、成形機の仕様一覧データに対応する仕様、実績値データに対応するロギングデータ、成形条件データに対応する成形条件(運転条件)、成形機状態データに対応する現在の成形機の画面表示、波形データ、取扱説明書用データに対応する取扱説明書、設定履歴や異常履歴等の履歴データの項目が表示される。マウスによるクリックやタッチパネルによりこの中の1つの項目を選択することで、選択されたデータが制御器10内のメモリから読み出され、外部機器30に送信されてディスプレイにて切替え表示される。
【0039】
成形機の仕様一覧データについては、図示しないが、例えば型締装置における型締方式、最大型締力、型開閉ストローク、エジェクタ方式、エジェクタストローク等の多岐にわたる項目別に、方式に関する種別や数値等のデータが示されている。また、可塑化装置について言えば、スクリュ直径、最大射出圧、最大保圧、射出質量、スクリュストローク等の多岐にわたる項目別に、数値データが示されている。勿論、仕様一覧データは型締装置や可塑化装置に関するデータだけではない。
【0040】
図4は実績値データの表示例を示す。実績値データは、成形動作に伴うショットの日時、ショット番号、サイクル時間、充填時間等のデータが複数の項目にわたって表示される。なお、図3を含め、以降で説明される表示画面には、いずれも説明されるデータの他に、ウィンドウズ(登録商標)による表示画面の場合であればタスクバー、ツールバー、アドレスバー等のメニューが表示されるが、図示は省略している。また、表示画面の下や横には横や縦方向にスクロールバー等も表示されるが、これも図示は省略している。
【0041】
なお、図4に示す表示内容に関するデータは、実績値(ロギング)データHTMLファイルとして、実績値(ロギング)データHTMLファイルメモリ14に格納されている。
【0042】
図5は成形条件データの表示例を示す。最上段の成形条件1の欄には、成形条件名や金型名、樹脂名、製品名等が表示され、その下の段の温度の欄には、加熱シリンダの各部の温度設定値等が表示される。さらにその下の段の可塑化の欄には、射出に関する各種設定値、例えばクッション位置、充填時間、サイクル時間等が表示される。図4の表示はあくまでも成形条件データの一部であり、スクロール機能により所望の成形条件を見ることができる。
【0043】
なお、図5に示す内容に関するデータは、成形条件データHTMLファイルとして、成形条件データHTMLファイルメモリ15に格納されている。
【0044】
図6は、現在の射出成形機の画面表示例を示す。この表示画面では、その下側に、段取、型開閉、可塑化、温度、一覧設定、波形表示、品質管理、生産管理の画面選択メニューバーがあり、これらの1つを選択することで、対応した表示画面に切り替えることができる。図6では、可塑化の画面として、充填前位置、V/P切換位置、クッション位置等の数値データが表示される。
【0045】
なお、図6に示す内容に関するデータは、成形機状態データHTMLファイルとして、成形機状態データHTMLファイルメモリ12に格納されている。成形機状態HTMLファイルには、成形機の各種機構に対する設定値と、成形機に備えられた検出器にて検出された検出値が表される
図7は、取扱い説明書用データの画面表示例を示す。ここでは、取扱い説明書の目次、例えば、第1章概要、第2章運転準備、第3章条件設定等の目次が表示されており、これらの1つを選択することで、その章の内容が頁毎に表示される。頁のめくりはスクロール機能で実現される。さらに、図7に示された目次画面は、HRMLファイルであるため、任意の箇所をクリックすると、表示画面を予めリンクされた画面に切換えることができる。例えば「第2章運転準備」をクリックすることで、目次画面から運転準備画面へ切換えることができる。このように、通常は紙による印刷物として射出成形機メーカより配送される取扱説明書でも、射出成形機内のメモリに記憶しておくことで、紙の使用量を削減することができる。さらに、通常、成形現場においてプリンタはパードナルコンピュータ3が配置された管理室内に置かれている。このため、プリンタの近くのパーソナルコンピュータ3を用いて、射出成形機のデータをプリントアウトすることができ、成形現場における利便性を向上させることができる。
【0046】
なお、図6,7に示す内容に関するデータは、固定HTMLファイルとして、固定HTMLファイルメモリ16に格納されている。
【0047】
次に、本発明の第1の実施の形態による射出成形機からデータを取得する手順について説明する。
【0048】
まず、オペレータは、管理装置である外部機器30から、どの射出成形機のデータを取得するのかを指定するため、射出成形機のアドレスの入力を行い、射出成形機の制御器10へログインする。制御器10へのアクセスのセキュリティ性を向上させるために、ログインに際してパスワードやID等の入力を必要とするように構成してもよい。
【0049】
制御器10ヘログインすると、図3に示すトップページが外部機器30の画面上に表示される。オペレータが、トップページ上に表示された各項目の中から確認したい項目を選択すると、選択したHTMLファイルメモリに格納されているアクセス時点での画面連接データが外部機器30に送信され、その内容が外部機器30に表示される。送信されたデータは、可塑化画面や型開閉画面などのリアルタイムの画面連接データだけでなく、成形条件データや取扱い説明書用データ、射出成形機の各部の仕様を示した仕様一覧データ等を含んでいてもよい。ここで、仕様一覧データの中には、射出成形機の仕様を個別の成形工場毎に、どのように適合させたかを表すカスタマイズデータも含まれる。さらに、不良時の対処方法を示す作業手順データを記憶しておいてもよい。したがって、これらの画面情報を元に、オペレータは射出成形機の内部データを迅速に確認することができる。さらに、各射出成形機にサーバープログラムが内蔵されているため、複数のパーソナルコンピュータ3から同一の射出成形機に同時にアクセスすることができる。したがって、成形現場における利便性を著しく向上させることができる。
