説明

打込機

【課題】 空気消費量を削減しピストンの打込力を上げた打込機の提供。
【解決手段】 本発明の釘打機1は、蓄圧室2aが設けられたハウジング2と、トリガ12と、上死点と下死点との間を移動可能なシリンダ3と、ピストン4と、ピストン4と当接可能なバンパ43と、トリガ12の動きと連動してシリンダ上室37と蓄圧室2aとの連通を制御するヘッドバルブ5と、を有する。ハウジング2には、シリンダ3と連通可能であって、ピストン4の動きと連動してシリンダ3の空気を蓄える戻り空気室36と、シリンダ3と連通しているシリンダ駆動室34と、が形成されている。シリンダ上室37とシリンダ駆動室34とが連通することによってシリンダ3は下死点から上死点へと移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の釘打機101は、図6に示すように、圧縮空気が蓄えられる蓄圧室102aが形成されたハウジング102と、シリンダ103と、シリンダ103に収容されるピストン104と、釘を打撃するドライバブレード141と、シリンダ103の上部に配置されたヘッドバルブ105と、トリガ112と、を有している。ハウジング102には、戻り空気室136が形成されていて、打込後に戻り空気室136に蓄えられた圧縮空気によってピストンは上死点に戻る。シリンダ103には、戻り空気室136と連通する逆止弁103a及び空気通路103bが形成されている。ヘッドバルブ105の上部には、ヘッドバルブ105が収容されるヘッドバルブ室151が形成されている。ヘッドバルブ105は、ヘッドバルブ室151の圧力に基づいて蓄圧室102aとシリンダ103とを連通/遮断している。
【0003】
釘打機101は、作業者がトリガ112を引くと、ヘッドバルブ105が蓄圧室102aとシリンダ103とを連通させて、蓄圧室102aの圧縮空気がシリンダ103に流れ込む。これにより、ピストン104が押下げられて、図示せぬ釘を被打込材に打込む。このとき、ピストン104の下降に伴いシリンダ下室の空気及びシリンダ上室の圧縮空気は、逆止弁103a及び空気通路103bを介して戻り空気室136に流入する。
【0004】
作業者がトリガ112を戻すことにより、ヘッドバルブ105が蓄圧室102aとシリンダ103とを遮断し、シリンダ上室の圧縮空気を図示せぬ空気通路から大気に開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−236768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の打込機において止具を打ち込む際には、ヘッドバルブが上昇し、蓄圧室とシリンダが連通する。そして、蓄圧室の圧縮空気がシリンダに流入することでピストンを急激に下降させて止具を打込む。止具を打込んだ直後において、ピストンは急激に下降していくため、ピストン上側の圧力は、蓄圧室の圧力よりも小さい。従って、蓄圧室とシリンダ内のピストン上側の圧力が同等になるまで蓄圧室の圧縮空気がシリンダに流入する。止具を打ち込んだ後、すなわちピストンが下死点に達した後に、シリンダ内に流入する圧縮空気は仕事をせずに排出される。また、ピストン下降途中に戻り空気室と蓄圧室が連通するため、無駄な圧縮空気が戻り空気室内に流入していた。さらに、戻り空気室内の圧力が上昇するため、ピストン下降の妨げとなり、打込み力減少の要因となっていた。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、空気消費量を削減しピストンの打込力を上げた打込機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧縮空気を蓄える第1空気室が規定されたハウジングと、該ハウジングに設けられたトリガと、該ハウジングに収容され第1の位置と第2の位置との間を移動可能なシリンダと、該シリンダに摺動可能に収容されたピストンと、該ハウジングに収容され該ピストンと当接可能であって、該シリンダと該ピストンと共にシリンダ下室を画成するバンパと、該シリンダと該ピストンと共にシリンダ上室を画成し、該トリガの動きと連動して該シリンダ上室と該第1空気室との連通を制御するメインバルブと、該シリンダを該ピストンの摺動方向に移動させるシリンダ駆動機構と、を有し、該ハウジングには、該シリンダと連通可能であって、該ピストンの動きと連動して該シリンダ内の空気を蓄える第2空気室が規定され、該シリンダ駆動機構は、該ハウジングに規定され該シリンダと連通している第3空気室をさらに有し、該シリンダ上室と該第3空気室とが連通することによって該シリンダは該第1の位置から該第2の位置へと移動することを特徴とする打込機を提供している。
