説明

手術台コラム

【課題】コラム高さが低い状態及び低いスペースで患者支持面を縦軸又は横軸を中心に大きな回転角度で回転させることができる手術台コラムを提供する。
【解決手段】コラム脚12と、コラム脚に接続されたコラム部10と、患者支持面との接続を目的とするヘッド部14と、第1要素58,64及び第2要素56,68を含む駆動装置16,18,20とを備える手術台コラムであって、第1駆動装置16の第1要素はコラム部に接続され、ヘッド部は第1駆動装置の第2要素に回転可能に接続され、第2駆動装置の第1要素58はコラム部に回転可能に接続され、ヘッド部14は第2駆動装置18の第2要素56に回転可能に接続され、第3駆動装置20の第1要素64はヘッド部14から離間して第1駆動装置16の第2要素40に接続され、第3駆動装置20の第2要素68は自在継手68を介してヘッド部14に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラム脚と、コラム脚に接続されたコラム部と、手術台の患者支持面との接続を目的とするヘッド部と、ヘッド部を支持すると共に、第1要素及びこの第1要素に対して直線的に調節可能な第2要素を含んでヘッド部に作用する複数の駆動装置とを備える手術台コラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの手術台コラムは、例えば独国特許出願公開第4423402号明細書に示されているように公知である。それに記載されている解決手段として、板状のヘッド部は、その中間位置をガイドコラムの上端部にカルダン継手を介して接続されている。ヘッド部に接続された患者支持面の傾斜(inclination and tilting)の調節を行うために、三つの直線駆動装置は、ガイドコラムの周囲にこのガイドコラムからヘッド部がカルダン継手によって定義される軸を中心に回転できる距離をおいて配置されている。ガイドコラム及び三つの駆動装置は、別個の昇降駆動装置によってコラム脚に対して縦方向に調節可能なキャリアの上に配置されている。
【0003】
駆動装置のこのような配置は、比較的高価で、かつ、比較的大きなスペースを必要とし、またヘッド部の調節を手術台コラムの内部における機械部品の衝突の危険を伴わない限定的な範囲にのみ許容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第4423402号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に最小限の侵襲性外科的処置(minimally invasive surgical interventions)の場合に、外科医が人間工学的に好ましい方法で作業できる位置に手術台上の患者を移動させる要望がある。このため、患者支持面の傾斜(inclination and tilting)の複合動作をコラム高さが最も低い状態で大きな回転角度で行う必要がある。
【0006】
本発明の課題は、上述のタイプの手術台コラムにおいて、コラム高さが低い状態及び低いスペースで患者支持面を縦軸又は横軸を中心に大きな回転角度で回転させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、上述のタイプの手術台コラムにおいて、第1駆動装置の第2要素が第1縦軸の方向にのみ調節可能となるように、第1駆動装置の第1要素をコラム部に接続し、ヘッド部を第1駆動装置の第2要素に第2横軸及びこれと垂直な第3軸を中心に回転可能に接続し、第2駆動装置の第1要素をコラム部に第2軸と平行な回転軸を中心に回転可能に接続し、ヘッド部を第2駆動装置の第2要素に第2軸と平行な軸及び第3軸を中心に回転可能に接続し、第3駆動装置の第1要素をヘッド部から離間して第1駆動装置の第2要素に接続し、第3駆動装置の第2要素をヘッド部に自在継手を介して接続することで解決される。
【0008】
本発明の解決手段において、ヘッド部は駆動装置のみによって支持されており、コラム部の上に直接支持されない。患者支持面の横軸を中心とする傾斜動作に応じたヘッド部の第2軸に平行な軸を中心とする調節は、第1駆動装置の第2要素と第2駆動装置の第2要素とを異なる幅に伸長することで行われる。第1駆動装置と第2駆動装置との間に生じる距離の変化は、第2駆動装置をその接続軸を中心にコラム部に向けて回転させることで補正される。患者支持面の縦軸を中心とする傾斜動作に応じたヘッド部の第3軸を中心とする回転は、第3駆動装置の第2要素を動作させることで行われる。ヘッド部は移動可能な第1駆動装置の第2要素に接続されているので、コラム部の上にガイドを必要としない。提案された解決手段は、コラム部における駆動装置の非常にコンパクトな配置を可能にすると同時に、手術台コラムの内部における機械部品の内部衝突の危険を伴うことなく患者支持面の傾斜(inclination and tilting)を大きな調節角度で可能にする。
【0009】
