説明

成長抑制製剤

【課題】有機化合物塩である植物成長抑制有効成分を安定位に維持する製剤方法を提供する。
【解決手段】式II(a)又はII(b):


[但し、Roが水素又はC1〜C18アルキルを表し、nが0、1、2又は3を表し、AがC1〜C6アルキレン又はC1〜C6オキシアルキレンを表し、mが1、2、3、4又は5を表し、Bが直鎖又は分岐のC2〜C8アルキレンを表す]で表される溶剤及び特定の成長抑制用有効成分を含む成長抑制製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長抑制特性がある新規な混合物に関し、特に、適当な溶剤中で成長抑制有効成分を含む新規な成長抑制製剤に関する。さらに本発明は、植物の成長抑制法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物成長抑制剤(“Plant Growth Regulators”)は、作物栽培、農業及び園芸分野において、多くの有用な目的に使用されている。例えば、穀物、トウモロコシ、ヒマワリ及び大豆等の作物の栽培における特別の関心事は、収穫前の悪天候下で植物が倒伏するという問題である。植物の縦成長を抑制することにより茎が太く、強くなるため、倒伏するリスクが低減する。また、収穫を完全に機械的なものとするために、綿花の縦成長を抑制すると、成熟過程が制御可能となる。
【0003】
果樹の成長を抑制すると、刈り込みコストが低減し、栽培者が果樹の収穫における一年生の彷徨変異を制限することも可能となる。
【0004】
植物成長抑制剤の中には、耐霜性を強化して悪天候に対する作物の感受性を制御するために用いることができるものもある。これは、冬穀物に特に有用である。過度の縦成長及び繁茂により、植物は霜による被害を受けやすくなる。例えば、播種後及び冬季降霜前等の好ましい成長条件の間でさえ成長を抑制することは望ましい。これにより、植物の霜による被害がほとんどなくなる。葉面及び植物の全体を比較的小さくすることにより、耐霜性が強くなる他に、菌類等の感染を受けることがほとんどなくなる。栽培植物の成長を抑制すると、多くの栽培植物の密集した播種が可能となると共に一定領域において収穫量を増大させることができる。
【0005】
メピコートクロリド(mepiquat chloride)(I(a))及びクロロメコートクロリド(chloromequat chloride)(I(b))等の、その式が以下に示されている第4級アンモニウム塩は、植物成長抑制剤として公知である。
【0006】
【化1】


これらの化合物は、水性濃縮物として、或いは錠剤又は顆粒の形態(例えば、PIXR 植物成長抑制剤, BASA Corporation)で市販されている。これらの化合物は、例えば第2級又は第3級アミンをハロゲン化メチルを用いて転化する等の当該分野において公知の方法で製造することができる。処方における固形仕込原料として使用し得るメピコートクロリドの水を含まない調製法が、ヨーロッパ特許出願公開公報第0573177A2に記載されたのを参照してここにも記載されている。
【0007】
成長抑制性を有する他の公知有効成分は、ヨーロッパ特許出願公開公報第0243834A2に記載され、以下の式を含む:
【0008】
【化2】


この式において、各基はそれぞれ以下の意味である:R1及びR2が相互に独立して、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C4アルコキシC1〜C6アルキル、C3〜C6アルケニル及びフェニル{フェニルは非置換であっても良く、或いは1個又は相互に独立して2個若しくは3個の下記の基:ニトロ、クロロ、フルオロ、C1〜C3アルキル、C1〜C3ハロアルキル及びメチレンジオキシから選択される基を有していても良い}を表し、或いは
1及びR2は、これらが結合する炭素原子と共に、1個又は相互に独立して2個のC1〜C3アルキル基を有していても良い5〜7員環を形成し、
3が水素、農業に適するカチオン、C1〜C8アルキル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C4アルキルオキシC1〜C6アルキル、又はCH2−C(O)−OR4基を表し、
このR4がC1〜C8アルキル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C4アルキルオキシC1〜C6アルキル、水素又は農業に適するカチオンを表す。
【0009】
成長抑制性を有すると記載された他の有効成分としては、参照してこの中に盛り込まれたアメリカ特許番号4560403号に記載されたもの等の、式IVで表されるようなアシルシクロヘキサジオンが挙げられる:
【0010】
【化3】


