説明

扉ハンドル及び扉構造

【課題】隣り合う扉部材のハンドル取り付け位置のスパンが広くならず、また、扉枠部の一方の側面から他方の側面へ向けて形成する貫通孔を防音材に貫通させずに形成できる扉ハンドル及び扉構造を提供する。
【解決手段】扉枠部111、扉枠部の先端面114近傍において貫通して形成され、かつ扉枠部111の厚さ方向に対してずれた方向へ延びる案内孔117を有する扉部材11、扉枠部111の側面に取り付けられ、相互に扉枠部111の厚さ方向に対してずれた位置、かつ案内孔の開口部118の位置に設置された一対のハンドル部121、各ハンドル部121のハンドル回動軸と同心軸上に設けられた一対の連結部123、連結部123の間に連結され、扉枠部111の厚さ方向に対してずれた方向へ延び、かつ案内孔117の中に設けられたユニバーサルジョイント軸部124を有する扉ハンドル12を備える扉構造10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音扉のように遮音性や密閉性を有する厚みを持った扉構造、及びこれに用いる扉ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防音扉のように厚みを持った扉構造は、図5(a)に示すように、扉枠部51により形成された空隙に防音材52が充填されている。例えば、特許文献1においては、扉枠部により形成された空隙のうち何れか一方の長手面(側面)の略全域に互いに間隔をおいて複数の裏板を設け、他方の長手面と裏板との間に複数の骨材を設け、さらに、残りの空隙に防音材が充填されており、裏板と骨材の構成に特徴を持たせることでデザイン性、遮音性に優れた効果を有する防音扉が開示されている。
【特許文献1】特開2006−97264号公報
【0003】
また、厚みを持った扉構造は、図5(a)に示すように、向かい合う扉枠部先端面において、その間に隙間を確保した状態で、相互に扉開閉時の当接を防止する切欠き部53が扉枠部の厚さ方向に対してずれた方向に向かって端から端まで連続的に形成されている。
【0004】
そして、このような扉構造において、ハンドル軸部61を有した扉ハンドル60が取り付けられる場合、図5(b)に示すように、扉枠部51の一方の側面から防音材52を介して他方の側面へ、扉枠部の厚さ方向と同方向に向けて貫通孔54,55が形成され、当該貫通孔54,55の中に扉枠部の厚さ方向と同方向に延びたハンドル軸部61が設けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、扉枠部51の一方の側面と他方の側面にそれぞれ取り付けられるハンドル部は、貫通孔54,55の開口部の位置に設置されるので、相互に扉枠部の厚さ方向の位置に設けられる。このため、隣り合う扉枠部51を正面から見るとハンドル取り付け位置のスパンが広く、デザイン性を失い、利用者がハンドル操作しにくいという問題がある。また、ハンドル軸部61が防音材52に貫通されているので、遮音性を失うという問題もある。さらに、扉枠部51の貫通孔54の近傍にある防音材52の一部がそこから飛び出してハンドル軸61にからまって扉ハンドル60の動作にも支障をきたすおそれがあるという問題もある。
【0006】
このような問題に着目し、本発明は、防音扉のように厚みを持った扉構造において、隣り合う扉部材のハンドル取り付け位置のスパンが広くならず、また、扉枠部の一方の側面から他方の側面へ向けて形成する貫通孔を防音材に貫通させずに形成することができ、デザイン性や遮音性を失わない扉ハンドル及び扉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は上記のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。本発明の扉ハンドルは、扉枠部の一方の側面と他方の側面にそれぞれ取り付けられ、相互に扉枠部の厚さ方向に対してずれた位置に設置される一対のハンドル部と、前記各ハンドル部のハンドル回動軸と同心軸上に設けられた一対の連結部と、前記連結部の間に連結され、前記扉枠部の厚さ方向からずれた方向へ延びたユニバーサルジョイント軸部とを備えたことを特徴としている。
この構成によれば、ユニバーサルジョイント軸部が扉ハンドルの回動操作により得られる回動力を回動軸の方向から偏角方向に変化させて伝達できるので、扉枠部の一方の側面と他方の側面において取り付けられるハンドル部を相互に扉枠部の厚さ方向に対してずれた位置に設けることができる。これにより、隣り合う扉部材のハンドル取り付け位置のスパンが広くならず、また、扉枠部の一方の側面から他方の側面へ向けて形成する孔を防音材には貫通させずに形成でき、扉構造のデザイン性や遮音性を失わずに扉ハンドルを利用することができる。
【0008】
また、本発明の扉構造は、扉枠部と、前記扉枠部の先端面近傍において前記扉枠部の一方の側面から他方の側面へ向けて貫通して形成され、かつ前記扉枠部の厚さ方向に対してずれた方向へ延びる案内孔とを有する扉部材と、前記扉枠部の一方の側面と他方の側面にそれぞれ取り付けられ、相互に前記扉枠部の厚さ方向に対してずれた位置で、かつ前記案内孔の開口部の位置に設置された一対のハンドル部と、前記各ハンドル部のハンドル回動軸と同心軸上に設けられた一対の連結部と、前記連結部の間に連結され、前記扉枠部の厚さ方向に対してずれた方向へ延び、かつ前記案内孔の中に設けられたユニバーサルジョイント軸部とを有する扉ハンドルとを備えることを特徴としている。
この構成によれば、ユニバーサルジョイント軸部を用いることにより扉枠部の厚さ方向に対してずれた方向へ延びる案内孔の中に設けることができる。また、ユニバーサルジョイント軸部が扉ハンドルの回動操作により得られる回動力を回動軸の方向から偏角方向に変化させて伝達できるので、扉枠部の一方の側面と他方の側面において取り付けられるハンドル部を相互に扉枠部の厚さ方向に対してずれた位置に設けることができる。これにより、隣り合う扉部材のハンドル取り付け位置のスパンが広くならず、また、扉枠部の一方の側面から他方の側面へ向けて形成する孔を防音材には貫通させずに形成でき、扉構造のデザイン性や遮音性を失わずに扉ハンドルを利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の扉ハンドル及び扉構造の一実施の形態を説明する。図1は扉ハンドル及び扉構造の内部状態を示した横断面図である。本実施の形態においては、二枚の扉構造10a,10bを並設し、門柱等の扉取付体に固定された蝶番を中心に開閉できるように設けられている。一方の扉構造10aは可動用、他方の扉構造10bは固定用として用いられる。扉構造10aは、扉部材11a及び扉ハンドル12aを備えている。
【0010】
扉部材11aは、扉枠部111aと、扉枠部111aにより形成された空隙112aに充填された防音材113aと、扉枠部先端面114a近傍において扉枠部の一方の側面115aから他方の側面116aへ向けて貫通して形成され、かつ扉枠部111aの厚さ方向に対してずれた方向(ここでは幅方向にずれた方向)へ延びる案内孔117aとを有している。
【0011】
一方、扉ハンドル12aは、相互に扉枠部111aの厚さ方向に対してずれた位置で、かつ案内孔117aの開口部118aの位置に設置された一対のハンドル部121aと、各ハンドル部121aのハンドル回動軸122aと同心軸上に設けられた一対の連結部123aと、連結部123aの間に連結され、扉枠部111aの厚さ方向に対してずれた方向へ延び、かつ案内孔117aの中に設けられたユニバーサルジョイント軸部124aとを有している。また、連結部123aの先端部分は矩形状を形成し、一方、扉ハンドル12aのハンドル回動軸122aの位置においては連結部123aを嵌着させる矩形上の被嵌着部が形成されている。
【0012】
図1に示すように、隣り合う扉構造10a,10bのハンドル取り付け位置は、それぞれ扉枠部の扉枠部先端面114a近傍の側面に貫通して形成した案内孔の開口部118aの位置にあるので、隣り合う扉構造10a,10bを正面から見るとハンドル取り付け位置は、利用者がハンドル操作しやすい位置にあり、スパンが広くなく、デザイン性を維持できる。また、案内孔117aは、扉枠部111aにのみ形成され、防音材113aには形成されていないので、防音材113aの一部が案内孔117aから飛び出したりせず、遮音性を維持できる。その他、防音材113aの一部がユニバーサルジョイント軸部124aにからまったりすることもなく、扉ハンドル12aの動作に支障をきたすこともない。
【0013】
なお、扉構造10bも、扉構造10aと同様の扉部材11b及び扉ハンドル12bが備えられており、符号111a〜117a、121a〜124aと同様の符号111b〜117b、121b〜124bが備えられている。また、扉構造10a,10bは、向かい合う扉枠部先端面114a,114bにおいて、その間に隙間を確保した状態で、相互に扉開閉時の当接を防止する切欠き部118a,118bが扉枠部の厚さ方向に対してずれた方向に向かって端から端まで連続的に形成されている。図1において示す切欠き部118aは斜め形状、切欠き部118bは「く」の字状をしているが、曲線状や弓形状としても良い。また、扉ハンドル12a,12bとを構成する各部材同士の連結あるいは固定手段は、特に限定されるものではないが、その他、扉部材11a,11b及び扉ハンドル12a,12bの形状、サイズ、材質等は、特に制限されるものではなく、また、扉ハンドル12a,12bを構成する各部材の連結、固定の態様についても特に制限されるものではない。
【0014】
次に、ユニバーサルジョイント軸部124の構成について説明する。図2はユニバーサルジョイント軸部124を示した図である。本実施の形態のユニバーサルジョイント軸部124は、2つのシングルタイプのユニバーサルジョイント1241,1242が連結されている。ここで、シングルタイプのユニバーサルジョイントは、図2の部分拡大図に示すように、回動力を入力する側の軸(以下、入力軸という)に固定する第1ヨーク21、回動力を出力する側の軸(以下、出力軸という)に固定する第2ヨーク22、及び第1ヨーク21および第2ヨーク22を連結するコマ23により構成されている。具体的に、第1ヨーク21とコマ23、及び第2ヨーク22とコマ23は、相互にそれぞれに設けたピン孔にピンを同軸に挿嵌することにより連結されている。また、第1ヨーク21とコマ23に挿嵌したピンと第2ヨーク22とコマ23に挿嵌したピンとは相互に垂直に交差する位置関係にある。これにより、第1ヨーク21は入力軸上にある部材と一体に回動し、第2ヨーク22は出力軸上にある部材と一体に回動し、第1ヨーク21および第2ヨーク22は、それぞれコマ23に対して回動可能な構造になっている。
【0015】
そして、このように構成されるシングルタイプのユニバーサルジョイント1241,1242は、コマ23の軸心の位置において第1ヨーク21(入力軸方向と同一)と第2ヨーク22(出力軸方向と同一)とは偏角(θ)をなしており、第1ヨーク21に入力される入力軸方向からの回動力を偏角(θ)方向に変化させて第2ヨーク22に伝達できる。これにより、一方の扉ハンドル12の回動操作により得られる回動力は、当該回動軸122と同心軸上に設けられた連結部123を介して、例えば、図2に示すユニバーサルジョイント1241の第1ヨーク21に入力され、その回動軸の方向から第1ヨーク21と偏角(θ)をなす第2ヨーク22の方向に変化し、これと同方向のユニバーサルジョイント軸部1242の第2ヨーク22を介し、当該第2ヨーク22と偏角(θ)をなす第1ヨーク21の方向に変化し、これと同方向の他方の連結部123を介して扉ハンドル12に伝達する。なお、偏角(θ)は、回動力を入力軸から出力軸に伝達する制限範囲である許容偏角がある。したがって、ユニバーサルジョイント軸部124は、第1ヨーク21と第2ヨーク22とによりなされる偏角(θ)が許容偏角の状態で案内孔17の中で設けられる必要がある。なお、シングルタイプのユニバーサルジョイントの許容偏角は約35°以下となっている。また、本実施の形態のユニバーサルジョイント軸部124は、2つのシングルタイプのユニバーサルジョイントが連結されたものであるが、シングルタイプのユニバーサルジョイントが多数連結されたものとしても良い。
【0016】
以上、本発明の一実施の形態では、説明の便宜上、最もシンプルな扉構造を例に説明したが、その要旨を逸脱しない範囲で適宜容易に設計可能であり、例えば、グレモン錠等を設けること等は容易に実施できる。
【0017】
