説明

手提金庫用のトレー

【課題】収納した硬貨の種類ごとの合計金額を表示する目盛りを備えた手提金庫用のトレーを提供すること。
【解決手段】収納した硬貨の種類ごとの合計金額を表示する目盛りを有する手提金庫用のトレーであって、硬貨積載方向に沿って3列に区分された表示部を設け、そのうち2列の表示部の各々に、硬貨2枚に相当する間隔の目盛り線aと硬貨3枚に相当する間隔の目盛り線bとだけを交互に設け、第1の表示部12の目盛り線aは、硬貨が最初に収納される位置15から開始し、第2の表示部13の目盛り線aは、第1の表示部の開始位置15から硬貨1枚の厚さ分だけ離れた位置16から開始するようにすると共に、残りの1列の表示部14に、硬貨5枚に相当する間隔の目盛り線cを設け、積載された硬貨の上面の定めるライン上に、収納された合計金額の表示が常に現れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手提金庫用のトレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬貨や紙幣等のお金を収納、保管する金庫は、多額のお金や大きな貴重品等を収納し得るよう頑強に作られた設置型の大型金庫と、日常の小額の金銭管理に用いられ、持ち運びやすいよう小型軽量に作られた手提金庫とに大別される。後者の手提金庫の場合、災害時等の緊急時用に金銭や貴重品等を持ち運ぶために大型金庫内に保管されたり、あるいは日常の小売業の会計業務に使用されたりより柔軟に使用されるため、使用勝手を高めるためにさらなる機能を有するものがある。
【0003】
例えば、特開平9−217552号公報に開示された手提金庫では、単に貴重品を持ち運び自在に収納、保管するのみならず、紙幣を種類別に分類して収納保管し得るように構成することにより、一目で概略の金額を把握し得ると共に取出し易くしている。具体的には、特開平9−217552号公報に開示された発明は、硬貨や紙幣等を収納保管した状態で持ち運びに供される手提金庫において、本体の収納部を、前記硬貨を収納する硬貨用トレーと、紙幣を収納する紙幣用トレーとに分割し、前記紙幣用トレーを上部が全面開放された矩形状の有底箱体で構成すると共に、その内部を仕切板により複数の区画に画成し、これら複数の区画の夫々に前記紙幣を種類別に収納し得るよう構成している。
【0004】
このように、特開平9−217552号公報に開示された発明は、収納する紙幣の金額の把握と取出し作業を容易にしているが、しかし、収納する硬貨の金額または枚数を把握するための手段を有していなかった。しかしながら、硬貨を頻繁に扱う小売業務等では、紙幣よりも、より使用頻度の高い硬貨の金額または枚数を数える手段を手提金庫に備えることがより好ましい場合がある。さらに、手提金庫を災害時等の緊急時に使用する場合では、不安定な心理状態に置かれる使用者は、冷静に硬貨の枚数を計算できない場合が想定し得るため、係る場合においても、収納する硬貨の金額または枚数を数える手段を手提金庫に備えることが好ましいと思料される。しかしながら、従来、収容した硬貨の種類ごとの合計金額や合計枚数を表示する手段を備えた手提金庫は公知ではなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を、添付した図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態が適用される手提金庫100は、少なくとも本体20と、該本体を開閉する蓋部30と、手提手段40と、本体20に対して蓋部30を閉口状態で係止(保持)するロック手段(ロック機構)50を有し、主に硬貨や紙幣を持ち運び自在に収納、保管する。
【0011】
具体的には、図2に示すように、本体20は上方が縁部21に沿って開放した矩形状の有底箱体であり、この底部22に対して貴重品等を収納、保管する。また、本体20は蓋部30の後部32において蝶番部材等により枢着されて、開閉自在に構成される。ただし、閉口時には図1に示したように、蓋部30は周囲の縁部31に沿って本体の縁部21と隙間を生じさせないように密着する。この際、手提金庫100はロック手段50を備えて、図1に示した閉口状態を係止(保持)させることで防盗性を有する。
【0012】
そして、本体20を開口させる際、符号60に示す任意の開閉手段を備えて、蓋部30を所定角度で起立させる。好適には、開閉手段60は一方の端部61を蓋部30と固定するとともに、この他方の端部62を本体20内に取付けて、この所定の全長によって、本体20に対する蓋部30の開放角度を限定させる。このように蓋部30の開放角度を予め定めることによって、本体20に対して蓋部30を所定の角度で起立させる。
【0013】
本体20の底部22に対して貴重品等を収納する際、図3に示すように、本体20に別体のトレー70を取付けて、二重構造的に貴重品を内部に保管する。即ち、本実施形態に係るトレー70に硬貨や紙幣等の貴重品を保管するとともに、このトレー70を本体20から任意に着脱することによって、図2に示すように、本体20内部のトレー70の下方にさらに貴重品を保管する。この際、本体20の底部22に仕切板(図示せず)を配設して、トレー70の下方に複数の区画を定めて、整理した状態で貴重品を収納させてもよい。さらに、本体20に対してトレー70を配置する際、任意のロック手段(図示せず)によって本体20とトレー70とを隙間を生じさせないように係止させて、このロック手段と上記ロック手段50とを併用して、トレー70下方に収納する貴重品を二重構造的に保護してもよい(図示せず)。
【0014】
ここで図4及び図5を参照して、本発明の好適な実施形態に係るトレー70について詳述する。
即ち、図4に示すように、トレー70は周囲に縁部(係止手段)71を備えて、この縁部71から、図3に示したように、手提金庫100の本体20の上方縁部21に取付けられる。さらに、トレー70は複数の収納部72、75、78を設けて、硬貨、紙幣等の貴重品を区分して収納する。図示した実施の形態では、硬貨を種類ごとに収納するため、1円、5円、10円、50円、100円及び500円硬貨用に夫々収納部72a、72b、72c、72d、72e及び72fを設ける。これら収納部72は手前側に凹状部73、74を設けて、指先による収納部72内への硬貨の着脱操作を容易にする。また、紙幣を収納する収納部75を備えるとともに、符号76に示すように任意の押圧手段(紙幣押さえ手段)を備えて、収納部75内に収納した紙幣が容易に抜け落ちないように上方から押圧する。好適には径の細い針金を折曲形成して押圧手段76を構成し、針金の有する可撓性を利用して、適宜紙幣を抜き出せるように、収納部75内に紙幣を積重ねて収納する。さらに、符号77に示すようにこの収納部75の底部に幅の狭い溝部77を形成し、最下層に収納した紙幣を取出す際に、この溝部77に指先を挿入することによって紙幣の取出しを容易にする。そして、符号78に示すようにさらなる収納部を設けて、例えば切手、小切手、印紙、印鑑または宝石類等の任意の貴重品を硬貨、紙幣と区別して収納できるようにする。
【0015】
ただし、図3に示したように、トレー70は常に本体20の上方縁部21に対して取付けられる必要はなく、例えば本体20の内壁に内側に向って突出する係合部(図示せず)を設けて、この係合部に対して係止するように構成してもよい。また、図示した実施の形態では、トレー70は硬貨の収納部72と紙幣の収納部75を一体に提供するが、しかしながら、硬貨の収納部72と紙幣の収納部75を夫々別体となるように、複数のトレーを本体20に対して取付けてもよい(図示せず)。さらに、図示した実施の形態では、手提金庫100は単一のトレー70のみを備えているが、しかしながら複数のトレーを積重ねて内部に収納してもよい(図示せず)。さらに、トレー70は収納部72内に硬貨を挿入する際、この収納部72の側部に、例えば硬貨5枚ごとに、一体形成した、または別体に取付けられた仕切り部を備えて、硬貨の収納枚数をより容易に把握できるようにしてもよい。そして、好適にはトレー70はプラスチック、金属あるいは木材等のように、任意の部材から形成する。ただし、必要に応じて、トレー70は耐火性を満足させてもよい。
【0016】
本発明の実施の形態に係る手提金庫100は以上のように構成されて、内部に貴重品を収納、保管するが、さらに、図6〜図8に示すように、保管した硬貨の種類ごとの合計金額または合計枚数を表示する目盛り10を備える。この目盛り10は本体20の任意の場所に配設することができるが、好適には、図5に示すように、トレー70の硬貨用収納部72の底部に配設する。
【0017】
ここで図6〜図8を参照して、本発明の実施の形態に係る目盛り10について具体的に説明する。本発明に係る実施の形態では、目盛り10を用いて収納した硬貨を数える際、硬貨の種類ごとの合計金額と合計枚数を適宜組合せて表示させる。尚、従来、例えば、硬貨を頻繁に扱う小売業では、目盛りを備えた専用のコイン収納具を用いて、収納した硬貨の種類ごとの合計金額を表示させる場合があった。これは、硬貨を頻繁に扱う小売業務上、適宜、合計金額の把握を容易に行うことが望ましいためである。しかしながら、手提金庫においては、硬貨の種類毎の合計金額と合計枚数を適宜組合せて表示するものは公知ではなかった。これは、小売業務に使用するには、収納した硬貨の種類ごとの合計金額を表示すれば十分であったためであると思料する。一方、本発明に係る実施の形態では、硬貨を保管するため、この管理上、硬貨の種類ごとの合計金額のみならず、合計枚数の把握を容易にする。
【0018】
ただし、1円、10円及び100円硬貨の場合には、合計金額と合計枚数の変換が桁数の変更のみによって容易にできる点に鑑み、1円、10円及び100円硬貨用の目盛り10(図6参照)は、好適には、硬貨の種類ごとに合計金額のみを表示させる。一方、5円、50円及び500円硬貨の場合には、合計金額と合計枚数との変換が常に容易にできない場合がある点に鑑み、5円、50円及び500円硬貨硬貨用の目盛り10(図7参照)は、好適には、硬貨の種類ごとに合計金額と合計枚数を組合せて表示する。
【0019】
即ち、1円、10円及び100円硬貨の場合は、図6の(A)に示すように、目盛り10は表示部11の上方に使用する硬貨の種類を示すタイトルを表示させ、さらに表示部11を硬貨積載方向に沿って3列12、13、14に区分して、そのうち2列12、13の各々に、硬貨2枚に相当する間隔の目盛り線aと硬貨3枚に相当する間隔の目盛り線bとを交互a、b、a、b、a、b...に設け、かつ、残りの1列14に、硬貨5枚に相当する間隔の目盛り線cを表示する。ただし、硬貨を最初に収納する位置が符号15に示す位置から開始する場合、次に硬貨を収納する位置16は位置15から硬貨1枚の厚さ分だけ離れる。この間隔は、列12の表示開始位置と列13の表示開始位置の間隔に相当する。
【0020】
同様に、5枚目の硬貨を収納する位置17は、最初に硬貨を収納する位置15から硬貨4枚の厚さ分だけ離れる。そして、列12、13、12、13、14と所定の順序で硬貨の合計金額を表示させる。尚、硬貨5枚に相当する間隔の目盛り線cを表示する際、この目盛りだけ色分けして、または文字の種類、大きさを変えて、さらには蛍光塗料等を使用して合計金額を強調して表示させてもよい。このように構成することによって、使用者は常に5枚おきに目盛り10の読み違いのないように注意を払うことができる。
【0021】
また、5円、50円及び500円硬貨の場合は、図7の(A)に示すように、さらに、列12と13に合計金額を表示させる際、符号18、19に示すように夫々列12、13と並んで、合計金額とともに合計枚数を表示させる。尚、図示した実施の形態では、硬貨5枚ごとの表示部に相当する列14には合計枚数を表示させていないが、これは5枚ごとの合計金額と合計枚数の変換は容易であると思料したためである。しかしながら、本発明に係る他の実施の形態では、任意の手段によって列14に合計枚数を表示させてもよい。
【0022】
ここで添付した図8の(A)〜(C)を参照して、500円硬貨用の目盛りを用いて、収納する硬貨1の合計金額及び合計枚数を把握する方法について説明する。ただし、図8の(A)は1枚の500円硬貨1を収納した状態を示す図であり、図8の(B)は2枚の500円硬貨1を収納した状態を示す図であり、そして、図8の(C)は5枚の500円硬貨1を収納した状態を示す図である。
図8の(A)に示すように、硬貨1を1枚収納する際、この硬貨1の上面の定めるラインL上に収納した合計金額(500)と合計枚数(1)の表示が現れる。この他の表示、例えば硬貨2枚に相当する合計金額(1000)と合計枚数(2)の表示は、収納する硬貨1と離れて表示されるため、この場合、係る表示は適切ではないことが理解できる。そして、図8の(B)に示すように、硬貨1を2枚収納する際、収納される最上位の硬貨1の上面Lの定めるライン上に合計金額(1000)と合計枚数(2)の表示が現れる。この際、先に表示された硬貨1枚に相当する合計金額(500)と合計枚数(1)の表示は、収納する硬貨1の厚さによって一部隠れて表示され、もはや適切な表示ではないことが理解できる。さらに、図8の(C)に示すように、硬貨1を5枚収納する際、収納される最上位の硬貨1の上面Lの定めるライン上に合計金額(2500)の表示が強調して表示される。
このように、本発明の実施の形態に係る目盛り10は、収納する硬貨の種類ごとの合計枚数と合計金額の把握を容易にする。ただし、500円以外の硬貨の合計枚数と合計金額を把握する場合も、図8に示した実施の形態と同様に行われる。
【0023】
尚、図示した実施の形態では、目盛り10は、合計枚数と合計金額の表示を左列から右列に向って表示しているが、右列から左列に向って表示させてもよい。さらに、5枚おきに合計枚数を表示する列14は、表示部11の中央列に表示させてもよい。そして、本発明に係る手提金庫の目盛りは日本国の通貨に限定して構成される必要はなく、他、任意の国の任意の通貨制度に合わせて構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るトレーが適用される手提金庫を示す斜視図である。
【図2】トレーを取外した手提金庫を開口したときの斜視図である。
【図3】トレーを備えた手提金庫を開口したときの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るトレーを単体で示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るトレーの平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る1円、10円及び100円硬貨用の目盛りを夫々(A)、(B)及び(C)に分けて示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る5円、50円及び500円硬貨用の目盛りを夫々(A)、(B)及び(C)に分けて示す図である。
【図8】図7の(C)に示した500円硬貨用の収納部に、500円硬貨を1、2及び5枚収納したときの状態を夫々(A)、(B)及び(C)に分けて示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納した硬貨の種類ごとの合計金額または合計枚数を表示する目盛り(10)を有する手提金庫用のトレー(70)であって、
硬貨積載方向に沿って3列に区分された表示部(12,13,14)を設け、そのうち2列の表示部(12,13)の各々に、硬貨2枚に相当する間隔の目盛り線(a)と硬貨3枚に相当する間隔の目盛り線(b)とをその順に交互に設け、第1の表示部(12)の目盛り線(a)は、硬貨が最初に収納される位置(15)から開始し、第2の表示部(13)の目盛り線(a)は、第1の表示部の開始位置(15)から硬貨1枚の厚さ分だけ離れた位置(16)から開始するようにすると共に、残りの1列の表示部(14)に、硬貨5枚に相当する間隔の目盛り線(c)を設け、積載された硬貨の上面の定めるライン(L)上に、収納された合計金額または合計枚数の表示が常に現れるように構成されたことを特徴とする手提金庫用のトレー。
【請求項2】
前記第1の表示部(12)を左列、前記第2の表示部(13)を中央の列とすることで、左列から右列に向って合計金額または合計枚数が表示されるようにすると共に、硬貨5枚に相当する間隔の目盛りだけを強調して表示したことを特徴とする請求項1に記載の手提金庫用のトレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−167797(P2009−167797A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113087(P2009−113087)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【分割の表示】特願2002−209705(P2002−209705)の分割
【原出願日】平成14年7月18日(2002.7.18)
【出願人】(000104087)カール事務器株式会社 (63)
【Fターム(参考)】