説明

手動器具と共に使用するためのペースト状の充填コンパウンドを放出する容器および手動器具

本発明は、振動エネルギの供給によってその粘性を減少させることができる、ペースト状の充填コンパウンドを放出するための、特に歯科目的用の、手動器具(6)と共に使用するための容器(2)に関するものであって、その場合に容器(2)は、ペースト状の充填コンパウンドを収容するために形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部(8)を有している。放出開口部(8)は、たとえば鋼からなる、カニューレ(4)によって形成されている。カニューレ(4)によって、充填コンパウンドの粘性のポジティブな調節が得られる。特に、このようにして、充填コンパウンドの液化度の著しい増大が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギの供給によってその粘性を減少させることができる、ペースト状の充填コンパウンドを放出するための、特に歯科用目的のための、手動器具と共に使用する容器に関するものであって、その場合に容器は、ペースト状の充填コンパウンドを収容するように形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部を有している。本発明は、さらに、この種の容器を有する然るべき手動器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種概念に基づく手動器具と種概念に基づく容器は、本出願人の特許文献1に記載されている。
【0003】
然るべき充填コンパウンド(充填材料とも称する)を振動またはバイブレーション支援で放出する際に、通常、振動がバイブレーションジェネレータからこの種の容器内へ導入され、その場合にこの容器内に充填コンパウンドが入っている。バイブレーションジェネレータは、たとえば音波ジェネレータまたは超音波ジェネレータであって、それが手動器具内に配置されている。従来技術については、特に上述した特許文献1が、参照するよう指示される。往復振動することによって、容器内にある充填コンパウンドが剪断力にさらされ、それによって充填コンパウンドの粘性が低下ないし減少されて、従って充填コンパウンドは、たとえば容易に歯の空洞内へ流入することができる。これは、充填コンパウンドと該当する空洞との間の結合にとって効果的である。従って質的に高価値の充填のためには、原則的に、ペースト状の充填コンパウンドの高い液化度を得ることができることが望ましい。
【0004】
一般に、たとえば歯の空洞内へ、充填コンパウンドを放出した後に、特にそれを圧縮し、かつ/または所定の形状にするために、充填コンパウンドに機械的に作用が行なわれる。従って、容器ないし手動器具が、空洞内へ投入された充填コンパウンドの適切な機械的処理のためにも用いることができるように形成されていると、効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許出願DE102009013000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高価値の充填を形成することができる、適切な容器を提供することである。さらに、適切な手動器具を提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば、独立請求項内に記載された対象によって解決される。本発明の特別な実施形態が、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動エネルギの供給によってその粘性を減少させることができる、ペースト状の充填コンパウンドを放出するための、特に歯科目的用の、手動器具と共に使用するための容器が設けられている。その場合に容器は、ペースト状の充填コンパウンドを収容するために形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部を有している。その場合に放出開口部は、カニューレによって形成されている。
【0009】
手動器具により作業する場合に、カニューレによって、充填コンパウンドのポジティブな調節が得られる。特にこのようにして、液化度の著しい増大が得られる。
【0010】
好ましくは、カニューレは、残りの容器とは異なる比重を有する材料からなる。好ましくはカニューレは、鋼、アルミニウムまたはセラミックからなる。これらの材料は、特に残りの容器または残りの容器の、カニューレに直接隣接する少なくとも1つの部分がプラスチックからなる場合についても、液化度の増大に関して特に効果的であることが、明らかにされている。
【0011】
好ましくはカニューレは、可撓性であり、あるいは屈曲されている。それによって、充填コンパウンドをより良好に、所定の空間的領域へ、歯科領域においては、たとえば正中のボックスへ、案内することができる。可撓性のカニューレ−たとえばアルミニウムカニューレ−の場合には、処置の間好ましくはカニューレを個別に、ないしは指示に関して予め曲げておくことができる。その場合に好ましくはカニューレは、手動で曲げることができる。
【0012】
好ましくはカニューレは、残りの容器と接着結合、プレス嵌めまたはねじ結合を介して結合されており、あるいはカニューレは、容器を形成する間に鋳造によって残りの容器と結合されている。
【0013】
本発明の第2の視点によれば、振動エネルギの供給によってその粘性を減少させることができる、ペースト状の充填コンパウンドを放出するための、特に歯科目的用の、手動器具と共に使用するための容器が設けられている。その場合に容器は、ペースト状の充填コンパウンドを収容するために形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部を有している。その場合に放出開口部は容器の、少なくとも実質的に半球形状を描く外側面を有する領域内に配置されている。
【0014】
半球形状の領域は、充填コンパウンドを空洞内へ放出した後に充填コンパウンドを機械的に加工する、特に圧縮するために、利用することができる。従ってこの領域は、ストッパとして使用することができる。
【0015】
その場合に好ましくは、領域は、容器の終端肥厚部の一部である。
【0016】
その場合に好ましくは、放出開口部は、半球形状によって定められる極軸に関して非対称に、特に側方に、配置されている。それによって、狭い空洞への接近が容易になる。
【0017】
本発明の第3の視点によれば、振動エネルギの供給によってその粘性を減少させることができる、ペースト状の充填コンパウンドを放出するための、特に歯科目的用の、手動器具と共に使用するための容器が設けられている。その場合に容器は、ペースト状の充填コンパウンドを収容するために形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部を有している。さらに、容器は、放出開口部を閉鎖するためのキャップを有している。
【0018】
その場合に好ましくは、キャップは、好ましくはくさび状の成形尖端として形成されている。振動効果によって、成形尖端により、空洞内へ投入された充填コンパウンドの特に容易かつ形状結合のモデリングが得られる。
【0019】
本発明の他の視点によれば、本発明に基づく容器を有する、特に歯科用目的のための、手動器具が設けられる。
【0020】
以下、実施例を用い、かつ図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づく容器および手動器具の第1の実施例を示す略図である。
【図2】屈曲されたカニューレを有する第1の実施例の変形例を示している。
【図3】本発明に基づく容器を用いて形成された試料体とそれを用いずに形成された試料体の4つの例を示す図である。
【図4】図4Aと4Bは、本発明に基づく容器が歯の空洞へ接近することを示す略図である。
【図5】本発明に基づく容器および手動器具の第2の実施例を示す略図である。
【図6】他の実施例を示す略図である。
【図7】図7Aから7Cは、成形尖端として形成されている、キャップを使用しながら、本発明に基づく容器ないし手動器具を使用することを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、本発明に基づく容器2ないし本発明に基づく手動器具6の第1の実施例の略図が示されている。容器2ないし容器2を有する手動器具6は、ペースト状の充填コンパウンドを放出するために用いられ、その粘性は、振動エネルギの供給によって減少させることができる。その場合に容器2ないし手動器具6は、特に歯の空洞内へ充填コンパウンドを放出するために設けることができる。容器2は、粘性の充填コンパウンドを収容するように形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部8を有している。
【0023】
手動器具6は、振動を発生させるために、たとえば音波ジェネレータまたは超音波ジェネレータの形式の、振動ジェネレータ(図面にはそれとして示されていない)を有することができ、その振動がその後容器2へ伝達される。
【0024】
容器2は、たとえば上述した特許文献1に記載されているような、容器とすることができる。上述した文献内で、容器2は、カルトゥーシェとも称され、たとえば、充填コンパウンドを収容するために設けられたストック容器または収容容器とノズルとを有することができ、そのノズルは、特に流出開口部へ向かって細くなるように形成することができる。特許文献1の内容は、はっきりと参照され、内容は、この明細書内に取り込まれている。この主旨において、図1内で参照符号2.1は、容器2のストック容器または収容容器を示し、参照符号2.2は、容器2のノズルを示している。
【0025】
流出開口部8の領域内で容器2を特別に形成することによって、−従来技術に比較して−手動器具6によって作業をする際に、充填コンパウンドの粘性のポジティブな調節を行なうことができる。そのために、容器2の流出開口部8は、カニューレ4によって形成されている。その場合にカニューレ4は、特に別体の構成部品とすることができる。その場合にカニューレ4は、残りの容器2内へ、たとえばノズル2.1内へ挿入し、あるいは取り付けることができる。カニューレ4は、その長さにわたって一定の内径を有する小パイプによって形成することができる。
【0026】
カニューレ4は、たとえば、残りの容器2とは異なる比重を有する材料からなることができる。その場合に好ましくは、カニューレ4は、鋼、アルミニウムまたはセラミックからなる。その場合にノズル2.1は、−それ自体従来技術から知られているように−プラスチックからなることができる。
【0027】
ノズル2.1を伴うカニューレ4の長さ比を、使用される充填コンパウンドの材料に正確に合わせることによって、液化度の著しい増大が得られる。図3には、4つの試料体の例が示されており、それらは本発明に基づく容器2を用いて形成されたものとそれを用いずに形成されたものである。符号Iで示す試料体は、上述した従来技術に従って、プラスチックノズルを使用して形成されており、符号IIで示す試料体は、本発明に基づく鋼カニューレを備えた容器を使用して形成されている。従来技術に基づく、符号Iで示される試料体は、比較的激しいウロコ状の重なりとよりマットな表面とを有している。これは、符号IIで示す、本発明に基づく試料体を形成する場合に、充填コンパウンドの液化度が著しく良好ないし高かったことを示している。
【0028】
図2に示唆するように、カニューレ4は、屈曲することができ、ないし撓むことができる。それによって異なる空洞へのより良好な接近が行なわれる。歯科の適用領域においては、このようにして、図4Aと4Bに示すように、正中のボックスへより良好に達することができる。そのために、たとえばカニューレ4は、アルミニウムからなることができるので、特に処置の間に、手で、それぞれの処置に具体的に適合された形状に屈曲することができる。
【0029】
屈曲されたカニューレ4は、円錐状のノズル2.2と組み合わせて射出成形技術によって容易に、あるいはさしたる手間なしで、形成される。
【0030】
カニューレ4のための材料として金属を使用することによって、さらに、処置される歯と接触した場合に、プラスチックの摩耗ないし溶融を防止することができる。しかし、カニューレ4のために他の材料、たとえばセラミック、を使用することもできる。
【0031】
カニューレ4を残りの容器2と、従ってたとえばノズル2.2と、結合するために、接着、プレス嵌めまたはねじ結合を設けることができる。カニューレ4は、容器2を形成する間に鋳造によって残りの容器2ないしノズル2.2と結合することもできる。
【0032】
図5には、本発明に基づく容器2と手動器具6の第2の実施例の略図が示されている。以下において他の記載がない限りにおいて、上述した第1の実施例を参照した形態が、同様に当てはまる。
【0033】
第2の実施例において、放出開口部は、容器2の領域10内に配置されており、その領域は、少なくとも実質的に半球形状を描く外側面を有している。たとえば、領域10は、容器2ないしノズル2.2の好ましくは球形を描く終端肥厚部の一部とすることができる。この種の肥厚によって、それに直接連続するノズルの部分に比較して、周面の増加が得られる。領域10は、充填コンパウンドを空洞内へ放出した後にストッパとして使用され、そのストッパによって充填コンパウンドを圧縮することができる。それによって全体として取扱いが容易になる。
【0034】
図6には、放出開口部8が、半球形状によって定められる極軸12に関して非対称に、特に側方に配置されている例が示されている。その場合に、図6の略図に示すように、複数の流出開口部を配置することができる。その場合に特に、極軸12を貫く開口部を設けないことができる。1つないし複数の流出開口部は、たとえば半球形状の赤道の領域に配置することができる。
【0035】
この形態によって、特に狭い空洞への接近が容易になる。さらに、容器2の領域10は、ストッパまたはモデリング尖端として使用することができる。
【0036】
図5と6を用いて示される2つの例において、少なくとも実質的に半球形状を描く外側面を有する領域10は、別体のアタッチメントによって形成することができ、それを残りの容器2ないしノズル2.2上に取り付けることができる。代替的に、それを残りの容器2と一体的に形成することができる。
【0037】
図示されるすべての実施例において、カニューレ4ないしノズル2.2の前方の端部領域は、特に一体的に形成する場合においても、残りの容器2の材料の比重とは異なる比重を有する材料から形成することができる。
【0038】
図7A、7B、7Cには、本発明に基づく容器2ないし手動片6の第3の実施例の略図が示されている。他の記載がない限りにおいて、上の形態がここでも同様に当てはまる。この形態において、容器2は、1つないし場合によっては複数の流出開口部を閉鎖するためのキャップ14を有している。
【0039】
図7Aには、空洞18を有する歯16が示されている。図7Bには、空洞18がすでに容器2を用いて充填コンパウンド20によって−プレパレーション端縁を越えて−充填されている状態が示されている。図7Cには、モデリング尖端または成形尖端として形成されているキャップ14によって、空洞18内へ投入された充填コンパウンド20の形状にどのようにして影響を与えることができるか、が示されている。そのためにキャップ14は、特にくさび形状を有することができる。成形尖端による作業は、容器2とそれに伴ってかぶせられたキャップ14へ伝達される振動によって、特に容易になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動エネルギの供給によってその粘性を減少させることができる、ペースト状の充填コンパウンドを放出するための、特に歯科目的用の、手動器具と共に使用するための容器であって、その場合に容器(2)が、ペースト状の充填コンパウンドを収容するために形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部(8)を有している、前記容器において、
放出開口部(8)が、カニューレ(4)によって形成されていることを特徴とする手動器具と共に使用するための容器。
【請求項2】
カニューレ(4)が、残りの容器(2)とは異なる比重を有する材料からなる、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
カニューレ(4)が、鋼、アルミニウムまたはセラミックからなる、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
カニューレ(4)が可撓性であり、あるいは屈曲されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
カニューレ(4)が、残りの容器(2)と接着結合、プレス嵌めまたはねじ結合を介して結合されており、あるいはカニューレ(4)が、容器(2)を形成する間に鋳造によって残りの容器(2)と結合されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
振動エネルギの供給によってその粘性を減少させることができる、ペースト状の充填コンパウンドを放出するための、特に歯科目的用の、手動器具と共に使用するための容器であって、その場合に容器(2)が、ペースト状の充填コンパウンドを収容するために形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部(8)を有している、前記手動器具と共に使用するための容器において、
放出開口部(8)が容器(2)の、少なくとも実質的に半球形状を描く外表面を有する領域(10)内に配置されていることを特徴とする手動器具と共に使用するための容器。
【請求項7】
領域(10)が、容器(2)の終端肥厚部である、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
放出開口部(8)が、半球形状によって定められる極軸(12)に関して非対称に、特に側方に、配置されている、請求項6または7に記載の容器。
【請求項9】
振動エネルギの供給によってその粘性を減少させることができる、ペースト状の充填コンパウンドを放出するための、特に歯科目的用の、手動器具と共に使用するための容器であって、その場合に容器(2)が、ペースト状の充填コンパウンドを収容するために形成されており、かつその前端部に、充填コンパウンドを放出するための放出開口部(8)を有している、前記手動器具と共に使用するための容器において、
放出開口部(8)を閉鎖するためのキャップ(14)を特徴とする、手動器具と共に使用するための容器。
【請求項10】
キャップ(14)が、好ましくはくさび形状の成形尖端として形成されている、請求項9に記載の容器。
【請求項11】
特に歯科目的用の、手動器具において、
請求項1から10のいずれか1項に記載の容器(2)を特徴とする、手動器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−532637(P2012−532637A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519007(P2012−519007)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059879
【国際公開番号】WO2011/004002
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(305039194)カルテンバッハ ウント ホイクト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (36)
【氏名又は名称原語表記】Kaltenbach & Voigt GmbH
【Fターム(参考)】