【0050】
次に、本発明を射出成形機に適用した第2の実施の形態について、図8を参照しながら説明する。図8は、射出成形機において制御動作を実行する制御器の機能ブロック図を示す。制御器20は、成形機動作プログラムを格納した成形機プログラムメモリ21を有する。制御器20は、成形機プログラムメモリ21の他に、内部データ用メモリとして、成形機状態データメモリ22、波形データメモリ23、実績値(ロギング)データメモリ24、成形条件データメモリ25を備える。すなわち、本実施の形態では射出成形機の内部データとして、成形機状態データ、波形データ、実績値(ロギング)データ、成形条件データを想定している。内部データとしてはこれらの他に、射出成形機の取扱い方を説明するための取扱い説明書データ、射出成形機の各部の仕様を示した仕様一覧データ等が記憶されるが、これらの内部データ用メモリは図示を省略している。なお、上記のメモリは各々を別個の記憶装置で構成する必要はなく、1つの記憶装置で実現されてもよい。
【0051】
制御器20は、成形機プログラムメモリ21から読み出された成形機動作プログラムに基づいて制御動作を実行する。制御器20は、制御動作実行中には射出成形機の制御対象部の各部に設けられた複数のセンサから得られる複数の検出信号を用いてショット毎の監視、制御を行う。なお、射出成形機において監視の対象となるのは、センサから得られる検出信号のみとは限らない。つまり、射出成形機においては、制御器で監視の対象となる値をその都度算出して算出された値を監視する場合もある。このように算出された値と検出信号で示された検出値とを合わせて、本発明においては実績値と称している。
【0052】
制御器20はまた、イーサネット(登録商標)等のネットワークを介してパーソナルコンピュータのような外部機器(外部端末装置)30と通信を行うために、ネットワークインターフェース用の入出力部26を備えると共に、FTP(File Transmission Protocol)サーバープログラム27を搭載している。外部機器30にはFTPクライアントプログラムが搭載される。FTPサーバープログラム27は、内部データ用メモリ21〜25にアクセスして内部データの読み出しあるいは書き換えを行う。
【0053】
以下に、制御器20及び制御器20内部の各部の機能について説明する。
【0054】
1.制御器20は、成形機動作プログラムとFTPサーバープログラムを同時に実行する。
【0055】
2.成形機動作プログラムは、制御動作実行に伴う実績値(ロギング)データ、成形条件データ、波形データ、成形機状態データ等を作成して内部データ用メモリの各メモリに保存する。
【0056】
3.外部機器30は制御器20とネットワークインターフェース用の入出力部26を介して接続可能にされている。
【0057】
4.外部機器30は、FTPの通信仕様にのっとり、FTPサーバープログラムに通信の許可を依頼する。
【0058】
5.FTPサーバープログラム27はアカウント名入力、パスワード入力を外部機器30に対して要求することで、誰でも内部データを参照できないようにセキュリティをかけることができる。
【0059】
6.パスワード照合後、FTPサーバープログラム27は外部機器30の通信許可を行い、これにより、外部機器30は射出成形機の内部データを参照することができる。
【0060】
7.外部機器30は射出成形機の内部データを参照するだけでなく、データの変更を行うことができる。例えば、取扱い説明書用データ、成形機の仕様一覧データ等は出荷段階で作成されている固定データであるが、内容が変更される場合もあり、その場合、外部機器30から内容の変更、更新を行うこともできる。これは、成形機動作プログラムについても同様である。
【0061】
8.FTPサーバープログラム27はまた、アカウント名や、パスワードの違いにより、参照できる射出成形機の内部データの内容に制限をかけることができる。
【0062】
以上説明したように、FTPの通信仕様は一般的であり、その通信クライアントプログラムは、ウィンドウズ(登録商標)のようなオペレーティングシステムを搭載したコンピュータ等の外部機器において、容易に入手可能なプログラムであり、プログラム作成の手間が省ける。
【0063】
また、FTPの通信仕様は非常に高度なセキュリティ性を有しており、制御器内部のメモリを非合法的なアクセス等から保護することができる。
【0064】
FTPの仕様に準じた通信を行うことで、大容量のデータをファイル形式で欠落することなくやり取りすることができる。
【0065】
各射出成形機に固有のIPアドレスを設定し、射出成形機相互間に通信ネットワーク形態を形成することで、外部機器は同時に複数台の射出成形機と通信を行うことが可能であり、各射出成形機の内部データを集中管理することができる。
【0066】
次に、本発明の第2の実施の形態による射出成形機からデータを取得する手順について説明する。
【0067】
