説明

手すり付きの壁掛け式小便器装置

【課題】手すり付き壁掛け式小便器装置の施工を容易にする。
【解決手段】手すり付きの壁掛け式小便器装置であって、小便器201が取付けられる壁203の裏面で、小便器201と対応する位置に配置され、小便器取付け部205及び手すり取付け部206を有する補強部材204と、小便器取付け部205に取付けられた小便器取付け部材202と、小便器取付け部材202に取り付けられた小便器201と、手すり取付け部206に取付けられた手すり部材101とを備え、手すり部材101は、小便器201の上部周辺に沿うように構成された手すり本体部102と、手すり本体部102が固定されていて、手すり取付け部206に取り付けられる板状の取付け板103とを備え、取付け板103が小便器201と壁203の間に位置し、小便器201によって覆われるように構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁掛け式の小便器用の手すり及び小便器用の手すりの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一般的な小便器用の手すりの構造が開示されている。これによると、手すりは、その両端が小便器周辺の壁に取付けられ、そこから、小便器の上部周辺を沿うように形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−145592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の小便器用の手すりは、小便器周辺の壁に取付けられるため、以下のような問題があった。すなわち、まず一つは、手すりの取付け箇所が、露出しているため、子供に触られたり、悪意を持った人に悪戯されたりすることがあった。たとえカバー等でその取付け箇所を覆ったとしても、カバーは、大抵、容易に取り外すことができ、問題を解決するまでには至らない。また、手すりの取付け箇所が、露出していることにより、見栄えがよくない、取り付け箇所には凹凸があるために清掃がしにくい等の問題もあった。
【0005】
別の問題は、手すりを取付けるために、小便器用の補強部材とは別に、手すり用の補強部材が必要となることである。通常、壁掛け式の小便器の場合は、非常に重い小便器を固定するために、小便器が取付けられる壁の裏側に補強部材が設けられる。一方、手すりには、人の体重程度の力が加わるので、これに耐えうるように、手すりが取付けられる壁の裏側にも補強部材が設けられる。しかし、手すりの取付け箇所が小便器周辺であることから、手すり用の補強部材は、小便器用の補強部材とは別の位置、すなわち、手すりを取付ける小便器の周辺に設けられる必要がある。従って、一旦施工が完了している小便器に対して、手すりを後付けするには、壁を取り外してから、新たに手すり用の補強部材を入れなければならず、その分費用もかかり、施工作業も大変になる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、手すり付きの壁掛け式小便器装置の施工を容易にすることである。
【0007】
また、他の目的は、手すり付き壁掛け式小便器装置における手すりの取付け箇所を子供等に悪戯されないようにすることである。さらに、手すり付き壁掛け式小便器装置の見栄えをよくし、手すりの取付け箇所を清掃しやすくする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明に従う小便器装置は、手すり付きの壁掛け式小便器装置であって、前記小便器が取付けられる壁の裏面で、前記小便器と対応する位置に配置され、小便器取付け部及び手すり取付け部を有する補強部材と、前記小便器取付け部に取付けられた小便器取付け部材と、前記小便器取付け部材に取り付けられた小便器と、前記手すり取付け部に取付けられた手すり部材とを備え、前記手すり部材は、前記小便器の上部周辺に沿うように構成された手すり本体部と、前記手すり本体部が固定されていて、前記手すり取付け部に取り付けられる板状の取付け板とを備え、前記取付け板が前記小便器と壁の間に位置し、前記小便器によって覆われるように構成されたことを特徴とする。
【0009】
手すり部材は、小便器を取付けるための補強部材を利用して取付けられるので、手すり部材と小便器とを取付けるための補強部材を共通化することができ、手すり部材のための補強部材を、別途設ける必要がなくなる。従って、手すり付き壁掛け式小便器装置の施工を、容易にできるようになる。特に、小便器の施工が完了した後でも、手すりを容易に取付けることができるようになる。また、手すりの取付け板を、小便器と壁との間に位置させ、小便器で覆うように、手すりと小便器とが取付けられることにより、取付け板は、小便器と壁との間に丁度隠れるようになる。その結果、手すりの取付け箇所が隠蔽されるので、手すりの取付け箇所を子供等に悪戯されなくなる。さらに、手すりの取付け箇所が隠蔽されることで、手すり付き壁掛け式小便器装置の見栄えがよくなり、また、手すりの取付け箇所の清掃がしやすくなる。
