説明

手動による海水の飲料水化装置

【課題】手動により、海水から飲料に適する水を製造する装置であって、回収率を10%以上とし、塩除去率95%以上の水を毎分100ml以上製造することが可能なものを提供することである。
【解決手段】海水を4MPa以上に加圧するための一の手動式ポンプと、該手動式ポンプによって加圧された海水を飲料水に濾過する逆浸透膜とで構成されていることを特徴とする、海水の飲料水化装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動式ポンプと逆浸透膜を組み合わせ、電力を使用することなく海水から飲料に適する水を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
海水から飲料水を得ることを目的として海水を淡水化(即ち、飲料水化)するための研究報告は膨大であり、中には既に国内外で実用化されているものもある。海水の淡水化では、逆浸透膜を使う方法が主流になっているが、これらの実施例の多くは、大量の海水を一箇所で淡水化し、それを工業用や家庭用として供給することを目的としているため、大量の電力を使用する大規模なプラント規模で行われている。そのため、手動(即ち、人力)で海水を淡水化する報告は、このような大規模なプラント規模での実施に不向きであるため、ほとんどない。
しかしながら、海水が近くに存在するにもかかわらず、電源がなかったり、水道が届かなかったりするために飲料水を得ることが困難な場所も依然として存在し、また台風や地震等の災害時において、電気的な動力源を用いることなく、海水から飲料水を簡易且つ安価で製造することが必要な場合もある。そのため、手動で海水を淡水化することは極めて重要である。
一方、海水中に含まれる塩分(塩化ナトリウム)を濾過するためには、膜中の透過穴を塩化ナトリウムの分子容積に見合うほど小さくする必要があり、その結果、塩分を高効率で除去するには、海水の流入圧力を約4〜5MPa程度の高圧にすることが要求される。逆にいえば、低圧で使用する逆浸透膜では塩分の高い除去率は期待できない。
更に、工業的に製造される水道水では、一般に水道水に見合う極めて高純度の水(即ち、塩分除去率99%以上)を得ることを目的としているため、逆浸透膜の透過に際し(即ち、濾過によって浄化水と濃縮水を排出するに際し)、浄化水の回収率(その定義は後述する)は10%以下(約8%)になってしまう。しかし、海水が近くに存在するにもかかわらず、電源がなかったり、水道が届かなかったりするために飲料水を得ることが困難な場所や、台風や地震等の災害時での飲料水の確保では、飲料水として使用できる程度の純度(即ち、塩分除去率95%以上)があればよく、寧ろその飲料水を、10%を超える高収率で回収することが大切である。
【0003】
なお、特許文献1(特開2004−202472号公報)には、手動で海水を淡水化する装置が開示されているが、この装置は、手動によって3kg/cmという非常に低い圧力で海水を逆浸透膜に送り込み、このような低圧でも海水を浄水化できるような極めて高性能の逆浸透膜を使用することを特徴としている。そのため、この装置では、海水の浄水化で一般に使用されている程度の逆浸透膜を使用することは考えておらず、また、この装置で、海水の浄水化で一般に使用されている程度の逆浸透膜を使用して海水の淡水化を行ったとしても、このような低圧では、上述の通り、塩化ナトリウムを高い除去率で取り除くことは困難なはずである。
また、特許文献2(特開平10−230259号公報)にも手動で海水等を浄水化して飲料水を製造する装置が開示されているが、この装置は2台の加圧ポンプと2台の排水ポンプを組み合わせて、両者を機能的に連動させることを特徴としている。そのため、装置が煩雑になってしまい、海水から飲料水を簡易且つ安価に提供するには不向きである。
更に、特許文献3(特開平8−243357号公報)にも手動で海水等を浄水化して飲料水を製造する装置が開示されているが、この装置は、逆浸透膜を透過しない濃縮水を排出することなく、海水の入った元の槽に戻すことを特徴としている。そのため、海水中に含まれる塩分(塩化ナトリウム)が排出されることなく、元の槽に海水以上の濃度で増え続けていくことになってしまうので、すぐに逆浸透膜を水が通過できなくなってしまい、逆浸透膜としての機能が失われてしまうという問題がある。また、海水以上に塩分(塩化ナトリウム)が増加すれば、塩分(塩化ナトリウム)が逆浸透膜に付着して目詰まりが起こり易く、海水の通過を妨げてしまうという問題も生じる。