まず、オペレータは、管理装置である外部機器30から、どの射出成形機のデータを取得するのかを指定するため、射出成形機のアドレスの入力を行い、射出成形機の制御器20へログインする。制御器20へのアクセスのセキュリティ性を向上させるために、ログインに際してパスワードやID等の入力を必要とするようにしてもよい。制御器20へログインすると、ディレクトリ内の各ファイルの一覧を閲覧し、変更や内容の確認を行うファイルを選択した後、外部機器30への送信処理を行う。オペレータは外部機器30の画面にて、送信されたファイルを開いて内容の確認を行う。送信されたファイルには、成形条件データやロギングデータ等が記録されており、各データに関して変更が必要な場合には外部機器30にて変更を行う。その後、外部機器30より射出成形機の制御器20内の元のファイルが保存されていた箇所へ送り返される。
【0068】
以上のように、上述の実施の形態によれば、射出成形機のような成形機において、FTPサーバープログラムあるいはHTTPサーバープログラムを搭載し、ネットワークインターフェースを介して、パーソナルコンピュータ等の外部機器から成形機の内部データを取得、変更することができるようにしたことで、以下のような効果が得られる。
【0069】
(1)成形機の成形条件の管理を外部機器で容易に行うことができる。
【0070】
(2)外部機器で成形機の波形データを参照することができる。
【0071】
(3)外部機器で成形機の実績値(ロギング)データを参照することができる。
【0072】
(4)成形機の成形機状態データを参照することで外部機器で成形機の診断を行うことができる。
【0073】
更に、FTPサーバープログラムに関しては以下のような効果も得られる。
【0074】
(5)外部機器で成形機の成形機動作プログラムの変更を行うことができる。
【0075】
(6)外部機器で成形機の内部データを高速に取得することができ、また、外部機器から内部データを成形機に転送することもできる。
【0076】
(7)各射出成形機にサーバープログラムを内蔵しているため、複数のパーソナルコンピュータ3から同一の射出成形機に同時にアクセスすることができる。
【0077】
なお、上術の実施の形態では、本発明を射出成形機に適用しているが、本発明は射出成形機に限らず、他の成形機、例えば押出成形機のような成形機にも適用可能である。
【0078】
本発明は上述の実施例に限られず、本発明の範囲内で様々な変形例や改良例がなされるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のサーバープログラムを内蔵すると共に成形機の内部データを保存するための記憶部を有する制御部を備え、前記特定のサーバープログラムは、外部端末装置を通信回線を介して前記制御部と接続し、前記制御部の記憶部に格納された前記内部データを該外部端末装置に送信することを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記特定のサーバープログラムはHTTPサーバープログラム又はFTPサーバープログラムであることを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記内部データを前記HTTPサーバープログラムによりHTMLファイルデータに変換することを特徴とする請求項2に記載の成形機。
【請求項4】
前記制御部にはまた、動作を制御するための成形機動作プログラムが内蔵され、該成形機動作プログラムにより前記内部データをHTMLファイルデータに変換することを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項5】
前記内部データは、成形条件データ、実績値データ、波形データ、成形機状態データ、取扱い説明書用データ、成形機の仕様一覧データの少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項6】
前記取扱い説明書用データ及び前記成形機の仕様一覧データは前記HTTPサーバープログラムにより固定の前記HTMLファイルデータに変換され、前記成形条件データ、前記実績値データ、前記波形データ及び前記成形機状態データは、前記成形機動作プログラムにより前記HTMLファイルデータに変換されることを特徴とする請求項5に記載の成形機。
【請求項7】
前記内部データは表示部に表示される画面データであることを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項8】
前記外部端末装置は外部コンピュータであって、前記特定のサーバープログラムとしてHTTPサーバープログラム又はFTPサーバープログラムを内蔵し、前記外部コンピュータにはWebブラウザプログラム又はFTP外部用プログラムが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項9】
前記外部端末装置と前記制御部との間で双方向通信が可能であることを特徴とする請求項8に記載の成形機。
【請求項10】
前記外部端末装置から前記制御部側へ前記成形機動作プログラムを送信して更新を行うことを特徴とする請求項9に記載の成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/084916
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510782(P2006−510782)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003977
【国際出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】