説明

払拭体挿入部回動式掃除具

【目的】ハンドルを把持して什器等の狭い空間の清掃を行う際して清掃面上を払拭体を楽に回転操作可能にして簡易且つ軽快に清掃作業を行うことができる清掃具を提供することを目的としている。
【構成】挿着軸体は、連結部材20の両端側で横方向に連結された一対の回転軸体10、11と、夫々の回転軸体10、11に外嵌された一対の中空体12、13とからなる。各回転軸体及び各中空体の2重構成により、中空体12、13を夫々独立して自転可能に各回転軸体10、11に枢支し、各回転軸体10、11を連結部材20に対して左右対称状に配置し、長柄ハンドル2に対してT字形又は略T字形に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面や壁面を清掃するための払拭体の袋部に払拭体挿入部を挿脱自在にした清掃具に関し、特には、払拭体挿入部を回動自在にした払拭体挿入部回動式掃除具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の清掃具としてハンディタイプや箒状の長柄ハンドル型のものが広く利用されている。例えば、特許文献1には長柄ハンドル型の清掃具が開示されている。
図13は長柄ハンドル型の清掃具を示す。図13の(13A)及び(13B)は夫々、パイル製払拭体40、同図(13B)はパイル製払拭体40を固定し保持する長柄保持具41を示す。
【0003】
払拭体40は、楕円状の基布42と、基布42の下面に植設された多数のパイル44からなる。基布42は綿繊維や合成繊維を網目状に織成して構成され、基布42の上面には同繊維種からなる袋状差込部43、43が設けられている。
【0004】
長柄保持具41は、基布42に装着される装着部45と、手動操作するためのパイプ状の柄47とからなり、柄47の先端側にはグリップ48が設けられている。柄47の先端はジョイント部46を介して装着部45に枢支されている。装着部45はジョイント部46を突設した略楕円状の長円板からなる。装着部45の両端部を袋状差込部43、43に挿入することにより、払拭体40が長柄保持具41に装着され、長柄ハンドル型の清掃具を構成する。殊に、払拭体を定期的に取り替えてメーカーなどからユーザーにレンタルする場合には、払拭体40をハンドルから分離可能にしておく必要があるが、係る構成の掃除具においては、払拭体40の取替えや洗浄時の作業を簡便にするために払拭体40をハンドル先端の装着部45に対し挿脱自在にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−270630号公報
【特許文献2】特開平10−328108号公報
【特許文献3】特開2002−65545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の掃除具において払拭体40を装着部45に装着した状態では、大半のパイル44は装着部45の裏側に位置する。しかも、ジョイント部46を介して柄47の先端は装着部45に対して固定、保持され、装着部45の長軸の回りに動かせる自由度を持たない。
しかしながら、この従来の掃除具においては、柄47を装着部45の長手方向に傾けたりすることはできるものの、装着部45の長軸の回りに回動することができないため、清掃作業者は、パイル44の払拭面が床面等に当たるように、常時、柄47を動かす力に気を配って清掃作業を行う必要があり、円滑な清掃作業を妨げるといった問題があった。
【0007】
図14は家具等の什器などの隙間51を上記掃除具で掃除するとき、床面49に対して柄47を寝かして清掃する状態を示す。図15の(15A)は寝かせ角度θで柄47を傾けた掃除具の側面を示す。
該隙間の清掃に際しては床面49に対する寝かせ角度θを45°以下にする場合が多い。このような寝かせ状態で隙間51の隅々を清掃するには、柄47を把持して矢印50に示すように床面49上をなぞるように回転させながら動かしていく必要がある。ジョイント部46に鉛直に柄47を立てるときは鉛直軸の回りに柄47を回せば、それに追随して払拭体40も回転していく。しかしながら、袋状差込部43、43に装着部45を密着状態で挿着しているため、係る寝かせ状態では、図15の(15B)に示すように、矢印50の向きに柄47を持って回動しても、払拭体40と装着部45が一体的に動いてしまい、回動方向前方側の床面部分で払拭体40の動きが止まり、(15B)の破線で示すように、床面との摩擦抵抗力を受けて回動開始側の床面部分で払拭体40が浮き上って宙に浮き、円滑な回転操作を行うことができなかった。
【0008】
また、上記従来の掃除具の場合には、払拭体40への装着部45の装着状態で払拭体40に対してT字形に柄47を配置し、柄47を前後左右に回動自在にするために装着部45上にジョイント部46を形成している。しかしながら、ジョイント部46を装着部45上に形成しているために、回動連結点が装着部45上方に位置することなり、柄47を持って力を加えても、装着部45上を上滑りして前記回転操作を円滑に行うための力を装着部45に十分に与えにくいといった問題があった。
【0009】
特許文献2には、ローラ状に形成した清掃用モップのモップ軸を回動自在に支持した掃除具が開示されている。この清掃用モップにおいては、ワイヤをU字状に折り曲げた部分及びワイヤの各端部の夫々に組紐を嵌合させた後、U字状の内方に一定長さに切断された合成繊維束(清掃用糸条)を跨がせた状態でワイヤを撚り、ワイヤの先端部を内方に折り曲げて端部が組紐で覆われたモップ軸とし、該合成繊維束がこのモップ軸を中心として放射状に広がって形成されている。しかしながら、この清掃具では、ころがり摩擦を利用したローラ回転方式により清掃用モップを床平面に回転操作可能となるものの、モップ軸と一体に合成繊維束をローラ形態様に形成しているため、ワイヤ材料費やワイヤ撚り等の加工費を要するうえ、使用後には清掃用モップをモップ軸材ごと取り替える必要があり、合成繊維束だけ回収して再利用するといったレンタル製品に適用することができない。
【0010】
特許文献3には、モップ体の筒状基部に棒状ヘッド本体を套挿して装着したヘッドを形成し、次いで、このヘッドをヘッドホルダの一筒側部を縦に切り欠いた筒状クランプ本体の切り欠き部に押しつけて、その弾性により該切り欠き部を一旦広げて、ヘッド中央部を抱持させて組み立てられた清掃具が開示されている。この清掃具においては、ヘッド芯材としての棒状ヘッド本体に筒状基部を被せた状態で、ヘッドホルダである筒状クランプ本体の切り欠き部を把持させているので、回動連結点がヘッドの中心軸に近接させて、ヘッド操作に要する力をヘッドに与えやすくなっている。しかし、モップ体の筒状基部に棒状ヘッド本体を套挿するため、ヘッド芯材としての棒状ヘッド本体がモップ体と一体化して動いてしまい、床面との摩擦抵抗により、図13の場合と同様に、床面の回転清掃の際に、ヘッドの一端が床面から浮き上がり円滑な回転操作を行うことができない。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、ハンドルを把持して什器等の狭い空間の清掃を行う際して清掃面上を払拭体を楽に回転操作可能にして簡易且つ軽快に清掃作業を行うことができる清掃具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の第1の形態は、ハンドルの根元部に連結される連結部と、前記連結部から延出させた挿着軸体とからなり、前記挿着軸体を払拭体の袋部に挿着して収設した清掃具であって、前記ハンドルを回動自在に保持する回動軸部を前記連結部に設け、前記挿着軸体を前記袋部内で前記連結部に対して前記延出方向の軸回りに自転可能に枢支した清掃具である。
【0013】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記袋部内部に当接する突部を前記挿着軸体の外側面に形成した清掃具である。
【0014】
本発明の第3の形態は、第1又は第2の形態において、前記挿着軸体は、前記連結部の前記延出方向の両端側に連結された一対の回転軸体と、夫々の前記回転軸体に外嵌された一対の中空体とからなり、夫々の前記中空体を独立して自転可能に各回転軸体に枢支し、各回転軸体を前記連結部に対して左右対称状に配置して前記一対の回転軸体を前記ハンドルに対してT字形又は略T字形に設けた清掃具である。
【0015】
本発明の第4の形態は、第3の形態において、夫々の前記回転軸体の一端を前記連結部に固着した清掃具である。
【0016】
本発明の第5の形態は、第4の形態において、夫々の前記回転軸体が折曲自在に前記連結部に連結され、前記払拭体の前記袋部に挿着するときに前記一対の回転軸体を前記T字形又は略T字形に固定して剛性保持する保持機構と、前記袋部が脱離する方向に各回転軸体を折曲させて前記保持状態を解除する解除機構とを備えた清掃具である。
【0017】
本発明の第6の形態は、第1又は第2の形態において、前記挿着軸体は、前記連結部に一端が連結された軸心体と、前記軸心体に外嵌されて枢支された筒体とからなり、前記軸心体を前記ハンドルに対してL字形又は略L字形に設けた清掃具である。
【0018】
本発明の第7の形態は、第6の形態において、前記軸心体の前記一端を前記連結部に固着した清掃具である。
【0019】
本発明の第8の形態は、第7の形態において、前記軸心体を折曲自在に前記連結部に連結され、前記払拭体の前記袋部に挿着するときに前記軸心体を前記L字形又は略L字形に固定して剛性保持する保持機構と、前記袋部が脱離する方向に前記軸心体を折曲させて前記保持状態を解除する解除機構とを備えた清掃具である。
【0020】
本発明の第9の形態は、第1〜第8のいずれかの形態において、前記袋部の全周囲に払拭材を多数設けた清掃具である。
【0021】
本発明の第10の形態は、第1〜第9のいずれかの形態において、前記払拭材がパイルからなる清掃具である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の形態によれば、前記ハンドルを回動自在に保持する回動軸部を前記連結部に設け、前記挿着軸体を記袋部内部で前記連結部に対して前記延出方向の軸回りに自転可能に枢支したので、前記ハンドルを把持して什器等の狭い空間の清掃を行う際して、前記ハンドルを前記払拭体に対して鋭角に傾けて清掃面上を回転させるときに、前記ハンドルの動きに追随して、前記挿着軸体が前記袋部内部で自転しながら円弧を描くように円滑に回転操作することができ、簡易且つ軽快に清掃作業を行うことができる。しかも、前記ハンドルは前記連結部を介して前記挿着軸体と一体化されるため、前記挿着軸体の軸心回りに、つまり前後方向に傾動操作可能となり、更に、前記回動軸部により、前後方向と交差する左右方向に回動自在となるので、前記連結部と、前記連結部から延出させた払拭体挿入部としての前記挿着軸体とによって、前記ハンドルを把持して前後左右の方向に清掃操作を行える操作性に優れた清掃具を提供することができる。本発明に係る前記挿着軸体には、軽量化の点で中空体が好ましいが、中実体も使用することができ、また、軸体の断面形状も前記袋部内での自転を妨げないものであれば、円形に限らず、楕円形や多角形状のものを使用することができる。更に、本発明は長柄ハンドル型清掃具に限らず、ハンディタイプ等の短尺ハンドル型清掃具にも適用することができる。
【0023】
例えば、レンタル製品の場合には繰り返しの洗浄等によって前記袋部内部が伸びたりして、前記挿着軸体の挿着状態に緩みが生じて、前記回転清掃の際に前記挿着軸体が前後の動いて回動しにくくなるおそれも生ずる。そこで、本発明の第2の形態によれば、前記袋部内部に当接する突部を前記挿着軸体の外側面に形成したので、清掃面上での回転清掃の際に、前記ハンドルの動きに追随して前記突部が前記袋部内部に当接しながら、前記挿着軸体が前記袋部内部で自転しながら円弧を描くように回転操作することができ、簡易且つ軽快に清掃作業を行うことができる。
【0024】
本発明の第3の形態によれば、前記挿着軸体は、前記連結部の前記延出方向の両端側に連結された一対の回転軸体と、夫々の前記回転軸体に外嵌された一対の中空体とからなり、夫々の前記中空体を独立して自転可能に各回転軸体に枢支し、各回転軸体を前記連結部に対して左右対称状に配置して前記一対の回転軸体を前記ハンドルに対してT字形又は略T字形に設けたので、前記ハンドルを把持して什器等の狭い空間の清掃を行う際して、前記ハンドルを前記払拭体に対して鋭角に傾けて清掃面上を回転させるときに、前記ハンドルの動きに追随して、夫々の前記中空体が前記回転軸体による枢支によって前記袋部内部で自転しながら円弧を描くように回転操作することができ、簡易且つ軽快に清掃作業を行えるT字形又は略T字形清掃具を提供することができる。しかも、T字形又は略T字形清掃具において、払拭体挿入部としての前記挿着軸体を、前記一対の回転軸体と、夫々の前記回転軸体に外嵌された一対の前記中空体とから構成されるので、簡単且つ安価な構造により払拭体挿入部を回動自在にすると共に、ハンドルの回動機構を一体的に設けて傾動可能にすることができる。
【0025】
本発明の第4の形態によれば、夫々の前記回転軸体の一端を前記連結部に固着することにより、前記回転軸体に外嵌された前記中空体が前記回転軸体の外周に沿って摺接させる枢支構造を簡単に構成することができるので、円滑な前記回転操作が可能なT字形又は略T字形清掃具の低価格化を実現することができる。
【0026】
本発明の第5の形態によれば、夫々の前記回転軸体が折曲自在に前記連結部に連結され、前記払拭体の前記袋部に挿着するときに前記一対の回転軸体を前記T字形又は略T字形に固定して剛性保持する保持機構と、前記袋部が脱離する方向に各回転軸体を折曲させて前記保持状態を解除する解除機構とを備えるので、前記保持機構により、前記回転軸体の前記保持状態において、前記一対の回転軸体を前記T字形又は略T字形に固定して剛性保持して、前記ハンドルの動きに追随して、夫々の前記中空体の前記袋部内部での自転作用を円滑に行わせて前記回転操作可能とし、使用後等においては前記解除機構により前記保持状態を解除して前記袋部が脱離する方向に前記回転軸体を折曲させて、前記払拭体を直に掴んで外さなくとも簡便に離脱させることができ、簡易且つ軽快に清掃作業を行え、しかも前記袋部にワンタッチで払拭体挿入部を挿脱することができるT字形又は略T字形清掃具を提供することができる。
【0027】
本発明は、T字形又は略T字形清掃具に限らず、前記ハンドルの根元部に対して前記挿着軸体がL字形又は略L字形に連結される掃除具に適用することができる。即ち、本発明の第6の形態によれば、前記挿着軸体は、前記連結部に一端が連結された軸心体と、前記軸心体に外嵌されて枢支された筒体とからなり、前記軸心体を前記ハンドルに対してL字形又は略L字形に設けたので、前記ハンドルを把持して什器等の狭い空間の清掃を行う際して、前記ハンドルを前記払拭体に対して鋭角に傾けて清掃面上を回転させるときに、前記ハンドルの動きに追随して、前記筒体が前記軸心体による枢支によって前記袋部内部で自転しながら円弧を描くように回転操作することができ、簡易且つ軽快に清掃作業を行えるL字形又は略L字形清掃具を提供することができる。しかも、L字形又は略L字形清掃具において、払拭体挿入部としての前記挿着軸体を、前記軸心体と、前記軸心体に外嵌された前記筒体とから構成されるので、簡単且つ安価な構造により払拭体挿入部を回動自在にすると共に、ハンドルの回動機構を一体的に設けて傾動可能にすることができる。
【0028】
本発明の第7の形態によれば、前記軸心体の前記一端を前記連結部に固着することにより、前記軸心体に外嵌された前記筒体が前記軸心体の外周に沿って摺接させる枢支構造を簡単に構成することができるので、円滑な前記回転操作が可能なL字形又は略L字形清掃具の低価格化を実現することができる。
【0029】
本発明の第8の形態によれば、前記軸心体を折曲自在に前記連結部に連結され、前記払拭体の前記袋部に挿着するときに前記軸心体を前記L字形又は略L字形に固定して剛性保持する保持機構と、前記袋部が脱離する方向に前記軸心体を折曲させて前記保持状態を解除する解除機構とを備えるので、前記保持機構により、前記軸心体の前記保持状態において、前記軸心体を前記L字形又は略L字形に固定して剛性保持して、前記ハンドルの動きに追随して、前記筒体の前記袋部内部での自転作用を円滑に行わせて前記回転操作可能とし、使用後等においては前記解除機構により前記保持状態を解除して前記袋部が脱離する方向に前記軸心体を折曲させて、前記払拭体を直に掴んで外さなくとも簡便に離脱させることができ、簡易且つ軽快に清掃作業を行え、しかも前記袋部にワンタッチで払拭体挿入部を挿脱することができるL字形又は略L字形清掃具を提供することができる。
【0030】
本発明の第9の形態によれば、前記袋部の全周囲に払拭材を多数設けた払拭体を挿着して、前記払拭体の中心軸回り約360°に自由に動かして、清掃方向に制約されずに円滑に清掃作業を行える清掃具を実現することができる。
本発明の払拭体には、例えば、織布又は不織布の基布に、縫製加工や溶着加工等により中心軸回りに全周にわたり払拭材を植設した払拭体を使用することができる。本発明における払拭材には、ナイロン、綿、ポリエステル等の素材を使用することができる。
【0031】
本発明の第10の形態によれば、パイルの払拭材を使用して、床面等の清掃面を隅々まで疲労せずに円滑に清掃することができる清掃具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る清掃具の外観斜視図である。
【図2】前記清掃具を床面F上に鉛直に立てた状態を示す正面図である。
【図3】前記清掃具の長柄ハンドル2全体組み立て状態図及び前記清掃具における払拭体1の挿着を説明するための図である。
【図4】前記清掃具の挿着軸体を長柄ハンドル2に対してT字形に開脚保持した保持状態を示す外観斜視図である。
【図5】前記保持状態の正面図及び背面図である。
【図6】前記保持状態の上面図、下面図及び側面図である。
【図7】前記清掃具の挿着軸体を閉じた閉脚状態を示す正面図である。
【図8】連結部材20の保持機構及び解除機構を示す横断面図及び挿着軸体の中空体12、13の正面図である。
【図9】前記清掃具の払拭体1の縦断面構造を模式的に示す図である。
【図10】払拭体1の概略側面図及び上面図である。
【図11】長柄ハンドル2の伸縮調整機構及びグリップ5の取着構造を示す断面構成図である。
【図12】前記清掃具の回転操作機能の計測結果を示す表である。
【図13】従来の清掃具を示す外観図である。
【図14】従来の清掃具を寝かして清掃する状態を示す概略側面図である。
【図15】従来の清掃具における回転操作の困難性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る清掃具の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る長柄ハンドル型清掃具の全体を示す。図2は図1の清掃具を床面F上に鉛直に立てた状態を示す。
この清掃具は払拭体1、清掃作業時に把持する伸縮自在型長柄ハンドル2及び挿着軸体からなる。長柄ハンドル2は内径の異なる1組の長尺状の樹脂製パイプ部材からなる内パイプ3と外パイプ4からなる。内パイプ3と外パイプ4の間には、後述する伸縮調整機構のカバー部材6が配置されている。外パイプ4の開放端側にはグリップ5が取着されている。内パイプ3の下端は連結部材21のパイプ部分21aに嵌着されている。連結部材21は、挿着軸体が取着される連結部材20の中央上部に設けた回動軸受9を介して、矢印Aに示すように、挿着軸体の軸心に沿って左右に回動自在に連結されている。
【0034】
図3の(3A)は長柄ハンドル2の全体組み立て状態を示す。図3の(3B)は本実施形態に係る長柄ハンドル型清掃具において払拭体1の挿着を説明するための図である。
図4は挿着軸体を長柄ハンドル2に対してT字形に開脚保持した保持状態を示す。図5の(5A)及び(5B)は夫々、前記保持状態の正面、背面を示す。図6の(6A)、(6B)及び(6C)は夫々、前記保持状態の上面、下面、側面を示す。図7は挿着軸体を長柄ハンドル2の軸方向に閉じた閉脚状態を示す。
【0035】
挿着軸体は、連結部材20の両端に対して横方向に延出された一対の回転軸体10、11と、回転軸体10、11夫々に外嵌された一対の中空体12、13とからなる。各中空体12、13は独立して自転可能に各回転軸体10、11に枢支されている。各回転軸体10、11は連結部材20に対して左右対称状に配置されている。
【0036】
各回転軸体10、11の連結端14、15は、回転軸体の軸心に直交する回動軸19により折曲自在に連結部材20に連結されている。連結部材20には、挿着軸体の払拭体1への挿着時に一対の回転軸体10、11をT字形に固定して剛性保持する保持機構と、払拭体1を脱離させる方向に各回転軸体10、11を折曲させて前記保持状態を解除する解除機構が内蔵されている。
【0037】
図8の(8A)及び(8B)は連結部材20の保持機構及び解除機構を示す。
回転軸体10、11には軽量化のために中空部10a、11aが内設されており、夫々の連結端14、15には貫通穴10b、11b及び係合部10c、11cが形成されている。連結部材20の両端側には縦溝20cが形成されている。連結部材20の端部には貫通穴が形成され、各貫通穴を通じて回動軸19が貫通穴10b、11bに挿着されて回動軸受部が形成され、各回転軸体10、11の折曲機構を構成している。連結部材20の中央にはロックボタン18が収設されている。ロックボタン18の頭部は連結部材20の中央の凹部20bより露出している。ロックボタン18の下方には係合脚部18aが形成され、内部にコイルバネ22が配置されており、コイルバネ22の押圧力を受けて該頭部が凹部20bに露出する向きに付勢されている。
【0038】
図8の(8A)及び(8B)は夫々、ロック解除状態、ロック状態を示す。図4〜図6に示すように、回転軸体10、11を水平に開いて、連結部材20の軸心方向に回転軸体10、11を配置したとき、ロックボタン18の係合脚部18aがコイルバネ22の押圧力を受けて凹部20b側に上昇して、係合部10c、11cと係合する((8B)参照)。この係合ロックにより、回転軸体10、11を水平に開いた、図4等に示したT字形の保持状態を維持することができる。この保持状態で払拭体1を挿着軸体に挿着することにより図1の掃除具の使用状態が完成する。