更に、海水のみならず、汚染水(有機物や細菌類等からなる汚染物質を含む河川水、地下水、湖沼水、工業排水等)から飲料水を得ることができれば、飲料水の確保という観点からより好ましい。実際、特許文献3の装置のように、海水のみならず、河川水、地下水、湖沼水等を浄水化して飲料水を製造することを目的としているものもある。
しかしながら、このような装置では、塩分(塩化ナトリウム)を多く含んでいる海水の浄水化と、塩分(塩化ナトリウム)ではなく、有機物や細菌類等を多く含んでいる河川水や工業排水等の汚染水の浄水化とを区別しておらず、有機物や細菌類等を多く含んでいる河川水や工業排水等の汚染水の浄水化と塩分(塩化ナトリウム)を多く含んでいる海水の浄水化を同様に扱っている。
一方、海水の浄水化では、上述の通り、逆浸透膜の膜穴を塩化ナトリウムの分子容積に見合うほど小さくする必要があり、ポンプの圧力もそれに見合った約4〜5MPa程度の高圧力が必要になるが、河川水や工業排水等の汚染水のように大きな金属化合物(例えば金属錯体)、有機物、さらに大きな細菌を除去することが必要な場合には、塩化ナトリウムよりも分子容積が大きいため、海水の浄水化で必要とされる膜穴よりも大きな逆浸透膜で十分と考えられるので、ポンプの圧力も海水の浄水化で必要とされる圧力よりも低くてよいはずである。つまり、塩分(塩化ナトリウム)を多く含んでいる海水の浄水化と、塩分(塩化ナトリウム)ではなく、有機物や細菌類等を多く含んでいる河川水や工業排水等の汚染水の浄水化は別の次元の話しであり、両者を同じ逆浸透膜と水圧ポンプを使用した装置を使って浄水化するのは合理的ではない。
【特許文献1】特開2004−202472号公報
【特許文献2】特開平10−230259号公報
【特許文献3】特開平8−243357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、手動により、海水から飲料に適する水を製造する装置であり、回収率を10%以上とし、塩除去率95%以上の水を毎分100ml以上製造することを可能にするものを提供することである。つまり、本発明は、塩分除去率99%以上の飲料水を製造するのではなく、飲料に適する塩分除去率95%以上の水を、海水から手動により高収率で製造するものである。
更に、本発明の目的は、上記装置を使用して汚染水(有機物や細菌類等からなる汚染物質を含む河川水、地下水、湖沼水、工業排水等)から飲料水を得たい場合には、上記の装置において、逆浸透膜と手動式ポンプの性能を取り変えることによって、該汚染水を飲料水にすることが可能なものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の海水の飲料水化装置は、海水を4MPa以上に加圧するための一の手動式ポンプと、該手動式ポンプによって加圧された海水を飲料水に濾過する逆浸透膜とで構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明で使用する海水を加圧するための手動式ポンプは、海水に対して、耐性があって、4MPa以上に電力を使用することなく、人力で加圧できるものであれば特に限定されない。耐圧強度の観点から、一般的には金属材料で構成されたポンプを使用することが好ましい。
また、利便性や簡便性の観点から人力で持ち運び可能な小型のものが好ましい。
【0007】
但し、本発明の海水の飲料水化装置では、海水から飲料水を簡易且つ安価に提供することを目的としているため、本発明で使用する海水を加圧するための手動式ポンプは一つである。
【0008】
本発明で使用する逆浸透膜は、一の手動式ポンプによって4MPa以上の高圧に加圧された海水を通過させることができるものであればよく、0.3〜0.5MPa程度の低圧で加圧された海水でも通過させることができるような、より高価な逆浸透膜を使用する必要はない。
また、本発明で使用する逆浸透膜の構造としては、中空糸状、スパイラル状、チューブラー状が考えられるが、4MPa以上に加圧された海水を通過させることができれば何ら限定されないが、着脱作業の容易性という観点から、メンテナンスが簡単なスパイラル状が好ましい。
また、逆浸透膜の材質としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホンやこれらの少なくとも一種を含む複合材等が知られているが、本発明で使用する逆浸透膜の材質としては、海水に対して、耐性があって、4MPa以上の加圧に耐えるものであれば特に限定されない。
