説明

扉板の吊り下げ装置

【課題】上部レールに組み込まれるランナーと扉板側に取り付けられるランナーホルダーとを、容易かつ適切に組み付け合わすことができるようにする。
【解決手段】ランナーホルダー2は、扉板D’への取り付け部20と、前方から吊り下げ軸12の頭部13を受け入れる保持凹部21と、溝前端を開放させると共に、保持凹部21の上部に連通した吊り下げ軸12の頭部13の太さよりも溝巾を狭くした吊り下げ軸12の通し溝22とを備えている。保持凹部21内には、保持凹部21内への吊り下げ軸12の頭部13の入れ込みに伴って頭部13に突き当てられて一旦保持凹部21の外方に向けて後退した後、保持凹部21内に頭部13を入れ込み切った位置でこの後退前の位置に弾発状に戻されて頭部13における保持凹部21の入り口側に向けられた側に掛合されるロック片23が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、折り畳み扉などを構成する扉板を、上部レールに沿って移動可能にこの上部レールに吊り下げ状に支持させるために用いられる吊り下げ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドレールに組み込まれるガイドローラを備えたケース体と、扉板に固定されるベースカップ体とからなり、このベースカップ体の嵌合凹部にケース体をはめ込むことに伴ってケース体に形成された嵌合突体の係合段部をベースカップ体の嵌合凹部内に形成された係止段部に係止させてこのはめ込み状態を維持し、もって、取り付け装置を介してガイドレールに扉板を吊り下げ状に支持するようにしたものとして、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
しかるに、かかる取り付け装置は、前記はめ込み状態の維持をケース体の嵌合突体によらしめさせているため、ベースカップ体の嵌合凹部へのケース体のはめ込みに方向性を有するものであった。すなわち、ケース体の嵌合突体がベースカップ体へのこのケース体の入れ込み方向に沿った向きに配されるようにケース体を位置づけさせた状態でしかベースカップ体の嵌合凹部にケース体をはめ込み得ないものであった。
【特許文献1】特許第3367765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、折り畳み扉などを構成する扉板を上部レールに沿って移動可能にこの上部レールに吊り下げ状に支持させるために用いられるこの種の装置において、上部レールに組み込まれるランナーと扉板側に取り付けられるランナーホルダーとを、容易かつ適切に組み付け合わすことができるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、この発明にあっては、扉板の吊り下げ装置を以下の(1)〜(6)の構成を備えたものとした。
(1)折り畳み扉などを構成する扉板を、上部レールに沿って移動可能にこの上部レールに吊り下げ状に支持させる装置であって、
(2)ランナーと、ランナーホルダーとを備えており、
(3)ランナーは、
上部レール内に走行可能に入れ込まれるランナー本体と、
このランナー本体の下部から下方に突き出すように設けられる吊り下げ軸とを有しており、
(4)この吊り下げ軸の下端部には頭部が形成されていると共に、
この吊り下げ軸の軸線を中心として吊り下げ軸又は頭部が回転可能とされており、
(5)ランナーホルダーは、
扉板への取り付け部と、
前方から吊り下げ軸の頭部を受け入れる保持凹部と、
溝前端を開放させると共に、保持凹部の上部に連通した吊り下げ軸の頭部の太さよりも溝巾を狭くした吊り下げ軸の通し溝とを備えており、
(6)しかも、保持凹部内には、この保持凹部内への吊り下げ軸の頭部の入れ込みに伴ってこの頭部に突き当てられて一旦保持凹部の外方に向けて後退した後、この保持凹部内に頭部を入れ込み切った位置でこの後退前の位置に弾発状に戻されてこの頭部における保持凹部の入り口側に向けられた側に掛合されるロック片が備えられている。
【0006】
かかる構成によれば、扉板に取り付け部をもってランナーホルダーを取り付け、かつ、上部レールにランナー本体をこの上部レールに沿って走行可能に組み込ませた後、この上部レールから下方に突き出される吊り下げ軸の頭部をランナーホルダーの保持凹部に入れ込ませることにより、扉板を上部レールに吊り下げ装置を介してこの上部レールに沿って移動可能な状態で吊り下げ状にワンタッチで支持させることができる。
【0007】
すなわち、吊り下げ軸は、その頭部を保持凹部内に入れ込ませた状態で、通し溝に通されることから、この頭部は保持凹部内から上方に抜け出すことがなく、また、この頭部における保持凹部の入り口側に向けられた側にロック片が掛合されることから、この頭部は保持凹部内から前方に抜け出すこともない。
【0008】
また、かかる吊り下げ軸又は頭部は、この吊り下げ軸の軸線を中心として回転可能とされていることから、上部レールに吊り下げられた扉板が折り畳み扉を構成する扉板である場合であっても、この折り畳み扉の折り畳み動作が妨げられることはない。従ってまた、折り畳み扉を構成する二枚の扉板のヒンジによる連結側と反対の側にそれぞれランナーホルダーを備え付けさせた場合には、二枚の扉板の一方を吊り下げるランナーのランナー本体と、これらの他方を吊り下げるランナーのランナー本体とを、この二枚の扉板のヒンジによる連結側と反対の側で挟み付け突き当て合わせるように、この二枚の扉板を閉じ操作することによって、この二枚の扉板のランナーホルダーにそれぞれ対応するランナーの吊り下げ軸を同時に入れ込み保持させるようにすることもできる。
【0009】
また、ロック片は保持凹部側に設けられていることから、吊り下げ軸又はその頭部は前記のように回転可能ではあるが、この吊り下げ軸又は頭部がどの回転位置にあっても、保持凹部に対してこの頭部を入れ込ませるだけでこの頭部にロック片を掛合させてこの頭部を保持させることができ、上部レールに対する扉板の吊り下げ作業を容易かつ円滑に行なえるようにすることができる。すなわち、ランナーの吊り下げ軸の頭部のランナーホルダーの保持凹部への入れ込みに方向性を生じさせることがない。
