説明

手袋及びその製造方法

【課題】製造コストの増大をできるだけ招くことなく袖部部分の色を、手の甲部分などにおける主糸の色とは異なる色としてファッション性を向上させた手袋及びその製造方法を提供する。
【解決手段】主糸を繰り出す主糸ヤーンフィーダと、ゴム糸を繰り出すゴム糸ヤーンフィーダと、融着糸を繰り出す融着糸ヤーンフィーダを備え、主糸ヤーンフィーダから繰り出した主糸を編織する自動手袋編み機で製造する手袋において、融着糸ヤーンフィーダに、主糸の色とは異なる色の糸を二次主糸として繰り出し可能に装着し、ゴム糸ヤーンフィーダからゴム糸を繰り出しながら手首部分を囲繞することとなる袖部を形成する際には、融着糸ヤーンフィーダから繰り出した二次主糸を用いて編織する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軍手などの作業用として用いる手袋は自動手袋編み機を用いて製造しており、この自動手袋編み機では、一般的に一本の糸からなる主糸または複数本の糸を一纏めとした主糸を手袋形状に編織することによって手袋を形成している。
【0003】
特に、自動手袋編み機では、一般的に次の順番で編み進めて手袋を形成している(図4参照)。
(1)小指の指先から小指の付け根までの小指部110を形成。
(2)薬指の指先から薬指の付け根までの薬指部120を形成。
(3)中指の指先から中指の付け根までの中指部130を形成。
(4)人差し指の指先から人差し指の付け根までの人差し指部140を形成。
(5)小指部110、薬指部120、中指部130、人差し指部140の付け根部分を互いに繋ぎ合わせながら1つの筒状とした4本胴部150を形成。
(6)4本胴部150を親指の付け根位置まで形成した後、親指の指先から親指の付け根までの親指部160を形成。
(7)4本胴部150と親指部160を互いに繋ぎ合わせながら1つの筒状とした5本胴部170を形成。
(8)5本胴部170を手首の位置まで形成した後、主糸とともにゴム糸を編み込んで手首部分を囲繞することとなる袖部180を形成。
(9)袖部180を所定長さに形成した後、主糸及びゴム糸による編みを終了するとともに、融着糸を編み込んでの融着糸部190を形成。
(10)融着糸部190を加熱して融着糸を溶融させるとともに互いに結合させて一体化。
【0004】
このようにして形成された手袋では、必要に応じて掌部分の一面に、または所定パターンにゴムまたは樹脂による被覆を行うこともある。
【0005】
なお、4本胴部150は、小指部110、薬指部120、中指部130、人差し指部140を1つの筒状として形成する場合だけでなく、小指部110、薬指部120、中指部130、人差し指部140を順次形成した後に、薬指部120、中指部130、人差し指部140の付け根部分を互いに繋ぎ合わせて1つの筒状とした3本胴部(図示せず)をあらかじめ形成し、この3本胴部と小指部110とを互いに繋ぎ合わせて1つの筒状として4本胴部を形成することもある。
【0006】
また、融着糸部190では、融着糸だけでなくゴム糸も一緒に編み込んで、伸縮性のある融着糸部190を形成することもある。
【0007】
このように手袋を形成する自動手袋編み機は、一般的に、主糸を繰り出す主糸ヤーンフィーダ、ゴム糸を繰り出すゴム糸ヤーンフィーダ、融着糸を繰り出す融着糸ヤーンフィーダを備え、さらに、主糸に添えて繰り出させる添え糸用の添え糸ヤーンフィーダを備えており、各フィーダからそれぞれ所要の糸を繰り出して編み針に供給し、編織により手袋形状を形成している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−200123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した自動手袋編み機は、手袋の形成に特化した編み機であって、しかも比較的安価な手袋の製造に用いられるために、一本の糸からなる主糸または複数本の糸を一纏めとした主糸で最初から融着糸の編み込み前まで編み上げている。
【0009】
したがって、形成された手袋は主糸の色からなる一様な色調の手袋となっており、色を途中で変えたい場合には、転換装置あるいはノッター装置などの特殊な補助装置が必要であって、このような補助装置を用いた場合には、補助装置の導入及び維持管理のコストなどによる製造コストの高騰を招くという問題があった。