【0009】
本発明の海水の飲料水化装置では、海水を4MPa以上に加圧するための一の手動式ポンプと、該手動式ポンプによって加圧された海水を飲料水に濾過する逆浸透膜が一体になっていても、それぞれ独立して取り換えるものであってもよい。但し、飲料水化する原水の種類(例えば、塩分を多く含む海水か、それとも有機物や細菌等を含む汚染水か)によって使用する手動式ポンプや逆浸透膜を容易に取り換えられるという点やメンテナンスの簡便性等の点から、一般的にはそれぞれが独立して取り換えられるものが好ましい。特に、海水の浄水化のみならず、河川水、地下水、湖沼水等の汚染水を浄水化して飲料水を製造することを目的とする場合には、両者を同じ逆浸透膜と水圧ポンプを使用した装置を使って浄水化するのは合理的ではないので、手動式ポンプと逆浸透膜のそれぞれが独立して取り換えられる構成にする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手動により、海水から、塩除去率95%以上の飲料水を回収率10%以上で製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の海水の飲料水化装置の概略を図1に示す。
図1に示す通り、海水(1)を水槽(2)に入れ、手動式ポンプのハンドル(7)を操作して海水を逆浸透膜(12)に送り込む。圧力計(9)を見ながらニードルバルプ(16)を動かして所定の圧力に調製する。透過水(20)を透過水槽(21)に、濃縮水(17)を濃縮水槽(18)に取る。なお、この装置では、手動式ポンプと逆浸透膜(12)を収容した外周筒(11)とが独立して交換できる構成になっているので、両者を別々に取り換えることができる。
【0012】
次に、本発明の海水の飲料水化装置を使用して、海水(模擬海水として3.5%食塩水を用いた)から得られる水(以後、浄化水と呼ぶ)に関して様々な条件下で試験を行った。なお、この浄化水は、図1における透過水(20)のことである。
その際、逆浸透膜にはムロマチテクノス社製ROエレメントSW30−2514を使用した。手動ポンプは、海水の飲料水化では、(株)キョーワ製T−100K(最大圧力10MPa)を使用し、浄化水と濃縮水の比率はニードルバルブで調節した。
塩化物イオン(ここでは慣用に従って塩素イオンと呼ぶ)の分析にはCentral Kagaku社製Model UC−41を使用した。色素および錯体の定量および定性分析はHewlett Packard社製HP8453紫外・可視分光光度計を用いた。
【実施例】
【0013】
[実施例1]
本発明の海水の飲料水化装置を使用して海水(模擬海水として3.5%食塩水を用いた)から得られた浄化水に関して様々な条件下での試験結果を表1と2に示した。ここで、回収率とは、全流量中の浄化水の割合であり、定義は表中に記述する。なお、塩除去率%を塩素イオン除去率%と仮定した。
【0014】
【表1】

ここで、塩素イオン除去率は、流出する濃縮水(その流出量B、塩素イオン濃度b)と浄化水(その流出量A,塩素イオン濃度a)の間で以下に定義される:(b−a)/Bx100%。
【0015】
【表2】

ここで、塩素イオン除去率は、流出する濃縮水(その流出量B、塩素イオン濃度b)と浄化水(その流出量A,塩素イオン濃度a)の間で以下に定義される:(b−a)/Bx100%。
【0016】
表1と2に基づいて、海水の流入圧力が4MPaと5MPaの場合を比較すると、5MPaの方が浄化水の塩素イオン濃度が低いが、4MPaにおける場合の最高塩素イオン除去率は95%であり、この場合に浄化水が、回収率8%以上、毎分100ml以上で得られるので、本発明の装置によれば、4MPaにおいても海水から飲料に適する水が得られることがわかった。
また、塩素イオン除去率が浄化水の回収率に依存しないことがわかった。
更に、浄化水の流速が増すと浄化水の塩素イオン濃度は僅かに減少する傾向にあることがわかった。つまり、この装置により、海水の流入圧力が4MPaの場合には、浄化水を最大35%の回収率で毎分118mlの浄化水を製造することができ、海水の流入圧力が5MPaの場合には、毎分最大198mlの流量で浄化水を26%の回収率で製造することができることがわかった。
【0017】
