説明

打設コンクリートの充填確認装置および方法

【課題】検査する者の熟練を必要とせず、簡単な装置で複数箇所を同時に検査でき、しかも、打設コンクリートに欠陥箇所を形成することもなく品質を損なうことがなく、リアルタイムで検査結果を得られて施工性のよい打設コンクリートの充填確認装置を得る。
【解決手段】コンクリートが打設される型枠1や鋼管に目視用の孔2を設け、この孔2を打設したコンクリートに反応して変色するフェノールフタレインなどの板状の変色部材3で塞ぐようにして貼付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠や鋼管内に打設したコンクリートの充填性を確認するための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物などのコンクリート工事中、木製・鋼製型枠や鋼管の中に打設されたコンクリートが確実に充填されているかは、型枠や鋼管内の中空部が密閉状態にあるため、目視で直接確認ことが困難である。
【0003】
そこで、充填を確認する方法として、従来、例えば第1の方法として、型枠をたたき、打音で確認する、第2の方法として、型枠内にリード線を設置し、電気抵抗の変化を測定することでその位置までコンクリートが充填されていることを確認する、第3の方法として、ビデオカメラを型枠内に入れ、撮影された映像を介して観察する、第4の方法として、レーザー変位計などを使い、コンクリートの上面がどこまできたかを測定する、方法がある。
【0004】
また、第5の方法として、アルカリ性可変色材を充填した検知管を型枠から内部に挿入する方法もある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この方法は、前記のように検知管を型枠内の打設コンクリートの中に差し込んで、検知管内のアルカリ性可変色材が打設コンクリートのアルカリ性に反応して変色することをもってコンクリートの充填を確認するものである。
【特許文献1】特開平6−346595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記第1の方法は、簡便ではあるが、打音の違いを聞き分けるためには熟練が必要であり、人間の聴覚に頼るものであるため正確性に欠けることもあり、また、原子力発電所建屋などの大型構造物の場合には上方を検査するには足場を別途組む必要があり、施工性がよくない。
【0007】
第2から第4の方法は、実施にはコストと手間を要し、複数箇所を同時に検査することが困難である。
【0008】
第5の方法は、検査する者の熟練を必要とせず、第2から第4の方法に比較してコストも手間も軽減されるが、検知管を打設コンクリートの中に挿入するということは、コンクリート中に欠陥箇所をことさらに形成することとなり、品質保持の面からは好ましくない。また、検知管の挿入後、アルカリ性可変色材が変色するまでには時間を要し、リアルタイムの管理には適していない。
【0009】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消するものとして、検査する者の熟練を必要とせず、簡単な装置で複数箇所を同時に検査でき、しかも、打設コンクリートに欠陥箇所を形成することもなく品質を損なうことがなく、リアルタイムで検査結果を得られて施工性のよい打設コンクリートの充填確認装置および方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するものとして、請求項1記載の発明は、コンクリートが打設される型枠や鋼管に目視用の孔を設け、この孔を打設したコンクリートに反応して変色する板状部材で塞ぐようにして貼付すること、請求項5記載の発明はコンクリートが打設される型枠や鋼管に目視用の孔を設け、この孔を打設したコンクリートに反応して変色する板状部材で塞ぐようにして貼付け、打設したコンクリートが前記孔の位置まで到達すると、ここに貼付したコンクリートに反応する板状部材がコンクリートと接触することで変色する、この色の変化を読み取ることを要旨とするものである。
【0011】
請求項1記載および請求項5記載の本発明によれば、型枠や鋼管内に打設したコンクリートが型枠や鋼管に形成した孔の位置まで到達すると、ここに貼付したコンクリートに反応する板状部材がコンクリートと接触することで変色する。よって、この板状部材の色の変化を読み取れば、打設コンクリートが孔の位置まで充填されていることを知ることができる。そして、かかる検知は目視するだけでよいから特に熟練を必要とせず、正確、確実に行える。また、孔を複数の適宜箇所に設けておれば、複数箇所を同時に目視によって確認できる。
【0012】
また、変色部材は孔の位置で型枠や鋼管の内側または外側に貼付するだけであるから、変色部材の存在によって打設コンクリートに欠陥箇所が発生することもなく、品質が低下することはない。
【0013】
請求項2記載の発明は、変色部材はコンクリートのアルカリ性に反応するフェノールフタレインなどを含浸させた材料、コンクリート温度や水和熱で変色する示温色素、コンクリートの側圧で変色する感圧性色素のいずれかであることを要旨とするものである。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、変色部材は、アルカリ性に反応するフェノールフタレインなどを含浸させた材料、コンクリート温度や水和熱で変色する示温色素、コンクリートの側圧で変色する感圧性色素のいずれかとすることで、変色するまでに時間を要しないから、リアルタイムで充填の確認ができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、変色部材の外側に、打設コンクリートが孔から漏れ出ることの防止部材として透明材料でフタを取付けることを要旨とするものである。
【0016】
請求項3記載の本発明によれば、孔は透明材料でフタがされるから、打設コンクリートが孔から外部に漏れ出すことを防止できる。そして、フタは透明であるから、フタを設けても変色部材の変色を看取できなくなることはない。
【0017】
請求項4記載の発明は、変色部材は、型枠や鋼管と内面が同一面に位置するように配設されることを要旨とするものである。
【0018】
請求項4記載の本発明によれば、変色部材が型枠や鋼管の内面側から内方に突出したり、外面から外方に突出することがなく、その結果、たとえ僅かであっても打設コンクリートの表面に凹凸が生じることを防止でき、仕上がりのよいものにできる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように本発明の打設コンクリートの充填確認装置および方法は、外部から変色を看取するだけの目視で確認できるから、検査する者の熟練を必要とせず、簡単で安価な装置で複数箇所を同時に検査でき、しかも、打設コンクリートに欠陥箇所を形成することもなくて品質を損なうことがなく、リアルタイムで検査結果を得られて充填が不十分な場合などこれに迅速に対処でき施工性のよいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の打設コンクリートの充填確認装置および方法の第1実施形態を示す縦断側面図、図2は同上正面図である。
【0021】
木製や鋼製の型枠1や鋼管に直径数cmの孔2を複数、適宜間隔で穿設する。ここで孔2の径は、打設コンクリート中の骨材によって目詰まりを起こさない程度の直径とする。
【0022】
この孔2の内側または外側に、コンクリートのアルカリ性に反応して着色する物質である例えばコンクリートの水分に反応して赤色に変色するフェノールフタレインを含浸させた多孔質材料・脱脂綿・ガーゼなどの板状の部材を変色部材3として貼付する。
【0023】
この変色部材3の外側を、モルタルが孔2から外部にもれ出るのを防ぐ防止部材として、ガラス・アクリルなどの透明材料によるフタ4を取付ける。
【0024】
前記変色部材3、フタ4を型枠1に固定する手段は、接着剤、磁石など適宜選択する。
【0025】
打設コンクリートの充填を確認する方法は、型枠1内に打設したコンクリートが孔2の位置まで達すると、ここに貼付してある変色部材3であるフェノールフタレインがコンクリートを構成するアルカリ性の水分に反応して、赤色に変化する。
【0026】
管理者はこの変色部材3の変色を外部から看取し、変色が生じた時点でコンクリートがその位置まで到達したことを知る。この場合、フェノールフタレインを含浸させた多孔質材料・脱脂綿・ガーゼなどは薄い板状に形成することで、変色反応が短時間で外側に達するから、ほぼリアルタイムでコンクリートの充填を確認することができる。
【0027】
赤色に変色しなかった場合は、コンクリートの充填不良と判断して、その位置を即座に充分に締め固めるか、後日、孔2から補修用モルタルを注入するなどして対応する。
【0028】
なお、変色の判断は目視によるもので可能であるが、必要に応じて写真やビデオ撮影などを併用することができる。また、コンクリートを充填する対象が大型構造物の場合などや孔2の近くまで近づけないような場合は、双眼鏡や望遠鏡機能付きのカメラを使用することもできる。
【0029】
コンクリートに反応して変化する部材は、コンクリートのアルカリ分に反応する前記フェノールフタレインに限定されるものではなく、コンクリート温度や水和熱で変色する示温色素や、コンクリートの側圧で変色する感圧性色素などを使用することも可能である。
【0030】
図3は第2実施形態を示し、第1実施形態では変色部材3を孔2の内側または外側に貼付したので、打設コンクリートの仕上がり面に変色部材3の厚み分だけ凹凸が生じたが、第2実施形態では変色部材3の厚みを型枠1に形成した孔2の内に納まる幅に形成して、変色部材3の内面側を型枠1の内面側と同一平面に位置させるようにした。
【0031】
これにより、型枠1に変色部材3を貼付しても、変色部材3が型枠1の内方や外方に突出しないから、コンクリートの表面に凹凸が形成されることがなく、躯体の凹凸を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の打設コンクリートの充填確認装置および方法の第1実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の打設コンクリートの充填確認装置および方法の第1実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明の打設コンクリートの充填確認装置および方法の第2実施形態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 型枠 2 孔
3 変色部材 4 フタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートが打設される型枠や鋼管に目視用の孔を設け、この孔を打設したコンクリートに反応して変色する板状部材で塞ぐようにして貼付することを特徴とする打設コンクリートの充填確認装置。
【請求項2】
変色部材はコンクリートのアルカリ性に反応するフェノールフタレインなどを含浸させた材料、コンクリート温度や水和熱で変色する示温色素、コンクリートの側圧で変色する感圧性色素のいずれかである請求項1記載の打設コンクリートの充填確認装置。
【請求項3】
変色部材の外側に、打設コンクリートが孔から漏れ出ることの防止部材として透明材料でフタを取付ける請求項1または請求項2に記載の打設コンクリートの充填確認装置。
【請求項4】
変色部材は、型枠や鋼管と内面が同一面に位置するように配設される請求項1から請求項3のいずれかに記載の打設コンクリートの充填確認装置。
【請求項5】
コンクリートが打設される型枠や鋼管に目視用の孔を設け、この孔を打設したコンクリートに反応して変色する板状部材で塞ぐようにして貼付け、打設したコンクリートが前記孔の位置まで到達すると、ここに貼付したコンクリートに反応する板状部材がコンクリートと接触することで変色する、この色の変化を読み取ることを特徴とする打設コンクリートの充填確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−211543(P2007−211543A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35064(P2006−35064)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】