【0010】
ここで、転換装置とは、主糸の切り替えを行う装置であって、所定位置まで第1の主糸で編み上げた後、第1の主糸とは異なる色の第2の主糸に切り替えて編みを再開することにより異なる色での編み上げを可能としている装置であり、主糸の切替操作が必要となることにより、切替操作の分だけ作業時間が長くなって製造効率が低下するという問題もあった。なお、主糸は2種類に限定するものではなく、より多種類の主糸を用いることにより、さらに色的な変化に富んだ手袋を製造することができるが、使用する主糸の種類を増やせば増やすほど、製造コストが大きく増大することとなっていた。
【0011】
また、ノッター装置は、所定位置まで第1の主糸で編み上げた後、第1の主糸を切断して、この切断された第1の主糸の端部に、第1の主糸とは異なる色の第2の主糸を結び付けて編みを再開することにより異なる色での編み上げを可能としている装置であり、この場合でも主糸の切替操作が必要となることにより、切替操作の分だけ作業時間が長くなって製造効率が低下するという問題もあった。また、ノッター装置の場合でも、主糸は2種類に限定するものではなく、より多種類の主糸を用いることにより、さらに色的な変化に富んだ手袋を製造することができるが、使用する主糸の種類を増やせば増やすほど、製造コストが大きく増大することとなっていた。
【0012】
手袋は、通常、手首部分を囲繞することとなる袖部で手首部分を軽く締め付けることにより使用者に装着感を与えることができるとともに、装着した手袋のズレを防止しているが、この袖部を手の甲部分における地の色と同じとした場合には、一般の需用者はそのような手袋を「作業用手袋」と認識することが多く、また、ファッション性に乏しいと認識され、一般の需用者の購入意欲を喚起しにくくなっている。
【0013】
そこで、袖部の色だけでも手の甲部分における地の色と変えることによりファッション性の向上を図り、需要を喚起したいところであるが、前述したように袖部の色を変えるには主糸の変更が必要であって、製造コストの高騰を招くことにより、転換装置やノッター装置などの装置による主糸の変更は現実的な解決手段とは成り得なかった。
【0014】
本発明者らはこのような現状に鑑み、製造コストの増大をできるだけ招くことなく袖部部分の色を、手の甲部分などにおける主糸の色とは異なる色としてファッション性を向上させるべく開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の手袋では、主糸を繰り出す主糸ヤーンフィーダと、ゴム糸を繰り出すゴム糸ヤーンフィーダと、融着糸を繰り出す融着糸ヤーンフィーダを備え、主糸ヤーンフィーダから繰り出した主糸を編織する自動手袋編み機で製造した手袋であって、融着糸ヤーンフィーダに、主糸の色とは異なる色の糸を二次主糸として繰り出し可能に装着し、ゴム糸ヤーンフィーダからゴム糸を繰り出しながら手首部分を囲繞することとなる袖部を形成する際には、融着糸ヤーンフィーダから繰り出した二次主糸を用いて編織した。
【0016】
また、本発明の手袋の製造方法では、主糸を繰り出す主糸ヤーンフィーダと、ゴム糸を繰り出すゴム糸ヤーンフィーダと、融着糸を繰り出す融着糸ヤーンフィーダを備え、主糸ヤーンフィーダから繰り出した主糸を編織する自動手袋編み機で製造する手袋の製造方法において、融着糸ヤーンフィーダに、主糸の色とは異なる色の糸を二次主糸として繰り出し可能に装着し、ゴム糸ヤーンフィーダから繰り出したゴム糸と二次主糸を用いて編織することにより手首部分を囲繞することとなる袖部を形成する工程を有することとした。
【0017】
さらに、本発明の手袋の製造方法では、二次主糸の繰り出しの開始前に、先にゴム糸の繰り出しを開始して、ゴム糸と主糸とを編織した後に、主糸を二次主糸に切り替えること、また、自動手袋編み機は、主糸に添えて繰り出させる添え糸用の添え糸ヤーンフィーダを備え、この添え糸ヤーンフィーダから所定位置で添え糸を繰り出して、この添え糸で突条部を形成していることにも特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の手袋及びその製造方法では、使用する主糸を別の色の主糸である二次主糸へと転換装置やノッター装置などの装置を用いることなく切り替えて手袋の所定部位における色を変えるために、自動手袋編み機に常設されている融着糸ヤーンフィーダを用いて二次主糸を繰り出して手首部分を囲繞することとなる袖部を形成することにより、製造コストの大きな増大を招くことなく2色の主糸を用いた手袋を製造することができる。
