説明

手持ち研磨装置

【課題】バランサによる回転バランスの調整状態を損なうことなく、研磨作用部に対する把手部の位置を自由に変更でき、操作性に優れた手持ち研磨装置を提供する。
【解決手段】把手部が前記研磨作用部との駆動軸方向の距離を一定に保ちながら駆動軸周りに回転自在かつ回転停止位置に停止可能に形成されているとともに、研磨作業時に把手部に加わると予想される駆動軸周りの回転力以下では、把手部を回転停止位置で回転抑止可能な把手部回転抑止構造を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、自動車の車体の塗装面等を研磨する手持ち研磨装置として、エアーモータ、電動モータ等によって回転駆動する駆動軸と、駆動軸に対して偏芯した状態に設けられ、前記駆動軸の駆動力が伝達される駆動伝達軸と、この駆動伝達軸を介して前記駆動軸の駆動力が伝達されて駆動する研磨作用部と、駆動軸に設けられ駆動軸と駆動伝達軸との偏芯による駆動軸のブレを抑えるバランサと、少なくとも前記駆動軸を覆うとともに前記駆動軸を回転自在に支持し、駆動軸に対して交差する方向に延出する把手部を有するハウジングとを備えるストレートサンダ、ダブルアクションサンダ、オービタルサンダ等の手持ち研磨装置がすでに市販されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、従来の手持ち研磨装置においては、把手部の位置が研磨作用部に対して固定されているため、作業スペースが狭い場合、作業位置が足元近くにある場合などに、非常に作業しづらいという問題がある。
【0004】
そこで、本発明の発明者は、把手部を駆動軸周りに回転自在とした手持ち研磨装置とすれば、作業スペースが狭い場合、作業位置が足元近くにある場合などにおいても作業性がよくなると考え、図10〜図12に示すようなストレートサンダ10を作製してみた。
すなわち、このストレートサンダ10は、ハウジング2と、研磨作用部3とを備えている。
ハウジング2は、ハウジング本体21と、把手部22とを備えている。
【0005】
そして、ハウジング本体21内には、駆動軸4が内蔵され、軸受け41、42によって回転自在に支持されている。
駆動軸4は、把手部22内に設けられたエアーモータ5がエアーコンプレッサー(図示せず)から把手部22の後端に設けられた圧縮空気供給路221を介して圧縮空気が供給されることによって把手部22内で回転し、モータ軸51の先端に設けられた傘歯車52および駆動軸4に固定された傘歯車43によってその回転力が伝達されて回転するようになっている。
【0006】
駆動軸4の下端には、バランサ7がセットボルト71によって固定され、このバランサ7に設けられた軸受け72に、駆動伝達軸8が駆動軸4の中心軸に対して偏芯した状態で回転自在に支持されている。
駆動伝達軸8には、リンク部材81の一端が枢支されている。
【0007】
また、ハウジング本体21は、頭部ハウジング23と、ロックアジャストハウジング24と、連結部材25と、ベース26とを備えている。
頭部ハウジング23は、駆動軸4の上端部と、モータ軸51の先端部とが嵌まり込む略L字形の筒状をしていて、その下端部に連結部材25の上端部が螺合されている。
【0008】
連結部材25は、下端部につば部251を備え、つば部251の上面に複数の断面略矩形をした係止爪252が放射状に等ピッチで形成されている。
【0009】
ベース26は、ベース本体261と、ベース本体261の長手方向の両端部に下方に向かって延出する脚部262とを備えている。
ベース本体261は、駆動軸4の下端が臨む貫通孔263と、補助ハンドル264が着脱自在な2つのねじ孔265とを備えている。
【0010】
貫通孔263は、上端部が連結部材25のつば部251が嵌まり込む大きさの拡径部266が形成されている。拡径部266は、貫通孔263の下端部に比べ段状に拡径していて、皿ばね268が嵌め込まれている。
【0011】
脚部262は、略筒状をしていて、上部開口がベース本体261に閉じられた状態で、ベース本体261に固定されており、内部に研磨作用部3のスライド方向に平行で、後述するガイド部材33をスライド自在に支持するガイドバー269が設けられている。
【0012】
ロックアジャストハウジング24は、下端にフランジ部241を有し、頭部ハウジング23の下端部が回転自在に嵌まり込む筒状をしていて、フランジ部241の下端面に連結部材25の係止爪252が嵌まり込む係合溝242が係止爪252と同数で同じピッチに放射状に形成されている。
【0013】
ロックアジャストハウジング24の筒内部の上端には、頭部ハウジング23との間を気密にシールするOリング245が嵌着されている。
そして、ロックアジャストハウジング24は、小ねじ244によってベース26の上面に固定されている。
【0014】
研磨作用部3は、平面視略矩形をしている研磨作用部本体31と、研磨作用部本体31の研磨作用面である下面に面状ファスナや糊等によって着脱自在な研磨材料としてのサンドペーパ32とを備えている。
研磨作用部本体31は、その上面の脚部262に対応する部分にガイド部材33が小ねじ34によって固定されている。
【0015】
ガイド部材33は、脚部262の両側面をガイドするように立ち上がるガイド爪331と、脚部262内に臨み、ガイドバー269がスライド自在に嵌まり込む貫通孔を有するガイド突起332とを備えている。
また、研磨作用部本体31の上面には、リンク部材81の他端が枢支されている。
【0016】
このストレートサンダ10は、以上のようになっており、頭部ハウジング23が研磨作用部3側に押圧されると、図11に示すように皿ばね268がつば部251とベース本体261との間で圧縮され、頭部ハウジング23、連結部材25、駆動軸4、バランサ7および駆動伝達軸8が、研磨作用部3側に押し込まれて、係止爪252の係合溝242への係合が解除される。つぎに、この押し込み状態を保持した状態で、頭部ハウジング23を回転させれば、把手部22が駆動軸4周りに回転する。そして、把手部22を所望位置まで回転させて、押圧を解除すれば、皿ばね268の付勢力で頭部ハウジング23、連結部材25、駆動軸4、バランサ7および駆動伝達軸8が元の位置まで戻るとともに、係止爪252が係合溝242に係合されて、把手部22が回転した所望位置で固定される。
【0017】
すなわち、このストレートサンダ10によれば、把手部22が駆動軸4の周りを回転自在となっているので、把手部22の回転により、自由に把手部22を作業しやすい位置に固定することができる。したがって、作業者が無理な姿勢をとったりしなくても、研磨作業を行うことができ、作業性がよくなる。
【0018】
しかしながら、このストレートサンダ10の場合、係止爪252と係合溝242との係合を一旦解除させてから把手部22を駆動軸4周りに回転させる構造になっているが、係止爪252と係合溝242との係合の解除にあたっては、頭部ハウジング23、連結部材25、駆動軸4、バランサ7および駆動伝達軸8を研磨作用部3側に押し込まねばならない。したがって、駆動伝達軸8や、この駆動伝達軸8に枢支されたリンク部材81に不必要な力が加わり、駆動伝達軸8を回転自在に支持している軸受け72やリンク部材8などが早期に損傷する原因になったり、駆動軸4の回転バランスが崩れて駆動の際に大きな振動が生じる原因となることがわかった。
【0019】
【特許文献1】実公平6−34929号公報
【特許文献2】特開平8−155810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みて、バランサによる回転バランスの調整状態を損なうことなく、研磨作用部に対する把手部の位置を自由に変更でき、操作性に優れた手持ち研磨装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明にかかる手持ち研磨装置は、動力によって回転駆動する駆動軸と、駆動軸に対して偏芯した状態に設けられ、前記駆動軸の駆動力が伝達される駆動伝達軸と、この駆動伝達軸を介して前記駆動軸の駆動力が伝達されて駆動する研磨作用部と、駆動軸に設けられ駆動軸と駆動伝達軸との偏芯による駆動軸のブレを抑えるバランサと、少なくとも前記駆動軸を覆うとともに前記駆動軸を回転自在に支持し、駆動軸に対して交差する方向に延出する把手部を有するハウジングとを備える手持ち研磨装置において、前記把手部が前記研磨作用部との駆動軸方向の距離を一定に保ちながら駆動軸周りに回転自在かつ回転停止位置に停止可能に形成されているとともに、研磨作業時に把手部に加わると予想される駆動軸周りの回転力以下では、把手部を回転停止位置で回転抑止可能な把手部回転抑止構造を備えていることを特徴としている。
【0022】
本発明の手持ち研磨装置は、圧縮空気駆動式、電気(直流、交流)駆動式、エンジン駆動式のいずれであっても構わない。
また、具体的には、特に限定されないが、たとえば、ダブルアクションサンダ、オービタルサンダ、ストレートサンダ等が挙げられ、吸塵式のものでも、非吸塵式のいずれでも構わない。砥石を用いるグラインダでも構わない。
【0023】
研磨作用部とは、被研磨物に研磨面を当接させながら被研磨物を研磨するように駆動するものであって、その形状は特に限定されず、たとえば、横断面円形、横断面楕円形、横断面長方形のものの他に、被研磨物に当接させる研磨面が弧状であったり、側面と底面とのコーナー部が面取りされたように凸面あるいは凹面になっていても構わない。
研磨作用部は、通常、研磨作用部本体の研磨作用面にサンドペーパ、バフ等の研磨材料が面状ファスナや糊等によって着脱可能に設けられている。また、研磨作用部は、砥石で形成されていても構わない。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる手持ち研磨装置は、以上のように、把手部が駆動軸周りに回転自在となっているので、把手部の回転により、自由に把手部を作業の邪魔にならない位置に移動させることができる。しかも、把手部回転抑止構造を設けたので、研磨作業時には、把手部の位置がずれたりすることがない。したがって、作業者が無理な姿勢をとったりしなくても、研磨作業を行うことができ、作業性がよくなる。また、頭部ハウジング、連結部材、駆動軸、バランサおよび駆動伝達軸を研磨作用部側に押し込まなくてもよいので、把手部が研磨作用部との駆動軸方向の距離を一定に保ちながら駆動軸周りに回転することができる。したがって、早期損傷や大きな振動が発生することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図4は、本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第1の実施の形態をあらわしている。
【0026】
図1〜図3に示すように、このストレートサンダ1aは、以下に詳述する構造以外、前述のストレートサンダ10と同様の構造になっている。したがって、図1において、前述のストレートサンダ10と変更がない部分については、ストレートサンダ10と同様の符号を付している。また、以下の他の実施の形態においても同様である。
【0027】
すなわち、このストレートサンダ1aは、図1および図2に示すように、連結部材25aが下端部に設けられたつば部251の上面に図3に示すように後述するスチールボール93が嵌まり込む24個の位置決め凹部253が放射状に等ピッチで形成されている。
連結部材25aのつば部251より上方には、スチールボール保持板9が設けられている。
【0028】
スチールボール保持板9は、円盤部91と、円盤部91の中心軸に対して対称に円盤部91より外側に突出する2つの係合凸部92とを備えている。
円盤部91には、6つのスチールボール保持孔91aが周方向に等ピッチで穿設され、各スチールボール保持孔91aにスチールボール93が挿入されている。
【0029】
スチールボール保持板9の上には付勢力伝達部材94が設けられている。
ロックアジャストハウジング24aは、上端に頭部ハウジング23aの外径と略同じか少し大きい径の頭部ハウジング挿通孔243を有し、下端にフランジ部241を備えていて、頭部ハウジング23aの外径より大きい筒状をしている。
【0030】
頭部ハウジング挿通孔243は、その内周面に頭部ハウジング23aとの間を気密にシールするOリング245が嵌着されている。
フランジ部241は、小ねじ244によってベース26の上面に固定されているとともに、その下面にスチールボール保持板9の係止凸部92が嵌まり込む2つの支持板係止凹部246が中心を挟んで対称に穿設されている。
【0031】
そして、ロックアジャストハウジング24aは、リング状の付勢力伝達部材94を介してスチールボール93をつば部251側に付勢するコイルスプリングS1を頭部ハウジング23aの下端部との隙間に内蔵するとともに、係合凸部92を支持板係止凹部246に係合させた状態で小ねじ244によってベース26の上面に固定されている。
【0032】
このストレートサンダ1aは、以上のように、スチールボール93が、コイルスプリングS1の付勢力によってつば部251側に常に付勢されている。したがって、押圧されたスチールボール93の一部がつば部251の位置決め凹部253内に入り込み、頭部ハウジング23aおよび把手部22の駆動軸4周りの回転が抑止される。
なお、コイルスプリングS1は、研磨作業時に把手部に加わると予想される駆動軸4周りの回転力以下ではスチールボール93の位置決め凹部253内への係合が解除されない付勢力に調整されている。
【0033】
一方、把手部22を手で持ち、コイルスプリングS1の付勢力以上の力で駆動軸4の周りを回転させようとすると、スチールボール93が付勢力伝達部材94を介してコイルスプリングS1を頭部ハウジング23a側へ収縮させながらつば部251の隣り合った2つの位置決め凹部253の間のつば部251の上面に乗り上げ、位置決めが解除される。そして、たとえば、図4(a)に示すように、把手部22の軸が研磨作用部3の長手方向に一致した位置から、図4(b)に示すように、把手部22の軸が研磨作用部3の長手方向から30°回転した位置、図4(c)に示すように、把手部22の軸が研磨作用部3の長手方向から60°回転した位置など、15°単位で所定位置まで把手部22を回転させれば、スチールボール93がコイルスプリングS1の付勢力によって、対応する位置決め凹部253に再び入り込み、把手部22を回転抑止するようになっている。
【0034】
以上のように、このストレートサンダ1aによれば、把手部22が駆動軸4周りに回転自在となっているので、把手部22の回転により、自由に把手部22を作業しやすい位置にすることができる。しかも、コイルスプリングS1によって付勢されたスチールボール93と、位置決め凹部253とからなる把手部回転抑止構造を設けたので、把手部22の回転停止位置でコイルスプリングS1によって付勢されたスチールボール93が位置決め凹部253に入り込んで把手部22を位置決めするとともに、研磨作業時に把手部22に加わると予想される駆動軸4周りの回転力以下では、スチールボール93が位置決め凹部253に入り込んだ状態を維持し、把手部22の回転を抑止することができる。すなわち、把手部22が、研磨作業中に駆動軸4周りに回転することがなく、作業者が無理な姿勢をとったりしなくても、研磨作業を行うことができ、また、一旦、決めた把手部22の軸と研磨作用部3の長手方向との角度が研磨作業中にも維持することができ作業性がよくなる。
【0035】
また、頭部ハウジング23aとロックアジャストハウジング24aとの間のコイルスプリングS1が伸縮するだけであるので、把手部22を回転させる際に、把手部22と研磨作用部3との駆動軸4方向の距離を常に一定状態に保つことができる。したがって、把手部22を駆動軸4周りに回転させても駆動伝達軸8やこれに枢支されたリンク部材81にバランスを崩したり歪みを生じさせるような不必要な力がまったく加わらない。したがって、振動が少なく安定した研磨作業を長期間持続させることができる。
【0036】
図5は、本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第2の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、このストレートサンダ1bは、連結部材25bのつば部251の上面が平坦で、頭部ハウジング23bの下端外周面の同じ高さに24個の位置決め凹部231(図5では2つしかあらわれていない)が等ピッチに設けられ、位置決め凹部231と同じ高さ位置でロックアジャストハウジング24bの内周面に6個のスプリング支持穴247が等ピッチで穿設されている。そして、各スプリング支持穴247に先端にスチールボール93を備えたスプリングS2が嵌装され、スプリングS2の付勢力によってスチールボール93の一部が位置決め凹部231に入り込むようになった、スプリングS2によって付勢されたスチールボール93と、位置決め凹部231とからなる把手部回転抑止構造とした以外は、上記ストレートサンダ1aと同様になっている。
【0037】
図6は、本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第3の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、このストレートサンダ1cは、コイルスプリングS1によって付勢されたスチールボール93と、位置決め凹部253とからなる把手部回転抑止構造に代えて、コイルスプリングS1の付勢力によって付勢された上側鋸刃部951と、下側鋸刃部256とを有する把手部回転抑止構造とした以外は、上記ストレートサンダ1aと同様になっている。
すなわち、このストレートサンダ1cは、連結部材25cの上面に位置決め凹部253に代えて、同形状の2等辺三角形をした係合凸部256aが円筒の上端全周にわたって連続的に鋸刃状に並ぶ下側鋸刃部256が形成され、付勢力伝達部材95の下面に下側鋸刃部256の隣り合った2つの係合凸部256aの間にかみ合う係合凸部952が連続的に鋸刃状に並ぶ上側鋸刃部951が形成されている。
【0038】
そして、このストレートサンダ1cは、コイルスプリングS1の付勢力によって、付勢力伝達部材95の各係合凸部952が下側鋸刃部256の隣り合った2つの係合凸部256aの間にかみ合い、把手部22の回転が抑止される。さらに、把手部22を手で持って駆動軸4周りに回転力を加えると、係合凸部256aと係合凸部952の回転方向に相対する側壁のテーパによってコイルスプリングS1の付勢力に抗して上側鋸刃部951の各係合凸部952が頭部ハウジング23a側に押し上げられ、各係合凸部952が係合凸部256aを乗り越え、把手部22が駆動軸4の周りを回転するようになっている。
【0039】
図7は、本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第4の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、このストレートサンダ1dは、コイルスプリングS1によって付勢されたスチールボール93と、位置決め凹部253とからなる把手部回転抑止構造に代えて、コイルスプリングS1によって付勢された摩擦抵抗材961からなる把手部回転抑止構造を備えている以外は、上記ストレートサンダ1aと同様になっている。
【0040】
すなわち、このストレートサンダ1dは、連結部材25bのつば部251の上面が平坦で、付勢力伝達部材96の下面にリング状の摩擦抵抗材961が一体化されており、摩擦抵抗材961がコイルスプリングS1の付勢力によって常につば部251の上面に圧接されているので、摩擦抵抗材961とつば部251との間に生じる摩擦抵抗によって、ストレートサンダ1dよる研磨作業時における振動等によって生じる把手部22に加わる駆動軸4周りの回転力程度では、把手部22および頭部ハウジング23aの駆動軸4周りの回転が抑止され、把手部22を手で持って所望する回転方向へ所定以上の回転力を加えれば、把手部22および頭部ハウジング23aが駆動軸4の周りを回転するようになっている。
【0041】
そして、このストレートサンダ1dは、摩擦抵抗材961による摩擦抵抗によって回転を抑止するようにしたので、把手部22の回転停止位置を無段階で選べ、より作業性がよくなる。
なお、摩擦抵抗材の材質としては、特に限定されないが、たとえば、一般ゴム材料、摩擦繊維基材としての金属繊維、有機繊維、カーボンファイバー、ガラス繊維等の無機繊維をゴムや樹脂等の結合剤に混合して得られたモールド品、焼結金属系摩擦材料等が挙げられる。
【0042】
図8は、本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第5の実施の形態をあらわしている。
図8に示すように、このストレートサンダ1eは、コイルスプリングS1に代えて、付勢手段として圧縮空気を用いた摩擦抵抗材961からなる把手部回転抑止構造を備えている以外は、上記ストレートサンダ1dと同様になっている。
すなわち、このストレートサンダ1eは、頭部ハウジング23aと、ロックアジャストハウジング24eとの隙間29にエアーコンプレッサからの圧縮空気を送り込むために、ロックアジャストハウジング24eの側壁面に、弁292付きの圧縮空気供給路291を設けるとともに、連結部材25bおよびロックアジャストハウジング24eの付勢力伝達部材96eの側面に対面する部分と、頭部ハウジング23aの連結部材25bの上端部外壁面に臨む部分に隙間29内を気密に保つためのOリング293、294、295が設けられている。
【0043】
そして、このストレートサンダ1eは、弁292を開けて圧縮空気供給路291を介して隙間29内に圧縮空気を送り込み、圧縮空気の圧力によって、付勢力伝達部材96eを介して摩擦抵抗材961をつば部251の上面に圧接して摩擦抵抗材961による摩擦抵抗によって回転を抑止できるようになっているとともに、隙間29から圧縮空気を抜けば、摩擦抵抗が弱くなり、把手部22を頭部ハウジング23aとともに、駆動軸4の周りをスムーズに回転させることができるようになっている。
【0044】
図9は、本発明にかかる手持ち研磨装置であるオービタルサンダの実施の形態をあらわしている。
図9に示すように、このオービタルサンダ1fは、頭部ハウジング23fおよび把手部22fが、駆動軸4fの周りを回転自在に取り付けられるとともに、連結部材25fのつば部251上面に24個の位置決め凹部253が設けられ、積み重ねられた複数枚の皿ばねS3によって6個のスチールボール93が付勢されて、位置決め凹部253に嵌まり込んで回転を抑止できるようにした上記ストレートさんだ1aと同様の把手部回転抑止構造を備えている。そして、これら以外は、従来の自己吸塵式オービタルサンダと同様になっている。
【0045】
なお、図9中、2fはハウジング、5fはエアーモータ、8fは駆動軸4fの中心軸から偏芯した状態に駆動軸下端に直結された駆動伝達軸、7fはバランサ、221は圧縮空気供給路、227は集塵ノズル、39は筒状弾性部材、3fは研磨作用部、Eはエジェクタである。また、Dで示した矢印は、研磨作業時に発生する粉塵の流れである。
【0046】
本発明にかかる手持ち研磨装置は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、バランサを介して駆動軸と駆動伝達軸とが接続されていたが、駆動軸の下端部に駆動伝達軸を直接回転自在に支持させるようにしても構わない。また、バランサは、駆動軸の下端ではなく、駆動軸の中央部や上端に設けられていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第1の実施の形態をあらわす断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1のX―X線断面図である。
【図4】図1のストレートサンダの使用状態の参考図である。
【図5】本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第2の実施の形態をあらわす断面図である。
【図6】本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第3の実施の形態をあらわす断面図である。
【図7】本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第4の実施の形態をあらわす断面図である。
【図8】本発明にかかる手持ち研磨装置であるストレートサンダの第5の実施の形態をあらわす断面図である。
【図9】本発明にかかる手持ち研磨装置であるオービタルサンダの第1の実施の形態をあらわす断面図である。
【図10】本発明の発明者が先に提案した手持ち研磨装置をあらわす断面図である。
【図11】図10の研磨装置の頭部ハウジングを研磨作用部側に押圧した状態をあらわす断面図である。
【図12】図10の研磨装置のY方向矢視図である。
【符号の説明】
【0048】
1a,1b,1c,1d,1e ストレートサンダ(手持ち研磨装置)
1f オービタルサンダ(手持ち研磨装置)
2,2f ハウジング
3,3f 研磨作用部
4、4f 駆動軸
5、5f エアーモータ
7、7f バランサ
8、8f 駆動伝達軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力によって回転駆動する駆動軸と、駆動軸に対して偏芯した状態に設けられ、前記駆動軸の駆動力が伝達される駆動伝達軸と、この駆動伝達軸を介して前記駆動軸の駆動力が伝達されて駆動する研磨作用部と、駆動軸に設けられ駆動軸と駆動伝達軸との偏芯による駆動軸のブレを抑えるバランサと、少なくとも前記駆動軸を覆うとともに前記駆動軸を回転自在に支持し、駆動軸に対して交差する方向に延出する把手部を有するハウジングとを備える手持ち研磨装置において、
前記把手部が前記研磨作用部との駆動軸方向の距離を一定に保ちながら駆動軸周りに回転自在かつ回転停止位置に停止可能に形成されているとともに、研磨作業時に把手部に加わると予想される駆動軸周りの回転力以下では、把手部を回転停止位置で回転抑止可能な把手部回転抑止構造を備えていることを特徴とする手持ち研磨装置。
【請求項2】
動力が圧縮空気である請求項1に記載の手持ち研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−346773(P2006−346773A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173302(P2005−173302)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000142517)株式会社空研 (9)
【Fターム(参考)】