説明

抄紙ワイヤー汚れ防止剤および抄紙ワイヤー汚れ防止方法

【課題】抄紙機のワイヤーパートにおいて抄紙ワイヤーへの汚れの付着を防止するための抄紙ワイヤー汚れ防止剤およびこれを用いた抄紙ワイヤー汚れ防止方法を提供する。
【解決手段】抄紙ワイヤー1汚れ防止剤は、ポリオキシアルキレングリコール(A)と、ジヒドロキシル化合物(B)と、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)とを含む単量体成分を重縮合して得られるポリエーテルエステル重縮合体を含有する。抄紙ワイヤー汚れ防止方法は、前記抄紙ワイヤー汚れ防止剤を、抄紙ワイヤーの表面に適用する。適用方法は、各シャワー10,11,12の各ノズルから抄紙ワイヤーに吹き付けることで付着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機のワイヤーパートにおいて用いる抄紙ワイヤー汚れ防止剤およびワイヤーパートにおける抄紙ワイヤー汚れの防止方法に関する。詳しくは、抄紙機のワイヤーパートにおける抄紙ワイヤーへの汚れの付着を防止するための抄紙ワイヤー汚れ防止剤および抄紙ワイヤーの汚れ防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製紙は、パルプ製造工程、調成工程および抄紙工程(脱水工程、搾水工程、乾燥工程)と、必要に応じて塗工工程等とを経てなされる。その中の抄紙工程では、約1%程度に希釈されたパルプスラリーをワイヤーパート(脱水工程)において固形分18〜20%程度に濃縮し、さらにプレスパート(搾水工程)において固形分40〜50%程度に濃縮して湿紙が形成され、その後にドライヤーパート(乾燥工程)において固形分95%程度まで乾燥することにより、原紙が製造される。
【0003】
ところで、前記ワイヤーパートにおいて分離される白水の一部は、通常、調成工程においてパルプスラリーの希釈水として再利用されており、該パルプスラリーが再びワイヤーパートに送られることで白水は循環することになる。特に、近年では、環境に対する配慮と生産性向上の観点から、白水の循環率が非常に高くなっている。しかし、白水の循環率が高くなると、白水に含まれる汚れ成分が濃縮され、抄紙ワイヤー(以下「ワイヤー」と称することもある)などの抄紙用具が汚れやすくなるという問題が起こる。しかも、抄紙ワイヤーへの汚れの付着は、近年の古紙配合割合の増加や抄造条件の変化(酸性抄造から中性抄造へ)によって、より顕著になる傾向がある。このように抄紙ワイヤーへの汚れの付着が増えると、断紙が頻発したり、紙製品に欠陥が生じたりして、操業効率の低下や紙製品の品質低下といった問題が発生する。そのため、抄紙ワイヤーへの汚れの付着を防止する適切な対策が求められている。
【0004】
前述したような抄紙ワイヤーに付着する汚れは、バージンパルプや古紙パルプ等の製紙原料に含まれる樹脂分や、紙製品に特別な機能を付与するためにパルプスラリーに内添される添加剤の一部に由来すると言われており、一般には有機系汚れと無機系汚れに大別することができる。有機系汚れとしては、バージンパルプに含まれる木材由来の樹脂分、古紙パルプに含まれるインキ、コートブローク(塗工損紙)に含まれるラテックス(接着剤、バインダー)、紙にサイズ性を付与するために添加されたサイズ剤等があり、無機系汚れとしては、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどの炭酸塩や硫酸塩、水酸化アルミニウム等の水難溶性の塩類、カオリン、クレー等のケイ素化合物等があり、抄紙ワイヤーに付着する汚れには、通常、これらの汚れ成分が複合して含まれている。
【0005】
そこで、前記抄紙ワイヤーへの汚れの付着を防止するために、様々な方法が提案されている。例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、エピクロルヒドリン−ジアルキルアミン縮合物から選ばれるカチオンポリマーと、高級脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加させた非イオン性界面活性剤とを配合した組成物を、抄紙ワイヤーなどに適用する方法(特許文献1)や、50〜100%加水分解のポリビニルアルコール、高分子量ゼラチンおよびカチオンポリマーを配合した組成物を、抄紙ワイヤー等に適用する方法(特許文献2)や、非イオン性界面活性剤とキレート作用のある多価カルボン酸とを配合した組成物を、ワイヤーパートのワイヤーその他に適用する方法(特許文献3)等が提案されている。しかしながら、特許文献1〜2の方法では、抄紙ワイヤーへの汚れの防止効果はある程度認められるものの、カチオン性のポリマーを適用する場合には、パルプスラリーに含まれるイオン性の異なる汚れ成分と凝集してその効果が失われることがあり、突発的に汚れが発生してしまう危険性をはらんでいる。また、特許文献3の方法は、前述のようなイオン性のトラブルは問題にならないが、ワイヤーの内部の汚れ、特にワイヤーの縦糸と横糸の交差する部分などの入り組んだ部分の汚れに対しては、前記組成物を作用させることは難しく、抄紙ワイヤーへの汚れの付着防止効果は必ずしも充分とは言えないのが現状であった。
【0006】