【0010】
前記ランナーホルダーが、ホルダーベースと、このホルダーベースに設けられたスライド凹部内に上下方向にスライド移動可能に組み込まれたスライダとを有しており、
このホルダーベースに扉板への取り付け部が設けられ、
このスライダに保持凹部と通し溝とが設けられており、
しかも、ホルダーベースのスライド凹部の左右側壁にそれぞれ、セットアップ用掛合部と、このセットアップ用掛合部よりも上方に位置されるプレセット用掛合部とが設けられていると共に、
スライダの左右外側部にそれぞれ、プレセット用掛合部に掛合されると共に、スライダの下方への押し込みによってこの掛合を一旦解いた後セットアップ用掛合部に掛合されて吊り下げ状に支持された扉板の下端レベルを上昇させる被掛合部が設けられているようにしておくこともある。
【0011】
このようにした場合、扉板の下端を床面などに接しさせた状態でランナーホルダの保持凹部にランナーの吊り下げ軸の頭部を入れ込ませ、吊り下げ装置を介して上部レールに扉板を接合させた後、プレセット用掛合部に被掛合部を掛合させていたスライダを下方に移動させてこの被掛合部をセットアップ用掛合部に掛合させ直すように扉板を持ち上げることで、扉板の下端と床面などとの間に前記接合の後に適切にクリアランスを作り出させることができる。すなわち、扉板を持ち上げながら前記接合をなす必要がなく、この接合作業を容易に行うことができる。
【0012】
前記ランナーのランナー本体内に、
このランナー本体内に回転可能に保持されると共に、吊り下げ軸の上端部に形成された雄ネジ部に螺合してこの吊り下げ軸を支持するナット体と、
下方からの操作によって回転されると共に、この回転によってナット体を連れ回りさせて吊り下げ軸を昇降させる回転操作体とを組み込ませておくこともある。
【0013】
このようにした場合、ランナーホルダーの保持凹部にランナーの吊り下げ軸の頭部を入れ込み保持させて上部レールに扉板を吊り下げさせた状態から、吊り下げられた扉板の下端と床などとの間のクリアランスを容易に微調整させることができる。
【0014】
前記ランナーホルダーが、ホルダーベースと、このホルダーベースに設けられたスライド凹部内に上下方向にスライド移動可能に組み込まれたスライダとを有しており、
このホルダーベースに扉板への取り付け部が設けられ、
このスライダに保持凹部と通し溝とが設けられており、
しかも、ホルダーベースに、このホルダーベースの下部にネジ頭を臨ませた状態でこのホルダーベースの下部に回転可能に支持されると共に、スライダに形成されたネジ穴に軸部を螺合させた調整ネジを備えさせておくこともある。
【0015】
このようにした場合、調整ネジのネジ頭にドライバなどの先端をはめ込んで下方からこの調整ネジを回転操作させることにより、スライダを上下動させることができる。そして、これにより、扉板の下端を床面などに接しさせた状態でランナーホルダーの保持凹部にランナーの吊り下げ軸の頭部を入れ込ませ、吊り下げ装置を介して上部レールに扉板を接合させた後、スライダを下方に移動させて扉板を持ち上げることで、扉板の下端と床面などとの間に前記接合の後に適切にクリアランスを作り出させることができる。すなわち、扉板を持ち上げながら前記接合をなす必要がなく、この接合作業を容易に行うことができる。
【0016】
前記保持凹部の入り口縁とロック片との間にあるこの保持凹部の左右側壁および下壁が、入り口縁に向かうに連れて保持凹部を徐々に広げさせるように傾斜した傾斜面を有するようにしておくこともある。
【0017】
このようにした場合、ランナーホルダーの保持凹部に、吊り下げ軸の頭部をスムースに導き入れることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる吊り下げ装置によれば、上部レールに組み込まれるランナーと扉板側に取り付けられるランナーホルダーとを、ランナーホルダーの保持凹部へのランナーに設けられた吊り下げ軸の入れ込みの向きに格別の注意を払うことなく、この保持凹部に吊り下げ軸の頭部を入れ込ませることにより、しっかりと組み付け合わせることができ、折り畳み扉などを構成する扉板を上部レールに沿って移動可能にこの上部レールに吊り下げ状に支持させる作業を容易かつ円滑になすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1ないし図14に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0020】
なお、ここで図1ないし図8は、この発明の実施の形態の一つを、また、図9ないし図14は、この発明の実施の形態の他の一つを、それぞれ表している。
【0021】
具体的には、図1は、吊り下げ装置Tを構成するランナーホルダー2のホルダーベース200とスライダ210とを分離させた状態として、図2ないし図4は、かかるランナーホルダー2をそれぞれ示しており、また、図5および図6は、吊り下げ装置Tを介して上部レールRに扉板D’を吊り下げ状に支持させた状態をそれぞれ示しており、特に、図6は、図5の状態からスライダ210を下降させて扉板D’を持ち上げさせた状態を示している。また、図7は、吊り下げ装置Tを構成するランナー1の要部を断面にした状態でかかるランナー1を示しており、また、図8は、折り畳み扉Dを構成する一対の扉板D’、D’を折り畳み動作させながらそれぞれの扉板D’に取り付けられたランナーホルダー2にランナー1を接続させる様子を理解しやすいように、これらを上方から視て示した構成図である。
【0022】
また、図9は、吊り下げ装置Tを構成するランナーホルダー2を前面側から視た状態として、図10ないし図12は、扉板D’に取り付けられた状態のランナーホルダー2をそれぞれ示しており、また、図13は、ランナーホルダー2を断面の状態として、それぞれ示している。また、図14は、折り畳み扉Dを構成する一対の扉板D’、D’を折り畳み動作させながらそれぞれの扉板D’に取り付けられたランナーホルダー2にランナー1を接続させる様子を理解しやすいように、これらを上方から視て示した構成図である。
【0023】
この実施の形態にかかる吊り下げ装置Tは、折り畳み扉Dなどを構成する扉板D’を、上部レールRに沿って移動可能にこの上部レールRに吊り下げ状に支持させるために用いられるものである。
【0024】
すなわち、かかる吊り下げ装置Tは、建物の開口部やクローゼットの入り口などを閉塞する折り畳み扉Dなどを構成する扉板D’や、部屋の間仕切りを構成する扉板D’などを、この開口部の上部に設けられた上部レールRに沿って移動可能なように、この上部レールRに吊り下げ状に支持させるために用いられるものである。
【0025】
かかる吊り下げ装置Tは、ランナー1と、ランナーホルダー2とを備えている。
【0026】
ランナー1は、
上部レールR内に走行可能に入れ込まれるランナー本体10と、
このランナー本体10の下部から下方に突き出すように設けられる吊り下げ軸12とを有している。
【0027】
また、このランナー本体10の吊り下げ軸12の下端部には頭部13が形成されていると共に、この吊り下げ軸12の軸線を中心として吊り下げ軸12又は頭部13が回転可能とされいる。
【0028】
一方、ランナーホルダー2は、
扉板D’への取り付け部20と、
前方から吊り下げ軸12の頭部13を受け入れる保持凹部21と、
溝前端を開放させると共に、保持凹部21の上部に連通した吊り下げ軸12の頭部13の太さよりも溝巾を狭くした吊り下げ軸12の通し溝22とを備えている。
【0029】
そして、かかる保持凹部21内には、この保持凹部21内への吊り下げ軸12の頭部13の入れ込みに伴ってこの頭部13に突き当てられて一旦保持凹部21の外方に向けて後退した後、この保持凹部21内に頭部13を入れ込み切った位置でこの後退前の位置に弾発状に戻されてこの頭部13における保持凹部21の入り口側に向けられた側に掛合されるロック片23が備えられている。
【0030】
これにより、この実施の形態にかかる吊り下げ装置Tによれば、
扉板D’に取り付け部20をもってランナーホルダー2を取り付け、かつ、上部レールRにランナー本体10をこの上部レールRに沿って走行可能に組み込ませた後、この上部レールRから下方に突き出される吊り下げ軸12の頭部13をランナーホルダー2の保持凹部21に入れ込ませることにより、扉板D’を上部レールRに吊り下げ装置Tを介してこの上部レールRに沿って移動可能な状態で吊り下げ状にワンタッチで支持させることができる。
【0031】
すなわち、吊り下げ軸12は、その頭部13を保持凹部21内に入れ込ませた状態で、通し溝22に通されることから、この頭部13は保持凹部21内から上方に抜け出すことがなく、また、この頭部13における保持凹部21の入り口側に向けられた側にロック片23が掛合されることから、この頭部13は保持凹部21内から前方に抜け出すこともない。
【0032】
また、かかる吊り下げ軸12又は頭部13は、この吊り下げ軸12の軸線を中心として回転可能とされていることから、上部レールRに吊り下げられた扉板D’が折り畳み扉Dを構成する扉板D’である場合であっても、この折り畳み扉Dの折り畳み動作が妨げられることはない。従ってまた、折り畳み扉Dを構成する二枚の扉板D’、D’のヒンジDaによる連結側と反対の側にそれぞれランナーホルダー2を備え付けさせた場合には、二枚の扉板D’、D’の一方を吊り下げるランナー1のランナー本体10と、これらの他方を吊り下げるランナー1のランナー本体10とを、この二枚の扉板D’、D’のヒンジDaによる連結側と反対の側で挟み付け突き当て合わせるように、この二枚の扉板D’、D’を閉じ操作することによって、この二枚の扉板D’、D’のランナーホルダー2にそれぞれ対応するランナー1の吊り下げ軸12を同時に入れ込み保持させるようにすることもできる。(図8、図14)
【0033】
また、ロック片23は保持凹部21側に設けられていることから、吊り下げ軸12又はその頭部13は前記のように回転可能ではあるが、この吊り下げ軸12又は頭部13がどの回転位置にあっても、保持凹部21に対してこの頭部13を入れ込ませるだけでこの頭部13にロック片23を掛合させてこの頭部13を保持させることができ、上部レールRに対する扉板D’の吊り下げ作業を容易かつ円滑に行なえるようにすることができる。すなわち、ランナー1の吊り下げ軸12の頭部13のランナーホルダー2の保持凹部21への入れ込みに方向性を生じさせることがない。
【0034】
こうした観点からは、ランナー1の吊り下げ軸12の頭部13は、吊り下げ軸12の軸線上に軸線を位置させるようにこの吊り下げ軸12に設けられた円盤状体、円柱状体、水平断面を正四角形などの正多角形とした板状体や柱状体、あるいはまた、球中心を吊り下げ軸12の軸線上に位置させた球状体によって構成させることが最適とされる。
【0035】
(第一実施例)
図1ないし図8は、かかる吊り下げ装置Tの具体的な構成例の一つを示している。
【0036】
この例にあっては、ランナー1は、細長いブロック状をなすランナー本体10を有しており、このランナー本体10の長さ方向を上部レールRの延長方向に沿わせるようにして、この上部レールR内にランナー本体10を入れ込ませて上部レールRに走行可能に組み込まれるようになっている。
【0037】
この例にあっては、上部レールRは、開放部を下方に向けた断面略コ字状をなす主体部Raと、この主体部Raの両開放部縁からそれぞれ内方に突き出すレール部Rbとを有している。そして、左右のレール部Rb、Rbの間に形成された隙間Rcを通じてランナー本体10に設けられた吊り下げ軸12が下方に突き出されるようになっている。
【0038】
また、この例にあっては、吊り下げ軸12はランナー本体10の長さ方向ほぼ中程の位置から下方に向けて突き出されていると共に、その両端部にそれぞれ、左右一対の車輪11、11を有しており、この車輪11をもってランナー本体10は上部レールRのレール部Rb上を走行するようになっている。
【0039】
また、この例にあっては、ランナー1のランナー本体10内に、
このランナー本体10内に回転可能に保持されると共に、吊り下げ軸12の上端部に形成された雄ネジ部110に螺合してこの吊り下げ軸12を支持するナット体100と、
下方からの操作によって回転されると共に、この回転によってナット体100を連れ回りさせて吊り下げ軸12を昇降させる回転操作体102とが組み込まれている。
【0040】
具体的には、この例にあっては、ランナー本体10の下部に、前記上部レールRの隙間Rc内に納まるランナー本体10の長さ方向に長く続く隆起部105が形成されていると共に、この隆起部105内に鉛直方向にナット中心軸を配するようにして回転可能にナット体100が保持組み込まれている。そして、このように組み込まれたナット体100に吊り下げ軸12の上端部がネジ付け通されている。ランナー本体10の内部であって、ナット体100の保持位置よりも上方には、吊り下げ軸12の移動用空間106が形成されている。また、隆起部105の一端側には、鉛直方向に回転軸を配するようにしてこの隆起部105内に回転可能に保持組み付けられた回転操作体102が備えられている。この回転操作体102は、隆起部105の下面に軸下端を露出させていると共に、露出端にドライバの先端のはめ込み凹部103を有している。それと共に、この例にあっては、回転操作体102の外面にギア部104が形成され、かつ、ナット体100の外面にギア部101が形成されており、さらに、この回転操作体102とナット体100との間に、回転操作体102のギア部104に噛み合う第一ギア107と、この第一ギア107とナット体100のギア部101とに共に噛み合う第二ギア108とが配されている。この第一ギア107および第二ギア108も回転軸を鉛直方向に配するように前記隆起部内に保持組み付けられている。これにより、この例にあっては、回転操作体102のはめ込み凹部103にドライバなどの先端をはめ込んで下方からこの回転操作体102を回転操作させることにより、ナット体100を回転させて、このナット体100の回転によって吊り下げ軸12を上下に螺動させることができ、これにより、ランナー本体10の下部からの吊り下げ軸12の突き出し寸法を微調整できるようになっている。この突き出し寸法が大きくなればなるほど扉板D’は下降し、突き出し寸法が小さくなればなるほど扉板D’は上昇されることとなる。
【0041】
この結果、この例にあっては、ランナーホルダー2の保持凹部21にランナー1の吊り下げ軸12の頭部13を入れ込み保持させて上部レールRに扉板D’を吊り下げさせた状態から、吊り下げられた扉板D’の下端と床などとの間のクリアランスを容易に微調整させることができる。
【0042】
また、この例にあっては、吊り下げ軸12の頭部13は、吊り下げ軸12の下端部に、この吊り下げ軸12の軸線を中心として回転可能にこの吊り下げ軸12に備え付けられた円盤状体として構成されている。具体的には、この例にあっては、吊り下げ軸12の下端部に円板体111が形成されていると共に、吊り下げ軸12に通されてこの円板体111の上面にカラー下面113を突き当て、かつ、この円板体111の縁部を側方から覆う周回立ち上がり部114をカラー下部に備えたカラー112によって吊り下げ軸12の頭部13を形成させている。すなわち、吊り下げ軸12の軸線を中心としてかかるカラー112が回転されるようになっている。
【0043】
一方、この例にあっては、ランナーホルダー2は、ホルダーベース200と、このホルダーベース200に設けられたスライド凹部201内に上下方向にスライド移動可能に組み込まれたスライダ210とから構成されている。
【0044】
そして、かかるホルダーベース200に扉板D’への取り付け部20が設けられると共に、かかるスライダ210に保持凹部21と通し溝22とが設けられている。
【0045】
この例にあっては、ホルダーベース200は、筒一端を開放させ、この開放された筒一端側を前面とした筒状部202と、この筒状部202の開放部202aの上縁を除く縁部を巡るように続き、かつ、この縁部から側方に張り出したフランジ部203とを有している。そして、かかる筒状部202の内部がスライド凹部201として機能するようになっている。
【0046】
かかるフランジ部203には、止めネジの差し込み穴204が形成されており、扉板D’の上部に形成されたホルダーベース200の筒状部202を納める大きさの取り付け凹部Dbに対し、かかる筒状部202をこの扉板D’の板面にフランジ部203の裏面が突き当てられる位置まで入れ込ませた後、前記差し込み穴204を通じて止めネジを扉板D’に止着させることにより、扉板D’にホルダーベース200が、つまりは、ランナーホルダー2が取り付けられるようになっている。すなわち、図示の例にあっては、かかるフランジ部203が前記取り付け部20として機能されるようになっている。前記取り付け凹部Dbは、典型的には、扉板D’の上部においてこの扉板D’の鉛直方向にある一面において開放されるように形成される。また、扉板D’の上端面には、この取り付け凹部Dbに連通する割溝Dcが形成される。
【0047】
そして、筒状部202の上部には、この筒状部202の内部に連通すると共に、この筒状部202の開放部において外方に連通した割溝202bが形成されており、この割溝202bが前記扉板D’に形成された割溝Dcに連通されるようになっている。
【0048】
一方、スライダ210は、前後寸法を、ホルダーベース200のスライド凹部201の深さとほぼ等しくすると共に、
左右寸法を、このスライド凹部201を形作る左右側壁201a、201a間の寸法とほぼ等しくし、
かつ、上下寸法を、スライド凹部201を形作る上壁201bと下壁201cとの間の寸法よりも小さくするように構成されたスライダ主体211を有している。
【0049】
このスライダ主体211の前面の左右両縁部および下縁部には、これらの縁部から側方に張り出すフランジ212が形成されており、スライダ210はこのフランジ212の背面をホルダーベース200の前面に突き当てるようにしてスライド凹部201に前方から入れ込まれるようになっている。
【0050】
かかるスライダ主体211の前面略中央部に、前記保持凹部21がこのスライダ210の背面に向けて窪み込むように形成されている。図示の例にあっては、かかる保持凹部21は、凹部上壁21aと凹部下壁21bとの間の間隔を前記円盤状をなす頭部13の厚さと略等しいか、これよりやや大きくするように構成されていると共に、凹部左右側壁21c、21c間の間隔をこの頭部13の直径と略等しいか、これよりやや大きくするように構成されている。また、保持凹部21の内奥部の内壁21dを、前記頭部13の円弧に沿うように湾曲させている。また、かかるスライダ主体211の上部に前記通し溝22が形成されている。また、図示の例にあっては、この通し溝22の縁と保持凹部21の入り口縁とが、外方に突き出すリブ213によって縁取られている。図示の例では、保持凹部21の入り口を縁取るリブ213の内面がリブ213の突き出し端に向かうに連れて外広がり状に傾斜した傾斜面213aとなっており、保持凹部21への頭部13の入れ込みをし易いようにしてある。
【0051】
また、図示の例にあっては、前記保持凹部21の凹部下壁21bにロック片23の突き出し開口214が形成されており、この突き出し開口214を通じてロック片23が保持凹部21内に突き出されるようになっている。
【0052】
図示の例では、かかるロック片23は、保持凹部21の凹部下壁21bの下方に形成された動作空間215内にバネ216によって常時上方に向けて付勢された状態で上下動可能に組み込まれたプレート体217の後端部の上部に形成されている。また、図示の例にあっては、スライダ主体211の前面においてこの動作空間215は開放されており、プレート体217の前端部217aがこのスライダ主体211の前面から前方に突き出されるようになっている。図示の例にあっては、このプレート体217の前端部217aを把持して前記バネ216の付勢に抗してプレート体217を下方に押し込ませることにより、ロック片23を下方に引き込ませて、頭部13へのロック片23の掛合を解くことができるようになっている。これにより、一旦吊り下げ装置Tを介して上部レールRに吊り下げ状に支持させた扉板D’の取り外しも容易に行えるようになっている。
【0053】
図示の例では、ロック片23の背面部23aと保持凹部21の内奥部の内壁21dとの間に前記頭部13がほぼガタなく納まるようになっている。このロック片23の背面部23aも頭部13の円弧に沿うように湾曲されている。また、ロック片23の前面部23bは、ロック片23の頂部23cに向かうに連れて次第にロック片23の前後寸法を狭める向きに傾斜した傾斜面を有している。これにより、図示の例にあっては、スライダ主体211の前面側から保持凹部21内に吊り下げ軸12の頭部13を入れ込ませるにあたってこの頭部13へのロック片23の前面部23bの突き当たりにより前記バネ216の付勢に抗してロック片23をスムースに下方に押し下げることができると共に、このように押し下げられたロック片23の頂部23cより先に頭部13における保持凹部21の入り口側に向けられた側部が入り込んだ位置で前記付勢によりロック片23を再び突き出させ、このように突き出されたロック片23によって保持凹部21の内奥部において前記頭部13を安定的に保持するようになっている。
【0054】
また、この例にあっては、前記ホルダーベース200のスライド凹部201の左右側壁201a、201aにそれぞれ、セットアップ用掛合部205と、このセットアップ用掛合部205よりも上方に位置されるプレセット用掛合部206とが設けられていると共に、
スライダ210の左右外側部にそれぞれ、プレセット用掛合部206に掛合されると共に、スライダ210の下方への押し込みによってこの掛合を一旦解いた後セットアップ用掛合部205に掛合されて吊り下げ状に支持された扉板D’の下端のレベルを上昇させる被掛合部218が設けられている。
【0055】
図示の例にあっては、セットアップ用掛合部205は、スライド凹部201を構成する筒状部202の左右側壁201a、201aにそれぞれ形成されたこの筒状部202の筒軸方向に長い、つまり、前後方向に長い割溝205aとして構成されている。左右の割溝205a、205aは同じレベルに位置されている。
【0056】
また、プレセット用掛合部206は、スライド凹部201を構成する筒状部202の左右側壁201a、201aにそれぞれ形成されたこの筒状部202の筒軸方向に長い、つまり、前後方向に長い溝206aとして構成されている。左右の溝206a、206aは同じレベルに位置されている。
【0057】
一方、図示の例にあっては、被掛合部218は、スライダ主体211の保持凹部21の形成レベルよりも下方において、このスライダ主体211の左右外側部から外方に長さ方向に沿った一側部218cをバネ211cの付勢によって突き出させる棒状掛合体218aによって構成されている。
【0058】
具体的には、図示の例にあっては、スライダ主体211の左右にそれぞれ、前後方向に延びる溝211aが形成されていると共に、スライダ主体211の背面側において、この左右の溝211a、211aにそれぞれ連通したバネ収容空間211bが形成されており、この溝211aに長さ方向に沿った他側部に納めた一方の棒状掛合体218aの後端部にかかるバネ211cの一端が常時押し当てられ、かつ、他方の棒状掛合体218aの後端部にかかるバネ211cの他端が常時押し当てられるようになっている。棒状掛合体218aは、このバネ211cの付勢によって前記一側部218cをスライダ主体211の外側部から突き出した位置から先には外れ出さないように前記溝211aに掛合されていると共に、この溝211aは前記付勢に抗して前記一側部218cをこの溝211a内に納める棒状掛合体218aの後退移動を可能とする深さを持つように形成されている。また、棒状掛合体218aの前端部218bは、スライダ主体211の前面から前方に突き出されており、左右の棒状掛合体218a、218aの前端部218bを同時に把持することによりバネ211cの付勢に抗して左右の棒状掛合体218a、218aを同時に後退移動操作させることができるようになっている。
【0059】
そして、図示の例にあっては、スライダ210の左側の棒状掛合体218aの一側部218cをホルダーベース200の左側のプレセット用掛合部206となる溝206aに納め、かつ、スライダ210の右側の棒状掛合体218aの一側部218cをホルダーベース200の右側のプレセット用掛合部206となる溝206aに納めた状態から、(図4、図5)左右の棒状掛合体218a、218aを共に前記付勢に抗して後端移動させながらスライダ210を下方に移動させ切ると、この付勢によりスライダ210の左側の棒状掛合体218aの一側部218cがホルダーベース200の左側のセットアップ用掛合部205となる割溝205aに入り込み、かつ、スライダ210の右側の棒状掛合体218aの一側部218cがホルダーベース200の右側のセットアップ用掛合部205となる割溝205aに入り込み、このスライダ210の下方に移動され切った状態が維持されるようになっている。(図6)
【0060】
これにより、この例にあっては、扉板D’の下端を床面などに接しさせた状態でランナー1ホルダの保持凹部21にランナー1の吊り下げ軸12の頭部13を入れ込ませ、吊り下げ装置Tを介して上部レールRに扉板D’を接合させた後、プレセット用掛合部206に被掛合部218を掛合させていたスライダ210を下方に移動させてこの被掛合部218をセットアップ用掛合部205に掛合させ直すように扉板D’を持ち上げることで、扉板D’の下端と床面などとの間に前記接合の後に適切にクリアランスを作り出させることができる。すなわち、扉板D’を持ち上げながら前記接合をなす必要がなく、この接合作業を容易に行うことができる。
【0061】
なお、図示の例にあっては、棒状掛合体218aの前記のように突き出される一側部218cの上部が水平な掛合面218dとなっている反面、この一側部218cの下部が上方に向かうに連れて次第にこの一側部218cの突き出し量を大きくするように傾斜した傾斜面218eとなっており、プレセット用掛合部206となる溝206aからの棒状掛合体218aの下方への抜き出しがこの傾斜面218eの傾斜によりスムースになされるようにしてあると共に、セットアップ用掛合部205となる割溝205aに一旦入り込んだ棒状掛合体218aがこの割溝205aから予期せず上方に抜き出てしまうことがないようになっている。
【0062】
(第二実施例)
図9ないし図14は、かかる吊り下げ装置Tの具体的な構成例の他の一つを示している。
【0063】
この例にあっても、ランナー1は、細長いブロック状をなすランナー本体10を有しており、このランナー本体10の長さ方向を上部レールRの延長方向に沿わせるようにして、この上部レールR内にランナー本体10を入れ込ませて上部レールRに走行可能に組み込まれるようになっている。
【0064】
この例にあっても、上部レールRは、開放部を下方に向けた断面略コ字状をなす主体部Raと、この主体部Raの両開放部縁からそれぞれ内方に突き出すレール部Rbとを有している。そして、左右のレール部Rb、Rbの間に形成された隙間Rcを通じてランナー本体10に設けられた吊り下げ軸12が下方に突き出されるようになっている。
【0065】
また、この例にあっては、吊り下げ軸12はランナー本体10の長さ方向ほぼ中程の位置から下方に向けて突き出されていると共に、その両端部にそれぞれ、左右一対の車輪11、11を有しており、この車輪11をもってランナー本体10は上部レールRのレール部Rb上を走行するようになっている。
【0066】
また、この例にあっては、吊り下げ軸12は、上端にフランジ130を有しており、ランナー本体10の内部に形成されたこのフランジ130の引っかけ空間120内にこのフランジ130を納めた状態でこの引っかけ空間120に続く貫通穴121を通じてランナー本体10の下部から下方に突き出されている。この例にあっては、かかる貫通穴121の穴軸線を回転中心として吊り下げ軸12が回転されるようになっている。
【0067】
また、この例にあっては、吊り下げ軸12の頭部13は、吊り下げ軸12の下端部に、この吊り下げ軸12の軸線上に軸線を位置させるようにこの吊り下げ軸12に設けられた水平断面を正四角形とした柱状体として構成されている。
【0068】
一方、この例にあっても、ランナーホルダー2は、ホルダーベース220と、このホルダーベース220に設けられたスライド凹部221内に上下方向にスライド移動可能に組み込まれたスライダ230とから構成されている。
【0069】
そして、かかるホルダーベース220に扉板D’への取り付け部20が設けられると共に、かかるスライダ230に保持凹部21と通し溝22とが設けられている。
【0070】
この例にあっては、ホルダーベース220は、プレート体222と、このプレート体222の上部に形成された開放部223に開放された筒一端を連通させるようにして、このプレート体222の背面に一体に連接された筒状部224とを有している。プレート体222の前面にはさらに、上下方向に長い略長方形状をなす内外郭形状を持った枠状隆起部225が形成されており、前記開放部223はこの枠状隆起部225内に位置されている。筒状部224の上部はこの枠状隆起部225の上部に連続している。そして、この例にあっては、かかる筒状部224の内部と前記開放部223の下方に位置される枠状隆起部225の内側とが前記スライド凹部221として機能するようになっている。
【0071】
かかるプレート体222における枠状隆起部225の外側に位置される箇所には、止めネジの差し込み穴226が形成されており、扉板D’の上部に形成されたホルダーベース220の筒状部224を納める大きさの取り付け凹部Dbに対し、かかる筒状部224をこの扉板D’の板面にプレート体222の裏面が突き当てられる位置まで入れ込ませた後、前記差し込み穴226を通じて止めネジを扉板D’に止着させることにより、扉板D’にホルダーベース220が、つまりは、ランナーホルダー2が取り付けられるようになっている。すなわち、図示の例にあっては、かかるプレート体222が前記取り付け部20として機能されるようになっている。前記取り付け凹部Dbは、典型的には、扉板D’の上部においてこの扉板D’の鉛直方向にある一面において開放されるように形成される。また、扉板D’の上端面には、この取り付け凹部Dbに連通する割溝Dcが形成される。
【0072】
そして、筒状部224の上部には、この筒状部224の内部に連通すると共に、この筒状部224の上部に続く枠状隆起部225の上部の前端において外方に連通した割溝224aが形成されており、この割溝224aが前記扉板D’に形成された割溝Dcに連通されるようになっている。
【0073】
一方、スライダ230は、板体231と、この板体231の上部に形成された開放部232に開放された筒一端を連通させるようにして、この板体231の背面に一体に連接された筒状体233とを有している。
【0074】
スライダ230の板体231は、左右寸法を、前記枠状隆起部225の左右枠内寸法とほぼ等しくし、
かつ、上下寸法を、この枠状隆起部225の上下枠内寸法よりも小さくするように構成されている。
【0075】
一方、スライダ230の筒状体233は、左右寸法を、前記ホルダーベース220の筒状部224の左右内壁224b、224b間の寸法とほぼ等しくさせ、
かつ、上下寸法を、このホルダーベース220の筒状部224の上壁224cと下壁224dとの間の寸法よりも小さくするように構成されている。
【0076】
そして、この例にあっては、スライダ230は、ホルダーベース220の筒状部224内にスライダ230の筒状体233を閉塞された筒端を先にして前方から入れ込ませ、かつ、ホルダーベース220の枠状隆起部225内にスライダ230の板体231を前方から入れ込ませることにより、ホルダベースの枠状隆起部225の左右枠部を案内にした上下動可能な状態で、ホルダーベース220に組み合わされている。
【0077】
なお、図示の例にあっては、ホルダーベース220の筒状部224の左右内壁に形成された上下方向に長い窓穴224eに前記入れ込みに伴ってスライダ230の筒状体233の左右外側部に形成された抜け止め突起233aが掛合されると共に、
ホルダーベース220の枠状隆起部225の左右枠部においてそれぞれこの左右枠部の上下方向ほぼ中程の位置に形成された、この左右枠部の基部から突き出し端側に向けて窪み込んだ凹所225aの奥面に、前記入れ込みに伴ってスライダ230の板体231の左右外端部に形成された抜け止め突起231dが掛合されるようになっており、
前記のようにホルダーベース220に組み合わされたスライダ230のこの組み合わせ状態をこれらの掛合によって安定的に維持するようになっている。
【0078】
そして、この例にあっては、スライダ230の筒状体233の内部が前記保持凹部21として機能されるようになっている。
【0079】
図示の例にあっては、かかる保持凹部21は、凹部上壁21aと凹部下壁21bとの間の間隔を前記四角柱状をなす頭部13の長さ寸法と略等しいか、これよりやや大きくするように構成されていると共に、凹部左右側壁21c、21c間の間隔をこの頭部13を構成する背中合わせの向きにある両側面間の寸法と略等しいか、これよりやや大きくするように構成されている。また、保持凹部21の内奥部の内壁21dを、凹部左右側壁21c、21cに直交する向きの壁としている。また、かかるスライダ230の筒状体233の上部に前記通し溝22が形成されている。
【0080】
また、図示の例にあっては、前記保持凹部21の凹部左右側壁21c、21cにそれぞれロック片23の突き出し開口234が形成されており、この突き出し開口234を通じてロック片23が保持凹部21内に突き出されるようになっている。
【0081】
図示の例では、かかるロック片23は、スライダ230の筒状体233の側部とホルダーベース220の筒状部224の左右内壁224b、224bとの間に形成された動作空間235内にバネ236によって常時スライダ230の筒状体233内に入り込む向きに向けて付勢された状態で水平方向に移動可能に組み込まれたブロック体237の後端部に形成されている。
【0082】
図示の例では、ロック片23の背面部23aと保持凹部21の内奥部の内壁21dとの間に前記頭部13がほぼガタなく納まるようになっている。ロック片23の前面部23bは、ロック片23の頂部23cに向かうに連れて次第にロック片23の前後寸法を狭める向きに傾斜した傾斜面を有している。これにより、図示の例にあっては、スライダ主体211の前面側から保持凹部21内に吊り下げ軸12の頭部13を入れ込ませるにあたってこの頭部13へのロック片23の前面部23bの突き当たりにより前記バネ236の付勢に抗してロック片23をスムースに側方に押し込むことができると共に、このように押し込まれたロック片23の頂部23cより先に頭部13における保持凹部21の入り口側に向けられた側部が入り込んだ位置で前記付勢によりロック片23を再び突き出させ、このように突き出されたロック片23によって保持凹部21の内奥部において前記頭部13を安定的に保持するようになっている。
【0083】
また、この例にあっては、前記ホルダーベース220に、このホルダーベース220の下部にネジ頭238aを臨ませた状態でこのホルダーベース220の下部に回転可能に支持されると共に、スライダ230に形成されたネジ穴231cに軸部238bを螺合させた調整ネジ238が備えられている。
【0084】
図示の例にあっては、ホルダーベース220の枠状隆起部225を構成する下枠部225bに、この下枠部225bの下端において外方に開放された調整ネジ238の入れ込み穴225cが形成されていると共に、スライダ230の板体231に、この板体231の下端において外方に開放された調整ネジ238の入れ込み穴231aが形成されている。そして、枠状隆起部225の下枠部225bの入れ込み穴225c内において、調整ネジ238の頭部13が回転可能に保持されるようにしてあると共に、スライダ230の板体231の入れ込み穴231aにナット内空間を連通させるようにこの板体231内に保持されたナット231bによって構成されたネジ穴231cにかかる調整ネジ238の軸部238bを螺合させるようにしている。
【0085】
これにより、この例にあっては、調整ネジ238のネジ頭238aにドライバなどの先端をはめ込んで下方からこの調整ネジ238を回転操作させることにより、スライダ230を上下動させることができる。そして、これにより、扉板D’の下端を床面などに接しさせた状態でランナーホルダー2の保持凹部21にランナー1の吊り下げ軸12の頭部13を入れ込ませ、吊り下げ装置Tを介して上部レールRに扉板D’を接合させた後、スライダ230を下方に移動させて扉板D’を持ち上げることで、扉板D’の下端と床面などとの間に前記接合の後に適切にクリアランスを作り出させることができる。すなわち、扉板D’を持ち上げながら前記接合をなす必要がなく、この接合作業を容易に行うことができる。
【0086】
また、この例にあっては、前記保持凹部21の入り口縁とロック片23との間にあるこの保持凹部21の左右側壁21c、21cおよび下壁21bが、入り口縁に向かうに連れて保持凹部21を徐々に広げさせるように傾斜した傾斜面21eを有している。
【0087】
これにより、この例にあっては、ランナーホルダー2の保持凹部21、つまり、スライダ230の保持凹部21に、吊り下げ軸12の頭部13をスムースに導き入れることができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】ランナーホルダー2の分離斜視図
【図2】同正面図
【図3】同側面図
【図4】図2におけるA−A線断面図
【図5】吊り下げ装置Tの使用状態を示した断面図
【図6】吊り下げ装置Tの使用状態を示した断面図(扉板D’上昇)
【図7】ランナー1の要部断面正面図
【図8】折り畳み扉Dを構成する扉板D’の上部レールRへの取り付けの仕方の一例を示した平面構成図
【図9】吊り下げ装置Tの他の一例を構成するランナーホルダー2を示した斜視図
【図10】同使用状態を示した正面図
【図11】同側面図
【図12】図10におけるB−B線断面図
【図13】図10におけるC−C線相当位置での吊り下げ装置Tの断面図
【図14】折り畳み扉Dを構成する扉板D’の上部レールRへの取り付けの仕方の一例を示した平面構成図
【符号の説明】
【0089】
T 吊り下げ装置
D’ 扉板
R 上部レール
1 ランナー
12 吊り下げ軸
13 頭部
2 ランナーホルダー
20 取り付け部
21 保持凹部
22 通し溝
23 ロック片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み扉などを構成する扉板を、上部レールに沿って移動可能にこの上部レールに吊り下げ状に支持させる装置であって、
ランナーと、ランナーホルダーとを備えており、
ランナーは、
上部レール内に走行可能に入れ込まれるランナー本体と、
このランナー本体の下部から下方に突き出すように設けられる吊り下げ軸とを有しており、
この吊り下げ軸の下端部には頭部が形成されていると共に、
この吊り下げ軸の軸線を中心として吊り下げ軸又は頭部が回転可能とされており、
ランナーホルダーは、
扉板への取り付け部と、
前方から吊り下げ軸の頭部を受け入れる保持凹部と、
溝前端を開放させると共に、保持凹部の上部に連通した吊り下げ軸の頭部の太さよりも溝巾を狭くした吊り下げ軸の通し溝とを備えており、
しかも、保持凹部内には、この保持凹部内への吊り下げ軸の頭部の入れ込みに伴ってこの頭部に突き当てられて一旦保持凹部の外方に向けて後退した後、この保持凹部内に頭部を入れ込み切った位置でこの後退前の位置に弾発状に戻されてこの頭部における保持凹部の入り口側に向けられた側に掛合されるロック片が備えられていることを特徴とする扉板の吊り下げ装置。
【請求項2】
ランナーホルダーが、ホルダーベースと、このホルダーベースに設けられたスライド凹部内に上下方向にスライド移動可能に組み込まれたスライダとを有しており、
このホルダーベースに扉板への取り付け部が設けられ、
このスライダに保持凹部と通し溝とが設けられており、
しかも、ホルダーベースのスライド凹部の左右側壁にそれぞれ、セットアップ用掛合部と、このセットアップ用掛合部よりも上方に位置されるプレセット用掛合部とが設けられていると共に、
スライダの左右外側部にそれぞれ、プレセット用掛合部に掛合されると共に、スライダの下方への押し込みによってこの掛合を一旦解いた後セットアップ用掛合部に掛合されて吊り下げ状に支持された扉板の下端レベルを上昇させる被掛合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の扉板の吊り下げ装置。
【請求項3】
ランナーのランナー本体内に、
このランナー本体内に回転可能に保持されると共に、吊り下げ軸の上端部に形成された雄ネジ部に螺合してこの吊り下げ軸を支持するナット体と、
下方からの操作によって回転されると共に、この回転によってナット体を連れ回りさせて吊り下げ軸を昇降させる回転操作体とが組み込まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の扉板の吊り下げ装置。
【請求項4】
ランナーホルダーが、ホルダーベースと、このホルダーベースに設けられたスライド凹部内に上下方向にスライド移動可能に組み込まれたスライダとを有しており、
このホルダーベースに扉板への取り付け部が設けられ、
このスライダに保持凹部と通し溝とが設けられており、
しかも、ホルダーベースに、このホルダーベースの下部にネジ頭を臨ませた状態でこのホルダーベースの下部に回転可能に支持されると共に、スライダに形成されたネジ穴に軸部を螺合させた調整ネジが備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項3記載の扉板の吊り下げ装置。
【請求項5】
保持凹部の入り口縁とロック片との間にあるこの保持凹部の左右側壁および下壁が、入り口縁に向かうに連れて保持凹部を徐々に広げさせるように傾斜した傾斜面を有していることを特徴とする請求項1又は請求項4記載の扉板の吊り下げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−28833(P2006−28833A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207528(P2004−207528)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】