【0009】
このような構成によると、シリンダを移動させることを目的とした第3空気室が設けられているため、速やかにシリンダを第2の位置に移動させることができる。これにより、空気消費量を低減することができる。
【0010】
本発明の別の観点では、圧縮空気を蓄える第1空気室が規定されたハウジングと、該ハウジングに設けられたトリガと、該ハウジングに収容され第1の位置と第2の位置との間を移動可能なシリンダと、該シリンダに摺動可能に収容されたピストンと、該ハウジングに収容され該ピストンと当接可能であって、該シリンダと該ピストンと共にシリンダ下室を画成するバンパと、該シリンダと該ピストンと共にシリンダ上室を画成し、該トリガの動きと連動して該シリンダ上室と該第1空気室との連通を制御するメインバルブと、該シリンダを該ピストンの摺動方向に移動させるシリンダ駆動機構と、を有し、該ハウジングには、該シリンダと連通可能であって、該ピストンの動きと連動して該シリンダ内の空気を蓄える第2空気室が規定され、該シリンダ駆動機構は、該メインバルブが該シリンダ上室と該第1空気室とを連通した後に、該シリンダを該第1の位置から該第2の位置に移動させ、該第1の位置は該シリンダ上室と該第2空気室とが遮断された位置であり、該第2の位置は該シリンダ上室と該第2空気室とが連通可能であるとともに該シリンダ上室と該第1空気室とが遮断された位置であることを特徴とする打込機を提供している。
【0011】
このような構成によると、メインバルブがシリンダ上室と第1空気室とを連通させて第1空気室の圧縮空気がシリンダに流入したとき、シリンダが第1の位置にあってシリンダ上室と第2空気室とが遮断されているため、第1空気室からシリンダ上室に流れ込んだ圧縮空気が第2空気室に流れこまない。シリンダが第2の位置に移動した時、シリンダ上室と第1空気室との連通が遮断された状態でシリンダ上室の圧縮空気が第2空気室に流れ込む。これにより、シリンダ上室内に存在する圧縮空気のみが第2空気室に流れ込むことになるため、余剰に圧縮空気が第2空気室に流れ込むことを防止し、空気消費量の低減を図ることができる。さらに、メインバルブがシリンダ上室と第1空気室とを連通させて第1空気室の圧縮空気がシリンダに流入したとき、シリンダが第1の位置にあってシリンダ上室と第2空気室とが遮断されているため、第2空気室の圧力上昇を防止することができる。これにより、打込力を上げることができる。
【0012】
また、該第2空気室と該シリンダ下室とは常時連通していることが好ましい。
【0013】
このような構成によると、シリンダ上室内の空気が第2空気室に流れ込み、その空気がシリンダ下室に流れ込む。このシリンダ下室に流れ込んだ空気は、ピストンを戻すために有効利用される。これにより、打込機の空気消費量を低減することが可能になる。
【0014】
また、該シリンダ駆動機構は、該ハウジングに規定され該シリンダと連通している第3空気室をさらに有し、該シリンダ上室と該第3空気室とが連通することによって該シリンダは該第1の位置から該第2の位置へと移動することが好ましい。
【0015】
このような構成によると、シリンダ駆動機構は第3空気室をさらに有しているため、速やかにシリンダを第2の位置に移動させることができる。これにより、空気消費量を低減することができる。
【0016】
また、該シリンダ駆動機構は、該ハウジングに規定され該トリガの動きと連動して該第1空気室と連通する第4空気室をさらに有し、該第4空気室が該第1空気室と連通した時、該シリンダは該第2の位置から該第1の位置へと移動することが好ましい。
【0017】
このような構成によると、簡易な構造によりシリンダを移動させることができる。
【0018】
また、該第4空気室には該シリンダを第2の位置から第1の位置へと付勢する付勢部材が配置されていることが好ましい。
【0019】
このような構成によると、付勢部材の付勢力を調整することにより、トリガの動きとシリンダの移動のタイミングとを調整することができる。これにより、最も空気のロスが少ないタイミングでシリンダを移動させることができる。
【0020】
また、該ハウジング内に規定され、該トリガの動きと連動して該第1空気室と連通する第5空気室をさらに有し、該第5空気室と該第1空気室とが連通した時、該メインバルブは該第1空気室と該シリンダとの連通を遮断し、該第4空気室と該第5空気室とは常時連通していることが好ましい。
【0021】
このような構成によると、第4空気室はトリガの動きと連動して第1空気室と連通するため、簡易な構成によりトリガの動きとシリンダの動きとを連動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、空気消費量を削減しピストンの打込力を上げた打込機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の釘打機の全体図
【図2】本発明の実施の形態の釘打機の部分断面図
【図3】本発明の実施の形態の釘打機のヘッドバルブが上昇したときの部分断面図
【図4】本発明の実施の形態の釘打機のピストンとバンパとが当接してシリンダが上死点に位置したときの部分断面図
【図5】本発明の実施の形態の釘打機のヘッドバルブがシリンダを押下げたときの部分断面図
【図6】従来の釘打機の全体図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図1から5を参照して説明する。本発明の打込機の一例である釘打機1は、止具である釘11を打ち込む工具であり、その動力として圧縮空気を用いている。
【0025】
釘打機1は、図1に示すように、ハウジング2と、ハウジング2に収容されるシリンダ3と、シリンダ3に収容されるピストン4と、ハウジング2に収容されシリンダ3と当接する当接位置とシリンダ3と離間した離間位置との間を移動可能なヘッドバルブ5と、ハウジング2から延出するノーズ部6と、から構成されている。ハウジング2は、ハウジング2の一方に位置するハンドル2Aを備えている。図1において、ハンドル2Aがハウジング2から延出している方向を後方と定義し、逆を前方と定義する。ハウジング2からノーズ部6が延出する方向を下方向と定義し、逆を上方向と定義する。また、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と定義する(図1の紙面手前側が左方向、紙面奥側が右方向)。
【0026】
図示しない圧縮機からの圧縮空気を蓄えるためにハンドル2A及びハウジング2内に蓄圧室2aが形成されている。蓄圧室2aは図示しないエアホースを介して圧縮機に接続される。ハウジング2の上部には、外部と連通する排気口2bが形成されている。蓄圧室2aは、本発明の第1空気室に相当する。
【0027】
ハンドル2Aの基部には、作業者によって操作されるトリガ12と、ノーズ部6の下端から突き出しトリガ12近傍まで延びたプッシュレバー13と、後述するヘッドバルブ5に連通して圧縮空気を送排気する切替弁であるトリガバルブ部14と、トリガ12の動作をトリガバルブ部14に伝えるプランジャ15と、が設けられている。プッシュレバー13は、ハウジング2からノーズ部6側に付勢されてノーズ部6に沿って上下方向に移動可能に構成される。ハウジング2には、制御通路14aが形成されており、トリガバルブ部14は制御通路14aを介して後述のシリンダ付勢室33及び後述のヘッドバルブ室51と繋がっている。トリガ12の引き操作と、プッシュレバー13の被打込材への押し当て操作との両方が行われた時に、トリガバルブ部14のプランジャ15が押し上げられるように構成される。
【0028】
