所定の厚さを有する金属ナノプリズムの製造方法
単峰性の粒径分布と所定の厚さを有する金属のナノプリズムの製造方法が提供される。この方法は、ナノプリズムの端部長さを制御することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年6月30日に出願された米国仮特許出願第60/584,775号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本願は、海軍研究許可番号N00014−03−1−0800であり,国家科学財団NSEC許可番号EEC−0118025によってサポートされている。政府は本願に関心を寄せている。
【0003】
本願はナノプリズムに関し、より詳しくは、所定の厚さを有する銀のナノプリズムのような金属ナノプリズムを容易に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
金属ナノプリズムは、新規な化学的特性や触媒特性とともに特徴ある光学特性を有するゆえに、多大なる科学的関心や技術的関心を引き起こしている。非球形ナノ粒子、および特に非等方形状のナノ粒子は、その形状が構造の有する物理的特性および化学的特性にどのような影響を及ぼすかについての調査が可能であるために、大きな関心が寄せられている。
【0005】
従って、星形、立方体、棒状、円板状および角柱を含む多様な形状のナノ粒子が製造され、それらの特性が特徴づけて報告されている。
【0006】
ナノ粒子の形状に加えて、その大きさはナノ粒子の重要なパラメーターである。というのは、ナノ粒子の大きさによって、ルミネセンス、導電率および触媒特性を含むナノ粒子の物理的特性や化学的特性を制御することができるからである。過去において、コロイド化学者は、いくつかの球形の金属組成および半導体組成の粒子の大きさについては、充分に制御できることを示した。この粒子の大きさに対する化学的制御は、コロイド状のナノ結晶への量子の閉じ込めの発見及び生物学上の診断用途におけるプローブ、発光ダイオード材料、レーザおよびラマン分光励起材料の開発に結びついた。
【0007】
対照的に、総合的に粒子形状を制御しようとする試みは、限られた範囲で成功しただけであった。それにも関わらず、半導体および金属のナノワイヤ、ナノベルトおよび小片を製造するための物理的および化学的固相析出法が開発され、アスペクト比を適度に制御しながら、電気化学的合成法およびメンブレン合成法を使用して棒状体を製造するための多種の方法が存在している。
【0008】
円板状(文献1−4)、棒状(文献5−9)、角柱(文献10−14)、ワイヤ状(文献15−18)、中空構造(文献19−22)および分岐した粒子(文献23)を含む様々な形状の銀および金のナノ粒子を合成するためのいくつかの方法が開示されている。最近、一部には、それらの特徴ある光学特性のために、また、端部長さについての実効性のある制御を伴う単調分散のナノプリズムを製造するための高生産性の光化学的方法が開発されたため(文献10および25)、三角柱の銀のナノプリズムを合成しようとするための強烈な努力が傾けられている(文献13−17)。これらによって、ナノ粒子における構造と特性の重要な相関関係を得るための研究が可能になった。
【0009】
一般に、銀のナノプリズムを合成するための有用な方法としては、熱的方法と光化学的方法の二つがある。光化学的方法によると、プリズム前駆物質および結果として生じるプリズムの選択的プラズモン励起によって、より単調分散のナノプリズムを提供し、構造上のパラメーターを十分に制御することが可能になる(文献10−12)。放射波長を慎重に選択することによって、研究者は銀のナノプリズムの大きさ、形状および粒径分布(すなわち、単峰性または二峰性の粒径分布)を制御することができる。銀のナノプリズムを得るための熱的方法は、一般的に、コロイド状の銀のナノ粒子を銀のナノプリズムに徐々に転化する(文献12および13)。現在行われている熱的方法は、銀のナノプリズムの厚さや粒径分布を合理的にコントロールすることはできない。
【0010】
例えば、三角形や立方体をしたプラチナの立方体や角錐(文献26)、PbSe、CdSおよびNiの三角形をしたもの(文献27−29)のような非球形粒子の製造方法が存在する。
【0011】
さらに、BaCrO4、CdSeおよびCoのナノロッドと、矢状のCdSeナノ結晶、涙のしずく状のCdSeナノ結晶およびテトラポッド状のCdSeナノ結晶とを合成する方法が研究されることになった(文献30−33)。これらの手段は熱的方法に基づいており、ロッドの例外を除いて、好ましい粒子形状の生産性は比較的低い。
【0012】
粒子形状をコントロールできる合成方法は、当技術分野における重要で基本的な技術上の進歩に結びつくことが期待できる。この合成方法は、診断、光学、触媒および電子工学における新しくて重要で基本的な科学上および技術上の適用分野の発見に結びつく、ナノスケール材料の粒子の大きさのコントロールのようなものを含んでいる。それゆえ、ナノ粒子の形状と大きさをコントロールする多くの溶解合成方法の開発は、これらの新規なナノスケール材料の潜在的な可能性を実現するために極めて重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえ、端部長さをコントロールすることができる、所定の厚さの三角形の金属ナノプリズムを簡単に製造できる方法が当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、所定の厚さの銀のナノプリズムのような金属ナノプリズムの製造方法に関する。より詳しくは、本願発明はナノ粒子の端部長さをコントロールすることができる、所定の厚さを有する三角形の金属ナノプリズムを簡単に直接的に製造するための方法に関する。
【0015】
それゆえ、本願発明の一実施形態は、一連の工程において単峰性の粒径分布を有する金属ナノプリズムを製造する方法を提供することにある。
【0016】
本願発明の別の実施形態は、金属ナノ粒子を過酸化水素および水素化ナトリウムホウ素を使用して熱的方法により金属ナノプリズムに転化する、金属ナノプリズムの製造方法を提供することにある。
【0017】
本願発明のさらに別の実施形態は、金属塩、ポリカルボン酸塩、分散剤および過酸化水素を含有する水溶液を調製し、穏やかな効能の還元剤を上記水溶液に添加して金属ナノプリズムを形成することを含む、一連の工程で金属ナノプリズムを製造する方法を提供することにある。
【0018】
本願発明の上記とはさらに別の実施形態は、穏やかな効能の還元剤として水素化ナトリウムホウ素を使用して、銀塩、クエン酸塩、ポリビニルピロリジンおよび過酸化水素を含有する溶液から銀のナノプリズムを製造する方法を提供することにある。
【0019】
本願発明の上記とはさらに別の実施形態は、銀のナノプリズムのような金属ナノプリズムを製造する方法を提供することにあり、その方法において使用される水素化ホウ素ナトリウムおよび/又は過酸化ナトリウムの濃度を変えることによって、厚さと端部長さ、特にその厚さをコントロールすることができる金属ナノプリズムの製造方法を提供することにある。
【0020】
本願発明の上記とはさらに別の実施形態は、十分な時間、一つ以上の波長の光をナノプリズムに照射することによって好ましい形態の金属ナノ粒子を提供するための、熱的方法により金属ナノプリズムの形態を変えることができる方法を提供することにある。
【0021】
本願発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明によって明かになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本願発明は、コロイド状懸濁液の形態で、高効率で金属ナノプリズムを大量に製造することができる新規な熱的方法を提供することにある。本願発明の熱的方法は、本願の方法によって得られる形状コントロールに直接関連するユニークな光学特性を備えたナノプリズム含有コロイドを提供することができる。
【0023】
本願発明の方法は、金属ナノプリズム、特に、銀のナノプリズムを提供する。より詳しくは、本願発明は、端部長さをコントロールされ、単峰性の粒径分布を有する金属ナノプリズムを生み出す新規な熱的方法を提供する。本願発明の方法が所定の厚さを有する金属ナノプリズムを製造することができることは重要である。金属ナノプリズムの厚さは、従来の光化学方法および熱的方法で金属ナノプリズムを製造する場合にはコントロールすることができなかったからである。
【0024】
本願発明の方法は、図1(a)の銀のナノプリズムによって示されているように、三角形の金属ナノプリズムを提供することができる。図1(a)は、また、本願明細書において金属ナノプリズムに関連して使用されている、“ナノプリズムの厚さ”および“ナノプリズムの端部長さ”という用語を図示するとともに定義している。
【0025】
より詳細に議論するように、図1(a)は、金属ナノプリズムを合成するための本願発明の方法を示している。以下のより詳細な説明は、銀のナノプリズムの製造に関するものである。しかし、以下の開示は単に例示する目的のみでなされたものであることを理解すべきである。所定の厚さの他の金属ナノプリズムは、出発物質として適当な金属塩を使用して本願発明の方法を適用することによって製造しうることは想像できることである。
【0026】
特に、図1(a)は、硝酸銀(AgNO3)、クエン酸塩、ポリビニルピロリドン(PVP)および過酸化水素(H2O2)を含有する水溶液を使用して、その水溶液に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)溶液を添加することによって、銀ナノ粒子を銀のナノプリズムに転化するための本願発明の熱的方法を示している。以下に、より詳細に議論するように、結果として生成する、銀のナノプリズムの厚さは、水溶液に添加されたNaBH4の濃度に直接関連している。
【0027】
より一般的に、本願発明の金属ナノプリズムの製造方法は、金属塩、ポリカルボン酸塩、分散剤および過酸化水素を含有する水溶液を調製する工程(a)と、(a)工程の水溶液に穏やかな効能の還元剤を添加して、所定の厚さの金属ナノプリズムを形成する工程(b)とを有している。
【0028】