第1駆動装置の第2要素及び第2駆動装置の第2要素は、好ましくは第2軸及びこれに平行な軸を含む関節連結部の中のロッドで互いに接続され、ヘッド部は、第3軸を形成するロッド上に回転可能に支持される。したがって、ヘッド部の調節のための回転軸は、実質的にヘッド部の平面に位置されて患者支持面の平面と近接する。したがって、患者の重心位置とヘッド部の回転軸上の支持面との距離は短く維持され、結果として患者支持面の回転中に生じるチッピングモーメント(tipping moments)も小さく維持することができる。一方、従来の解決手段では、ヘッド部の回転中心は患者支持面の下方に比較的長い距離をおいて位置されており、結果として患者支持面を傾斜させる際に患者の重心位置と支持面とが大きく移動して大きなチッピングモーメントを生じさせる。
【0010】
本発明の好適な実施形態において、コラム部は、縦案内支持部と、昇降装置により縦案内支持部を縦方向に調節可能なキャリアフレームとを備える。キャリアフレームには、第1駆動装置の第1要素が固定されると共に、第2駆動装置の第1要素がその回転軸を中心に回転可能に接続される。したがって、ヘッド部が第1駆動装置及び第2駆動装置の第2要素の一定動作により既に高い位置に調節された場合であっても、ヘッド部の高さ調節を長い移動経路上で行うことができる。
【0011】
駆動装置は、好ましくは圧力で作動するピストン式シリンダ装置で構成され、他の種類の直線的位置決め装置(linear positioning devices)、例えばウォーム駆動(worm drives)を用いることができる。
【0012】
油圧式シリンダである駆動装置の構成に好ましい解決手段において、ピストンロッドとしてシリンダを軸方向に延びる第1駆動装置の第2要素は第1駆動装置の第1要素を形成する。また、ピストンロッドの一端はヘッド部に接続されると共に、ピストンロッドの他端は第3駆動装置の第1要素に接続される。
【0013】
上述の調節装置の必要な剛性及び操作上の安全性を確保するために、第2駆動装置の第1要素がその回転軸の方向に動かず、かつ、この回転軸の支持がヘッド部に作用する力により不要となるように、第2駆動装置の第1要素はその回転軸から離間したキャリアフレームのフォーク内を案内される。
【0014】
本発明のさらなる効果及び特徴は、添付図面と関連した具体的な実施形態により本発明を説明する以下の記載によりもたらされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、手術台コラムにおいて、コラム高さが低い状態及び低いスペースで患者支持面を縦軸又は横軸を中心に大きな回転角度で回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明による手術台コラムのカバー要素がない状態を図2の矢印A方向から示す側面図である。
【図2】図2は、図1のコラム脚を除く手術台コラムを示す上面図である。
【図3】図3は、手術台コラムを図2の矢印B方向から示す側面図である。
【図4】図4は、手術台コラムを図2の矢印C方向から示す側面図である。
【図5】図5は、図2のV−V線に沿った手術台コラムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図に示されている手術台コラムは、10で示されたコラム部と、模式的に示されたコラム脚12と、患者支持面(不図示)との接続を目的とするヘッド部14と、ヘッド部14を共同して支持する第1駆動装置16、第2駆動装置18及び、第3駆動装置20とを備える。
【0018】
コラム部10は、案内支持部22と、この案内支持部に高さ調節可能に案内されたキャリアフレーム24とを備え構成されている。高さ調節は、脚部12に固定されたピストンロッド28と、第1内側シリンダ30と、その上端部をキャリアフレーム24の横板部34に接続された第2外側シリンダ32とを備える公知の油圧式伸縮シリンダで形成されて案内支持部22(図5)の内部に配置された昇降駆動装置26によって行われる。キャリアフレーム24は、伸縮シリンダ30,32を縦軸35の方向に伸長することで上昇される。
【0019】
キャリアフレーム24は、第1駆動装置16と第2駆動装置18とを保持する。駆動装置は油圧式シリンダとして構成される。第1駆動装置16は、その第1要素を形成すると共に、クランプ38を用いてキャリアフレーム24に固定されたシリンダ36を有する。
【0020】
駆動装置16の第2要素を形成するピストンロッド40は、シリンダ36を貫通して延びている。ピストンロッド40の上端部は、第2横軸を中心に回転できるように、接続ロッド46の一端部に関節連結された関節ヘッド部42に接続されている。この接続ロッド46は、第2軸44に対して垂直な第3軸50を中心に回転できるように、ヘッド部14を貫通して延在する支持部48に支持されている。また、接続ロッド46の関節ヘッド部42と反対側の端部は、第2駆動装置18の第2要素を形成するピストンロッド56の上端部に軸44と平行な軸54を中心に関節連結された関節ヘッド部52と接続されている。
【0021】
シリンダ58は、第2駆動装置18の第1要素を形成すると共に、軸44,54と平行な軸62を中心に回転できるように、その下端部がキャリアフレーム24の二つの側板60の間に支持されたピストンロッド56を受容する。すなわち、シリンダ58は軸62を中心に回転可能である一方、軸62の軸方向に動かないように二つの側板の間に案内されている。
【0022】
第3駆動装置は油圧式シリンダで構成されている。第3駆動装置20の第1要素を形成するシリンダ64は、第1駆動装置16のピストンロッド40の下方自由端に自在継手66を介して接続されている。第3駆動装置20のピストンロッド68は、その上端部をヘッド部14(図3)に自在継手70を介して関節連結されている。すなわち、ヘッド部14は三つの異なる位置を支持されて安定している。
【0023】
第1駆動装置16のピストンロッド40と第2駆動装置18のピストンロッド56とが共同して等しく伸長することで、ヘッド部14は上昇される。ピストンロッド40とピストンロッド56とが不均等に伸長することで、ヘッド部14は図5に示す軸44及び軸54を中心に右方向もしくは左方向に回転される。第1駆動装置16のピストンロッド40と第2駆動装置18のピストンロッド56との距離の短縮は、回転軸62を中心とした第2駆動装置18の回転により補正される。第1駆動装置16のピストンロッド40の調節に応じて調整される第3駆動装置20のピストンロッド68が出し入れされると、ヘッド部14は第3回転軸50を中心に回転する。
【0024】
上述及び図示したように、本発明の解決手段は、非常にコンパクトな配置を可能にしつつ、コラム部の衝突の危険を伴うことなく患者支持面及びヘッド部の傾斜(inclination and tilting)を大きな回転角度で可能にする。傾斜動作の軸はヘッド部14の内部にあり、かつ、患者支持面の直下方にあるので、支持面の回転中において、支持面上に横たわる患者の重心位置の移動は少なくなり、結果として手術台コラムに作用するチッピングモーメントを小さく維持することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 コラム部
12 コラム脚
14 ヘッド部
22 縦案内支持部
24 キャリアフレーム
26 昇降装置
35 第1縦軸
36,58,64 第1要素
40,56,68 第2要素
44 第2横軸
46 ロッド
50 第3軸
54 軸
60 フォーク
62 回転軸
68,70 自在継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラム脚(12)と、コラム脚(12)に接続されたコラム部(10)と、手術台の患者支持面との接続を目的とするヘッド部(14)と、ヘッド部(14)を支持すると共に、第1要素(36,58,64)及びこの第1要素に対して直線的に調節可能な第2要素(40,56,68)を含んでヘッド部(14)に作用する複数の駆動装置(16,18,20)とを備える手術台コラムであって、
第1駆動装置(16)の第1要素(36)は、第1駆動装置(16)の第2要素(40)が第1縦軸(35)の方向にのみ調節可能となるようにコラム部(10)に接続され、
ヘッド部(14)は、第1駆動装置の第2要素(40)に第2横軸(44)及びこれと垂直な第3軸(50)を中心に回転可能に接続され、第2駆動装置(18)の第1要素(58)は、コラム部(10)に第2軸(44)と平行な回転軸(62)を中心に回転可能に接続され、
ヘッド部(14)は、第2駆動装置(18)の第2要素(56)に第2軸(44)と平行な軸(54)及び第3軸(50)を中心に回転可能に接続され、第3駆動装置(20)の第1要素(64)は、ヘッド部(14)から離間して第1駆動装置(16)の第2要素(40)に接続され、第3駆動装置(20)の第2要素(68)は、ヘッド部(14)に自在継手(68,70)を介して接続されることを特徴とする手術台コラム。
【請求項2】
第1駆動装置(16)の第2要素(40)及び第2駆動装置(18)の第2要素(56)は、第2軸(44)及びこれに平行な軸(54)を含む関節連結部(42,52)の中のロッド(46)で互いに接続され、ヘッド部(14)は、第3軸(50)を形成するロッド(46)上に回転可能に支持される請求項1に記載の手術台コラム。
【請求項3】
コラム部(10)は、縦案内支持部(22)と、昇降装置(26)により縦案内支持部を縦方向に調節可能なキャリアフレームとを備え、キャリアフレームに第1駆動装置(16)の第1要素(36)が固定されると共に、第2駆動装置の第1要素(58)がその回転軸(62)を中心に回転可能に接続される請求項1又は2に記載の手術台コラム。
【請求項4】
駆動装置(16,18,20)は、圧力で作動するピストン式シリンダ装置で構成される請求項1から3の何れかに記載の手術台コラム。
【請求項5】
ピストンロッドとしてシリンダを軸方向に延びる第1駆動装置(16)の第2要素(40)が、第1駆動装置(16)の第1要素(36)を形成し、ピストンロッドの一端はヘッド部(14)に接続されると共に、その他端は第3駆動装置(20)の第1要素(64)に接続される請求項4に記載の手術台コラム。
【請求項6】
第2駆動装置(18)の第1要素(58)は、その回転軸(62)から離間したキャリアフレーム(24)のフォーク(60,60)内を案内される請求項3から5の何れかに記載の手術台コラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate