説明

手洗ボウルの施工方法

【課題】バックハンガー式の手洗ボウルを突設物の直下の壁に容易且つ強固に取り付けることができる手洗ボウルの施工方法を提供する。
【解決手段】まず壁2に突設された突設物の下方の壁2に、掛止部9を有するバックハンガー6を上下方向に移動自在に取り付ける。次に、手洗ボウル1を突設物により上方への移動が規制されるように突設物の下方に配置した後に前記バックハンガー6を上方に移動して手洗ボウル1の背面に形成された被掛止部12を掛止部9に引掛ける。或いは手洗ボウ1ルの被掛止部12をバックハンガー6の掛止部9に引掛けた後に手洗ボウル1をバックハンガー6と共に上方に移動して突設物により上方への移動が規制されるように突設物の下方に配置する。この後、バックハンガー6を支持手段で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバックハンガーを介して壁に取り付けられる手洗ボウルの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から利用されている手洗ボウルには、壁に固着されたバックハンガーに掛着されるバックハンガー式のものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−201611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで手洗ボウル1が設置される壁2には、図5のように収納体3等の突設物が突設されることがある。ここで収納体3の直下の壁2にバックハンガー式の手洗ボウル1を設けるには、手洗ボウル1をバックハンガー6に前側から引っ掛ける際に手洗ボウル1を少なくともバックハンガー6に対する引掛代以上上昇させる必要があり、この際に例えば図5のように手洗ボウル1が直上の収納体3に当たって手洗ボウル1をバックハンガー6に引っ掛けられない事態が生じる恐れがある。これを避けるには、手洗ボウル1を前記引掛代以上の隙間を介して収納体3の下方に配設する必要がある。しかしこのように手洗ボウル1を設けると前記隙間を介して壁2が露出し、また手洗ボウル1と収納体3の一体感が得られ難く、見栄えが良くない。また、設置後の手洗ボウル1は、上方に移動してバックハンガー6から外れる恐れがあり、これを防止するには別途ねじ等の手段により手洗ボウル1を上方に移動しないよう強固に固定する必要がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、バックハンガー式の手洗ボウルを突設物の直下の壁に容易且つ強固に取り付けることができる手洗ボウルの施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明では手洗ボウルを以下のように施工する。まず壁2に突設された突設物の下方の壁2に、掛止部9を有するバックハンガー6を上下方向に移動自在に取り付ける。次に、手洗ボウル1を突設物により上方への移動が規制されるように突設物の下方に配置した後に前記バックハンガー6を上方に移動して手洗ボウル1の背面に形成された被掛止部12を掛止部9に引掛ける。或いは前記手洗ボウ1ルの被掛止部12をバックハンガー6の掛止部9に引掛けた後に手洗ボウル1をバックハンガー6と共に上方に移動して突設物により上方への移動が規制されるように突設物の下方に配置する。この後、バックハンガー6を支持手段で支持する。
【0007】
この施工方法にあっては、手洗ボウル1の被掛止部12をバックハンガー6の掛止部9に引っ掛ける際に、突設物の下方の壁2に設けられたバックハンガー6を設置予定箇所よりも下方に配置して、該バックハンガー6と突設物との間に隙間20を形成し、この隙間20を利用して手洗ボウル1の被掛止部12をバックハンガー6の掛止部9に支障なく引っ掛けることができる。また施工後はバックハンガー6に掛着された手洗ボウル1が突設物の直下に配置され、手洗ボウル1と突設物との間に壁2を露出させる大きな隙間が形成されず、見栄えが良い。またこのように設けられた手洗ボウル1は突設物により上方への移動が規制され、この手洗ボウル1の被掛止部12により支持手段により支持されたバックハンガー6の上方への移動が規制される。このため別途ねじ等の手段により手洗ボウル1が上方に移動しないよう強固に固定することなく、被掛止部12と掛止部9の掛止が外れることを防止して、手洗ボウル1を強固に取り付けることができる。
【0008】
また前記上方に移動したバックハンガー6の下方に前記支持手段を構成するキャビネット5を設置し、該キャビネット5上にバックハンガー6を載置することが好ましい。この場合、手洗ボウル1の下方に設置されるキャビネット5を利用してバックハンガー6を支持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあってはバックハンガー式の手洗ボウルを突設物の直下の壁に容易且つ強固に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の手洗ボウルの施工状態を示す断面図である。
【図2】同上の手洗ボウルを壁に設けるにあたって、バックハンガーを壁に取り付けた状態を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は正面図である。
【図3】図2のバックハンガーを下降させた状態を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は正面図である。
【図4】図3のバックハンガーの上方に手洗ボウルの被掛止部を配置した状態を示す縦断面図である。
【図5】従来の手洗ボウルを収納体直下に取り付ける際の様子を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を添付図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の手洗ボウル1がバックハンガー6を介して壁2に取り付けられた状態を示す断面図である。なお本発明では、壁2と直交する方向を前後方向とし、手洗ボウル1を設置する室内側を前、室外側を後と定義して説明する。
【0012】
手洗ボウル1は、トイレ室の壁2に突設された収納体3の下方の壁2に沿って取り付けられたバックハンガー6に取り付けられるものであり、この手洗ボウル1によってバックハンガー6の前側は覆われる。手洗ボウル1の下方にはキャビネット5が配設され、手洗ボウル1、収納体3、及びキャビネット5で手洗器ユニットが構成される。
【0013】
収納体3は小物等を収納する壁面収納であって、前部が壁2よりも前方に突出し且つ後部が手洗ボウル1の設置予定箇所の上方の壁2に埋め込まれた状態で壁2に設けられる。すなわち、本実施形態では収納体3が手洗ボウル1の上方の壁2に突設される突設物となっている。
【0014】
バックハンガー6は板材により形成されている。バックハンガー6には前後方向に貫通する上下に長い長孔7が形成され、長孔7にはバックハンガー6を壁2に取り付けるためのねじ13を挿通できる。バックハンガー6の上端面は後方に向かって下り傾斜した係合面8とされ、これによりバックハンガー6の上端には、係合面8で背面が構成された楔状の掛止部9が形成されている。
【0015】
手洗ボウル1は、上方に開口したボウル部11と、ボウル部11の後縁に立設した壁状のバックガード3とを備えている。手洗ボウル1には、ボウル部11に水を供給する図示しないカラン等の給水手段が設けられる。また図示は省略するが、手洗ボウル1の底部には排水口部が形成され、ボウル部11内の水を排水口部に接続される排水管を介して排出できるようになっている。
【0016】
手洗ボウル1の背面は、ボウル部11の背面と、この上方に連続したバックガード3の背面とで構成されている。この手洗ボウル1の背面には、バックハンガー6の掛止部9で掛止される被掛止部12が形成されている。
【0017】
被掛止部12はバックガード3の上縁に形成されて後方に突出し、その後端部には下方に突出する突条17が形成されている。突条17の前面は後方に向かって下り傾斜した被係合面16とされ、被係合面16は係合面8と略平行な傾斜面となっている。またキャビネット5は手洗ボウル1の下方の床に設置され、前記排水管等を覆う。
【0018】
手洗ボウル1を壁2に施工するには、まず図2のようにバックハンガー6を収納体3の下方の壁2に取り付ける。このバックハンガー6の取り付けの際には、まずキャビネット5を床の設置予定箇所に仮設置し、次にバックハンガー6を壁2に沿わせると共に仮設置したキャビネット5上に載置し、これによってバックハンガー6を設置予定箇所に配置する。次にバックハンガー6の長孔7に筒状のスペーサー18を挿入すると共にこのスペーサー19に前側からワッシャー19を介してねじ13を挿入し、該ねじ13を頭部13aと壁2との間にワッシャー19とスペーサー18が挟持される状態になるまで壁2にねじ込む。これによりワッシャー19と壁2の間にバックハンガー6の長孔7の両側縁部が介在し、バックハンガー6は前後方向の移動が規制された状態で壁2に取り付けられる。
【0019】
このようにバックハンガー6が壁2に取り付けられた状態では、図2(b)のようにスペーサー18は長孔7の上下方向の中間部又は下部に配置される。またスペーサー18の軸方向の長さはバックハンガー6の厚みよりもわずかに大きく、図2(a)のようにワッシャー19から壁2までの距離はバックハンガー6の厚みよりもわずかに大きくなるよう設定されている。このため仮設置したキャビネット5を他に移動することで、前記壁2に取り付けられたバックハンガー6は長孔7の縁部をスペーサー18に沿って移動させて上下方向に移動することが可能になる。つまりバックハンガー6は壁2に対して上下方向に移動自在に取り付けられている。
【0020】
次に仮設置したキャビネット5を退け、この後、バックハンガー6を壁2に沿って下方にスライドさせ、これによって図3のようにバックハンガー6と上方の収納体3との間に、上下長さが被掛止部12の最大上下長さよりも長い隙間20を形成する。なお本実施形態では、手洗ボウル1を収納体3の直下に配置した後にバックハンガー6を上方に移動して手洗ボウル1の被掛止部12を掛止部9に引掛けた。しかしこれに限定されるものではなく、手洗ボウル1の被掛止部12をバックハンガー6の掛止部9に引掛けた後に、手洗ボウル1をバックハンガー6と共に上方に移動し、これによって手洗ボウル1を収納体3により上方への移動が規制されるように収納体3の下方に配置しても構わない。
【0021】
この後、図4のように手洗ボウル1を設置予定箇所となるバックハンガー6の前側に配置して、被掛止部12を隙間20に収めると共に、被掛止部12の後面を壁2に、手洗ボウル1の上端面を壁2より突出した収納体3の下面に、夫々当接させる。続いてバックハンガー6を係合面8と被係合面16が係合するまで壁2に沿って上方にスライドさせる。これにより手洗ボウル1の被掛止部12がバックハンガー6の掛止部9に引掛けられる。この後、図1のようにキャビネット5を壁2aに沿って本設置し、該キャビネット5上にバックハンガー6と手洗ボウル1を載置し、また手洗ボウル1をキャビネット5に固定する。すなわち本実施形態ではキャビネット5でバックハンガー6を支持する支持手段が構成されている。
【0022】
このように施工された手洗ボウル1は、被掛止部12の突状17が掛止部9の後側に係合して前方に移動不能となり、また被掛止部12の後面が壁2に当接して後方に移動不能となる。さらに手洗ボウル1は収納体3により上方への移動が規制され、この手洗ボウル1の被掛止部12によりバックハンガー6は上方への移動が規制され、またバックハンガー6の下方への移動はキャビネット5により規制される。
【0023】
このように本実施形態にあっては、収納体3の下方の壁2に上下方向に移動自在に取り付けたバックハンガー6を上方に移動することで、バックハンガー6の掛止部9に収納体3の直下に配置された手洗ボウル1の被掛止部12を掛止させることができる。このため手洗ボウル1を収納体3との間に壁2を露出させる大きな隙間を形成することなく壁2に設けることができて見栄えが良い。またこのように設けられた手洗ボウル1は収納体3により上方への移動が規制され、この手洗ボウル1の被掛止部12によりキャビネット5に支持されたバックハンガー6の上方への移動が規制される。このため別途ねじ等の手段により手洗ボウル1が上方に移動しないよう強固に固定することなく、被掛止部12と掛止部9の掛止が外れることを防止して、手洗ボウル1を強固に取り付けることができる。またバックハンガー6は手洗ボウル1の下方に設置されるキャビネット5で支持されるので、別途バックハンガー6を支持する支持手段を設ける必要がなく、容易に施工できる。
【0024】
なお本実施形態では手洗ボウル1の設置予定箇所の直上の壁2に設けられる突設物を収納体3としたが、突設物は棚等であってもよい。またバックハンガー6は上下方向に移動自在に取り付けられるものであればよく、複数のねじで壁2に取り付けられるものであってもよく、またバックハンガー6を上下方向に移動自在に取り付ける手段は本実施形態のものに限定されるものではない。また、バックハンガー6を支持する支持手段をキャビネット5としたが、キャビネット5以外のものであってもよい。また本実施形態では、手洗ボウル1をトイレ室の壁2に施工する例を示したが、本発明はトイレ室以外の壁に施工される手洗ボウルにも適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 手洗ボウル
2 壁
5 キャビネット
6 バックハンガー
9 掛止部
12 被係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に突設された突設物の下方の壁に、掛止部を有するバックハンガーを上下方向に移動自在に取り付け、次に、手洗ボウルを突設物により上方への移動が規制されるように突設物の下方に配置した後に前記バックハンガーを上方に移動して手洗ボウルの背面に形成された被掛止部を掛止部に引掛け、或いは前記手洗ボウルの被掛止部をバックハンガーの掛止部に引掛けた後に手洗ボウルをバックハンガーと共に上方に移動して突設物により上方への移動が規制されるように突設物の下方に配置し、この後、バックハンガーを支持手段で支持することを特徴とする手洗ボウルの施工方法。
【請求項2】
前記上方に移動したバックハンガーの下方に前記支持手段を構成するキャビネットを設置し、該キャビネット上にバックハンガーを載置することを特徴とする請求項1に記載の手洗ボウルの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−130845(P2011−130845A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291319(P2009−291319)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】