また、海水の流入圧力が4MPaと5MPaの両方の場合で、浄化水の回収率が、工業的に逆浸透膜を用いて製造される水道水における浄化水の回収率(8%)よりも高い値を示し、流入圧力が4MPaと5MPaのいずれにおいても平均で10%以上の回収率が得られるので、海水から飲料水を、工業用の逆浸透膜の使用による浄化水の回収率よりも高い回収率で回収可能なことがわかった。更に、本発明の装置によれば、浄化水の回収率が高くても浄化水の塩素イオン濃度が高くならないことがわかった。
因みに、本試験の回収率は最高35%であるから、この場合には、工業的に逆浸透膜を用いて製造される通常の水道水における浄化水の回収率(8%)の4倍にもなることがわかった。
また、流速を増すと浄化水の塩素イオン濃度はむしろ低下することがわかった。例えば、5MPaにおいて、塩素イオン除去率97%の浄化水が毎分198ml得られたが、この塩素イオン除去率は、同じ5MPaにおける浄化水が毎分128mlにおける塩素イオン除去率95%よりも高かった。
【0018】
[比較例2]
次に、海水の流入圧力を3.5MPaで行って海水(模擬海水として3.5%食塩水を用いた)から得られた浄化水に関して様々な条件下での試験結果を表3に示す。
3.5MPaの場合、浄化水の回収率は最大で35%であったが、塩素イオン除去率は最大で92%で、浄化水の流量も毎分100ml以下であった。
【0019】
【表3】

ここで、塩素イオン除去率は、流出する濃縮水(その流出量B、塩素イオン濃度b)と浄化水(その流出量A,塩素イオン濃度a)の間で以下に定義される:(b−a)/Bx100%。
【0020】
上記表1、表2及び表3のデータを基にして、浄化水の回収率と塩素イオン除去率の関係を図2に示した。図2からわかるように塩素イオン除去率は浄化水の回収率に依存しなかった。
また、上記表1、表2及び表3のデータを基にして、図3には浄化水流量と塩素イオン濃度の関係を示した。3.5MPa、4.0MPa、5.0MPaの各圧力において、塩素イオン濃度は流量に殆んど依存しないが、プロット全体を見ると、流量が増加するほど塩素イオン濃度が減少する、即ち塩除去率が高くなることがわかった。
更に、表1〜3の結果から明らかなように、海水の流入圧力が3.5、4.0、そして5.0MPaの場合、塩素イオン除去率の平均値は、それぞれ、91.6%、94.3%、95.8%となり、海水の流入圧力の増加に伴って塩素イオン除去率は増加することがわかった。
そして、海水の流入圧力が4.0MPaと5.0MPaの場合には、上記の通り、塩素イオン除去率が95%で回収率10%以上の浄化水が毎分100ml以上で得ることが可能であることがわかった。
つまり、圧力4MPa以上で海水を流入させれば、海水の流量と回収率に関わらず、塩除去率が95%以上の飲料に適する水を、回収率10%以上の高収率で毎分100ml以上製造することが可能であることがわかった。
【0021】
[実施例2]
海水の場合、塩分(塩化ナトリウム)の分子が非常に小さく、塩を取り除くためには逆浸透膜の透過穴が小さく、その結果高い圧力が要求される。一方、汚染水(有機物や細菌類等からなる汚染物質を含む河川水、地下水、湖沼水、工業排水等)の場合には、取り除くべき対象は主に細菌や有機物であり、分子容が大きい。そのため、逆浸透膜の透過穴が比較的に大きい。その結果、逆浸透膜への汚染水の流入圧力は、海水の飲料水化に比べて遥かに低くてすむと考えられる。
そこで、本発明の上記海水の飲料水化装置において、それを構成する手動式ポンプの性能を低圧用のものに、そして逆浸透膜の透過穴を大きいものに変えることにより、汚染水の飲料水化試験を行った。
具体的には、汚染水の飲料水化試験では、逆浸透膜としてムロマチテクノス社製ROフィルムテックTW30−1825−75を使用した。また、該逆浸透膜に対する水の圧力は0.35MPaとした。手動ポンプは、(株)キョーワ製T−50K(最大圧力2.5MPa)を使用し、浄化水と濃縮水の比率はニードルバルブで調節した。
【0022】
汚染水は様々であるので、模擬汚染物質を使用することとし、該模擬汚染物質として濃い色を有する2種類の色素を用意して、模擬汚染水を作った。模擬汚染水の浄化後、紫外・可視分光光度計を用いて模擬汚染物質の濃度を定量した。小さな分子容の物質の挙動を調べるために、食塩水についても同様の試験を行った。模擬汚染物質は錯体、tris−(1,10−phenanthroline)iron(II)、と85%デキストリンと15%食用赤色色素102号(8E)−7−オキソ−8−[(4−スルホナトナフタレン−1−1イル)ヒドラジニリデン]ナフタレン−1,3−スルホン酸ナトリウムの混合物である。
