手振れ補正装置
【課題】外部から衝撃が加わっても補正レンズをロック位置に安定して保持しておくことができる手振れ補正装置を提供する。
【解決手段】補正レンズ10を支持するレンズ支持部材2と、レンズ支持部材2を光軸と直交する面内で移動可能に支持する固定部材6と、レンズ支持部材2に係止可能で、かつ固定部材6に対して光軸を中心として回動自在に設けられるロック部材7と、ボイスコイルモータ8を構成する部材であってロック部材7に固定され磁気空隙を形成する磁石部材80と、固定部材6に固定され磁気空隙内に位置する駆動コイル83とを備えている。さらに、固定部材6は磁石部材80を、ロック部材7と共に回動する回動範囲を規制する一対の規制部61a、61bと、磁石部材80との間に磁気吸引力を発生させるために、固定部材6の一対の規制部61a、61bの間に所定の間隔をおいて配置された複数の磁性部材85a、86a等を備えている。
【解決手段】補正レンズ10を支持するレンズ支持部材2と、レンズ支持部材2を光軸と直交する面内で移動可能に支持する固定部材6と、レンズ支持部材2に係止可能で、かつ固定部材6に対して光軸を中心として回動自在に設けられるロック部材7と、ボイスコイルモータ8を構成する部材であってロック部材7に固定され磁気空隙を形成する磁石部材80と、固定部材6に固定され磁気空隙内に位置する駆動コイル83とを備えている。さらに、固定部材6は磁石部材80を、ロック部材7と共に回動する回動範囲を規制する一対の規制部61a、61bと、磁石部材80との間に磁気吸引力を発生させるために、固定部材6の一対の規制部61a、61bの間に所定の間隔をおいて配置された複数の磁性部材85a、86a等を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の光学装置に採用されている手振れ補正装置、特に、非撮影時において、補正レンズを支持しているレンズ支持枠の移動を防止する固定手段を備えた手振れ補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラでは、撮影時に手振れが生じるとこの手振れによる画像の乱れが発生する。この画像の乱れの発生は、特に望遠レンズを使用した時に顕著となる。手振れは(1/焦点距離)秒以上のシャッター速度で防止できるが、暗い所や低感度フィルムの使用時には、シャッター速度を遅くする必要があるため、手振れ補正装置を内蔵したカメラが増加している。特に、デジタル一眼レフカメラでは、望遠レンズを使用した場合の手振れによる画像の乱れが顕著となるので、この画像乱れを防止するために、補正レンズとその駆動手段を含み、振動センサ(例えばジャイロセンサ)で検出された低周波(例えば1〜10Hz)の振動に応じて、補正レンズを含む補正光学系を光軸と垂直な2方向(ピッチング方向とヨーイング方向)に移動させる(偏心させる)ようにした手振れ補正装置を設けることが一般化している。
【0003】
一方、非撮像時のように手振れ補正を行わない場合には、補正レンズの光軸が補正レンズを除く撮像レンズの光軸と略一致するように補正レンズを固定(ロック)することが行われている。補正レンズを固定するためのロック機構としては、例えば、光軸を中心にして回動可能なロックリングを補正レンズ支持枠の外周側に配置し、駆動手段によりこのロックリングを所定方向に所定角度だけ回動させることによって、補正レンズを支持している補正レンズ支持枠をロックリングにより固定する方法が採用されている。
【0004】
上記した非撮影時において、ロックリングを所定方向に回動させることによって、補正レンズを光軸に対して固定する技術に関しては、例えば、下記の特許文献1〜3に記載の発明が提案されている。
【0005】
特許文献1に記載の発明においては、補正レンズを支持した支持枠を地板に結合するとともに、地板に回転可能に支持されたロックリングと、このロックリングを回転駆動させるステップモータを備え、このステップモータの駆動によるロックリングの回転により、ロックリングの4ケ所に設けたカムを支持枠に設けた4点の突起と係合させることにより、補正レンズを支持した支持枠を所定の固定位置に固定、又は固定状態から解放する機構を有する像振れ補正装置が提案されている。
【0006】
特許文献2に記載の発明においては、ブレ補正を行う光学部品を固定するロック機構を備えたブレ補正装置が提案されている。このロック機構は、像ブレ補正を行う光学部品を保持し、移動可能なレンズ保持枠と、ブレ補正装置の非作動時にレンズ保持枠を固定するロックリングと、このロックリングを回動駆動させるために、回動用コイルを挟んで対向するように第1ベース部及び第2ベース部に各々マグネットとヨークを備えた可動コイル形ボイスコイルモータを備えている。さらに、ロックリングの内周面には、レンズ保持枠の外周面に設けた突起部と係合してレンズ保持枠を固定するために、内径側に突出した凸部を形成したことが開示されている。また、特許文献2に記載のロックリングは、その外周面の一部にラッチ係合部を設け、このラッチ係合部をベースに取り付けられたラッチバネによって外周面から付勢させることが開示されている。そして、このラッチバネを設けることにより、鏡筒に与えられた衝撃等の意図しない力によって、ロックリングが移動することを防止する作用を行わせることが記載されている。
【0007】
この特許文献2に記載のブレ補正装置において、レンズ保持枠を固定状態から解放して所謂アンロック状態にするためには、回動用コイルに所定方向の電流を流すことによりロックリングを回動させて、レンズ保持枠の外周面に設けた突起部を、ロックリングの凸部が形成されていない内周面と対向させ、レンズ保持枠を光軸に略垂直なXY平面を移動可能にして、ブレ補正を行うことができるようにしている。また、レンズ保持枠をアンロック状態からロック状態にするために、回動用コイルに所定方向の電流を流して、レンズ保持枠の突起部をロックリングの凸部と係合させている。このロック状態においては、ラッチバネはロックリング方向に付勢力を発揮するので、意図しない衝撃力によってロックリングが移動することを防止することが記載されている。
【0008】
特許文献3に記載の発明は、上記特許文献2に記載のロック機構において、ロックリングがロック位置(ロック状態)にあるときに、レンズ支持枠(レンズ保持枠)を付勢する板バネからなる付勢部材を設けたブレ補正装置が開示されている。この付勢部材は、その一端側がロックリングに固定されているため、ロックリングの回動に伴ってレンズ支持枠の周りを回動移動する。そして、ロック位置においてはロックリングの他端側となる頭部がレンズ支持枠の突起部に接触してレンズ支持枠を付勢する。これにより、レンズ鏡筒に加えられた振動等によって補正レンズが鏡筒の光軸方向に移動することを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3517525号公報
【特許文献2】特開2009−116033号公報
【特許文献3】特開2009−198692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されているようにステップモータによりロックリングを回転させる場合は、ロック機構の構成が複雑になるという課題が生じる。また、このロック機構では、レンズ鏡筒に大きな振動や衝撃が加えられたときには、ロックリングと補正レンズを支持する支持枠との係合が外れることが起こりえる。
【0011】
特許文献2及び特許文献3に記載のように、ロック機構にラッチバネや板バネ等からなる付勢部材を設けることにより、振動や衝撃によるロックリングとレンズ支持枠との係合が外れることを防止できる。しかし、このような弾性部材からなる付勢部材を用いたロック機構は、長期間にわたって繰り返し使用を行うと、この付勢部材はその弾性変形の機能が低下してしまうので、十分なロック機能を発揮できなくなる恐れがある。このため、非撮像時のように手振れ補正を行わないロック状態において、弾性部材を用いることなく、補正レンズを支持しているレンズ支持枠を固定するとともに、このロック状態を安定して保持することができるロック機構を備えた手振れ補正装置が望まれている。
【0012】
したがって、本発明の課題は、上記のような弾性部材による機械的手段によらずに、外部から振動や衝撃が加わっても、磁力による磁気吸引力を利用して補正レンズをロック位置に安定して保持することができる手段を備えた手振れ補正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の手振れ補正装置は、補正レンズを支持するレンズ支持部材と、
前記レンズ支持部材を光軸と直交する面内で移動可能に支持する固定部材と、
前記レンズ支持部材に係止可能で、かつ前記固定部材に対して回動可能に設けられたロック部材と、
前記ロック部材に固定され、磁気空隙を形成する一対の永久磁石とヨークを有する磁石部材と、前記磁気空隙内に位置するように前記固定部材に固定された扁平な駆動コイルと、を備えたボイスコイルモータと、
前記ボイスコイルモータの駆動により、前記ロック部材に固定された前記磁石部材が回動する回動範囲を規制するために、前記回動範囲の両端部における前記磁石部材の停止位置に対応させて前記固定部材に突設した一対の規制部と、
前記磁石部材が回動及び前記停止位置に停止しているときに、前記永久磁石との間に磁気吸引力を発生させるために前記固定部材に配置した複数の磁性部材と、
を備えていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明において、前記複数の磁性部材は、前記一対の規制部の間であってそれぞれの前記停止位置側に、所定の間隔を設けて配置した第1の磁性部材と第2の磁性部材を備えていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明において、前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材は、磁気特性が異なることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロック部材に固定した磁石部材の回動範囲であって、その回動方向に沿った異なる位置にこの磁石部材を構成する永久磁石との間に磁気吸引力を作用させる複数の磁性部材を設けているので、従来のバネ部材等の機械的手段のみによらずに、この磁気吸引力により補正レンズをロック位置に保持することができるようにし、さらに、外部から衝撃を受けてもその保持状態を安定して維持することができる手振れ補正装置を提供することができる。
【0017】
本発明によれば、固定部材に磁性部材を配置する位置や、磁性部材の大きさなどを変更することにより、磁石部材を構成する永久磁石との間に発生する磁気吸引力を容易に調整することが可能となる。これにより、本発明を適用する望遠レンズ等において、その口径や鏡筒の長さに対応して、補正レンズをロック位置に安定して保持することが可能な手振れ補正装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の手振れ補正装置の分解斜視図である。
【図2】図1の手振れ補正装置をA方向から見た矢視図である。
【図3】図2の手振れ補正装置をC方向から見た矢視図である。
【図4】図3をD方向から見た矢視図である。
【図5】図1に示すロックリングをB方向から見た図である。
【図6】ロックリングとレンズ支持枠の係止片との係合関係を示す図であって、(a)は係合している状態を示す図、(b)は係合が解放されている状態を示す図である。
【図7】図5に示す磁石部材の構成を示す図であって、(a)は図5に示すG方向から見た矢視図、(b)は同じくH方向から見た矢視図、(c)は同じく磁石部材と駆動コイルをI方向から見た矢視図である。
【図8】図1に示す固定部材及びロック用ボイスコイルモータを、図1に示すA方向から見た図である。
【図9】図1に示す固定部材及びロック用ボイスコイルモータを、図1に示すB方向から見た図である。
【図10】図9に示す磁石部材が、光軸Z方向から見たときに駆動コイルと重なる位置にあるときに、光軸Zに、図1に示すB方向から見たロック用ボイスコイルモータを記載した図である。
【図11】図10において、磁石部材がロック位置まで回動したときに、図1に示すB方向から見た場合の各部材の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明の手振れ補正装置の一例を示す分解斜視図、図2は図1に示す手振れ補正装置を組み立てたときにA方向から見た図、図3は図2をC方向から見た図、図4は図3をD方向から見た図を示している。
【0020】
図1において、手振れ補正装置1は、例えばレンズ鏡筒(不図示)内に配置され、撮像用レンズ群11の一部を構成する補正レンズ10を撮影時の手振れ(例えば数Hz〜十Hzの周波数を有する振動)に応じて、光軸Zと直交する面内でX方向及びY方向に変位させることにより、図示しない撮像素子(例えば、CCD)から構成される結像面における像振れを低減する機能を備えている。なお、図1において、CCDは図1に示すB側に配置されている。
【0021】