【0039】
払拭体1を外すときには、長柄ハンドル2を鉛直方向に支えた状態で、ロックボタン18の頭部をコイルバネ22の押圧力に抗して押し込むと、ロックボタン18の係合脚部18aと係合部10c、11cとの係合が解除され((8A)参照)、図7に示すように、回転軸体10、11は自重により垂れ下がって、長柄ハンドル2の軸方向に沿って平行に回転軸体10、11が並置されるロック解除状態になる。図3の(3B)に示すように、上記のロック解除状態で払拭体1の後述の袋部23に回転軸体10、11を差し込んで、図2のように回転軸体10、11を左右に水平に拡げる操作だけで簡単に挿着することができる。上記のように、連結部材20の保持機構及び解除機構を用いて、払拭体1の挿脱作業をワンタッチで行うことができる。
【0040】
一対の中空体12、13は、夫々、回転軸体10、11外周に形成された縮径部10d、11dに自転可能に外嵌されている。中空体12、13の断面は、図8の(8C)に示すように円形である。中空体12、13及び回転軸体10、11は真円形でなくとも、楕円形や多角形状のものを使用することができる。縮径部10d、11dは中空体12、13の長さに対応して、回転軸体10、11外周に段差状に形成されている。従って、本実施形態における挿着軸体は、払拭体1の挿着状態において、連結部材20に対して水平に延出され、直線上に広げた回転軸体10、11の軸回りに、払拭体1の袋部23内で自転可能に枢支されている。
【0041】
図9は払拭体1の縦断面構造を模式的に示す。払拭体1は、片面側に多数のパイル(払拭材)群24が植設された一組の長手形状の基布25、26からなる。払拭体1の中央には開口部27が形成され、内部には袋状の袋部23が形成されている。袋部23は、基布25、26の基布面のうちパイル群24が植設されていない面を対面させて重ね合わせ、基布の周縁部を、その一部を開口して縫着して形成されている。図9の縦断面においては、開口部27の下端側の周縁部31を横糸29で縫着した状態が示されている。袋部23は、回転軸体10、11及び中空体12、13からなる挿着軸体を開口部27から挿着可能にしたT字形状を有し、袋部23の全外周にわたりパイル30が植設されている。基布の素材には、パイル群を保持する強度を必要とし、厚手のキャンバス布、木綿や合成化学繊維の帆布等の布材等を使用するのが好ましい。本実施形態では、パイル材及び基布材として無色のナイロン素材を使用している。
【0042】
図10は払拭体1の概略側面及び上面を示す。
各基布25、26の長手方向の一辺側中央部32の一部が切り欠いて切除されており、図10の(10A)に示すように、切除端は縁縫い33が施されて布端が解れないようにしている。袋部23の形成により、中央部32は挿着軸体の導入口、つまり開口部27となる。
同図(10B)は(10A)のB−B断面を模式的に示す。同図(10B)に示すように、各基布の端部34、35と36、37は、縫糸38により結着されて、裏返されて袋部23の内側に取り込まれている。袋部23の開口部27に隣接した各基布の周縁部39は横糸39aで縫着され、開口部27と対向した各基布の周縁部39bは横糸42で縫着されている。従って、袋部23には開口部27のみが開口され、その全外周にわたりパイル30が植設された状態になっている。なお、図10の(10B)においてはパイル群24の一断面を模式的に示し、パイル間に隙間があるようにみえるが、各パイルが大きな間隙もなく密集状に植設され、互いに絡み合っている。
【0043】
図11の(11A)は長柄ハンドル2の伸縮調整機構を示す。内パイプ3と外パイプ4の接合部において、内パイプ3の開口部にパイプボタン8の頭部が露出している。パイプボタン8は、樹脂弾性片からなり、該頭部と、それに一体化された中空押圧変形部8aと、該接合部に密着する係止部8eとからなる。中空押圧変形部8aには上下にバネ係止用突起8b、8cが形成されている。バネ係止用突起8b、8cの間にはコイルバネ8cが取り付けられている。外パイプ4の端部に設けた穴にパイプ抜止片6cが嵌入されて、その上からカバー部材6が外嵌され、外パイプ4が抜けないようにしている。カバー部材6は内パイプ3の開口部に対応して形成した穴6bにカバー抜止片6aが嵌着されて、外パイプ4に取着されている。
【0044】
上記伸縮調整機構において、コイルバネ8cの押圧力により、パイプボタン8の頭部が該開口部に嵌り込み、内パイプ3と外パイプ4との接合状態が保持される。長さを調整する際には、パイプボタン8の頭部を内側に押し込むことにより、コイルバネ8cの押圧力が解除されて、外パイプ4をカバー部材6と共に内パイプ3に沿って摺動させることができ、所望の長さ位置でパイプボタン8の頭部を露出させることによりその位置での長さをセットすることができる。
【0045】
図11の(11B)はグリップ5の取着構造を示す。外パイプ4の上端側に設けた穴4aにグリップ5下端側の開口部よりカバー兼用のグリップ抜止片7を嵌着することにより、グリップ5を外パイプ4の上端に取着している。
【0046】
上記構成の掃除具において、挿着軸体は、連結部材20の両端側で横方向に連結された一対の回転軸体10、11と、夫々の回転軸体10、11に外嵌された一対の中空体12、13とからなり、これらの2重構成により、中空体12、13を夫々独立して自転可能に各回転軸体10、11に枢支し、各回転軸体10、11を連結部材20に対して左右対称状に配置し、長柄ハンドル2に対してT字形又は略T字形に設けている。従って、長柄ハンドル2を把持して什器等の狭い空間の清掃を行う際して、長柄ハンドル2を払拭体1に対して鋭角に傾けて清掃面上を回転させるときに、長柄ハンドル2の動きに追随して、夫々の中空体12、13が回転軸体10、11による枢支機構によって袋部23内部で自転しながら円弧を描くように回転操作することができるので、簡易且つ軽快に清掃作業を行うことができる。しかも、連結部材20を介して各回転軸体10、11を水平配置して、袋部23への挿着されているので、長柄ハンドル2の回動連結点が各回転軸体10、11の水平軸に極めて接近して位置しており、長柄ハンドル2により加える力が的確に挿着軸体に与えることができ、前記枢支機構の自転機能と相乗して前記回転操作をより円滑に行うことができる。
更に、T字形又は略T字形清掃具において、払拭体挿入部としての前記挿着軸体を、一対の回転軸体10、11と、夫々の回転軸体10、11に外嵌された一対の中空体12、13とから構成されるので、簡単且つ安価な構造により払拭体挿入部を回動自在にすると共に、ハンドルの回動機構を一体的に設けて傾動可能にすることができる。
【0047】
図12は本実施形態に係る清掃具の回転操作機能の計測結果を示す。この計測に際しては、図13の従来との比較を行った。即ち、本実施形態に係る掃除具と図13の掃除具を用いて、床面に対してハンドルを寝かして清掃を試み、清掃有効面積を比較した。清掃有効面積100%は、清掃具を該回転操作して床全面を斑なく清掃可能になったことを表す。図12において「ヘッド」と表記しているのは、払拭体及び払拭体挿入部を意味し、「スリーブ」は中空体12、13を意味する。また、床面に対するハンドルの寝かせ角度を30°、45°及び60°で試行した。
【0048】
図14で説明した従来のヘッド固定の場合には、寝かせ角度が60°のときには、回転操作ができるものの、寝かせ角度が30°あるいは45°により傾斜させると、「ヘッド」が浮き上って清掃有効面積が65〜90%に減少した(図12の(1)参照)。一方、本実施形態に係る清掃具では、寝かせ角度を30°、45°及び60°のいずれにおいても円滑な回転操作が可能となり、清掃有効面積を100%に維持できた。このときの中空体12、13自体の回転角度も、寝かせ角度を60°、45°及び30°に急傾斜するにつれより大きくなり、中空体12、13の自転作用が円滑な回転操作に寄与していることがわかる(図12の(2)参照)。
なお、中空体12、13の断面形状を図8の(8D)に示すように、袋部23内部に当接する突部(リブ)12bを中空体12aの外側面に形成したものを使用して、同様の回転操作性を検証した。6個の突部12bは中空体12aの外周に沿って形成されている。この検証実験によれば、図12の(3)に示すように、清掃有効面積について、リブなしの中空体12、13と同様の良好な結果を得ることができた。従って、リブ付きの中空体12aを用いれば、例えば、レンタル製品の場合には繰り返しの洗浄等によって袋部23内部が伸びたりして、挿着軸体の挿着状態に緩みが生じている場合でも、ハンドルの動きに追随して突部(リブ)12bが袋部23内部に当接しながら袋部23内部で自転して円弧を描くように回転操作させることができる。リブには突部12bのように互いに離間したものの他に、スパイラル状に中空体12aの外側面に形成したもの等を使用することができる。
【0049】
本実施形態の清掃具は長尺状の清掃具の場合であるが、本発明は、短尺状の清掃具やハンディタイプの清掃具に適用することができ、また払拭材としては、パイルの他に、化学繊維材等を使用することができる。
【0050】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明に係る清掃具は、家庭や事務所や工場の床材、及び店舗の床などを清掃するときに用いられ、払拭体を定期的に取り替えてメーカーなどからユーザーにレンタルするようにしてもよいものである。
【符号の説明】
【0052】
1 払拭体
2 長柄ハンドル
3 内パイプ
4 外パイプ
4a 穴
5 グリップ
6 カバー部材
6a カバー抜止片
6b 穴
6c パイプ抜止片
7 グリップ抜止片
8 パイプボタン
8a 中空押圧変形部
8b バネ係止用突起
8c コイルバネ
8d バネ係止用突起
8e 係止部
9 回動軸受
10 回転軸体
10a 中空部
10b 貫通穴
10c 係合部
10d 縮径部
11 回転軸体
11a 中空部
11b 貫通穴
11c 係合部
11d 縮径部
12 中空体
12a 中空体
12b 突部
13 中空体
14 連結端
15 連結端
18 ロックボタン
19 回動軸
20 連結部材
20b 凹部
20c 縦溝
21 連結部材
21a パイプ部分
22 コイルバネ
23 袋部
24 パイル群
25 基布
26 基布
27 開口部
29 横糸
30 パイル
31 周縁部
32 中央部
33 縁縫い
34 端部
35 端部
36 端部
37 端部
38 縫糸
39 周縁部
39a 横糸
39b 周縁部
40 払拭体
41 長柄保持具
42 基布
43 袋状差込部
44 パイル
45 装着部
46 ジョイント部
47 柄
48 グリップ
49 床面
50 矢印
51 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの根元部に連結される連結部と、前記連結部から延出させた挿着軸体とからなり、前記挿着軸体を払拭体の袋部に挿着して収設した清掃具であって、前記ハンドルを回動自在に保持する回動軸部を前記連結部に設け、前記挿着軸体を前記袋部内で前記連結部に対して前記延出方向の軸回りに自転可能に枢支したことを特徴とする清掃具。
【請求項2】
前記袋部内部に当接する突部を前記挿着軸体の外側面に形成した請求項1に記載の清掃具。
【請求項3】
前記挿着軸体は、前記連結部の前記延出方向の両端側に連結された一対の回転軸体と、夫々の前記回転軸体に外嵌された一対の中空体とからなり、夫々の前記中空体を独立して自転可能に各回転軸体に枢支し、各回転軸体を前記連結部に対して左右対称状に配置して前記一対の回転軸体を前記ハンドルに対してT字形又は略T字形に設けた請求項1又は2に記載の清掃具。
【請求項4】
夫々の前記回転軸体の一端を前記連結部に固着した請求項3に記載の清掃具。
【請求項5】
夫々の前記回転軸体が折曲自在に前記連結部に連結され、前記払拭体の前記袋部に挿着するときに前記一対の回転軸体を前記T字形又は略T字形に固定して剛性保持する保持機構と、前記袋部が脱離する方向に各回転軸体を折曲させて前記保持状態を解除する解除機構とを備えた請求項4に記載の清掃具。
【請求項6】
前記挿着軸体は、前記連結部に一端が連結された軸心体と、前記軸心体に外嵌されて枢支された筒体とからなり、前記軸心体を前記ハンドルに対してL字形又は略L字形に設けた請求項1又は2に記載の清掃具。
【請求項7】
前記軸心体の前記一端を前記連結部に固着した請求項6に記載の清掃具。
【請求項8】
前記軸心体を折曲自在に前記連結部に連結され、前記払拭体の前記袋部に挿着するときに前記軸心体を前記L字形又は略L字形に固定して剛性保持する保持機構と、前記袋部が脱離する方向に前記軸心体を折曲させて前記保持状態を解除する解除機構とを備えた請求項7に記載の清掃具。
【請求項9】
前記袋部の全周囲に払拭材を多数設けた請求項1〜8のいずれかに記載の清掃具。
【請求項10】
前記払拭材がパイルからなる請求項1〜9のいずれかに記載の清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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