【0010】
請求項2に記載した発明に従う小便器装置は、前記小便器取付け部材及び前記取付け板の少なくともいずれか一方に、両者の相対位置を予め定めた位置関係に規制する規制手段を備える。
【0011】
規制手段を設けることで、手すりの取付け板と小便器取付け部材との相対位置を、一意に決定することができる。そのため、手すりと小便器との相対位置も定まるので、小便器を取付けてみなくても、手すりと小便器との位置合わせが容易にできるようになる。従って、非常に重い小便器の取付けや取外しを繰返して、手すり又は小便器取付け部材の位置を微調整する必要がなくなる。
【0012】
請求項3に記載した発明に従う小便器装置は、前記規制手段により、前記小便器取付け部材及び前記取付け板の相対位置が固定される一方で、前記小便器取付け部材に対して、前記小便器が少なくとも幅方向に所定量移動可能になるよう構成されている。
【0013】
小便器が、小便器取付け部材に対して、少なくとも幅方向に所定量移動可能になるように構成されていることにより、小便器を小便器取付け部材に取付けた後でも、小便器を横方向に微調整できるようになる。すなわち、小便器は焼き物なので、公差を有しており、規制手段を利用して、手すりと小便器との位置を合わせても、実際には、それらの位置が少しだけずれることもあり、小便器を横方向に微調整することにより、このずれを修正することができるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、手すり付き壁掛け式小便器装置の施工を容易にすることができる。
【0015】
また、手すり付き壁掛け式小便器装置における手すりの取付け箇所を子供等に悪戯されないようにすることができる。さらに、手すり付き壁掛け式小便器装置の見栄えがよくなり、手すりの取付け箇所を清掃しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る手すり付きの壁掛け式小便器装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る小便器装置における手すり101の斜視図である。
【0018】
本実施形態に係る小便器装置における手すり101は、手すり本体102と、手すり取付け板103とを備える。
【0019】
手すり本体102は、手すり本来の機能を提供する部分である。すなわち、高齢者や障害者等は、不自由な身体を支えるために、この手すり本体102につかまったり、寄りかかったりする。手すり本体102は、細長い円柱状の部材を一定の形状に加工したものであり、例えば、同図のように、正面から見て円弧状に形成される。そして、その円弧の両端において、手すり本体102は、奥側(取付ける方向)へ向かって湾曲し、側面から見てL字状に形成される。さらに、それぞれのL字状の先端、すなわち、手すり本体102の両端は、手すり取付け板103に連結される。
【0020】
手すり取付け板103は、手すり101を、壁に取付けるための部分である。手すり取付け板103は、矩形の板状の手すり固定部104と、手すり固定部104の両端の一部をさらに外側へ突出させた手すり連結部105とを備える。
【0021】
手すり連結部105は、手すり本体102と手すり取付け板103とを連結する。上述したように、手すり本体102の両端が、この手すり連結部105に連結される。こうして、手すり本体102と手すり取付け板103とは、一体として形成される。
【0022】
手すり固定部104には、例えば、ボルトを通す穴がいくつか設けられている。この場合は、手すり固定部104の背面を壁に密着させた状態で、手すり固定部104と壁(正確に言うと、壁の裏に設けられた補強部材)とがボルトによって固定される。これにより、手すり取付け板103と一体として形成された手すり本体102は、壁にしっかりと取付けられる。
【0023】
また、手すり101は、手すり本体102の円弧部分が、小便器の上部周辺に沿うように設置される。このため、手すり101は、小便器の大きさに合わせて形成される。そして、手すり本体102の両端は、その内側に小便器が納まる程度に、間隔があけられる。手すり本体102の両端の間隔に合わせて、手すり取付け板103の大きさも決定される。
【0024】
図2は、本実施形態に係る小便器装置における手すり101及び小便器201の取付けの方法を示した分解斜視図である。
【0025】
壁203の裏側には、小便器201を取付けるための補強部材204が設けられている。小便器201は、陶器でできているため、非常に重い。通常の壁203に、そのまま取付けたのでは、壁が壊れてしまう。そこで、小便器201を、安全に壁に掛けられるようにするため、補強部材204が利用される。補強部材204は、例えば、同図に示したように、少なくとも小便器201と対応する位置に配置された金属板で構成される。尚、この金属板は、小便器201と対応する位置だけでなく、壁の上から下まで備えられてもよい。また、補強部材204には、小便器取付け部205と手すり取付け部206とが設けられる。
【0026】
補強部材204に対して、手すり101と小便器取付け部材202とが、それぞれ取付けられる。手すり101は、上述したように、手すり取付け板103をボルト等で補強部材204の手すり取付け部206に固定することにより、取付けられる。同様に、小便器取付け部材202も、ボルト等で補強部材204の小便器取付け部205に固定される。それぞれの取付け位置は、小便器201や手すり101の形によって異なるが、上述したように、手すり101の円弧部分が、小便器201の上部周辺を沿うように、その位置が決められる。
【0027】
手すり101と小便器取付け部材202とが、補強部材204に固定された状態で、小便器201が取付けられる。小便器取付け部材202は、バックハンガと呼ばれる吊金具である。小便器201の裏側には、小便器取付け部材202が入る程度の溝が設けられている。その溝を、小便器取付け部材202に掛けることにより、小便器201は、壁203に取付けられる。
【0028】
このように、手すり101は、小便器201を取付けるための補強部材204に、小便器取付け部材202と一緒に取付けられる。これにより、手すり101のための補強部材を備える必要がなくなる。従って、手すり付き壁掛け式小便器装置の施工を容易にすることができるようになる。また、壁203及び補強部材204の施工が完了して小便器201が取付けられた後でも、手すり101を容易に取付けることが可能となる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る小便器装置における手すり101及び小便器201の取付け後の様子を示した図である。(a)は、その斜視図、(b)は、A−A’線における断面図である。
【0030】
同図を見るとわかるように、小便器201は、壁203に取付けられた手すり101の手すり固定部104に覆い被さるように、小便器取付け部材202に取付けられる。そして、手すり固定部104は、小便器201と壁203との間に丁度隠れるようになっている。これにより、手すり101の取付け箇所が隠蔽されるので、手すり101の取付け箇所を子供等に悪戯されなくなる。さらに、手すり101の取付け箇所が隠蔽されることで、手すり付き壁掛け式小便器装置の見栄えがよくなり、また、手すり101の取付け箇所の清掃がしやすくする。
【0031】
一方、手すり取付け板103の手すり連結部105は、小便器201の両脇から露出している。そして、この手すり連結部105に連結されている手すり本体102が、小便器201の上部周辺を沿うように配置される。
【0032】
図4は、本実施形態に係る小便器装置における手すりの変形例101’の斜視図である。
【0033】
図1に示した手すり101と同一の部分については、同一の符号を付与している。同一の符号については、説明を省略する。
【0034】
この手すり101’は、手すり固定部104の上部中央に、矩形の凹部をさらに備える。以下、この凹部を位置規制部401と呼ぶ。位置規制部401は、手すり101’と小便器201との位置合わせを容易にする。図1に示した手すり101は、手すり101の取付け箇所が、小便器201と壁203との間に隠れるため、小便器201を取付けた状態で、手すり101の位置を調整することができない。そのため、手すり101と小便器201との位置を合わせるのが難しいといった問題がある。上述したように、手すりは、小便器201の上部周辺を沿うように形成されているので、小便器201との位置が少しでもずれると見た目が悪い。位置規制部401は、このような問題を解消する。
【0035】
すなわち、位置規制部401の横幅は、小便器取付け部材202が丁度収まる程の大きさになっている。また、位置規制部401の縦幅(凹み量)は、手すり101’及び小便器201を取付けたときに、それぞれの位置が合うような大きさになっている。ここで、手すり101’及び小便器201の位置が合うとは、手すり101’の円弧部分が小便器201の上部周辺を沿うようになること、具体的には、手すり101’の円弧部分のどの位置から見ても、小便器201との距離がほぼ一定になることをいう。これを具体的に示した図が、図5である。同図(a)は、小便器201と手すり101’の円弧部分との距離501aが、一定の場合を示している。同図(b)は、小便器201と手すり101’の円弧部分との距離501bが、一定でない場合を示している。小便器取付け部材202が、手すり101’の位置規制部401の間に収められた状態で、小便器取付け部材202と手すり101’とは、それぞれ補強部材204に取付けられる。このようにすることで、手すり101’と小便器201との相対位置は、一定に保たれるため、小便器201を取付けてみなくても、手すり101’と小便器201との位置合わせが容易にできるようになる。従って、非常に重い小便器201の取付けや取外しを繰返して、手すり101’又は小便器取付け部材202の位置を微調整する必要がなくなる。
【0036】
図6は、この手すり101’及び小便器201の取付け後の様子を示した図である。
【0037】
上述したように、手すり固定部104に設けられた位置規制部401と、小便器取付け部材202とが、隙間なく、丁度噛み合うように配置されている。これにより、手すり101’と小便器取付け部材202との相対位置は、一定に保たれる。すなわち、手すり101’と、小便器取付け部材202に取付けられる小便器201との相対位置も、一定に保たれる。一方、位置規制部401の凹みの大きさや、それが設けられる箇所は、手すり101’と小便器201との位置が合うように、予め設計されている。従って、位置規制部401と小便器取付け部材202とが噛み合うように配置されることにより、手すり101’と小便器201との位置が合うようになる。
【0038】
尚、位置規制部401の形や、それが設けられる箇所は、上記に限定されるものではない。例えば、手すり固定部104の下部中央に設けてもよいし、矩形でなくてもよい。さらには、位置規制部401を、小便器取付け部材202に設けてもよい。位置規制部401と手すり取付け部材202とが噛み合うようになっており、それらの相対位置が一意に決定されるものであればよい。
【0039】
また、小便器は、陶器製、すなわち焼き物なので、所定範囲のばらつき(公差)を有する。そのため、位置規制手段401を利用して、手すり101’と小便器201との位置を合わせても、実際には、それらの位置が少しだけずれることもある。これを解消するため、小便器201の裏側に設けられた溝の幅を、小便器取付け部材202の幅よりも少しだけ大きくすることができる。これにより、小便器201を小便器取付け部材202に取付けた後でも、溝の幅と小便器取付け部材202の幅との大きさの差分だけ、小便器201を横方向にずらすことができ、微調整ができるようになる。
【0040】
以上説明したような構造をもつことにより、本実施形態において、手すり付き壁掛け式小便器装置の施工を容易にすることができるようになる。また、一旦施工が完了している小便器に対して、手すりの後付けを容易にすることができるようになる。
【0041】
また、手すり付き壁掛け式小便器装置における手すりの取付け箇所を子供等に悪戯されないようにすることができる。さらに、手すり付き壁掛け式小便器装置の見栄えがよくなり、手すりの取付け箇所を清掃しやすくすることができる。
【0042】
さらに、手すり取付け箇所を小便器と壁との間に隠蔽すると、小便器を取付けた状態で手すりの取付け位置を調整できなくなるが、位置規制手段を設けることにより、手すりと小便器との位置合わせを容易にできるようになる。
【0043】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係る小便器装置における手すりの斜視図である。
【図2】本実施形態に係る小便器装置における手すり及び小便器の取付けの方法を示した分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る小便器装置における手すり及び小便器の取付け後の様子を示した図である。
【図4】本実施形態に係る小便器装置における手すりの変形例の斜視図である。
【図5】本実施形態に係る小便器装置における小便器と手すりの円弧部分との距離を示した図である。
【図6】本実施形態に係る小便器装置における手すりの変形例及び小便器の取付け後の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0045】
101…手すり、102…手すり本体、103…手すり取付け板、201…小便器、202…小便器取付け部材、203…壁、204…補強部材、205…小便器取付け部、206…手すり取付け部、401…位置規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手すり付きの壁掛け式小便器装置であって、
前記小便器が取付けられる壁の裏面で、前記小便器と対応する位置に配置され、小便器取付け部及び手すり取付け部を有する補強部材と、
前記小便器取付け部に取付けられた小便器取付け部材と、
前記小便器取付け部材に取り付けられた小便器と、
前記手すり取付け部に取付けられた手すり部材とを備え、
前記手すり部材は、
前記小便器の上部周辺に沿うように構成された手すり本体部と、
前記手すり本体部が固定されていて、前記手すり取付け部に取り付けられる板状の取付け板とを備え、
前記取付け板が前記小便器と壁の間に位置し、前記小便器によって覆われるように構成されたことを特徴とする小便器装置。
【請求項2】
前記小便器取付け部材及び前記取付け板の少なくともいずれか一方に、両者の相対位置を予め定めた位置関係に規制する規制手段を備えることを特徴とする請求項1記載の小便器装置。
【請求項3】
前記規制手段により、前記小便器取付け部材及び前記取付け板の相対位置が固定される一方で、前記小便器取付け部材に対して、前記小便器が少なくとも幅方向に所定量移動可能になるよう構成されていることを特徴とする請求項2記載の小便器装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate