説明

手術器具

ヒト又は動物の脊柱の2つの椎骨の2つの隣接椎体の間の椎間間隙に挿入可能な椎間インプラントの大きさ及び/又は高さを決定するための手術器具であって、前記椎間インプラントが、前記2つの隣接椎体の一方の関節面に当接する第1の当接要素と、前記第1の当接要素上に直接又は間接に支持された、前記2つの隣接椎体の他方の関節面に当接する第2の当接要素とを有し、本器具が、長手方向を規定する保持部と、少なくとも1つのテストインプラントであって前記関節面の一方に当接する少なくとも1つの当接面をそれぞれ備えた第1及び第2のテストインプラント当接要素を有するものとを有し、かつ、前記保持部の遠位端に、前記少なくとも1つのテストインプラントに着脱自在に接続される少なくとも1つの当接要素保持要素が設けられる手術器具を、椎間インプラントの大きさ及び/又は高さを簡単かつ異なる方法で決定することが許容されるよう改良するため、前記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素が、前記長手方向に関し、少なくとも2つの所定の互いに異なる角度位置にて、前記少なくとも1つの当接要素保持要素に着脱自在に接続可能であること、が提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の脊柱の2つの椎骨の2つの隣接椎体の間の椎間間隙に挿入可能な椎間インプラントの大きさ及び/又は高さを決定するための手術器具に関する。この手術器具にあっては、前記椎間インプラントが、前記2つの隣接椎体の一方の関節面に当接する第1の当接要素と、前記第1の当接要素上に直接又は間接に支持された、前記2つの隣接椎体の他方の関節面に当接する第2の当接要素とを有し、該器具が、長手方向を規定する保持部と、少なくとも1つのテストインプラントであって前記関節面の一方に当接する少なくとも1つの当接面をそれぞれ備えた第1及び第2のテストインプラント当接要素を有するものとを有し、かつ、前記保持部の遠位端に、前記少なくとも1つのテストインプラントに着脱自在に接続される少なくとも1つの当接要素保持要素が設けられる。
【背景技術】
【0002】
脊柱領域の消耗性疾患の治療にあたり、椎間板組織の摘出手術が必要となることが非常に多い。この場合、隣接運動分節(即ち、隣接椎体)が骨片及び/又は人工椎間インプラントにより癒合される。隣接椎体の癒合に代わり、人工椎間板を移植することもある。人工椎間板により、隣接椎体の互いに対する可動性を少なくとも部分的に維持することができる。
【0003】
人工椎間板は、一般に、椎間板本来の高さを復元し、脊柱を再び安定させるために使用される。
【0004】
椎間インプラントの所要の大きさ及び/高さを決定するため、様々な器具又はテストインプラントが知られている。これらの器具やテストインプラントは、大きさ及び高さを決定するために空いた椎間間隙に導入される。器具及び/又はテストインプラントにより決定されるインプラントの大きさ及び高さに応じて、実際の椎間インプラントが選択され、移植される。
【特許文献1】DE 80 16 889 U1
【特許文献2】US 2004/0098129 A1
【特許文献3】US 6,143,033
【特許文献4】EP 1 222 903 A1 (US 2004/0220582 A1)
【特許文献5】DE 201 16 410 U1
【特許文献6】WO 2004/039291 A (US 2004/0148027 A1)
【特許文献7】WO 97/06753 (US 6,179,873 B1)
【特許文献8】WO 00/44321 (US 2004/0167625 A1)
【特許文献9】EP 0 333 990 B1 (US 5,122,130, US 4,997,432)
【特許文献10】US 6,740,119 B2
【特許文献11】WO 03/092507 A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、椎間インプラントの大きさ及び/又は高さを簡単かつ異なる方法で決定することが許容されるよう、冒頭に述べた類の器具を改良することである。即ち、改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、冒頭で述べた類の手術器具において、本発明に従い次のようにすることで達成される。即ち、上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素が、上記長手方向に関し、少なくとも2つの所定の互いに異なる角度位置にて、上記少なくとも1つの当接要素保持要素に着脱自在に接続可能であることにより達成される。
【0007】
