説明

扁平形電池

【課題】外装缶に対して、正極材及び負極材のいずれか一方の部材を保持するための台座を固定する扁平形電池において、衝撃を受けても台座から前記一方の部材が外れにくい構成を得る。
【解決手段】扁平形電池(1)は、有底筒状の正極缶(10)(外装缶)と、正極缶(10)の開口を覆うように配置される負極缶(20)(封口缶)と、正極缶(10)と負極缶(20)との間に配置される正極材(41)及び負極材(42)と、正極材(41)及び負極材(42)のいずれか一方の部材を保持しつつ正極缶(10)の内面上に固定される正極リング(44)(台座)と、を備える。正極リング(44)は、前記一方の部材の一部を覆う側壁部(44a)を有し、側壁部(44a)には、前記一方の部材を保持するための突出部(44c)(係止部)が少なくとも一つ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン形電池等の扁平形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有底筒状の外装缶と該外装缶の開口を覆うように配置される封口缶との間に、正極材及び負極材を配置するとともに、該正極材及び負極材のいずれか一方を保持する台座を外装缶に対して固定した扁平形電池が知られている。このような扁平形電池として、例えば特許文献1に開示されるように、正極缶に対して、正極ペレットに固定された正極リングが抵抗溶接もしくはレーザー溶接によって正極缶の内側から溶着された構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−103109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に開示されている構成のように、外装缶(正極缶)に対して、正極材(正極ペレット)を保持する台座(正極リング)を固定する構成の場合、台座内に正極材を装着する前に、台座を外装缶に固定する必要がある。
【0005】
一般的に、正極材は、型枠等を用いて台座内に成形されるが、上述のように台座を外装缶に固定した状態では、台座内での正極材の成形が難しい。そのため、例えば、外装缶に対して固定された台座内に、ブロック状に形成した正極材を配置し、該部材を押し潰すことによって、台座内に正極材を装着する方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、上述のような方法で台座内に正極材を装着した場合、型枠等を用いて台座内に正極材を成形した場合に比べて、台座に対する正極材の密着性が低下する。
【0007】
特に、扁平形電池を、タイヤの空気圧を検出するタイヤ空気圧検出装置用の電源のような強い衝撃が加わる環境下で用いる場合、扁平形電池が受けた衝撃によって、台座から正極材が外れる可能性がある。扁平形電池内で台座から正極材が外れると、正極材と外装缶との接触が不安定になり、扁平形電池の内部抵抗が増大するため、電池性能が大幅に低下する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、外装缶に対して、正極材及び負極材のいずれか一方の部材を保持するための台座を固定する扁平形電池において、衝撃を受けても台座から前記一方の部材が外れにくい構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる扁平形電池は、有底筒状の外装缶と、前記外装缶の開口を覆うように配置される封口缶と、前記外装缶と封口缶との間に配置される正極材及び負極材と、前記正極材及び負極材のいずれか一方の部材を保持しつつ前記外装缶の内面上に固定される台座と、を備え、前記台座は、前記一方の部材の一部を覆う側壁部を有し、前記側壁部には、前記一方の部材を保持するための係止部が少なくとも一つ設けられている(第1の構成)。
【0010】
以上の構成により、外装缶に固定された台座内に、正極材及び負極材のいずれか一方の部材を保持することができる。すなわち、台座の側壁部には、前記一方の部材を保持するための係止部が設けられているため、該係止部によって、前記一方の部材が台座から外れるのを防止できる。
【0011】
したがって、上述の構成により、扁平形電池が衝撃を受けた場合でも、外装缶に固定された台座から前記一方の部材が外れて電池の内部抵抗が増大するのを防止できる。
【0012】
前記第1の構成において、前記係止部は、前記側壁部の台座内方側の面に設けられた突出部及び凹部の少なくとも一方からなり、前記一方の部材は、その外周側で前記係止部と係合するように前記台座内に配置されている(第2の構成)。
【0013】
