説明

打楽器

【課題】発音体の交換が容易であり、かつ発音体を打撃して発音させた時の音の響き、残響、音色が好ましいものとなる打楽器が無い、もしくは少ないという課題があった。音の響き、残響、音色が好ましいものは発音体の交換が難しい構造であり、発音体の交換が容易なものは、基台への音の吸収などの影響により音の響き、残響、音色が不十分となる課題である。
【解決手段】本発明ではメラミンフォームまたはメラミンフォームを布で被覆した物を構成材とする基台とその基台の上に置く発音体を備え、その発音体自身の重力により前記基台が変形して溝を形成し発音体が安定して存在できることを特徴とする打楽器を提供する。この手段により上記課題は解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的な楽器演奏目的に、または脳を活性化して認知症の予防をする目的や脳関連の健康障害を有する人への音楽療法に用いられる打楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
木魚やウッドブロック等の発音体を座布団状の敷物の上に置いて打楽器とするのはごく一般的であるが、その方法では音色や残響が損なわれてしまう場合がある。また、金属の細長い棒状の発音体を紐により空中に浮かせてなるチャイムもよく知られているが、通常は紐が台座に固定されているため発音体を容易に取り外して交換することが難しいという欠点があった。図2に従来例のチャイムの発音体の支持方法を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
メラミン発泡体の製造法は特許文献1に示されている。メラミンフォームとはメラミンを重合して得られるメラミン樹脂を発泡させ、多孔性を付与した物質である。
【特許文献1】特開昭62−74936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一例として音程のCからC(ハからハ)と1オクターブを半音を含めて構成しようとすると13の発音体が必要となるが打楽器としてより簡単な構成が望まれる場合がある。一例として4本の発音体で構成できれば楽器としてコンパクトにできるし、価格も安価にできるので好都合である。さらに発音体の一部を取り替えて調性やスケールを別のものにできれば演奏の幅が広がり、楽器演奏にとって好都合のみならず、音楽療法士が患者の興味を示す音楽表現を探すのにも便利である。しかしながら、従来の金属の細長い棒状の発音体を紐により空中に浮かせる方法では、紐が台座に固定されているため発音体を容易に取り外して交換することが難しいという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明ではメラミンフォームまたはメラミンフォームを布で被覆した物を構成材とする基台とその基台の上に置く発音体を備え、その発音体自身の重力により前記基台が変形して溝を形成し発音体が安定して存在できることを特徴とする打楽器を提供する。音色や響きを劣化させないためには発音体を置く基台の材質・形状などは重要である。メラミンフォームは発音体の音色や響きを劣化させない良好な素材であることが判明した。またメラミンフォームを布で被覆した物も布が適度な薄さであればメラミンフォーム単体と同様に発音体の音色や響きを劣化させない良好な基台となりうることが判明した。さらにメラミンフォームは適度に柔軟であるため発音体自身の重力により自然に溝が形成され発音体が安定して存在できるという利点を有している。メラミンフォームはメラミンスポンジとも表現されるが、水を含ませて擦るだけで汚れを落とせる用途が良く知られている。メラミンフォームは多孔質のため軽量で優れた耐熱性・断熱性を有する。金属棒など重量のある物をメラミンフォームの上に置くと物体の重力により軟質なメラミンフォームが変形し、ほぼ物体の形に沿った溝あるいは凹部を形成し、それが物体の安定な存在に有効に作用する。このメラミンフォームを薄い布あるいは生地・繊維で被服した状態でもメラミンフォーム単体と同様の効果が得られる。ただし、布の厚みや素材によっては上に配置した発音体の音色や響きを劣化させる場合もあるので適切に選択する必要がある。
【発明の効果】
【0006】
本発明では上記した手段により、容易に発音体の交換ができて、しかも音色や音響が良好な打楽器を実現できる。発音体の一部を取り替えて調性やスケールを別のものにできるため演奏の幅が広がり、楽器演奏にとって好都合のみならず、音楽療法士が患者の興味を示す音楽表現を探すのにも便利である。発音体は通常、ばちやスティックで叩いて発音させるがその時の衝撃で発音体が移動しては好ましくない。本発明では発音体自身の重力でメラミンフォームが変形し、ほぼ物体の形に沿った溝あるいは凹部を形成し、それが物体の安定な存在に有効に作用する。発音体を連続して叩いてもズレがなく演奏に支障はない。なお、メラミンフォームは摩擦係数が比較的大きいため、その効果で発音体をばちで叩いても発音体の位置がずれ難いという効果も相乗されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態例の斜視図を示す。
【図2】従来の形態例の断面図を示す。
【図3】本発明の実施の形態例の発音体とメラミンフォームの境界部を示す。
【図4】本発明の実施の形態例の基台部の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための形態について詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態例を示す外観の斜視図である。
【実施例1】
【0009】
市販のメラミンフォーム(ワコー株式会社製、125x67x40各mm)を2個用意し、図1のごとく布製の敷物の上に配置し、その上に金属の発音体を架橋させるように配置させる。なお、布製の敷物1を敷くのは、発音体への打撃の衝撃が、メラミンフォーム2へ伝わり2と床面の間でこすれて擦過音が発生するのを防ぐためであり、床面の種類によっては不要である。棒状の金属は鉄、アルミ、銅、真ちゅう、ステンレス、ニッケル、チタン、コバルトなど何でも選択可能であるが、本実施例ではステンレス(クロム18%、ニッケル9%、残部鉄、規格名SUS304)、真ちゅう(銅60%、残部亜鉛)を用いた。音階は棒状金属の材質と直径と長さにより決定される。一例として直径12mm、長さ258mmのステンレス棒はおよそG(ト)の音を出す。ただし、倍音も含まれている。発音体の並び順は演奏者の好みで並べる。1例としては、図1の左からC(ハ)、E(ホ)、G(ト)、C(ハ)と並べる。ただし両端の発音体は同じC(ハ)の音程であるが、右の方が1オクターブ高くなっている。これでドミソの和音がだせる構成となる。低いCの音は真ちゅう製で直径10mm、長さ248mm、Eの音は真ちゅう製で直径12mm、長さ241mm、高いCの音はステンレス製で直径14mm、長さ242mmである。図3に本発明の実施の形態例の発音体とメラミンフォームの境界部を示す。メラミンフォームが発音体の重力で変形し、自然な溝を形成し、発音体が安定に存在できる。
【0010】
発音体を叩くためのばち(スティック)は金属、木、プラスティックなど幅広く使用できる。本実施例では、直径10mm、長さ165mmのポリカーボネイト製の丸棒を用いた。叩いた際の感触や音色は共に良好であった。金属棒の中央、端その他中間地点など叩く場所により音色は変化する。実際にステンレス棒をかなり強打しても溝の効果で発音体の位置は安定したままであり、本発明の有効性が実証できた。また発音体の選択や配列は使用者の好みで選択でき、随時容易に交換可能である。
【実施例2】
【0011】
図1ではメラミンフォームをそのまま使用したが、実施例2ではメラミンフォームを布で被覆して、その上に金属の発音体を配列して打楽器を構成した。外観は図1と同様である。図4に断面図を示す。布は綿、麻、絹、羊毛、ポリエステル、ナイロン、レーヨンなどの材質で薄手の物が適している。本実施例では、麻60%+綿40%でメッシュ編みの布を用いた。この場合、実施例1に比較して発音体の残響が短くなるなど、音色の変化が認められたが実用上の大きな支障とはならなかった。発音体の材質によっては、メラミンフォームそのままでは残響が長過ぎる場合があるが、その場合には布の材質や厚さを調整して適度な残響にすることが可能である。なお図4の様にメラミンフォーム全体を布で被覆してもよいし、メラミンフォームの一部を布で被覆することも可能である。
【符号の説明】
【0012】
1・・・敷物または布、2・・・メラミンフォーム、3・・・発音体、4・・・ばち、5・・・ひも、6・・・基台、7・・・布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミンフォームまたはメラミンフォームを布で被覆した物を構成材とする基台とその基台の上に置く発音体を備え、その発音体自身の重力により前記基台が変形して溝を形成し発音体が安定して存在できることを特徴とする打楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−271679(P2010−271679A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143712(P2009−143712)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(599135385)
【Fターム(参考)】