この式中、R5が水素、アルキル基、アルキルチオアルキル基又は非置換若しくは置換のフェニル基を表し、
6がアルキル基、非置換若しくは置換のベンジル基、フェネチル基、フェノキシメチル基、2−チエニルメチル基、アルコキシメチル基又はアルキルチオメチル基を表すか、或いは前記シクロヘキサン化合物の塩を表す。
【0011】
成長抑制化合物として使用するための特定の化合物は、式IV(a)で表されるプロヘキサンジオンである:
【0012】
【化4】


ここで使用されているような、プロヘキサンジオンとしては、化合物3,5−ジオキソ−4−プロピオニルシクロヘキサンカルボン酸(IUPAC名)(又は3,5−ジオキソ−4−(1−オキソプロピル)シクロヘキサンカルボン酸(C.A.名))、さらに3−ヒドロキシ−4−プリオニル−5−オキソ−3−シクロヘキセンカルボン酸及びその薬理的に有用な塩、例えば塩化物、硫酸塩、メトラブ(metrab)、酢酸塩、炭酸塩、水素化物、水酸化物、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、ニッケル、銅、マンガン、コバルト、亜鉛、鉄又は銀等が挙げられる。
【0013】
成長抑制性を有する他のアシルシクロヘキサジオン化合物は、参照することによりこの中に盛り込まれたアメリカ特許番号第4693745号に記載されたもの等であり、式Vで表されている:
【0014】
【化5】


この式中、R7が−OR9基又は−NR1011基を表し、
8がC3〜C6シクロアルキルを表し、
9、R10及びR11が独立して、それぞれ水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C2〜C10アルコキシアルキル、C2〜C10アルキルチオアルキル、C3〜C6アルケニル{ハロゲン、C1〜C4アルコキシ又はC1〜C4アルキルチオで置換されていてもよい}、C3〜C6アルキニル、フェニル又はC1〜C6アラルキルを表し、且つこれらのフェニル核は、ハロゲン、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、ニトロ又はシアノにより置換されていても良く、
10及びR11の1つはメトキシを表すか、或いは
10及びR11は、これらが結合する窒素原子と共に、さらに酸素又は硫黄原子を環に含んでいても良い5又は6員のヘテロ環系を形成し、並びに式Vの金属塩又はアンモニウム塩を表す。
【0015】
上述した式で表される特定の化合物としては、トリネクサパック(tinexapac)(IUPAC名、4−シクロプロピル(ヒドロキシ)メチレン−3,5−ジオキシシクロヘキサンカルボン酸))及び好ましくはそのエチルエステル、以下の式V(a):
【0016】
【化6】


で表されるトリネクサパック−エチル(IUPAC名、4−シクロプロピル(ヒドロキシ)メチレン−3,5−ジオキソシクロヘキサンカルボン酸エチル;CA名、4−(シクロプロピルヒドロキシメチレン)−3,5−ジオキソシクロヘキサンカルボン酸エチル)が挙げられる。
【0017】
有効成分と第4級アンモニウム塩(例えば、式I(a)及びI(b))の混合物は、ヨーロッパ特許出願公開公報第0435613A2に記載されている。これらの混合物は有用で、有益な特性を提供するが、有効成分の混合物としてより安定性のあるものが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、式I(a)及び/又はI(b)で表される塩様有効成分を溶液中で組み合わせ、同時に有効成分の安定性を維持することにより成長抑制性を有する製剤を創出することにある。本発明の別の目的は、式I(a)及び/又はI(b)で表される有効成分を、式IIIで表される有効成分又は式IV若しくはVで表されるアシルシクロヘキサンジオンと組み合わせて成長抑制性を得て、この有効成分の安定性を維持することにある。
【0019】
本発明は、式I(a)及びI(b)で表される第4級アンモニウム塩等の塩様有効成分を適当な有機溶剤に溶解させ、この有効成分の充分な安定性を維持しながら例えば式III、IV又はVで表される、成長抑制性を有する他の有効成分を添加することができる製剤を提供することにある。第4級アンモニウム塩等の塩様有効成分は、その極性により水に溶けることが知られているが、一方水溶液等の塩様特性及び無機特性は、成長抑制混合物に使用される他の有効成分の分解を引き起こす場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
驚くべきことに、式III、IV及びVで表される有効成分は、それぞれ式II(a)及びII(b):
【0021】
【化7】


[但し、Roが水素又はC1〜C18アルキルを表し、 nが0、1、2又は3を表し、 AがC1〜C6アルキレン又はC1〜C6オキシアルキレンを表し、 mが1、2、3、4又は5を表し、 Bが直鎖又は分岐のC2〜C8アルキレンを表す]
としてここに記載された2つの式で表される有機溶剤に適度に溶解することが見出された。
【0022】
これらの溶剤は、式I(a)及び/又はI(b)で表される塩様有効成分の充分な溶解度を提供し、式III、IV及びVで表される有効成分用としての優れた溶剤である。さらに、これらの溶剤を使用すると、溶液中において有効成分は極めて良好な安定性を示すことが見出された。式I(a)及び/又はI(b)で表される塩様有効成分を、式III、IV及びVで表される化合物と組み合わせることにより、特別な優位性が見出されるであろう。成長抑制性が得られ、そして混合物において有効成分の安定性が十分に維持される。これらの製剤は、実質的に水の不存在下に提供されることが好ましい。
【0023】
本発明の好ましい態様は、式I(a)及び/又はI(b)で表される第4級アンモニウム塩を1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%の量、特に3〜25質量%の量の混合物である(各質量%は混合物に対する量である)。
【0024】
式II(a)で表される溶剤は、芳香族アルコール又はエーテルの誘導体を含んでいても良い。芳香族アルコールは、OH基が1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基又は2〜6個の炭素原子を有するオキシアルキレン基を介して芳香族環に結合していることが好ましい。ある場合には、芳香族環が1〜3個のC1〜C3アルキル基で置換されているベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ブチレングリコールモノフェニルエーテル及びその誘導体が特に有効である。
【0025】
式II(b)で表される溶剤は、C2〜C8アルキレン鎖の直鎖又は分岐のジオールを含んでいても良い。2個のヒドロキシ基が、鎖の末端又は中側(途中)に位置していても良い。式II(b)で表される溶剤の代表例としては、プロピレングリコール及びブチレングリコールが好ましい。エチレングリコールと比較して、これらの溶剤中における有効成分の安定性が若干良好である。
【0026】
式II(a)及び/又はII(b)で表される溶剤の、本発明の製剤中における量は、製剤の全質量に対して、20〜99質量%、好ましくは35〜98質量%、特に50〜96質量%の範囲内にあることが好ましい。
【0027】
本発明の好ましい一態様は、式II(a)で表される1種以上の溶剤を含む製剤である。本発明の他の好ましい態様は、式II(b)で表される1種以上の溶剤を含む製剤である。
【0028】
製剤は、0〜60質量%、好ましくは1〜50質量%、特に2〜35質量%の他の有効成分を含んでいても良い。これらの有効成分の好ましい代表例としては、式III、IV及び/又はVを有するものである。これらの有効成分は、公知である。例えば式IIIで表される化合物は、一般にPCT出願WO96/00005に開示されている。高齢の植物において内因性のエチレン含有量を低減するその効果は、例えばドイツ特許明細書(German Patent Disclosures)第3613649号、第4106509号及びアメリカ特許番号第4744811号に開示されている。
【0029】
本発明で使用するための有効成分は、式IV(a)で表され、例としてプロヘキサンジオンを挙げられる。
【0030】
好ましい有効成分の1つとしては、式Vで表わされ、その好ましい例はトリネクサパック−エチルである。
【0031】
式III、IV及びVに関して、その遊離酸の代わりに、その農業上有用な塩が存在していても良い。一般に、塩の種類は重要ではない。これら塩基の典型的な塩は、式III、IV及びVで表される化合物の作用に悪影響を与えない。
特に好適な塩基性の塩としては、アルカリ金属、好ましくはナトリウム及びカリウムの塩;アルカリ土類金属、好ましくはカルシウム、マグネシウム、銅、亜鉛及び鉄の塩;及び1〜3個のC1〜C4アルキル基及び/又はフェニル若しくはベンジル基を有していても良いアンモニウム塩であり、アンモニウム塩は、ジイソプロピルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムが好ましく、またトリメチル−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩(好ましくは、トリ(C1〜C4アルキル)スルホニウム塩)及びスルホキソニウム塩(好ましくはトリ(C1〜C4アルキル)スルホキソニウム塩)である。
【0032】
式IIIで表される好ましい有効成分は、以下の基の組み合わせを有する化合物である:
(1)R1及びR2基は、例えば、メチル、エチル、プロピル等のC1〜C6アルキルを表すか、或いはこれらが結合する炭素原子と共に、例えばシクロペンチリデン又はシクロヘキシリデン等の5〜7員環を形成し;
(2)R3基は、水素、C1〜C6アルキル基、又はCH2−C(O)OR4基を表し;
(3)このR4基は、水素又はC1〜C6アルキル基を表す。
【0033】
他の好ましい有効成分は、以下に記載されており、式III(a)〜III(d):
【0034】
【化8】


として示され、またこれらを基礎とする酸及びそのアルカリ、アルカリ土類又はアンモニウム塩である。
【0035】
本発明の好ましい一態様は、III(a)及び/又はこれを基礎とする酸及び/又はそのアルカリ、アルカリ土類又はアンモニウム塩を含む製剤である。本発明の好ましい別の一態様は、III(b)及び/又はこれを基礎とする酸及び/又はそのアルカリ、アルカリ土類又はアンモニウム塩を含む製剤である。本発明の好ましい別の一態様は、III(c)及び/又はこれを基礎とする酸及び/又はそのアルカリ、アルカリ土類又はアンモニウム塩を含む製剤である。
【0036】
本発明の他の好ましい態様は、III(d)及び/又はそのアルカリ、アルカリ土類又はアンモニウム塩を含む製剤である。
【0037】
本発明の混合物は、30質量%まで、好ましくは20質量%までの成分として、当該技術者等に知られている種類の、例えばヨーロッパ特許明細書第434613号に挙げられ、補助剤等の他の処方補助剤を含んでいても良く、ここに参照することにより取り込まれている。
【0038】
界面活性物質を他の処方補助剤として使用する場合、考えられる物質は以下のものが挙げられる:芳香族スルホン酸(例えば、リグニンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、ジブチルナフタリンスルホン酸)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;脂肪酸、アルキルスルホナート、アルキルアリールスルホナート、アルキルラウリルエーテルスルファート、脂肪アルコールスルファートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;硫酸化ヘキサデカノール、ヘプタデカノール及びオクタデカノールの塩;脂肪アルコールグリコールエーテルの塩;スルホン化ナフタリン及びその誘導体とホルムアルデヒドの縮合生成物、ナフタリン又はナフタリンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドの縮合生成物、ポリオキシエチレン−オクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、エトキシル化オクチルフェノール、エトキシル化ノニルフェノール、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタート、ソルビットエステル、リグニン−亜硫酸廃液、又はメチルセルロース。
【0039】
本発明の製剤は、当該技術者等に一般に公知の方法、例えば式II(a)及び/又はII(b)で表される有機溶剤に、式I(a)及び/又はI(b)で表される化合物、並びに式III、IV及び/又はVで表される有効成分及び他の処方補助剤を添加し、撹拌し、必要により加熱することにより得られる。
【0040】
本発明の製剤の好ましい使用法は、有効量の、式I(a)及び/又はI(b)で表される塩基性の有効成分、或いは式III、IV及び/又はVで表される有効成分を有する式I(a)及び/又はI(b)で表されるこれら有効成分の混合物の製剤で、発芽前に又は発芽後に植物を処理することである。種子粉衣することも、本発明における他の使用法として考えられる。
【0041】
季節、対象となる栽培植物及び成長段階に応じて、施与される混合物の量は、0.01km2(1ヘクタール)当たり0.0001〜1.0kg、好ましくは0.001〜0.5kg、特に0.001〜0.1kgの範囲内とすることができる。
【0042】
本発明の混合物は、種々の方法により植物のあらゆる成長段階で事実上効果があるので、成長抑制剤として使用される。以下の要因次第では、作用の多様性が異なる:
(a)植物の種類;
(b)植物の成長段階及びその年の季節に関する施与の頃合;
(c)施与する用地及び施与法(例えば、種子粉衣、土壌処理、葉面施与、樹木の場合の幹への注入);
(d)温度、降水量、さらに日照時間及び日照強度等の気候因子;
(e)土壌特性(施肥を含む);
(f)有効物質I(a)及び/又はI(b)及び/又はIII及び/又はIV及び/又はV、特にIII(a)及び/又はIII(b)の用いられる濃度。
【0043】
本発明の混合物、これらを含む薬剤を、作物栽培、農業及び園芸に使用する様々な方法の中から、幾つかを以下に記載する。
【0044】
これらの混合物及び薬剤を用いて、植物の栄養成長を著しく抑制することができ、縦成長の低減として発現する。そのため、処理された植物は矮小形で成長し、葉面の色合いが濃くなる。
【0045】
さらに、本発明の混合物により、処理された植物中の内因性エチレンの形成が低減し得る。これにより、 老化現象(老衰)が阻止されるので、切り花の寿命を長くし、そして栽培植物の同化相を長くすることができ、収穫量が増大する;
葉、花及び果実の落下を減少又は少なくとも一定期間遅らせる;
マメ科植物で根粒の形成が改善されるので、空気からの窒素の同化作用がより激しくなる;
ストレス(例えば、水分の不足、低温、機械的歪、有害菌類又は昆虫類による攻撃等)に対し敏感にならない。
【0046】
さらに本発明の混合物を用いて、植物の部分及び植物の有効物質両方の収量の増大が達成され得る。従って、例えば、芽、花、葉、果実、種子、根及び節の成長促進を誘導すること、サトウダイコン、サトウキビ及び柑橘類の糖分を増加させること、穀物若しくは大豆のタンパク質含有量を増加させること、又は綿花からのセルロース繊維の収率を増大させることが可能となる。
【0047】
本発明の混合物は、植物の代謝に寄与することにより、或いは栄養成長及び/又は生殖成長を促進又は抑制することにより収率を増大させるために使用することができる。
【0048】
さらに、本発明の混合物を用いると、発育段階の短縮又は延長が可能となるばかりか、収穫前又は収穫後に、収穫された植物部分の成熟を促進したり、遅らせたりすることができる。そのため、例えば綿花の幹をより集中した時間で成熟させることにより、栽培者は容易に収穫を行える。
【0049】
本発明を実施すると、植物の水分消費量を低減させることができる。これは、乾燥地帯又は半乾燥地帯等のコストのかかる人工灌漑を必要とする農業地域では特に重要である。低コストで農場経営を行える本発明の薬剤を用いることにより、灌漑の度合いを抑えることができる。この薬剤の作用下で、 気孔の開口部を狭くし;
厚みのある表皮と角皮を形成し;
土壌における根の拡散(root proliferation)が改善され;
播種区域の微気候が、植物のコンパクトな成長により好ましい影響を受ける。
【0050】
混合物を、種子から(種子粉衣剤として)、或いは土壌を介して、即ち根から、好ましくは苗条に噴霧して植物に供給することができる。様々な施与法により、本発明の混合物を多数の栽培植物に使用することができる。
【0051】
この混合物の製造において、例えば植物の成長抑制有効成分、除草有効成分、さらに有害菌類若しくは有害動物から保護する有効成分、又は肥料等の他の有効成分を添加し得る、式I(a)及び/又はI(b)、及び式III、IV及び/又はVで表される純粋な有効成分を用いることが好ましい。
【0052】
従って、化合物I及びIII、IV又はVは、共に施与することができる。
【0053】
本発明の別の側面は、(a)上述したような式II(a)及びII(b)から選択される式で表される1種以上の溶剤、及び(b)上述したような式III、IV及びVから選択される式で表される植物の成長抑制用有効成分から成る製剤を含む。
【0054】
これらの製剤を本発明の溶剤に溶解させた場合、有効成分の安定性は極めて良好となる。
【0055】
製剤は、他の有効成分として、上述したような第4級アンモニウム塩を含んでいても良い。
【実施例】
【0056】
以下の実施例で、例えば式I(a)及びI(b)で表される塩様有効成分の溶解性、及び例えば式III、IV及びVで表される有効成分の安定性を、例えば式II(a)及びII(b)で表される溶剤中において証明する。特に、以下の表1の実施例1〜17は、種々の溶剤中におけるメピコートクロリドの溶解性を示している。15質量%のメピコートクロリドを、各溶剤100gに添加し、完全に溶解するかを観察した。
【0057】
【表1】

V=比較実験 *=一般に、沸点及び引火点が低いので、イソプロパノール及び短鎖アルコールは、植物殺虫剤の処方には余り適当でない。
【0058】
表1の特に驚くべき結果は、ベンジルアルコール(実施例14)中の有効成分メピコートクロリドの溶解性とシクロヘキシルメタノール(実施例13V)の場合との比較である。脂環式環構造と有効成分の環構造は類似するため、当該技術者等はシクロヘキシルメタノールにおける溶解性がベンジルアルコールよりも良好であると予想していた。
【0059】
式III{R1及びR2はメチル、R3はCH2COOCH3(III(a))を表す}で表される有効成分の、種々の溶剤中における溶解性は、以下の表2の実施例18〜24に示した。安定性を測定するため、各有効成分を10質量%含む溶液を、54℃で14日間保存し、最初の含有量のパーセントに対して計算して、残存有効成分含有量をHPLC解析により測定した。
【0060】
【表2】

**=有効成分の含有量は、その溶解性のため僅かに4%である。
【0061】
これらの実施例では、有効成分を本発明の溶剤に溶解させた場合、良好な安定性を示す。
【0062】
実施例25〜29において、種々の溶剤を有する本発明の混合物製剤を得た。この溶液は、5質量%の有効成分メピコートクロリドと実施例18〜24で使用した有効成分を含んでいた。有効成分の安定性を、上述の実施例18〜24と同様に測定した。結果を表3に記載する。
【0063】
【表3】

【0064】
これらの実施例から、一方では塩様活性極性でまた無機性がより強い有効成分に適当な溶剤である式II(a)及び/又はII(b)から選択される溶剤を用いることにより、組み合わせ製剤が得られることが確認される。さらにこのような製剤により、式I(a)及び/又はI(b)で表される有効成分と共に式III、IV及び/又はVから選択される有効成分を添加することが可能となるが、有効成分III、IV及び/又はVの安定性を損なうことはない。
【0065】
本発明は、その好ましい態様について、かなり詳細に記載した。しかしながら、上述した明細書に記載され、従属クレームに定義されているように、本発明から逸れることなく本発明の目的と趣旨の範囲内で様々な変更を加えても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式II(a)又はII(b):
【化1】


[但し、Roが水素又はC1〜C18アルキルを表し、
nが0、1、2又は3を表し、
AがC1〜C6アルキレン又はC1〜C6オキシアルキレンを表し、
Bが直鎖又は分岐のC2〜C8アルキレンを表し、 mが1、2、3、4又は5を表す]
から選択される式で表される1種以上の溶剤、及び(b)式III:
【化2】


[但し、R1及びR2が独立して、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C4アルコキシC1〜C6アルキル、C3〜C6アルケニル及びフェニル{フェニルは非置換であっても良く、或いは1個又は相互に独立して2個若しくは3個の下記の基:ニトロ、ハロゲン、C1〜C3アルキル、C1〜C3ハロアルキル及びC1〜C4アルキレンジオキシから選択される基を有していても良い}を表し、或いは
1及びR2は、これらが結合する炭素原子と共に、1個又は相互に独立して2個のC1〜C3アルキル基を有していても良い5〜7員環を形成し、
3が水素、農業に適するカチオン、C1〜C8アルキル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C4アルキルオキシC1〜C6アルキル、又はCH2−C(O)−OR4基を表し、
このR4が水素、農業に適するカチオン、C1〜C8アルキル、C3〜C7シクロアルキル又はC1〜C4アルキルオキシC1〜C6アルキルを表す]、
式IV:
【化3】


[但し、R5が水素、アルキル基、アルキルチオアルキル基又は非置換若しくは置換のフェニル基を表し、
6がアルキル基、非置換若しくは置換のベンジル基、フェネチル基、フェノキシメチル基、2−チエニルメチル基、アルコキシメチル基又はアルキルチオメチルを表すか、或いは前記シクロヘキサン化合物の塩を表す]、並びに
式V:
【化4】


[但し、R7が−OR9基又は−NR1011基を表し、
8がC3〜C6シクロアルキルを表し、
9、R10及びR11が独立して、それぞれ水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C2〜C10アルコキシアルキル、C2〜C10アルキルチオアルキル、C3〜C6アルケニル{ハロゲン、C1〜C4アルコキシ又はC1〜C4アルキルチオで置換されていても良い}、C3〜C6アルキニル、フェニル又はC1〜C6アラルキルを表し、且つ前記フェニル核は、ハロゲン、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、ニトロ又はシアノにより置換されていても良く、
10及びR11の1つはメトキシを表すか、或いは
10及びR11は、これらが結合する窒素原子と共に、酸素又は硫黄原子をさらに環に含んでいても良い5又は6員のヘテロ環系を形成する]、及びこれらの金属塩又はアンモニウム塩から選択される式で表される植物の成長抑制用有効成分を含む成長抑制製剤。
【請求項2】
さらに第4級アンモニウム塩を含んでいる請求項1に記載の成長抑制製剤。
【請求項3】
成長抑制量の、請求項1又は2に記載の成長抑制製剤を用いて、植物、その生息空間及び/又はその種子を処理する植物の成長抑制法。
【請求項4】
前記成長抑制製剤を、0.01km2当たり0.0001kg〜1.0kgの割合で施与する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の成長抑制製剤の、植物の成長を抑制するための使用法。

【公開番号】特開2010−43106(P2010−43106A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233021(P2009−233021)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【分割の表示】特願2000−516529(P2000−516529)の分割
【原出願日】平成10年10月14日(1998.10.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】