説明

手振れ抑制装置

【課題】簡単な構成でレンズ駆動装置を効率よく揺動させることのできる手振れ抑制装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置20の手振れを抑制する手振れ抑制装置10を、基台11と、レンズ駆動装置20を保持する可動台13と、可動台13を基台11に揺動可能に懸架する揺動用板バネ12と、可動台13の軸線であるZ軸回りに均等な角度で配置される、励磁コイル151〜154と磁性片161〜164とから成る複数のコイル−磁性片対から成り、可動台13を基台11に対して揺動させる電磁駆動手段141〜144と、を備えるとともに、励磁コイル151〜154を基台11に装着し、磁性片161〜164を可動台13に装着する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、撮影用光学機器などの手振れを抑制することのできる手振れ抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に搭載されるカメラはイメージセンサーの画素数が増大されて撮影画像の高品質化が進んでいる。これに伴って、搭載されるレンズ系についても、従来の固定焦点のレンズ駆動装置から可動焦点のレンズ駆動装置へと移行しつつある。これは、固定焦点のレンズ駆動装置では、焦点ボケが生じて、高画素数イメージセンサーの分解能に対応することができないためである。
可動焦点のレンズ駆動装置におけるレンズ系の駆動方式としては、ボイスコイルモータを用いたレンズ駆動装置が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、携帯電話等に搭載されるカメラでは、撮影時に手振れが発生しやすいことから、レンズホルダーを揺動させて手振れを抑制する機能を有する撮影用光学装置が提案されている。これにより、レンズホルダーをレンズの光軸方向に駆動する機能に加えて、手振れを抑制できるので、イメージセンサー上に鮮明な画像を結像させることができる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−280031号公報
【特許文献2】特開2009−294393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手振れ抑制装置では、駆動用コイルの一部の辺に発生するローレンツ力によりレンズ駆動装置を揺動させる構成であるため、駆動効率が悪いといった問題点があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構成でレンズ駆動装置を効率よく揺動させることのできる手振れ抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、コイルとこのコイルの開口部に向き合うように配置された磁性片とを可動台の移動方向の軸線の周りに複数対配置して、クーロン力(磁気力)により可動台を駆動する電磁駆動手段を設けて手振れを抑制する構成とすれば、磁性片に強力な吸引力を作用させることができるので、駆動効率に優れた小型で簡単な構成の手振れ抑制装置を得ることができることを見出し本発明に到ったものである。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、固定部材としての基台と、レンズ駆動装置を保持する筒状の可動台と、前記可動台を前記基台に揺動可能に懸架するバネ部材と、前記可動台を前記基台に対して揺動させる電磁駆動手段とを備えた手振れ抑制装置であって、前記可動台の軸線方向をZ軸方向としたときに、前記電磁駆動手段が、前記Z軸回りに均等な角度で配置される、励磁コイルと前記励磁コイルの開口部に向き合うように配置された磁性片とから成るコイル−磁性片対を複数対備え、前記励磁コイルと前記磁性片のいずれか一方が前記可動台に装着され、他方が前記基台に装着されることを特徴とする。
このように、複数対のコイル−磁性片対をZ軸回りに均等な角度で配置して励磁コイルに通電し、クーロン力により磁性片を吸引して可動台を駆動するようにしたので、簡単な構成で、X軸方向の直線往復運動とX軸周りの回転を伴う振り子運動を含むX軸方向の揺動、Y軸方向の直線往復運動とY軸周りの回転を伴う振り子運動を含むY軸方向の揺動、及び、これらを組み合わせた揺動を可動台に与えることができるので、手振れを確実に抑制することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の手振れ抑制装置であって、前記励磁コイルには、前記可動台に作用する前記Z軸に直交する2方向であるX軸方向及びY軸方向のいずれか一方または両方の揺れの速度信号(以下、速度信号という)の極性に応じた励磁電流が配分されることを特徴とする。
このように、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの速度信号を別個に検出して励磁コイルに通電するようにしたので、X軸方向の揺動とY軸方向の揺動とが組み合わされた手振れを容易に抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の手振れ抑制装置であって、前記速度信号が前記可動台の回転角速度に応じた信号であることを特徴とする。
このように、手振れにより揺動する可動台の回転角速度を直接計測してこれを速度信号としたので、手振れの抑制を確実に抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の手振れ抑制装置であって、前記速度信号が前記可動台のZ軸後方でXY平面に平行な面内に設けられたイメージセンサーに結像する像の移動速度に応じた信号であることを特徴とする。
また、イメージセンサーに結像する像の移動速度を速度信号とし、手振れにより移動する像の位置を戻すようにしたので、手振れの抑制を確実に抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の手振れ抑制装置であって、前記励磁電流がパルス状であることを特徴とする。
パルス状の信号により磁性片を加速すれば、可動台は励磁電流が停止された後でも慣性力により移動する。したがって、通電が断続的かつ短時間ですむので省電力に有効である。
【0008】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る手振れ抑制装置の構成を示す図である。
【図2】電磁駆動手段の動作を説明するための図である。
【図3】揺動用板バネの形状を示す図である。
【図4】イメージセンサー固定型のカメラモジュールの一例を示す図である。
【図5】イメージセンサー可動型のカメラモジュールの一例を示す図である。
【図6】手振れが作用したときのイメージセンサー固定型のカメラモジュールの動作を説明するための図である。
【図7】イメージセンサー固定型のカメラモジュールの手振れ抑制方法を説明するための図である。
【図8】手振れが作用したときのイメージセンサー可動型のカメラモジュールの動作を説明するための図である。
【図9】イメージセンサー可動型のカメラモジュールの手振れ抑制方法を説明するための図である。
【図10】速度信号にアナログ応答させた励磁電流の一例を示す図である。
【図11】本発明による手振れ抑制装置の他の構成を示す図である。
【図12】本発明による手振れ抑制装置の他の構成を示す図である。
【図13】本発明による手振れ抑制装置の他の構成を示す図である。
【図14】レンズ駆動装置が磁気シールドまたは磁気ヨークを備えている場合の電磁駆動手段の構成例を示す図である。
【図15】本実施の形態2に係る手振れ抑制装置の構成を示す図である。
【図16】本発明による手振れ抑制装置の他の構成を示す図である。
【図17】カメラモジュールを挟持する前方バネ部材と後方バネ部材の構成とカメラモジュールの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
実施の形態1.
図1(a),(b)は、本発明の実施の形態1に係る手振れ抑制装置10の構成を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のA−A断面図である。
手振れ抑制装置10は、固定部材としての枠状の基台11と、基台11にバネ部材である揺動用板バネ12により揺動可能に懸架される枠状の可動台13と、可動台13を基台11に対して揺動させる第1〜第4の電磁駆動手段141〜144とを備えたもので、可動台13の内周側にはレンズ駆動装置20が搭載される。
なお、レンズ駆動装置20としては、例えば、レンズを保持するレンズホルダーと、固定部材であるケースと、駆動用コイルと、永久磁石と、レンズホルダーとケースとを連結するバネ部材とを備えた周知の形態のものが用いられる。
以下、レンズ駆動装置20の被写体方向をZ軸方向前方(+Z側)とし、Z軸に直交する2方向をそれぞれX軸及びY軸とする。
本例では、レンズ駆動装置20をZ軸方向から見たときの外形が、Y軸方向に延長する2辺(+X側の辺と−X側の辺)とX軸方向に延長する2辺(+Y側の辺と−Y側の辺)とから成る正方形である場合について説明する。
【0012】
第1の電磁駆動手段141は、X軸周りに巻き回されて基台11の+X側の辺の内周側に配置される第1の励磁コイル151と、可動台13の+X側の辺の外周側に配置されて励磁コイル151の開口部に向き合うように配置された第1の磁性片161とから成るコイル−磁性片対を備える。
第2の電磁駆動手段142は、X軸周りに巻き回されて基台11の−X側の辺の内周側に配置される第2の励磁コイル152と、可動台13の−X側の辺の外周側に配置されて励磁コイル152の開口部に向き合うように配置された第2の磁性片162とから成るコイル−磁性片対を備える。
また、第3の電磁駆動手段143は、Y軸周りに巻き回されて基台11の+Y側の辺の内周側に配置される第3の励磁コイル153と、可動台13の+Y側の辺の外周側に配置されて励磁コイル153の開口部に向き合うように配置された第3の磁性片163とから成るコイル−磁性片対を備える。
第4の電磁駆動手段144は、Y軸周りに巻き回されて基台11の−Y側の辺の内周側に配置される第4の励磁コイル154と、可動台13の−Y側の辺の外周側に配置されて励磁コイル154の開口部に向き合うように配置された第4の磁性片164とから成るコイル−磁性片対を備える。
本例では、第1〜第4の磁性片161〜164として、軟磁性材料から成る磁性片を用いている。これにより、第1〜第4の励磁コイル151〜154に通電する電流の極性によらず、第1〜第4の磁性片161〜164を第1〜第4の励磁コイル151〜154の軸方向と平行な方向に磁化して吸引することができる。
なお、第1〜第4の磁性片161〜164は、第1〜第4の励磁コイル151〜154の開口部に向き合っていればよく、先端が第1〜第4の励磁コイル151〜154の内周側に侵入していても、侵入していなくてもどちらでもよい。
【0013】
第1〜第4の励磁コイル151〜154は、X軸周りもしくはY軸周りに巻き回されているので、例えば、図2(a),(b)に示すように、第1の励磁コイル151に通電すると、第1の励磁コイル151の中心軸上にはX軸方向を向いた、コイルの軸方向中心部で強さが最大になるような分布を有する磁界が発生する。通電状態の第1の励磁コイル151はコイルの軸方向に磁化された磁石に相当するので、第1の磁性片161にはクーロン力(磁気力)が作用し、第1の磁性片161は第1の励磁コイル151の中心に向かって引き寄せられる。第2〜第4の励磁コイル152〜154と第2〜第4の磁性片162〜164との関係も同様である。
また、第1〜第4の励磁コイル151〜154に通電する励磁電流の大きさを変化させることにより、第1〜第4の磁性片161〜164を吸引する力を増減できるので、第1〜第4の磁性片161〜164に加わる移動速度を制御することができる。
また、励磁電流をパルス状とすると、パルス幅に相当する所定の時間内だけ加速度を与えた後に慣性により、第1〜第4の磁性片161〜164を移動させることができる。
【0014】
揺動用板バネ12は、図3に示すように、外輪12aと内輪12bと中間リング12cと、X側連結子12mとY側連結子12nとを備える。外輪12a、内輪12b、及び、中間リング12cは、互いに相似な正方形板状の枠体で、外輪12aは基台11の内縁部に取付けられ、内輪12bは可動台13の外縁部に取付けられ、外輪12aと中間リング12cとは+Y側及び−Y側にてY側連結子12nにより連結され、内輪12bと中間リング12cとは+X側及び−X側にてX側連結子12mにより連結されている。
中間リング12cとX側及びY側連結子12m,12nとが、実質的にバネ部材として機能する揺動用板バネ12の可動部分である。
なお、本例では、Z軸方向への意図せぬ移動を抑制するため、中間リング12cの厚さを外輪12a及び内輪12bの厚さよりも厚く形成して撓みにくくしている。
このような構成を採ることにより、可動台13にX軸周りのトルクが作用するとX側連結子12mがX軸周りに捩れ、可動台13はX側連結子12mのバネ反力と釣り合うまで回転する。一方、可動台13にY軸周りのトルクが作用するとY側連結子12nがY軸周りに捩れ、可動台13はY側連結子12nのバネ反力と釣り合うまで回転する。
【0015】
本発明の手振れ抑制装置10をカメラモジュールに適用することで、図4に示すような、手振れ抑制機能付きカメラモジュール30Aを構成することができる。具体的には、レンズ駆動装置20にレンズ21を搭載するとともに、手振れ抑制装置10に、レンズ21で合焦された被写体像を検出するイメージセンサー31を搭載することで、手振れ抑制機能付きカメラモジュール30Aを構成する。イメージセンサー31はセンサーホルダー32に搭載され、このセンサーホルダー32が基台11に取付けられる。イメージセンサー31はレンズ駆動装置20の被写体側とは反対側でかつセンサーホルダー32のレンズ駆動装置20側に搭載される。
手振れ抑制装置10の可動部である可動台13には角速度センサー(図示せず)が取付けられており、この角速度センサーの検出出力に応じて第1〜第4の励磁コイル151〜154に通電する励磁電流の大きさと方向とが制御される。なお、角速度センサーはカメラモジュール30Aのレンズ駆動装置20に取付けてもよい。
また、図5に示すような、イメージセンサー31を搭載したセンサーホルダー32を可動台13に取付けて手振れ抑制機能付きカメラモジュール30Bを構成してもよい。
手振れ抑制機能付きカメラモジュール30Aでは、イメージセンサー31が固定部材である基台11に取付けられているので、手振れによりレンズ21の光軸が回転し、結像点がイメージセンサー31の中心からずれた場合には、手振れ抑制装置10によりレンズ駆動装置20を揺動させて、イメージセンサー31上の結像点を戻すようにする。
一方、手振れ抑制機能付きカメラモジュール30Bでは、センサーホルダー32が可動部材である可動台13に取付けられているので、レンズ駆動装置20とセンサーホルダー32(イメージセンサー31)とを連動して揺動させ、イメージセンサー31上の結像点を戻すようにする。
【0016】
次に、手振れ抑制機能付きカメラモジュール30Aの動作について説明する。
ここでは、Y軸周りに回転角速度Ωで回転する手振れが生じたときに、第1及び第2の励磁コイル151,152にパルス状の励磁電流を印加して手振れを抑制する例を示す。
図6(a)に示すように、カメラモジュール30AがY軸周りに右回転するような手振れが生じると、レンズ21の光軸も回転するため、結像点Pがイメージセンサー31の中心からずれてしまう。
手振れは、実際には一方向の回転ではなく、左右にぶれながら最終的に右回りもしくは左回りの回転になる場合が多いので、イメージセンサー31上の結像点Pの位置は、例えば、図6(b)に示すような時間変化を示す。一方、このような手振れに伴って、可動台13の回転角速度は図6(c)に示すような時間変化を示す。この回転角速度の信号は、可動台13に作用する揺れの速度信号である。以下、この回転角速度の信号を速度信号という。
速度信号が(+)のときには、レンズ駆動装置20はY軸周りに右回転しようとしているので、図7(a)に示すように、手振れ抑制装置10の第2の励磁コイル152に励磁電流I2を通電してレンズ駆動装置20を左回転させる。一方、速度信号が(−)のときには、レンズ駆動装置20はY軸周りに左回転しようとしているので、図7(b)に示すように、第1励磁コイル151に励磁電流I1を通電してレンズ駆動装置20を右回転させる。
これにより、図7(c)に示すように、レンズ駆動装置20を手振れの方向とは逆方向に回転させてイメージセンサー31上の結像点Pを元に戻すことができる。
このような結像点Pの位置を元の位置に戻す動作を繰り返すことで、図7(d)に示すように、メージセンサー31上の結像点Pの位置の変化を小さくできるので、手振れを確実に抑制することができる。
なお、第1及び第2の励磁コイル151,152には速度信号の大きさに応じた大きさの電流を流すものとする。
【0017】
また、本例では、図7(a),(b)に示すように、第1及び第2の励磁コイル151,152に通電する励磁電流をパルス状の電流としている。励磁電流のパルス幅は速度信号の振幅や周波数に関係なく、例えば、1ms〜1000msの範囲に設定すればよい。また、第1及び第2の電磁駆動手段141,142に配分された励磁電流(第1及び第2の励磁コイル151,152に通電する電流)の大きさを、速度信号の大きさによって増減させる。
これにより、第1及び第2の磁性片161,162には+X方向または−X方向の加速度が印加され、励磁電流が停止された後には慣性力とバネ部材12による復元力の釣り合う位置まで速度を減じながら移動する。
また、パルス状の励磁電流は、撮影モード中に断続的にかつ短時間だけ通電すればよいので、省電力に有効である。
このように、手振れに伴って可動台13に作用する速度信号の極性に応じて第1及び第2の励磁コイル151,152に通電する励磁電流を配分するようにすれば、可動台13には手振れとは逆方向の揺動が加えられるので、図7(d)に示すように、手振れによってずれたイメージセンサー31上の結像点Pを元の位置に戻すことができる。
なお、X軸周りの手振れに対しては、第3及び第4の励磁コイル153,154にパルス状の励磁電流を印加して手振れを抑制すればよい。
また、XY平面内においてX軸もしくはY軸に対して傾斜している軸の軸周りの手振れに対しては、この手振れを、X軸周りの手振れ(回転角速度)とY軸周りの手振れ(回転角速度)とに分解し、それぞれの手振れについて第1及び第2の励磁コイル151,152と第3及び第4の励磁コイル153,154とにパルス状の励磁電流を印加すれば手振れを抑制することができる。
【0018】
また、図5に示した、イメージセンサー31を可動台13に取付けた構成の手振れ抑制機能付きカメラモジュール30Bについても、同様の方法で手振れを抑制できる。
例えば、図8(a)に示すように、カメラモジュール30BがY軸周りに右回転するような手振れが生じると、レンズ21の光軸とイメージセンサー31とが同時に回転するため、結像点Pがイメージセンサー31の中心からずれてしまう。このときの、イメージセンサー31上の結像点Pの位置と可動台13の速度信号の時間変化は、手振れ抑制機能付きカメラモジュール30Aの場合と同様に、図8(b),(c)のようになる。したがって、第1及び第2の励磁コイル151,152に、図9(a),(b)に示すような励磁電流を流せば、図9(c)に示すように、レンズ駆動装置20とイメージセンサー31とを手振れの方向とは逆方向に回転させることができるので、図9(d)に示すように、手振れによってずれたイメージセンサー31上の結像点を元の位置に戻すことができる。
【0019】
なお、前記実施の形態1では、可動台13に角速度センサーを取付け、この角速度センサーの出力である回転角速度を可動台13に作用する速度信号としたが、イメージセンサー31に結像する像の移動速度を検出する移動速度検出手段を設け、この移動速度検出手段の出力信号を可動台13に作用する速度信号としてもよい。これにより、角速度センサーを省略できるとともに、イメージセンサー31の結像点の移動速度を直接検出することができるので、手振れの抑制を更に効果的に行うことができる。
また、前記例では、第1〜第4の磁性片161〜164として軟磁性材料から成る磁性片を用いたが、第1〜第4の励磁コイル151〜154側がN極もしくはS極となるように磁化されている永久磁石から成る磁極片を用いてもよい。なお、この場合には、第1〜第4の励磁コイル151〜154に通電する電流の方向を第1〜第4の磁性片161〜164を引き寄せる方向に設定することはいうまでもない。
【0020】
また、前記例では、励磁電流をパルス状としたがこれに限るものではなく、速度信号に対応して階段状に生成された電流やアナログ応答させた信号であってもよい。
速度信号にアナログ応答させた信号について、Y軸周りに回転角速度Ωで回転する手振れが生じた場合を例にとって説明する。
まず、図10(a)に示すように、手振れに伴う可動台13の速度信号をそれぞれ半波整流して、(+)側の電流I+と(−)側の電流I-とに分離する。そして、図10(b)に示すように、(+)側の電流I+を励磁電流I2として第2の励磁コイル152に印加し、(−)側の電流I-を反転した電流を励磁電流I1として第1の励磁コイル151に印加する。このように、速度信号にアナログ応答させた信号I1,I2を第1及び第2の励磁コイル151,152にそれぞれ通電することで、図10(c)に示すように、手振れを抑制することができる。なお、本例のように磁性片が軟磁性体である場合には、(−)側の電流I-を反転せずにそのまま第1の励磁コイル151に印加してもよい。
また、X軸周りの手振れに対しては、第3及び第4の励磁コイル153,154に、速度信号にアナログ応答させた信号を印加すればよい。
【0021】
また、前記例では、第1〜第4の励磁コイル151〜154として空心コイルを用いたが、図11に示すように、第1〜第4の励磁コイル151〜154の内周にそれぞれ補助磁心171〜174を挿入して固定する構成とすれば、第1〜第4の磁性片161〜164を吸引する力が高まるので、少ない電流で手振れを効率的に抑制することができる。
また、前記例では、第1〜第4の励磁コイル151〜154を基台11に配置し、第1〜第4の磁性片161〜164を可動台13に配置したが、図12に示すように、第1〜第4の磁性片161〜164を基台11に配置し、第1〜第4の励磁コイル151〜154を可動台13に配置しても同様の効果を得ることができる。なお、この場合も、第1〜第4の磁性片161〜164を第1の励磁コイル151〜154の開口部に向き合うように配置することはいうまでもない。
また、前記例では、電磁駆動手段141の第1〜第4の励磁コイル151〜154と第1〜第4の磁性片161〜164とをそれぞれ基台11と可動台13の辺の中心に配置した場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、図13に示すように、第1〜第4の励磁コイル151〜154を基台11の内周側の4隅に配置し、第1〜第4の磁性片161〜164を可動台13の側面角部に配置する構成としてもよい。
また、前記例では、コイル−磁性片をZ軸周りに90°間隔で4対設けた場合について説明したが、180°間隔で2対のコイル−磁性片の対を配置して、X軸方向またはY軸方向のいずれかの方向への揺動だけを制御対象とする手振れ抑制を行ってもよい。
【0022】
また、前記例では、コイル−磁性片の対から成る電磁駆動手段141〜144を用いて手振れを抑制したが、例えば、図14(a)に示すように、レンズ駆動装置がレンズ駆動装置20Aの外周側面を覆うような磁気シールド20sを備えている場合には、磁気シールド20sを電磁駆動手段の磁性片として利用することができる。
また、レンズ駆動装置が磁気ヨークを備えている場合にも、磁気ヨークを電磁駆動手段の磁性片として利用することができる。図14(b)は、磁気ヨーク24を備えたレンズ駆動装置20Yの一例を示す図で、レンズ駆動装置20Yは、レンズ21を保持するレンズホルダー22と、レンズホルダー22に装着される駆動用コイル23と、内周側に磁気ヨーク24が装着されるケース25と、磁気ヨーク24の内壁側に取付けられる駆動用磁石26と、レンズホルダー22とケース25とを連結する上下のバネ部材27A,27Bとを備えている。駆動用磁石26は、駆動用コイル23に放射状に分布する磁界を印加するもので、例えば、複数の円弧状の磁石を軟磁性体から成る断面がL字状の磁気ヨーク24の内壁側に環状に配列したものが用いられる。
磁気ヨーク24は駆動用磁石26の上辺側を覆う水平片24mと駆動用磁石26の駆動用コイル23とは反対側の側面を覆う垂直片24nとを備えている。したがって、励磁コイル151〜154を磁気ヨーク24の垂直片24nに対向するように配置して通電すれば、磁気ヨーク24を保持するケース25に励磁コイル151〜154の中心に向かう吸引力を作用させることができる。すなわち、レンズ駆動装置20Yのケース25を可動台13として機能させることができるとともに、磁気ヨーク24を電磁駆動手段の磁性片として利用することができる。
なお、レンズ駆動装置20Yのケース25を可動台に取付け、この可動台にイメージセンサー31を搭載したセンサーホルダー32を取付けるようにしてもよい。
【0023】
実施の形態2.
図15(a),(b)は、本発明の実施の形態2に係る手振れ抑制装置40の構成を示す図で、(a)図は断面図、(b)図は電磁駆動手段441〜444の配置を示す要部斜視図である。
手振れ抑制装置40は、固定部材としての枠状の基台41と、基台41にバネ部材である揺動用板バネ42により可動自在に懸架される枠状の可動台43と、可動台43を基台41に対して揺動させる第1〜第4の電磁駆動手段441〜444とを備えたもので、可動台43の内周側にはレンズ駆動装置20が搭載され、可動台43のZ軸後方には、イメージセンサー31を搭載したセンサーホルダー32が取付けられている。
レンズ駆動装置20とイメージセンサー31とセンサーホルダー32とによりカメラモジュール30Cを構成する。
基台41は、可動台43の外周側を覆うように配置された筒状の側部41aと側部41aのZ軸後方に設けられて側部の下端部を支持する底部41bとを備える。
揺動用板バネ42の構成は、図3に示した揺動用板バネ12と同構成で、外輪が基台41の側部の内縁部に取付けられ、内輪が可動台43の外縁部に取付けられる。
【0024】
本実施の形態2の電磁駆動手段441〜444では、コイル−磁性片対がZ軸方向に配置されている。すなわち、第1〜第4の電磁駆動手段441〜444は、Z軸周りに巻き回されて基台41の底部41bのセンサーホルダー32側の面上の内縁側で互いに対向する辺同士を結ぶ線上に配置される第1〜第4の励磁コイル451〜454と、第1〜第4の励磁コイル451〜454の開口部に向き合うように配置された第1〜第4の磁性片461〜464とから構成される。第1〜第4の磁性片461〜464は、センサーホルダー32における基台41の底部41b側に配置される。
このような構成を採ることにより、例えば、Y軸周りの手振れが生じた場合には、第1の励磁コイル451もしくは第2の励磁コイル452に通電することで、カメラモジュール30Cを手振れとは逆方向に回転させて手振れを抑制することができる。また、X軸周りの手振れが生じた場合には、第3の励磁コイル453もしくは第4の励磁コイル454に通電することで、カメラモジュール30Cを手振れとは逆方向に回転させて手振れを抑制することができる。
また、手振れ抑制装置40の第1〜第4の磁性片461〜464を基台41の底部41b側の4隅に配置し、第1〜第4の励磁コイル451〜454をセンサーホルダー32における基台41の底部41b側の4隅に配置する構成としてもよい。
【0025】
なお、前記実施の形態2では、電磁駆動手段441〜444をカメラモジュール30CのZ軸後方側に配置したが、図16に示すように、第1〜第4の電磁駆動手段441〜444をカメラモジュール30CのZ軸後方に配置するとともに、Z軸前方に第5〜第8の電磁駆動手段445〜448を配置してもよい。これにより、カメラモジュール30CをX軸周り、Y軸周り、もしくは、XY平面内においてX軸またはY軸に対して傾斜した軸の軸周りに回転させて手振れを抑制する手振れ抑制装置40Dを構成することができる。
具体的には、基台の側部41aのZ軸方向前方の端部をレンズ駆動装置20の開口部よりもZ軸方向前方に延長するとともに、基台の側部41aのZ軸方向前方の端部に中空板状のコイル取付部材47を取付け、このコイル取付部材47のレンズ駆動装置20側にZ軸周りに巻き回された第5〜第8の励磁コイル455〜458を配置する。一方、可動台43のZ軸方向前方の端部に中空板状の磁性片取付部材48を取付け、この磁性片取付部材48のコイル取付部材47側に第5〜第8の磁性片465〜468を配置する。第5〜第8の磁性片465〜468は第5〜第8の励磁コイル455〜458の開口部に向き合うように配置される。
また、本例では、前方バネ部材49Aと後方バネ部材49Bの2つの板バネで、カメラモジュール30Cを挟持するように手振れ抑制装置40Dに懸架する構成としている。
前方バネ部材49Aと後方バネ部材49Bとは、図17に示すように、それぞれ、枠状に形成された外周枠49aと内周枠49bと中間枠49cとを備え、外周枠49aと中間枠49cとがX軸方向に突出する連結片49uとY軸方向に延長する連結椀部49pとにより連結されている。また、内周枠49bと中間枠49cとはY軸方向に突出する連結片49vとY軸方向に延長する連結椀部49qとにより連結されている。
外周枠49aは基台の側部41aの内縁部に取付けられ、内周枠49bが可動台43の外縁部に取付けられる。
【0026】
