説明

成形用樹脂組成物

【課題】 優れた品質の木粉含有量の多い木粉−熱可塑性樹脂複合成形品を、高価な変質剤や特殊な装置を使用することなく製造する。
【解決手段】 微細木粉と親水性ポリマーブロック及び疎水性ポリマーブロックから構成されたブロックポリマーとの複合体90〜50質量%と熱可塑性樹脂10〜50質量%とからなる成形用樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木粉の含有量の多い樹脂成形品を得るための成形用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、木質感を与える合成樹脂成形品や間伐材、家屋廃材などの木質系廃棄物の有効利用を目的として、木質系粉末をフィラーとして含む樹脂成形用材料やそれらを用いた成形方法は多数提案されている。
【0003】
例えば、ポリオレフィンにセルロース粒状フィラーと弾性ラバー微粒子を配合したパネル製造のための押出成形用組成物(特許文献1参照)、50重量%以上の植物性食品残廃物と50重量%以下のポリプロピレン又はポリエチレンからなるボード製造用成形材料(特許文献2参照)、セルロース又はキチン質と熱可塑性高分子化合物との混合物に圧力及びせん断力を利用して熱可塑性を発現させて得た成形体(特許文献3参照)、オレフィン系合成樹脂に、木粉と樹脂改質剤例えば無水マレイン酸グラフト重合させたポリオレフィン(特許文献4参照)、低軟化点熱可塑性樹脂と植物系充填材とを加熱混練して両者を結合させたものを熱可塑性樹脂に配合した押出成形用材料(特許文献5参照)、木粉含有率70〜95重量%の少なくとも木粉と熱可塑性樹脂とを含む木質系複合材(特許文献6参照)、木粉とポリオレフィンとマレイン酸又は無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを乾式条件下、メカノケミカル的に複合化させた成形用木質系組成物(特許文献7参照)、木粉及びポリマーからなる複合材であって、木粉の少なくとも一部分として爆砕木粉を用いた複合材(特許文献8参照)、ヒノキチオール含有木質粉と木質用接着成分とのメカノケミカル反応生成物及び熱可塑性樹脂の複合体からなる抗菌性木質系複合成形材料(特許文献9参照)、押出機に無水マレイン酸とポリオレフィン系樹脂と木粉とを同時に投入し、樹脂を溶融しながら樹脂のマレイン化反応を行うと同時に木粉を混練し、押出機の金型ダイから押出成形して木質成形体を製造する方法(特許文献10参照)などが、これまでに提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの組成物においては、木質系フィラーの含有量を50質量%以上にすると、フィラーと熱可塑性樹脂との間の結合力が低いため、十分な強度の成形品を得ることができない。
【0005】
一方、無水マレイン酸を用いてポリプロピレンを変性したものをバインダーとして含ませると木質フィラーの含有量を80質量%又はそれ以上に増加しても十分に高い強度の成形品を得ることができるが、ポリプロピレンを変性するための工程を付加させる必要がある上に、使用する無水マレイン酸がその他の原料に比べて比較的高価なために、成形品がコスト高になるのを免れないという欠点がある。
【0006】
このため、無水マレイン酸その他の高価な変質剤を使用することなく、木質フィラーを50質量%以上含有させた場合においても十分に高い強度を示す成形品を与える木粉含有成形用樹脂組成物が各プラスチック製品製造分野において要望されていた。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−308051号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】特開2000−87499号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献3】特開2000−169594号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献4】特開2000−271909号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献5】特開2000−326382号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献6】特開2002−167514号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献7】特開2002−225011号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献8】特開2004−9299号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献9】特開2004−58409号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