試験結果は表4〜6に示した。具体的には、錯体と食用色素の試験結果は表4と表5に、食塩水の試験結果は表6に示した。
【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
【表6】

【0026】
表4と表5において、浄化水の吸収スペクトルは全くピークを示さず、模擬汚染物質は100%除去されたことを示した。tris−(1,10−phenanthroline)iron(II)の分子の直径は10Å(オングストローム)(10Å=1nm)前後と推測される。赤色色素はtris−(1,10−phenanthroline)iron(II)よりもさらに大きい。一方、一般的な菌の大きさは0.3ミクロン(300nm)以上であるから、菌は確実に除去されると考えられる。
実際、塩化ナトリウムは格子定数が5.4Å(0.54nm)で、この大きさの分子あるいはイオンは素通りするため、表6に示される通り、除去率は極めて低い値であった。
そのため、本発明の上記海水の飲料水化装置において、それを構成する手動ポンプの性能を低圧用のものに、そして逆浸透膜の透過穴を大きいものに変えた場合、塩化ナトリウムのように小さな分子あるいはイオンは除去されず、金属でも錯体あるいは有機金属を形成して大きな分子を形成するものや、細菌やウイルスのような大きなものは完全に除去可能であることがわかった。従って、本発明の上記海水の飲料水化装置において、逆浸透膜と手動ポンプの性能を変えるだけで、手動(即ち、人力)により汚染水も飲料水化することが可能なことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、手動により、海水から飲料に適する水を、回収率を10%以上とし、塩除去率95%以上で、毎分100ml以上製造することが可能になる。つまり、本発明によれば、飲料に適する塩分除去率95%以上の水を、海水から手動により高収率で製造することができる。そのため、海水が近くに存在するにもかかわらず、電源がなかったり、水道が届かなかったりするために飲料水を得ることが困難な場所や、台風や地震等の災害時において、電気的な動力源を用いることなく、手動(即ち、人力)で海水から飲料水を簡易且つ安価で製造するために、本発明の装置を利用することができる。
更に、上記の装置において、逆浸透膜と手動式ポンプの性能を変えれば、汚染水(有機物や細菌類等からなる汚染物質を含む河川水、地下水、湖沼水、工業排水等)を飲料水にすることが可能である。そのため、手動で該汚染水から飲料水を簡易且つ安価に製造するために本発明の装置を利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の海水の飲料水化装置の概略図である。
【図2】海水の圧力をそれぞれ3.5MPa、4MPaおよび5MPaとしたときの浄化水の回収率と塩素イオン除去率の関係を示す図である。
【図3】海水の圧力をそれぞれ3.5MPa、4MPaおよび5MPaとしたときの浄化水流量と塩素イオン濃度の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 海水(3.5% NaCl)
2 海水水槽
3 ポンプ筒
4 シリンダー
5 逆止弁
6 逆止弁
7 ハンドル
8 バルブ
9 圧力計
10 バルブ
11 外周筒
12 逆浸透膜
13 中心パイプ
14 通過水穴
15 濃縮水パイプ
16 ニードルパイプ
17 濃縮水
18 濃縮水槽
19 透過水パイプ
20 透過水
21 透過水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を4MPa以上に加圧するための一の手動式ポンプと、該手動式ポンプによって加圧された海水を飲料水に濾過する逆浸透膜とで構成されていることを特徴とする、海水の飲料水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−142799(P2010−142799A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−336117(P2008−336117)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(503280905)
【出願人】(508266694)
【出願人】(508042571)
【Fターム(参考)】