水溶液の金属塩は、陽イオンとしてナノプリズムの金属を含有している。上記金属塩の陰イオンは、金属塩が水溶性となるように選択される。それゆえ、金属塩の金属陽イオンは銀とすることができる。金属塩の陰イオンは、例えば、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、酢酸塩及びこれらの混合物から選択することができる。金属塩は、十分に水溶性となるように、少なくとも0.01mMの溶液が得られるように選択され、好ましくは少なくとも0.05mMの溶液が得られるように選択され、より好ましくは少なくとも0.1mMの溶液が得られるように選択される。
【0029】
いくつかの実施形態において、塩の金属陽イオンが銀であるとき、陰イオンは硝酸塩か又は過塩素酸塩である。塩の水溶液が互換性があり、析出物を生成しない限り、金属塩の混合物を使用できることは想像できる。金属塩の混合物が使用されるとき、ナノプリズムは金属の混合物を含有する。
【0030】
水溶液中のポリカルボキシル塩は、少なくとも3つのカルボン酸基を含有しており、水溶性であるポリカルボン酸塩であり、他の溶液成分と互換性がある。限定されるものではないが、有用なポリカルボン酸塩の実施例としては、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、ならびにジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)塩、N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)塩およびニトリロ三酢酸(NTA)塩のような関連するポリアミノカルボン酸塩を挙げることができる。好ましいポリカルボン酸塩としては、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムのようなクエン酸塩を挙げることができる。
【0031】
水溶液中の分散剤は、本願発明の方法で製造された金属ナノプリズムの塊状化または集合化を防止する材料である。限定されるものではないが、分散剤の実施例としては、ポリビニルピロリジン、ビス(パラ−スルホネートフェニル)フェニル−ホスフィン ジポタシウム ジヒドレート、ポリ酢酸ナトリウムおよびポリ(エチレンイミン)を挙げることができる。
【0032】
穏やかな効能の還元剤は、金属塩、ポリカルボン酸塩、分散剤および過酸化水素を含有する水溶液からナノプリズムを形成することができる薬剤である。還元剤は、代表的に、水素化アルミニウムまたは水素化ホウ素である。限定されるものではないが、本願発明において有用な穏やかな効能の還元剤の実施例としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムトリアセトキシ、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素カリウムトリ−sec−ブチル、水素化ホウ素カリウムトリエチル、水素化ホウ素ナトリウムトリ−sec−ブチル、水素化ホウ素リチウムトリエチル、水素化ホウ素リチウムトリ−sec−ブチル、メチルオキサザボロリジン、ジイソピノカンフェイルクロロボラン、メトキシジエチルボラン、ジブチルボロン トリフラート、ジシクロヘキシルボロン トリフラート、ジシクロヘキシルクロロボラン、ボランテトラヒドロフラン錯体、ジメチルスルフィドボラン、ジエチルアニリンボラン、tert−ブチルアミンボラン、モルホリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリエチルアミンボランおよびピリジンボランを挙げることができる。
【0033】
本願発明において、有用な水溶液は、
(a)金属塩が約0.01mMから約0.1mMであり、好ましくは、約0.01mMから約0.05mMであり、
(b)ポリカルボン酸塩が約0.001mMから約3mMであり、好ましくは、約0.1mMから約0.75mMであり、
(c)分散剤が約0.01mMから約1mMであり、好ましくは、約0.04mMから約0.06mMであり、
(d)過酸化水素が約10mMから約100mMであり、好ましくは、約15mMから約40mMである。
【0034】
水溶液に添加される穏やかな効能の還元剤の濃度は約0.3mMから約1mMであり、その濃度の穏やかな効能の還元剤は、所定の厚さの金属ナノプリズムを形成する。
【0035】
以下は、本願発明の限定されない実施例である。
【実施例1】
【0036】
硝酸銀(99.998%、AgNO3)、クエン酸三ナトリウム(99%)、水素化ホウ素ナトリウム(99%、NaBH4)およびポリビニルピロリドン(分子量=約29000g/モル、PVP)は、ミズーリ州セントルイスのシグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich社)から購入された。過酸化水素(30重量%水溶液、H2O2)はフィッシャーケミカル社(Fisher Chemicals, Inc.)から購入された。すべての薬剤は受け入れた状態のままで使用された。水は、バーンステッドナノピュア(Barnstead Nanopure)水浄化システムを使用して浄化された(抵抗=18.2MΩcm)。すべての実験は、空気および室温下(25℃)で実行された。
【0037】
代表的な製造例として、25ミリリットルの水、0.5ミリリットルの硝酸銀(5mM)、1.5ミリリットルのクエン酸(30mM)および1.5ミリリットルのPVP(0.7mM)は、50ミリリットルの西洋なし形状のフラスコ内で、室温および空気雰囲気下で強烈に撹拌された。この混合物に対して、60マイクロリットルの過酸化水素(30重量%)が注入された。引き続いて、直ちに、0.1ミリリットルから0.25ミリリットルの水素化ホウ素ナトリウム(100mM、氷冷、新たに作製)が急速に添加された。無着色の溶液は、ただちに薄い黄色に変わった。ナノプリズムが形成されたことを示す急速な色の変化が起こるまで、撹拌は約15分から約30分間続けられた。30分後、コロイドは薄黒くなって、小さい銀のナノ粒子の形成を示唆する濃い黄色に変わった。それは、紫外線可視分光器によって実証され、395nmにおけるナノ粒子表面のプラズモン共鳴によって確認された。次の数秒の間に、コロイドの色は急激に黄色から赤色に変わった。ナノプリズムのコロイドは、色の変化が起こってから、5分間撹拌された。ナノプリズムの溶液は小型のガラスビンに移されて、暗所で保管された。
【0038】
銀のナノプリズムの製造に関する従来の研究(文献10)とは対照的に、ここに記載した反応は、暗所で行われ、それゆえ、熱的反応である。室温で暗所で保管されたとき、結果として生成するナノプリズムのコロイドは、紫外線可視スペクトルの変化を欠くことによって実証されるように、数箇月間安定であった。
【0039】
本願方法において利用できる穏やかな効能の還元剤の濃度は、銀のナノ粒子のナノプリズムへの転化度に実質的な影響を与えることが分かった。
【0040】
平面内の双極子表面プラズモンバンドは、一般的なナノプリズムが形成されたことの良好な指標として知られている(文献10および24)。それゆえ、コロイドの紫外線可視スペクトルの数値を求めることによって、形成されたナノプリズムの種類に対する各種の反応パラメーターの効果を評価することは比較的容易である。0.30mMから0.80mMにわたる4種類のNaBH4の濃度が試験されたとき、4つの異なるナノプリズムが観察された。
【0041】
溶液に添加されるNaBH4の濃度を変えることによって、最終的なコロイド溶液の色は、ピンク/紫色(0.30mMのNaBH4に対して)から青緑色(0.80mMのNaBH4に対して)の範囲にわたった。図1(b)は、異なる濃度、すなわち、左から右に向かって、0.30mM、0.50mM、0.67mM、0.80mMの濃度のNaBH4を含有する銀のナノプリズムの溶液を示している。これらの4種類の溶液における銀のナノプリズムの厚さは、7±1.5nm(0.30mMのNaBH4)、6.9±1.2nm(0.50mMのNaBH4)、5.5±0.6nm(0.67mMのNaBH4)および4.3±1.1nm(0.80mMのNaBH4)であり、所定の厚さの金属ナノプリズムは、穏やかな効能の還元剤の濃度を適当に選択することによって得ることができる。
【0042】
図2(a)はH2O2の濃度を0.20mMで一定にした場合において、0.30mMから0.80mMまで濃度が変化するNaBH4から製造されたナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルを示す。図2(a)において、線I、線II、線III、線IVは、それぞれ、0.30mMのNaBH4、0.50mMのNaBH4、0.67mMのNaBH4、0.80mMのNaBH4に対応している。一般に、図2(a)において、大きく赤色にシフトする様子が、NaBH4の濃度を増大する方向の関数として観察された。平面内の双極子表面プラズモンバンドにおける赤色へのシフトは、銀のナノプリズムの端部長さの増加および先端部の鋭さと関連がある(文献10および24)。透過電子顕微鏡による解析(例えば、図2(b)は、0.80mMのNaBH4と20mMのH2O2を使用して製造されたナノプリズムを示す)は、4種類の濃度のNaBH4によって製造されたナノプリズムの端部長さが適度に増加することを示している(すなわち、0.30mMのNaBH4に対して31±7nm、0.50mMのNaBH4に対して32±8nm、0.67mMのNaBH4に対して35±8nm、0.80mMのNaBH4に対して39±8nm)。光化学的に生成されるナノプリズムについての従来の研究(文献10)に基づけば、先端の形態と厚さが似ている粒子についてのプラズモンバンド波長において60nmのシフトが期待できるが、一方、この実験においては200nmのシフトが観察された。従って、赤色へのシフトの大きさは、端部長さの差違のみによって説明することはできない。このように、端部長さ以外のパラメーターが、ナノプリズム合成条件の関数として変化する。
【0043】
コロイドに対する透過電子顕微鏡のデータを詳細に解析すると、この矛盾を説明する2つの要因が明らかになる。第一に、水素化ホウ素ナトリウムの濃度が0.30mMから0.80mMに増加すると、ナノプリズムの先端が僅かに鋭くなる。これは、別々の双極子近似計算に基づく27nmから55nmの赤色へのシフトを説明する(文献25)。第二の観察結果としては、銀のナノプリズムは、NaBH4の濃度が増加すると薄くなるということである。透過電子顕微鏡のデータによれば、平均的なナノプリズムの厚さは、0.30mMのNaBH4を使用して製造されたコロイドに対する7.0±1.5nmから減少することを示している(図3)。特に、図3は、ナノプリズムの厚さに及ぼすNaBH4の濃度の影響を示す、銀のナノプリズムスタックの透過電子顕微鏡像を示す。図3(a)において、NaBH4の濃度は0.30mMであり、図3(b)において、NaBH4の濃度は0.80mMである(スケールバーの長さは50nmに相当する)。別々の双極子近似(DDA)計算によると、端部長さの適度の増加とともに、粒子の厚さを増加することが、ナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルにおいて観察される大きな差違を説明しうることを示している。
【0044】
また、反応に及ぼす過酸化水素濃度の影響が研究された。その結果は図4に要約されている。これらの実験において、PVPは0.04mMで一定に維持され、NaBH4は0.50mMで一定に維持され、クエン酸塩は1.80mMで一定に維持された。H2O2を欠く状態において製造された試料は、出発時の球形の6nmから8nmのAgのナノ粒子を代表として、395nmにおける紫外線可視スペクトルにおいて単一のピークを示している。525nmと430nmにおける2つのピークによって実証されるように、ナノプリズムは低いH2O2の濃度(約10mM)において形成されるけれども、これらの試料の紫外線可視スペクトルは395nmにおいて肩部を示している。これは、球形の銀のナノ構造が存在していることを示唆している。
【0045】
同様に、70mMを超える濃度のH2O2を使用してプリズムを合成すると、プリズムと球体の混合物が得られた。そのような試料は、700nm(ナノプリズム)と395nm(ナノ粒子)における紫外線可視スペクトルにおいて、2つの強い吸収バンドを示した。興味深いことに、紫外線可視データは、ナノプリズムの形態は約15mMと約40mMの間のH2O2濃度に比較的鈍感であることを示している。
【0046】
本願の金属ナノプリズムの製造方法において、PVPとクエン酸塩の濃度の影響に関する調査が行われた。クエン酸塩の濃度を1.8mMに固定して、PVPの濃度を0.02mMから0.1mMまで変化させると、ナノプリズムのコロイドが安定して得られた。PVPを欠く場合、はっきりしない粒子の凝集体が形成された。これは、PVPが安定したコロイドの形成に寄与していることを示している。その安定化は表面の不動態化によるものであると考えることができるが、必ずしもそれのみとは限らない。ビス(パラ−スルホネートフェニル)フェニル−ホスフィン ジポタシウム ジヒドレート(BSPP、0.5mM)がPVPの代わりに分散剤として使用されるとき、似ている形状と大きさのナノプリズムを得ることができる。この調査は、分散剤は本願方法において形状形成という役割を果たすのではなく、形成される金属ナノプリズムが凝集化されるのを防止するという役割を果たしていることを示している。
【0047】
対照的に、クエン酸塩は本願方法による金属ナノプリズムの形成において極めて重要である。クエン酸塩が反応混合物から省略されてPVPの濃度が0.4mMに固定されると、撹拌を長くしても、銀のナノ粒子は単体製品として観察された(図5(a))。クエン酸塩の濃度を低くして(クエン酸塩<0.1mM、Ag+<1)得られたナノプリズムは、幅広い範囲の大きさを有する三角形と六角形のナノ構造が得られた(30nmから300nmの端部長さ)(図5(a))。クエン酸塩の濃度が0.1mMより大きくなると(クエン酸塩に対応して、Ag+>1)、395nmにおける表面プラズモン吸収バンドの消滅と335nm、380−460nm、および520−725nmにおけるプリズムプラズモンバンドの出現によって実証されるように、ナノプリズムが大多数を占める。クエン酸塩は、最終的に三角形状を形成しうるように、Ag表面(111)に強く吸収されることによって表面の選択的な成長を生じさせるものであると考えることができるが、必ずしもそれのみとは限らない。
【0048】
特に、図5(a)は、PVPの濃度を0.04mM、NaBH4の濃度を0.50mM、H2O2の濃度を20mMで一定とし、クエン酸塩の濃度を各種変えた溶液から製造された銀のナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルを示す図である。銀のナノプリズムは、その方法からクエン酸塩が省略されると(銀対クエン酸塩=1:0)、得られなかった。最初のクエン酸塩濃度が低い(銀対クエン酸塩=1:0.5および銀対クエン酸塩=1:1)コロイドは、コロイドにおける銀のナノ構造の幅広い大きさと形状の分布(すなわち、約850nmから900nmにおける強い吸光度)を示す。図5(b)は、銀対クエン酸塩が1:0.5である溶液から得られたコロイドの透過電子顕微鏡像である。
【0049】
本願発明の方法によって製造されるナノプリズムは、約50nm未満の端部長さ、好ましくは、約40nm未満の端部長さを有している。最も好ましくは、ナノプリズムは、約30nmから約39nmの端部長さを有している。ナノプリズムは、約10nm未満の厚さ、およびしばしば約5nm未満の厚さ、例えば、約3nmの厚さを有している。代表的には、ナノプリズムは、約3nmから約8.5nmの間の厚さを有している。本願発明に従って、所定の厚さのナノプリズムは、穏やかな効能の還元剤、例えば、本願方法において使用できるNaBH4の量を慎重に選択することによって得ることができる。
【0050】
本願発明は、金属ナノプリズム、特に銀のナノプリズムに対する簡単ですばやい入手方法を提供するとともに、所定の厚さの金属ナノプリズムを提供しるものであり、ナノ構造に対するような公知の合成方法によっては得ることのできないパラメーターである。
【0051】
本願発明の付加的な特徴は、熱的に製造された金属ナノプリズムの端部の選択的溶解は、適切な波長の光を照射することによるコロイドの励起によってもたらされるという発見である。特に、コロイドが周囲の蛍光に晒されたとき、本願の熱的方法によって製造された銀のナノプリズムのコロイドの光学特性が劇的に変化したことが観察された(図6(a))。ナノ構造の最終形態はプリズムではなく円板に似ていた。それは、プリズムの先端がなくなったことを示している(図6(b))。図6(a)は、0.3mMの濃度のNaBH4を使用して本願の熱的方法によって製造され、次いで、1日間蛍光に晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示している。図6(b)は、1週間、蛍光を照射された後の銀のナノプリズムの透過電子顕微鏡像である。銀のナノプリズムの先端は短く切り詰められたので、円板状の形状をしている。
【0052】
銀のナノプリズムおよび光に対する従来の研究によって、コロイドを単一波長(例えば、500nm)の光に晒すと、70nmの端部長さ(タイプIのナノプリズム)と150nmの端部長さ(タイプIIのナノプリズム)を有するプリズムからなる二峰性の粒径分布をナノプリズムが得られることが知られている。対照的に、550nmと340nmのような二つの波長を有する光にコロイドを晒すと、後者の波長はナノプリズムの四極子共鳴に相当するものであるが、単峰性の粒径分布を有するコロイドが得られる(プリズム平均端部長さが70nm)。コロイドを四極子共鳴波長の光で励起すると、タイプIのナノプリズムの溶解を停止し、より大きいタイプIIの構造のナノプリズムの形成につながるこが分かった。
【0053】
本願発明の熱的方法によって製造された銀のナノプリズムは、光がナノプリズムの溶解に影響を及ぼすかどうかを決定するために光に晒された。最初の実験において、特定の大きさと厚さの銀のナノプリズムが本願の熱的方法によって製造され、続いて特定波長の光に晒された。代表的な実験例として、31nm±7nmの平均端部長さと7.0nm±1.5nmの厚さを有する銀のナノプリズムが本願の熱的方法によって製造された(0.3mMのNaBH4を使用した)。赤いコロイドは、好ましい波長の通過域(600±20nm、インターオプティカルフィルター社(Inter Optical Filters, Inc.))を有する光学フィルターを備えた小型のガラスビンに配置され、キセノンランプ(150w)に晒された。
【0054】
図7は、約3日間、600nm±20nmの光に晒されたナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルを含む。約520nmにおける最初のナノプリズムの平面内双極子共鳴は、約700nmにおける新しいバンドの付随的な成長とともに消滅する。最終のスペクトルは、銀のナノプリズムのスペクトルに似ている。透過電子顕微鏡による解析は、約90nmの端部長さを有する銀のナノプリズムの存在を実証した。特に、図7(a)は、600nm±20nmの波長の光に約3日間晒された約30nmのナノプリズムを含有するコロイドの紫外線可視スペクトルを含む。図7(b)は、600nm±20nmの波長の光に約71時間晒された後の銀のナノプリズムの透過電子顕微鏡像である。
【0055】
紫外線可視スペクトルは、大きなナノプリズムが小さいナノプリズムの溶解を経て成長することを示唆している。もし、ナノプリズムがオストワルト成長機構により成長するならば、ナノプリズムの平均端部長さが増加するとき、平面内双極子共鳴が徐々に赤色にシフトするであろう。対照的に、より大きなナノプリズムの平面内双極子は小さいプリズムの平面内双極子が消失するとき現れる。これは、単一波長の励起を使用して銀のナノプリズムが光化学的に成長したことを想起させる。
【0056】
実験は、また、照射時間が重要であることを示している。図8は、励起時間を長くすることによって、ナノプリズムの平面内双極子共鳴が青色にシフトすることによって実証されるナノプリズムの先端のエッチングが如何に行われるかを示している。図8(a)は、600nm±20nmの波長の光に各種の時間晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルである。双極子共鳴が明確に青色にシフトしている様子が、71時間と96時間の励起の間において観察される。図8(b)は、600nm±20nmの波長の光で96時間励起した後の銀のナノプリズムの透過電子顕微鏡像である。ナノプリズムの先端は切り詰められて、全体の平均端部長さは減少している。
【0057】
文献
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上記の説明は本願発明の実施形態および実施例を示す目的のためになされたものである。ここに開示された実施形態および実施例に本願発明を限定すべきでない。各種の変形および修正が可能である。上記の説明と均等である関連技術は、本願発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1(a)】本願発明による銀のナノプリズムの製造方法を概略的に示す図である。
【図1(b)】異なる濃度の水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を使用して製造された銀(Ag)のナノプリズムを示す図である。
【図2(a)】各種濃度のNaBH4を含有する溶液から製造された銀のナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図2(b)】銀のナノプリズムの透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図3(a)】NaBH4の濃度が0.30mMの場合の、NaBH4の濃度がナノプリズムの厚さに及ぼす効果を示すTEM像である。
【図3(b)】NaBH4の濃度が0.80mMの場合の、NaBH4の濃度がナノプリズムの厚さに及ぼす効果を示すTEM像でである。
【図4】過酸化水素の濃度がナノプリズムのコロイドの製造に及ぼす効果を実証する紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図5(a)】銀イオン対クエン酸イオンの比率が異なる場合の銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図5(b)】銀イオン対クエン酸イオンの比率が1対0.5である溶液から製造されたナノプリズムのコロイドのTEM像を示す図である。
【図6(a)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図6(b)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムのTEM像を示す図である。
【図7(a)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図7(b)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムのTEM像を示す図である。
【図8(a)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図8(b)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムのTEM像を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年6月30日に出願された米国仮特許出願第60/584,775号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本願は、海軍研究許可番号N00014−03−1−0800であり,国家科学財団NSEC許可番号EEC−0118025によってサポートされている。政府は本願に関心を寄せている。
【0003】
本願はナノプリズムに関し、より詳しくは、所定の厚さを有する銀のナノプリズムのような金属ナノプリズムを容易に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
金属ナノプリズムは、新規な化学的特性や触媒特性とともに特徴ある光学特性を有するゆえに、多大なる科学的関心や技術的関心を引き起こしている。非球形ナノ粒子、および特に非等方形状のナノ粒子は、その形状が構造の有する物理的特性および化学的特性にどのような影響を及ぼすかについての調査が可能であるために、大きな関心が寄せられている。
【0005】
従って、星形、立方体、棒状、円板状および角柱を含む多様な形状のナノ粒子が製造され、それらの特性が特徴づけて報告されている。
【0006】
ナノ粒子の形状に加えて、その大きさはナノ粒子の重要なパラメーターである。というのは、ナノ粒子の大きさによって、ルミネセンス、導電率および触媒特性を含むナノ粒子の物理的特性や化学的特性を制御することができるからである。過去において、コロイド化学者は、いくつかの球形の金属組成および半導体組成の粒子の大きさについては、充分に制御できることを示した。この粒子の大きさに対する化学的制御は、コロイド状のナノ結晶への量子の閉じ込めの発見及び生物学上の診断用途におけるプローブ、発光ダイオード材料、レーザおよびラマン分光励起材料の開発に結びついた。
【0007】
対照的に、総合的に粒子形状を制御しようとする試みは、限られた範囲で成功しただけであった。それにも関わらず、半導体および金属のナノワイヤ、ナノベルトおよび小片を製造するための物理的および化学的固相析出法が開発され、アスペクト比を適度に制御しながら、電気化学的合成法およびメンブレン合成法を使用して棒状体を製造するための多種の方法が存在している。
【0008】
円板状(文献1−4)、棒状(文献5−9)、角柱(文献10−14)、ワイヤ状(文献15−18)、中空構造(文献19−22)および分岐した粒子(文献23)を含む様々な形状の銀および金のナノ粒子を合成するためのいくつかの方法が開示されている。最近、一部には、それらの特徴ある光学特性のために、また、端部長さについての実効性のある制御を伴う単調分散のナノプリズムを製造するための高生産性の光化学的方法が開発されたため(文献10および25)、三角柱の銀のナノプリズムを合成しようとするための強烈な努力が傾けられている(文献13−17)。これらによって、ナノ粒子における構造と特性の重要な相関関係を得るための研究が可能になった。
【0009】
一般に、銀のナノプリズムを合成するための有用な方法としては、熱的方法と光化学的方法の二つがある。光化学的方法によると、プリズム前駆物質および結果として生じるプリズムの選択的プラズモン励起によって、より単調分散のナノプリズムを提供し、構造上のパラメーターを十分に制御することが可能になる(文献10−12)。放射波長を慎重に選択することによって、研究者は銀のナノプリズムの大きさ、形状および粒径分布(すなわち、単峰性または二峰性の粒径分布)を制御することができる。銀のナノプリズムを得るための熱的方法は、一般的に、コロイド状の銀のナノ粒子を銀のナノプリズムに徐々に転化する(文献12および13)。現在行われている熱的方法は、銀のナノプリズムの厚さや粒径分布を合理的にコントロールすることはできない。
【0010】
例えば、三角形や立方体をしたプラチナの立方体や角錐(文献26)、PbSe、CdSおよびNiの三角形をしたもの(文献27−29)のような非球形粒子の製造方法が存在する。
【0011】
さらに、BaCrO4、CdSeおよびCoのナノロッドと、矢状のCdSeナノ結晶、涙のしずく状のCdSeナノ結晶およびテトラポッド状のCdSeナノ結晶とを合成する方法が研究されることになった(文献30−33)。これらの手段は熱的方法に基づいており、ロッドの例外を除いて、好ましい粒子形状の生産性は比較的低い。
【0012】
粒子形状をコントロールできる合成方法は、当技術分野における重要で基本的な技術上の進歩に結びつくことが期待できる。この合成方法は、診断、光学、触媒および電子工学における新しくて重要で基本的な科学上および技術上の適用分野の発見に結びつく、ナノスケール材料の粒子の大きさのコントロールのようなものを含んでいる。それゆえ、ナノ粒子の形状と大きさをコントロールする多くの溶解合成方法の開発は、これらの新規なナノスケール材料の潜在的な可能性を実現するために極めて重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえ、端部長さをコントロールすることができる、所定の厚さの三角形の金属ナノプリズムを簡単に製造できる方法が当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、所定の厚さの銀のナノプリズムのような金属ナノプリズムの製造方法に関する。より詳しくは、本願発明はナノ粒子の端部長さをコントロールすることができる、所定の厚さを有する三角形の金属ナノプリズムを簡単に直接的に製造するための方法に関する。
【0015】
それゆえ、本願発明の一実施形態は、一連の工程において単峰性の粒径分布を有する金属ナノプリズムを製造する方法を提供することにある。
【0016】
本願発明の別の実施形態は、金属ナノ粒子を過酸化水素および水素化ナトリウムホウ素を使用して熱的方法により金属ナノプリズムに転化する、金属ナノプリズムの製造方法を提供することにある。
【0017】
本願発明のさらに別の実施形態は、金属塩、ポリカルボン酸塩、分散剤および過酸化水素を含有する水溶液を調製し、穏やかな効能の還元剤を上記水溶液に添加して金属ナノプリズムを形成することを含む、一連の工程で金属ナノプリズムを製造する方法を提供することにある。
【0018】
本願発明の上記とはさらに別の実施形態は、穏やかな効能の還元剤として水素化ナトリウムホウ素を使用して、銀塩、クエン酸塩、ポリビニルピロリジンおよび過酸化水素を含有する溶液から銀のナノプリズムを製造する方法を提供することにある。
【0019】
本願発明の上記とはさらに別の実施形態は、銀のナノプリズムのような金属ナノプリズムを製造する方法を提供することにあり、その方法において使用される水素化ホウ素ナトリウムおよび/又は過酸化ナトリウムの濃度を変えることによって、厚さと端部長さ、特にその厚さをコントロールすることができる金属ナノプリズムの製造方法を提供することにある。
【0020】
本願発明の上記とはさらに別の実施形態は、十分な時間、一つ以上の波長の光をナノプリズムに照射することによって好ましい形態の金属ナノ粒子を提供するための、熱的方法により金属ナノプリズムの形態を変えることができる方法を提供することにある。
【0021】
本願発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明によって明かになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本願発明は、コロイド状懸濁液の形態で、高効率で金属ナノプリズムを大量に製造することができる新規な熱的方法を提供することにある。本願発明の熱的方法は、本願の方法によって得られる形状コントロールに直接関連するユニークな光学特性を備えたナノプリズム含有コロイドを提供することができる。
【0023】
本願発明の方法は、金属ナノプリズム、特に、銀のナノプリズムを提供する。より詳しくは、本願発明は、端部長さをコントロールされ、単峰性の粒径分布を有する金属ナノプリズムを生み出す新規な熱的方法を提供する。本願発明の方法が所定の厚さを有する金属ナノプリズムを製造することができることは重要である。金属ナノプリズムの厚さは、従来の光化学方法および熱的方法で金属ナノプリズムを製造する場合にはコントロールすることができなかったからである。
【0024】
本願発明の方法は、図1(a)の銀のナノプリズムによって示されているように、三角形の金属ナノプリズムを提供することができる。図1(a)は、また、本願明細書において金属ナノプリズムに関連して使用されている、“ナノプリズムの厚さ”および“ナノプリズムの端部長さ”という用語を図示するとともに定義している。
【0025】
より詳細に議論するように、図1(a)は、金属ナノプリズムを合成するための本願発明の方法を示している。以下のより詳細な説明は、銀のナノプリズムの製造に関するものである。しかし、以下の開示は単に例示する目的のみでなされたものであることを理解すべきである。所定の厚さの他の金属ナノプリズムは、出発物質として適当な金属塩を使用して本願発明の方法を適用することによって製造しうることは想像できることである。
【0026】
特に、図1(a)は、硝酸銀(AgNO3)、クエン酸塩、ポリビニルピロリドン(PVP)および過酸化水素(H2O2)を含有する水溶液を使用して、その水溶液に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)溶液を添加することによって、銀ナノ粒子を銀のナノプリズムに転化するための本願発明の熱的方法を示している。以下に、より詳細に議論するように、結果として生成する、銀のナノプリズムの厚さは、水溶液に添加されたNaBH4の濃度に直接関連している。
【0027】
より一般的に、本願発明の金属ナノプリズムの製造方法は、金属塩、ポリカルボン酸塩、分散剤および過酸化水素を含有する水溶液を調製する工程(a)と、(a)工程の水溶液に穏やかな効能の還元剤を添加して、所定の厚さの金属ナノプリズムを形成する工程(b)とを有している。
【0028】
水溶液の金属塩は、陽イオンとしてナノプリズムの金属を含有している。上記金属塩の陰イオンは、金属塩が水溶性となるように選択される。それゆえ、金属塩の金属陽イオンは銀とすることができる。金属塩の陰イオンは、例えば、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、酢酸塩及びこれらの混合物から選択することができる。金属塩は、十分に水溶性となるように、少なくとも0.01mMの溶液が得られるように選択され、好ましくは少なくとも0.05mMの溶液が得られるように選択され、より好ましくは少なくとも0.1mMの溶液が得られるように選択される。
【0029】
いくつかの実施形態において、塩の金属陽イオンが銀であるとき、陰イオンは硝酸塩か又は過塩素酸塩である。塩の水溶液が互換性があり、析出物を生成しない限り、金属塩の混合物を使用できることは想像できる。金属塩の混合物が使用されるとき、ナノプリズムは金属の混合物を含有する。
【0030】
水溶液中のポリカルボキシル塩は、少なくとも3つのカルボン酸基を含有しており、水溶性であるポリカルボン酸塩であり、他の溶液成分と互換性がある。限定されるものではないが、有用なポリカルボン酸塩の実施例としては、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、ならびにジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)塩、N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)塩およびニトリロ三酢酸(NTA)塩のような関連するポリアミノカルボン酸塩を挙げることができる。好ましいポリカルボン酸塩としては、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムのようなクエン酸塩を挙げることができる。
【0031】
水溶液中の分散剤は、本願発明の方法で製造された金属ナノプリズムの塊状化または集合化を防止する材料である。限定されるものではないが、分散剤の実施例としては、ポリビニルピロリジン、ビス(パラ−スルホネートフェニル)フェニル−ホスフィン ジポタシウム ジヒドレート、ポリ酢酸ナトリウムおよびポリ(エチレンイミン)を挙げることができる。
【0032】
穏やかな効能の還元剤は、金属塩、ポリカルボン酸塩、分散剤および過酸化水素を含有する水溶液からナノプリズムを形成することができる薬剤である。還元剤は、代表的に、水素化アルミニウムまたは水素化ホウ素である。限定されるものではないが、本願発明において有用な穏やかな効能の還元剤の実施例としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムトリアセトキシ、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素カリウムトリ−sec−ブチル、水素化ホウ素カリウムトリエチル、水素化ホウ素ナトリウムトリ−sec−ブチル、水素化ホウ素リチウムトリエチル、水素化ホウ素リチウムトリ−sec−ブチル、メチルオキサザボロリジン、ジイソピノカンフェイルクロロボラン、メトキシジエチルボラン、ジブチルボロン トリフラート、ジシクロヘキシルボロン トリフラート、ジシクロヘキシルクロロボラン、ボランテトラヒドロフラン錯体、ジメチルスルフィドボラン、ジエチルアニリンボラン、tert−ブチルアミンボラン、モルホリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリエチルアミンボランおよびピリジンボランを挙げることができる。
【0033】
本願発明において、有用な水溶液は、
(a)金属塩が約0.01mMから約0.1mMであり、好ましくは、約0.01mMから約0.05mMであり、
(b)ポリカルボン酸塩が約0.001mMから約3mMであり、好ましくは、約0.1mMから約0.75mMであり、
(c)分散剤が約0.01mMから約1mMであり、好ましくは、約0.04mMから約0.06mMであり、
(d)過酸化水素が約10mMから約100mMであり、好ましくは、約15mMから約40mMである。
【0034】
水溶液に添加される穏やかな効能の還元剤の濃度は約0.3mMから約1mMであり、その濃度の穏やかな効能の還元剤は、所定の厚さの金属ナノプリズムを形成する。
【0035】
以下は、本願発明の限定されない実施例である。
【実施例1】
【0036】
硝酸銀(99.998%、AgNO3)、クエン酸三ナトリウム(99%)、水素化ホウ素ナトリウム(99%、NaBH4)およびポリビニルピロリドン(分子量=約29000g/モル、PVP)は、ミズーリ州セントルイスのシグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich社)から購入された。過酸化水素(30重量%水溶液、H2O2)はフィッシャーケミカル社(Fisher Chemicals, Inc.)から購入された。すべての薬剤は受け入れた状態のままで使用された。水は、バーンステッドナノピュア(Barnstead Nanopure)水浄化システムを使用して浄化された(抵抗=18.2MΩcm)。すべての実験は、空気および室温下(25℃)で実行された。
【0037】
代表的な製造例として、25ミリリットルの水、0.5ミリリットルの硝酸銀(5mM)、1.5ミリリットルのクエン酸(30mM)および1.5ミリリットルのPVP(0.7mM)は、50ミリリットルの西洋なし形状のフラスコ内で、室温および空気雰囲気下で強烈に撹拌された。この混合物に対して、60マイクロリットルの過酸化水素(30重量%)が注入された。引き続いて、直ちに、0.1ミリリットルから0.25ミリリットルの水素化ホウ素ナトリウム(100mM、氷冷、新たに作製)が急速に添加された。無着色の溶液は、ただちに薄い黄色に変わった。ナノプリズムが形成されたことを示す急速な色の変化が起こるまで、撹拌は約15分から約30分間続けられた。30分後、コロイドは薄黒くなって、小さい銀のナノ粒子の形成を示唆する濃い黄色に変わった。それは、紫外線可視分光器によって実証され、395nmにおけるナノ粒子表面のプラズモン共鳴によって確認された。次の数秒の間に、コロイドの色は急激に黄色から赤色に変わった。ナノプリズムのコロイドは、色の変化が起こってから、5分間撹拌された。ナノプリズムの溶液は小型のガラスビンに移されて、暗所で保管された。
【0038】
銀のナノプリズムの製造に関する従来の研究(文献10)とは対照的に、ここに記載した反応は、暗所で行われ、それゆえ、熱的反応である。室温で暗所で保管されたとき、結果として生成するナノプリズムのコロイドは、紫外線可視スペクトルの変化を欠くことによって実証されるように、数箇月間安定であった。
【0039】
本願方法において利用できる穏やかな効能の還元剤の濃度は、銀のナノ粒子のナノプリズムへの転化度に実質的な影響を与えることが分かった。
【0040】
平面内の双極子表面プラズモンバンドは、一般的なナノプリズムが形成されたことの良好な指標として知られている(文献10および24)。それゆえ、コロイドの紫外線可視スペクトルの数値を求めることによって、形成されたナノプリズムの種類に対する各種の反応パラメーターの効果を評価することは比較的容易である。0.30mMから0.80mMにわたる4種類のNaBH4の濃度が試験されたとき、4つの異なるナノプリズムが観察された。
【0041】
溶液に添加されるNaBH4の濃度を変えることによって、最終的なコロイド溶液の色は、ピンク/紫色(0.30mMのNaBH4に対して)から青緑色(0.80mMのNaBH4に対して)の範囲にわたった。図1(b)は、異なる濃度、すなわち、左から右に向かって、0.30mM、0.50mM、0.67mM、0.80mMの濃度のNaBH4を含有する銀のナノプリズムの溶液を示している。これらの4種類の溶液における銀のナノプリズムの厚さは、7±1.5nm(0.30mMのNaBH4)、6.9±1.2nm(0.50mMのNaBH4)、5.5±0.6nm(0.67mMのNaBH4)および4.3±1.1nm(0.80mMのNaBH4)であり、所定の厚さの金属ナノプリズムは、穏やかな効能の還元剤の濃度を適当に選択することによって得ることができる。
【0042】
図2(a)はH2O2の濃度を0.20mMで一定にした場合において、0.30mMから0.80mMまで濃度が変化するNaBH4から製造されたナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルを示す。図2(a)において、線I、線II、線III、線IVは、それぞれ、0.30mMのNaBH4、0.50mMのNaBH4、0.67mMのNaBH4、0.80mMのNaBH4に対応している。一般に、図2(a)において、大きく赤色にシフトする様子が、NaBH4の濃度を増大する方向の関数として観察された。平面内の双極子表面プラズモンバンドにおける赤色へのシフトは、銀のナノプリズムの端部長さの増加および先端部の鋭さと関連がある(文献10および24)。透過電子顕微鏡による解析(例えば、図2(b)は、0.80mMのNaBH4と20mMのH2O2を使用して製造されたナノプリズムを示す)は、4種類の濃度のNaBH4によって製造されたナノプリズムの端部長さが適度に増加することを示している(すなわち、0.30mMのNaBH4に対して31±7nm、0.50mMのNaBH4に対して32±8nm、0.67mMのNaBH4に対して35±8nm、0.80mMのNaBH4に対して39±8nm)。光化学的に生成されるナノプリズムについての従来の研究(文献10)に基づけば、先端の形態と厚さが似ている粒子についてのプラズモンバンド波長において60nmのシフトが期待できるが、一方、この実験においては200nmのシフトが観察された。従って、赤色へのシフトの大きさは、端部長さの差違のみによって説明することはできない。このように、端部長さ以外のパラメーターが、ナノプリズム合成条件の関数として変化する。
【0043】
コロイドに対する透過電子顕微鏡のデータを詳細に解析すると、この矛盾を説明する2つの要因が明らかになる。第一に、水素化ホウ素ナトリウムの濃度が0.30mMから0.80mMに増加すると、ナノプリズムの先端が僅かに鋭くなる。これは、別々の双極子近似計算に基づく27nmから55nmの赤色へのシフトを説明する(文献25)。第二の観察結果としては、銀のナノプリズムは、NaBH4の濃度が増加すると薄くなるということである。透過電子顕微鏡のデータによれば、平均的なナノプリズムの厚さは、0.30mMのNaBH4を使用して製造されたコロイドに対する7.0±1.5nmから減少することを示している(図3)。特に、図3は、ナノプリズムの厚さに及ぼすNaBH4の濃度の影響を示す、銀のナノプリズムスタックの透過電子顕微鏡像を示す。図3(a)において、NaBH4の濃度は0.30mMであり、図3(b)において、NaBH4の濃度は0.80mMである(スケールバーの長さは50nmに相当する)。別々の双極子近似(DDA)計算によると、端部長さの適度の増加とともに、粒子の厚さを増加することが、ナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルにおいて観察される大きな差違を説明しうることを示している。
【0044】
また、反応に及ぼす過酸化水素濃度の影響が研究された。その結果は図4に要約されている。これらの実験において、PVPは0.04mMで一定に維持され、NaBH4は0.50mMで一定に維持され、クエン酸塩は1.80mMで一定に維持された。H2O2を欠く状態において製造された試料は、出発時の球形の6nmから8nmのAgのナノ粒子を代表として、395nmにおける紫外線可視スペクトルにおいて単一のピークを示している。525nmと430nmにおける2つのピークによって実証されるように、ナノプリズムは低いH2O2の濃度(約10mM)において形成されるけれども、これらの試料の紫外線可視スペクトルは395nmにおいて肩部を示している。これは、球形の銀のナノ構造が存在していることを示唆している。
【0045】
同様に、70mMを超える濃度のH2O2を使用してプリズムを合成すると、プリズムと球体の混合物が得られた。そのような試料は、700nm(ナノプリズム)と395nm(ナノ粒子)における紫外線可視スペクトルにおいて、2つの強い吸収バンドを示した。興味深いことに、紫外線可視データは、ナノプリズムの形態は約15mMと約40mMの間のH2O2濃度に比較的鈍感であることを示している。
【0046】
本願の金属ナノプリズムの製造方法において、PVPとクエン酸塩の濃度の影響に関する調査が行われた。クエン酸塩の濃度を1.8mMに固定して、PVPの濃度を0.02mMから0.1mMまで変化させると、ナノプリズムのコロイドが安定して得られた。PVPを欠く場合、はっきりしない粒子の凝集体が形成された。これは、PVPが安定したコロイドの形成に寄与していることを示している。その安定化は表面の不動態化によるものであると考えることができるが、必ずしもそれのみとは限らない。ビス(パラ−スルホネートフェニル)フェニル−ホスフィン ジポタシウム ジヒドレート(BSPP、0.5mM)がPVPの代わりに分散剤として使用されるとき、似ている形状と大きさのナノプリズムを得ることができる。この調査は、分散剤は本願方法において形状形成という役割を果たすのではなく、形成される金属ナノプリズムが凝集化されるのを防止するという役割を果たしていることを示している。
【0047】
対照的に、クエン酸塩は本願方法による金属ナノプリズムの形成において極めて重要である。クエン酸塩が反応混合物から省略されてPVPの濃度が0.4mMに固定されると、撹拌を長くしても、銀のナノ粒子は単体製品として観察された(図5(a))。クエン酸塩の濃度を低くして(クエン酸塩<0.1mM、Ag+<1)得られたナノプリズムは、幅広い範囲の大きさを有する三角形と六角形のナノ構造が得られた(30nmから300nmの端部長さ)(図5(a))。クエン酸塩の濃度が0.1mMより大きくなると(クエン酸塩に対応して、Ag+>1)、395nmにおける表面プラズモン吸収バンドの消滅と335nm、380−460nm、および520−725nmにおけるプリズムプラズモンバンドの出現によって実証されるように、ナノプリズムが大多数を占める。クエン酸塩は、最終的に三角形状を形成しうるように、Ag表面(111)に強く吸収されることによって表面の選択的な成長を生じさせるものであると考えることができるが、必ずしもそれのみとは限らない。
【0048】
特に、図5(a)は、PVPの濃度を0.04mM、NaBH4の濃度を0.50mM、H2O2の濃度を20mMで一定とし、クエン酸塩の濃度を各種変えた溶液から製造された銀のナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルを示す図である。銀のナノプリズムは、その方法からクエン酸塩が省略されると(銀対クエン酸塩=1:0)、得られなかった。最初のクエン酸塩濃度が低い(銀対クエン酸塩=1:0.5および銀対クエン酸塩=1:1)コロイドは、コロイドにおける銀のナノ構造の幅広い大きさと形状の分布(すなわち、約850nmから900nmにおける強い吸光度)を示す。図5(b)は、銀対クエン酸塩が1:0.5である溶液から得られたコロイドの透過電子顕微鏡像である。
【0049】
本願発明の方法によって製造されるナノプリズムは、約50nm未満の端部長さ、好ましくは、約40nm未満の端部長さを有している。最も好ましくは、ナノプリズムは、約30nmから約39nmの端部長さを有している。ナノプリズムは、約10nm未満の厚さ、およびしばしば約5nm未満の厚さ、例えば、約3nmの厚さを有している。代表的には、ナノプリズムは、約3nmから約8.5nmの間の厚さを有している。本願発明に従って、所定の厚さのナノプリズムは、穏やかな効能の還元剤、例えば、本願方法において使用できるNaBH4の量を慎重に選択することによって得ることができる。
【0050】
本願発明は、金属ナノプリズム、特に銀のナノプリズムに対する簡単ですばやい入手方法を提供するとともに、所定の厚さの金属ナノプリズムを提供しるものであり、ナノ構造に対するような公知の合成方法によっては得ることのできないパラメーターである。
【0051】
本願発明の付加的な特徴は、熱的に製造された金属ナノプリズムの端部の選択的溶解は、適切な波長の光を照射することによるコロイドの励起によってもたらされるという発見である。特に、コロイドが周囲の蛍光に晒されたとき、本願の熱的方法によって製造された銀のナノプリズムのコロイドの光学特性が劇的に変化したことが観察された(図6(a))。ナノ構造の最終形態はプリズムではなく円板に似ていた。それは、プリズムの先端がなくなったことを示している(図6(b))。図6(a)は、0.3mMの濃度のNaBH4を使用して本願の熱的方法によって製造され、次いで、1日間蛍光に晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示している。図6(b)は、1週間、蛍光を照射された後の銀のナノプリズムの透過電子顕微鏡像である。銀のナノプリズムの先端は短く切り詰められたので、円板状の形状をしている。
【0052】
銀のナノプリズムおよび光に対する従来の研究によって、コロイドを単一波長(例えば、500nm)の光に晒すと、70nmの端部長さ(タイプIのナノプリズム)と150nmの端部長さ(タイプIIのナノプリズム)を有するプリズムからなる二峰性の粒径分布をナノプリズムが得られることが知られている。対照的に、550nmと340nmのような二つの波長を有する光にコロイドを晒すと、後者の波長はナノプリズムの四極子共鳴に相当するものであるが、単峰性の粒径分布を有するコロイドが得られる(プリズム平均端部長さが70nm)。コロイドを四極子共鳴波長の光で励起すると、タイプIのナノプリズムの溶解を停止し、より大きいタイプIIの構造のナノプリズムの形成につながるこが分かった。
【0053】
本願発明の熱的方法によって製造された銀のナノプリズムは、光がナノプリズムの溶解に影響を及ぼすかどうかを決定するために光に晒された。最初の実験において、特定の大きさと厚さの銀のナノプリズムが本願の熱的方法によって製造され、続いて特定波長の光に晒された。代表的な実験例として、31nm±7nmの平均端部長さと7.0nm±1.5nmの厚さを有する銀のナノプリズムが本願の熱的方法によって製造された(0.3mMのNaBH4を使用した)。赤いコロイドは、好ましい波長の通過域(600±20nm、インターオプティカルフィルター社(Inter Optical Filters, Inc.))を有する光学フィルターを備えた小型のガラスビンに配置され、キセノンランプ(150w)に晒された。
【0054】
図7は、約3日間、600nm±20nmの光に晒されたナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルを含む。約520nmにおける最初のナノプリズムの平面内双極子共鳴は、約700nmにおける新しいバンドの付随的な成長とともに消滅する。最終のスペクトルは、銀のナノプリズムのスペクトルに似ている。透過電子顕微鏡による解析は、約90nmの端部長さを有する銀のナノプリズムの存在を実証した。特に、図7(a)は、600nm±20nmの波長の光に約3日間晒された約30nmのナノプリズムを含有するコロイドの紫外線可視スペクトルを含む。図7(b)は、600nm±20nmの波長の光に約71時間晒された後の銀のナノプリズムの透過電子顕微鏡像である。
【0055】
紫外線可視スペクトルは、大きなナノプリズムが小さいナノプリズムの溶解を経て成長することを示唆している。もし、ナノプリズムがオストワルト成長機構により成長するならば、ナノプリズムの平均端部長さが増加するとき、平面内双極子共鳴が徐々に赤色にシフトするであろう。対照的に、より大きなナノプリズムの平面内双極子は小さいプリズムの平面内双極子が消失するとき現れる。これは、単一波長の励起を使用して銀のナノプリズムが光化学的に成長したことを想起させる。
【0056】
実験は、また、照射時間が重要であることを示している。図8は、励起時間を長くすることによって、ナノプリズムの平面内双極子共鳴が青色にシフトすることによって実証されるナノプリズムの先端のエッチングが如何に行われるかを示している。図8(a)は、600nm±20nmの波長の光に各種の時間晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルである。双極子共鳴が明確に青色にシフトしている様子が、71時間と96時間の励起の間において観察される。図8(b)は、600nm±20nmの波長の光で96時間励起した後の銀のナノプリズムの透過電子顕微鏡像である。ナノプリズムの先端は切り詰められて、全体の平均端部長さは減少している。
【0057】
文献
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上記の説明は本願発明の実施形態および実施例を示す目的のためになされたものである。ここに開示された実施形態および実施例に本願発明を限定すべきでない。各種の変形および修正が可能である。上記の説明と均等である関連技術は、本願発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1(a)】本願発明による銀のナノプリズムの製造方法を概略的に示す図である。
【図1(b)】異なる濃度の水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を使用して製造された銀(Ag)のナノプリズムを示す図である。
【図2(a)】各種濃度のNaBH4を含有する溶液から製造された銀のナノプリズムコロイドの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図2(b)】銀のナノプリズムの透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図3(a)】NaBH4の濃度が0.30mMの場合の、NaBH4の濃度がナノプリズムの厚さに及ぼす効果を示すTEM像である。
【図3(b)】NaBH4の濃度が0.80mMの場合の、NaBH4の濃度がナノプリズムの厚さに及ぼす効果を示すTEM像でである。
【図4】過酸化水素の濃度がナノプリズムのコロイドの製造に及ぼす効果を実証する紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図5(a)】銀イオン対クエン酸イオンの比率が異なる場合の銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図5(b)】銀イオン対クエン酸イオンの比率が1対0.5である溶液から製造されたナノプリズムのコロイドのTEM像を示す図である。
【図6(a)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図6(b)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムのTEM像を示す図である。
【図7(a)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図7(b)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムのTEM像を示す図である。
【図8(a)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムの紫外線可視スペクトルを示す図である。
【図8(b)】本願発明の方法によって製造され、次いで光に晒された銀のナノプリズムのTEM像を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノプリズムを製造する方法であって、
(a)金属塩(i)、少なくとも3つのカルボン酸基を含有するポリカルボン酸塩(ii
)、分散剤(iii)および過酸化水素(iv)を含有する水溶液を調製する工程と、
(b)(a)工程の水溶液に穏やかな効能の還元剤を添加して、所定の厚さの金属ナノプリズムを形成する工程
とを有することを特徴とする金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項2】
金属ナノプリズムの端部長さを増加するために、工程(b)の金属ナノプリズムに対して十分な波長の光を十分な時間照射する工程を有することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項3】
金属塩は、銀の塩であることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項4】
銀の塩の陰イオンは、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、酢酸塩及びこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項3記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項5】
金属塩は、約0.01mMから約0.1mMの濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項6】
ポリカルボン酸塩は、約0.001mMから約3mMの濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項7】
ポリカルボン酸塩は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸塩およびニトリロ三酢酸塩からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項8】
ポリカルボン酸塩は、クエン酸塩であることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項9】
金属塩の濃度対クエン酸塩の濃度の比率は、約1対1から約1対36の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項10】
分散剤は、ポリビニルピロリドン、ビス(パラ−スルホネートフェニル)フェニル−ホスフィン ジポタシウム ジヒドレート、ポリ酢酸ナトリウム、ポリ(エチレンイミン)及びこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項11】
分散剤は、約0.01mMから約1mMの濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項12】
過酸化水素は、約10mMから約100mMの濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項13】
穏やかな効能の還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムトリアセトキシ、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素カリウムトリ−sec−ブチル、水素化ホウ素カリウムトリエチル、水素化ホウ素ナトリウムトリ−sec−ブチル、水素化ホウ素リチウムトリエチル、水素化ホウ素リチウムトリ−sec−ブチル、メチルオキサザボロリジン、ジイソピノカンフェイルクロロボラン、メトキシジエチルボラン、ジブチルボロン トリフラート、ジシクロヘキシルボロン トリフラート、ジシクロヘキシルクロロボラン、ボランテトラヒドロフラン錯体、ジメチルスルフィドボラン、ジエチルアニリンボラン、tert−ブチルアミンボラン、モルホリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリエチルアミンボランおよびピリジンボランからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項14】
穏やかな効能の還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項15】
穏やかな効能の還元剤は、約0.3mMから約1mMの濃度で水溶液に添加されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項16】
金属ナノプリズムは、単峰性の粒径分布を有することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項17】
金属ナノプリズムは、約30nmから約40nmの端部長さを有することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項18】
金属ナノプリズムは、約3nmから約10nmの厚さを有し、その厚さは予め定められ、予め定められる厚さは適切な濃度の過酸化水素、適切な濃度の穏やかな効能の還元剤の添加または過酸化水素および還元剤の両方によって達成されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項19】
水溶液は、
(a)約0.01mMから約0.05mMの金属塩と、
(b)約0.1mMから約0.75mMのクエン酸塩と、
(c)約0.04mMから約0.06mMの分散剤と、
(d)約15mMから約40mMの過酸化水素とを含有することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項20】
金属塩は銀の塩であり、クエン酸塩はクエン酸三ナトリウムであり、分散剤はポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項21】
穏やかな効能の還元剤は、水素化ナトリウムホウ素であることを特徴とする請求項18記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項22】
金属ナノプリズムは、銀のナノプリズムであることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項23】
金属ナノプリズムは、約580nmから約620nmの波長を有する光を、約24時間から96時間の間、照射されることを特徴とする請求項2記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項1】
金属ナノプリズムを製造する方法であって、
(a)金属塩(i)、少なくとも3つのカルボン酸基を含有するポリカルボン酸塩(ii
)、分散剤(iii)および過酸化水素(iv)を含有する水溶液を調製する工程と、
(b)(a)工程の水溶液に穏やかな効能の還元剤を添加して、所定の厚さの金属ナノプリズムを形成する工程
とを有することを特徴とする金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項2】
金属ナノプリズムの端部長さを増加するために、工程(b)の金属ナノプリズムに対して十分な波長の光を十分な時間照射する工程を有することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項3】
金属塩は、銀の塩であることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項4】
銀の塩の陰イオンは、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、酢酸塩及びこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項3記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項5】
金属塩は、約0.01mMから約0.1mMの濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項6】
ポリカルボン酸塩は、約0.001mMから約3mMの濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項7】
ポリカルボン酸塩は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸塩およびニトリロ三酢酸塩からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項8】
ポリカルボン酸塩は、クエン酸塩であることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項9】
金属塩の濃度対クエン酸塩の濃度の比率は、約1対1から約1対36の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項10】
分散剤は、ポリビニルピロリドン、ビス(パラ−スルホネートフェニル)フェニル−ホスフィン ジポタシウム ジヒドレート、ポリ酢酸ナトリウム、ポリ(エチレンイミン)及びこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項11】
分散剤は、約0.01mMから約1mMの濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項12】
過酸化水素は、約10mMから約100mMの濃度で水溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項13】
穏やかな効能の還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムトリアセトキシ、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素カリウムトリ−sec−ブチル、水素化ホウ素カリウムトリエチル、水素化ホウ素ナトリウムトリ−sec−ブチル、水素化ホウ素リチウムトリエチル、水素化ホウ素リチウムトリ−sec−ブチル、メチルオキサザボロリジン、ジイソピノカンフェイルクロロボラン、メトキシジエチルボラン、ジブチルボロン トリフラート、ジシクロヘキシルボロン トリフラート、ジシクロヘキシルクロロボラン、ボランテトラヒドロフラン錯体、ジメチルスルフィドボラン、ジエチルアニリンボラン、tert−ブチルアミンボラン、モルホリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリエチルアミンボランおよびピリジンボランからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項14】
穏やかな効能の還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項15】
穏やかな効能の還元剤は、約0.3mMから約1mMの濃度で水溶液に添加されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項16】
金属ナノプリズムは、単峰性の粒径分布を有することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項17】
金属ナノプリズムは、約30nmから約40nmの端部長さを有することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項18】
金属ナノプリズムは、約3nmから約10nmの厚さを有し、その厚さは予め定められ、予め定められる厚さは適切な濃度の過酸化水素、適切な濃度の穏やかな効能の還元剤の添加または過酸化水素および還元剤の両方によって達成されることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項19】
水溶液は、
(a)約0.01mMから約0.05mMの金属塩と、
(b)約0.1mMから約0.75mMのクエン酸塩と、
(c)約0.04mMから約0.06mMの分散剤と、
(d)約15mMから約40mMの過酸化水素とを含有することを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項20】
金属塩は銀の塩であり、クエン酸塩はクエン酸三ナトリウムであり、分散剤はポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項21】
穏やかな効能の還元剤は、水素化ナトリウムホウ素であることを特徴とする請求項18記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項22】
金属ナノプリズムは、銀のナノプリズムであることを特徴とする請求項1記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【請求項23】
金属ナノプリズムは、約580nmから約620nmの波長を有する光を、約24時間から96時間の間、照射されることを特徴とする請求項2記載の金属ナノプリズムの製造方法。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図1(b)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【公表番号】特表2008−505252(P2008−505252A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520358(P2007−520358)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/023038
【国際公開番号】WO2006/132643
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(506425620)ノースウエスタン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/023038
【国際公開番号】WO2006/132643
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(506425620)ノースウエスタン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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