カメラモジュール30Cに、例えば、Y軸周りに左回転する手振れが生じた場合には、Z軸方向後方にある第1の励磁コイル451とZ軸方向前方にある第6の励磁コイル456のいずれか一方または両方に通電する。第1の励磁コイル451に通電した場合には、第1の磁性片461には−Z方向のクーロン力が作用する。一方、第6の励磁コイル456に通電した場合には、第6の磁性片466には+Z方向のクーロン力が作用する。したがって、図17(a)に示すように、前方バネ部材49Aの中間枠49cの+X側と後方バネ部材49Bの中間枠49cの+X側とには、それぞれ−Z方向を向いた力が発生し、前方バネ部材49Aの中間枠49cの−X側と後方バネ部材49Bの中間枠49cの−X側とには、それぞれ+Z方向を向いた力が発生する。したがって、図17(b)に示すように、同図の細い矢印で示すY軸周りに左回転する手振れが生じた場合には、第1の励磁コイル451と第6の励磁コイル456のいずれか一方または両方に通電してカメラモジュール30Cに同図の白抜きの矢印で示す力を作用させ、カメラモジュール30CをY軸周りに右回転させるようにすれば、Y軸周りに左回転する手振れを抑制できる。
また、Y軸周りに右回転する手振れが生じた場合には、Z軸方向後方にある第2の励磁コイル452とZ軸方向前方にある第5の励磁コイル455のいずれか一方または両方に通電するようにすれば、カメラモジュール30CをY軸周りに左回転させて手振れを抑制することができる。
一方、X軸周りに左回転する手振れが生じた場合には、Z軸方向後方にある第4の励磁コイル454とZ軸方向前方にある第7の励磁コイル457のいずれか一方または両方に通電し、X軸周りに右回転する手振れが生じた場合には、Z軸方向後方にある第3の励磁コイル453とZ軸方向前方にある第8の励磁コイル458のいずれか一方または両方に通電するようにすればX軸周りの手振れを抑制することができる。
【0027】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【符号の説明】
【0028】
10 手振れ抑制装置、11 基台、12 揺動用板バネ、13 可動台、
141〜144 第1〜第4の電磁駆動手段、
151〜154 第1〜第4の励磁コイル、
161〜164 第1〜第4の磁性片、
20 レンズ駆動装置、21 レンズ、
30A,30B カメラモジュール、31 イメージセンサー、
32 センサーホルダー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材としての基台と、レンズ駆動装置を保持する筒状の可動台と、前記可動台を前記基台に揺動可能に懸架するバネ部材と、前記可動台を前記基台に対して揺動させる電磁駆動手段とを備えた手振れ抑制装置であって、
前記可動台の軸線方向をZ軸方向としたときに、
前記電磁駆動手段が、前記Z軸回りに均等な角度で配置される、励磁コイルと前記励磁コイルの開口部に向き合うように配置された磁性片とから成るコイル−磁性片対を複数対備え、
前記励磁コイルと前記磁性片のいずれか一方が前記可動台に装着され、他方が前記基台に装着されることを特徴とする手振れ抑制装置。
【請求項2】
前記励磁コイルには、前記可動台に作用する前記Z軸に直交する2方向であるX軸方向及びY軸方向のいずれか一方または両方の揺れの速度信号の極性に応じた励磁電流が配分されることを特徴とする請求項1に記載の手振れ抑制装置。
【請求項3】
前記速度信号が前記可動台の回転角速度に応じた信号であることを特徴とする請求項2に記載の手振れ抑制装置。
【請求項4】
前記速度信号が前記可動台のZ軸後方でXY平面に平行な面内に設けられたイメージセンサーに結像する像の移動速度に応じた信号であることを特徴とする請求項2に記載の手振れ抑制装置。
【請求項5】
前記励磁電流がパルス状であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の手振れ抑制装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−41026(P2013−41026A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176772(P2011−176772)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(507186609)マイクロウインテック株式会社 (26)
【出願人】(502426061)大立光電股▲ふん▼有限公司 (34)
【出願人】(509035613)
【出願人】(511116177)厦▲門▼新▲鴻▼洲精密科技有限公司 (10)
【氏名又は名称原語表記】XINHONGZHOU PRECISION TECHNOLOGY CO,.LTD
【住所又は居所原語表記】No.11 Xintian Road,Xinchun,Houxi Town,Jimei District,Xiamen,China
【Fターム(参考)】