説明

扉用の施解錠装置及び扉

【課題】ワンドア・ツーロック方式を採用しながら、セキュリティ性を維持したまま正規の利用者の施錠のための操作手順を簡略化する。
【解決手段】主錠101は、第1のデッドハブ105の回転に応じて第1のデッドボルト106による施解錠動作を行ない、補助錠201は、第2のデッドハブ205の回転に応じて第2のデッドボルト206による施解錠動作を行なう。動力伝達機構301は、主錠101が有する第1のデッドハブ105と補助錠201が有する第2のデッドハブ205との間の回転伝達を行なう。動力断続機構303は、主錠101及び補助錠201が共に解錠された状態で主錠101を施錠動作させる場合にのみ動力伝達機構301による回転伝達を可能とし、それ以外の場合には動力伝達機構301による回転伝達を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主錠と補助錠とを有する扉用の施解錠装置、およびこの施解錠装置を装着した扉に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば住宅用扉用の施解錠装置として、一つの扉に二つの錠を装着したワンドア・ツーロック方式の施解錠装置が実用化されている。各錠は、室外側から操作するシリンダ錠と室内側から操作するサムターンとをそれぞれ有している。一般的には、一つの合鍵で二つのシリンダ錠の施解錠が可能である。
【0003】
ワンドア・ツーロック方式の施解錠装置は、ピッキング等の不正解錠を困難にする点で極めて有効である。その反面、ワンロック方式の施解錠装置と比較して、各錠の施解錠に要する工程数が二倍となるので、正規の利用者にとっても操作が面倒である。このためか、利用者によっては、せっかくツーロック方式となっているのに、一つの錠しか施錠しないという運用を採用してしまうこともある。このようなことから、一方の錠の施解錠操作に連動させてもう一方の錠を施解錠するようにした施解錠装置が提案されている。例えば、特許文献1は、扉用の施解錠装置ではなく引戸であるサッシの施解錠装置ではあるが、ワンドア・ツーロック方式の施解錠装置において、二つの錠の施解錠操作を相互に連動させるようにした施解錠装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−013323公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような二つの錠の施解錠操作を相互に連動させる方式の施解錠装置を扉用の施解錠装置に単純に適用すると、一方の錠のシリンダ錠を室外側から解錠させるだけでもう一方の錠も解錠してしまう。これではワンドア・ツーロック方式にする意味が失われ、セキュリティ性が台無しになってしまう。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ワンドア・ツーロック方式を採用しながらも、セキュリティ性を維持したまま正規の利用者の施錠のための操作手順を簡略化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の扉用の施解錠装置は、第1のシリンダ錠及び第1のサムターンに連係して回転する第1のデッドハブの回転運動を第1のデッドボルトに伝達して当該第1のデッドボルトを施解錠動作させる主錠と、前記主錠と垂直方向に並べられ、第2のシリンダ錠及び第2のサムターンに連係して回転する第2のデッドハブの回転運動を第2のデッドボルトに伝達して当該第2のデッドボルトを施解錠動作させる補助錠と、前記第1のデッドハブと前記第2のデッドハブとの間の回転伝達を上下方向に変位するリンクの直線運動を介して行なう動力伝達機構と、前記リンクを、前記第1のデッドハブの回転に応じて変位する第1のリンク部材と前記第2のデッドハブの回転に応じて変位する第2のリンク部材とに分離し、前記第1及び第2のデッドボルトが共に解錠位置にある状態から前記第1のデッドボルトを施錠動作させる方向に前記第1のデッドハブを回転させるときと、前記第1及び第2のデッドボルトが共に施錠位置にある状態から前記第2のデッドボルトを解錠動作させる方向に前記第2のデッドハブを回転させるときとにのみ、前記第1及び第2のリンク部材をそれらの変位方向に当接させて動力伝達を行なう第1の動力断続機構と、前記第1のデッドハブの回転に応じて第1のリンク部材を変位させるよう、前記第1のデッドハブの回転に応じて水平軸周りの規定の円弧上を変位する可動体を前記第1のリンク部材に設けた一対の当接体で上下から挟み、解錠している前記第1のデッドボルトを施錠させる前記第1のデットハブの回転に応じて変位する際の前記可動体が当接する一方の前記当接体を、前記第1のデッドボルトの施錠時には前記可動体の移動軌跡から外れた位置に位置させると共に、前記可動体を当接させる当接面と反対側からの前記可動体のアクセスに応じて当該可動体が前記一対の当接体の間に入り込むまで前記移動軌跡から退避する位置に変位させるようにした第2の動力断続機構と、を備えることで上記課題を解決する。
本発明の扉は、上記施解錠装置を戸先面に埋設することで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主錠と補助錠とを非連動で解錠可能としながら解錠状態である主錠を施錠操作するだけで補助錠も施錠することができ、したがって、セキュリティ性を維持したまま正規の利用者の施錠のための操作手順を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の一形態として、主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に解錠位置にある状態を示す装置全体の側面図。
【図2】(a)は動力断続機構をなす第1のリンク部材の側面図、(b)はその縦断背面図。
【図3】動力断続機構をなす第1のリンク部材が有している第2の動力断続機構の分解斜視図。
【図4】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に解錠位置にある状態から、主錠のサムターンを僅かに施錠方向に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図5】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に解錠位置にある状態から、主錠のサムターンを45度だけ施錠方向に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図6】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に解錠位置にある状態から、主錠のサムターンを45度の位置から更に施錠方向に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図7】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に解錠位置にある状態から、主錠のサムターンを完全に施錠方向に回転させて主錠及び補助錠が共に施錠位置にある状態とした場合を示す装置全体の側面図。
【図8】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、主錠のサムターンを僅かに解錠方向に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図9】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、主錠のサムターンを完全に解錠方向に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図10】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に解錠位置にある状態(図1参照)から、補助錠のサムターンを45度だけ施錠方向に回転させてガードロック機構を使用状態にした状態を示す装置全体の側面図。
【図11】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に解錠位置にある状態(図1参照)から、補助錠のサムターンを完全に施錠方向に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図12】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、補助錠のサムターンを45度だけ解錠方向に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図13】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、補助錠のサムターンを完全に解錠方向に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図14】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、補助錠のサムターンを完全に解錠方向に回転させ、更に主錠のサムターンを45度だけ解錠方法に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図15】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、補助錠のサムターンを完全に解錠方向に回転させ、主錠のサムターンを45度の位置から更に解錠方法に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図16】主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、補助錠のサムターンを完全に解錠方向に回転させ、主錠のサムターンを完全に解錠方法に回転させた状態を示す装置全体の側面図。
【図17】別の実施の一形態として、主錠及び補助錠のサムターンの回転位置と共に、主錠及び補助錠が共に解錠位置にある状態を示す装置全体の側面図。
【図18】主錠を拡大して、動力断続機構をなす第1のリンク部材を示す側面図。
【図19】第1のリンク部材が有する第2の動力断続機構を分解して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態は、主錠101と補助錠201とを備えるワンドア・ツーロック方式の住宅扉用の施解錠装置11への適用例である。以下、実施の一形態を図1〜図16に基づいて説明する。
【0011】
図1は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に解錠位置にある状態を示す装置全体の側面図である。本実施の形態の施解錠装置11は、扉の戸先面(図示せず)に埋設されて使用される。施解錠装置11は、主錠101と補助錠201とが分離された構造を有しており、これらの主錠101と補助錠201とを動力伝達機構301で連結している。主錠101は上方位置に、補助錠201は下方位置に、それぞれ垂直方向に並べられて配置されている。
【0012】
主錠101は、戸先面と同一面となるようにして扉に取り付けられる第1のベースプレート103を備え、この第1のベースプレート103に第1のフレーム104を固定している。第1のベースプレート103と第1のフレーム104とには、各種の構造物が取り付けられている。これらの構造物として、第1のフレーム104には、第1のシリンダ錠(図示せず)及び第1のサムターン102に連係して回転する第1のデッドハブ105と、この第1のデッドハブ105に駆動される第1のデッドボルト106とが取り付けられている。
【0013】
第1のデッドボルト106は、第1のベースプレート103から出没可能なようにスライド自在に取り付けられている。そのための構造として、第1のデッドボルト106にはそのスライド移動方向に長い第1の長孔107が形成され、この第1の長孔107に第1のフレーム104に立設された第1の位置決めピン108が嵌合している。そして、第1のデッドボルト106は、第1の長孔107と嵌合している第1の位置決めピン108と、第1のフレーム104とによって水平方向にスライド自在に支持されている。これにより、第1のデッドボルト106は、第1の位置決めピン108に位置を拘束されながら水平方向にスライド移動自在である。このような第1のデッドボルト106は、その上部に第1の凹部109を形成している。
【0014】
第1のデッドハブ105は、第1のデッドボルト106のスライド移動方向と直交する方向の回転軸を中心に回転自在に取り付けられている。このような第1のデッドハブ105の回転軸の方向は、施解錠装置11が装着される扉(図示せず)の厚み方向となる。第1のデッドハブ105は、第1のデッドボルト106の上部に形成された第1の凹部109に嵌り込む駆動ピン110を有する第1の駆動片111を放射方向に突出させている。そこで、第1のデッドハブ105の回転に応じて第1の駆動片111が変位し、この第1の駆動片111を第1の凹部109に嵌め込んでいる第1のデッドボルト106が第1のベースプレート103から出没するようにスライド移動する。なお、駆動ピン110には第1のデッドハブ105に施錠もしくは解錠方向に付勢力を与えるスプリング(図示せず)が取付けられている。
【0015】
第1のデッドボルト106において、第1のベースプレート103から飛び出た位置は施錠位置であり、第1のベースプレート103に没した位置は解錠位置である。第1のサムターン102は、その摘み102aを垂直向きにすると第1のデッドボルト106を解錠位置に位置付け(図1参照)、その位置から摘み102aを時計方向に90度回して水平向きにすると第1のデッドボルト106を施錠位置に位置付ける(図7参照)。この際、第1のサムターン102の回転角度と第1のデッドハブ105の回転角度とは一致する。したがって、第1のデッドボルト106は、第1のデッドハブ105を90度回転させることによって施解錠される。
【0016】
以上説明した主錠101は、更に、第1のベースプレート103にラッチボルト112を取り付けている。ラッチボルト112は、扉を開閉自在に取り付ける枠体(図示せず)に引っ掛けることができる掛け金であり、扉を閉状態に維持する。
【0017】
補助錠201は、戸先面と同一面となるようにして扉に取り付けられる第2のベースプレート203を備え、この第2のベースプレート203に第2のフレーム204を固定している。第2のベースプレート203と第2のフレーム204とには、各種の構造物が取り付けられている。これらの構造物として、第2のフレーム204には、第2のシリンダ錠(図示せず)及び第2のサムターン202に連係して回転する第2のデッドハブ205と、この第2のデッドハブ205に駆動される第2のデッドボルト206とが取り付けられている。
【0018】
第2のデッドボルト206は、第2のベースプレート203から出没可能なようにスライド自在に取り付けられている。そのための構造として、第2のデッドボルト206にはそのスライド移動方向に長い第2の長孔207が形成され、この第2の長孔207に第2のフレーム204に立設された第2の位置決めピン208が嵌合している。そして、第2のデッドボルト206は、第2のフレーム204によって水平方向にスライド自在に支持されている。これにより、第2のデッドボルト206は、第2の位置決めピン208に位置を拘束されながら水平方向にスライド移動自在である。このような第2のデッドボルト206は、その上部に第2の凹部210を形成している。
【0019】
第2のデッドハブ205は、第2のデッドボルト206のスライド移動方向と直交する方向の軸を中心に回転自在に取り付けられている。このような第2のデッドハブ205の回転軸の方向は、施解錠装置11が装着される扉(図示せず)の厚み方向となる。第2のデッドハブ205は、第2のデッドボルト206の上部に形成された第2の凹部210に嵌り込む第2の駆動片211を放射方向に突出させている。そこで、第2のデッドハブ205の回転に応じて第2の駆動片211が変位し、この第2の駆動片211を第2の凹部210に嵌め込んでいる第2のデッドボルト206が第2のベースプレート203から出没するようにスライド移動する。
【0020】
第2のデッドボルト206において、第2のベースプレート203から飛び出た位置は施錠位置であり、第2のベースプレート203に没した位置は解錠位置である。第2のサムターン202は、その摘み202aを垂直向きにすると第2のデッドボルト206を解錠位置に位置付け(図1参照)、その位置から摘み202aを時計方向に90度回して水平向きにすると第2のデッドボルト206を施錠位置に位置付ける(図7参照)。この際、第2のサムターン202の回転角度と第2のデッドハブ205の回転角度とは一致する。したがって、第2のデッドボルト206は、第2のデッドハブ205を90度回転させることによって施解錠される。
【0021】
ここで、主錠101においては、第1のデッドボルト106の第1の凹部109は、第1のデッドハブ105が有する第1の駆動片111を僅かな遊びをもって嵌合させている。これにより、第1のデッドボルト106は、第1のデッドハブ105の回転に僅かなタイムラグの後に呼応してスライド移動を開始する。
【0022】
これに対して、補助錠201は、第2のデッドボルト206の第2の凹部210と第2のデッドハブ205が有する第2の駆動片211との間に間欠機構212を形成している。間欠機構212は、解錠位置にある第2のデッドボルト206を施錠動作させる第2のデッドハブ205の回転初期領域に第2のデッドボルト206を動作させない無反応領域を形成する。そのための構造として、第2の駆動片211は、第2のベースプレート203の方向に対面する一側面に出現側押圧面211aを形成し、その他側面に没側押圧面211bを形成している。そして、第2の凹部210は、第2の駆動片211の出現側押圧面211aに押される面に出現側受面210aを形成し、第2の駆動片211の没側押圧面211bに押される面に没側受面210bを形成している。出現側受面210aおよび没側受面210bは垂直に切り立っている。また、没側受面210bに連続して円弧面210cが第2の駆動片211の回転弧と同一半径の弧に沿って形成されている。そこで、第2のデッドボルト206は、没側押圧面211bにより没側受面210bが押されることで解錠位置までスライド移動し、出現側押圧面211aに出現側受面210aが押されることで施錠位置までスライド移動する。この際、第2の凹部210と連設する円弧面210cは第2の駆動片211の没側押圧面211bと同一半径の弧に沿って形成されているため、第2の駆動片211が回転し始めても、没側押圧面211bが円弧面210cを摺動している間は第2のデッドボルト206が駆動されない。第2のデッドボルト206は、第2の駆動片211の出現側押圧面211aが第2の凹部210の出現側受面210aに当接して初めて駆動される。こうして、解錠位置にある第2のデッドボルト206を施錠動作させる第2のデッドハブ205の回転初期領域に第2のデッドボルト206を動作させない無反応領域を形成することができる。
【0023】
次いで、補助錠201は、ガードロック機構213を備えている。ガードロック機構213というのは、扉を開閉自在に取り付ける枠体(図示せず)に引っ掛かるガードアーム214を有し、間欠機構212によって形成される無反応領域での第2のデッドハブ205の回転に応じて第2のデッドボルト206の施錠時の突出方向と同一方向にガードアーム214を出現させる機構である。
【0024】
より詳細には、ガードアーム214は、扉の枠体に引っ掛かる連結ピン215が先端部に設けられた平板状部材であり、根元部分の端部はブロック状の基部216に固定されている。ガードアーム214の基部216は、第2のフレーム204に、第2のデッドハブ205の上方位置で第2のデッドハブ205の回転軸と平行な回転軸を中心に回転自在に取り付けられている。したがって、ガードアーム214は、基部216が回転することによって第2のベースプレート203から出没自在となっている。
【0025】
このようなガードアーム214は、第2のベースプレート203の裏面側に形成された収納空間Sに収納され、第2のフレーム204に取り付けられた押圧体217に押されることによって回転し、第2のベースプレート203から出現する。説明の便宜上、収納空間Sに収納された押圧体217の位置を収納位置と呼ぶ。押圧体217は、第2のフレーム204において水平方向に移動自在に取り付けられており、第2のベースプレート203に向けて進退する。押圧体217を進退させる原動力は、第2のデッドハブ205の回転である。つまり、第2のデッドハブ205は、その回転軸を中心に回転するカム円板218を有しており、このカム円板218にはカム溝219が切られている。そして、このカム溝219には、押圧体217に設けられた従動ピン220が嵌合している。第2のデッドハブ205のカム溝219は、第2のデッドボルト206を解錠位置に位置付ける第2のデッドハブ205の回転位置において押圧体217を待機させ、その位置から第2のデッドハブ205が45度回転した時点で押圧体217を第2のベースプレート203に向けて最大限進出させることができるカムプロフィールを有している(図5参照)。そして、カム溝219は、その一端が開口しており、45度回転した位置から第2のデッドハブ205が更に回転した場合、その開口から押圧体217の従動ピン220を脱落させる。第2のデッドハブ205は、カム溝219から脱落した従動ピン220をカム円板218の外周面で位置決めし、45度回転位置から最大回転範囲である90度回転するまで押圧体217を最大進出位置に維持する(図6参照)。ガードアーム214は、押圧体217が最大限進出すると、連結ピン215が扉の枠体に引っ掛かる位置まで第2のベースプレート203から飛び出す。したがって、第2のデッドボルト206が解錠位置に位置する状態で第2のサムターン202を45度回すと、連結ピン215が扉の枠体に引っ掛かる位置までガードアーム214を突出させることができる(図5参照)。
【0026】
押圧体217は、その従動ピン220がカム溝219に沿って移動することから、第2のデッドハブ205の回転に従い進退する。そこで、第2のデッドボルト206を解錠位置に位置付ける位置まで第2のデッドハブ205を回転させれば、押圧体217を元の位置に復帰させることができる。ところが、押圧体217を元の位置に復帰させただけでは、ガードアーム214を収納空間Sに収納される収納位置に復帰させることができない。そこで、補助錠201は、押圧体217とガードアーム214の基部216とを復帰カム221で連動させている。つまり、復帰カム221は、基部216の回転軸と平行な回転軸を中心に回動自在に第2のフレーム204に取り付けられ、一端が押圧体217の後面に接して別の一端が基部216の下面に接するように設けられている。そこで、図1、図4〜図16中、押圧体217にガードアーム214が押されることで基部216が時計方向に回転すると、基部216の下面に押されて復帰カム221も時計方向に回転し、復帰カム221は押圧体217の後面に対する接触状態を維持する。この状態で、押圧体217が元の位置に向けて復帰すると、復帰カム221は押圧体217の後面に押されて反時計方向に回転し、基部216を反時計方向に回転させる。これにより、押圧体217の復帰動作に従動させてガードアーム214を収納位置に復帰させることができる。
【0027】
補助錠201は、更に、安全装置222を備えている。安全装置222は、施解錠装置11が装着された扉(図示せず)が閉じられている場合にのみ主錠101及び補助錠201の施錠動作及びガードロック機構213の動作を可能とし、扉が開かれている場合にはそれらの動作をできないようにするための機構である。つまり、安全装置222は、扉開閉検出スイッチ223とデッドハブ回転規制部材224とを有している。扉開閉検出スイッチ223は、第2のベースプレート203に出没自在に取り付けられている。そして、扉開閉検出スイッチ223は、施解錠装置11が装着される扉(図示せず)が開かれることで第2のベースプレート203から飛び出し、扉が閉じられると第2のベースプレート203に没するよう後退する。
【0028】
デッドハブ回転規制部材224は、図示しないスプリングに付勢されて、図1、図4〜図16中、時計方向に回転する。そして、第2のデッドハブ205のカム円板218から突出する規制ピン225にフック224aを引っ掛け、第2のデッドハブ205の時計方向への回転、つまり、第2のデッドボルト206を施錠方向に駆動し、ガードロック機構213を動作させる方向への回転を規制する。この際、第2のデッドハブ205の時計方向への回転が規制されると、後に詳細を説明する動力伝達機構301によって補助錠201と連結された主錠101においても、第1のデッドボルト106を施錠方向に駆動する第1のデッドハブ105の回転も規制される。これに対して、デッドハブ回転規制部材224は、扉開閉検出スイッチ223の後面に当接する作用部224bを有しており、扉開閉検出スイッチ223の後退に伴い作用部224bが押されて反時計方向に回転する。すると、第2のデッドハブ205の規制ピン225からフック224aが離脱し、第2のデッドハブ205の時計方向への回転規制が解除される。こうして、安全装置222は、施解錠装置11が装着された扉(図示せず)が閉じられた場合、主錠101及び補助錠201の施錠動作及びガードロック機構213の動作を可能とする。
