説明

手持ち工具

【課題】 手持ち工具において、先端工具に作用する力の有無及び大きさについての異なる複数の負荷状態を検知する上で有効な技術を提供する。
【解決手段】 工具本体103の先端領域に備えられた先端工具119を被加工材に押し付けつつ所定の加工作業を行う手持ち工具101であって、先端工具119に作用する荷重の有無及び大きさについての異なる複数の負荷状態を、それぞれ異なる種類の複数の検知手段161で検知するとともに、複数の検知手段161による検知結果に基づき負荷状態を報知する報知手段171と、検知結果に基づき先端工具119の駆動制御を行なう駆動制御装置135との、少なくとも1つを有することを特徴とする手持ち工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端工具の駆動により被加工材に所定の加工作業を遂行する手持ち工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電動ハンマにおいては、作業者に作業効率向上のための情報を提供するようにしたものが知られている。特公昭60−31635号公報(特許文献1)には、作業者が先端工具としてのハンマビットを被加工材に押し付けてハンマ作業を行うときの押付荷重を検知する押付力検知器を設け、当該検知器によって検知された押付力が最適押付荷重であるかを演算し、表示する技術が開示されている。
【0003】
上記の技術は、ハンマビットの押付荷重、すなわちハンマビットに作用する負荷状態につき、押付力検知器を用いて検知する構成である。ハンマビットの押付荷重を検知する検知器として、例えば一般的に用いられる、モータの負荷電流を検知する電流センサを採用した場合には、ハンマビットが被加工材に押し付けられていない無負荷状態と押し付けられた負荷状態との検知、すなわち負荷電流が大きく変動する押付荷重の有無については正確に検知できるものの、モータの負荷電流の変動が小さい押し不足あるいは押し過ぎといった荷重の大きさの検知には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭60−31635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、手持ち工具において、先端工具に作用する荷重の有無及び大きさについての異なる複数の負荷状態を検知する上で有効な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の好ましい形態によれば、工具本体の先端領域に備えられた先端工具を被加工材に押し付けつつ所定の加工作業を行う手持ち工具が構成される。本発明における「手持ち工具」としては、典型的には、コンクリートのような被加工材に対して、工具ビットによるハンマ作業あるいはハンマドリル作業等を行なう電動ハンマ、ハンマドリル等の打撃工具がこれに該当するが、穴開け作業に用いられるドリル、振動ドリル、研削や研磨作業に用いられる電動ディスクグラインダ、あるいは被加工材の切断作業を行う丸鋸等の回転式切断機、あるいはネジ締め作業を行うネジ締め機等を好適に包含する。
【0007】
本発明においては、先端工具に作用する荷重の有無及び大きさについての異なる複数の負荷状態を、それぞれ異なる種類の複数の検知手段で検知し、そして複数の検知手段による検知結果に基づき当該負荷状態を報知する報知手段と、検知結果に基づき先端工具の駆動制御を行なう駆動制御装置との、少なくとも1つを有する構成とした。なお、本発明における「異なる複数の負荷状態」は、典型的には、先端工具が被加工材に押し付けられていない無負荷状態、先端工具が被加工材に押し付けられた通常負荷状態、先端工具が被加工材に過度の荷重で押し付けられた重負荷状態がこれに該当する。また、本発明における「異なる種類の複数の検知手段」としては、典型的には、モータの負荷電流を検知する手段、先端工具を被加工材に押し付けた際に相対移動する2部材の相対位置変位を検出する位置センサを用いることが可能である。また、本発明における「報知手段」としては、ライト等を用いて表示する視覚的な表示態様、ブザーのような音、声音等を用いて報知する聴覚的な報知態様を好適に包含する。また、本発明における「先端工具の駆動制御」とは、典型的には、先端工具の回転速度を変更する態様がこれに該当する。
【0008】
本発明によれば、先端工具に作用する荷重の有無及び大きさについての異なる複数の負荷状態を、それぞれ異なる種類の複数の検知手段で検知する構成としたことにより、当該異なる種類の複数の検知手段の特性を活用する形態で先端工具の異なる複数の負荷状態を合理的かつ正確に検知することができる。また、検知手段による検知結果に基づき、負荷状態に関する情報を作業者に報知させ、あるいは先端工具を駆動制御することができる。また、負荷状態に関する情報を作業者に報知する構成であれば、作業者による重負荷状態での使用回避を促すことにもなるため、内部機構に無理な負荷が掛かるのを抑えて手持ち工具の耐久性を向上できる。
【0009】
本発明の更なる形態によれば、工具本体に対して相対移動可能に取付けられた作業者が握るハンドルを有し、異なる種類の複数の検知手段として、モータの負荷電流を検知する電流センサと、工具本体に対するハンドルの相対位置を検知する位置センサを有する構成とした。なお、本発明における「相対移動可能に取付けられたハンドル」は、例えば手持ち工具がハンマあるいはハンマドリルの場合であれば、ハンドルが弾性体を介して工具本体に連結される防振ハンドルとして構成される。そして、その場合の「相対移動可能」の方向は、被加工材に対する先端工具の押付け方向、すなわち当該先端工具の長軸方向となる。
本発明によれば、先端工具の異なる複数の負荷状態間での負荷電流変動が大きい形態については、電流センサによって検知し、一方負荷状態間での負荷電流変動が比較的小さい形態については、工具本体に対するハンドルの相対位置を位置センサによって検知するといった形で各負荷状態を正確に検知することができる。
【0010】
本発明の更なる形態によれば、位置センサは、マイクロスイッチである。位置センサとしてマイクロスイッチを用いることにより、工具本体に対するハンドルの僅かな変位量を高精度で検知することができる。
【0011】
本発明の更なる形態によれば、報知手段は、検知された複数の負荷状態に応じて報知態様が異なるように設定されている。なお、本発明における「報知態様が異なる」とは、例えば報知手段が、ライト(光)で視覚的に表示する表示装置によって構成される場合であれば、検知された複数の負荷状態に応じて単一のライトの色を変える態様、連続点灯、点滅の如く点灯の仕方を変化させる態様、あるいは複数のライトを検知された複数の負荷状態に応じて点灯、消灯させる態様等、広く包含する。
本発明によれば、検知された複数の負荷状態に応じた報知をすることで、作業者に加工作業を遂行する上で有効な情報を提供することができる。
【0012】
本発明の更なる形態によれば、検知手段の少なくとも一つは、当該報知手段による負荷状態の報知と、駆動制御装置による先端工具の駆動制御との双方を行なわせる構成としている。このような構成とすることで、作業者は報知手段を通じて先端工具の負荷状態に関する情報を受けつつ、駆動制御装置による先端工具の駆動制御が行なわれることで安心して加工作業を遂行することができる。
【0013】
本発明の更なる形態によれば、先端工具は、少なくとも当該先端工具の長軸方向に打撃動作するハンマビットとして構成されている。そして検知手段の一つは、モータ電流を検知して、ハンマビットが被加工材に押し付けられていない無負荷状態と、ハンマビットが被加工材に押し付けられた通常負荷状態を検知し、当該検知結果に基づいて報知手段が負荷状態を報知するとともに駆動制御装置がハンマビットの駆動制御を行なう構成とされ、他の一つの検知手段は、ハンマビットの被加工材への押付荷重が所定の荷重を超える重負荷状態を検知し、その検知結果に基づいて報知手段が重負荷状態を報知する構成とされている。
本発明によれば、先端工具が長軸方向に打撃動作して被加工材に加工作業を行うハンマ、あるいはハンマドリルのような打撃工具が構成される。作業者は報知手段を通じて先端工具の負荷状態に関する情報を受けつつ、駆動制御装置による先端工具の駆動制御がなされることで安心して打撃工具による加工作業を遂行することができる。
【0014】
本発明の更なる形態によれば、位置センサが工具本体とハンドルとの最接近位置を検知したとき、当該検知結果に基づき先端工具が重負荷状態にあることを報知手段によって報知する構成とした。ハンドルが防振ハンドルで構成される場合には、防振ハンドルの防振効果が失われるほど強く押付けたときの位置が「最接近位置」に相当し、これにより、作業者に過大な押し付け状態にあることを知らせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、手持ち工具において、先端工具に作用する荷重の有無及び大きさについての異なる複数の負荷状態を検知する上で有効な技術が提供されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るハンマドリルの全体構成を示す側断面図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】表示装置、マイクロスイッチ及びハンドグリップの一部等を示す平断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態につき、図1〜図3を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態では、手持ち工具の一例として電動式のハンマドリルを用いて説明する。ハンマドリル101は、図1に示すように、概括的に見て、ハンマドリル101の外郭を形成する本体部103、当該本体部103の先端領域(図示左側)にツールホルダ137を介して着脱自在に取付けられたハンマビット119、及び本体部103のハンマビット119の反対側に連接された使用者が握るメインハンドルとしてのハンドグリップ109を主体として構成されている。本体部103は、本発明における「工具本体」に対応し、ハンドグリップ109は、本発明における「ハンドル」に対応し、ハンマビット119は、本発明における「先端工具」に対応する。ハンマビット119は、ツールホルダ137によってその長軸方向への相対的な往復動が可能に、かつその周方向への相対的な回動が規制された状態で保持される。なお説明の便宜上、本体部103がハンマビット119の長軸方向を水平方向とする向きに置かれた状態において、ハンマビット119側を前、ハンドグリップ109側を後という。
【0018】
本体部103は、駆動モータ111を収容したモータハウジング105と、運動変換機構113、打撃要素115及び動力伝達機構117を収容したギアハウジング107とを主体として構成されている。運動変換機構113、動力伝達機構117及び打撃要素115によってハンマビット119の駆動機構が構成される。駆動モータ111の回転出力は、運動変換機構113によって直線運動に適宜変換された上で打撃要素115に伝達され、当該打撃要素115を介してハンマビット119の長軸方向(図1における左右方向)への衝撃力を発生する。また、駆動モータ111の回転出力は、動力伝達機構117によって適宜減速された上でハンマビット119に伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。
【0019】
駆動モータ111は、ハンマビット119の長軸方向の下方側において、回転軸線(出力軸112)の延長線がハンマビット119の長軸線(長軸方向)を横切るように交差状に配置されている。なお、駆動モータ111は、ハンドグリップ109に配置された操作部材としてのトリガ109aを作業者が引き操作することによって通電駆動される。
【0020】
運動変換機構113は、クランク機構を主体として構成される。クランク機構は、駆動モータ111によって回転駆動されることで当該クランク機構の最終可動部材を構成する駆動子としてのピストン129がシリンダ141内をハンマビット長軸方向に直線動作するように構成される。一方、動力伝達機構117は、複数のギアからなるギア減速機構を主体として構成され、駆動モータ111の回転力をツールホルダ137に伝達する。これによりツールホルダ137が鉛直面内にて回転され、それに伴い当該ツールホルダ137により保持されたハンマビット119が回転する構成とされる。なお、運動変換機構113及び動力伝達機構117の構成については、従来周知ゆえ、その詳細な説明を省略する。
【0021】
打撃要素115は、ピストン129とともにシリンダ141のボア内壁に摺動自在に配置された打撃子としてのストライカ143と、ツールホルダ137に摺動自在に配置された中間子としてのインパクトボルト145とを主体として構成される。ストライカ143は、ピストン129の摺動動作に伴うシリンダ141の空気室141aの空気バネ(圧力変動)を介して駆動され、インパクトボルト145に衝突(打撃)し、当該インパクトボルト145を介してハンマビット119に打撃力を伝達する。
【0022】
ハンドグリップ109は、ハンマビット119の長軸方向と交差する上下方向に延在するグリップ部121を主体として構成されるとともに、当該グリップ部121の上端部と下端部には、それぞれ前方に向かって突出する連接部122,123が形成され、それら上下の連接部122,123が本体部103の後部に連接されている。これによりハンドグリップ109は、ループ状ハンドル(D形ハンドル)を構成している。
【0023】
上側の連接部122は、加工作業時におけるハンドグリップ109の振動吸収用弾性体としてのコイルバネ151を介してギアハウジング107の後端上部に連接されている。コイルバネ151は、ハンマビット119の長軸線の延長線よりもやや上方位置、(延長線を挟んで後述する回動軸159の反対側)に配置されるとともに、その弾発力の作用方向(長軸方向)が振動の入力方向、すなわちハンマビット119の長軸方向と概ね一致するように配置されている。コイルバネ151は、図3に示すように、リアハウジングカバー149の後側上端に設けた上側の開口149aを貫通して前方へと延在されるとともに、その端部(前端部)がギアハウジング107に一体に形成されたバネ受部152によって支持され、他端(後端部)が上側の連接部122に取付けられたバネ受153によって支持される。
【0024】
なお、上側の連接部122の前端部とリアハウジングカバー149の後面との間には、コイルバネ151を覆うゴム製の防塵用の伸縮カバー154が設けられている。また、図3に示すように、上側の連接部122の前面側には、所定長さで前方に突出する左右一対の柱状の連結部155がコイルバネ151を挟んで対称かつ一体に設けられている。左右の連結部155は、リアハウジングカバー149に形成された左右の筒状ガイド部156の筒孔にそれぞれ後方から遊嵌状に挿入され、筒状ガイド部156に対しハンマビット119の長軸方向(前後方向)への相対移動が可能とされている。そして、各連結部155には前方から連結ネジ157がねじ込まれるとともに、当該連結ネジ157の頭部157aが筒状ガイド部156の前面に当接されている。これにより連結部155が筒状ガイド部156に抜け止めされている。かくして、上側の連接部122は、リアハウジングカバー149に対して前後方向への相対移動が許容された状態で連結される。
【0025】
一方、下側の連接部123は、図1に示すように、リアハウジングカバー149の下方後端側に設けた左右方向に水平な回動軸159に回動自在に支持されている。これによりハンドグリップ109は、本体部103に対して、回動軸159を回動支点としてハンマビット119の長軸方向(前後方向)に相対回動可能に連接される。かくして、ハンドグリップ109は防振ハンドルとして構成され、加工作業において、本体部103からハンドグリップ109へと伝達されるハンマビット119の長軸方向の振動に対し、コイルバネ151による振動吸収作用が効果的に作用することになる。
【0026】
なお、リアハウジングカバー149は、ギアハウジング107の側面後方を含む後部領域、及びモータハウジング105の側面後方を含む後部領域を覆うように配置され、モータハウジング105及びギアハウジング107に対して、ネジ等の止着手段(便宜上図示を省略する)によって止着されている。すなわち、リアハウジングカバー149は、本体部103の一部を構成する構成部材として備えられる。
【0027】
上記のように構成されるハンマドリル101においては、トリガ109aの引き操作によって駆動モータ111が通電駆動されると、その回転出力は、運動変換機構113を介して直線運動に変換された後、打撃要素115を介してハンマビット119に長軸方向の直線運動、つまりハンマ動作を行わせる。またハンマビット119には、上記のハンマ動作に加え、駆動モータ111の回転出力によって駆動される動力伝達機構117によって周方向のドリル動作が加えられる。すなわち、ハンマドリル101は、作業者がハンドグリップ109を把持し、ハンマビット119を被加工材に押付けるように、コイルバネ151の付勢力に抗して前方への押圧力をさせつつ、ハンマビット119に対し長軸方向のハンマ動作と周方向のドリル動作とを行わせることによって被加工材(例えば、コンクリート)に穴開け作業を遂行することができる。
【0028】
本実施の形態においては、ハンマビット119に作用する負荷状態を検出するための電流センサ(便宜上図示を省略する)及びマイクロスイッチ161と、ハンマビット119の負荷状態を作業者に視覚的に報知する表示装置171と、負荷状態に応じてハンマビット119の駆動制御、すなわち駆動モータ111の駆動制御を行うコントローラ135とを備えている。電流センサとマイクロスイッチ161が、本発明における「異なる複数の検知手段」に対応し、表示装置171が本発明における「報知装置」に対応し、コントローラ135が本発明における「駆動制御装置」に対応する。
【0029】
電流センサは、被加工材に対するハンマビット119の押付力の有無、すなわちハンマビット119に作用する荷重(被加工材から受ける回転抵抗及び/又は打撃抵抗)の有無を検出する手段として備えられ、トリガ109aが引き操作されて駆動モータ111が通電駆動された状態において、ハンマビット119が被加工材に押付けられているか否かによって変動する当該駆動モータ111の負荷電流を測定し、その測定値をコントローラ135に出力する。すなわち、電流センサは、負荷電流の大きさによってハンマビット119が被加工材に押付けられていない状態(以下、この状態を無負荷状態又は無負荷時という)と、ハンマビット119が通常の押付力で被加工材に押付けられている状態(以下、この状態を通常負荷状態又は通常負荷時という)とを検出する構成とされる。
【0030】
一方、マイクロスイッチ161は、ハンマビット119が被加工材に対して過度の押付力で押付けられた状態、すなわち、作業者がハンドグリップ109に対し前方への押圧力を過度に加えた状態(以下、この状態を重負荷状態又は重負荷時という)を、本体部103に対するハンドグリップ109の相対位置によって検知する手段として備えられる。マイクロスイッチ161は、図2及び図3に示すように、ギアハウジング107に取り付けられており、常時にはオフ(又はオン)状態に保持され、ハンドグリップ109が過大な力で前方へと押圧され、ハンドグリップ109に設けられた連結ネジ157の頭部157aによって作動部163を押されたときに、オン(又はオフ)状態とされる。このマイクロスイッチ161のオン・オフ信号は、コントローラ135に出力される。すなわち、マイクロスイッチ161は、ハンドグリップ109の連結ネジ157を被検知部として検知する構成とされており、本発明における「位置センサ」に対応する。
【0031】
なお、連結ネジ157の頭部157aによってマイクロスイッチ161の作動部163が押圧作動されたときの、ハンドグリップ109の本体部103に対する相対位置は、防振用のコイルバネ151が、コイル同士が密着する最大圧縮状態まで圧縮され、これによりハンドグリップ109が最早防振ハンドルとして機能しなくなる位置として設定されている。マイクロスイッチ161の作動部163が押圧作動されたときの、ハンドグリップ109の本体部103の相対位置が、本発明における「工具本体とハンドルとの最接近位置」に対応する。
【0032】
表示装置171は、図2及び図3に示すように、青色と赤色の2個のLEDライト(発光ダイオード)173,175と、当該LEDライト173,175を保持するライトベース177とを主体として構成される。表示装置171は、ギアハウジング107の上面にライトベース177をネジ176で固定することで取り付けられている。そして2個のLEDライト173,175が当該ギアハウジング107の外側を覆うギアハウジングカバー108に設けた開口108aを通じて本体部103の上面領域の外側へと発光する構成とされている。
【0033】
コントローラ135は、モータハウジング105の後方に配置されるとともに、当該モータハウジング105とリアハウジングカバー149間の空間に収容されている。コントローラ135は、電流センサによって測定された駆動モータ111の負荷電流の測定値及びマイクロスイッチ161の検出結果に基づき、表示装置171のLEDライト173,175の点灯・消灯を制御する。本実施の形態では、測定値が予め定めた測定値よりも低い無負荷時には、2個のLEDライト173,175を共に消灯させ、測定値が予め定めた測定値よりも高い通常負荷時には、青色のLEDライト173のみを点灯させ、マイクロスイッチ161がオン状態とされた重負荷時には、赤色のLEDライト175のみを点灯させるように構成されている。
【0034】
また、コントローラ135は、駆動モータ111(ハンマビット119)につき、無負荷時には低速回転で駆動し、通常負荷時には定常の高速回転で駆動し、重負荷時には通常負荷時よりも低い低速高トルクで回転駆動するように、駆動モータ111の回転速度を制御する構成とされている。なお、図中の165はマイクロスイッチ161とコントローラ135を電気的に接続する電線を示し、179はLEDライト173,175とコントローラ135を電気的に接続する電線を示している。
【0035】
本実施形態のハンマドリル101は、上記のように構成されている。従って、作業者がハンドグリップ109を把持してトリガ109aを引き操作し、駆動モータ111を通電駆動して加工作業を行う場合において、当該駆動モータ111の負荷電流が電流センサによって測定され、その測定値がコントローラ135に出力される。そしてコントローラ135は、電流センサから入力される測定値が設定値よりも低い場合には、ハンマビット119が被加工材に押付けられていない無負荷状態であると判別し、そのときは表示装置171の2つのLEDライト173,175を共に点灯させないとともに、駆動モータ111を低速回転で駆動するよう制御する。
【0036】
一方、電流センサから入力される測定値が設定値よりも高い場合には、コントローラ135は、ハンマビット119が被加工材に対して通常の押付力(ハンドグリップ109のコイルバネ151の圧縮変形可能範囲内)で押付けられた通常負荷状態であると判別し、そのときは青のLEDライト173のみを点灯させるとともに、駆動モータ111を定常の高速回転で駆動するよう制御する。
【0037】
また、マイクロスイッチ161の作動部163が連結ネジ157の頭部157aによって押圧作動された場合には、当該マイクロスイッチ161の連結ネジ157の検知信号がコントローラ135に出力される。すると、コントローラ135は、ハンドグリップ109がコイルバネ151のコイル同士が密着される状態まで過度に押圧されて、被加工材に対するハンマビット119の押付け状態が重負荷状態にあると判別し、そのときは表示装置171の赤いLEDライト175のみを点灯させるとともに、駆動モータ111を通常負荷時よりも減速された低速高トルクで駆動するよう制御し、これによりハンマビット119の高トルクでのハンマドリル作業を可能とする。
【0038】
このように本実施の形態によれば、ハンマビット119に作用する荷重の有無及び荷重の大きさが異なる無負荷状態と通常負荷状態と重負荷状態との複数の負荷状態につき、駆動モータ111の負荷電流を測定する電流センサと、本体部103に連結された防振構造のハンドグリップ109の当該本体部103に対する相対位置を検知するマイクロスイッチ161との2種の検知手段を用いて検知することができる。そして、ハンマビット119の負荷状態を表示装置171によって作業者に知らせるとともに、負荷状態に応じて駆動モータ111の回転速度を制御し、ハンマビット119を負荷状態に応じた速度で回転駆動することができる。
【0039】
ところで、駆動モータ111の負荷電流は、無負荷状態と通常負荷状態間では大きく変化するものの、通常負荷状態と重負荷状態間ではその変化が小さい。本実施の形態においては、無負荷状態と通常負荷状態については、電流センサによって検知する構成とし、一方、重負荷状態については、ハンドグリップ109が本体部103に対して相対移動可能に弾性連結された防振構造であることを利用し、当該ハンドグリップ109の本体部103に対する相対位置、特にコイルバネ151のコイル同士が密着する状態まで圧縮されたときの位置をマイクロスイッチ161により検知する方式としている。これにより、電流センサ及びマイクロスイッチ161の特性を活用する形態で各負荷状態を正確かつ合理的に検知することができる。また、重負荷状態ではハンドグリップ109が防振ハンドルとして機能していないことを作業者に知らせることができる。
【0040】
また本実施の形態によれば、位置センサとしてマイクロスイッチ161を用いることにより、本体部103に対するハンドグリップ109の僅かな変位量を確実に検知することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、表示装置171を用いて作業者に対しハンマビット119に関する現状の負荷状態を知らせる構成としたことで、作業者は当該情報に基づいて加工作業を安心して遂行できる。また、作業者に対して負荷状態に関数する情報が提供されることで、重負荷状態での使用回避を促すことにもなり、内部機構に無理な負荷が掛かるのが抑えられ、ハンマドリル101の耐久性の向上につながる。また、LEDライト173,175を主体として構成される表示装置171を本体部103(ギアハウジング107)の上面領域に配置し、ギアハウジングカバー108の開口108aを通じて発光する構成としたことで、作業者は視線をハンマビット119による加工領域に向けた状態を維持しつつ負荷状態に関する情報をLEDライト173,175の点灯、消灯を通じて容易に確認することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、2個のLEDライト173,175を主体として構成される表示装置171のLEDライト173,175の消灯、点灯及び点灯時の発光色等によって複数の負荷状態を区別する表示形態としたが、当該表示形態は一例を示したものであり、LEDライト173,175の表示の仕方については、例えば重負荷状態では、点滅させる等、適宜変更してもよい。また、単一のLEDライトを用いて表示する構成に変更してもよい。また、ライト(光)による表示に変えて、例えば液晶パネルを利用したデジタル表示も可能であるし、また、視覚的な表示による報知方式に変えてブザーのような音あるいは音声を利用して聴覚的に報知する手段を用いることも可能である。
【0043】
また本実施の形態では、ハンマビット119に作用する荷重の有無、及び大きさが異なる複数の負荷状態を検知した際、検知結果に基づいて表示装置171による表示と、コントローラ135による駆動モータ111の駆動制御の双方を行う構成としたが、少なくともいずれか一方を行う構成としてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、ハンドグリップ109が防振用コイルバネ151のコイル同士が密着した場合にマイクロスイッチ161が検知信号を出力するとしたが、コイル同士が密着する前の段階で検知信号を出力するように構成してもよい。またマイクロスイッチ161は、接触式に限らず非接触式を用いてもよい。
【0045】
また、本実施の形態は、手持ち工具として、電動ハンマドリル101を例にとって説明したが、電動ハンマドリル以外の手持ち工具、例えば穴開け作業に用いられるドリル、振動ドリル、研削や研磨作業に用いられる電動ディスクグラインダ、あるいは被加工材の切断作業を行う丸鋸等の回転式切断機、あるいはネジ締め作業を行うネジ締め機等にも適用することが可能である。
【0046】
上記発明の趣旨に鑑み、下記のごとき態様が構成可能である。
(態様1)
「請求項1〜7のいずれか1つに記載の手持ち工具であって、前記報知手段は、少なくとも1つのライトを有する視覚的な表示装置によって構成されていることを特徴とする手持ち工具。」
【0047】
(態様2)
「態様1に記載の手持ち工具であって、前記表示装置は、作業者による手持ち状態での先端工具の後方領域で、かつ工具本体の上面領域に配置されていることを特徴とする手持ち工具。」
【符号の説明】
【0048】
101 ハンマドリル(手持ち工具)
103 本体部
105 モータハウジング
107 ギアハウジング
108 ギアハウジングカバー
108a 開口
109 ハンドグリップ(ハンドル)
109a トリガ
111 駆動モータ
112 出力軸
113 運動変換機構
115 打撃要素
117 動力伝達機構
119 ハンマビット(先端工具)
121 グリップ部
122,123 連接部
129 ピストン
135 コントローラ
137 ツールホルダ
141 シリンダ
141a 空気室
143 ストライカ
145 インパクトボルト
149 リアハウジングカバー
149a 開口
151 コイルバネ
152 バネ受部
153 バネ受
154 伸縮カバー
155 連結部
156 筒状ガイド部
157 連結ネジ
157a 頭部
159 回動軸
161 マイクロスイッチ
163 作動部
165 電線
171 表示装置
173 LEDライト
175 LEDライト
176 ネジ
177 ライトベース
179 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体の先端領域に備えられた先端工具を被加工材に押し付けつつ所定の加工作業を行う手持ち工具であって、
前記先端工具に作用する荷重の有無及び大きさについての異なる複数の負荷状態を、それぞれ異なる種類の複数の検知手段で検知するとともに、前記複数の検知手段による検知結果に基づき負荷状態を報知する報知手段と、検知結果に基づき前記先端工具の駆動制御を行なう駆動制御装置との、少なくとも1つを有することを特徴とする手持ち工具。
【請求項2】
請求項1に記載の手持ち工具であって、
前記工具本体に対して相対移動可能に取付けられた作業者が握るハンドルを有し、
前記異なる種類の複数の検知手段として、前記モータの負荷電流を検知する電流センサと、前記工具本体に対する前記ハンドルの相対位置を検知する位置センサとを有することを特徴とする手持ち工具。
【請求項3】
請求項2に記載の手持ち工具であって、
前記位置センサは、マイクロスイッチであることを特徴とする手持ち工具。
【請求項4】
請求項1に記載の手持ち工具であって、
前記報知手段は、検知された複数の負荷状態に応じて報知態様が異なるように設定されていることを特徴とする手持ち工具。
【請求項5】
請求項1に記載の手持ち工具であって、
前記検知手段の少なくとも一つは、前記報知手段による負荷状態の報知と、前記駆動制御装置による前記先端工具の駆動制御との双方を行なわせることを特徴とする手持ち工具。
【請求項6】
請求項1に記載の手持ち工具であって、
前記先端工具は、少なくとも当該先端工具の長軸方向に打撃動作するハンマビットとして構成されており、
前記検知手段の一つは、モータの負荷電流を検知して、前記ハンマビットが被加工材に押し付けられていない無負荷状態と、前記ハンマビットが被加工材に押し付けられた通常負荷状態を検知し、当該検知結果に基づいて前記報知手段が負荷状態を報知するとともに前記駆動制御装置が前記ハンマビットの駆動制御を行なう構成とされ、他の一つの検知手段は、前記ハンマビットの被加工材への押し付けが所定の荷重を超える重負荷状態を検知し、その検知結果に基づいて前記報知手段が重負荷状態を報知する構成とされていることを特徴とする手持ち工具。
【請求項7】
請求項2に記載の手持ち工具であって、
前記位置センサが前記工具本体と前記ハンドルとの最接近位置を検知したとき、当該検知結果に基づき前記先端工具が重負荷状態にあることを前記報知手段によって報知することを特徴とする手持ち工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−104736(P2011−104736A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263869(P2009−263869)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】