また、別の実施の形態として、図3に示すように、扉ハンドル12には、ハンドル操作部に形成された杆連結部41と、当該杆連結部41に連結された杆42と、杆連結部41が連結された扉ハンドル12のハンドル回動軸の上下方向の位置に設けられた回動係合部44とが設けられても良い。一方、扉構造10が取り付けられる扉取付体45には、扉部材11が閉じられた状態の上下の扉側端部の近傍に被係合部48が設けられても良い。このような構成によれば、回動係合部44は、扉ハンドル12の回動操作に従って動作する連結部46により、回動軸部43を中心に回動し、係合部47が被係合部45に係脱する動作を行なう。これにより、扉ハンドル10の回動操作と一体的に施解錠を行うことができ、外観や機能を損ねることなく、扉構造のデザインの多様化を図ることができる。なお、上記構造は扉構造10の面上でなく、内部に設けても良く、適宜容易に設計可能である。
【0018】
さらに、別の実施の形態として、扉ハンドル及び扉構造の形態は、図4に示すように、扉枠部の一方の側面115aから他方の側面116aへ向けて貫通して形成され、かつ扉枠部111aの厚さ方向に対してずれた方向(ここでは高さ方向にずれた方向)へ延びる案内孔117aを設け、当該案内孔117aの中にユニバーサルジョイント軸部124aを有する扉ハンドル124aを設けても良い。これにより、扉構造の遮音性を失わずにデザイン性を向上させて扉ハンドルを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態の扉ハンドル及び扉構造の内部状態を示した横断面図
【図2】本発明の一実施の形態の扉構造に備えるユニバーサルジョイント軸部を示した図
【図3】本発明の別の実施の形態において施解錠手段が設けられた扉構造を正面から見た図
【図4】本発明の別の実施の形態の扉ハンドル及び扉構造の内部状態を示した縦断面図
【図5】(a)従来の厚みを持った扉構造の型を示す横断面図 (b)(a)の扉構造に扉ハンドルが取り付けられた状態を示す横断面図
【符号の説明】
【0020】
10 扉構造
11 扉部材
12 扉ハンドル
111 扉枠部
112 空隙
113 防音材
114 扉枠部先端面
115,116 扉枠部側面
117 案内孔
118 開口部
121 ハンドル部
122 ハンドル回動軸
123 連結部
124 ユニバーサルジョイント軸部
21 第1ヨーク
22 第2ヨーク
23 コマ
41 杆連結部
42 杆
43 回動軸部
44 回動係合部
45 被係合部
46 連結部
47 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠部の一方の側面と他方の側面にそれぞれ取り付けられ、相互に扉枠部の厚さ方向に対してずれた位置に設置される一対のハンドル部と、
前記各ハンドル部のハンドル回動軸と同心軸上に設けられた一対の連結部と、
前記連結部の間に連結され、前記扉枠部の厚さ方向からずれた方向へ延びたユニバーサルジョイント軸部とを備えたことを特徴とする扉ハンドル。
【請求項2】
扉枠部と、前記扉枠部の先端面近傍において前記扉枠部の一方の側面から他方の側面へ向けて貫通して形成され、かつ前記扉枠部の厚さ方向に対してずれた方向へ延びる案内孔とを有する扉部材と、
前記扉枠部の一方の側面と他方の側面にそれぞれ取り付けられ、相互に前記扉枠部の厚さ方向に対してずれた位置で、かつ前記案内孔の開口部の位置に設置された一対のハンドル部と、前記各ハンドル部のハンドル回動軸と同心軸上に設けられた一対の連結部と、前記連結部の間に連結され、前記扉枠部の厚さ方向に対してずれた方向へ延び、かつ前記案内孔の中に設けられたユニバーサルジョイント軸部とを有する扉ハンドルとを備えることを特徴とする扉構造。
【請求項3】
前記扉ハンドルは、前記各ハンドル部の少なくとも一方のハンドル操作部に形成された杆連結部と、前記杆連結部に連結された杆と、前記杆連結部が連結された前記ハンドル部のハンドル回動軸の上下方向の位置に設けられた回動係合部とが設けられ、
前記扉構造が取り付けられる扉取付体は、前記扉部材が閉じられた状態で少なくとも上下いずれかの扉側端部の近傍に被係合部が設けられ、
前記回動係合部は、前記扉ハンドルの回動操作に従って回動し、前記被係合部に対して係合することを特徴とする請求項2に記載の扉構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−180001(P2009−180001A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19734(P2008−19734)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】