【0029】
動力伝達機構301は、主錠101が有する第1のデッドハブ105と補助錠201が有する第2のデッドハブ205との間の回転伝達を、上下に変位するリンク302の直線運動を介して行なう。つまり、動力伝達機構301は、第1のデッドハブ105及び第2のデッドハブ205の回転運動をリンク302の直線運動に変換する。そこで、第1のデッドハブ105が回転するとリンク302が上下方向に変位し、このリンク302の上下方向の直線運動によって第2のデッドハブ205が回転駆動される。このため、理論上は、第2のデッドハブ205の回転もリンク302を介して第1のデッドハブ105に伝達されるはずであるのに対して、この方向の動力伝達は規制される。こうした規制を行なうのは、動力断続機構303である。動力断続機構303は、動力伝達機構301による回転伝達に回転伝達区間と回転非伝達区間とを選択的に生成する。より詳細には、動力断続機構303は、第1のデッドボルト106及び第2のデッドボルト206が共に解錠位置にある状態(図1参照)から施錠方向への第1のデッドハブ105の回転を第2のデッドハブ205に伝達する場合の回転伝達については回転伝達区間を選択し、それ以外の条件の回転伝達については回転非伝達区間を選択する。以下、動力断続機構303の説明と共に動力伝達機構301について詳細に説明する。
【0030】
動力断続機構303は、第1の動力断続機構331と第2の動力断続機構351とを有している。
【0031】
第1の動力断続機構331は、リンク302を二つに分離する。分離された一方は第1のデッドハブ105に連動する第1のリンク部材302aであり、もう一方は第2のデッドハブ205に連動する第2のリンク部材302bである。第1の動力断続機構331は、第1のリンク部材302aと第2のリンク部材302bとをリンク302の変位方向である垂直方向に接離自在とし、一定の条件でのみ連動させる機構となっている。一定の条件というのは、
(条件1)
第1のデッドボルト106及び第2のデッドボルト206が共に解錠位置にある状態から第1のデッドボルト106を施錠動作させる第1のデッドハブ105の回転の際
(条件2)
第1のデッドボルト106及び第2のデッドボルト206が共に施錠位置にある状態から第2のデッドボルト206を解錠動作させる第2のデッドハブ205の回転の際
のいずれかの場合である。第1のリンク部材302aと第2のリンク部材302bとが当接した状態においては、第1のリンク部材302aと第2のリンク部材302bとの間で相互に動力伝達が可能となる。
【0032】
第2の動力断続機構351は、第1のデッドハブ105と第1のリンク部材302aとを連結させ、第1のデッドハブ105の回転に応じた第1のリンク部材302aへの動力伝達を制御するための機構である。この第2の動力断続機構351は、第1のデッドハブ105に設けた第1の駆動片111に設けた可動ピン352(可動体)を、第1のリンク部材302aに設けた一対の当接体353で上下から挟んだだけの、極めてシンプルな機構である。可動ピン352は、第1のデッドハブ105の回転に応じて水平軸周りの規定の円弧上を変位する。一対の当接体353は、可動ピン352の移動軌跡上に位置している。したがって、第1のデッドハブ105の回転に応じて可動ピン352が変位すると、可動ピン352が当接体353を押して第1のリンク部材302aを垂直方向に変位させる。
【0033】
もっとも、第2の動力断続機構351は、解錠している第1のデッドボルト106を施錠させる第1のデッドハブ105の回転に応じて可動ピン352が変位する際、この可動ピン352が当接する一方の当接体353(以下、可動当接体353aという)を、第1のデッドボルト106が完全に施錠されたときに、可動ピン352の移動軌跡から外れた位置に位置させる。換言すると、第1のデッドボルト106が完全に施錠された状態になると、第1のデッドハブ105の側に設けられた可動ピン352は、可動当接体353aから脱落する(図7参照)。これによって、第2の動力断続機構351は、上記(条件2)では、第1のデッドハブ105と第1のリンク部材302aとの間の動力伝達を遮断する。その結果、動力断続機構303は、上記(条件1)の場合にのみ、換言すると、第1のデッドボルト106及び第2のデッドボルト206が共に解錠位置にある状態(図1参照)から第1のデッドハブ105が施錠方向に回転した場合にのみ、動力伝達機構301を介して第1のデッドハブ105と第2のデッドハブ205との間の回転を伝達し、それ以外の条件の回転伝達については回転を非伝達とすることになる。したがって、主錠101と補助錠201とが共に解錠状態にある条件で、主錠101を施錠した場合にのみ、補助錠201も自動施錠されることになる。
【0034】
前述したように、第1のデッドボルト106が完全に施錠されたとき、第1のデッドハブ105の側に設けられた可動ピン352は、可動当接体353aから脱落する。このとき、第1のデッドボルト106及び第2のデッドボルト206は、共に施錠状態にあるわけであるが(図7参照)、補助錠201を解錠するために第2のサムターン202を反時計方向に回転させると、第2のデッドハブ205も反時計方向に回転して第2のデッドボルト206のみを解錠状態にすることができる(図13参照)。すると、この際、可動ピン352が可動当接体353aから脱落したまま第1のリンク部材302aを上昇させることになるので、可動ピン352は一対の当接体353の間の位置から外れ、可動当接体353aよりも下方に位置付けられることになる。このときに困るのが、主錠101も解錠しようとして第1のサムターン102を反時計方向に回転させた場合である。この場合、第1のデッドハブ105も反時計方向に回転するので、可動ピン352が上昇する。ところが、この際の可動ピン352の移動軌跡上には可動当接体353aが位置し、可動ピン352の移動を妨げる。そこで、本実施の形態では、可動当接体353aを出没自在とし、可動ピン352を当接させる可動当接面353a−1(当接面)と反対側からの可動ピン352のアクセスに応じて可動ピン352が一対の当接体353の間に入り込むまで、可動当接体353aを可動ピン352の移動軌跡から退避させるようにしている(図13〜図15参照)。
【0035】
以上説明したような機能を有する動力断続機構303について、その構造をより詳細に説明する。
【0036】
まず、第1の動力断続機構331の構造について説明する。
【0037】
第1のリンク部材302aは、第2のリンク部材302bにスライド自在に保持されている。つまり、第2のリンク部材302bは、側面から見るとコの字形状をした支持体332をその端部に備え、この支持体332で第1のリンク部材302aの端部をスライド自在に保持している。第1のリンク部材302aは、その下方の位置に当接部333を有している。当接部333は、第1のリンク部材302aの変位方向と直交する平面である。第2のリンク部材302bの側の支持体332は、当接部333を当接させることができる当接面334を形成している。したがって、第1の動力断続機構331は、第1のリンク部材302aと第2のリンク部材302bとを相互にスライド移動自在に連結し、当接面334に当接部333が当接する状態と当接面334から当接部333が離反する状態とを生成する。このような当接面334に対する当接部333の接離は、前述した第1のリンク部材302aと第2のリンク部材302bとの間の接離をなす。
【0038】
第2のリンク部材302bは、第1のリンク部材302aとの連結側と反対側の端部において、ラックアンドピニオン機構335を介して第2のデッドハブ205と連結している。つまり、第2のリンク部材302bは、第1のリンク部材302aとの連結側と反対側の端部に、第2のデッドハブ205と対面させてラック336を形成している。第2のデッドハブ205は、その外周面の一部にラック336に噛合するピニオン337を形成している。
【0039】
次いで、第2の動力断続機構351の構造について、図2(a)、(b)及び図3を参照しながら説明する。
【0040】
図2(a)は、動力断続機構303をなす第1のリンク部材302aの側面図である。図2(b)は、その縦断背面図である。第1のリンク部材302aは、基体304とスライド連結部305とを一体に成形した樹脂成形品である。このようなスライド連結部305は、一例として、樹脂を材料とする射出成形によって製造される。このような第1のリンク部材302aのうち、第2のリンク部材302bにスライド自在に保持されるのは、スライド連結部305の部分であり、このスライド連結部305は基体304の下端側に形成されている。基体304は、その下端面を当接部333としており、第2のリンク部材302bの当接面334との当接に供される。このような基体304は、中央部分に複数個のリブ306を有している。これらのリブ306は、第1のリンク部材302aの強度を維持している。
【0041】
第2の動力断続機構351の重要な構成要素である前述した一対の当接体353は、基体304の上部に設けられている。一方の当接体353は、可動当接体353aとして、基体304の先端部底面に出没自在に設けられている。もう一方の当接体353は、基体304の上端を形成する壁によって形成された固定構造物である。こちらの方の当接体353を固定当接体353bと呼ぶ。可動当接体353aと固定当接体353bとの互いに対面する面は、それぞれ、可動当接面353a−1及び固定当接面353b−1となっており、これらの間の部分に第1のデッドハブ105の側に設けられた可動ピン352を位置付ける。
【0042】
図3は、動力断続機構303をなす第1のリンク部材302aが有している第2の動力断続機構351の分解斜視図である。図3に示すように、固定当接体353bと対をなす可動当接体353aは、第1のリンク部材302aの基体304と別体に形成された駒状のものであり、基体304に回転自在に取り付けられている。つまり、基体304には、固定当接体353bの近傍に位置させて、可動当接体353aを取り付けるための取付孔307が形成されている。この取付孔307は、固定当接体353bには連絡しておらず、この固定当接体353bとの間の部分にストッパ保持片308を形成している。基体304の側壁は、取付孔307の形成によって縁部分が外部に露出しており、この縁部分に一対の軸ホルダ309が形成されている。これらの軸ホルダ309は、可動当接体353aに形成された回転軸354を回転自在に保持するためのもので、開口部309aがやや絞られたU字形状に形成されている。開口部309aがやや絞られているのは、保持した可動当接体353aの回転軸354を抜け止めするためである。したがって、開口部309aの直径は、回転軸354の直径よりも僅かに小径に形成されている。このため、回転軸354を小径の開口部309aに通すための工夫が必要となる。この工夫が、一対の取付孔307に隣接して基体304の側壁に形成された一対の逃し溝310である。これらの逃し溝310は、軸ホルダ309の開口部309aに回転軸354を通すに際して、基体304の側壁を撓ませ、軸ホルダ309に対する回転軸354の差し込みを容易にする。
【0043】
可動当接体353aは、一面側に可動当接面353a−1を有し、反対の面側に傾斜面353a−2を有している。可動当接面353a−1は垂直に切り立ち、傾斜面353a−2はなだらかな曲面を描いている。可動当接面353a−1の根元には、この可動当接面353a−1と直交方向に延びるストッパ片355が形成されている。傾斜面353a−2の根元には、可動当接体353aの回転軸354が形成されている。回転軸354は、可動当接体353aの両側部よりも外側方向に突出している。
【0044】
可動当接体353aを第1のリンク部材302aに取り付けるには、まず、取付孔307から臨む基体304の底面に形成されたばね孔311に、圧縮コイルスプリングである弾性部材356をセットする。次いで、固定当接体353bの方向にストッパ片355を向け、このストッパ片355を取付孔307に差し込み、ストッパ保持片308の裏側に位置付ける。そして、可動当接体353aの回転軸354を軸ホルダ309に差し込む。これによって、可動当接体353aは、回転軸354を中心に回転自在に第1のリンク部材302aに保持され、弾性部材356によって第1のリンク部材302aから飛び出す方向に付勢され、ストッパ片355がストッパ保持片308に位置規制されることで飛び出しが規制される。そして、可動当接体353aを押すと、可動当接体353aは弾性部材356の付勢力に抗して奥に引っ込む。
【0045】
ここで、図1に示すように、可動当接体353aにおいて、その可動当接面353a−1の位置とその回転軸354の位置とは、第1のリンク部材302aの長手方向にずれている。つまり、可動当接体353aは、可動当接面353a−1から第1のリンク部材302aの長手方向にオフセットした位置で回転自在に第1のリンク部材302aに取り付けられている。このようなオフセット配置の技術的意義については後述する。
【0046】
また、可動当接体353aの回転軸354の軸方向は、可動ピン352の回転軸である第1のデッドハブ105の回転軸方向と直交する方向に定められている。これにより、可動ピン352の移動軌跡と可動当接体353aの移動軌跡とが交差方向になる。このような可動当接体353aの取り付け方向の技術的意義については後述する。
【0047】
このような構成において、本実施の形態の施解錠装置11は、所定の条件でのみ、主錠101を施錠操作すると補助錠201も自動的に施錠することができる。これを実現するのが、主錠101の第1のデッドボルト106を施解錠するための第1のデッドハブ105の回転を補助錠201の第2のデッドボルト206を施解錠するための第2のデッドハブ205に回転伝達するための動力伝達機構301である。そして、動力伝達機構301での動力伝達を所定の条件に限定するのが、動力断続機構303である。表1は、主錠101と補助錠201との現在の状態とこの現在の状態からの状態遷移に際して、動力断続機構303をなす第1の動力断続機構331と第2の動力断続機構351との動力伝達状態とこれに対応する主錠101と補助錠201との間の連動状態とを対応させて示している。表1は、これに合わせて、対応する図面の図番も表記している。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、主錠101の第1のデッドハブ105と補助錠201の第2のデッドハブ205とを動力伝達機構301を介して連動させることができるのは、主錠101と補助錠201とが共に解錠状態である場合に、主錠101を施錠操作した場合のみである。したがって、本実施の形態の施解錠装置11は、
(1)主錠101を施錠操作すると補助錠201も自動的に施錠することができる。
(2)施錠されている主錠101、補助錠201を解錠する際には、両者非連動となる。
(3)補助錠201は主錠101と非連動で施解錠することができる。
という特徴を有している。以下、各図に基づいて作用効果を説明する。
【0050】
図1は、表1中のパターン1の状態を示している。つまり、主錠101及び補助錠201とも解錠された状態にある。
【0051】
図4は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に解錠位置にある状態から主錠101の第1のサムターン102を僅かに施錠方向に回転させた状態を示している(表1中、パターン1の「主錠→施錠」参照)。これにより、第1のデッドハブ105の第1の駆動片111は、第1の凹部109における嵌合遊び分だけ回転する。このため、第1のデッドボルト106は駆動させず、解錠状態を維持する。また、第1のデッドハブ105の第1の駆動片111が僅かに時計方向に回転し、この第1の駆動片111に設けられた可動ピン352が固定当接体353bの固定当接面353b−1に接する位置から可動当接体353aの可動当接面353a−1に接する位置に変位する。これにより、可動ピン352が第1のリンク部材302aを押し下げる準備が整う。
【0052】
図5は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に解錠位置にある状態から主錠101の第1のサムターン102を45度だけ施錠方向に回転させた状態を示している(表1中、パターン1の「主錠→施錠」参照)。第1のサムターン102を45度まで回すと、第1のデッドハブ105も45度回転する。すると、第1のデッドボルト106が第1の駆動片111に駆動されて施錠方向に変位する。但し、完全に施錠状態にはならない。また、第1のデッドハブ105が45度回転すると、可動ピン352が可動当接体353aの可動当接面353a−1に当接して第1のリンク部材302aを押し下げる。
【0053】
すると、第1のリンク部材302aの端部に設けられている当接部333が第2のリンク部材302bに設けられている当接面334に当接し、第2のリンク部材302bを押し下げる。これにより、第2のリンク部材302bの直線運動がラックアンドピニオン機構335によって回転運動に変換され、第2のデッドハブ205が回転駆動される。
【0054】
この際、第2のデッドハブ205は45度だけ回転する。このため、第2の駆動片211は第2の凹部210内を変位し、第2のデッドボルト206を駆動することがない。したがって、第2のデッドボルト206は解錠状態を維持する。
【0055】
これに対して、第2のデッドハブ205の45度の回転によって、ガードロック機構213が動作する。つまり、収納位置に位置するガードアーム214が第2のベースプレート203から飛び出し、施解錠装置11が装着されている扉の枠体(図示せず)に引っ掛かる。このようなガードロック機構213の作用については、前述したとおりである。
【0056】
図6は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に解錠位置にある状態から、主錠101の第1のサムターン102を45度の位置から更に施錠方向に回転させた状態を示している(表1中、パターン1の「主錠→施錠」参照)。図6に示すように、第1のサムターン102を45度の位置から更に施錠方向に回すと、第1のデッドハブ105も45度の位置から更に回転する。これにより、可動ピン352が可動当接体353aの可動当接面353a−1に当接して第1のリンク部材302aを更に押し下げる。ただし、ここで重要なことは、第1のサムターン102を完全に施錠方向に回転させない限り、可動当接体353aの可動当接面353a−1から可動ピン352が脱落しないということである。このことについては、図7に基づいて、次に詳しく説明する。
【0057】
図7は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に解錠位置にある状態から主錠101の第1のサムターン102を完全に施錠方向に回転させて主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態とした場合を示している(表1中、パターン1の「主錠→施錠」、パターン4参照)。第1のサムターン102を90度まで回すと、第1のデッドハブ105も90度回転する。すると、第1のデッドボルト106が第1の駆動片111に駆動されて施錠方向に更に変位し、完全に施錠状態となる。また、第1のデッドハブ105が90度回転すると、可動ピン352が可動当接体353aの可動当接面353a−1に当接して第1のリンク部材302aを押し下げ、最終的に可動ピン352が可動当接面353a−1から脱落する。これは、可動ピン352の移動軌跡と第1のリンク部材302aの変位に応じた可動当接面353a−1の位置との関係によって実現される。
【0058】
この際、第1のリンク部材302aの端部に設けられている当接部333が第2のリンク部材302bに設けられている当接面334を更に押し下げる。これにより、第2のリンク部材302bの直線運動がラックアンドピニオン機構335によって回転運動に変換され、第2のデッドハブ205が更に回転駆動される。ここに至って、第2の駆動片211の出現側押圧面211aが第2の凹部210の出現側受面210aを押すことで第2のデッドボルト206が駆動され、第2のデッドボルト206は解錠状態から施錠状態に状態遷移する。
【0059】
以上、図1、図4〜図7を参照して説明したように、主錠101及び補助錠201が共に解錠状態である場合には、主錠101を施錠させると補助錠201も自動的に施錠することができる。したがって、正規の利用者の施錠のための操作手順を簡略化することができる。
【0060】
図8は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態(図7参照)から主錠101の第1のサムターン102を僅かに解錠方向に回転させた状態を示している(表1中、パターン4の「主錠→解錠」参照)。これにより、第1のデッドハブ105の第1の駆動片111は、第1の凹部109における嵌合遊び分だけ回転する。このため、第1のデッドボルト106は駆動させず、施錠状態を維持する。また、第1のデッドハブ105の第1の駆動片111が僅かに反時計方向に回転し、可動当接体353aの可動当接面353a−1から脱落していた可動ピン352が可動当接体353aを超えて固定当接体353bの固定当接面353b−1に近接するまで変位する。この際、可動ピン352は、再び、可動当接体353aと固定当接体353bとの間に挟まれた状態を維持し、第1のリンク部材302aを押し上げる準備が整う。
【0061】
図9は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態(図7参照)から主錠101の第1のサムターン102を完全に解錠方向に回転させた状態を示している(表1中、パターン4の「主錠→解錠」、パターン2参照)。第1のサムターン102を解錠位置まで90度回すと、第1のデッドハブ105も90度回転する。すると、第1のデッドボルト106が第1の駆動片111に駆動されて解錠方向に変位し、完全に解錠状態となる。
【0062】
また、第1のデッドハブ105が90度回転すると、第1の駆動片111に設けられている可動ピン352が固定当接体353bの固定当接面353b−1に当接し、第1のリンク部材302aを押し上げる。
【0063】
図10は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に解錠位置にある状態(図1参照)から補助錠201の第2のサムターン202を45度だけ施錠方向に回転させてガードロック機構213を使用状態にした状態を示している(表1中、パターン1の「補助錠→施錠」参照)。これにより、ガードロック機構213を使用状態にすることができる。この点については前述した通りなので、これ以上の説明は省略する。
【0064】
これに対して、第2のサムターン202の回転に伴い第2のデッドハブ205も45度だけ回転するわけであるが、この際、第2の駆動片211は第2の凹部210内を変位し、第2のデッドボルト206を駆動することがない。したがって、第2のデッドボルト206は解錠状態を維持する。
【0065】
また、第2のデッドハブ205の45度の回転はラックアンドピニオン機構335を介して第2のリンク部材302bに伝達され、第2のリンク部材302bを下方に変位させる。ところが、この際、第2のリンク部材302bに設けられている当接面334は、第1のリンク部材302aに設けられている当接部333から離反するのみである。したがって、第2のデッドハブ205の回転は第1の動力断続機構331において非伝達状態となり、第1のデッドハブ105に伝達されない。
【0066】
図11は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に解錠位置にある状態(図1参照)から補助錠201の第2のサムターン202を完全に施錠方向に回転させた状態を示している(表1中、パターン1の「補助錠→施錠」、パターン2参照)。こうして第2のサムターン202を完全に施錠方向に回転させたとしても、ガードロック機構213は使用状態のままであるが、デッドボルト206が突出して施錠状態が維持される。この点については前述した通りなので、これ以上の説明は省略する。
【0067】
これに対して、第2のサムターン202の回転に伴い第2のデッドハブ205が45度回転した位置から更に45度回転すると、第2の駆動片211の出現側押圧面211aが第2の凹部210の出現側受面210aを押すことで第2のデッドボルト206が駆動され、第2のデッドボルト206は解錠状態から施錠状態に状態遷移する。
【0068】
また、第2のデッドハブ205の回転はラックアンドピニオン機構335を介して第2のリンク部材302bに伝達され、第2のリンク部材302bを下方に変位させる。ところが、この際、第2のリンク部材302bに設けられている当接面334は、第1のリンク部材302aに設けられている当接部333から更に離反するのみである。したがって、第2のデッドハブ205の回転は第1の動力断続機構331において非伝達状態となり、第1のデッドハブ105に伝達されない。
【0069】
図12は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態(図7参照)から補助錠201の第2のサムターン202を45度だけ解錠方向に回転させた状態を示している(表1中、パターン4の「補助錠→解錠」参照)。こうして第2のデッドハブ205が45度回転すると、第2の駆動片211の没側押圧面211bが第2の凹部210の没側受面210bを押すことで第2のデッドボルト206が駆動され、第2のデッドボルト206は施錠状態から解錠状態に状態遷移する。
【0070】
これに対して、第2のデッドハブ205の回転はラックアンドピニオン機構335を介して第2のリンク部材302bに伝達され、第2のリンク部材302bを上方に変位させる。この際、第2のリンク部材302bに設けられている当接面334は、第1のリンク部材302aに設けられている当接部333に接しているので、第1のリンク部材302aを押し上げる。ところが、主錠101が施錠状態である場合、第1のデッドハブ105の第1の駆動片111に設けられている可動ピン352が可動当接体353aの可動当接面353a−1から脱落している(図7参照)。このため、第2のリンク部材302bの上昇に応じて第1のリンク部材302aが押し上げられたとしても、第1のリンク部材302aと第1のデッドハブ105との間の動力伝達が遮断される。したがって、第2のデッドハブ205の回転は第1のデッドハブ105に伝達されない。
【0071】
図13は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態(図7参照)から補助錠201の第2のサムターン202を完全に解錠方向に回転させた状態を示している(表1中、パターン4の「補助錠→解錠」、パターン3参照)。これにより、第2のデッドハブ205が更に45度回転し、第2の凹部210と連設する円弧面210cは第2の駆動片211の没側押圧面211bと同一半径の弧に沿って形成されているため、第2の駆動片211が回転しても、第2の駆動片211は円弧面210cを摺動し、第2のデッドボルト206が駆動されない(無反応領域)。また、ガードアーム214が収納空間Sに収められる。
【0072】
そして、第2のデッドハブ205の回転はラックアンドピニオン機構335を介して第2のリンク部材302bに伝達され、第2のリンク部材302bを更に上方に変位させる。この際、第2のリンク部材302bに設けられている当接面334は第1のリンク部材302aに設けられている当接部333に接しているので、第1のリンク部材302aを更に押し上げる。ところが、主錠101が施錠状態である場合、第1のデッドハブ105の第1の駆動片111に設けられている可動ピン352が可動当接体353aの可動当接面353a−1から脱落している(図7参照)。このため、第2のリンク部材302bの上昇に応じて第1のリンク部材302aが押し上げられたとしても、第1のリンク部材302aと第1のデッドハブ105との間の動力伝達が遮断される。したがって、第2のデッドハブ205の回転は第1のデッドハブ105に伝達されない。
【0073】
図14は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態(図7参照)から補助錠201の第2のサムターン202を完全に解錠方向に回転させ、更に主錠101の第1のサムターン102を45度だけ解錠方法に回転させた状態を示している(表1中、パターン3の「主錠→解錠」参照)。これにより、第1のデッドハブ105の第1の駆動片111が第1の凹部109内を押し、第1のデッドボルト106を駆動する。その結果、第1のデッドボルト106は解錠方向に変位する。
【0074】
また、補助錠201の第2のサムターン202を完全に解錠方向に回転させると、第2のデッドハブ205の回転に応じて第2のリンク部材302bが上昇し、この第2のリンク部材302bに押されて第1のリンク部材302aが押し上げられる。この際、主錠101が施錠状態であるため、第1のデッドハブ105の第1の駆動片111に設けられている可動ピン352が可動当接体353aの可動当接面353a−1から脱落している(図7参照)。このため、第1のリンク部材302aは、その可動当接面353a−1を可動ピン352に接触させることなく上昇する。その結果、可動ピン352は、可動当接体353aの下方に位置付けられる。そこで、この状態で主錠101を解錠方法に回転させると、第1のデッドハブ105の回転に応じて可動ピン352が上昇する。上昇した可動ピン352は、可動当接体353aの裏面側に位置する傾斜面353a−2に向かう。
【0075】
図15は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、補助錠201の第2のサムターン202を完全に解錠方向に回転させ、主錠101の第1のサムターン102を45度の位置から更に解錠方法に回転させた状態を示している(表1中、パターン3の「主錠→解錠」参照)。これにより、第1のデッドボルト106は更に反時計方向に回転し、第1のデッドボルト106は更に解錠方向に変位する。そして、ここで重要なことは、第1のデッドハブ105の回転に応じて上昇した可動ピン352が可動当接体353aの傾斜面353a−2に当接し、これによって可動当接体353aが弾性部材356の付勢力に抗して奥に引っ込み、可動ピン352の移動軌跡上から退避する、ということである。その結果、上昇する可動ピン352は、可動当接体353aを乗り越え、可動当接体353aと固定当接体353bとからなる一対の当接体353の間の位置に復帰することになる。そして、可動ピン352が可動当接体353aを乗り越えた瞬間、奥に引っ込んでいた可動当接体353aは、弾性部材356に付勢されて元の位置に復帰する。
【0076】
図16は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態(図7参照)から、補助錠201の第2のサムターン202を完全に解錠方向に回転させ、主錠101の第1のサムターン102を完全に解錠方法に回転させた状態を示している(表1中、パターン3の「主錠→解錠」参照)。これにより、第1のデッドボルト106は更に反時計方向に回転し、第1のデッドボルト106は完全に解錠状態となる。この際、第1のデッドハブ105の回転に応じて上昇する可動ピン352は、固定当接体353bの固定当接面353b−1に当接し、第1のリンク部材302aを僅かに押し上げる。したがって、可動ピン352は、固定当接面353b−1に当接した状態を維持する。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態の施解錠装置11は、主錠101を施錠操作すると補助錠201も自動的に施錠することができる。これに対して、施錠されている主錠101、補助錠201を解錠する際には、両者非連動とすることができる。したがって、セキュリティ性を維持したまま正規の利用者の施錠のための操作手順を簡略化することができる。しかも、補助錠201は主錠101と非連動で施解錠することができるので、ガードロック機構213の採用を可能にすることができる。
【0078】
また、当接体353を構成する一方の可動当接体353aを、その可動当接面353aから第1のリンク部材302aの長手方向にオフセットした位置で回転自在に第1のリンク部材302aに取り付けたので、第1のデッドハブ105の回転力に基づく大きな回転モーメントが可動当接体353aに加わることを防止することができる。その結果、例えば、第1のリンク部材302aを樹脂によって形成することも可能となり、部品コストの低減や全体の軽量化を図ることができる。
【0079】
また、当接体353を構成する一方の可動当接体353aの回転軸方向を、可動ピン352の回転軸方向と直交する方向にしたので、規定の円弧に沿って移動する可動ピン352の移動に可動当接体353aが邪魔とならず、スペース効率を向上させて全体の小型化を図ることができる。
【0080】
また、可動当接体353aが可動ピン352の移動軌跡から退避する方向へ変位するに従い力を蓄えてその可動当接体353aに元の位置への復帰力を与える弾性部材356を設けたので、変位した可動当接体353aを元の位置に確実に復帰させることができ、動作の安定性を維持することができる。
【0081】
また、当接体353を構成する一方の可動当接体353aの可動当接面353a−1と反対側の面を傾斜面353a−2とし、この傾斜面353a−2の側からアクセスする可動ピン352を当接させることによって可動当接体353aを可動ピン352の移動軌跡から退避する位置に変位させるようにしたので、可動当接体353aの位置を確実に制御することができ、動作の安定性を維持することができる。
【0082】
更に、第1のデッドハブ105に一体的に可動ピン352を設けたので、第1のデッドハブ105と第1のリンク部材302aとの間の動力伝達機構を簡略化することができ、装置の簡略化及び小型化を図ることができる。
【0083】
次いで、別の実施の一形態を図17〜図19に基づいて説明する。図1〜図16に基づいて説明した前記実施の一形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0084】
図17は、主錠101及び補助錠201のサムターン(第1のサムターン102、第2のサムターン202)の回転位置と共に、主錠101及び補助錠201が共に解錠位置にある状態を示している。本実施の形態が前記実施の形態(図1〜図16)と相違する点は、第1のリンク部材302aの構造、第1のリンク部材302aと第2のリンク部材302bとの接離構造、第1のデッドハブ105に設けられた第1の駆動片111の構造、及び第2の動力断続機構351の一部をなす可動当接体353aの構造である。
【0085】
図18は、主錠101を拡大して、動力断続機構303をなす第1のリンク部材302aを示している。図19は、第1のリンク部材302aが有する第2の動力断続機構351を分解して示している。第1のリンク部材302aは、二分割された金属部材によって形成されている。また、支持体332の当接面334は、コの字形をした支持体332の上片ではなく下片の上面に位置付けられている。そして、この当接面334に接離自在に当接するよう計画された第1のリンク部材302aの当接部333は、平行に配置された金属ピンによって実現されている。更に、第1のデッドハブ105に設けられた第1の駆動片111は、駆動片110aを有している。
【0086】
次いで、可動当接体353aは、第1のリンク部材302aに回転自在に取り付けられた板状部材によって実現されている。つまり、可動当接体353aは、第1のデッドハブ105の回転軸の軸方向と同一方向にして第1のリンク部材302aに形成された支軸371に回転自在に取り付けられている(図19参照)。そして、可動当接体353aは、第1のリンク部材302aに設けられたストッパ372によって位置規制され、水平よりも下方には回転しないようにされている。
【0087】
このような構成において、可動当接体353aは、ストッパ372に自重で当接し、ストッパ372から離反する方向に回転した場合、支軸371を中心として自重で回転し、ストッパ372に当接する元の位置に復帰する。このときに困るのが、主錠101及び補助錠201が共に施錠位置にある状態(図7参照)から補助錠201の第2のサムターン202を完全に解錠方向に回転させ、更に主錠101の第1のサムターン102を解錠方法に回転させた場合である(図14〜図16参照)。このような状況は、表1中、パターン3の「主錠→解錠」の場合に相当する。この際、第1のデッドハブ105の回転に応じて上昇した可動ピン352が可動当接体353aの下面に当接し、更に可動ピン352が上昇すると可動当接体353aが回転し、可動ピン352の移動軌跡上から退避する。これにより、上昇する可動ピン352は、可動当接体353aを乗り越え、可動当接体353aと固定当接体353bとからなる一対の当接体353の間の位置に復帰する。そして、可動ピン352が可動当接体353aを乗り越えた瞬間、可動当接体353aは支軸371を中心として自重で回転し、ストッパ372に当接する元の位置に復帰する。
【符号の説明】
【0088】
101 主錠
102 第1のサムターン
105 第1のデッドハブ
106 第1のデッドボルト
201 補助錠
202 第2のサムターン
205 第2のデッドハブ
206 第2のデッドボルト
301 動力伝達機構
302 リンク
302a 第1のリンク部材
302b 第2のリンク部材
303 動力断続機構
331 第1の動力断続機構
351 第2の動力断続機構
352 可動ピン(可動体)
353 当接体
353a 可動当接体(当接体)
353a−1 可動当接面(当接面)
353b 固定当接体(当接体)
353a−2 傾斜面
356 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシリンダ錠及び第1のサムターンに連係して回転する第1のデッドハブの回転運動を第1のデッドボルトに伝達して当該第1のデッドボルトを施解錠動作させる主錠と、
前記主錠と垂直方向に並べられ、第2のシリンダ錠及び第2のサムターンに連係して回転する第2のデッドハブの回転運動を第2のデッドボルトに伝達して当該第2のデッドボルトを施解錠動作させる補助錠と、
前記第1のデッドハブと前記第2のデッドハブとの間の回転伝達を上下方向に変位するリンクの直線運動を介して行なう動力伝達機構と、
前記リンクを、前記第1のデッドハブの回転に応じて変位する第1のリンク部材と前記第2のデッドハブの回転に応じて変位する第2のリンク部材とに分離し、前記第1及び第2のデッドボルトが共に解錠位置にある状態から前記第1のデッドボルトを施錠動作させる方向に前記第1のデッドハブを回転させるときと、前記第1及び第2のデッドボルトが共に施錠位置にある状態から前記第2のデッドボルトを解錠動作させる方向に前記第2のデッドハブを回転させるときとにのみ、前記第1及び第2のリンク部材をそれらの変位方向に当接させて動力伝達を行なう第1の動力断続機構と、
前記第1のデッドハブの回転に応じて第1のリンク部材を変位させるよう、前記第1のデッドハブの回転に応じて水平軸周りの規定の円弧上を変位する可動体を前記第1のリンク部材に設けた一対の当接体で上下から挟み、解錠している前記第1のデッドボルトを施錠させる前記第1のデットハブの回転に応じて変位する際の前記可動体が当接する一方の前記当接体を、前記第1のデッドボルトの施錠時には前記可動体の移動軌跡から外れた位置に位置させると共に、前記可動体を当接させる当接面と反対側からの前記可動体のアクセスに応じて当該可動体が前記一対の当接体の間に入り込むまで前記移動軌跡から退避する位置に変位させるようにした第2の動力断続機構と、
を備えることを特徴とする扉用の施解錠装置。
【請求項2】
前記一方の当接体は、その当接面から前記第1のリンク部材の長手方向にオフセットした位置で回転自在に前記第1のリンク部材に取り付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の扉用の施解錠装置。
【請求項3】
前記第1のリンク部材は、樹脂によって形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の扉用の施解錠装置。
【請求項4】
前記一方の当接体の回転軸方向は、前記可動体の回転軸方向と直交する方向である、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の扉用の施解錠装置。
【請求項5】
前記第2の動力断続機構は、前記一方の当接体が前記移動軌跡から退避する方向へ変位するに従い力を蓄えて当該一方の当接体に元の位置への復帰力を与える弾性部材を備える、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の扉用の施解錠装置。
【請求項6】
前記第2の動力断続機構は、前記一方の当接体の前記当接面と反対側の面を傾斜面とし、この傾斜面の側からアクセスする前記可動体を当接させることによって前記一方の当接体を前記移動軌跡から退避する位置に変位させるようにした、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一に記載の扉用の施解錠装置。
【請求項7】
前記第1のデッドハブは、前記可動体を一体的に備えている、ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一に記載の扉用の施解錠装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一に記載の施解錠装置を戸先面に埋設した、ことを特徴とする扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−31669(P2012−31669A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173209(P2010−173209)
【出願日】平成22年7月31日(2010.7.31)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)