献10】特開2005−88461号公報(特許請求の範囲その他)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた品質の木粉含有量の多い木粉−熱可塑性樹脂複合成形品を、高価な変質剤や特殊な装置を使用することなく製造することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、木粉含有量50質量%以上の木粉−熱可塑性樹脂複合成形品を得るために鋭意研究を重ねた結果、木粉と熱可塑性樹脂粉末との混合物に親水性ポリマーブロックと疎水性ポリマーブロックからなるブロックポリマーを配合すると、木粉含有量を50質量%以上に増加しても良好な機械的性質を有する成形品が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、微細木粉と親水性ポリマーブロック及び疎水性ポリマーブロックから構成されたブロックポリマーとの複合体90〜50質量%と熱可塑性樹脂10〜50質量%とからなる成形用樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
本発明における木粉としては、従来の木質−樹脂複合材料の原料として用いられていた木粉の中から使用目的に応じ任意に選んで用いることができる。この木粉の種類は、エゾマツ、トドマツ、モミ、スギ、ヒノキなどの針葉樹などがある。そして、この原料としては、製材工場から副生する鋸屑、間伐材、廃材などを利用するのが有利である。
【0012】
しかしながら、本発明においては、50質量%以上配合しても成形性がそこなわれず、また剛性、耐クリープ性、寸法安定性、耐熱変形性、湿気吸収放出性が優れた成形品を与えることができ、しかも防かび性、殺菌性、害虫忌避性を有し、マイナスイオンの発生による癒し効果を示すという点で、ヒバを用いるのが特に好ましい。
【0013】
このヒバは、工業的には、通常ヒバ加工副生物やヒバ廃材をチップ化し、乾燥、粉砕し、ペレット化した状態で供給され、生木原材を用いたときのペレットの含水率は約40質量%である。
【0014】
この高含水率のペレットを、含水率10〜15質量%まで風乾し、次いでトンネル乾燥機内に装入し、ヒバ中に含まれているヒバ油が酸化されないように約65℃に加温した空気を通しながら、約6時間乾燥して含水率を2質量%に減少させる。
【0015】
このようにして乾燥されたペレットをカッターミルにより粗粉砕したのち、1〜5mmの範囲の適当な粒度に篩い分けし、本発明の樹脂組成物を成形する方法に応じ、選択した粒度のものを用いる。
【0016】
本発明においては、微細木粉を親水性ポリマーブロック及び疎水性ポリマーブロックから構成されたブロックポリマーと複合させて用いる。
このブロックポリマーを構成する親水性ポリマーブロックの親水性ポリマーとしては、例えば質量平均分子量3000以上のポリオキシエチレンを、また疎水性ポリマーブロックの疎水性ポリマーとしては、例えば質量平均分子量1000以上のポリオキシプロピレンを挙げることができる。
【0017】
本発明のブロックポリマーとしては、このポリオキシエチレンブロック(A)とポリオキシプロピレンブロック(B)とがB−A−B型ブロック結合し、両末端にヒドロキシル基を有するものが好適である。そして、このAに相当するポリマーブロックとして、質量平均分子量3000以上のポリオキシエチレンブロック20モル%を含むものが好ましい。このように、両末端にヒドロキシル基を有する化合物は、リグニン分子を可塑化する性質を有するので、上記のブロックポリマーと木粉とを混合し、粉砕すると、アスペクト比(l/d)の大きなセルロース分子集合体が形成される。
【0018】
このようなブロックポリマーは、例えばビー・エー・エス・エフ社から「プルロニック(登録商標名)」の「RPE2520」、「RPE3110」として市販されている。
【0019】
これらのブロックポリマーは、微細木粉と複合化して用いられるが、この複合化は、本発明の成形用樹脂組成物を成形する場合の方法に応じて、主として2つの方式がとられる。
すなわち、射出成形に用いる場合は、まず木粉を例えばカッターミルを用いて粒径1〜3mm程度に粗粉砕したのち、これに上記のブロックポリマーを加えて、例えばアトリションミルを用いて粒径50〜150μmに摩砕する。
【0020】
この際用いるアトリションミルは、上部のグラインダーを固定し、下部のグラインダーが高速回転する石臼型の摩砕機で、ホッパーから上部のグラインダーに穿設された投入口より投入された木粉が遠心力により上下のグラインダー間に導入され、ここで生じる圧縮力、せん断力、転がり摩擦力によりすり潰ぶされる構造を有している。通常グラインダーはダイヤモンド砥石で作られ、上下間の間隔はハンドルにより100分の1mm間隔で調整可能である。
【0021】
他方、押出成形に用いる場合は、成形品に高い機械的強度を有する板材とするために、アスペクト比の大きいセルロース集合体を形成させるように、カッターミルの刃の間隔を粗目に調整して、粗砕したのち、ふるい分けし、粒径2〜5mm程度の粗砕物とする。次いで、これにブロックポリマーを加え、例えばバイオマテリアル添加用として開発されたもみすり型粉砕機により微粉砕する。
【0022】
以上のようにして、複合化された微細木粉とブロックポリマーとは、木粉中の可塑化されたリグニンが変性しない条件下、例えば約65℃の温度で水分が1.5質量%以下になるまで乾燥後、ペレット化する。これには、耐熱性の低いバイオマテリアルのペレット化用として開発されたフラットダイ方式ペレタイザーを用いるのが有利である。このものは、放射状に配置された2個のローラーを公転させ、その下に固定されたディスクダイを摩擦により回転させる構造を有しており、微粉化された木粉はディスクダイとローラーの間で叩解されながらダイに設けられた排出孔から下方に放出されると同時に、所望の長さにカットされる作用を有する。
【0023】
本発明の成形用樹脂組成物は、このようにして形成された微細木粉とブロックポリマーとの複合体を熱可塑性樹脂と混合することにより調製されるが、この際に用いられる熱可塑性樹脂としては、これまで木粉との複合体の製造に際し、慣用されているものの中から適宜選択して用いることができる。
【0024】
このような熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂などを挙げることができる。
【0025】
本発明の成形用樹脂組成物は、通常、上記の微細木粉とブロックポリマーとの複合体90〜50質量%と熱可塑性樹脂10〜50質量%の範囲の割合で混合されるが、特に木粉を70質量%以上含む成形品を製造するための組成物として用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の組成物を用いると、微細木粉を50質量%以上、特に70質量%以上を含有し、しかも機械的物性、例えば寸法安定性、クリープ性、剛性、引張り強さ、圧縮強さ、曲げ強さが良好な押出成形品及び射出成形品を得ることができる。さらに、木粉としてヒバ木材を用いた場合には、防カビ性、殺菌性、害虫忌避性などを付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0028】
なお、射出成形により得られた試験片の引張り強さ(MPa)、破断伸び(%)及び弾性率は、インストロン社製万能材料試験機「5582型」を用い、JIS K7113に準拠して測定した。
【実施例1】
【0029】
ポリオキシエチレン含有割合20モル%、質量平均分子量3100のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名「プルロニックRPE2520」)2質量部と、平均粒径3mm、含水率1.5質量%のヒバ木粉58質量部との混合物を、アトリションミル型超微粉摩砕機により粉砕したのち、65℃において含水率1質量%になるまで乾燥する。次いで、これをフラットダイ方式ペレタイザーを用いて径2mm、長さ4mmのペレットに造粒した。
このようにして得たブロックポリマーとヒバ木粉との複合体の300倍拡大顕微鏡写真を図1に、また比較のためのブロックポリマーを加えないでヒバ木粉を粉砕した場合の300倍拡大顕微鏡写真を図2に示す。
次に、上記のペレット60質量部を65℃で約8時間乾操後、それに市販品として入手したポリプロピレンペレット(大日プラボード社製、商品名「フェンチペレットEPS−4G」)40質量部を配合し、タンブラーミキサーにより混合することにより、成形用樹脂組成物を調製した。次に、このようにして得た成形用樹脂組成物を、射出成形機としてクロックナー社製、製品記号「F−40」(型締圧90トン)を、金型としてJIS K7113の規格によるダンベル型試験片製造用のものを用いて、以下の条件により射出成形して試験片を作製した。
【0030】
シリンダー設定温度;170℃
金型温度;60〜65℃
スクリュー回転速度;80r.p.m
射出圧力;57.5MPa
保持圧力;88MPa
スクリュー背圧;0.2〜0.3MPa
スクリュー計量;8.1〜9.5秒
成形サイクル射出時間;2.0秒
保圧時間;3.0秒
冷却時間;15.0秒
全サイクル時間;27秒
このようにして得た試験片の物性を表1に示す。
【0031】
比較例1
ブロックポリマーを用いずに、ヒバ木粉のみを用いること以外は、実施例1と同様にして成形用樹脂組成物を調製し、これを用いて射出成形により試験片を作製した。
ただし、この場合、ブロックポリマーを含まないため、微粉細された木粉の粒径が大きくなり、成形機内の樹脂の流動性が実施例1に比べ低くなるため、射出圧力は64.0MPa、保持圧力は96.0MPa、スクリュー背圧は3.5MPaであった。
このようにして得た試験片の物性を表1に示す。
【実施例2】
【0032】
実施例1と同じブロックポリマー4質量部と実施例1と同じヒバ木粉56質量部との混合物を用い、実施例1と同様にしてペレット化したのち、ポリプロピレンペレット40質量部に配合し、タンブラーミキサーにより混合することにより、成形用樹脂組成物を調製した。
この成形用樹脂組成物を実施例1と同じ射出成形機及び金型を用い、以下の条件下で射出成形して試験片を作製した。
【0033】
シリンダー設定温度;170℃
金型温度;60〜65℃
スクリュー回転速度;80r.p.m
射出圧力;53.5MPa
保持圧力;80.0MPa
スクリュー背圧;0.2〜0.3MPa
スクリュー計量;8.1〜8.9秒
成形サイクル射出時間;2.0秒
保圧時間;3.0秒
冷却時間;15.0秒
全サイクル時間;27秒
このようにして得た試験片の物性を表1に示す。
【実施例3】
【0034】
実施例1で用いたブロックポリマー(プルロニックRPE2520)2質量部の代りにポリオキシエチレン含有割合10モル%、質量平均分子量3500のブロックポリマー(プルロニックRPE3110)4質量部を用い、これにヒバ木粉56質量部を混合し、実施例1と同様にして複合化し、ペレット化した。
このようにして得たペレットを65℃で約8時間乾燥したのち、その60質量部に実施例1で用いたのと同じポリプロピレンペレット40質量部を配合し、タンブラーミキサーで混合したのち、クロックナー社製射出成形機製品名「F−40」(型締圧90トン)を用い、以下の射出量条件下で射出成形することにより試験片を作製した。
【0035】
シリンダー設定温度;170℃
金型温度;60〜65℃
スクリュー回転速度;80r.p.m
射出圧力;74.6MPa
保持圧力;112.0MPa
スクリュー背圧;0.2〜0.3MPa
スクリュー計量;8.1〜8.9秒
成形サイクル射出時間;2.0秒
保圧時間;3.0秒
冷却時間;15.0秒
全サイクル時間;27秒
この例においては、射出圧力及び保持圧力が、実施例1及び2に比較し、著しく高いにもかかわらず、スクリュー背圧は同じ値になっているが、これはプルロニックRPE3110がプルロニック2520よりも疎水性が大きく、これが成形機中で木粉とポリプロピレンの界面に偏在し、相互作用を増大させた結果、粘性が高くなっているためと考えられる。
このようにして得た試験片の物性を表1に示す。
【実施例4】
【0036】
実施例2と同様にして調製したブロックポリマー(プルロニックRPE2520)とヒバ木粉との複合体60質量部に市販品として入手したポリスチレン(A&Mポリスチレン社製、製品名「GPPS」、メルトフローレート7.0)40質量部を乾燥処理したのち、加え、タンブラーミキサーにより混合し、実施例2と同様にしてペレット化することにより、成形用樹脂組成物を調製した。
次に、この成形用樹脂組成物を実施例2と同様にして、以下の条件により射出成形することにより試験片を作製した。
シリンダー設定温度;180℃
金型温度;75〜85℃
スクリュー回転速度;80r.p.m
射出圧力;141.3MPa
保持圧力;173.3MPa
スクリュー背圧;0.2〜0.3MPa
スクリュー計量;6.3〜6.7秒
成形サイクル射出時間;1.5秒
保圧時間;3.0秒
冷却時間;20.0秒
全サイクル時間;31〜32秒
このようにして得た試験片の物性を表1に示す。
【0037】
【表1】

【実施例5】
【0038】
含水率1.5質量%以下まで乾燥したヒバチップ96質量部を、平均粒径3mmに粗粉砕したのち、プルロニックRPE2520 4質量部を加え、ラブマシンを用いて微粉砕し、繊維状のヒバ木粉を製造した。
次いで、この繊維状のヒバ木粉を含水率1.5質量%まで乾燥したのち、フラットダイ方式ペレタイザーを用いて直径3mm、長さ4mmのペレットに造粒した。
このようにして得たペレットを65℃で8時間乾燥したのち、その350質量部に同様にして乾操した実施例1で用いたのと同じポリプロピレンペレット69質量部を加え、タンブラーミキサーを用いて混合することにより、ヒバ木粉83.5質量%とポリプロピレン16.5質量部からなる成形用樹脂組成物を調製した。
【0039】
次に、シンシナティエクストルージョン社製、コニカル2軸成形機、「タイプFT68」を用い、上記の成形用樹脂組成物の押出成形を行った。この押出成形機のコニカルスクリューの径の大きいゾーンにおいては、広い面積と高い混練り効果により、高分率の木粉が可塑化し、低分率のポリプロピレンとの複合化が行われる。この際、プルロニックは両成分の界面エネルギーを低下させ、複合化を容易にする役割を果たしている。
この例においては、成形機のバレル温度条件についてはフィーディングと金型の接合部分で168℃、金型温度については入口部分で175℃、出口部分で68℃に設定した。
また、スクリュー回転速度は13.0r.p.m、フィーダーの回転速度は3.3r.p.mとし、定常状態でのスクリュー背圧は8.1〜9.5MPa、吐出線速度0.102m/min、吐出量は53.5kg/hrであった。
このようにして得た成形物はアスペクト比の大きいセルロース分子集合体を含むヒバ木粉粉砕物が85質量%以上複合されているため、高剛性で、密度は1.2g/cm3であり、高級木材として好適である。このものの曲げ試験の結果を表2に示す。
【0040】
比較例2
プルロニックRPE2520を用いないこと以外は、全く実施例5と同様にしてヒバ木粉ペレット350質量部とポリプロピレンペレット69質量部からなる成形用樹脂組成物を調製した。このようにして得た成形用樹脂組成物を、実施例5で用いたのと同じ押出成形機により押出成形した。
【0041】
この例の成形条件は、バレル温度条件についてフィーディングと混練りゾーンが220〜198℃、可塑化ゾーンが170℃、バレルと金型の接合部分が170℃、金型の入口部分が175℃、出口部分が68℃に設定され、入口から出口までの間で空冷された。
また、スクリュー回転速度は13.0r.p.m、定常状態におけるスクリュー背圧は14.7〜15.9MPa、吐出線速度は0.0795m/min、吐出量は42.8kg/hrであった。このようにして得られた成形物は高剛性で、密度は1.18g/cm3であった。このものの曲げ試験の結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例5と比較例2とを比較すれば分るように、ヒバ木粉を多量に配合して押出成形する場合、親水性ポリマーブロック及び疎水性ポリマーブロックから構成されたブロックポリマーを添加したものは、添加しないものに比べ、スクリューに負荷される背圧は約35%低下し、押出線速度及び吐出量は約20%増加している。このことから上記のブロックポリマーが木粉と樹脂との溶融物の可塑性を高め、成形性を向上させる役割を果していることが分る。また、曲げ試験の結果、曲げ強さ、密度ともに、実施例は比較例よりも大きい値を示すことが分る。
【0044】
参考例
成形物の機械物性に及ぼす効果の尺度として、成形物の破断に至るまでの仕事量が用いられる。この仕事量は破断に到るまでの引張試験機に負荷される応力(T)と伸び(E)との関係をプロットした曲線の積分値として表わされているが、実用上は、引張強さ(T)と伸び(E)との関係をプロットした曲線の積分値として表わされるが、実用上は、引張り強さ(T)と破断伸び(E)との積(T×E)で代用することができる。
そこで、実施例1ないし3と比較例1について、(T×E)を求め、ブロックポリマーを加えない試験片の(T×E)を100としてブロックポリマーを加えた試験片の(T×E)値を換算して示すと表3のようになる。
【0045】
【表3】

【0046】
この表から分るように、ブロックポリマーを加えた試験片は、加えない試験片に比べ、30〜80%高くなっている。
通常複合体の外力による破壊は複合界面の欠陥によるものとされているので、T×Eが大きくなることは、複合界面の欠陥が少ないこと、換言すれば破壊されにくいことを意味する。
したがって、本発明組成物は、機械的強度の高い成形物を与えるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明組成物は、機械的物性の良好な、遮音性の優れた建築材料や家具材料として好適なほか、日用雑貨、食器類の製造材料としても有用である。また、木粉としてヒバ木粉を用いると、防カビ性、殺菌性や害虫忌避性を備えた材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1で得たブロックポリマーとヒバ木粉との複合体の300倍拡大顕微鏡写真図。
【図2】ブロックポリマーを加えないでヒバ木粉を粉砕した場合の300倍拡大顕微鏡写真図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細木粉と親水性ポリマーブロック及び疎水性ポリマーブロックから構成されたブロックポリマーとの複合体90〜50質量%と熱可塑性樹脂10〜50質量%とからなる成形用樹脂組成物。
【請求項2】
ブロックポリマーがポリオキシエチレンブロック(A)とポリオキシプロピレンブロック(B)とのB−A−B型ブロックポリマーである請求項1記載の成形用樹脂組成物。
【請求項3】
B−A−B型ブロックポリマーにおけるAとして質量平均分子量3000以上のポリオキシエチレンブロック20モル%を含有する請求項2記載の成形用樹脂組成物。
【請求項4】
微細木粉がヒバ木粉である請求項1ないし3のいずれかに記載の成形用樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂又はABS樹脂である請求項1ないし4のいずれかに記載の成形用樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−45854(P2007−45854A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228609(P2005−228609)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(502316706)特許技術開発株式会社 (4)
【出願人】(503068141)パワーウッド株式会社 (1)
【出願人】(591039229)太陽合成株式会社 (3)
【Fターム(参考)】