説明

打込機

【課題】 安定的かつ十分に空気消費量低減の効果を得ることができる打込機の提供。
【解決手段】 本発明の釘打機1は、蓄圧室2aが形成されたハウジング2と、トリガ12と、シリンダ3と、シリンダ3をシリンダ上室35とシリンダ下室36とに区分するピストン4と、トリガ12の動きと連動してシリンダ3と蓄圧室2aとを連通させるメインバルブ5と、を有している。ハウジング2には、シリンダ3と連通しピストン4の動きと連動してシリンダ3内の空気を蓄える戻り空気室34と、トリガ12の動きと連動して第蓄圧室2aの圧縮空気を蓄えるシリンダ制御室33と、が形成されている。シリンダ3は、戻り空気室34とシリンダ制御室33との圧力差に基づいて、シリンダ上室35と蓄圧室2aとが連通した下死点と、シリンダ上室35と蓄圧室2aとが遮断された上死点とを移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の釘打機101は、図7に示すように、圧縮空気が蓄えられる蓄圧室102aが形成されたハウジング102と、シリンダ103と、シリンダ103に収容されシリンダ103をシリンダ上室とシリンダ下室とに区分するピストン104と、ピストン104に固定された図示せぬ釘を打撃するドライバブレード141と、シリンダ103の上部に配置されたヘッドバルブ105と、トリガ112と、を有している。ハウジング102には、戻り空気室134が形成されていて、戻り空気室134に蓄えられた圧縮空気によってピストンは上死点に戻る。シリンダ103には、戻り空気室134と連通する逆止弁103A及び空気通路103aが形成されている。ヘッドバルブ105の上部には、ヘッドバルブ105が収容されるヘッドバルブ室151が形成されていて、ヘッドバルブ室151の圧力に基づいて、ヘッドバルブ105は蓄圧室102aとシリンダ103とを連通/遮断している。
【0003】
釘打機101は、作業者がトリガ112を引くと、ヘッドバルブ105が移動して蓄圧室102aとシリンダ103とを連通させ、蓄圧室102aの圧縮空気がシリンダ上室に流れ込む。これにより、ピストン104が押下げられて、ドライバブレード141が図示せぬ釘を被打込材に打込む。ピストン104の下降に伴い、シリンダ下室の空気及びシリンダ上室の圧縮空気は、逆止弁103a及び空気通路103bを介して戻り空気室134に流入する。
【0004】
作業者がトリガ112を戻すことにより、ヘッドバルブ105が蓄圧室102aとシリンダ103とを遮断し、シリンダ上室の圧縮空気を図示せぬ空気通路から大気に開放する。
【0005】
このような釘打機の空気消費量を低減する方法として、たとえば特許文献1が知られている。特許文献1に記載の釘打機では、ハウジング内にシリンダを下方に付勢するスプリングが設けられている。トリガ操作によって、ヘッドバルブ室の圧縮空気が放出されてヘッドバルブが上昇し、シリンダ内に圧縮空気が流入しピストンが下降する。これに伴い戻り空気室の圧力が上昇すると、戻り空気室の圧力がスプリングの付勢力よりも大きくなり、シリンダが上方に移動し、ヘッドバルブと当接する。トリガを戻すと、ヘッドバルブ室に圧縮空気が供給され、ヘッドバルブ室の圧力及びスプリングの付勢力がシリンダを下方に押下げて、シリンダを初期位置へと戻す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−64225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載した釘打機において、空気消費量低減の効果を上げるためには、シリンダを付勢するスプリングの付勢力を弱く設定することで、ヘッドバルブが上昇してからシリンダが上昇してシリンダと蓄圧室とを遮断するまでの時間を短縮し、シリンダへの圧縮空気の流入を抑えることが有効である。一方、シリンダを確実に初期位置に復帰させるためには、スプリングの付勢力を強くすることが有効である。従って、特許文献1に記載した釘打機では、シリンダの迅速な上方への移動と確実な初期位置への復帰という相反する課題を満たす必要があり、この点においてなお改良の余地があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、安定的かつ十分に空気消費量低減の効果を得ることができる打込機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧縮空気を蓄える第1空気室が規定されたハウジングと、該ハウジングに設けられたトリガと、該ハウジングに収容されたシリンダと、該シリンダに摺動可能に収容され該シリンダをシリンダ上室とシリンダ下室とに区分するピストンと、該トリガの動きと連動して該シリンダと該第1空気室とを連通させ、該ピストン及び該シリンダと共に該シリンダ上室を画成するメインバルブと、を有し、該ハウジングには、該シリンダと連通し該ピストンの動きと連動して該シリンダ内の空気を蓄える第2空気室と、該トリガの動きと連動して該第1空気室の該圧縮空気を蓄える第3空気室と、が形成され、該シリンダは、該第2空気室と該第3空気室との圧力差に基づいて、該シリンダ上室と該第1空気室とが連通した第1の位置と、該シリンダ上室と該第1空気室とが遮断された第2の位置と、を移動可能であることを特徴とする打込機を提供している。
【0010】
このような構成によると、第3空気室に蓄えられた圧縮空気の圧力によってシリンダを移動させるため、迅速かつ安定してシリンダを移動させることができる。また、シリンダが第2の位置に移動することにより、第1空気室とシリンダ上室とが遮断されるため、過剰に圧縮空気がシリンダ上室に流入することを防止できる。これにより、安定的に空気消費量の低減を図ることができる。
【0011】
また、該トリガの動きと連動して該第3空気室と該第1空気室を連通もしくは遮断するトリガバルブ部をさらに有し、該トリガバルブ部が該第3空気室と該第1空気室とを遮断したときに、該シリンダが該第1の位置から該第2の位置に移動することが好ましい。
【0012】
このような構成によると、メインバルブがシリンダと第1空気室とを連通させた後に第1空気室とシリンダ上室とが遮断されるため、過剰に圧縮空気がシリンダ上室に流入することを防止できる。これにより、安定的に空気消費量の低減を図ることができる。
【0013】
また、該トリガの動きに連動して該第3空気室と該第1空気室を連通もしくは遮断するトリガバルブ部をさらに有し、該ハウジングには、一端が第3空気室に開口し、他端がトリガバルブ部に開口している空気通路が形成されており、該空気通路の該開口の少なくとも一部は該シリンダによって閉塞可能であることが好ましい。
【0014】
このような構成によると、開口の少なくとも一部がシリンダによって閉塞されているため、第3空気室の急激な圧力上昇を防止することができる。これによって、第3空気室の圧力が急激に上昇してシリンダが第1の位置に移動して第1空気室の圧縮空気がシリンダに流入することを防止し、空気消費量が増加することを防止できる。
【0015】
また、該ハウジングには、該トリガバルブ部によって該第1空気室との連通もしくは遮断を制御される第4空気室がさらに規定され、該メインバルブは該第4空気室の圧力に基づいて該シリンダと該第1空気室との連通を制御し、該第4空気室と該第3空気室とは連通していることが好ましい。
【0016】
このような構成によると、第4空気室と第3空気室とが連通しているため、第3空気室の圧力を制御するための弁などを設ける必要が無い。これにより、低コストで打込機を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、安定的かつ十分に空気消費量低減の効果を得ることができる打込機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態の釘打機の初期状態を示す部分断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態の釘打機のピストンが下降している状態を示す部分断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態の釘打機のピストンとバンパとが当接し、シリンダが上死点に位置している状態を示す部分断面図
【図4】本発明の第2の実施の形態の釘打機の初期状態を示す部分断面図
【図5】本発明の第2の実施の形態の釘打機の蓄圧室とシリンダとが連通した状態を示す部分断面図
【図6】本発明の第2の実施の形態の釘打機のピストンとバンパとが当接し、シリンダが上死点に位置している状態を示す部分断面図
【図7】従来の釘打機の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1から3を参照して説明する。本発明の打込機の一例である釘打機1は、止具である図示せぬ釘を打ち込む工具であり、その動力として圧縮空気を用いている。
【0020】
釘打機1は、ハウジング2と、ハウジング2に収容されるシリンダ3と、シリンダ3に収容されるピストン4と、ハウジング2に収容されるヘッドバルブ5と、ハウジング2から延出するノーズ部6と、から構成されている。ハウジング2は、ハウジング2の一方に位置するハンドル2Aを備えている。図1において、ハンドル2Aがハウジング2から延出している方向を後方と定義し、逆を前方と定義する。ハウジング2からノーズ部6が延出する方向を下方向と定義し、逆を上方向と定義する。また、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と定義する(図1の紙面手前側が左方向、紙面奥側が右方向)。
【0021】
図示しない圧縮機からの圧縮空気を蓄えるために釘打機1のハンドル2A及びハウジング2内に蓄圧室2aが形成されている。蓄圧室2aは図示しないエアホースを介して圧縮機に接続される。ハウジング2の上部には、外部と連通する排気口2bが形成されている。蓄圧室2aは、本発明の第1空気室に相当する。
【0022】
ハンドル2Aの基部には、作業者によって操作されるトリガ12と、ノーズ部5の下端から突き出しトリガ12近傍まで延びるプッシュレバー13と、後述するヘッドバルブ31に連通して圧縮空気を送排気する切替弁であるトリガバルブ部14と、及びトリガ12の動作をトリガバルブ部14に伝えるプランジャ15と、が設けられている。プッシュレバー13は、ハウジング2からノーズ部5側に付勢されてノーズ部5に沿って上下方向に移動可能である。ハウジング2には制御通路14aが形成されており、トリガバルブ部14は制御通路14aによって後述のシリンダ付勢室21及び後述のヘッドバルブ室51と繋がっている。
【0023】
トリガ12の引き操作と、プッシュレバー13の被打込材への押し当て操作との両方が行われた時に、トリガバルブ部14のプランジャ15が押し上げられるように構成される。
【0024】
シリンダ3は略円筒形を成しており、ピストン4によってシリンダ上室35(図2)と、シリンダ下室36とに区分されている。シリンダ3の上下方向における略中央部には、シリンダ3の外周面から半径方向外方に突出するフランジ部31が設けられている。フランジ部31の上方には、シリンダ3の外周と摺動可能に当接し、ハウジング2に固定されている隔壁32が設けられている。
【0025】
フランジ部31の上方には、シリンダ3の外周面とフランジ部31とハウジング2と隔壁32とによってシリンダ制御室33が形成されている。隔壁32には蓄圧室2aとシリンダ制御室33との連通を遮断するための2つのOリング32Aが設けられており、フランジ部31にはシリンダ制御室33と戻り空気室34との連通を遮断するためのOリング31Aが設けられている。シリンダ制御室33は、制御通路14aを介してトリガバルブ部14と繋がっている。シリンダ制御室33が本発明の第3空気室に相当する。
【0026】
シリンダ3は、シリンダ3の上端とヘッドバルブ6とが当接しシリンダ3の下端と後述のバンパ43とが離間した状態(図3)である上死点と、シリンダ3の下端部と後述のバンパ43とが当接した状態(図1)である下死点と、の間を上下方向に移動可能である。上死点が本発明の第2の位置に相当し、下死点が本発明の第1の位置に相当する。
【0027】
シリンダ3下部外周には、ピストン4を初期状態(図1)に復帰させるための圧縮空気を貯める戻り空気室34が形成されている。シリンダ3下部にはシリンダ3から戻り空気室34への流入のみが可能な逆止弁3Aが設けられ、逆止弁3Aの直下には空気通路3aが形成されている。戻り空気室34の容積は、シリンダ制御室33の容積よりも大きくなるように構成されている。戻り空気室34が本発明の第2空気室に相当する。
【0028】
ピストン4は、シリンダ3内を上下方向に摺動可能であって、下方に延出するドライバブレード41が固定されている。ピストン4の外周には、シリンダ上室35とシリンダ下室36とを遮断するピストンリング42が嵌合されている。シリンダ3の下方には図示せぬ釘を打込んだ後のピストン4の余剰エネルギーを吸収するためのバンパ43が設けられている。バンパ43は、ウレタンやニトリルゴム(NBR)といった弾性体である。
【0029】
ヘッドバルブ5は、シリンダ3の上側に配置されていて、排気口2bと連通可能な図示せぬ空気通路が形成されている。ハウジング2には、ヘッドバルブ5が収容されるヘッドバルブ室51が形成されている。ヘッドバルブ室51は、制御通路14aを介してトリガバルブ部14及びシリンダ制御室33と連通している。ヘッドバルブ室51には、ヘッドバルブ5を下方に付勢するヘッドバルブスプリング52が配置されている。図1に示す初期状態では、ヘッドバルブ室51は圧縮空気で満たされており、ヘッドバルブ5はヘッドバルブ室51内の圧縮空気とヘッドバルブスプリング52とによって下側に付勢されている。ヘッドバルブスプリング52がヘッドバルブ5を下方に付勢する力は、蓄圧室2aの圧縮空気がヘッドバルブ5を上方向に押上げる力よりも小さい。従って、図2に示すようにヘッドバルブ室51の圧縮空気が放出されて大気圧となった時、ヘッドバルブ5はヘッドバルブスプリング52の付勢力に抗して上方向に移動する。ヘッドバルブ室51は、本発明の第4空気室に相当する。
【0030】
ノーズ部6は、ハウジング2の下端に位置し、ドライバブレード41及び図示せぬ釘を案内する案内路61が形成されている。案内路61の最下端位置には図示せぬ釘が射出される射出孔が規定されている。ノーズ部6の後方には、図示せぬ釘が複数本束ねられて連結された釘の束を内蔵するマガジン装置62が設けられている。マガジン装置62には、マガジン63に装填された図示せぬ釘を順次案内路51内に給送するネイルフィーダが設けられている。
【0031】
次に、釘打機1の動作について説明する。
【0032】
図示していないエアホースをつなぐと、蓄圧室2a内に蓄積された圧縮空気の一部は、トリガバルブ部14及び制御通路14aを介してヘッドバルブ室51及びシリンダ制御室33へと流入する。ヘッドバルブ室51へ送られた圧縮空気はヘッドバルブ5を下方に押下げることでヘッドバルブ5とシリンダ3をさらに密着させ、シリンダ3内に圧縮空気が流入することを防止する。シリンダ3は、ヘッドバルブ5及びシリンダ制御室33内の圧縮空気によって下側に付勢され、下死点に位置している。
【0033】
作業者がプッシュレバー13を被打込材に押し付けた状態でトリガ12を引くと、プランジャ15が押上げられてトリガバルブ部14が制御通路14aを外気と連通させ、ヘッドバルブ室51及びシリンダ制御室33が大気圧となる。蓄圧室2aに蓄えられた圧縮空気とヘッドバルブ室51との差圧によって、ヘッドバルブ5が上方向に移動する。これにより、蓄圧室2aに蓄えられた圧縮空気がシリンダ上室35に流れ込んでピストン4を押下げて、図1に示す状態から図2に示す状態となる。このとき、シリンダ制御室33は大気圧となるが、戻り空気室34も大気圧であるためシリンダ3は下死点に位置したままである。
【0034】
ピストン4の下降に伴い、シリンダ下室36の空気が逆止弁3A及び空気通路3aを介して戻り空気室34内に流入する。ピストン4が逆止弁3Aを通過すると、シリンダ上室35の圧縮空気も戻り空気室34に流入し、フランジ部31を上方向に押圧する。そして、図3に示すように、ピストン4がバンパ43に当接した時に、シリンダ3が上死点に移動する。このピストン4の移動によって、図示せぬ釘が被打込材に打込まれる。シリンダ3が上死点に移動すると、シリンダ3の上端とヘッドバルブ5とが当接して蓄圧室2aとシリンダ上室35とが遮断され、シリンダ上室35への過剰な圧縮空気の流入が防止される。
【0035】
作業者がトリガ12を戻すと、プランジャ15が戻り圧縮空気が制御通路14aを介してシリンダ制御室33及びヘッドバルブ室51に供給される。これにより、ヘッドバルブ5は下方向へと移動する。ヘッドバルブ5及びシリンダ制御室33の圧縮空気によってシリンダ3が下方向に押下げられ、ヘッドバルブ5とシリンダ3とが一体となって下方向に移動する。これにより、シリンダ3は下死点に移動する。同時に、シリンダ上室35が図示せぬ空気通路を介して排気口2bと連通して、シリンダ上室35は大気圧となる。そうすると、戻り空気室34に蓄えられた圧縮空気は空気通路3aを介してシリンダ下室36に流入する。これにより、ピストン4が上方に押上げられて、図1に示す初期状態となる。
【0036】
このような構成によると、シリンダ制御室33に蓄えられた圧縮空気の圧力によってシリンダ3を移動させるため、安定してシリンダ3を移動させることができる。また、シリンダ3が上死点に移動することにより、蓄圧室2aとシリンダ上室35とが遮断されるため、過剰に圧縮空気がシリンダ上室35に流入することを防止できる。これにより、安定的に空気消費量の低減を図ることができる。
【0037】
このような構成によると、ヘッドバルブ5がシリンダ上室35と蓄圧室2aとを連通させた後にシリンダ上室35と蓄圧室2aとが遮断されるため、過剰に圧縮空気がシリンダ上室35に流入することを防止できる。これにより、安定的に空気消費量の低減を図ることができる。
【0038】
このような構成によると、ピストン4が図示せぬ釘を打込んだ時(ピストン4とバンパ43とが当接した時)にシリンダ3が上死点に移動してシリンダ上室35と蓄圧室2aとを遮断するため、図示せぬ釘の打込み終了までピストン4に十分なエネルギーを与えることができる。
【0039】
次に本発明の第2の実施の形態の釘打機201について、図4から6を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同一の構成に関しては、同一の符号を付し説明を省略する。
【0040】
シリンダ3の上下方向における略中央部には、シリンダ3の外周面から半径方向外方に突出するフランジ部231が設けられている。第2の実施の形態では、フランジ部231の上下方向の長さが第1の実施の形態のフランジ部31よりも長く構成されている。フランジ部231には、シリンダ制御室33と戻り空気室34とを遮断するためのOリング231Aが設けられている。
【0041】
シリンダ3は、シリンダ3の上端とヘッドバルブ6とが当接するとともにフランジ部231の上面が隔壁32と近接した状態(図6)である上死点と、シリンダ3の下端部と後述のバンパ43とが当接するとともにフランジ部231の上面が隔壁32と離間した状態(図4)である下死点と、の間を上下方向に移動可能である。
【0042】
釘打機201において、最大限に空気消費量低減の効果を得るには、蓄圧室2aからシリンダ上室35への圧縮空気の流入を最小限に抑えるために、トリガ12が引かれてシリンダ上室35と蓄圧室2aとが連通してからシリンダ3が上死点に移動してシリンダ上室35と蓄圧室2aとを遮断するまでの時間を小さくすることが必要となる。このためには、シリンダ制御室33の圧縮空気が戻り空気室34の圧力によってシリンダ3を上方に押上げる力の抗力とならないように、シリンダ制御室33の圧縮空気を迅速に抜くことが重要となる。第2の実施の形態では、シリンダ制御室33の容積が第1の実施の形態と比べて小さい。これにより、シリンダ制御室33内の圧縮空気を迅速に排出することができる。
【0043】
また、シリンダ制御室33の容積を小さくした場合、トリガ12を戻してシリンダ制御室33へ圧縮空気が流入した際のシリンダ制御室33の圧力上昇が急激になるため、ヘッドバルブ室51に圧縮空気が充填されてヘッドバルブ5が下降するよりも早くシリンダ3が下死点に移動してしまう場合がある。そうすると、シリンダ3とヘッドバルブ5とが離間してシリンダ上室35と蓄圧室2aとが連通してしまうため、圧縮空気がシリンダ上室35に流入し空気消費量が増加してしまう。しかし、第2の実施の形態では、図6に示すように、シリンダ3が上死点に位置しているときはフランジ部231の側面が制御通路14aの開口の大部分を塞いでいるため、この状態でシリンダ制御室33に圧縮空気が流入しても急激なシリンダ制御室33の圧力上昇を抑制することができる。
【0044】
このような構成によると、開口の少なくとも一部がシリンダ3によって閉塞されているため、シリンダ制御室33の急激な圧力上昇を防止することができる。これによって、シリンダ制御室33の圧力が急激に上昇してシリンダ3が下死点に移動して蓄圧室2aの圧縮空気がシリンダ上室35に流入することを防止し、空気消費量が増加することを防止できる。
【0045】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲で記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば、メインバルブの一例としてシリンダの上方に位置するヘッドバルブを採用したが、シリンダ上方の側面にメインバルブを配置する構造であってもよい。
【0046】
上述した実施の形態では、制御通路14aをヘッドバルブ室51とシリンダ制御室33とに連通させることにより、ヘッドバルブ5がシリンダ3と蓄圧室2aとを連通させた後、シリンダ3が上死点に移動するような構成を実現したが、これに限定されない。例えば、より適切なタイミングでシリンダ制御室33に圧縮空気を流入させるために、蓄圧室2aとシリンダ制御室33とを連通させてその間に弁を設け、弁の開閉によってシリンダ3を移動させても良い。この場合には、シリンダ制御室33の圧縮空気を排出する手段が別途必要となる。
【符号の説明】
【0047】
1・・釘打機
2・・ハウジング
3・・シリンダ
4・・ピストン
5・・ヘッドバルブ
6・・ノーズ部
12・・トリガ
14・・トリガバルブ部
14a・・制御通路
31・・フランジ部
32・・隔壁
33・・シリンダ制御室
34・・戻り空気室
35・・シリンダ上室
36・・シリンダ下室
41・・ドライバブレード
43・・バンパ
51・・ヘッドバルブ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を蓄える第1空気室が規定されたハウジングと、
該ハウジングに設けられたトリガと、
該ハウジングに収容されたシリンダと、
該シリンダに摺動可能に収容され該シリンダをシリンダ上室とシリンダ下室とに区分するピストンと、
該トリガの動きと連動して該シリンダと該第1空気室とを連通させ、該ピストン及び該シリンダと共に該シリンダ上室を画成するメインバルブと、を有し、
該ハウジングには、該シリンダと連通し該ピストンの動きと連動して該シリンダ内の空気を蓄える第2空気室と、該トリガの動きと連動して該第1空気室の該圧縮空気を蓄える第3空気室と、が形成され、
該シリンダは、該第2空気室と該第3空気室との圧力差に基づいて、該シリンダ上室と該第1空気室とが連通した第1の位置と、該シリンダ上室と該第1空気室とが遮断された第2の位置と、を移動可能であることを特徴とする打込機。
【請求項2】
該トリガの動きと連動して該第3空気室と該第1空気室を連通/遮断するトリガバルブ部をさらに有し、
該トリガバルブ部が該第3空気室と該第1空気室とを遮断したときに、該シリンダが該第1の位置から該第2の位置に移動することを特徴とする請求項1に記載の打込機。
【請求項3】
該トリガの動きに連動して該第3空気室と該第1空気室を連通もしくは遮断するトリガバルブ部をさらに有し、
該ハウジングには、一端が第3空気室に開口し、他端がトリガバルブ部に開口している空気通路が形成されており、該空気通路の該開口の少なくとも一部は該シリンダによって閉塞可能であることを特徴とする請求項1に記載の打込機。
【請求項4】
該ハウジングには、該トリガバルブ部によって該第1空気室との連通もしくは遮断を制御される第4空気室がさらに規定され、該メインバルブは該第4空気室の圧力に基づいて該シリンダと該第1空気室との連通を制御し、該第4空気室と該第3空気室とは連通していることを特徴とする請求項3に記載の打込機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate