説明

成形物及びそれを使用した吸着器

【課題】多孔質材料を原料の一部として使用した成形物で、原料の多孔質材料を上回る高い吸着機能を有する成形物と吸着器を提供する。
【解決手段】土又は岩石の砕粉あるいはそれらの混合物に多孔質材料を10〜400重量%添加し混合したものを500℃〜1200℃で焼成して得た成形物において、前記多孔質材料が発泡ガラスでありこの発泡ガラスの原料としてカルシウム塩がガラスに対して5〜80重量%の割合で使用されている成形物を提供する。
また、この成形物に、その成形物の温度を30〜500℃に加温できる加温機を装着した吸着器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形物及びそれを使用した吸着器に関する。
【背景技術】
【0002】
陶土等の無機系原料に、多孔質材料を混合し焼成し、空気中の有害物質の吸着機能を持たせた成形物は公知である。
【0003】
しかし、従来のこのような成形物は元々原料に使用された多孔質物質が持っている吸着機能を組み合わせたにすぎず、高い吸着機能、例えば原料の多孔質物質を上回る吸着機能は得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、多孔質材料を原料の一部として使用した成形物でありながら、原料の多孔質材料を上回る吸着機能を有する成形物を提供することを目的とする。
【0005】
また本発明は、この成形物の吸着機能をより効果的に発揮させる吸着器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究により、土や岩石の砕粉と、多孔質材料としてカルシウム塩を含有する発泡ガラスとを併用して使用することにより、かかる多孔質材料を上回る吸着機能を有する成形物を得た。更にこの成形物は加温することによっていっそうの吸着能力が発揮されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、土又は岩石などの砕粉あるいはそれらの混合物に多孔質材料を10〜400重量%添加し混合したものを500℃〜1200℃で焼成して得た成形物であって、前記多孔質材料が発泡ガラスでありこの発泡ガラスの原料としてカルシウム塩がガラスに対して5〜80重量%の割合で使用されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、かかる成形物に、成形物の温度を30〜500℃に加温できる加温機を装置した吸着器でもある。
【0009】
本発明の成形物は、原料として土又は岩石の砕粉あるいはそれらの混合物を少なくとも全体の25重量%以上使用するものである。本発明でいう土とは、土壌において、砂よりも粒形の小さいもの、すなわち、粒形が0.02mm以下のものである。土は、粒形0.002mm以下の粘土と、粒形0.002mmより大、0.02mm以下のシルトに大別されるが、本発明において、いずれの土も対象となるが粘土が原料全体の5重量%以上使用するのが好ましく、10重量%使用するのが、より好ましい。また、本発明における岩石の砕粉とは、前記土以外のもので砕石場等で人工的に作り出されたもの、例えば、脱水ケイキ等をいう。
【0010】
多孔質材料には、ゼオライト、ケイソウ土、発泡ガラス等様々な材料があるが、本発明においては、カルシウム塩を含有する発泡ガラスが原料として使用され、その使用量が前記土又は岩石の砕粉あるいはそれらの混合物に対して10〜400重量%、好ましくは30〜200重量%である。
【0011】
本発明では、発泡ガラスとは、ガラスを主原料とし、発泡剤を添加し過熱して得たガラス質の発泡体を言うが、本発明で使用される発泡ガラスは、原料としてガラスに対してカルシウム塩が5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%添加されているものである。前記カルシウム塩として、特に炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムとしては、化学的に精製された炭酸カルシウムが好ましいのはもちろんであるが、それ以外に貝がら、石灰石等、炭酸カルシウムを主成分とするものでもよく、特に貝がらが好ましい。
【0012】
本発明の成形物の原料としては、前記土又は岩石の砕粉あるいはそれらの混合物と発泡ガラスとが不可欠であるが、それら以外のものを原料の全重量に対して60重量%以下、好ましくは40重量%以下の範囲で使用することができる。かかる材料として、砂、砂利等があげられる。
【0013】
本発明の成形物は、前記原料を目的とする形状にした後、500〜1200℃、好ましくは800〜1000℃の温度で、3時間〜20時間好ましくは6〜10時間素焼きすることによって得られる。
【0014】
本発明の成形物の製品としては、壷、皿、瓶、鉢、灰皿等、従来の日用品、装飾品等あらゆるものが対象となる。
【0015】
本発明の成形物は従来通りの成形物の機能を果たしながら、且つ有害物質、臭気を吸着し、安全な生活環境をつくり出す。
【0016】
本発明の成形物は、30〜500℃に加温することにより、よりいっそうの吸着能力が発揮される。
【0017】
例えば、本発明による成形物の灰皿は、タバコの火の熱によって吸着能力が増大し、タバコの煙の有害物質を吸着する。
【0018】
次に、本発明の吸着器について説明する。
【0019】
本発明の吸着器は、前記本発明の成形物にその形成物の温度を30〜50℃に加温できる加温機を装着したものである。
【0020】
かかる加温器としては、電気ヒーター、温風器、コンロ、ランプ等成形物の温度を30〜500℃に加熱することのできるあらゆるものが対象となる。
【0021】
本発明の吸着器は、これらの加温器を前記本発明の成形物に装着させるだけで良い。
【0022】
本発明の成形物は、温度を30〜500℃、好ましくは40〜80℃にすることにより、吸着効果が飛躍的に増大する。本発明の吸着器はこの効果を有効的に利用したものである。
【0023】
本発明の加温器として、例えば、本発明の成形物である壷の中に温風器を装置したもの、皿の底にヒーターを装置したものがあるが、より有効なものとして照明器具例えばランプのかさ、灯台、灯ろう等がある。これらは従来の目的を果たしつつ、熱の発生による吸着効果の増大が果たせる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば次のような効果がある。
(1)本発明の成形物は優れた吸着機能を有する。
(2)本発明の成形物は優れた消臭機能を有する。
(3)本発明の成形物は加熱することにより、より優れた吸着機能を発揮する。
(4)本発明の成形物は加熱することにより、より優れた消臭機能を発揮する。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0025】
有害物質であるホルムアルデヒドの吸着性を調べるためホルムアルデヒドの発生源となる材料としてホルムアルデヒド系の接着剤である尿素樹脂を使用したパーティクルボードを用いた。そのホルムアルデヒド放出量はJIS A 5908 5.11に準拠して求めたところ、5.6mg/lであった。
【0026】
実施例及び比較例において、JIS A 5908 5.11の方法においてデシケータ内で水にホルムアルデヒドを吸収させる際に、試料のパーティクルボードと共に本発明の成形物及びそれ以外の吸着材料を入れることにより水に吸収されるホルムアルデヒドの量がどの程度減少するか調べた。
【0027】
実施例1
原料として、粘土、シルト、発泡ガラス、をそれぞれ重量比30:30:40の割合で使用し、800度で8時間素焼きした、幅50mm、長さ200mm、厚さ10mmの本発明の成形物を作成した。この本発明成形物において発泡ガラスは、ガラスに対して70重量%の貝がらの粉末が使用されているものを用いた。
この成形物をを前記パーティクルボードと共にデシケータに入れた時の水分に吸収されたホルムアルデヒドの量は0.32mg/lであった。
【0028】
実施例2
原料として、粘土、発泡ガラス、脱水ケイキをそれぞれ重量比50:40:10の割合で使用する以外は、実施例1と同様の方法を用いた。その時のホルムアルデヒドの量は0.35mg/lであった。
【0029】
実施例3
実施例1の本発明の成形物に使い捨てカイロを装置して成形物の温度が40℃になるようにする以外は実施例1と同様な方法を用いた。この時のホルムアルデヒドの量は0.04mg/lであった。
【0030】
比較例1
実施例1〜3の成形物に使用したものと同じ発泡ガラスでできた幅50mm、長さ200mm、厚さ10mmの成形体をデシケータ内に入れる以外は、実施例1〜3と同じ方法でホルムアルデヒドの量を計測した。ホルムアルデヒドの量は2.4mg/lであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土又は岩石の砕粉或いはそれらの混合物に、多孔質材料を10〜400重量%添加し混合したものを500℃〜1200℃で焼成して得た成形物であって、前記多孔質材料が発泡ガラスでありこの発泡ガラスの原料としてカルシウム塩がガラスに対して5〜80重量%の割合で使用されていることを特徴とする成形物。
【請求項2】
前記カルシウム塩が、炭酸カルシウムである請求項1の成形物
【請求項3】
前記カルシウム塩として、貝がらが使用される請求項2の成形物。
【請求項4】
土又は岩石の砕粉或いはそれらの混合物に、多孔質材料を10〜400重量%添加し混合したものを500℃〜1200℃で焼成して得た成形物であって、前記多孔質材料が発泡ガラスでありこの発泡ガラスの原料としてカルシウム塩がガラスに対して5〜80重量%の割合で使用されている成形物に、その成形物の温度を30〜500℃に加温できる加温機を装着した吸着器。

【公開番号】特開2006−290715(P2006−290715A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137834(P2005−137834)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(504454738)
【Fターム(参考)】