手振れ補正装置1は、レンズ支持部材(以下、「レンズ支持枠2」という)に支持される補正レンズ10と、レンズ鏡筒に対して固定され、レンズ支持枠2を光軸と直交する面内で移動可能に支持する固定部材(固定枠6及びベース5を含む)と、レンズ支持枠2を駆動するX軸用ボイスコイルモータ3a及びY軸用ボイスコイルモータ3bと、レンズ支持枠2に係止されるロック部材(以下、「ロックリング7」という)と、ロックリング7を駆動するロック用のボイスコイルモータ8(以下、「ロック用ボイスコイルモータ8」という)を備えている。
【0022】
(固定部材)
固定部材は、固定枠6と固定枠6に支持されるベース5を含み、これらによって補正レンズ10及び補正レンズ10を支持するレンズ支持枠2などを取り囲むように配置している。固定枠6は、撮像用レンズ群11が形成する光束が通過できるように円筒状に形成されるとともに、図1又は図2〜図3に示すように、外周側から光軸Z方向に突出して放射状に設けられた案内部60a、60b、60cを有する。また、この固定枠6の内部には、手振れ補正装置1の動作を制御するための制御回路を有する回路基板などの部材が収納されている。ベース5は、固定枠6と同様に外周側から光軸Z方向に突出して放射状に設けられた案内部50a、50b、50cを有し、これら案内部と固定枠6の前記案内部を介して固定枠6に支持される。また、このベース5には、後述するように、レンズ支持枠2を駆動するX軸用ボイスコイルモータ3a及びY軸用ボイスコイルモータ3bを構成する磁石部材31a及び31bを固定する。
なお、固定部材は、レンズ支持枠2を光軸と直交面内で移動可能に支持するとともに、後述するロック用ボイスコイルモータの駆動コイルを固定できる構成であればよく、図示のような固定枠6とベース5の組合せ構成に限定されない。
【0023】
(レンズ支持枠)
手振れを補正するための補正レンズ10を支持するレンズ支持枠2は、図1に示すように、補正レンズ10の外周縁の近傍位置から等角度間隔で形成された略台形状の断面を有し、かつ光軸Z方向に伸長する係止片20a、20b、20cを有する。手振れ補正装置1を組み立てたときには、レンズ支持枠2の各係止片20a、20b、20cのそれぞれの先端部がロックリング7に形成した後述する円周溝70a、70b、70cに入り込んでいる。そして、ロックリング7は、この円周溝70a、70b、70c内に係止片20a、20b、20cの先端部が挿入された状態で、時計方向又は反時計方向に所定角度ほど回動可能になっている。
【0024】
このレンズ支持枠2は、ベース5に対してX軸方向およびY軸方向に移動可能に設置されている。すなわち、レンズ支持枠2は、Z軸方向に沿って複数箇所(例えば3ケ所、円周方向に沿って等間隔の位置)で引っ張りコイルばね21a、21b、21cの張力によりベース5に弾性的に保持されるとともに、レンズ支持枠2とベース5との間に微小な球体22a、22b、22cを介装することにより、レンズ支持枠2をベース5に対してX方向及びY方向にスムーズに摺動できるようにしている。
【0025】
(X軸用ボイスコイルモータ)
レンズ支持枠2を図1に示すX軸方向に駆動するX軸用ボイスコイルモータ3aは、可動コイル方式であり、レンズ支持枠2に固着される偏平な空芯コイル30aと、固定枠6に支持されるベース5に固定される磁石部材31aとを備えている。磁石部材31aは、両端部に非磁性体からなるスペーサ34a1、34a2を取付けた平板状のヨーク32a1、32a2と、ヨーク32a1、32a2の内側面に、異極性の磁極が対向するように固着された一対の永久磁石33a1、33a2を有する。これらの永久磁石33a1、33a2は、異極性の磁極が、空芯コイル30aの移動方向(X軸方向)に隣接するように、永久磁石の厚さ方向(Z軸方向)に磁化されている。ただし、図1では一部の磁極を示している。磁石部材31aは、空芯コイル30aをX方向に駆動し得る磁気回路を形成すればよく、図示の構成に限定されない。
【0026】
(Y軸用ボイスコイルモータ)
レンズ支持枠2を図1に示すY方向に駆動するY軸用ボイスコイルモータ3bは、可動コイル方式で駆動され、レンズ支持枠2に固着される偏平な空芯コイル30bと、固定枠6に支持されたベース5に固定される磁石部材31bとを備えている。磁石部材31bは、一端側に非磁性体からなるスペーサ34b1、34b2を取付けた平板状のヨーク32b1、32b2と、その内周面に、異極性の磁極が対向するように固着された一対の永久磁石33b1、33b2を有する。これらの永久磁石も、異極性の磁極が、空芯コイル30bの移動方向(Y軸方向)に隣接するように、永久磁石の厚さ方向(Z軸方向)に磁化されている。ただし、図1では一部の磁極を示している。磁石部材31bは、空芯コイル30bをY方向に駆動する磁気回路を形成すればよく、図示の構成に限定されない。
【0027】
(位置検出部)
この手振れ補正装置1は、レンズ支持枠2に支持された補正レンズ10の位置を検出するための手段(位置検出部)を備えている。この位置検出手段としては、Y方向の補正レンズ10の位置を検出するために、例えば、図1に示すように、レンズ支持枠2に固定されたLED40a、ベース5に固定された枠部材41a及び基板51に固定されたPSD(Position sensitive Detector)42aを有するY方向位置検出部4aを備えている。またX方向の補正レンズ10の位置を検出するために、レンズ支持枠2に固定されたLED40b、ベース5に固定された枠部材41b及び基板51に固定されたPSD42bを有するX方向位置検出部4bを備えている。
【0028】
(ロックリング)
ロックリング7は、手振れ補正装置1を組み立てたときに光軸Zと同心となるリング状部材である。また、ロックリング7のレンズ支持枠2と対向する側の面には、図1に示すような磁石部材80を固定している。この磁石部材80と図4に示す扁平な駆動コイル83は後述するロック用ボイスコイルモータ8を構成し、駆動コイル83へ駆動電流を供給することによりロックリング7は、光軸Zを中心にて時計方向又は反時計方向に回動する。磁石部材80は、ねじなどの固定手段によりロックリング7に固定している。なお、ロックリング7、レンズ支持枠2、及び前記した固定枠6などの部材は、例えばエンジニアリングプラスチックのように軽量でかつ剛性が大なる材料(非磁性体)で形成される。
【0029】
ロックリング7は、レンズ支持枠2と対向する側の内周面に、図1に示す係止片20a、20b、20cの先端が入り込む円周溝70a、70b、70cが形成されている。図5は、ロックリング7に形成されたこれら円周溝70a、70b、70cの形状例を示している。各円周溝70a、70b、70cは、係止片20a、20b、20cが嵌合してこれら円周溝70a等を係止する形状及び寸法を備えたロック溝71a、71b、71cを有している。また、各円周溝70a、70b、70cは、これらロック溝71a、71b、71cの終端からその外径が円周方向に連続的に増加して(曲線的に変化して)、図5に示すように、P1位置(ロック位置)から角度αだけ離れたP2位置(アンロック位置)で係止片20a、20b、20cが遊嵌される形状及び寸法を備えたアンロック溝72a、72b、72cを有している。
【0030】
そして、ロック用ボイスコイルモータ8を駆動して、磁石部材80を固定しているロックリング7を磁石部材80と共にP1位置(ロック位置)からS1方向に角度αだけ回動してP2位置(アンロック状態)にすることにより、レンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cをロックリング7に係止された状態からこの係止を解放した状態とすることができる。
【0031】
図6(a)、(b)は、上記したロック位置とアンロック位置において、ロックリング7の円周溝70a、70b、70cとレンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cとの位置関係を示している。なお、図6(a)、(b)においては、レンズ支持枠2は前記位置関係を分かり易く説明するために係止片20a、20b、20cの先端部(円周溝に挿入されている部分)のみを図示している。
【0032】
図6(a)は、ロック位置の状態であって、ロックリング7の円周溝70a等のうちの各ロック溝71a、71b、71cに、レンズ支持枠2の各係止片20a、20b、20cが係合している状態を示している。このロック位置の状態では、係止片20a、20b、20cの先端部の外周面がロック溝71a、71b、71cの内周面に係合している。これにより、レンズ支持枠2はロックリング7によりロック位置に保持された状態になる。すなわち、レンズ支持部材(レンズ支持枠2)は、ロック部材(ロックリング7)と係止したロック状態になる。
図6(a)に示すレンズ支持枠2がロック状態に保持されているときに、ロック用ボイスコイルモータ8を駆動してロックリング7をS1方向に角度α回動させると、レンズ支持枠2は図6(b)に示すようにアンロック状態になる。
【0033】
レンズ支持枠2がアンロック状態になっている状況を示す図6(b)においては、レンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cの端部側はアンロック溝72a、72b、72c内に入り込んだ状態になる。この状態では、係止片20a、20b、20cの端部側のそれぞれはアンロック溝72a、72b、72c内で遊嵌している状態になっている。この「遊嵌している状態」とは、係止片20a、20b、20cの側面部と上端部とが、それぞれのアンロック溝72a、72b、72c内において所定の間隔をおいた状態で保持されていることを示す。このように、アンロック状態においては、係止片20a、20b、20cの端部側はアンロック溝72a、72b、72c内で遊嵌した状態になっているので、補正レンズ10を支持するレンズ支持枠2は、X軸用ボイスコイルモータ3a及びY軸用ボイスコイルモータ3bの駆動により、X方向及びY方向に移動可能になるので、手振れ補正装置1が備えている制御手段の制御に基づいて手振れの補正を行うことができるようになる。
【0034】
(ロック用ボイスコイルモータ)
固定部材(図示の構成においては固定枠6)及びロックリング7には、このロックリング7を光軸Z回りに回動させるためのロック用ボイスコイルモータ8を構成する部材を取付けている。本発明では、ロック用ボイスコイルモータ8は、駆動コイルに給電するための配線、またはリード線の断線を防止するためにこの駆動コイルを固定部材の所定部位に固定した可動磁石方式を採用しており、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する磁石部材は、ロックリング7に固定している。さらに、この駆動コイルを固定した固定部材に、ロックリング7を回動させてレンズ支持枠2をロック状態にしたときに、レンズ支持枠2をロック位置に安定して保持(維持)するために、複数の磁性部材を配置していることに特徴がある。これら駆動コイルと磁性部材を取付ける部位としては、例えば、固定部材である固定枠6に形成されロックリング7とともに回動する磁石部材の回動を妨げない位置を選定することが望ましい。
【0035】
このように、磁性部材を固定部材(固定枠6)に配置することにより、前記したロック状態において、鏡筒等に外部からの衝撃を受けても、ロックリング7に固定している磁石部材80を構成する永久磁石82とこの磁性部材との間に磁気吸引力が作用するので、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する駆動コイル83への電流の供給をOFFした場合でも、この磁気吸引力により係止片20a、20b、20cの端部側の外周面がロック溝71a、71b、71cの内周面と係合するロック状態を安定して維持することができるようになる。
また、磁性部材を固定枠6に配置したことにより、ロックリング7をアンロック位置からロック位置に回動させるときに、磁石部材80を構成する永久磁石82とこの磁性部材との間に作用する磁気吸引力により、ロックリング7をロック位置まで直ちにスムーズに移動させることができ、かつ、この磁気吸引力はロックリング7の移動に係る電力の消費を節減する作用を行う。
【0036】
続いて、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する磁石部材80について、その構成例を図7に基づいて説明する。前記したように、ロック用ボイスコイルモータ8は、ロックリング7のレンズ支持枠2に対向する面に固定される磁石部材80と、図1に示すFPC(Flexible Printed Circuits)84を介して固定枠6に固定される駆動コイル83等から構成されている。磁石部材80は、図7に示すように、板状部材の中央部81cをコ字形に形成して対向配置する一対のヨーク81a、81b(図1では「81」と記載)と、このヨーク81a、81bの各対向面に固着された一対の永久磁石82a、82bを有している。これら一対の永久磁石82a、82bの対向面間に磁気空隙が形成される。
【0037】
一対の永久磁石82a、82bのそれぞれは、図7(a)又は(b)に示すように、異極性の磁極が磁石部材の移動方向に隣接するように厚さ方向(Z軸方向)に磁化され、かつ磁気空隙を介して異極性の磁極が対向するようにヨーク81a、81bに固着されている。一対の永久磁石82a、82bの対向面間に形成される磁気空隙には、駆動コイル83が配置されている。駆動コイル83は固定枠6に固定されており、平面視で略矩形状をなすとともに固定枠6の駆動コイル固定部と同等の厚さを有する偏平な形状をなす空芯コイルであって、かつ、図7(c)に示すように、磁気空隙内の磁束を横切る有効導体部(巻線部)を備えている。そして、駆動コイル83に所定方向の電流を供給すると、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する磁石部材80は光軸Zを中心として、ロックリング7と共に図5に示すS1又はS2方向に回動する。
【0038】
一般的な接線方向に推力を発生する揺動型、または回転型ボイスコイルモータでは、駆動コイルの形状は略扇形状とすることが多く、駆動コイルがその可動範囲の中心位置にあるときに最大の推力を発生するように設計されている。しかし、本発明に採用しているロック用ボイスコイルモータ8は、ロック及びアンロック状態の切り替えのために用いられるため、駆動コイルが可動範囲の両端に位置したときに大きな推力が必要となる。そのため、駆動コイルの形状も可動範囲の両端位置にあるときに大きな推力を発生するようにしなければならない。そのためには、可動範囲の両端位置にある駆動コイル83の短辺部とマグネット82の単極部分とが重なる面積、すなわちマグネットの磁束が鎖交する面積を極力大きくする様に配置されている。
【0039】
なお、図7においては、磁石部材80を構成するヨーク81a、81bとして、外周面の中央部がコ字形に形成されたヨーク81a、81bを用いた例について説明したが、例えば、一対の永久磁石82a、82bを固着した板状ヨークを、非磁性部材にて支持する構成等も採用できる。すなわち、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する磁石部材80は、駆動コイル83に駆動電流を供給することによって、この磁石部材80をロックリング7と共にS1又はS2方向に回動し得る磁気回路を形成すればよく、図7に示す構成に限定されない。
【0040】
(固定枠に設けた規制部と磁性部材)
続いて、図8及び図9に基づいて、固定枠6に設けた規制部と、同じく固定枠6に配置した磁性部材について説明する。
駆動コイル83を取り付けた固定枠6の一方の表面(図9に示すレンズ支持枠2に対向する側の表面部)には、平面視で略矩形状をなす駆動コイル83の短辺部から所定の距離をおいた位置から突設する一対の規制部61a、61bを設けている。これら2つの規制部61aと61bは、ロックリング7に固定されている磁石部材80がロックリング7と共に、S1方向又はS2方向に角度αだけ回動することができるように磁石部材80の回動範囲を規制する部材である。すなわち、制御装置がロックリング7を光軸Zを中心として図5に示すアンロックの位置P2からS2方向に角度αほど回動させる制御を行うと、磁石部材80の回動方向の端部が規制部61aに当接するとともにその回動を停止させ、この当接した位置においてレンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cの先端部の外周面がロック溝71a、71b、71cの内周面に係合して、レンズ支持枠2はロック状態になるようにしている。
【0041】
また、ロックリング7を図5に示すロックの位置P1から角度αほどS1方向に回動する制御を行うと、上記と同様に、磁石部材80の回動方向の端部が規制部61bに当接するとともにその回動を停止させ、この当接した位置においてレンズ支持枠2はアンロック状態になって停止するようにしている。このように、ロックリング7に固定されている磁石部材80は、一対の規制部61aと61bの間、すなわち、光軸Zと規制部61aと61bのそれぞれが磁石部材80と当接(接触)する点を結ぶ直線内(図10に示す角度Q内)を回動範囲としている。
【0042】
さらに、固定枠6の上記した磁石部材80の回動範囲内には、磁石部材80の回動方向に沿うように、強磁性体からなる第1の磁性部材85a、85bと、第2の磁性部材86a、86bを配置している。この第1の磁性部材と第2の磁性部材の配置は、例えば、図10に示すように、光軸Zと規制部61aと61bのそれぞれが磁石部材80と当接する点を結ぶ直線がなす角度Qの2等分線j0に対して対象となる位置であって、それぞれ一対の第1の磁性部材となる磁性部材85a、85bと、一対の第2の磁性部材となる磁性部材86a、86bを、それぞれの規制部61aと61bの側であって所定の間隔をおいて配置する。
【0043】
この第1及び第2の磁性部材の配置を具体的に説明すると、例えば、図10に示すように、固定枠6に固定した略矩形状をなす扁平な駆動コイル83の両短辺側又はこれら短辺側の近傍に第1の磁性部材85a、85bを、各短辺側と規制部61a(61b)との間に第2の磁性部材86a、86bを配置する。なお、扁平な駆動コイル83は、その平面視における中心線がj0と一致するように固定枠6に固定する。また、これら第1及び第2の磁性部材は、例えば固定枠6に埋設して固定する等の手段を採用して、第1及び第2の磁性部材が固定枠6の表面部から突出させないようにすることが望ましい。
【0044】
このように、固定枠6に第1の磁性部材85a、85bと、第2の磁性部材86a、86bを配置することにより、磁石部材80がS1又はS2方向に回動するに従って、磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85a及び第2の磁性部材86aとの間、あるいは磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85b及び第2の磁性部材86bとの間に、磁気吸引力が発生することになる。なお、この第1及び第2の磁性部材の配置例の詳細については、さらに後述する。
【0045】
また、上記の第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)は、光軸Z方向において、その端面が扁平な駆動コイル83の表面と面一となるように設けられ、かつ、その端面の少なくとも一部が磁石部材80の回動範囲の中で永久磁石82a、82bと対向するように設けられることにより、磁石部材80の回動時に断続的な磁気吸引力を発生することができる。そして、磁石部材80が回動範囲の最端部で停止したときに、永久磁石82a、82bは規制部61a、または61bとの接触面に一定の予圧、すなわち、保持力を与えることができる。
【0046】
この保持力を与えるための機能として、磁性部材85aと86aの断面積の和と同じ断面積をもつ一つの磁性部材を磁性部材86aの位置に配置しても同程度の効果、すなわち、上記予圧を得ることができる。しかし、この場合には、磁石部材80が規制部61a、または61bとの接触面から離脱させる際には、その離脱力が大きくなるために、駆動コイル83に多大な電流を通電して、磁石部材80を駆動する必要がある。これは永久磁石のエッジ部に磁束が集中しやすいという一般的な永久磁石の特性によるものであり、本発明では、上記離脱力を小さくするため、磁性部材を複数に分けて配置し、永久磁石と対向する面積を保つことで、一定の予圧を確保しつつ、離脱力を小さくすることが可能になった。
【0047】
磁性部材86a、86bの光軸Zからの半径方向の配置位置、断面積や体積、磁気特性等の仕様を変更することで、規制部61aの接触面への予圧の大きさを変えることができ、交換レンズの大きさにより上記接触面に対する耐衝撃性が調整可能になる。
【0048】
また、磁性部材86a、86bは、手触れ補正装置に供給可能な最大離脱電流からその仕様が決められ、磁性部材86a、86bにて得られる予圧の不足分を磁性部材85a、85bにて補うように、磁性部材85a、85bの仕様を設定するようにする。
【0049】
続いて、本発明において特徴となる、固定枠6に上記した第1及び第2の磁性部材を配置したことによる作用と効果について説明する。
上記した中心線j0に近い位置に配置した第1の磁性部材85a、85bは、その表面(端面)を回動可能な磁石部材80が近づいてきたとき、あるいはその表面上に停止したときに、磁石部材80を構成する永久磁石82と磁性部材85a又は85bとの間に磁気吸引力が発生して、磁石部材80をロック位置又はアンロック位置まで引き込み、規制部61a、または61bと磁石部材80の接触面に圧力(予圧)をかけることができ、かつ磁石部材80、すなわちロックリング7をロック位置又はアンロック位置に安定した状態でその停止位置を保持する作用を行なう位置保持用部材になる。
【0050】
ロック位置又はアンロック位置で停止した磁石部材80に外部から振動や衝撃が伝達すると、この停止位置から離脱しようとする力(以下、「停止離脱力」という)が作用する。このとき、第1及び第2の磁性部材のうちの上記した中心線j0から遠い位置(規制部81a、81bに近い位置)に配置された第2の磁性部材86a、86bは、磁石部材80を構成する永久磁石82との間に発生する磁気吸引力により、この外部からの衝撃に対して磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に停止した状態を維持させる作用を行う耐衝撃用部材になる。
【0051】
そして、磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85a(85b)との間に発生する磁気吸引力は、永久磁石82aと82bが発生する磁束の向きの影響により磁石部材80の回動方向への磁気吸引力は小さいものの、光軸Z方向への磁気吸引力が大きくできるため、磁石部材80を停止位置に留めさせるための保持力を発生することができる。さらに、第2の磁性部材86a、86bの磁気吸引力と合わせて、上記停止離脱力に対抗するより大きな反力となる。これにより、第2の磁性部材86a、86bだけを配置した場合と比較して、磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に停止した状態をより安定して維持することができるようになる。
【0052】
このように、本発明においては、固定枠6の表面に第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)を配置しているので、外部から振動や衝撃が加わった場合、第2の磁性部材86a(86b)はこの衝撃により磁石部材80の回動を防ぐ作用を発揮するので、磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に安定して保持することができるようになる。
【0053】
(磁気吸引力)
磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85a(85b)、又は第2の磁性部材86a(86b)との間に発生する磁気吸引力は、空隙磁束密度(磁性部材の表面における磁束密度)の2乗に比例し、また、これら磁性部材85a等における磁束が鎖交する断面積に比例すること、並びに永久磁石82a、82bの表面と磁性部材85a等の表面との距離に反比例する。また、空隙磁束密度は、永久磁石82a、82bの残留磁束密度と磁石部材80の形状にも依存する。さらに、磁気吸引力は磁性部材85a等の磁気的性質によっても変化する。例えば、炭素鋼は磁性を持つステンレス鋼(フェライト系ステンレス鋼)よりも飽和磁束密度が高く、磁石部材80との間に発生する磁気吸引力を大きくすることができる。
【0054】
従って、本発明においては、磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85a(85b)、又は第2の磁性部材86a(86b)との間に発生する磁気吸引力に関係する上記各種の仕様(パラメータ)を適切に設定することによって、ロック用ボイスコイルモータ8により磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に円滑に移動させることができ、しかも、外部からの衝撃によりロック位置又はアンロック位置から離脱しようとする「停止離脱力」に対抗する反力を、磁石部材80と規制部61a、61bの接触面に発生させることが可能になる。
【0055】
前記したように、各停止位置における停止状態の安定性を向上するためには、第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)の磁気特性を異なるようにすることが望ましい。主として、磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に保持する作用を行う第1の磁性部材85a(85b)の磁気吸引力は、離脱電流を大きくする要因となる第2の磁性部材86a(86b)よりも大きくすることが望ましい。そのためには、図10に示すように、第1の磁性部材85aと85bを、光軸Zを中心とした同一の円の円弧上(図10には点線で図示)に配置し、さらに、第2の磁性部材86aと86bを同じく光軸Zを中心とした他の同一の円の円弧上(図10には点線で図示)に配置するとともに、光軸Zからの半径が大きい円弧上に配置した第2の磁性部材86aと86bの磁気特性を、光軸Zからの半径が小さい円弧上に配置した第1の磁性部材85aと85bの磁気特性よりも高くすることが望ましい。
【0056】
なお、第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)の磁気特性を同じにした場合には、光軸Zからの半径が大きい円弧上に配置する磁性部材の断面積は、光軸Zからの半径が小さい円弧上に配置する磁性部材よりも大きくして、磁石部材80との磁気吸引力を大にすることが望ましい。
また、本発明を大口径の交換レンズに採用する場合には、第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)を固定枠6に配置する位置は、光軸Zからの距離(半径方向の配置位置)が同一となる円周上に配置してもよい。
【0057】
(磁性部材の配置例)
続いて、固定枠6の前記した磁石部材80の回動範囲内に、第1の磁性部材85a、85b、及び第2の磁性部材86a、86bの配置について、さらに詳細に説明する。
【0058】
第1の磁性部材85a、85b及び第2の磁性部材86a、86bに対して、上記の各機能をもたせるために、両磁性部材85a、85b及は86a、86bは、図8に示すように、扁平な略矩形状をなす駆動コイル83の中央(円周方向の中間)と光軸Zを結ぶ直線j0と、各第1及び第2の磁性部材の中心と光軸Zを結ぶ直線j1又はj2とのなす角度θ1又はθ2が異なるような位置となる固定枠6上に配置して固定することが必要である。図8に示す例では、第1の磁性部材85b(85aも同様)を駆動コイル83の外周側のコーナー部に近接した位置に固定するとともに、第2の磁性部材86b(86aも同様)を駆動コイル83よりも光軸Zに近く、かつ規制部61bに近接した位置に固定することにより、角度θ2>角度θ1とした例を示す。
【0059】
第1の磁性部材85a(85b)及び第2の磁性部材86a(86b)は、上記の各機能を持たせるために、図8に示す配置とは異なる位置に配置することもできる。
図10は、磁石部材を図1に示すB方向から見た状態を示すとともに、磁石部材80が駆動コイル83と重なった位置にあるときの状態であって、さらに光軸Zの中心に、E方向から見た磁石部材80を記載した例である。図10に示す例では、駆動コイル83の中間部と光軸Zを結ぶ直線j0と、光軸Zと第1の磁性部材85a(85bも同様)の中心を結ぶ直線j1とのなす角度θ1よりも、駆動コイル83の中間部と光軸Zを結ぶ直線j0と、光軸Zと第2の磁性部材86a(86bも同様)の中心を結ぶ直線j2とのなす角度θ2を大きくする点では図8と同様である。ただし、図10では、第1の磁性部材85a(85b)は駆動コイル83の内周側のコーナー部に近接し、第2の磁性部材86a(86b)は第1の磁性部材85a(85b)よりも規制部61a(61b)に近接し、かつ光軸Zから離れた位置に固定した例を示す。
【0060】
図11は、図10に示す第1の磁性部材85a、85bと第2の磁性部材86a、86bを配置した固定枠6を備えた手振れ補正装置1について、駆動コイル83に駆動電流を供給して、磁石部材80を規制部61aに当接させた状態を示すとともに、光軸Zの中心に、E方向から見た磁石部材80と、F−F線で切断した固定枠6を記載した例である。この図11に示す例においても、第1の磁性部材85a、85bと、第2の磁性部材86a、86bは異なった角度θ1、θ2をもつように配置されているので、図8に示す配置の場合と同様の機能をもつことができる。なお、図11に示すように固定枠6の駆動コイル固定部は、駆動コイル83とともに、その近傍に第1の磁性部材85a、85bと、第2の磁性部材86a、86bを配置し、かつ、ロックリング7とともに回動する磁石部材80の回動を妨げないような略平板形状からなり、固定枠6を構成する外周円筒部から内周側に突出し、ロックリング7と所定の間隙を形成して対向するように形成されている。
【0061】
上記の第1及び第2の磁性部材85a、85b、86a、86bとして、強磁性体からなるピン状部材を使用できるが、このピン状部材は円柱状又は多角柱状などの種々の形状とすることができる。この磁性部材は、固定枠6を成形する際に成形金型にインサートしておくことにより、固定枠6に固定することができるし、あるいは一端部にねじ部を有する磁性部材を固定枠6にねじ込むことによって固定することができる。
【0062】
(手振れ補正動作)
上記の手振れ補正装置1は、固定枠6の内部に配置されている回路基板に手振れ補正装置1の作動を制御するための制御手段を備えている。撮影時において、制御手段は、振動センサ(ジャイロセンサ)で検出した振動の検出値に対応させて補正レンズ10を保持するレンズ支持枠2を、X軸用ボイスコイルモータ3a及びY軸用ボイスコイルモータ3bにより、X方向及びY方向に駆動して、レリーズボタンがONされたときに撮像素子が取り込んだ被写体の画像の結像位置を修正する処理を行う。なお、制御手段は、例えば、マイクロチップ(CPU)を搭載した制御回路から構成され、この制御回路は基板51に搭載されている。
【0063】
この手振れ補正の処理においては、制御手段は空芯コイル30aに電流(直流)を供給し、また通電方向を切り替えることにより、レンズ支持枠2に保持された補正レンズ10は、フレミングの左手の法則により、X方向に微小な距離(例えば1〜2mm程度)だけ往復移動させることができる。同様に空芯コイル30bに電流(直流)を供給し、また通電方向を切り替えることにより、レンズ支持枠2に保持された補正レンズ10は、フレミングの左手の法則により、Y方向に微小距離だけ往復移動させることができる。この手振れ補正は、レリーズボタンの半押し動作信号に同期して開始され、半押しタイマーOFF信号に同期して終了するように行うことができる。
【0064】
(ロック及びアンロック動作)
非撮像時には、例えば、手振れ補正スイッチをオフすると、制御手段はロック用ボイスコイルモータ8を作動させてロックリング7をアンロック位置から角度αほど回転させる制御を行ってロック位置まで回動する。これにより、磁石部材80は規制部61aに当接するとともに、ロックリング7のロック溝71a、71b、71cにレンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cの端部側が係止する。これにより、補正レンズ10を支持しているレンズ支持枠2の中心、すなわち補正レンズ10の中心が光軸Zと略一致させた状態となって、レンズ支持枠2の移動が阻止され、補正レンズ10は鏡筒の中央に固定される。
このロック状態においては、前記したように磁石部材80と規制部61a,61bとの接触面には、磁石部材80を構成する永久磁石82と第1及び第2の磁性部材85a、85b、86a、86bとの間に発生する磁気吸引力の作用による予圧を与えることができるため、鏡筒に振動や衝撃が加わってもロック状態は安定して維持される。また、ロック用ボイスコイルモータ8に供給する電源をオフしてもこのロック状態は維持されることになる。これにより、本発明の手振れ補正装置を採用している交換レンズ、あるいはカメラ等を、撮像者が上記したロック状態にして持ち運んでいるときに振動や衝撃が加わっても、このロック状態は安定して維持されることになる。
【0065】
これにより、撮影開始時等に実施される各レンズ群11のセンタリング等において、補正レンズ10を移動させる必要がほとんどなく、像揺れ等によって撮像者が感じる不快感を抑制できる。
【0066】
一方、撮像時においては、例えば、撮像者による手振れ補正スイッチのオン信号に基づいて、制御手段は上記のロック状態から、ロック用ボイスコイルモータ8を駆動してロックリング7を図5に示すS1方向にアンロック位置まで回動させることにより、レンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cの端部側を、ロックリング7のアンロック溝72a、72b、72c内に遊嵌させる。これにより、ロックリング7とレンズ支持枠2との係合が外れるので、制御手段は振動センサで検出した振動の検出値に基づいてレンズ支持枠2をX方向及びY方向へ移動させる制御、すなわち、手振れ補正の制御を行うことが可能になる。
【0067】
このように、例えば、撮影者の手振れ補正スイッチのオン・オフ操作に基づいて、制御手段は、補正レンズ10のロック状態とアンロック状態との切り替えの制御を行うために、例えば、手振れ補正スイッチのオン・オフ信号が入力されると、ロック用ボイスコイルモータ8に駆動電流を所定の時間(数msec)供給する制御を行って、ロックリング7を、光軸Zを中心として時計方向又は反時計方向に所定角度αだけ回動させる。ロックリング7が時計方向又は反時計方向に所定角度αだけ回動すると、ロックリング7に固定されている磁石部材80は規制部61aまたは61bに当接する位置まで回動して停止し、レンズ支持枠2、すなわち、補正レンズ10はロック状態又はアンロック状態になる。
【0068】
(ロック用ボイスコイルモータの動作)
ロック用ボイスコイルモータ8の駆動コイル83に駆動電流を供給して、磁石部材80を図8及び図9に示す位置まで回動させることにより、ロックリング7に固定されている磁石部材80が一方の規制部61a(61b)に当接(図9においては磁石部材80を構成するヨークの回動方向の端面が規制部61bに当接)した状態にする。磁石部材80が図9に示す位置まで移動すると、レンズ支持枠2とロックリング7との係合が外れてアンロック状態となる。このアンロック状態においては、前記したように、磁石部材80を構成する永久磁石82は第1の磁性部材85b及び第2の磁性部材86bに磁気的に吸引されるので、ロック用ボイスコイルモータ8への通電が遮断されても、このアンロック状態が維持される。
【0069】
また、ロック用ボイスコイルモータ8の駆動コイル83に上記とは逆方向の駆動電流を流して、磁石部材80をS2方向(図9参照)に角度αだけ回動させることにより、ロックリング7に結合されている磁石部材80が他方の規制部61aに当接した状態になる。磁石部材80が規制部61aに当接する位置まで移動すると、レンズ支持枠2がロックリング7に係止されてロック状態に切り替わる。磁石部材80を構成する永久磁石82は、前記したように、第1の磁性部材85a及び第2の磁性部材86aに磁気的に吸引された状態で停止しているため、ロック用ボイスコイルモータ8への通電が遮断(無給電状態)されても、このロック状態が維持される。同様に、アンロック状態でも無給電で停止位置が維持できる。
【0070】
さらに、規制部61a、または61bと磁石部材80の接触面への予圧は、バネ等による弾性体を使用した場合のような経時的変化はなく、長期間繰り返し使用した場合においても機能的に低下しないロック機構を備えた手振れ補正装置とすることができる。
【0071】
本発明において、手振れ補正装置の小型化を図るために各ボイスコイルモータに組み込まれる永久磁石として、最大エネルギー積が45MGOe以上、望ましくは50MGOe以上のR−T−B系磁石(R:Yを含む希土類元素の一種又は2種以上、T:Fe又はFeとCo)を用いることが好ましい。ロック用ボイスコイルモータの可動部(磁石部材)の重量が低減されるので、消費電力を低減することができる。
【0072】
本発明の手振れ補正装置は、種々の光学機器に搭載することができる。例えば単焦点型の交換レンズおよびズーム型の交換レンズ、さらに、デジタルカメラ(例えば、レンズ交換式デジタル一眼レフカメラ)やビデオカメラ等の撮像用光学機器に限らず、双眼鏡、天体望遠鏡を含む観察用光学機器や、監視用カメラなどの光学機器などに搭載することができる。
【符号の説明】
【0073】
1:手振れ補正装置、10:補正レンズ、11:レンズ群
2:レンズ支持枠
20a、20b、20c:係止片
3a、3b:可動コイル形VCM
30a、30b:空芯コイル
31a、31b:磁気回路部
32a、32b:ヨーク
33a、33b:永久磁石
4a、4b:位置検出部
40a、40b:LED
41a、41b:枠部材
42a、42b:PSD
5:ベース、51:基板
50a、50b、50c:案内部
6:固定枠
60a、60b、60c:案内部
7:ロック部材
70a、70b:円周溝
71a、71b、71c:ロック溝
72a、72b、72c:アンロック溝
8:ロック用ボイスコイルモータ
80:磁石部材、81:ヨーク、
82a、82b:永久磁石、83:駆動コイル
84:FPC
85a、85b:第1の磁性部材、86a、86b:第2の磁性部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の光学装置に採用されている手振れ補正装置、特に、非撮影時において、補正レンズを支持しているレンズ支持枠の移動を防止する固定手段を備えた手振れ補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラでは、撮影時に手振れが生じるとこの手振れによる画像の乱れが発生する。この画像の乱れの発生は、特に望遠レンズを使用した時に顕著となる。手振れは(1/焦点距離)秒以上のシャッター速度で防止できるが、暗い所や低感度フィルムの使用時には、シャッター速度を遅くする必要があるため、手振れ補正装置を内蔵したカメラが増加している。特に、デジタル一眼レフカメラでは、望遠レンズを使用した場合の手振れによる画像の乱れが顕著となるので、この画像乱れを防止するために、補正レンズとその駆動手段を含み、振動センサ(例えばジャイロセンサ)で検出された低周波(例えば1〜10Hz)の振動に応じて、補正レンズを含む補正光学系を光軸と垂直な2方向(ピッチング方向とヨーイング方向)に移動させる(偏心させる)ようにした手振れ補正装置を設けることが一般化している。
【0003】
一方、非撮像時のように手振れ補正を行わない場合には、補正レンズの光軸が補正レンズを除く撮像レンズの光軸と略一致するように補正レンズを固定(ロック)することが行われている。補正レンズを固定するためのロック機構としては、例えば、光軸を中心にして回動可能なロックリングを補正レンズ支持枠の外周側に配置し、駆動手段によりこのロックリングを所定方向に所定角度だけ回動させることによって、補正レンズを支持している補正レンズ支持枠をロックリングにより固定する方法が採用されている。
【0004】
上記した非撮影時において、ロックリングを所定方向に回動させることによって、補正レンズを光軸に対して固定する技術に関しては、例えば、下記の特許文献1〜3に記載の発明が提案されている。
【0005】
特許文献1に記載の発明においては、補正レンズを支持した支持枠を地板に結合するとともに、地板に回転可能に支持されたロックリングと、このロックリングを回転駆動させるステップモータを備え、このステップモータの駆動によるロックリングの回転により、ロックリングの4ケ所に設けたカムを支持枠に設けた4点の突起と係合させることにより、補正レンズを支持した支持枠を所定の固定位置に固定、又は固定状態から解放する機構を有する像振れ補正装置が提案されている。
【0006】
特許文献2に記載の発明においては、ブレ補正を行う光学部品を固定するロック機構を備えたブレ補正装置が提案されている。このロック機構は、像ブレ補正を行う光学部品を保持し、移動可能なレンズ保持枠と、ブレ補正装置の非作動時にレンズ保持枠を固定するロックリングと、このロックリングを回動駆動させるために、回動用コイルを挟んで対向するように第1ベース部及び第2ベース部に各々マグネットとヨークを備えた可動コイル形ボイスコイルモータを備えている。さらに、ロックリングの内周面には、レンズ保持枠の外周面に設けた突起部と係合してレンズ保持枠を固定するために、内径側に突出した凸部を形成したことが開示されている。また、特許文献2に記載のロックリングは、その外周面の一部にラッチ係合部を設け、このラッチ係合部をベースに取り付けられたラッチバネによって外周面から付勢させることが開示されている。そして、このラッチバネを設けることにより、鏡筒に与えられた衝撃等の意図しない力によって、ロックリングが移動することを防止する作用を行わせることが記載されている。
【0007】
この特許文献2に記載のブレ補正装置において、レンズ保持枠を固定状態から解放して所謂アンロック状態にするためには、回動用コイルに所定方向の電流を流すことによりロックリングを回動させて、レンズ保持枠の外周面に設けた突起部を、ロックリングの凸部が形成されていない内周面と対向させ、レンズ保持枠を光軸に略垂直なXY平面を移動可能にして、ブレ補正を行うことができるようにしている。また、レンズ保持枠をアンロック状態からロック状態にするために、回動用コイルに所定方向の電流を流して、レンズ保持枠の突起部をロックリングの凸部と係合させている。このロック状態においては、ラッチバネはロックリング方向に付勢力を発揮するので、意図しない衝撃力によってロックリングが移動することを防止することが記載されている。
【0008】
特許文献3に記載の発明は、上記特許文献2に記載のロック機構において、ロックリングがロック位置(ロック状態)にあるときに、レンズ支持枠(レンズ保持枠)を付勢する板バネからなる付勢部材を設けたブレ補正装置が開示されている。この付勢部材は、その一端側がロックリングに固定されているため、ロックリングの回動に伴ってレンズ支持枠の周りを回動移動する。そして、ロック位置においてはロックリングの他端側となる頭部がレンズ支持枠の突起部に接触してレンズ支持枠を付勢する。これにより、レンズ鏡筒に加えられた振動等によって補正レンズが鏡筒の光軸方向に移動することを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3517525号公報
【特許文献2】特開2009−116033号公報
【特許文献3】特開2009−198692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されているようにステップモータによりロックリングを回転させる場合は、ロック機構の構成が複雑になるという課題が生じる。また、このロック機構では、レンズ鏡筒に大きな振動や衝撃が加えられたときには、ロックリングと補正レンズを支持する支持枠との係合が外れることが起こりえる。
【0011】
特許文献2及び特許文献3に記載のように、ロック機構にラッチバネや板バネ等からなる付勢部材を設けることにより、振動や衝撃によるロックリングとレンズ支持枠との係合が外れることを防止できる。しかし、このような弾性部材からなる付勢部材を用いたロック機構は、長期間にわたって繰り返し使用を行うと、この付勢部材はその弾性変形の機能が低下してしまうので、十分なロック機能を発揮できなくなる恐れがある。このため、非撮像時のように手振れ補正を行わないロック状態において、弾性部材を用いることなく、補正レンズを支持しているレンズ支持枠を固定するとともに、このロック状態を安定して保持することができるロック機構を備えた手振れ補正装置が望まれている。
【0012】
したがって、本発明の課題は、上記のような弾性部材による機械的手段によらずに、外部から振動や衝撃が加わっても、磁力による磁気吸引力を利用して補正レンズをロック位置に安定して保持することができる手段を備えた手振れ補正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の手振れ補正装置は、補正レンズを支持するレンズ支持部材と、
前記レンズ支持部材を光軸と直交する面内で移動可能に支持する固定部材と、
前記レンズ支持部材に係止可能で、かつ前記固定部材に対して回動可能に設けられたロック部材と、
前記ロック部材に固定され、磁気空隙を形成する一対の永久磁石とヨークを有する磁石部材と、前記磁気空隙内に位置するように前記固定部材に固定された扁平な駆動コイルと、を備えたボイスコイルモータと、
前記ボイスコイルモータの駆動により、前記ロック部材に固定された前記磁石部材が回動する回動範囲を規制するために、前記回動範囲の両端部における前記磁石部材の停止位置に対応させて前記固定部材に突設した一対の規制部と、
前記磁石部材が回動及び前記停止位置に停止しているときに、前記永久磁石との間に磁気吸引力を発生させるために前記固定部材に配置した複数の磁性部材と、
を備えていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明において、前記複数の磁性部材は、前記一対の規制部の間であってそれぞれの前記停止位置側に、所定の間隔を設けて配置した第1の磁性部材と第2の磁性部材を備えていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明において、前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材は、磁気特性が異なることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロック部材に固定した磁石部材の回動範囲であって、その回動方向に沿った異なる位置にこの磁石部材を構成する永久磁石との間に磁気吸引力を作用させる複数の磁性部材を設けているので、従来のバネ部材等の機械的手段のみによらずに、この磁気吸引力により補正レンズをロック位置に保持することができるようにし、さらに、外部から衝撃を受けてもその保持状態を安定して維持することができる手振れ補正装置を提供することができる。
【0017】
本発明によれば、固定部材に磁性部材を配置する位置や、磁性部材の大きさなどを変更することにより、磁石部材を構成する永久磁石との間に発生する磁気吸引力を容易に調整することが可能となる。これにより、本発明を適用する望遠レンズ等において、その口径や鏡筒の長さに対応して、補正レンズをロック位置に安定して保持することが可能な手振れ補正装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の手振れ補正装置の分解斜視図である。
【図2】図1の手振れ補正装置をA方向から見た矢視図である。
【図3】図2の手振れ補正装置をC方向から見た矢視図である。
【図4】図3をD方向から見た矢視図である。
【図5】図1に示すロックリングをB方向から見た図である。
【図6】ロックリングとレンズ支持枠の係止片との係合関係を示す図であって、(a)は係合している状態を示す図、(b)は係合が解放されている状態を示す図である。
【図7】図5に示す磁石部材の構成を示す図であって、(a)は図5に示すG方向から見た矢視図、(b)は同じくH方向から見た矢視図、(c)は同じく磁石部材と駆動コイルをI方向から見た矢視図である。
【図8】図1に示す固定部材及びロック用ボイスコイルモータを、図1に示すA方向から見た図である。
【図9】図1に示す固定部材及びロック用ボイスコイルモータを、図1に示すB方向から見た図である。
【図10】図9に示す磁石部材が、光軸Z方向から見たときに駆動コイルと重なる位置にあるときに、光軸Zに、図1に示すB方向から見たロック用ボイスコイルモータを記載した図である。
【図11】図10において、磁石部材がロック位置まで回動したときに、図1に示すB方向から見た場合の各部材の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明の手振れ補正装置の一例を示す分解斜視図、図2は図1に示す手振れ補正装置を組み立てたときにA方向から見た図、図3は図2をC方向から見た図、図4は図3をD方向から見た図を示している。
【0020】
図1において、手振れ補正装置1は、例えばレンズ鏡筒(不図示)内に配置され、撮像用レンズ群11の一部を構成する補正レンズ10を撮影時の手振れ(例えば数Hz〜十Hzの周波数を有する振動)に応じて、光軸Zと直交する面内でX方向及びY方向に変位させることにより、図示しない撮像素子(例えば、CCD)から構成される結像面における像振れを低減する機能を備えている。なお、図1において、CCDは図1に示すB側に配置されている。
【0021】
手振れ補正装置1は、レンズ支持部材(以下、「レンズ支持枠2」という)に支持される補正レンズ10と、レンズ鏡筒に対して固定され、レンズ支持枠2を光軸と直交する面内で移動可能に支持する固定部材(固定枠6及びベース5を含む)と、レンズ支持枠2を駆動するX軸用ボイスコイルモータ3a及びY軸用ボイスコイルモータ3bと、レンズ支持枠2に係止されるロック部材(以下、「ロックリング7」という)と、ロックリング7を駆動するロック用のボイスコイルモータ8(以下、「ロック用ボイスコイルモータ8」という)を備えている。
【0022】
(固定部材)
固定部材は、固定枠6と固定枠6に支持されるベース5を含み、これらによって補正レンズ10及び補正レンズ10を支持するレンズ支持枠2などを取り囲むように配置している。固定枠6は、撮像用レンズ群11が形成する光束が通過できるように円筒状に形成されるとともに、図1又は図2〜図3に示すように、外周側から光軸Z方向に突出して放射状に設けられた案内部60a、60b、60cを有する。また、この固定枠6の内部には、手振れ補正装置1の動作を制御するための制御回路を有する回路基板などの部材が収納されている。ベース5は、固定枠6と同様に外周側から光軸Z方向に突出して放射状に設けられた案内部50a、50b、50cを有し、これら案内部と固定枠6の前記案内部を介して固定枠6に支持される。また、このベース5には、後述するように、レンズ支持枠2を駆動するX軸用ボイスコイルモータ3a及びY軸用ボイスコイルモータ3bを構成する磁石部材31a及び31bを固定する。
なお、固定部材は、レンズ支持枠2を光軸と直交面内で移動可能に支持するとともに、後述するロック用ボイスコイルモータの駆動コイルを固定できる構成であればよく、図示のような固定枠6とベース5の組合せ構成に限定されない。
【0023】
(レンズ支持枠)
手振れを補正するための補正レンズ10を支持するレンズ支持枠2は、図1に示すように、補正レンズ10の外周縁の近傍位置から等角度間隔で形成された略台形状の断面を有し、かつ光軸Z方向に伸長する係止片20a、20b、20cを有する。手振れ補正装置1を組み立てたときには、レンズ支持枠2の各係止片20a、20b、20cのそれぞれの先端部がロックリング7に形成した後述する円周溝70a、70b、70cに入り込んでいる。そして、ロックリング7は、この円周溝70a、70b、70c内に係止片20a、20b、20cの先端部が挿入された状態で、時計方向又は反時計方向に所定角度ほど回動可能になっている。
【0024】
このレンズ支持枠2は、ベース5に対してX軸方向およびY軸方向に移動可能に設置されている。すなわち、レンズ支持枠2は、Z軸方向に沿って複数箇所(例えば3ケ所、円周方向に沿って等間隔の位置)で引っ張りコイルばね21a、21b、21cの張力によりベース5に弾性的に保持されるとともに、レンズ支持枠2とベース5との間に微小な球体22a、22b、22cを介装することにより、レンズ支持枠2をベース5に対してX方向及びY方向にスムーズに摺動できるようにしている。
【0025】
(X軸用ボイスコイルモータ)
レンズ支持枠2を図1に示すX軸方向に駆動するX軸用ボイスコイルモータ3aは、可動コイル方式であり、レンズ支持枠2に固着される偏平な空芯コイル30aと、固定枠6に支持されるベース5に固定される磁石部材31aとを備えている。磁石部材31aは、両端部に非磁性体からなるスペーサ34a1、34a2を取付けた平板状のヨーク32a1、32a2と、ヨーク32a1、32a2の内側面に、異極性の磁極が対向するように固着された一対の永久磁石33a1、33a2を有する。これらの永久磁石33a1、33a2は、異極性の磁極が、空芯コイル30aの移動方向(X軸方向)に隣接するように、永久磁石の厚さ方向(Z軸方向)に磁化されている。ただし、図1では一部の磁極を示している。磁石部材31aは、空芯コイル30aをX方向に駆動し得る磁気回路を形成すればよく、図示の構成に限定されない。
【0026】
(Y軸用ボイスコイルモータ)
レンズ支持枠2を図1に示すY方向に駆動するY軸用ボイスコイルモータ3bは、可動コイル方式で駆動され、レンズ支持枠2に固着される偏平な空芯コイル30bと、固定枠6に支持されたベース5に固定される磁石部材31bとを備えている。磁石部材31bは、一端側に非磁性体からなるスペーサ34b1、34b2を取付けた平板状のヨーク32b1、32b2と、その内周面に、異極性の磁極が対向するように固着された一対の永久磁石33b1、33b2を有する。これらの永久磁石も、異極性の磁極が、空芯コイル30bの移動方向(Y軸方向)に隣接するように、永久磁石の厚さ方向(Z軸方向)に磁化されている。ただし、図1では一部の磁極を示している。磁石部材31bは、空芯コイル30bをY方向に駆動する磁気回路を形成すればよく、図示の構成に限定されない。
【0027】
(位置検出部)
この手振れ補正装置1は、レンズ支持枠2に支持された補正レンズ10の位置を検出するための手段(位置検出部)を備えている。この位置検出手段としては、Y方向の補正レンズ10の位置を検出するために、例えば、図1に示すように、レンズ支持枠2に固定されたLED40a、ベース5に固定された枠部材41a及び基板51に固定されたPSD(Position sensitive Detector)42aを有するY方向位置検出部4aを備えている。またX方向の補正レンズ10の位置を検出するために、レンズ支持枠2に固定されたLED40b、ベース5に固定された枠部材41b及び基板51に固定されたPSD42bを有するX方向位置検出部4bを備えている。
【0028】
(ロックリング)
ロックリング7は、手振れ補正装置1を組み立てたときに光軸Zと同心となるリング状部材である。また、ロックリング7のレンズ支持枠2と対向する側の面には、図1に示すような磁石部材80を固定している。この磁石部材80と図4に示す扁平な駆動コイル83は後述するロック用ボイスコイルモータ8を構成し、駆動コイル83へ駆動電流を供給することによりロックリング7は、光軸Zを中心にて時計方向又は反時計方向に回動する。磁石部材80は、ねじなどの固定手段によりロックリング7に固定している。なお、ロックリング7、レンズ支持枠2、及び前記した固定枠6などの部材は、例えばエンジニアリングプラスチックのように軽量でかつ剛性が大なる材料(非磁性体)で形成される。
【0029】
ロックリング7は、レンズ支持枠2と対向する側の内周面に、図1に示す係止片20a、20b、20cの先端が入り込む円周溝70a、70b、70cが形成されている。図5は、ロックリング7に形成されたこれら円周溝70a、70b、70cの形状例を示している。各円周溝70a、70b、70cは、係止片20a、20b、20cが嵌合してこれら円周溝70a等を係止する形状及び寸法を備えたロック溝71a、71b、71cを有している。また、各円周溝70a、70b、70cは、これらロック溝71a、71b、71cの終端からその外径が円周方向に連続的に増加して(曲線的に変化して)、図5に示すように、P1位置(ロック位置)から角度αだけ離れたP2位置(アンロック位置)で係止片20a、20b、20cが遊嵌される形状及び寸法を備えたアンロック溝72a、72b、72cを有している。
【0030】
そして、ロック用ボイスコイルモータ8を駆動して、磁石部材80を固定しているロックリング7を磁石部材80と共にP1位置(ロック位置)からS1方向に角度αだけ回動してP2位置(アンロック状態)にすることにより、レンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cをロックリング7に係止された状態からこの係止を解放した状態とすることができる。
【0031】
図6(a)、(b)は、上記したロック位置とアンロック位置において、ロックリング7の円周溝70a、70b、70cとレンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cとの位置関係を示している。なお、図6(a)、(b)においては、レンズ支持枠2は前記位置関係を分かり易く説明するために係止片20a、20b、20cの先端部(円周溝に挿入されている部分)のみを図示している。
【0032】
図6(a)は、ロック位置の状態であって、ロックリング7の円周溝70a等のうちの各ロック溝71a、71b、71cに、レンズ支持枠2の各係止片20a、20b、20cが係合している状態を示している。このロック位置の状態では、係止片20a、20b、20cの先端部の外周面がロック溝71a、71b、71cの内周面に係合している。これにより、レンズ支持枠2はロックリング7によりロック位置に保持された状態になる。すなわち、レンズ支持部材(レンズ支持枠2)は、ロック部材(ロックリング7)と係止したロック状態になる。
図6(a)に示すレンズ支持枠2がロック状態に保持されているときに、ロック用ボイスコイルモータ8を駆動してロックリング7をS1方向に角度α回動させると、レンズ支持枠2は図6(b)に示すようにアンロック状態になる。
【0033】
レンズ支持枠2がアンロック状態になっている状況を示す図6(b)においては、レンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cの端部側はアンロック溝72a、72b、72c内に入り込んだ状態になる。この状態では、係止片20a、20b、20cの端部側のそれぞれはアンロック溝72a、72b、72c内で遊嵌している状態になっている。この「遊嵌している状態」とは、係止片20a、20b、20cの側面部と上端部とが、それぞれのアンロック溝72a、72b、72c内において所定の間隔をおいた状態で保持されていることを示す。このように、アンロック状態においては、係止片20a、20b、20cの端部側はアンロック溝72a、72b、72c内で遊嵌した状態になっているので、補正レンズ10を支持するレンズ支持枠2は、X軸用ボイスコイルモータ3a及びY軸用ボイスコイルモータ3bの駆動により、X方向及びY方向に移動可能になるので、手振れ補正装置1が備えている制御手段の制御に基づいて手振れの補正を行うことができるようになる。
【0034】
(ロック用ボイスコイルモータ)
固定部材(図示の構成においては固定枠6)及びロックリング7には、このロックリング7を光軸Z回りに回動させるためのロック用ボイスコイルモータ8を構成する部材を取付けている。本発明では、ロック用ボイスコイルモータ8は、駆動コイルに給電するための配線、またはリード線の断線を防止するためにこの駆動コイルを固定部材の所定部位に固定した可動磁石方式を採用しており、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する磁石部材は、ロックリング7に固定している。さらに、この駆動コイルを固定した固定部材に、ロックリング7を回動させてレンズ支持枠2をロック状態にしたときに、レンズ支持枠2をロック位置に安定して保持(維持)するために、複数の磁性部材を配置していることに特徴がある。これら駆動コイルと磁性部材を取付ける部位としては、例えば、固定部材である固定枠6に形成されロックリング7とともに回動する磁石部材の回動を妨げない位置を選定することが望ましい。
【0035】
このように、磁性部材を固定部材(固定枠6)に配置することにより、前記したロック状態において、鏡筒等に外部からの衝撃を受けても、ロックリング7に固定している磁石部材80を構成する永久磁石82とこの磁性部材との間に磁気吸引力が作用するので、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する駆動コイル83への電流の供給をOFFした場合でも、この磁気吸引力により係止片20a、20b、20cの端部側の外周面がロック溝71a、71b、71cの内周面と係合するロック状態を安定して維持することができるようになる。
また、磁性部材を固定枠6に配置したことにより、ロックリング7をアンロック位置からロック位置に回動させるときに、磁石部材80を構成する永久磁石82とこの磁性部材との間に作用する磁気吸引力により、ロックリング7をロック位置まで直ちにスムーズに移動させることができ、かつ、この磁気吸引力はロックリング7の移動に係る電力の消費を節減する作用を行う。
【0036】
続いて、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する磁石部材80について、その構成例を図7に基づいて説明する。前記したように、ロック用ボイスコイルモータ8は、ロックリング7のレンズ支持枠2に対向する面に固定される磁石部材80と、図1に示すFPC(Flexible Printed Circuits)84を介して固定枠6に固定される駆動コイル83等から構成されている。磁石部材80は、図7に示すように、板状部材の中央部81cをコ字形に形成して対向配置する一対のヨーク81a、81b(図1では「81」と記載)と、このヨーク81a、81bの各対向面に固着された一対の永久磁石82a、82bを有している。これら一対の永久磁石82a、82bの対向面間に磁気空隙が形成される。
【0037】
一対の永久磁石82a、82bのそれぞれは、図7(a)又は(b)に示すように、異極性の磁極が磁石部材の移動方向に隣接するように厚さ方向(Z軸方向)に磁化され、かつ磁気空隙を介して異極性の磁極が対向するようにヨーク81a、81bに固着されている。一対の永久磁石82a、82bの対向面間に形成される磁気空隙には、駆動コイル83が配置されている。駆動コイル83は固定枠6に固定されており、平面視で略矩形状をなすとともに固定枠6の駆動コイル固定部と同等の厚さを有する偏平な形状をなす空芯コイルであって、かつ、図7(c)に示すように、磁気空隙内の磁束を横切る有効導体部(巻線部)を備えている。そして、駆動コイル83に所定方向の電流を供給すると、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する磁石部材80は光軸Zを中心として、ロックリング7と共に図5に示すS1又はS2方向に回動する。
【0038】
一般的な接線方向に推力を発生する揺動型、または回転型ボイスコイルモータでは、駆動コイルの形状は略扇形状とすることが多く、駆動コイルがその可動範囲の中心位置にあるときに最大の推力を発生するように設計されている。しかし、本発明に採用しているロック用ボイスコイルモータ8は、ロック及びアンロック状態の切り替えのために用いられるため、駆動コイルが可動範囲の両端に位置したときに大きな推力が必要となる。そのため、駆動コイルの形状も可動範囲の両端位置にあるときに大きな推力を発生するようにしなければならない。そのためには、可動範囲の両端位置にある駆動コイル83の短辺部とマグネット82の単極部分とが重なる面積、すなわちマグネットの磁束が鎖交する面積を極力大きくする様に配置されている。
【0039】
なお、図7においては、磁石部材80を構成するヨーク81a、81bとして、外周面の中央部がコ字形に形成されたヨーク81a、81bを用いた例について説明したが、例えば、一対の永久磁石82a、82bを固着した板状ヨークを、非磁性部材にて支持する構成等も採用できる。すなわち、ロック用ボイスコイルモータ8を構成する磁石部材80は、駆動コイル83に駆動電流を供給することによって、この磁石部材80をロックリング7と共にS1又はS2方向に回動し得る磁気回路を形成すればよく、図7に示す構成に限定されない。
【0040】
(固定枠に設けた規制部と磁性部材)
続いて、図8及び図9に基づいて、固定枠6に設けた規制部と、同じく固定枠6に配置した磁性部材について説明する。
駆動コイル83を取り付けた固定枠6の一方の表面(図9に示すレンズ支持枠2に対向する側の表面部)には、平面視で略矩形状をなす駆動コイル83の短辺部から所定の距離をおいた位置から突設する一対の規制部61a、61bを設けている。これら2つの規制部61aと61bは、ロックリング7に固定されている磁石部材80がロックリング7と共に、S1方向又はS2方向に角度αだけ回動することができるように磁石部材80の回動範囲を規制する部材である。すなわち、制御装置がロックリング7を光軸Zを中心として図5に示すアンロックの位置P2からS2方向に角度αほど回動させる制御を行うと、磁石部材80の回動方向の端部が規制部61aに当接するとともにその回動を停止させ、この当接した位置においてレンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cの先端部の外周面がロック溝71a、71b、71cの内周面に係合して、レンズ支持枠2はロック状態になるようにしている。
【0041】
また、ロックリング7を図5に示すロックの位置P1から角度αほどS1方向に回動する制御を行うと、上記と同様に、磁石部材80の回動方向の端部が規制部61bに当接するとともにその回動を停止させ、この当接した位置においてレンズ支持枠2はアンロック状態になって停止するようにしている。このように、ロックリング7に固定されている磁石部材80は、一対の規制部61aと61bの間、すなわち、光軸Zと規制部61aと61bのそれぞれが磁石部材80と当接(接触)する点を結ぶ直線内(図10に示す角度Q内)を回動範囲としている。
【0042】
さらに、固定枠6の上記した磁石部材80の回動範囲内には、磁石部材80の回動方向に沿うように、強磁性体からなる第1の磁性部材85a、85bと、第2の磁性部材86a、86bを配置している。この第1の磁性部材と第2の磁性部材の配置は、例えば、図10に示すように、光軸Zと規制部61aと61bのそれぞれが磁石部材80と当接する点を結ぶ直線がなす角度Qの2等分線j0に対して対象となる位置であって、それぞれ一対の第1の磁性部材となる磁性部材85a、85bと、一対の第2の磁性部材となる磁性部材86a、86bを、それぞれの規制部61aと61bの側であって所定の間隔をおいて配置する。
【0043】
この第1及び第2の磁性部材の配置を具体的に説明すると、例えば、図10に示すように、固定枠6に固定した略矩形状をなす扁平な駆動コイル83の両短辺側又はこれら短辺側の近傍に第1の磁性部材85a、85bを、各短辺側と規制部61a(61b)との間に第2の磁性部材86a、86bを配置する。なお、扁平な駆動コイル83は、その平面視における中心線がj0と一致するように固定枠6に固定する。また、これら第1及び第2の磁性部材は、例えば固定枠6に埋設して固定する等の手段を採用して、第1及び第2の磁性部材が固定枠6の表面部から突出させないようにすることが望ましい。
【0044】
このように、固定枠6に第1の磁性部材85a、85bと、第2の磁性部材86a、86bを配置することにより、磁石部材80がS1又はS2方向に回動するに従って、磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85a及び第2の磁性部材86aとの間、あるいは磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85b及び第2の磁性部材86bとの間に、磁気吸引力が発生することになる。なお、この第1及び第2の磁性部材の配置例の詳細については、さらに後述する。
【0045】
また、上記の第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)は、光軸Z方向において、その端面が扁平な駆動コイル83の表面と面一となるように設けられ、かつ、その端面の少なくとも一部が磁石部材80の回動範囲の中で永久磁石82a、82bと対向するように設けられることにより、磁石部材80の回動時に断続的な磁気吸引力を発生することができる。そして、磁石部材80が回動範囲の最端部で停止したときに、永久磁石82a、82bは規制部61a、または61bとの接触面に一定の予圧、すなわち、保持力を与えることができる。
【0046】
この保持力を与えるための機能として、磁性部材85aと86aの断面積の和と同じ断面積をもつ一つの磁性部材を磁性部材86aの位置に配置しても同程度の効果、すなわち、上記予圧を得ることができる。しかし、この場合には、磁石部材80が規制部61a、または61bとの接触面から離脱させる際には、その離脱力が大きくなるために、駆動コイル83に多大な電流を通電して、磁石部材80を駆動する必要がある。これは永久磁石のエッジ部に磁束が集中しやすいという一般的な永久磁石の特性によるものであり、本発明では、上記離脱力を小さくするため、磁性部材を複数に分けて配置し、永久磁石と対向する面積を保つことで、一定の予圧を確保しつつ、離脱力を小さくすることが可能になった。
【0047】
磁性部材86a、86bの光軸Zからの半径方向の配置位置、断面積や体積、磁気特性等の仕様を変更することで、規制部61aの接触面への予圧の大きさを変えることができ、交換レンズの大きさにより上記接触面に対する耐衝撃性が調整可能になる。
【0048】
また、磁性部材86a、86bは、手触れ補正装置に供給可能な最大離脱電流からその仕様が決められ、磁性部材86a、86bにて得られる予圧の不足分を磁性部材85a、85bにて補うように、磁性部材85a、85bの仕様を設定するようにする。
【0049】
続いて、本発明において特徴となる、固定枠6に上記した第1及び第2の磁性部材を配置したことによる作用と効果について説明する。
上記した中心線j0に近い位置に配置した第1の磁性部材85a、85bは、その表面(端面)を回動可能な磁石部材80が近づいてきたとき、あるいはその表面上に停止したときに、磁石部材80を構成する永久磁石82と磁性部材85a又は85bとの間に磁気吸引力が発生して、磁石部材80をロック位置又はアンロック位置まで引き込み、規制部61a、または61bと磁石部材80の接触面に圧力(予圧)をかけることができ、かつ磁石部材80、すなわちロックリング7をロック位置又はアンロック位置に安定した状態でその停止位置を保持する作用を行なう位置保持用部材になる。
【0050】
ロック位置又はアンロック位置で停止した磁石部材80に外部から振動や衝撃が伝達すると、この停止位置から離脱しようとする力(以下、「停止離脱力」という)が作用する。このとき、第1及び第2の磁性部材のうちの上記した中心線j0から遠い位置(規制部81a、81bに近い位置)に配置された第2の磁性部材86a、86bは、磁石部材80を構成する永久磁石82との間に発生する磁気吸引力により、この外部からの衝撃に対して磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に停止した状態を維持させる作用を行う耐衝撃用部材になる。
【0051】
そして、磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85a(85b)との間に発生する磁気吸引力は、永久磁石82aと82bが発生する磁束の向きの影響により磁石部材80の回動方向への磁気吸引力は小さいものの、光軸Z方向への磁気吸引力が大きくできるため、磁石部材80を停止位置に留めさせるための保持力を発生することができる。さらに、第2の磁性部材86a、86bの磁気吸引力と合わせて、上記停止離脱力に対抗するより大きな反力となる。これにより、第2の磁性部材86a、86bだけを配置した場合と比較して、磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に停止した状態をより安定して維持することができるようになる。
【0052】
このように、本発明においては、固定枠6の表面に第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)を配置しているので、外部から振動や衝撃が加わった場合、第2の磁性部材86a(86b)はこの衝撃により磁石部材80の回動を防ぐ作用を発揮するので、磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に安定して保持することができるようになる。
【0053】
(磁気吸引力)
磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85a(85b)、又は第2の磁性部材86a(86b)との間に発生する磁気吸引力は、空隙磁束密度(磁性部材の表面における磁束密度)の2乗に比例し、また、これら磁性部材85a等における磁束が鎖交する断面積に比例すること、並びに永久磁石82a、82bの表面と磁性部材85a等の表面との距離に反比例する。また、空隙磁束密度は、永久磁石82a、82bの残留磁束密度と磁石部材80の形状にも依存する。さらに、磁気吸引力は磁性部材85a等の磁気的性質によっても変化する。例えば、炭素鋼は磁性を持つステンレス鋼(フェライト系ステンレス鋼)よりも飽和磁束密度が高く、磁石部材80との間に発生する磁気吸引力を大きくすることができる。
【0054】
従って、本発明においては、磁石部材80を構成する永久磁石82と第1の磁性部材85a(85b)、又は第2の磁性部材86a(86b)との間に発生する磁気吸引力に関係する上記各種の仕様(パラメータ)を適切に設定することによって、ロック用ボイスコイルモータ8により磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に円滑に移動させることができ、しかも、外部からの衝撃によりロック位置又はアンロック位置から離脱しようとする「停止離脱力」に対抗する反力を、磁石部材80と規制部61a、61bの接触面に発生させることが可能になる。
【0055】
前記したように、各停止位置における停止状態の安定性を向上するためには、第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)の磁気特性を異なるようにすることが望ましい。主として、磁石部材80をロック位置又はアンロック位置に保持する作用を行う第1の磁性部材85a(85b)の磁気吸引力は、離脱電流を大きくする要因となる第2の磁性部材86a(86b)よりも大きくすることが望ましい。そのためには、図10に示すように、第1の磁性部材85aと85bを、光軸Zを中心とした同一の円の円弧上(図10には点線で図示)に配置し、さらに、第2の磁性部材86aと86bを同じく光軸Zを中心とした他の同一の円の円弧上(図10には点線で図示)に配置するとともに、光軸Zからの半径が大きい円弧上に配置した第2の磁性部材86aと86bの磁気特性を、光軸Zからの半径が小さい円弧上に配置した第1の磁性部材85aと85bの磁気特性よりも高くすることが望ましい。
【0056】
なお、第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)の磁気特性を同じにした場合には、光軸Zからの半径が大きい円弧上に配置する磁性部材の断面積は、光軸Zからの半径が小さい円弧上に配置する磁性部材よりも大きくして、磁石部材80との磁気吸引力を大にすることが望ましい。
また、本発明を大口径の交換レンズに採用する場合には、第1の磁性部材85a(85b)と第2の磁性部材86a(86b)を固定枠6に配置する位置は、光軸Zからの距離(半径方向の配置位置)が同一となる円周上に配置してもよい。
【0057】
(磁性部材の配置例)
続いて、固定枠6の前記した磁石部材80の回動範囲内に、第1の磁性部材85a、85b、及び第2の磁性部材86a、86bの配置について、さらに詳細に説明する。
【0058】
第1の磁性部材85a、85b及び第2の磁性部材86a、86bに対して、上記の各機能をもたせるために、両磁性部材85a、85b及は86a、86bは、図8に示すように、扁平な略矩形状をなす駆動コイル83の中央(円周方向の中間)と光軸Zを結ぶ直線j0と、各第1及び第2の磁性部材の中心と光軸Zを結ぶ直線j1又はj2とのなす角度θ1又はθ2が異なるような位置となる固定枠6上に配置して固定することが必要である。図8に示す例では、第1の磁性部材85b(85aも同様)を駆動コイル83の外周側のコーナー部に近接した位置に固定するとともに、第2の磁性部材86b(86aも同様)を駆動コイル83よりも光軸Zに近く、かつ規制部61bに近接した位置に固定することにより、角度θ2>角度θ1とした例を示す。
【0059】
第1の磁性部材85a(85b)及び第2の磁性部材86a(86b)は、上記の各機能を持たせるために、図8に示す配置とは異なる位置に配置することもできる。
図10は、磁石部材を図1に示すB方向から見た状態を示すとともに、磁石部材80が駆動コイル83と重なった位置にあるときの状態であって、さらに光軸Zの中心に、E方向から見た磁石部材80を記載した例である。図10に示す例では、駆動コイル83の中間部と光軸Zを結ぶ直線j0と、光軸Zと第1の磁性部材85a(85bも同様)の中心を結ぶ直線j1とのなす角度θ1よりも、駆動コイル83の中間部と光軸Zを結ぶ直線j0と、光軸Zと第2の磁性部材86a(86bも同様)の中心を結ぶ直線j2とのなす角度θ2を大きくする点では図8と同様である。ただし、図10では、第1の磁性部材85a(85b)は駆動コイル83の内周側のコーナー部に近接し、第2の磁性部材86a(86b)は第1の磁性部材85a(85b)よりも規制部61a(61b)に近接し、かつ光軸Zから離れた位置に固定した例を示す。
【0060】
図11は、図10に示す第1の磁性部材85a、85bと第2の磁性部材86a、86bを配置した固定枠6を備えた手振れ補正装置1について、駆動コイル83に駆動電流を供給して、磁石部材80を規制部61aに当接させた状態を示すとともに、光軸Zの中心に、E方向から見た磁石部材80と、F−F線で切断した固定枠6を記載した例である。この図11に示す例においても、第1の磁性部材85a、85bと、第2の磁性部材86a、86bは異なった角度θ1、θ2をもつように配置されているので、図8に示す配置の場合と同様の機能をもつことができる。なお、図11に示すように固定枠6の駆動コイル固定部は、駆動コイル83とともに、その近傍に第1の磁性部材85a、85bと、第2の磁性部材86a、86bを配置し、かつ、ロックリング7とともに回動する磁石部材80の回動を妨げないような略平板形状からなり、固定枠6を構成する外周円筒部から内周側に突出し、ロックリング7と所定の間隙を形成して対向するように形成されている。
【0061】
上記の第1及び第2の磁性部材85a、85b、86a、86bとして、強磁性体からなるピン状部材を使用できるが、このピン状部材は円柱状又は多角柱状などの種々の形状とすることができる。この磁性部材は、固定枠6を成形する際に成形金型にインサートしておくことにより、固定枠6に固定することができるし、あるいは一端部にねじ部を有する磁性部材を固定枠6にねじ込むことによって固定することができる。
【0062】
(手振れ補正動作)
上記の手振れ補正装置1は、固定枠6の内部に配置されている回路基板に手振れ補正装置1の作動を制御するための制御手段を備えている。撮影時において、制御手段は、振動センサ(ジャイロセンサ)で検出した振動の検出値に対応させて補正レンズ10を保持するレンズ支持枠2を、X軸用ボイスコイルモータ3a及びY軸用ボイスコイルモータ3bにより、X方向及びY方向に駆動して、レリーズボタンがONされたときに撮像素子が取り込んだ被写体の画像の結像位置を修正する処理を行う。なお、制御手段は、例えば、マイクロチップ(CPU)を搭載した制御回路から構成され、この制御回路は基板51に搭載されている。
【0063】
この手振れ補正の処理においては、制御手段は空芯コイル30aに電流(直流)を供給し、また通電方向を切り替えることにより、レンズ支持枠2に保持された補正レンズ10は、フレミングの左手の法則により、X方向に微小な距離(例えば1〜2mm程度)だけ往復移動させることができる。同様に空芯コイル30bに電流(直流)を供給し、また通電方向を切り替えることにより、レンズ支持枠2に保持された補正レンズ10は、フレミングの左手の法則により、Y方向に微小距離だけ往復移動させることができる。この手振れ補正は、レリーズボタンの半押し動作信号に同期して開始され、半押しタイマーOFF信号に同期して終了するように行うことができる。
【0064】
(ロック及びアンロック動作)
非撮像時には、例えば、手振れ補正スイッチをオフすると、制御手段はロック用ボイスコイルモータ8を作動させてロックリング7をアンロック位置から角度αほど回転させる制御を行ってロック位置まで回動する。これにより、磁石部材80は規制部61aに当接するとともに、ロックリング7のロック溝71a、71b、71cにレンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cの端部側が係止する。これにより、補正レンズ10を支持しているレンズ支持枠2の中心、すなわち補正レンズ10の中心が光軸Zと略一致させた状態となって、レンズ支持枠2の移動が阻止され、補正レンズ10は鏡筒の中央に固定される。
このロック状態においては、前記したように磁石部材80と規制部61a,61bとの接触面には、磁石部材80を構成する永久磁石82と第1及び第2の磁性部材85a、85b、86a、86bとの間に発生する磁気吸引力の作用による予圧を与えることができるため、鏡筒に振動や衝撃が加わってもロック状態は安定して維持される。また、ロック用ボイスコイルモータ8に供給する電源をオフしてもこのロック状態は維持されることになる。これにより、本発明の手振れ補正装置を採用している交換レンズ、あるいはカメラ等を、撮像者が上記したロック状態にして持ち運んでいるときに振動や衝撃が加わっても、このロック状態は安定して維持されることになる。
【0065】
これにより、撮影開始時等に実施される各レンズ群11のセンタリング等において、補正レンズ10を移動させる必要がほとんどなく、像揺れ等によって撮像者が感じる不快感を抑制できる。
【0066】
一方、撮像時においては、例えば、撮像者による手振れ補正スイッチのオン信号に基づいて、制御手段は上記のロック状態から、ロック用ボイスコイルモータ8を駆動してロックリング7を図5に示すS1方向にアンロック位置まで回動させることにより、レンズ支持枠2の係止片20a、20b、20cの端部側を、ロックリング7のアンロック溝72a、72b、72c内に遊嵌させる。これにより、ロックリング7とレンズ支持枠2との係合が外れるので、制御手段は振動センサで検出した振動の検出値に基づいてレンズ支持枠2をX方向及びY方向へ移動させる制御、すなわち、手振れ補正の制御を行うことが可能になる。
【0067】
このように、例えば、撮影者の手振れ補正スイッチのオン・オフ操作に基づいて、制御手段は、補正レンズ10のロック状態とアンロック状態との切り替えの制御を行うために、例えば、手振れ補正スイッチのオン・オフ信号が入力されると、ロック用ボイスコイルモータ8に駆動電流を所定の時間(数msec)供給する制御を行って、ロックリング7を、光軸Zを中心として時計方向又は反時計方向に所定角度αだけ回動させる。ロックリング7が時計方向又は反時計方向に所定角度αだけ回動すると、ロックリング7に固定されている磁石部材80は規制部61aまたは61bに当接する位置まで回動して停止し、レンズ支持枠2、すなわち、補正レンズ10はロック状態又はアンロック状態になる。
【0068】
(ロック用ボイスコイルモータの動作)
ロック用ボイスコイルモータ8の駆動コイル83に駆動電流を供給して、磁石部材80を図8及び図9に示す位置まで回動させることにより、ロックリング7に固定されている磁石部材80が一方の規制部61a(61b)に当接(図9においては磁石部材80を構成するヨークの回動方向の端面が規制部61bに当接)した状態にする。磁石部材80が図9に示す位置まで移動すると、レンズ支持枠2とロックリング7との係合が外れてアンロック状態となる。このアンロック状態においては、前記したように、磁石部材80を構成する永久磁石82は第1の磁性部材85b及び第2の磁性部材86bに磁気的に吸引されるので、ロック用ボイスコイルモータ8への通電が遮断されても、このアンロック状態が維持される。
【0069】
また、ロック用ボイスコイルモータ8の駆動コイル83に上記とは逆方向の駆動電流を流して、磁石部材80をS2方向(図9参照)に角度αだけ回動させることにより、ロックリング7に結合されている磁石部材80が他方の規制部61aに当接した状態になる。磁石部材80が規制部61aに当接する位置まで移動すると、レンズ支持枠2がロックリング7に係止されてロック状態に切り替わる。磁石部材80を構成する永久磁石82は、前記したように、第1の磁性部材85a及び第2の磁性部材86aに磁気的に吸引された状態で停止しているため、ロック用ボイスコイルモータ8への通電が遮断(無給電状態)されても、このロック状態が維持される。同様に、アンロック状態でも無給電で停止位置が維持できる。
【0070】
さらに、規制部61a、または61bと磁石部材80の接触面への予圧は、バネ等による弾性体を使用した場合のような経時的変化はなく、長期間繰り返し使用した場合においても機能的に低下しないロック機構を備えた手振れ補正装置とすることができる。
【0071】
本発明において、手振れ補正装置の小型化を図るために各ボイスコイルモータに組み込まれる永久磁石として、最大エネルギー積が45MGOe以上、望ましくは50MGOe以上のR−T−B系磁石(R:Yを含む希土類元素の一種又は2種以上、T:Fe又はFeとCo)を用いることが好ましい。ロック用ボイスコイルモータの可動部(磁石部材)の重量が低減されるので、消費電力を低減することができる。
【0072】
本発明の手振れ補正装置は、種々の光学機器に搭載することができる。例えば単焦点型の交換レンズおよびズーム型の交換レンズ、さらに、デジタルカメラ(例えば、レンズ交換式デジタル一眼レフカメラ)やビデオカメラ等の撮像用光学機器に限らず、双眼鏡、天体望遠鏡を含む観察用光学機器や、監視用カメラなどの光学機器などに搭載することができる。
【符号の説明】
【0073】
1:手振れ補正装置、10:補正レンズ、11:レンズ群
2:レンズ支持枠
20a、20b、20c:係止片
3a、3b:可動コイル形VCM
30a、30b:空芯コイル
31a、31b:磁気回路部
32a、32b:ヨーク
33a、33b:永久磁石
4a、4b:位置検出部
40a、40b:LED
41a、41b:枠部材
42a、42b:PSD
5:ベース、51:基板
50a、50b、50c:案内部
6:固定枠
60a、60b、60c:案内部
7:ロック部材
70a、70b:円周溝
71a、71b、71c:ロック溝
72a、72b、72c:アンロック溝
8:ロック用ボイスコイルモータ
80:磁石部材、81:ヨーク、
82a、82b:永久磁石、83:駆動コイル
84:FPC
85a、85b:第1の磁性部材、86a、86b:第2の磁性部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補正レンズを支持するレンズ支持部材と、
前記レンズ支持部材を光軸と直交する面内で移動可能に支持する固定部材と、
前記レンズ支持部材に係止可能で、かつ前記固定部材に対して回動可能に設けられたロック部材と、
前記ロック部材に固定され、磁気空隙を形成する一対の永久磁石とヨークを有する磁石部材と、前記磁気空隙内に位置するように前記固定部材に固定された扁平な駆動コイルと、を備えたボイスコイルモータと、
前記ボイスコイルモータの駆動により、前記ロック部材に固定された前記磁石部材が回動する回動範囲を規制するために、前記回動範囲の両端部における前記磁石部材の停止位置に対応させて前記固定部材に突設した一対の規制部と、
前記磁石部材が回動及び前記停止位置に停止しているときに、前記永久磁石との間に磁気吸引力を発生させるために前記固定部材に配置した複数の磁性部材と、
を備えていることを特徴とする手振れ補正装置。
【請求項2】
前記複数の磁性部材は、前記一対の規制部の間であってそれぞれの前記停止位置側に、所定の間隔を設けて配置した第1の磁性部材と第2の磁性部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の手振れ補正装置。
【請求項3】
前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材は、磁気特性が異なることを特徴とする請求項2に記載の手振れ補正装置。
【請求項1】
補正レンズを支持するレンズ支持部材と、
前記レンズ支持部材を光軸と直交する面内で移動可能に支持する固定部材と、
前記レンズ支持部材に係止可能で、かつ前記固定部材に対して回動可能に設けられたロック部材と、
前記ロック部材に固定され、磁気空隙を形成する一対の永久磁石とヨークを有する磁石部材と、前記磁気空隙内に位置するように前記固定部材に固定された扁平な駆動コイルと、を備えたボイスコイルモータと、
前記ボイスコイルモータの駆動により、前記ロック部材に固定された前記磁石部材が回動する回動範囲を規制するために、前記回動範囲の両端部における前記磁石部材の停止位置に対応させて前記固定部材に突設した一対の規制部と、
前記磁石部材が回動及び前記停止位置に停止しているときに、前記永久磁石との間に磁気吸引力を発生させるために前記固定部材に配置した複数の磁性部材と、
を備えていることを特徴とする手振れ補正装置。
【請求項2】
前記複数の磁性部材は、前記一対の規制部の間であってそれぞれの前記停止位置側に、所定の間隔を設けて配置した第1の磁性部材と第2の磁性部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の手振れ補正装置。
【請求項3】
前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材は、磁気特性が異なることを特徴とする請求項2に記載の手振れ補正装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−252989(P2011−252989A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125446(P2010−125446)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(592159999)株式会社ケンコー・トキナー (9)
【出願人】(393027383)NEOMAXエンジニアリング株式会社 (46)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(592159999)株式会社ケンコー・トキナー (9)
【出願人】(393027383)NEOMAXエンジニアリング株式会社 (46)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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