本発明に従い改良することで、上記テストインプラント当接要素を上記当接要素保持要素に少なくとも2つの異なる角度位置にて接続することが可能となる。これにより、上記テストインプラントを上記椎間間隙に異なる角度で挿入することが許容される。言い換えると、上記テストインプラントを、例えば前方アプローチだけでなく側方アプローチによっても挿入することが可能となる。従って、上記椎間間隙へのアプローチは自由に選択することができ、このため、上記テストインプラント当接要素は上記保持部により第1の角度位置又は別の角度位置にて上記当接要素保持要素に接続される。それ故、上記テストインプラントの導入中に、天然の角度位置又は最適な角度位置に関して妥協する必要はもはやない。患者には、最適な方法で体位を取らせることができる。本発明による器具は、手術条件に応じて、適切に調節することができる。更に、上記テストインプラント当接要素を上記少なくとも1つの当接要素保持要素に着脱自在に接続することで、高さ及び/又は前弯角度(当接面間の角度)の異なる様々なテストインプラントを上記保持部に接続することが許容される。従って、複数のテストインプラントをモデル化し、これらを異なるアプローチにより上記椎間間隙に挿入するために、対応するテストインプラント当接要素を備えた1つの保持部だけが必要となるに過ぎない。
【0008】
次のようにすると有利である。即ち、上記少なくとも2つの所定の異なる角度位置における上記第1又は第2のテストインプラント当接要素がいずれも共通の平面内に存するように配置され、かつ、これら2つの平面が同一であること、である。言い換えると、これは次のことを意味する。即ち、上記第1又は第2のテストインプラント当接要素を、外見上は純粋に幾何的学な回転により、上記第1の角度位置から上記第2の角度位置へと移動させることができる、ということである。もっとも、上記第1の角度位置から上記第2の角度位置への移動が回転によって直接可能となるよう、本器具を設計する必要はない。平行移動−回転移動−平行移動が必要となる場合はある。
【0009】
次のようにすると有利である。即ち、上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素と上記少なくとも1つの当接要素保持要素(互いに着脱自在に接続される)を、上記長手方向に直交して延伸する接続方向において、互いに向かって動かすことで係合させることができる、ということである。この改良により、上記テストインプラントが上記椎間間隙に導入される際、剪断力及び引張力(一般に、長手方向に作用する)が原因で上記テストインプラントが上記保持部から場合により外れることが防がれる。
【0010】
次のようにすると有利である。即ち、上記少なくとも1つの当接要素保持要素が上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素に対して摩擦接続及び/又は確動接続が可能である、ということである。こうして、上記当接要素保持要素と上記少なくとも1つのテストインプラント当接要素との間の確実な接続を容易に形成することができる。
【0011】
次のようにすると、本器具の構造は特に簡単なものになる。即ち、上記少なくとも1つの当接要素保持要素を上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素に接続するために、第1及び第2の接続要素が設けられ、かつ、上記テストインプラント当接要素の一方と上記少なくとも1つの当接要素保持要素が、それぞれ、上記2つの接続要素の一方を担持する、ということである。例えば、上記2つの接続要素を組み合わせるか係合させることにより、上記少なくとも1つの当接要素保持要素と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素とを確実に接続することができる。
【0012】
次のようにすると、本器具の構造は特に簡単なものになる。即ち、上記第1の接続要素が受容部で、上記第2の接続要素が突起部であり、かつ、この突起部が前記受容部に対応しかつ前記受容部に導入することができる、ということである。
【0013】
次のようにすると有利である。即ち、上記突起部が円筒形ピンで、このピンが上記テストインプラント当接要素から上記当接要素保持要素の方向に突き出ており、かつ、上記受容部が、前記ピンと径が一致する孔又は盲孔である、ということである。これにより、本器具の設計及び製造、並びに上記テストインプラント当接要素の交換が容易になる。
【0014】
上記保持部の長手方向における剪断力及び引張力が原因で、上記テストインプラント当接要素が上記少なくとも1つの当接要素保持要素から意図せず脱落することを防ぐため、次のようにすると有利である。即ち、上記突起部が、上記長手方向に対して直交する方向において上記受容部に導入することができる、ということである。
【0015】
次のようにすると有利である。即ち、上記角度位置の一方における、上記少なくとも1つの当接要素保持要素と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素との接続を確保するため、戻り止めによる接続を設けることである。この戻り止め接続により、接続位置において、上記少なくとも1つの当接要素保持要素に接続された上記テストインプラント当接要素が意図せず脱落することを防ぐことができる。
【0016】
本発明の構造の好適な形態では、上記角度位置の一方における、上記少なくとも1つの当接要素保持要素と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素との接続を締め付けによって確保するために、締め付け装置を設けるようにしてもよい。この締め付け装置により、上記少なくとも1つの当接要素保持要素からの上記テストインプラント当接要素が意図せず脱落することを防ぐことができる。
【0017】
次のようにすると有利である。即ち、上記締め付け装置が締め付け要素を含むこと、及び、この締め付け要素が、上記接続要素の少なくとも1つを少なくとも部分的に包囲し、上記少なくとも1つの当接要素保持要素と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素との間の隙間に挿入可能であり、かつ、上記少なくとも1つの当接要素保持要素と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素との接続前に、少なくとも片側で上記隙間を越えて突き出ること、である。変形可能な、特には弾性の締め付け要素を使用することができると好ましい。これにより、上記接続位置における上記締め付け要素の締め付け力が、上記当接要素保持要素及び上記テストインプラント当接要素に対して反対の向きに作用する。
【0018】
次のようにすると、本器具の特に簡単な構造が得られる。即ち、上記隙間が上記突起部の周囲を円周方向に周回する環状溝を含み、上記締め付け要素が弾性リングであり、このリングの径が上記環状溝の深さよりも大きいこと、である。例えば、接続ピンが上記環状溝を備えると、上記ピンを対応する受容部に導入する正にその間に、上記2つの部品間の接続だけでなく、両部品間の締め付けをも実現することが可能となる。
【0019】
次のようにすると有利である。即ち、上記角度位置の一方において、上記少なくとも1つの当接要素保持要素と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素との接続を締め付けによって確保するために、締め付け装置が設けられる、ということである。
【0020】
次のようにすると有利である。即ち、複数のテストインプラントが設けられ、かつ、これら複数のテストインプラントが上記当接面間の距離及び/又は上記当接面の間の前弯角度において異なる、ということである。上記複数のテストインプラントのために、様々なインプラントの大きさや高さだけなく、上記当接面の間で常に要求される前弯角度をも、単一の保持部により決定することができる。決定すべき数量が判ると直ちに、永久移植すべき上記椎間インプラントを選択し、これを上記椎間間隙に挿入することができる。
【0021】
本発明の構造の好適な形態によれば、次のようにしてもよい。即ち、上記少なくとも1つの当接要素保持要素に対する上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素の異なる角度位置を規定し設定するために、角度設定装置を設けること、前記角度設定装置が、異なる角度設定にて互いに係合可能な少なくとも2つの設定要素を含むこと、及び、上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素が第1の設定要素を有し、かつ上記少なくとも1つの当接要素保持要素が第2の設定要素を有すること、である。これらの適切に配される設定要素により、上記テストインプラント当接要素と上記当接要素保持要素の所定の角度設定を所望の方法で予め選択することができる。
【0022】
次のようにすると特に有利である。即ち、上記少なくとも2つの設定要素の少なくとも一方が、設定受容部の形態を成すよう設計され、かつ、上記少なくとも2つの設定要素の少なくとも他方が、前記設定受容部に導入可能な設定突起部の形態を成すよう設計されること、である。この場合、上記設定突起部を上記設定受容部に導入することにより、角度設定を簡単な方法で予め行うことができる。これにより、上記テストインプラント当接要素に対する上記当接要素保持要素の所定の角度位置が得られる。
【0023】
上記少なくとも1つの当接要素保持要素に対する上記テストインプラント当接要素の所望の角度位置を確保するために、次のようにすると有利である。即ち、上記設定突起部が上記長手方向に対して直交する方向において上記設定受容部に導入可能であること、である。上記保持部が長手方向に移動されても、これにより加わる剪断力及び引張力が原因で、上記設定突起部が上記設定受容部に対して移動し、特にはそこから意図せず脱離することがない。
【0024】
次のようにすると、本器具の構造は更に簡単なものになる。即ち、上記テストインプラント当接要素が少なくとも1つの設定突起部を担持し、かつ、上記当接要素保持要素が少なくとも2つの設定受容部を有すること、である。これにより、上記テストインプラント当接要素の上記少なくとも1つの設定突起部を上記少なくとも2つの設定受容部の一方又は他方に導入し、上記少なくとも1つの当接要素保持要素に対する上記テストインプラント当接要素の異なる角度位置を予め設定することが可能となる。
【0025】
次のようにすると有利である。即ち、上記少なくとも1つの当接要素保持要素の形状が円筒形であり、かつ、上記少なくとも1つの当接要素保持要素の長手軸が上記長手方向に対して直交する方向に延伸すること、である。この場合、上記当接要素保持要素は、製造が特に容易であり、複数のテストインプラント当接要素に容易に接続することができる。
【0026】
次のようにすると、更に有利なものとすることができる。即ち、上記テストインプラント当接要素がぞれぞれ上記少なくとも1つの当接要素保持要素のための凹部を有し、かつ、上記少なくとも1つの当接要素保持要素が前記凹部に確動的に又は略確動的に導入可能であること、である。こうして、上記当接要素保持要素に対する上記テストインプラント当接要素の追加の保持及び/又は支持を実現することができる。
【0027】
人体への様々な所望のアプローチにより上記テストインプラントを上記椎間間隙に導入するため、次のようにすると有利である。即ち、上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素を、上記第1の角度位置に対して設定角度だけ回転させることで、上記少なくとも1つの当接要素保持要素に対して上記第2の角度位置に配置することができる、ということである。いずれの場合も、上記保持部に保持される上記テストインプラントを、所望の方法で、例えば側方又は前方アプローチにより導入することができるよう、上記設定角度は選択し得る。
【0028】
上記設定角度は、10°〜30°の範囲内の値を有すると有利である。
【0029】
本発明の構造の好適な形態によれば、次のようにしてもよい。即ち、第1及び第2の当接要素保持要素を本器具の遠位端に設けること、及び、前記第1の当接要素保持要素が上記第1のテストインプラント当接要素に着脱自在に接続可能であり、かつ前記第2の当接要素保持要素が上記第2のテストインプラント当接要素に着脱自在に接続可能であること、である。これにより、上記2つの当接要素保持要素を、上記テストインプラント当接要素との接続ために個別に設計することが許容される。特に、これらは形状が異なっていてもよい。更に、上記当接要素保持要素を互いに傾斜するよう上記保持部の上に形成することが可能である。これにより、上記当接要素保持要素自体によって前弯角度を規定しておくことができる。
【0030】
本器具を隣接椎体を引き離すことにも同時に使用することができるよう、次のようにすると有利である。即ち、上記第1の当接要素保持要素及び上記第2の当接要素保持要素が、上記当接面に対して直交する方向又は略直交する方向において、互いに接近及び/又は離間が可能となるよう支持されること、である。これにより、一方では、挿入すべき上記椎間インプラントの大きさと前弯角度とを決定することが、他方では、上記当接面の間の間隔を変化させることが可能となる。
【0031】
次のようにすると有利なものとすることができる。即ち、上記保持部の遠位端が2つの拡開顎を有し、これらの拡開顎が上記当接要素保持要素を含む又は担持し、前記拡開顎が駆動装置により互いに離間及び/又は接近することができ、かつ、前記駆動装置が、上記保持部に配置され、上記保持部の近位端に配される作動要素を含むこと、である。この改良により、上記保持部は拡開器の形態を成すよう設計することができ、この拡開器は上記テストインプラント当接要素との接続のために設計される拡開顎を有する。
【0032】
上記拡開顎は、互いに平行に拡げることができるよう支持されると好ましい。
【0033】
上記2つのテストインプラント当接要素の間の間隔が変化するとして、この間隔を決定し得るようにするためにも、次のようにすると有利である。即ち、上記保持部が、上記当接面の間の間隔又は上記当接要素保持要素の相対変位を測定し表示するための経路測定装置を有すること、である。例えば、上記当接面の間の間隔が既知であれば、この経路測定装置により前記間隔の変化を決定し、既知の間隔に加えることができる。こうすると、必要とされるテストインプラント当接要素の数を減らすことができる。というのも、上記当接要素保持要素を拡げることで、様々な高さを設定し決定することができるからである。
【0034】
より詳細な説明のため、図面と関連させつつ、本発明の好適な実施形態を以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1〜4は、次のような手術器具(全体として参照符号10で表す)を示す。即ち、脊柱22の2つの椎骨18及び20の2つの隣接椎体14及び16の間にある椎間間隙12に挿入可能な椎間インプラントの大きさ及び/又は高さを決定するための手術器具である。椎間インプラント(図示していない)は、一般に、椎体14の第1の関節面24に当接する第1の当接要素と、第1の関節面24に対向する椎体16の第2の関節面26に当接する第2の当接要素とを有する。第2の当接要素は、第1の当接要素の上に直接又は間接的に、特に移動可能支持される。
【0036】
器具10は保持部の形態を成す器具部品28を含み、その遠位端には拡開装置30が配置されている。拡開装置30は2本の拡開顎32及び34を含む。これらの拡開顎は互いに平行に並べられ、鋏状要素36により互いに接続される。鋏状要素36は2つの連結部38及び40を有する。ここで、連結部38はベアリングピン42により拡開顎32に旋回自在に接続され、ベアリングピンの長手軸は器具部品28の長手軸44に対して直交する向きに配される。同様に、連結部40は、ベアリングピン46によって拡開顎34の遠位端に旋回自在に支持される。ベアリングピン46はベアリングピン42と平行を成す向きに配される。2つの拡開顎32及び34の各々は長穴48及び/又は50を備える。長穴48及び/又は50は長手軸44に平行に延伸すると共に、この長穴にはガイドピン52及び/又は54(連結部38及び/又は40の自由端から長手軸に対して直交する向きに突き出る)が係合しガイドされる。鋏状要素36により、2つの拡開顎32及び34は平行運動を強いられる。従って、拡開装置30は平行開創器を形成する。
【0037】
拡開顎32及び34の各々の遠位端には、保持リング56及び58がそれぞれ配置される。この保持リングは当接要素保持要素を形成し、受容部として機能する中央孔60及び/又は62をそれぞれ有する。保持リング56及び58の対称軸64は長手軸44に対して直交する向きに延伸する。更に、保持リング56及び58には、それぞれ2ヶ所に、具体的には対称軸64に平行に穿孔される。従って、それぞれ、2つの調節孔66及び68並びに70及び72が各保持リング56及び58に形成される。孔60と調節孔66の長手軸はいずれも長手軸44と交差する。穴62と調節孔70の長手軸も同様である。調節孔68及び72は調節孔66及び70に対して円周方向に設定角度74だけずれて配される。この設定角度は実施形態では22°である。
【0038】
テストインプラント76も器具10の一部を形成する。テストインプラント76は2つの同じプレート78を含む。プレート78は略立方体の構造を成しており、関節面24及び/又は26の一方に当接する当接面80を有する。当接面80と略平行を成しかつ反対方向を向いた下側面82には、円筒形の環状受容部84が設けられる。この受容部は、略近位方向に向かって水平に開放される。環状受容部84の径は保持リング56及び58の外径に一致する。環状受容部84は対称軸64と同軸を成すよう配置される。プレート78から、同じく対称軸64と同軸を成すよう保持ピン86が突き出ている。この保持ピンの外径は穴60及び62の内径に一致する。保持ピン86は円周方向に環状溝88を備えており、環状溝88にはOリング90が嵌め込まれる。Oリングの径は、環状溝88の深さを半径方向に僅かに越える大きさである。Oリング90の嵌め込まれた環状溝88は、締め付け装置を形成する。この締め付け装置により、プレート78と2つの保持リング56,58の一方との接続を確保することが可能となる。保持ピン86が2つの孔60又は62の一方に導入された後、Oリング90が弾性変形することで締め付けが行われる。保持ピン86と平行を成すよう設定ピン92が突き出ており、このピンの外径は調節孔66〜72の内径に一致する。
【0039】
プレート78は、保持リング56又は58の一方を受容するように設計される。この場合、保持ピン86が孔60及び/又は62に導入可能であり、設定ピン92が調節孔66,68及び/又は70,72の一方に導入可能である。従って、プレート78を対称軸64に平行に(即ち、長手軸44に対して直交する向きに)移動させ、保持リング56及び58の一方に係合させることが容易にできる。設定ピン92が調節孔66及び70に係合するよう、2つのプレート78が保持リング56及び58に一旦接続されると、プレート78は器具部品28及び/又は長手軸44と対称を成して配列される。このようにプレート78が保持リング56及び58に対して角度設定されると(図1、2に示す)、テストインプラント76をヒト又は動物の体への前方アプローチによって椎間間隙12に挿入するために本器具を使用することができる。
【0040】
設定ピン92が調節孔68及び72に係合するよう、プレート78が保持リング56及び58に接続されると、側方アプローチによってテストインプラント76を導入することが容易になる。この場合、プレート78は図3に示す第2の角度位置にて保持リング56及び58に接続され、図1及び2に示す角度位置から22°だけ回転された位置をとる。
【0041】
図1〜4に示す実施形態では、幅の広い保持リング56及び58が互いに平行に配列される。但し、保持リング56及び58の互いに離間した環状面94及び96が互いに傾斜されることも考えられる。これにより、一定の前弯角度98を設定することができる。関節面24及び26が互いにこの角度を規定する。
【0042】
器具10は、図1〜4に示すプレート78だけでなく、当接面80の大きさ及び傾きが互いに異なる図示しないプレート78も含む。傾きの異なる当接面80により、関節面24及び26によって規定される前弯角度98を同様にモデル化することができる。更に、プレート78は高さも異なるため、高さの異なる椎間間隙12を所望の方法で測定することができる。
【0043】
器具10は、手術中、次のように使用される。最初に、所望の方法で患者に体位を取らせる。前面アプローチの場合、患者に仰臥位を取らせてもよい。患者に特別な体位を取らせることで、脊柱にかかる負荷を取り除いておいてもよい。
【0044】
次のステップでは、患者の身体(即ち、所望の椎間間隙12)へのアプローチが行われる。引き続き、損傷した椎間板組織が除去される。その後、器具10が適切に準備される。これは次のことを意味する。即ち、解剖学的条件に合わせて、大きさが概ね適合する(即ち、対応する高さと天然の前弯角度98とを有する)様々なテストインプラント76が準備される、ということである。選択されたアプローチ(即ち、前方アプローチ又は側方アプローチ)に従い、テストインプラント76のプレート78が、各保持リング56及び58に、設定ピン92を調節孔66及び70又は68及び72のいずれかに入れることで取り付けられる。次いで、器具10は、患者の身体内に、テストインプラント76が椎間間隙12に係合するよう挿入される。必要であれば、駆動装置(詳細は図示しない)によって、当接面80が関節面24及び26に当接するまで、拡開顎32及び34が互いから離される。もし必要なら、器具10は隣接椎体14及び16の間を更に拡げるために使用してもよい。器具部品28の上には、スケールを含む図示しない表示装置が形成される。この表示装置には、特定のインプラントの大きさが示される。プレート78が適切に選択されると、選択すべきインプラントをスケールから直接読み取ることができる。これとは別に、このスケールはリニアスケールでもよい。このようにすると、表示された値から2つの関節面24及び26の間隔を決定し、これに応じて挿入すべき椎間インプラントを選択することができる。
【0045】
次のステップで、2つの拡開顎32及び34は互いの方へと戻され、テストインプラント76は椎間間隙12から除かれる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】隣接椎体間に挿入されたテストインプラントプレートを有する、本発明に係る器具の遠位端を示す図。
【図2】本件器具の遠位端の第1の角度位置に保持されたテストインプラントプレートを有する、本件器具の遠位端の拡大図である。
【図3】図2と同様な図であるが、本件器具の遠位端の第2の角度位置にテストインプラントプレートは保持されている。
【図4】本件器具の遠位端の分解組立図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の脊柱(22)の2つの椎骨(18,20)の2つの隣接椎体(14,16)の間の椎間間隙(12)に挿入可能な椎間インプラントの大きさ及び/又は高さを決定するための手術器具(10)であって、
前記椎間インプラントが、前記2つの隣接椎体(14,16)の一方(14)の関節面(24)に当接する第1の当接要素と、前記第1の当接要素上に直接又は間接に支持された、前記2つの隣接椎体(14,16)の他方(16)の関節面(26)に当接する第2の当接要素とを有し、
該器具(10)が、長手方向(44)を規定する保持部(28)と、少なくとも1つのテストインプラント(76)であって前記関節面(24,26)の一方に当接する少なくとも1つの当接面(80)をそれぞれ備えた第1及び第2のテストインプラント当接要素(78)を有するものとを有し、かつ、
前記保持部(28)の遠位端に、前記少なくとも1つのテストインプラント(76)に着脱自在に接続される少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)が設けられるものにおいて、
前記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)が、前記長手方向(44)に関し、少なくとも2つの所定の互いに異なる角度位置にて、前記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)に着脱自在に接続可能であること、
を特徴とする手術器具(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の器具において、上記少なくとも2つの所定の異なる角度位置における上記第1又は第2のテストインプラント当接要素(78)がいずれも1つの平面内に存するように配置され、かつ、前記2つの平面が同一であることを特徴とするもの。
【請求項3】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、互いに着脱自在に接続される、上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)と上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)を、上記長手方向(44)に直交して延伸する接続方向(64)において、互いに向かって動かすことで係合させることができることを特徴とするもの。
【請求項4】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)が上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)に対して摩擦接続及び/又は確動接続が可能であることを特徴とするもの。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)を上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)に接続するために、第1及び第2の接続要素(60,62,86)が設けられ、かつ、上記テストインプラント当接要素(78)の一方と上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)が、それぞれ、前記2つの接続要素(60,62,86)の一方を担持することを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項5に記載の器具において、上記第1の接続要素が受容部(60,62)で、上記第2の接続要素が突起部(86)であり、かつ、前記突起部が前記受容部(60,62)に対応しかつ前記受容部に導入することができることを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項6に記載の器具において、上記突起部が円筒形ピン(86)で、このピンが上記テストインプラント当接要素から上記当接要素保持要素(56,58)の方向に突き出ており、かつ、上記受容部が、前記ピン(86)と径が一致する孔(60,62)又は盲孔であることを特徴とするもの。
【請求項8】
請求項5又は6のいずれか1項に記載の器具において、上記突起部(86)が、上記長手方向(44)に対して直交する方向(64)において上記受容部(60,62)に導入することができることを特徴とするもの。
【請求項9】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記角度位置の一方における、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)との接続を確保するため、戻り止めによる接続を設けることを特徴とするもの。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記角度位置の一方における、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)との接続を締め付けによって確保するために、締め付け装置(88,90)を設けることを特徴とするもの。
【請求項11】
請求項10に記載の器具において、上記締め付け装置が締め付け要素(90)を含むこと、及び、前記締め付け要素が、上記接続要素(60,62,86)の少なくとも1つを少なくとも部分的に包囲し、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)との間の隙間(88)に挿入可能であり、かつ、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)との接続前に、少なくとも片側で上記隙間(88)を越えて突き出ることを特徴とするもの。
【請求項12】
請求項11に記載の器具において、上記隙間が上記突起部(86)の周囲を円周方向に周回する環状溝(88)を含み、上記締め付け要素が弾性リング(90)であり、かつ、前記リングの径が前記環状溝(88)の深さよりも大きいことを特徴とするもの。
【請求項13】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記角度位置の一方において、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)と上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)との接続を締め付けによって確保するために、締め付け装置が設けられることを特徴とするもの。
【請求項14】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、複数のテストインプラント(78)が設けられ、かつ、前記複数のテストインプラント(78)が上記当接面(80)の間の間隔及び/又は上記当接面(80)の間の前弯角度(98)において異なることを特徴とするもの。
【請求項15】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)に対する上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)の上記異なる角度位置を規定し設定するために、角度設定装置(66,68,70,72,92)を設けること、前記角度設定装置(66,68,70,72,92)が、上記異なる角度位置にて互いに係合可能な少なくとも2つの設定要素(66,68,70,72,92)を含むこと、及び、上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)が第1の設定要素(92)を有し、かつ上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)が第2の設定要素(66,68,70,72)を有することを特徴とするもの。
【請求項16】
請求項15に記載の器具において、上記少なくとも2つの設定要素(66,68,70,72,92)の少なくとも一方が、設定受容部(66,68,70,72)の形態を成すよう設計され、かつ、上記少なくとも2つの設定要素(66,68,70,72,92)の少なくとも他方が、前記設定受容部(66,68,70,72)に導入可能な設定突起部(92)の形態を成すよう設計されることを特徴とするもの。
【請求項17】
請求項16に記載の器具において、上記設定突起部(92)が上記長手方向(44)に対して直交する方向(64)において上記設定受容部(66,68,70,72)に導入可能であることを特徴とするもの。
【請求項18】
請求項16又は17のいずれか1項に記載の器具において、上記テストインプラント当接要素(78)が少なくとも1つの設定突起部(92)を担持し、かつ、上記当接要素保持要素(56,58)が少なくとも2つの設定受容部(66,68,70,72)を有することを特徴とするもの。
【請求項19】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)の形状が円筒形であり、かつ、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)の長手軸(64)が上記長手方向(44)に対して直交する方向に延伸することを特徴とするもの。
【請求項20】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記テストインプラント当接要素(78)がぞれぞれ上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)のための凹部を有し、かつ、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)が前記凹部(84)に確動的に又は略確動的に導入可能であることを特徴とするもの。
【請求項21】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、上記第1及び/又は第2のテストインプラント当接要素(78)を、上記第1の角度位置に対して設定角度(74)だけ回転させることで、上記少なくとも1つの当接要素保持要素(56,58)に対して上記第2の角度位置に配置することができることを特徴とするもの。
【請求項22】
請求項21に記載の器具において、上記設定角度(74)が10°〜30°の範囲内の値を有することを特徴とするもの。
【請求項23】
前記請求項のいずれか1項に記載の器具において、第1及び第2の当接要素保持要素(56,58)を該器具(10)の遠位端に設けること、及び、前記第1の当接要素保持要素(56)が上記第1のテストインプラント当接要素(78)に着脱自在に接続可能であり、かつ前記第2の当接要素保持要素(58)が上記第2のテストインプラント当接要素(78)に着脱自在に接続可能であることを特徴とするもの。
【請求項24】
請求項23に記載の器具において、上記第1の当接要素保持要素(56)及び上記第2の当接要素保持要素(58)が、上記当接面(80)に対して直交する方向又は略直交する方向において、互いに接近及び/又は離間が可能となるよう支持されることを特徴とするもの。
【請求項25】
請求項23又は24のいずれか1項に記載の器具において、上記保持部(28)の遠位端が2つの拡開顎(32,34)を有し、前記拡開顎(32,34)が上記当接要素保持要素(56,58)を含む又は担持し、前記拡開顎(32,34)が駆動装置により互いに離間及び/又は接近することができると共に、前記駆動装置が、上記保持部(28)に配置され、かつ上記保持部(28)の近位端に配される作動要素を含むことを特徴とするもの。
【請求項26】
請求項25に記載の器具において、上記拡開顎(32,34)が、互いに平行に拡げることができるよう支持されることを特徴とするもの。
【請求項27】
請求項24から26までのいずれか1項に記載の器具において、上記保持部(28)が、上記当接面(80)の間の間隔又は上記当接要素保持要素(56,58)の相対変位を測定し表示するための経路測定装置を有することを特徴とするもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−512156(P2008−512156A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530609(P2007−530609)
【出願日】平成17年8月20日(2005.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009021
【国際公開番号】WO2006/027098
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(502154016)アエスキュラップ アーゲー ウント ツェーオー カーゲー (61)
【氏名又は名称原語表記】AESCULAP AG & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap−Platz, 78532 Tuttlingen Germany
【Fターム(参考)】