【0019】
したがって、手袋の外観的を既知の作業用の手袋とは異ならせることができ、デザイン性を向上させて新たな需要を喚起することができるだけでなく、二次主糸によって袖部部分の色を異ならせることにより色の違いによってサイズの識別を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の手袋及びその製造方法では、主糸を繰り出す主糸ヤーンフィーダと、ゴム糸を繰り出すゴム糸ヤーンフィーダと、融着糸を繰り出す融着糸ヤーンフィーダを備えた自動手袋編み機を使用し、主糸ヤーンフィーダから繰り出した主糸を編織して製造しているものであって、融着糸ヤーンフィーダには融着糸ではなく、主糸ヤーンフィーダから繰り出される主糸とは異なる色の二次主糸を繰り出し可能に装着して、主糸から二次主糸への切り替えを可能とすることによって、少なくとも2色の主糸を用いることによりファッション性に優れ、さらには色によるサイズの識別を可能とした手袋を製造可能としているものである。
【0021】
このように、融着糸ヤーンフィーダを二次主糸の繰り出しに利用することによって、転換装置やノッター装置などの装置を用いることなく主糸の切り替えを行うことができ、転換装置やノッター装置などの装置の導入にともなうコスト増、及び、転換装置やノッター装置などの装置における主糸の切り替え作業にともなう作業時間的なロスの発生を抑制して、製造コストを大きく高騰させることなくデザイン性の優れた手袋を製造することができる。
【0022】
特に、現在、多用されている自動手袋編み機では、主糸ヤーンフィーダ、ゴム糸ヤーンフィーダ、融着糸ヤーンフィーダが常備されており、本発明者は、融着糸ヤーンフィーダを融着糸の繰り出しに用いるのではなく、二次主糸の繰り出しに用いることにより、このような2色の主糸を用いた手袋の製造が可能であることを見出した。
【0023】
しかも、融着糸ヤーンフィーダを利用することにより、主糸から融着糸への切り替えをスムーズに行えるようにあらかじめ構成されているので、主糸から二次主糸への切り替えをスムーズに行うことができる。
【0024】
なお、自動手袋編み機では、その構造上、融着糸ヤーンフィーダからの融着糸の繰り出しは、自動手袋編み機による手袋製造の最終工程であって、ゴム糸ヤーンフィーダからのゴム糸の繰り出しが行われない限り、融着糸ヤーンフィーダからの融着糸の繰り出しが行えないように機構的な制限を加えて誤動作を防止している。
【0025】
したがって、融着糸ヤーンフィーダからの二次主糸の繰り出しは、ゴム糸ヤーンフィーダからのゴム糸の繰り出し開始後でしか行えないため、二次主糸の繰り出し開始前に、先にゴム糸ヤーンフィーダからのゴム糸の繰り出しを開始してゴム糸と主糸とで編んだ後に、融着糸ヤーンフィーダを起動させて主糸を二次主糸に切り替えている。
【0026】
このように、二次主糸の繰り出し開始前に、ゴム糸の繰り出しを開始させておくことにより、主糸から二次主糸への切り替えをスムーズに行うことができる。
【0027】
また、通常、自動手袋編み機は、融着糸ヤーンフィーダから融着糸を繰り出しながら編みを行う際に、ゴム糸ヤーンフィーダからは編織におけるコース毎にゴム糸を繰り出して、融着糸とともにゴム糸の編み込みを行いながら融着糸部の形成を行っているため、融着糸ヤーンフィーダから二次主糸を繰り出して袖部を形成する際にも、コース毎にゴム糸が編み込まれることとなっている。
【0028】
このように、コース毎にゴム糸を編み込みながら袖部を形成すると、袖部ではゴム糸による締め付け感が強くなり、手袋を装着した際の装着感が低下するおそれがある。そこで、使用するゴム糸を細くすることによって締め付け感を緩和することは可能ではあるが、十分ではなく、逆にゴム糸の強度の低下や伸び幅の減少といった問題を生じるおそれがあった。
【0029】
この点に関し、融着糸ヤーンフィーダからの二次主糸の繰り出し開始前に、先にゴム糸ヤーンフィーダからのゴム糸の繰り出しを開始して、しかもその場合のゴム糸の編み込みを毎コースとするのではなく、例えば2コース毎に1コースなどのように所定間隔で行った場合には、袖部の形成時にもゴム糸の編み込みを所定間隔としながら融着糸ヤーンフィーダから二次主糸を繰り出させて袖部を形成できることを知見した。
【0030】
したがって、袖部におけるゴム糸繰り出しのコースを調整することができ、編みコースに対してゴム繰り出しを減らすことにより締め付け感を緩和することができる。なお、ゴム糸は、2コース毎に1コースの編み込みを行う場合だけでなく、3コース毎に1コース、4コース毎に1コースなどとしてもよい。
【0031】
一方、融着糸ヤーンフィーダから二次主糸を繰り出すことにより融着糸を用いることができないため、手袋の袖部における開口部が解れやすい状態となっている。
【0032】
そこで、袖部が形成された手袋は、自動手袋編み機による編み上げを終了させ、オーバーロックミシンを用いて、袖部における開口部の端縁に縁かがりを形成している。
【0033】
このように、袖部の端縁に縁かがりを形成することにより、従来の融着糸を用いた場合と同様に袖部の端縁での解れを防止することができる。なお、このオーバーロックミシンによる縁かがりの形成にともなって製造工程が増えることとなっているが、この工程は、従来の融着糸の融着工程の代わりに行われるものであって、実質的には工程が増えることはなく、しかも、縁かがりに用いる糸の色を適宜選択することが可能であって、ファッション性の向上を図ることもでき、また色によるサイズの識別性を付与することもできる。さらには、融着糸を用いた場合よりも袖部端部の解れを確実に防止できる。
【0034】
自動手袋編み機には、主糸に添えて繰り出させる添え糸用の添え糸ヤーンフィーダも備えているものがあり、所定のパターンで添え糸ヤーンフィーダから添え糸を繰り出して添え糸を編み込むこともできる。
【0035】
この添え糸が編み込まれた手袋は、手袋の内面に添え糸による突条部を形成することができ、この突条部が滑り止めとして機能することにより、手袋を装着して所要の作業を行っている際に手袋の内面が滑ることを抑制して、安心して作業を行うことができる。
【0036】
以下において、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳説する。図1は、本実施形態の手袋の概略模式図であって、特に、左手用の手袋を示している。なお、右手用の手袋も左手用の手袋と同様に製造されるものであり、説明は省略する。
【0037】
本実施形態では、主糸にはウーリーナイロン70d/2×ウーリーナイロン70d/1を用い、添え糸には綿糸#30/1を用い、ゴム糸には#100のカバーリングゴム糸を用い、二次主糸にはウーリーナイロン100d/2を用いた。主糸の色は灰色×白色として編み上げ時に生地の色が杢柄となるようにし、二次主糸の色は灰色とした。自動手袋編み機の各フィーダには、所定の糸を巻いた糸巻管を装着して繰り出し可能としている。なお、主糸、二次主糸、添え糸、ゴム糸は、上記の糸に限定するものではなく、適宜の糸を用いてよい。
【0038】
自動手袋編み機では、まず、主糸と添え糸とを同時に編み込んで編織で編み込みを開始し、小指部11を形成した。ここで、添え糸は、編み込みの開始直後、3コースまでは主糸とともに編み込み、4コース目以降からは、図2に示すように、主糸21を3コース編み込む毎に1コースだけ添え糸22を編み込んだ。
【0039】
このように、添え糸22は、主糸21を3コース編み上げる毎に1コースだけ編み込むことにより、図2に示すように、編織された主糸21からなる生地には添え糸22が存在しない凹条部23を所定間隔で形成することができる。
【0040】
一方、図2のX−X断面図である図3に示すように、主糸21とともに編み込まれた添え糸22は、主糸21からなる生地の平面から突出した状態とすることができ、この突出部分を突条部24としている。
【0041】
小指部11の形成後、自動手袋編み機は、小指部11の形成と同様に、最初の3コースまでは主糸と添え糸とを同時に編み込んで編織で編み込みを開始し、その後、主糸を3コース編み込む毎に1コースだけ添え糸を編み込んで所定間隔で突条部及び凹条部を設けた薬指部12を形成した。
【0042】
薬指部12の形成後、自動手袋編み機は、小指部11及び薬指部12の形成と同様に、最初の3コースまでは主糸と添え糸とを同時に編み込んで編織で編み込みを開始し、その後、主糸を3コース編み込む毎に1コースだけ添え糸を編み込んで所定間隔で突条部及び凹条部を設けた中指部13を形成した。
【0043】
中指部13の形成後、自動手袋編み機は、小指部11、薬指部12及び中指部13の形成と同様に、最初の3コースまでは主糸と添え糸とを同時に編み込んで編織で編み込みを開始し、その後、主糸を3コース編み込む毎に1コースだけ添え糸を編み込んで所定間隔で突条部及び凹条部を設けた人差し指部14を形成した。
【0044】
人差し指部14の形成後、自動手袋編み機は、小指部11、薬指部12、中指部13、人差し指部14の付け根部分を互いに繋ぎ合わせながら1つの筒状とした4本胴部15を形成した。特に、自動手袋編み機は、4本胴部15を形成する際にも主糸を3コース編み込む毎に1コースだけ添え糸を編み込んで、4本胴部15に所定間隔で突条部及び凹条部を設けた。
【0045】
4本胴部15の形成後、自動手袋編み機は、小指部11、薬指部12、中指部13及び人差し指部14の形成と同様に、最初の3コースまでは主糸と添え糸とを同時に編み込んで編織で編み込みを開始し、その後、主糸を3コース編み込む毎に1コースだけ添え糸を編み込んで所定間隔で突条部及び凹条部を設けた親指部16を形成した。
【0046】
親指部16の形成後、自動手袋編み機は、親指部16の付け根と4本胴部150とを互いに繋ぎ合わせながら1つの筒状とした5本胴部17を形成した。特に、自動手袋編み機は、5本胴部17を形成する際にも主糸を3コース編み込む毎に1コースだけ添え糸を編み込んで、5本胴部17に所定間隔で突条部及び凹条部を設けた。
【0047】
さらに、自動手袋編み機は、5本胴部17の形成途中において、主糸を2コース編み込む毎に1コースだけゴム糸を編み込むゴム糸の編み込みを開始した。図1中、Gで示されるハッチング領域は、ゴム糸が編み込まれている領域を示している。ゴム糸の編み込みは、5本胴部17の形成終了までに1〜6コース程度行われていればよい。
【0048】
ここで、5本胴部17におけるゴム糸の編み込みのパターンは、前述したように袖部18におけるゴム糸の編み込みのパターンと同じとなるので、袖部におけるゴム糸の編み込みのパターンに合わせている。
【0049】
5本胴部17の形成後、自動手袋編み機は、主糸の編み込みを停止させるとともに、融着糸ヤーンフィーダから供給された二次主糸の編み込みを開始して、主糸の代わりに二次主糸を用いて編織することにより手首部分を囲繞することとなる袖部18を形成した。
【0050】
袖部18を形成する際に、自動手袋編み機は、ゴム糸の編み込みのパターンを維持して、二次主糸を2コース編み込む毎に1コースだけゴム糸を編み込み、伸縮性の高い袖部18を形成した。
【0051】
自動手袋編み機は、袖部18を所定の長さに形成したところで二次主糸及びゴム糸を切断して、自動手袋編み機による手袋の製造を終了させた。なお、現状の自動手袋編み機では、融着糸の編み込みのコース数を99コースまでしか設定できないこととなっており、99コースの設定をした場合には、融着糸ヤーンフィーダから繰り出された二次主糸の切断ができなくなるので、二次主糸の編み込みのコース数は99コースまでの偶数コースとして適宜設定している。
【0052】
その後、手袋は、オーバーロックミシンによって袖部18の端縁に縁かがりを行って、袖部18の端縁に解れが生じることを防止した。
【0053】
このようにして製造された手袋は、袖部18を二次主糸で編成していることにより、主糸で編成した部分とは色違いとすることができ、デザイン的に優れた手袋とすることができ、さらには袖部18の色によってサイズの違いを表示することもできる。
【0054】
しかも、手袋の内部には、所定間隔で突条部及び凹条部が形成されており、突条部が滑り止めとして機能することにより、手袋の使用時に手に対して手袋が滑ることを抑制できる。
【0055】
なお、本実施形態では、主糸を3コース編み込む毎に1コースだけ添え糸を編み込んで、突条部及び凹条部を形成したが、たとえば主糸を4コース編み込む毎に2コースだけ添え糸を編み込んでもよいし、主糸を2コース編み込む毎に1コースだけ添え糸を編み込んでもよい。
【0056】
突条部を形成する一方で凹条部を形成することにより、凹条部を利用して通気性を向上させることができ、蒸れにくくすることができるので、快適性を向上させることができる。
【0057】
本実施形態では、主糸をウーリーナイロン、添え糸を綿糸としているが、主糸及び添え糸には適宜の糸を用いて、所望の通気性、あるいは肌触りとなるようにしてもよい。特に、肌と比較的強く接触することとなる袖部18に使用する二次主糸は、主糸の素材とは異ならせて、肌触りを向上させてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、自動手袋編み機は、小指部11→薬指部12→中指部13→人差し指部14→4本胴部15→親指部16→5本胴部17→袖部18の順で形成しているが、これに限定するものではなく、途中で3本胴部の形成を行ってもよい。
【0059】
このようにして形成された手袋では、必要に応じて掌部分の一面に、または所定パターンにゴムまたは樹脂による被覆を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る製造方法で製造した手袋の概略模式図である。
【図2】編織の説明図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】従来の製造方法で製造した手袋の概略模式図である。
【符号の説明】
【0061】
11 小指部
12 薬指部
13 中指部
14 人差し指部
15 4本胴部
16 親指部
17 5本胴部
18 袖部
21 主糸
22 添え糸
23 凹条部
24 突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主糸を繰り出す主糸ヤーンフィーダと、ゴム糸を繰り出すゴム糸ヤーンフィーダと、融着糸を繰り出す融着糸ヤーンフィーダを備え、前記主糸ヤーンフィーダから繰り出した前記主糸を編織する自動手袋編み機で製造した手袋であって、
前記融着糸ヤーンフィーダに、前記主糸の色とは異なる色の糸を二次主糸として繰り出し可能に装着し、
前記ゴム糸ヤーンフィーダから前記ゴム糸を繰り出しながら手首部分を囲繞することとなる袖部を形成する際には、前記融着糸ヤーンフィーダから繰り出した前記二次主糸を用いて編織した手袋。
【請求項2】
主糸を繰り出す主糸ヤーンフィーダと、ゴム糸を繰り出すゴム糸ヤーンフィーダと、融着糸を繰り出す融着糸ヤーンフィーダを備え、前記主糸ヤーンフィーダから繰り出した前記主糸を編織する自動手袋編み機で製造する手袋の製造方法において、
前記融着糸ヤーンフィーダに、前記主糸の色とは異なる色の糸を二次主糸として繰り出し可能に装着し、
前記ゴム糸ヤーンフィーダから繰り出した前記ゴム糸と前記二次主糸を用いて編織することにより手首部分を囲繞することとなる袖部を形成する工程と、
を有することを特徴とする手袋の製造方法。
【請求項3】
前記二次主糸の繰り出しの開始前に、先に前記ゴム糸の繰り出しを開始して、前記ゴム糸と前記主糸とを編織した後に、前記主糸を前記二次主糸に切り替えることを特徴とする請求項2記載の手袋の製造方法。
【請求項4】
前記自動手袋編み機は、前記主糸に添えて繰り出させる添え糸用の添え糸ヤーンフィーダを備え、
この添え糸ヤーンフィーダから所定位置で前記添え糸を繰り出して、この添え糸で突条部を形成していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の手袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−127702(P2008−127702A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312271(P2006−312271)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(591009369)株式会社東和コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】