これにより、台座の側壁部における台座内方側の面に形成された係止部と、一方の部材の外周側とが係合して、該一方の部材を台座内に係止することができる。
【0014】
特に、前記第2の構成において、前記係止部は、前記台座の側壁部をその厚み方向に変形させることにより形成される(第3の構成)。こうすることで、台座の側壁部に係止部を容易に形成することができる。しかも、側壁部を厚み方向に変形させることにより、該側壁部に比較的大きな突出部または凹部が形成されるため、該側壁部に対して一方の部材をより確実に係止させることができる。
【0015】
また、前記第2または第3の構成において、前記一方の部材は、軸線方向に延びる柱状のブロック部材を、該軸線方向が台座の側壁部の高さ方向と一致するように該台座内に配置した状態で、該軸線方向に押し潰すことにより、前記台座内に装着され、前記突出部は、その突出高さが、前記ブロック部材を押し潰したときの該ブロック部材の前記軸線方向と直交する方向への変形量よりも小さい(第4の構成)。
【0016】
これにより、ブロック部材が台座の側壁部に設けられた突出部と干渉するのを防止できる。したがって、台座内にブロック部材を容易に配置することができる。そして、台座内で、軸線方向に延びる柱状のブロック部材を該軸線方向に押し潰すことにより、該台座内に正極材及び負極材のいずれか一方の部材を装着することができる。
【0017】
しかも、上述のような形成方法により、台座の側壁部に設けられた突出部を前記一方の部材の外周側に食い込ませることができる。これにより、前記一方の部材を台座内により確実に保持することができる。
【0018】
さらに、前記第1の構成において、前記係止部は、前記台座の側壁部に設けられた開口部によって構成され、前記台座内に装着される前記一方の部材は、その一部が前記開口部内に位置している(第5の構成)。
【0019】
このように開口部内に前記一方の部材の一部を位置付けることによっても、該一方の部材を台座内に保持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態にかかる扁平形電池は、外装缶に固定される台座の側壁部に、正極材及び負極材のいずれか一方の部材を保持するための係止部を設けた。これにより、扁平形電池に衝撃が加わっても、台座から前記一方の部材が外れるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る扁平形電池の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、正極リングの概略構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、正極リング内にブロック部材を配置した状態を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態2に係る扁平形電池の正極リングの係止構造を拡大して示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態3に係る扁平形電池の正極リングの係止構造を拡大して示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態4に係る扁平形電池の正極リングの係止構造を拡大して示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態5に係る扁平形電池の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態である扁平形電池1の概略構成を示す断面図である。この扁平形電池1は、有底円筒状の正極缶10(外装缶)と、該正極缶10の開口を覆う負極缶20(封口缶)と、正極缶10の外周側と負極缶20の外周側との間に配置されるガスケット30と、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間内に収納される発電要素40とを備えている。扁平形電池1は、正極缶10と負極缶20とを合わせることによって、全体が扁平なコイン状に形成されている。なお、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間内には、発電要素40以外に、非水電解液(図示省略)も封入されている。
【0024】
正極缶10は、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。正極缶10は、円形状の底部11と、その外周に該底部11と連続して形成される円筒状の周壁部12とを備えている。周壁部12は、縦断面視で、底部11に対して垂直に延びるように設けられている。正極缶10は、後述するように、負極缶20との間にガスケット30を挟んだ状態で、周壁部12の開口端側が内側に折り曲げられて、該負極缶20の外周部に対してかしめられている。
【0025】
負極缶20も、正極缶10と同様、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。負極缶20は、円形状の平面部21と、その外周に該平面部21と連続して形成される円筒状の周壁部22とを備えている。この周壁部22も、正極缶10と同様、縦断面視で、平面部21に対して垂直に延びるように設けられている。周壁部22は、該周壁部22の基端部22aに対して径が段状に大きくなる拡径部22bを有している。すなわち、周壁部22には、基端部22aと拡径部22bとの間に段部22cが形成されている。図1に示すように、この段部22cに対して、正極缶10の周壁部12の開口端側が折り曲げられてかしめられている。これにより、正極缶10と負極缶20とが、それらの外周側で接続されている。
【0026】
ガスケット30は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を主成分としており、PPSにオレフィン系エラストマーを含有した樹脂組成物からなる。ガスケット30は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれるように配置される。具体的には、ガスケット30は、リング状のベース部31と、該ベース部31の外周縁から突出する外筒壁32と、該ベース部31の内周縁から該外筒壁32と同じ方向に伸びる内筒壁33とを備えている。本実施形態では、ガスケット30は、ベース部31、外筒壁32及び内筒壁33が一体で形成されている。
【0027】
ガスケット30は、図1に示すように、ベース部31が、正極缶10の底部11の外周側と負極缶20の拡径部22bの開口端との間に挟みこまれるように、正極缶20の内側の底部11上に配置されている。これにより、負極缶20の拡径部22bは、ガスケット30の外筒壁32と内筒壁33との間に位置づけられる。ガスケット30の外筒壁32は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれている。ガスケット30のベース部31及び外筒壁32は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれた状態で、該正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との隙間をシールできるような厚みを有している。
【0028】
このように、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間にガスケット30を配置することにより、該正極缶10と負極缶20とをそれらの外周側で絶縁することができる。また、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間にガスケット30を挟みこんだ状態で、該正極缶10の周壁部12を折り曲げて負極缶20の周壁部22にかしめることにより、該ガスケット30によって正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間を封止することができる。すなわち、ガスケット30は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の段部22cとの間に挟みこまれる外筒壁32、及び、負極缶20の周壁部22の開口端と正極缶10の底部11との間に挟みこまれるベース部31が、それぞれ、シールとして機能する。
【0029】
発電要素40は、正極活物質等を円盤状に成形した正極材41と、負極活物質の金属リチウムまたはリチウム合金を円盤状に形成した負極材42と、不織布製のセパレータ43とを備えている。図1に示すように、正極缶10の内方には正極材41が位置付けられている一方、負極缶20の内方には負極材42が位置付けられている。正極材41と負極材42との間にはセパレータ43が配置されている。
【0030】
正極材41は、正極活物質として二酸化マンガンを含有している。この正極材41は、次のようにして形成される。まず、二酸化マンガンに、黒鉛、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びヒドロキシプロピルセルロースを混合して正極合剤を調整する。そして、後述するように、正極リング44内に正極合剤からなる柱状のブロック部材45を配置した状態で、該ブロック部材45を押し潰すことにより、正極リング44内に正極材41を形成する。なお、正極材41の成形方法は、上述の限りではなく、正極合剤を正極リング44内に充填して加圧成形した後、成形された部材を加熱することによって形成するなど、どのような方法でもよい。
【0031】
正極材41には、該正極材41を保持するように、該正極材41の底面及び側面のそれぞれ一部を覆う正極リング44(台座)が装着されている。この正極リング44は、所定の剛性及び導電性を有するステンレス鋼等によって構成されている。正極リング44は、正極材41の側面に接する円筒状の側壁部44aと、側壁部44aの一端側から該側壁部44aの内方に向かって延びて正極材41の底面に接する円環状のフランジ部44bとが一体形成されたものである。このような構成の正極リング44によって、該正極リング44内の正極材41の径方向及び一端側への変形を規制することができる。そして、正極リング44の側壁部44aの他端側にはフランジ部を設けない構成にすることで、正極材41は、放電時に正極リング44の側壁部44aの他端側へ自由に膨張することができる。よって、放電時に、負極材42の厚みが小さくなっても、正極材41は正極リング44に沿って負極材42側へ膨張するため、該正極材41と負極材42とが離間するのを防止できる。
【0032】
正極リング44は、溶接等によって正極缶10の底部11に固定されている。これにより、正極リング44が正極缶10の底部11から離れるのを防止でき、該正極リング44に保持された正極材41と正極缶10とをより確実に接触させることができる。正極リング44の詳しい構成については後述する。
【0033】
セパレータ43は、ポリブチレンテレフタート製の繊維を素材とする不織布を用いて構成される。このセパレータ43は、扁平形電池1内で非水電解液によって含浸されている。なお、セパレータ43の厚みは、例えば、約0.3〜0.4mm程度である。
【0034】
非水電解液は、プロピレンカーボネイトと1,2−ジメトキシエタンとを混合した溶液にLiClOを溶解した溶液である。
【0035】
上述のような構成の扁平形電池1は、例えば、車両用のタイヤ空気圧センサの電力供給源として用いられる。このタイヤ空気圧センサは、例えばタイヤに設置される。
【0036】
このようなタイヤ空気圧センサに扁平形電池1を用いると、該扁平形電池1は、車両走行時にタイヤが受ける衝撃をほぼそのまま受けることになる。そのため、扁平形電池1は強い衝撃を受けることになる。そうすると、扁平形電池1内の正極リング44に保持されていた正極材41が該正極リング44から外れる可能性がある。正極材41が正極リング44から外れると、正極材41と正極缶10との接触が不安定になり、扁平形電池1の内部抵抗が増大する。そのため、本実施形態では、扁平形電池1の正極リング44を以下のような構成とする。
【0037】
なお、本実施形態では、扁平形電池1の適用例として、タイヤ空気圧センサを挙げているが、これ以外の機器の電力供給源として扁平形電池1を用いてもよい。
【0038】
(正極リングの構成)
正極リング44の詳しい構成を図1及び図2を用いて以下で説明する。
【0039】
図1に示すように、正極リング44は、円筒状の側壁部44aと、該側壁部44aの一端側から内方に向かって延びるフランジ部44bとを有している。これらの側壁部44a及びフランジ部44bは、一体に形成されている。すなわち、正極リング44は、有底円筒状の部材の底面に開口部が形成されたような形状を有している。正極リング44をこのような形状にすることで、内部に正極材41を保持することができる。
【0040】
正極リング44の側壁部44aには、該正極リング44の内方側に位置する内面に、該正極リング44の内方に向かって突出する突出部44c(係止部)が設けられている。この突出部44cは、正極リング44の側壁部44aに周方向に複数(本実施形態では6箇所)設けるのが好ましいが、該側壁部44aに1つだけ設けてもよい。なお、正極リング44の側壁部44aに、複数の突出部44cを設ける場合、該側壁部44aの周方向に均等に突出部44cを設けるのが好ましい。また、正極リング44の側壁部44aを軸線方向に潰して該側壁部44aの内周面に全周に亘って突出部を形成してもよい。
【0041】
突出部44cは、正極リング44の側壁部44aの一部を、該正極リング44の内方へ押し込むことにより形成される。すなわち、本実施形態の場合には、側壁部44aの外周面の周方向6箇所に、突出部44cを形成するために側壁部44aの外周面が内方(側壁部44aの厚み方向)に押し込まれた凹部44dが形成されている。
【0042】
上述の凹部44dは、例えば、正極リング44の内側にピン状のジグを挿入した状態で、該正極リング44の側壁部44aの外周面を該側壁部44aの厚み方向に押圧することにより、形成される。これにより、正極リング44の側壁部44aに、該正極リング44の内方に向かって突出する突出部44cが形成される。なお、前記ジグの外表面には、凹部44dに対応する窪みが形成されていてもよい。これにより、正極リング44の側壁部44aに凹部44dを容易に形成できる。
【0043】
図3に示すように、突出部44cは、突出高さが、後述するように、正極リング44内で円柱状のブロック部材45を正極リング44内で軸線方向に押し潰す際の該ブロック部材45の半径の変形量(軸線方向に直交する方向の変形量)よりも小さくなるように形成されている。なお、前記半径の変形量は、図3における一点鎖線と実線との径方向の間隔に対応するが、この図3は、突出部44cを分かり易く図示するために、実際の寸法比率よりも側壁部44aの厚みや突出部44cのサイズを大きく図示している。
【0044】
ここで、正極リング44内に正極材41を装着する場合、例えば、正極リング44の側壁部44aに凹部44d及び突出部44cを形成した後に、軸線方向が側壁部44の高さ方向と一致するように正極リング44内にブロック部材45を配置する。そして、該正極リング44内でブロック部材45を軸線方向に押し潰すことにより正極材41を正極リング44内に装着する。上述のように、正極リング44の側壁部44aに設ける突出部44cを、突出高さがブロック部材45の半径の変形量よりも小さくなるように形成することで、該突出部44cの突出端部がブロック部材45と干渉するのを防止できる。
【0045】
具体的には、突出部44cは、その突出高さが、ブロック部材45の直径に対して0.5〜5%の値であるのが好ましい。なお、一般的な正極材を構成するペレット状のブロック部材であれば、押し潰した際の直径の変形量は0.5%以上になる。また、上限の5%は、ブロック部材の直径に対する一般的な正極リングの厚み寸法の比率である。
【0046】
上述のように、側壁部44aに内方に突出する突出部44cが設けられた正極リング44内にブロック部材45を配置して、該ブロック部材45を押し潰すことにより、正極材41の外周側を突出部44cに食い込ませることができる。これにより、正極材41を正極リング44の側壁部44aに対してより確実に係止することができる。
【0047】
したがって、上述の構成により、扁平形電池1に大きな衝撃が加わった場合でも、正極リング44の側壁部44aに設けられた突出部44cによって正極材41をより確実に保持することができる。よって、扁平形電池1に大きな衝撃が加わった場合に、正極リング44から正極材41が外れて該扁平形電池1の内部抵抗が大きくなるのを防止できる。
【0048】
(実施形態1の効果)
以上より、この実施形態によれば、正極材41を保持する正極リング44の側壁部44aに、内方に向かって突出する突出部44cを設けたため、扁平形電池1に衝撃が加わった場合でも、正極リング44から正極材41が外れるのを防止できる。これにより、正極リング44から正極材41が外れることによる扁平形電池1の内部抵抗の増大を防止できる。
【0049】
また、突出部44cは、正極リング44の側壁部44aの外周面を該側壁部44aの厚み方向に押圧して凹部44dを設けることにより形成される。これにより、正極リング44の側壁部44aに突出部44cを容易に形成することができる。
【0050】
さらに、突出部44cは、その突出高さが、押し潰されるブロック部材45の半径の変形量よりも小さい。これにより、ブロック部材45を正極リング44内に配置する際に、該ブロック部材45と突出部44cとが干渉するのを防止できる。また、上述の構成にすることで、正極リング44内でブロック部材45を押し潰して正極材41を形成することが可能になるため、該正極材41の外周側に突出部44cを食い込ませることが可能になる。これにより、正極材41を正極リング44の側壁部44aにより確実に係止することができる。
【0051】
[実施形態2]
図4に、本発明の実施形態2に係る扁平形電池の正極リング51の係止部分の構成を示す。この実施形態2の構成は、扁平形電池の正極リング51の内周面に凹部51bを設けた点で実施形態1の構成と異なる。この実施形態2において、実施形態1の構成と同一の部分には同一の符号を付し、以下で異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
具体的には、図4に示すように、正極リング51の側壁部51aには、内周面に凹部51b(係止部)が形成されている。この凹部51bも、上述の実施形態1と同様、側壁部51aの内周面に周方向に等間隔で複数(例えば6箇所)設けるのが好ましい。なお、この実施形態でも、実施形態1と同様、側壁部51aの内周面に凹部51bを1つだけ設けてもよい。また、側壁部51aの内周面全周に亘って凹部を設けてもよい。
【0053】
上述の凹部51bは、正極リング51の側壁部51aの内周面を該側壁部51aの厚み方向に押圧することによって形成される。そのため、該側壁部51aの外周面には突出部51cが形成される。なお、側壁部51aの内周面全周に亘って凹部を設ける場合には、正極リング51の側壁部51aを軸線方向に潰してもよい。
【0054】
上述の構成により、実施形態1と同様、正極リング51内に円柱状のブロック部材を配置して該ブロック部材を軸線方向に押し潰すことで、正極リング51の側壁部51aに設けられた凹部51a内に正極材52の一部が位置する。すなわち、正極リング51内では、突出部52aを有する正極材52が形成される。この突出部52aが、正極リング51の側壁部51aの凹部51bに係止されることで、該正極リング51から正極材52が外れにくくなる。
【0055】
しかも、上述の構成では、正極リング51に内方に突出する部分がないため、該正極リング51内にブロック部材を配置する際に、該ブロック部材と正極リング51とが干渉するのを防止できる。
【0056】
(実施形態2の効果)
以上より、この実施形態によれば、上述の実施形態1と同様、扁平形電池に衝撃が加わった場合でも、正極材52が正極リング51から外れるのを抑制することができる。これにより、正極材52が正極リング51から外れることによる扁平形電池の内部抵抗の増大を防止できる。
【0057】
また、本実施形態のように、正極リング51の側壁部51aの内周面に凹部51bを有する構成とすることで、正極リング51内へのブロック部材の配置が容易になり、該正極リング51内に正極材52を容易に装着することができる。
【0058】
[実施形態3]
図5に、本発明の実施形態3に係る扁平形電池の正極リング61の係止部分の構成を示す。この実施形態3の構成は、正極リング61の側壁部61aに開口部61bを設けた点で上述の実施形態1、2の構成とは異なる。この実施形態3において、実施形態1、2の構成と同一の部分には同一の符号を付し、以下で異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
具体的には、図5に示すように、正極リング61の側壁部61aには、開口部61b(係止部)が形成されている。この開口部61bも、上述の実施形態1と同様、側壁部51aの周方向に複数(例えば6箇所)設けるのが好ましい。なお、この実施形態でも、実施形態1と同様、側壁部61aの内周面に開口部61bを1つだけ設けてもよい。
【0060】
正極リング61の側壁部61aに上述のような開口部61bを設けることにより、上述の実施形態1と同様に正極リング61内でブロック部材を押し潰して正極材62を形成する際に、開口部61b内に正極材62の突出部62aが形成される。これにより、正極材61の突出部62aが、正極リング61の側壁部61aの開口部61bの周縁部分に係止され、正極材61が正極リング61から外れにくくなる。
【0061】
また、上述の実施形態2と同様、上述の構成では、正極リング61に内方に突出する部分がないため、該正極リング61内にブロック部材を配置する際に、正極リング61とブロック部材とが干渉するのを防止できる。
【0062】
なお、開口部61bは、側壁部61aの一部に切り込みを設けて外方へ折り曲げることにより形成してもよい。
【0063】
(実施形態3の効果)
以上より、この実施形態によれば、上述の実施形態1,2と同様、扁平形電池に衝撃が加わった場合でも、正極材62が正極リング61から外れるのを抑制することができる。これにより、正極材62が正極リング61から外れることによる扁平形電池の内部抵抗の増大を防止できる。
【0064】
また、本実施形態のように、正極リング61の側壁部61aに開口部61bを有する構成とすることで、正極リング61内へのブロック部材の配置が容易になり、該正極リング61内に正極材62を容易に形成することができる。
【0065】
[実施形態4]
図6に、本発明の実施形態4に係る扁平形電池の正極リング71の係止部分の構成を示す。この実施形態4の構成は、正極リング71の側壁部71aの一部が内方に折り曲げられて突出している点で上述の実施形態1〜3の構成とは異なる。この実施形態4において、実施形態1〜3の構成と同一の部分には同一の符号を付し、以下で異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
具体的には、図6に示すように、正極リング71の側壁部71aには、該側壁部71aの一部が正極リング71の内方に突出した突出部71b(係止部)が形成されている。この突出部71bは、側壁部71aの一部に切り込みを設けて、内方へ折り曲げることにより形成される。よって、側壁部71aにおいて、折り曲げられて突出部71bとなる部分には、開口部71c(係止部)が形成される。これらの突出部71b及び開口部71cも、上述の実施形態1と同様、側壁部71aに周方向に複数(例えば6箇所)設けるのが好ましい。なお、この実施形態でも、実施形態1と同様、側壁部71aに突出部71b及び開口部71cを1つずつ設けてもよい。
【0067】
正極リング71の側壁部71aに上述のような突出部71b及び開口部71cを設けることにより、上述の実施形態1と同様に正極リング71内でブロック部材を押し潰して正極材72を形成する際に、正極材72の外周側に突出部71bが食い込むとともに、開口部71c内に正極材72の突出部72aが形成される。これにより、正極材72は、その外周側が突出部71bによって係止されるとともに、突出部72aが正極リング71の側壁部71aの開口部71cの周縁部分に係止される。したがって、正極材72は、正極リング71からより確実に外れにくくなる。
【0068】
(実施形態4の効果)
以上より、この実施形態によれば、扁平形電池に衝撃が加わった場合でも、正極リング71の突出部71b及び正極材72の突出部72aによって、正極材72が正極リング71から外れるのをより確実に防止できる。これにより、正極材72が正極リング71から外れることによる扁平形電池の内部抵抗の増大をより確実に防止できる。
【0069】
[実施形態5]
図7に、本発明の実施形態5に係る扁平形電池の概略構成を示す。この実施形態5の構成は、正極リング81の一部が、ガスケット30と正極缶10との間に狭持されている点で上述の実施形態1の構成とは異なる。この実施形態5において、実施形態1の構成と同一の部分には同一の符号を付し、以下で異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
具体的には、正極リング81は、円筒状の側壁部81aの一端側から径方向外方へ突出するフランジ部81bを有している。このフランジ部81bは、側壁部81aの全周から径方向外方へ突出するように、平面視で略円形の外形を有している。
【0071】
フランジ部81bの外周側部分は、ガスケット30のベース部31と正極缶10の底部11との間に挟みこまれている。すなわち、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22とをかしめ固定する際に、正極リング81のフランジ部81bの外周側も一緒に固定される。これにより、正極リング81を正極缶10及び負極缶20に対して固定することができる。
【0072】
上述のような構成の正極リング81にも、上述の実施形態1と同様、側壁部81aの内周面に、正極リング81の内方に向かって突出する突出部81c(係止部)を設ける。この突出部81cに関する説明は、上述の実施形態と同様なので、詳しい説明を省略する。なお、本実施形態では、正極リング81の側壁部81aに、実施形態1と同様の突出部81cを設けているが、この限りではなく、上述の実施形態2〜4の構成を適用してもよい。
【0073】
(実施形態5の効果)
以上より、この実施形態によれば、正極リング81のフランジ部81bを、径方向外方へ突出させるように設けて、ガスケット30と正極缶10の底部11との間に挟み込んだ。これにより、正極リング81を、溶接を用いることなく、正極缶10に対して固定することができる。そして、このような構成においても、実施形態1と同様の突出部81cを設けることにより、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0074】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0075】
前記実施形態1では、正極リング44の側壁部44aの外周面を押圧して凹部44dを形成することにより、該側壁部44aの内周面から内方に向かって突出する突出部44cを形成している。しかしながら、凹部44dを形成することなく側壁部44aの内周面から内方に向かって突出する突出部44cのみを形成してもよい。
【0076】
前記実施形態1、2では、正極リング44,51の側壁部44a,51aの内周面に、突出部44cまたは凹部51bを形成している。しかしながら、正極リングの側壁部の内周面に凹凸を設けてもよいし、凹凸を微細化して該側壁部の表面粗さを、正極材41を保持可能な粗さとしてもよい。正極リングの側壁部の内周面上に凹凸を形成する場合には、それらの凹凸が係止部に対応する。また、側壁部の表面粗さを、正極材41を保持可能な粗さとする場合には、当該表面粗さを有する側壁部の内周面が係止部に対応する。
【0077】
前記各実施形態では、正極缶10及び負極缶20をそれぞれ有底円筒状に形成するとともに、正極リング44,51,61,71,81の側壁部44a,51a,61a,71a,81aを円筒状に形成している。しかしながら、正極缶及び負極缶を有底円筒状以外の有底筒状に形成してもよいし、正極リングの側壁部を円筒以外の筒状に形成してもよい。
【0078】
前記各実施形態では、係止部の例として、側壁部44a,51a,61a,71a,81aに、突出部44c,71b,81c、凹部51b及び開口部61b,71cを形成している。しかしながら、側壁部に対して正極材を係止できる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0079】
前記各実施形態では、正極材41の正極活物質として二酸化マンガンを含有した材料を用いていて、負極材42の負極活物質として金属リチウムまたはリチウム合金を用いている。しかしながら、正極活物質または負極活物質として機能する材料であれば、これ以外のものを正極材41及び負極材42として用いてもよい。
【0080】
前記各実施形態では、正極缶10を外装缶としていて、負極缶20を封口缶としているが、逆に正極缶が封口缶で、負極缶が外装缶であってもよい。この場合には、正極材と負極材の配置も逆になるため、負極材を保持する負極リングが外装缶である負極缶に固定される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明による扁平形電池は、例えばタイヤ空気圧センサなど、強い衝撃を受ける環境下で使用される機器の電池として利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1:扁平形電池、10:正極缶(外装缶)、20:負極缶(封口缶)、40:発電要素、41,52,62,72:正極材、42:負極材、44,51,61,71,81:正極リング(台座)、44a,51a,61a,71a,81a:側壁部、44c,71b,81c:突出部(係止部)、45:ブロック部材、51b:凹部(係止部)、61b,71c:開口部(係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の外装缶と、
前記外装缶の開口を覆うように配置される封口缶と、
前記外装缶と封口缶との間に配置される正極材及び負極材と、
前記正極材及び負極材のいずれか一方の部材を保持しつつ前記外装缶の内面上に固定される台座と、を備え、
前記台座は、前記一方の部材の一部を覆う側壁部を有し、
前記側壁部には、前記一方の部材を保持するための係止部が少なくとも一つ設けられている、扁平形電池。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形電池において、
前記係止部は、前記台座の側壁部における台座内方側の面に設けられた突出部及び凹部の少なくとも一方からなり、
前記一方の部材は、その外周側で前記係止部と係合するように前記台座内に配置されている、扁平形電池。
【請求項3】
請求項2に記載の扁平形電池において、
前記係止部は、前記台座の側壁部をその厚み方向に変形させることにより形成される、扁平形電池。
【請求項4】
請求項2または3に記載の扁平形電池において、
前記一方の部材は、軸線方向に延びる柱状のブロック部材を、該軸線方向が台座の側壁部の高さ方向と一致するように該台座内に配置した状態で、該軸線方向に押し潰すことにより、前記台座内に装着され、
前記突出部は、その突出高さが、前記ブロック部材を押し潰したときの該ブロック部材の前記軸線方向と直交する方向への変形量よりも小さい、扁平形電池。
【請求項5】
請求項1に記載の扁平形電池において、
前記係止部は、前記台座の側壁部に設けられた開口部によって構成され、
前記台座内に配置される前記一方の部材は、その一部が前記開口部内に位置している、扁平形電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−256571(P2012−256571A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130057(P2011−130057)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】