シリンダ3は略円筒形を成しており、ピストン4によってシリンダ上室37(図3)と、シリンダ下室38とに区分されている。図2に示すように、シリンダ3の上下方向における略中央部には、シリンダ3の外周面から半径方向外方に突出するフランジ部31が設けられている。フランジ部31には、ハウジング2と摺接する外周面31Aが設けられている。フランジ部31の上方には、環状であって、ハウジング2に固定されているシリンダプレート32が設けられている。シリンダプレート32は、内周面がシリンダ3の外周と摺動可能に当接している。フランジ部31の直下には、ハウジング2からシリンダ3の半径方向内方に突出する壁部2Bが設けられシリンダ3の外周面に当接している。シリンダ3は、壁部2Bに対して摺動可能である。
【0029】
フランジ部31の上方には、シリンダ3の外周面とフランジ部31とハウジング2とシリンダプレート32とによってシリンダ付勢室33が形成されており、フランジ部31の下方には、シリンダ3の外周面とフランジ部31と壁部2Bとによってシリンダ駆動室34が形成されている。シリンダプレート32には、蓄圧室2aとシリンダ付勢室33との連通を遮断するための2つのOリング32A、32Bが設けられている。フランジ部31の外周面31Aにはシリンダ付勢室33とシリンダ駆動室34との連通を遮断するためのOリング31Bが設けられている。壁部2Bにはシリンダ駆動室34と後述の戻り空気室36との連通を遮断するためのOリング2Cが設けられている。シリンダ付勢室33は、制御通路14aを介してトリガバルブ部14と繋がっている。シリンダ付勢室33には、一端がシリンダプレート32と当接し他端がフランジ部31と当接してフランジ部31を下方に付勢するバネ35が設けられている。シリンダ3には、シリンダ駆動室34とシリンダ3とを連通する空気通路34aが形成されている。フランジ部31と、シリンダ付勢室33と、シリンダ駆動室34と、バネ35と、が本発明のシリンダ駆動機構に相当する。シリンダ付勢室33が本発明の第4空気室に相当し、シリンダ駆動室34が本発明の第3空気室に相当する。
【0030】
シリンダ3は、ヘッドバルブ5が離間位置に位置した状態で、フランジ部31の上面がシリンダプレート32と当接するとともにシリンダ3の上端とヘッドバルブ5とが当接した上死点と(図4)、フランジ部31の下端とハウジング2とが当接するとともにシリンダ3の下端と後述のバンパ43とが当接した下死点と(図3)、の間を上下方向に移動可能である。上死点が本発明の第2の位置に相当し、下死点が本発明の第1の位置に相当する。
【0031】
シリンダ3下部外周には、ピストン4を初期状態(図1)に復帰させるための圧縮空気を貯める戻り空気室36が形成されている。シリンダ3下部には戻り空気室36に連通している空気通路3aと、空気通路3aの直下の空気通路3bとが形成されている。詳細には、図4に示すように、ピストン4が後述のバンパ43と当接してシリンダ3が上死点に移動したとき、シリンダ上室37と戻り空気室36とが連通するような位置に空気通路3aが形成され、シリンダ下室38と戻り空気室36とが連通するような位置に空気通路3bが形成される。戻り空気室36の容積は、シリンダ付勢室33よりも大きくなるように構成されている。戻り空気室36が本発明の第2空気室に相当する。
【0032】
ピストン4は、シリンダ3内を上下方向に摺動可能であって、下方に延出するドライバブレード41が固定されている。ピストン4の外周には、シリンダ上室37とシリンダ下室38との連通を遮断するピストンリング42が嵌合されている。シリンダ3の下方には釘11を打込んだ後のピストン4の余剰エネルギーを吸収するためのバンパ43が設けられている。バンパ43は、ウレタンやニトリルゴム(NBR)といった弾性体である。
【0033】
ヘッドバルブ5は、シリンダ3の上側に配置されている。ハウジング2には、ヘッドバルブ5が収容されるヘッドバルブ室51が形成されており、ヘッドバルブ室51にはヘッドバルブ5を下方に付勢するヘッドバルブスプリング52が設けられている。ヘッドバルブ5の内部には、ヘッドバンパ53が設けられている。ヘッドバンパ53は、ヘッドバルブ5が離間位置(図3)にあるときには蓄圧室2aと外部とを遮断している。ヘッドバルブ5には、排気口2bと連通可能な空気通路51aが形成されている。ヘッドバルブ室51は、制御通路14aを介してトリガバルブ部14及びシリンダ付勢室33と連通している。図1に示す初期状態では、ヘッドバルブ室51は圧縮空気で満たされており、ヘッドバルブ5はヘッドバルブ室51の圧縮空気とヘッドバルブスプリング52とによって下側に付勢されている。ヘッドバルブスプリング52がヘッドバルブ5を下方に付勢する力は、蓄圧室2aの圧縮空気がヘッドバルブ5を上方向に押上げる力よりも小さい。従って、ヘッドバルブ室51の圧縮空気が放出されて大気圧となった時、ヘッドバルブ5はヘッドバルブスプリング52の付勢力に抗して上方向に移動する。ヘッドバルブ室51は、本発明の第5空気室に相当する。
【0034】
図1に示すように、ノーズ部6は、ハウジング2の下端に位置し、ドライバブレード41及び釘11を案内する案内路61が形成されている。案内路61の最下端位置には釘11が射出される射出孔が規定されている。ノーズ部6の後方には、図示せぬ釘が複数本束ねられて連結された釘の束を内蔵するマガジン装置62が設けられている。マガジン装置62には、マガジン63に装填された釘11を順次案内路61内に給送するネイルフィーダが設けられている。
【0035】
次に、釘打機1の動作について説明する。
【0036】
図示していないエアホースをつなぐと、蓄圧室2aに圧縮空気が蓄積され、その一部はトリガバルブ部14及び制御通路14aを介してヘッドバルブ室51及びシリンダ付勢室33へと流入する。ヘッドバルブ室51へ送られた圧縮空気はヘッドバルブ5を下方に押下げることでヘッドバルブ5とシリンダ3をさらに密着させ、シリンダ3に圧縮空気が流入することを防止する。シリンダ3は、ヘッドバルブ5、バネ35、及びシリンダ付勢室33の圧縮空気によって下側に付勢され、下死点に位置している。
【0037】
作業者がプッシュレバー13を被打込材に押し付けた状態でトリガ12を引くと、プランジャ15が押上げられてトリガバルブ部14が制御通路14aを外気と連通させ、ヘッドバルブ室51及びシリンダ付勢室33が大気圧となる。蓄圧室2aに蓄えられた圧縮空気とヘッドバルブ室51との差圧によって、ヘッドバルブ5が上に移動する。これにより、蓄圧室2aに蓄えられた圧縮空気がシリンダ上室37に流れ込んでピストン4を押下げて、図2に示す状態から図3に示す状態となる。このとき、シリンダ3は、バネ35の付勢力により下死点に位置している。
【0038】
ピストン4が、空気通路34aを通過すると、シリンダ上室37内の圧縮空気がシリンダ駆動室34に流入し、フランジ部31を上方向に押圧する。さらに、ピストン4が降下してバンパ43に当接し、ピストン4の側面によって空気通路3aが塞がれる。シリンダ駆動室34の圧縮空気によって、シリンダ3がバネ35の付勢力に抗して上死点に移動する。図4に示すように、シリンダ3が上死点に移動することにより、シリンダ上室37と蓄圧室2aとが遮断されるとともに、空気通路3aを介してシリンダ上室37と戻り空気室36とが連通可能となる。矢印Aに示すようにシリンダ上室37の圧縮空気が戻り空気室36に流入する。このとき、外周面31Aがシリンダ付勢室33の制御通路14aの開口の一部を塞いでいる。このようなピストン4の移動によって、釘11が被打込材に打込まれる。本実施の形態では、ピストン4がバンパ43と当接したときに戻り空気室36への圧縮空気の流入が開始され、シリンダ上室37内に存在する圧縮空気のみが戻り空気室36に流入する。
【0039】
作業者がトリガ12を戻すと、プランジャ15が初期位置に戻り圧縮空気が制御通路14aを介してシリンダ付勢室33及びヘッドバルブ室51に供給される。これにより、図5に示すように、ヘッドバルブ5が下方向に押下げられて、ヘッドバルブ5とシリンダ3とが一体となって下方向に移動する。これにより、シリンダ3は下死点に移動し、シリンダ上室37と戻り空気室36とが遮断される。それとほぼ同時もしくはその後、シリンダ上室37が空気通路51aを介して排気口2bと連通して、シリンダ上室37は大気圧となる。詳細には、シリンダ上室37と排気口2bとの連通するタイミングがシリンダ上室37と戻り空気室36の遮断のタイミングより後もしくはほぼ同時になるように、ヘッドバンパ53の上下方向の長さはヘッドバルブ5の移動距離よりも僅かに短く設定されている。シリンダ上室37が大気圧となることにより、戻り空気室36に蓄えられた圧縮空気は空気通路3bを介してシリンダ下室38に流入しピストン4を上方向に押上げ、図1に示す初期状態となる。
【0040】
釘打機1において、ヘッドバルブ室51に圧縮空気が充填されたときシリンダ付勢室33にも圧縮空気が充填されると、ヘッドバルブ5が下降するよりも早くシリンダ3が下死点に移動してしまう場合がある。そうすると、シリンダ3とヘッドバルブ5とが離間してシリンダ上室37と蓄圧室2aとが連通してしまうため、圧縮空気がシリンダ上室37に流入し空気消費量が増加してしまう。しかし、本実施の形態では、図4に示すように、シリンダ3が上死点に位置しているときは外周部31Aが制御通路14aを部分的に塞いでいるため、この状態でシリンダ駆動室34に圧縮空気が流入しても急激な圧力上昇が抑制される。これにより、圧縮空気が過剰にシリンダ上室37に流入することを防止し確実に空気消費量の低減を図ることができる。
【0041】
このような構成によると、ヘッドバルブ5がシリンダ上室37と蓄圧室2aとを連通させて蓄圧室2aの圧縮空気がシリンダ上室37に流入したとき、シリンダ3が下死点にあってシリンダ上室37と戻り空気室36とが遮断されているため、蓄圧室2aからシリンダ上室37に流れ込んだ圧縮空気が戻り空気室36に流れこまない。シリンダ3が上死点に移動した時、シリンダ上室37と蓄圧室2aとの連通が遮断された状態でシリンダ上室37の圧縮空気が戻り空気室36に流れ込む。これにより、シリンダ上室37内に存在する圧縮空気のみが戻り空気室36に流入するため、余剰に圧縮空気が戻り空気室36に流れ込むことを防止し、空気消費量の低減を図ることができる。さらに、ピストン4がバンパ43と当接するまでシリンダ上室37と戻り空気室36とは連通しないため、ピストン4下降時の戻り空気室36の圧力上昇を防止することができる。これにより、釘打機1の打込力を上げることができる。
【0042】
このような構成によると、シリンダ上室37内の空気が戻り空気室36に流れ込み、打込後、その空気がシリンダ下室38に流れ込む。このシリンダ下室38に流れ込んだ空気は、ピストン4を戻すために有効利用される。これにより、釘打機1の空気消費量を低減することが可能になる。
【0043】
このような構成によると、簡易な構造によりシリンダ3を移動させることができる。
【0044】
このような構成によると、バネ35の付勢力を調整することにより、トリガ12の動きとシリンダ3の移動のタイミングとを調整することができる。これにより、最も空気のロスが少ないタイミングでシリンダ3を移動させることができる。
【0045】
このような構成によると、シリンダ付勢室33はトリガ12の動きと連動して蓄圧室2aと連通するため、簡易な構成によりトリガ12の動きとシリンダ3の動きとを連動させることができる。
【0046】
このような構成によると、ピストン4が釘11を打込んだ時(ピストン4とバンパ43とが当接した時)にシリンダ3を移動させてシリンダ上室37と蓄圧室2aとを遮断するため、釘11の打込み終了までピストン4に十分なエネルギーを与えることができる。
【0047】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲で記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば、メインバルブの一例としてシリンダの上方に位置するヘッドバルブを採用したが、シリンダ上方の側面にメインバルブを配置する構造であってもよい。
【0048】
上述した実施の形態では、シリンダ付勢室33にバネ35が設けられていたが、バネ35が無くてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1・・釘打機
2・・ハウジング
3・・シリンダ
4・・ピストン
5・・ヘッドバルブ
6・・ノーズ部
11・・釘
12・・トリガ
14・・トリガバルブ部
14a・・空気通路
31・・フランジ部
33・・シリンダ付勢室
34・・シリンダ駆動室
35・・バネ
36・・戻り空気室
37・・シリンダ上室
38・・シリンダ下室
41・・ドライバブレード
43・・バンパ
51・・ヘッドバルブ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を蓄える第1空気室が規定されたハウジングと、
該ハウジングに設けられたトリガと、
該ハウジングに収容され第1の位置と第2の位置との間を移動可能なシリンダと、
該シリンダに摺動可能に収容されたピストンと、
該ハウジングに収容され該ピストンと当接可能であって、該シリンダと該ピストンと共にシリンダ下室を画成するバンパと、
該シリンダと該ピストンと共にシリンダ上室を画成し、該トリガの動きと連動して該シリンダ上室と該第1空気室との連通を制御するメインバルブと、
該シリンダを該ピストンの摺動方向に移動させるシリンダ駆動機構と、を有し
該ハウジングには、該シリンダと連通可能であって、該ピストンの動きと連動して該シリンダ内の空気を蓄える第2空気室が規定され、
該シリンダ駆動機構は、該ハウジングに規定され該シリンダと連通している第3空気室をさらに有し、該シリンダ上室と該第3空気室とが連通することによって該シリンダは該第1の位置から該第2の位置へと移動することを特徴とする打込機。
【請求項2】
圧縮空気を蓄える第1空気室が規定されたハウジングと、
該ハウジングに設けられたトリガと、
該ハウジングに収容され第1の位置と第2の位置との間を移動可能なシリンダと、
該シリンダに摺動可能に収容されたピストンと、
該ハウジングに収容され該ピストンと当接可能であって、該シリンダと該ピストンと共にシリンダ下室を画成するバンパと、
該シリンダと該ピストンと共にシリンダ上室を画成し、該トリガの動きと連動して該シリンダ上室と該第1空気室との連通を制御するメインバルブと、
該シリンダを該ピストンの摺動方向に移動させるシリンダ駆動機構と、を有し
該ハウジングには、該シリンダと連通可能であって、該ピストンの動きと連動して該シリンダ内の空気を蓄える第2空気室が規定され、
該シリンダ駆動機構は、該メインバルブが該シリンダ上室と該第1空気室とを連通した後に、該シリンダを該第1の位置から該第2の位置に移動させ、該第1の位置は該シリンダ上室と該第2空気室とが遮断された位置であり、該第2の位置は該シリンダ上室と該第2空気室とが連通可能であるとともに該シリンダ上室と該第1空気室とが遮断された位置であることを特徴とする打込機。
【請求項3】
該第2空気室と該シリンダ下室とは常時連通していることを特徴とする請求項1に記載の打込機。
【請求項4】
該第2空気室と該シリンダ下室とは常時連通していることを特徴とする請求項2に記載の打込機。
【請求項5】
該シリンダ駆動機構は、該ハウジングに規定され該シリンダと連通している第3空気室をさらに有し、該シリンダ上室と該第3空気室とが連通することによって該シリンダは該第1の位置から該第2の位置へと移動することを特徴とする請求項2または4に記載の打込機。
【請求項6】
該シリンダ駆動機構は、該ハウジングに規定され該トリガの動きと連動して該第1空気室と連通する第4空気室をさらに有し、該第4空気室が該第1空気室と連通した時、該シリンダは該第2の位置から該第1の位置へと移動することを特徴とする請求項3または5に記載の打込機。
【請求項7】
該第4空気室には該シリンダを第2の位置から第1の位置へと付勢する付勢部材が配置されていることを特徴とする請求項6に記載の打込機。
【請求項8】
該ハウジング内に規定され、該トリガの動きと連動して該第1空気室と連通する第5空気室をさらに有し、該第5空気室と該第1空気室とが連通した時、該メインバルブは該第1空気室と該シリンダとの連通を遮断し、該第4空気室と該第5空気室とは常時連通していることを特徴とする請求項7に記載の打込機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43234(P2013−43234A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181258(P2011−181258)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】