また、一方で、タルク、クレー、その他の多孔性無機物質からなるピッチ吸着剤を添加して、これを汚れの原因となるパルプ中のピッチ粒子に吸着させることにより、ピッチ粒子の粘着性を低下させて、抄紙ワイヤーなどの抄紙用具へのピッチの付着性を低下させる方法が知られており、例えば、天然タルク粉末に非膨潤性雲母粉末を配合したピッチ吸着剤が提案されている(特許文献4)。このような多孔性無機物質からなるピッチ吸着剤を用いる方法は、多孔性無機物が安価であることなどから現在主流となっているが、多孔性無機物はピッチ粒子の吸着性能が必ずしも充分ではなく、紙への定着も低いために、白水の汚濁やスラッジ沈積の原因になるほか、ワイヤーの磨耗や損傷も大きいといった問題を有しており、代替法が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−044067号公報
【特許文献2】特表2000−511596号公報
【特許文献3】特開2005−226180号公報
【特許文献4】特開昭59−105842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、抄紙機のワイヤーパートにおいて抄紙ワイヤーへの汚れの付着を防止するための抄紙ワイヤー汚れ防止剤およびこれを用いた抄紙ワイヤー汚れ防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリオキシアルキレングリコール(A)と、ジヒドロキシル化合物(B)と、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)とを含む単量体成分を重縮合して得られるポリエーテルエステル重縮合体を有効成分とする抄紙ワイヤー汚れ防止剤を、抄紙機のワイヤーパートにおける抄紙ワイヤーの表面に付着させることにより、抄紙ワイヤーへの汚れの付着を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)ポリオキシアルキレングリコール(A)と、ジヒドロキシル化合物(B)と、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)とを含む単量体成分を重縮合して得られるポリエーテルエステル重縮合体を含有することを特徴とする抄紙ワイヤー汚れ防止剤。
(2)前記ポリオキシアルキレングリコール(A)の数平均分子量が1,000〜10,000である、前記(1)に記載の抄紙ワイヤー汚れ防止剤。
(3)前記単量体成分におけるポリオキシアルキレングリコール(A)、ジヒドロキシル化合物(B)、および芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)の含有割合(モル比)は、(C)を100とした時に(A):(B)=50:50〜10:90である、前記(1)又は(2)に記載の抄紙ワイヤー汚れ防止剤。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の抄紙ワイヤー汚れ防止剤を、抄紙ワイヤーの表面に適用することを特徴とする抄紙ワイヤー汚れ防止方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抄紙機のワイヤーパートにおいて抄紙ワイヤーへの汚れの付着を防止することができる。これにより、抄紙機を、断紙等のトラブルを生ずることなく、また紙穴などの欠陥を生ずることなく、長時間にわたって稼動させることができ、操業効率および得られる紙製品の品質が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】抄紙機におけるワイヤーパートの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤およびこれを用いた抄紙ワイヤー汚れ防止方法について詳細に説明する。
本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、ポリオキシアルキレングリコール(A)と、ジヒドロキシル化合物(B)と、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)とを含む単量体成分を重縮合して得られるポリエーテルエステル重縮合体を必須成分として含有するものである。なお、本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、前記ポリエーテルエステル重縮合体そのものであってもよいし、重縮合で得られた反応生成物(すなわち、重縮合時に用いた溶媒や添加剤等を含んだ水性混合物)であってもよいし、あるいは、それらポリエーテルエステル重縮合体もしくは重縮合で得られた反応生成物を水等の適当な溶媒に溶解させて所望の濃度に希釈したものであってもよい。
【0014】
前記ポリエーテルエステル重縮合体を構成する単量体成分のうち、ポリオキシアルキレングリコール(A)は、抄紙ワイヤー表面を親水性に改質して、ポリエーテルエステル重縮合体を抄紙ワイヤー表面に効率よく付着させる役割を担う。前記ポリオキシアルキレングリコール(A)としては、得られるポリエーテルエステル重縮合体に適当な水分散性を付与しうるだけの親水性を有するものが好ましく、特に、下記式(1)で表される構造を有するポリオキシエチレングリコールが好ましい。
【化1】

(式(1)中、nは22〜227の整数である。)
【0015】
なお、前記ポリオキシアルキレングリコール(A)を構成するアルキレンオキサイドは、式(1)に示すようにエチレンオキサイドであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、得られるポリエーテルエステル重縮合物の水分散性を損なわない範囲であれば、エチレンオキサイドとともに、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等から選ばれる1種もしくは2種以上をも共重合して得られるポリオキシアルキレングリコール(A)を用いることもできる。
【0016】
前記ポリオキシアルキレングリコール(A)の数平均分子量は、1,000〜10,000であることが好ましく、より好ましくは2,000〜6,000であるのがよい。数平均分子量が1,000未満であると、得られるポリエーテルエステル重縮合体の親水性が不足し、その結果、充分な抄紙ワイヤー汚れ防止効果が得られなくなる恐れがある。一方、数平均分子量が10,000を超えると、得られるポリエーテルエステル重縮合体に過剰な親水性が付与され、その結果、抄紙ワイヤーとの親和性が損なわれることになり、抄紙ワイヤーに充分に付着させることができないため、同様に充分な抄紙ワイヤー汚れ防止効果が得られなくなる恐れがある。
【0017】
前記ポリエーテルエステル重縮合体を構成する単量体成分のうち、ジヒドロキシル化合物(B)は、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)と結合してポリエステル構造を形成し、親油基としての役割を担う。前記ジヒドロキシル化合物(B)は、下記式(2)で表される構造を有するアルキレングリコールであることが好ましい。
【化2】

(式(2)中、R1は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を示し、nは1〜5の整数である。)
前記式(2)中のnは、抄紙ワイヤーとの親和性を向上させるうえでは小さいほど好ましく、より好ましくはn=1であるのがよい。
前記式(2)で表されるジヒドロキシル化合物(B)の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、経済的な観点からはエチレングリコールが好ましい。
【0018】
前記ポリエーテルエステル重縮合体を構成する単量体成分のうち、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)は、ジヒドロキシル化合物(B)と結合してポリエステル構造を形成し、親油基としての役割を担う。前記芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)は、下記式(3)で表される構造を有するベンゼンジカルボン酸またはそのジアルキルエステルであることが好ましい。
【化3】

(式(3)中、R2は、各々同じであってもよいし異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基を示す。)
【0019】
前記式(3)で表される芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)の具体例としては、例えば、フタル酸、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジプロピル、イソフタル酸ジブチル、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチルが好ましく、さらに経済的な観点からは、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチルがより好ましい。
なお、前記芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)は、前記式(3)で表される芳香族ジカルボン酸またはその誘導体に限定されるものでなく、これらのほかに、例えば、無水フタル酸等の如き芳香族ジカルボン酸の酸無水物等であってもよい。
【0020】
前記ポリエーテルエステル重縮合体を構成する単量体成分におけるポリオキシアルキレングリコール(A)、ジヒドロキシル化合物(B)、および芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)の含有割合(モル比)は、(C)を100とした時に(A):(B)=50:50〜10:90であることが好ましく、(A):(B)=50:50〜20:80であることがより好ましい。前記範囲よりもポリオキシアルキレングリコール(A)の割合が少なすぎると(ジヒドロキシル化合物(B)の割合が多すぎると)、前記ポリエーテルエステル重縮合体の親水性が不足し、その結果、充分な抄紙ワイヤー汚れ防止効果が得られなくなる恐れがある。一方、前記範囲よりもポリオキシアルキレングリコール(A)の割合が多すぎると(ジヒドロキシル化合物(B)の割合が少なすぎると)、前記ポリエーテルエステル重縮合体に過剰な親水性が付与され、その結果、抄紙ワイヤーとの親和性が損なわれることになり、充分に付着させることができないため、前記と同様に充分な抄紙ワイヤー汚れ防止効果が得られなくなる恐れがある。
なお、ポリオキシアルキレングリコール(A)、ジヒドロキシル化合物(B)、および芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)は、それぞれ1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、前記単量体成分は、本発明の効果を損なわない限り、前述した(A)〜(C)以外の単量体を含んでいてもよい。
【0021】
前記ポリエーテルエステル重縮合体は、前記単量体成分を重縮合させることにより得られる。具体的には、ポリエーテルエステル重縮合体は、前記単量体成分を脱水縮合反応またはエステル交換反応に付すことより生じる。重縮合時の脱水縮合反応またはエステル交換反応の反応方法は、従来公知の方法に準じて適宜設定すればよい。例えば、脱水縮合反応であれば、不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気中で、脱水縮合触媒(テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、炭素数1〜3までの脂肪酸マグネシウム塩、二酸化ゲルマニウムなど)の存在下、単量体成分を130〜200℃程度に加熱して、副生する水を蒸留等により逐次除去し、さらに200〜250℃程度の温度で1〜5時間程度反応させればよい。エステル交換反応であれば、前記した脱水縮合反応触媒をエステル交換触媒として用い、脱水縮合反応と同様にして加熱して、副生するアルコールを逐次除去し、さらに脱水縮合反応と同様にして反応させればよい。
【0022】
前記ポリエーテルエステル重縮合体は、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度30重量%となるように溶解させた時の溶液の粘度(本明細書においては、これを「DMF溶液粘度」と称する)が、25℃において、5〜400mPa・sであることが好ましく、より好ましくは10〜400mPa・s、さらに好ましくは10〜100mPa・sであることがよい。前記重縮合体のDMF溶液粘度が5mPa・s未満である場合、前記重縮合体の重合度が小さすぎるため、抄紙ワイヤーへ充分に付着させにくくなり、充分な抄紙ワイヤー汚れ防止効果が得られなくなる恐れがある。一方、前記重縮合体のDMF溶液粘度が400mPa・sを超える場合、重縮合体自身の流動性が低下するため、反応器からの払い出しなど取り扱いが困難になるほか、抄紙ワイヤーへ均一に付着させることも困難となる恐れがある。なお、本発明において、前記ポリエーテルエステル重縮合体のDMF溶液粘度は、例えば、粘度計(米国ブルックフィールド社製「ブルックフィールド粘度計LVT」)等を用いて測定することができる。
【0023】
前記ポリエーテルエステル重縮合体は、軟化点(Sp)が25〜70℃であることが好ましい。前記重縮合体の軟化点が25℃未満であると、前記重縮合体の粘性が大きくなる傾向があり、充分な抄紙ワイヤー汚れ防止効果が得られなくなる恐れがある。一方、前記重縮合体の軟化点が70℃を超えると、前記重縮合体の溶媒に対する分散性が低下するため、抄紙ワイヤーに適用する際、均一に付着させにくくなる恐れがある。なお、本発明において、前記ポリエーテルエステル重縮合体の軟化点は、当該重縮合体を20℃から毎分5℃で400℃まで昇温した際に描かれるDTA曲線において得られる吸熱ピークを示す温度を意味するものであり、例えば、示差熱重量同時測定装置(S.I.I.ナノテクノロジー社製「TG/DTA6200」)等を用いて測定することができる。
【0024】
本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、必要に応じて、前記ポリエーテルエステル重縮合体を溶解または分散させうる溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、例えば、水や各種有機溶媒が用いられるが、水が好ましい。有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3−ジプロピルイミダゾリジノン、1,3−ジメチルイミダゾリジノンテトラメチルウレア、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルスルホニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジトリプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアミン・アミド系溶媒;等が挙げられる。溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤が溶媒を含有する場合、その含有量は特に制限されないが、抄紙ワイヤー汚れ防止剤中のポリエーテルエステル重縮合体の濃度が1〜50重量%となるように設定することが、輸送、保管時のコスト削減および剤の粘度など取り扱いやすさの点で好ましい。
【0025】
本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、必要に応じて、各種界面活性剤、各種カチオン性ポリマー、各種ノニオン性ポリマー(ポリエーテルエステル重縮合体を除く)、各種アニオン性ポリマー、消泡剤、防腐剤、殺菌剤、防錆剤、増粘剤、保湿剤(例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、無機酸(例えば、塩酸、硝酸等)、有機酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酢酸等)、キレート剤(例えば、EDTA、DTPA等)、アルカリ(水酸化ナトリウム等)、酵素剤(α−アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等)などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0026】
本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止方法は、抄紙機のワイヤーパートにおいて、抄紙ワイヤー汚れ防止剤を、抄紙ワイヤーの表面に適用するものである。ここで「適用する」とは、抄紙ワイヤーの表面に抄紙ワイヤー汚れ防止剤を付着させることを意味するものであり、例えば、抄紙ワイヤー汚れ防止剤を抄紙ワイヤーの表面に、注いだり、噴霧したり、散布したり、塗布したりすることによって、付着させるものである。具体的には、例えば、抄紙ワイヤーに噴霧されるブレストロールシャワー水やウェッティングシャワー水に抄紙ワイヤー汚れ防止剤を添加することにより、抄紙ワイヤーの表面に直接付着させる手段や、抄紙ワイヤーと接触しているストレッチロールやテンションロールなどの潤滑水に抄紙ワイヤー汚れ防止剤を添加することにより、各種ロールを介して抄紙ワイヤーの表面に付着させる手段などが挙げられるが、抄紙ワイヤーの表面に抄紙ワイヤー汚れ防止剤を付着させることができる手段であれば、これらに限定されるものではない。
【0027】
一般に、抄紙ワイヤーとは、製紙の際に抄紙工程でパルプスラリーを濃縮するために使用されるメッシュ状の織物全般を意味するものであるが、本発明では、それらのうち、抄紙機のワイヤーパートにおいて使用される抄紙ワイヤーを適用対象とする。具体的には、抄紙機ワイヤーパートにおいて使用されるブロンズワイヤーやプラスチックワイヤーが挙げられ、それらの中でも、プラスチックワイヤーが機械的強度や寸法安定性等に優れる点で好ましい。とりわけ、プラスチックワイヤーの中でもポリエステル製のものは汚れが付きやすいので、本発明の効果を有意に発揮するうえで好適である。
【0028】
以下、本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止方法の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、抄紙機におけるワイヤーパートの構成の一例として、長網抄紙機におけるワイヤーパートの構成を示した概略図である。
【0029】
図1に示されるワイヤーパートにおいて、抄紙ワイヤー1は、ブレストロール2、クーチロール3、ターニングロール4、ストレッチロール5、テンションロール6、ガイドロール7によって支持され、張設されている。
抄紙ワイヤー1は、クーチロール3、ターニングロール4等を動力源として回転し、紙料(パルプスラリー)8をろ過するとともに、次工程である搾水工程を行うプレスパートに湿紙9を移送する役割を担っている。また、抄紙ワイヤー1は、ブレストロール2、ストレッチロール5、テンションロール6、ガイドロール7等の一般に駆動力を持たないロールを回転させる動力伝達の役割も担う。
【0030】
また、図1に示されるワイヤーパートには、紙料8の載っていない部分において、ウェッティングシャワー10と、ブレストロールシャワー11と、ストレッチロール5、テンションロール6、ガイドロール7の近傍に設置された潤滑シャワー12とが設けられている。
【0031】
図1に示されるワイヤーパートにおいて、抄紙ワイヤー1は回転しており、ヘッドボックス13内で希釈された紙料(パルプスラリー)8は、ブレストロール2の配置されている位置の抄紙ワイヤー1上に吐出され、ハイドロフォイル14、ワイヤーサクションボックス15、クーチロール3などの脱水設備によってろ過され、固形分20%程度にまで濃縮された湿紙9が形成される。湿紙9は、プレスパートのピックアップフェルト16との接触点において、ピックアップサクションロール17によってピックアップフェルト16にピックアップされ、続くプレスパートに移送される。
【0032】
図1に示す構成を有するワイヤーパートにおいて、本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、薬液タンク(不図示)から定量ポンプ(不図示)によって送液し、ウェッティングシャワー10やブレストロールシャワー11の配管(不図示)に注入(圧入)することにより希釈した後、ウェッティングシャワー10やブレストロールシャワー11の各ノズルから抄紙ワイヤー1に吹き付けることで抄紙ワイヤー1の回転によって抄紙ワイヤー1全域にわたって付着させることができる。このように表面の広範囲にわたって本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤を適用することによって、より効率よくワイヤー汚れ防止効果を発揮することができる。
また、図1に示す構成を有するワイヤーパートにおいて、本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、前述のようにウェッティングシャワー10やブレストロールシャワー11の各ノズルから抄紙ワイヤー1に直接吹き付けるとともに、もしくはこれに代えて、潤滑シャワー12の配管(不図示)に注入(圧入)することにより希釈した後、潤滑シャワー12のノズルから、ストレッチロール5、テンションロール6、ガイドロール7などのワイヤーロールに吹き付けることで各ワイヤーロールを介して抄紙ワイヤー1に付着させるようにしてもよい。これにより、抄紙ワイヤーの表面および内部における汚れの堆積を抑制することができる。
【0033】
本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止方法において、前記抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、通常、各シャワーの配管に注入することにより希釈して適用されるが、その際、希釈された薬液中に含まれる前記ポリエーテルエステル重縮合体の濃度(固形分)が、抄紙ワイヤーおよび/または各種ワイヤーロールに吹き付けられる時点において、0.001〜1重量%となるように、抄紙ワイヤー汚れ防止剤中の前記ポリエーテルエステル重縮合体濃度等を考慮してシャワー水量を調整することが好ましい。
また、抄紙ワイヤー汚れ防止剤が希釈されてなる薬液の使用量(噴霧量)は、装置の寸法、抄紙速度、抄造品目等に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されないが、通常、噴霧する薬液中の抄紙ワイヤー汚れ防止剤量が、固形分として、抄紙ワイヤー幅1mあたり0.001〜10g/分、好ましくは抄紙ワイヤー幅1mあたり0.01〜1g/分となるように設定するのがよい。なお、抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、連続的に吹き付けられるようにシャワー水中に注入するのが好ましいが、本発明の効果を損なわない程度であれば、間歇的にシャワー水中に注入するようにしてもよい。
【0034】
本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止方法においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前述した本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤の適用と同時に、同じワイヤーパートで、各種ピッチコントロール剤、洗浄剤、スケールコントロール剤等の公知の他の薬剤を併用してもよい。この場合、各薬剤を別々に適用してもよいし、混合して適用してもよい。
なお、以上の本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤および抄紙ワイヤー汚れ防止方法は、上述した抄紙ワイヤーの汚れを防止するものであるが、本発明で有効成分とする前記ポリエーテルエステル重縮合体は、例えば、抄紙機のプレスパートのフェルト、センターロールおよびフェルトロール等に付着する汚れの防止に適用してもよいことは勿論である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
なお、抄紙ワイヤー汚れ防止剤の評価は下記のワイヤー汚れ防止試験により行った。
【0036】
<ワイヤー汚れ防止試験>
(1)某社製紙工場の新聞用紙抄紙機のワイヤー付着ピッチを、恒量化するまで100℃で乾燥させた後、アルベン(エタノール/ベンゼン混合溶媒(1/2、v/v))で抽出した。この抽出分を擬似ピッチとし、擬似ピッチを10重量%濃度でアルベンに溶解させた10%擬似ピッチ溶液を調製した。
(2)200mLガラスビーカーに200mLのイオン交換水を入れ、その中に抄紙ワイヤー汚れ防止剤を50ppmの濃度となるように添加し、これを試験液とした。
(3)前記試験液中にポリエチレングリコールテレフタレート製のテストピース(サイズ:5cm×15cm×1mm)を浸漬し、さらに前記擬似ピッチ溶液を1mL(試験液に対して500ppmに相当)添加した後、試験液を40℃に保温しながらマグネティックスターラーで10分間攪拌した。
(4)攪拌終了後、試験液からテストピースを取り出し、恒量化するまで70℃で乾燥させた後、その重量を測定し、試験液に浸漬する前の重量との差から、ピッチの付着量(mg)を算出した(この値をXとする)。ここで、テストピースへのピッチの付着量が少ないほど、試験液に添加した抄紙ワイヤー汚れ防止剤のピッチ付着抑制性能が高いことを示す。
(5)他方、ワイヤー汚れ防止剤を使用しないで(すなわち、イオン交換水をそのまま試験液として)前記(3)、(4)と同様の操作を行ない、ピッチ付着量(mg)を求め、得られたピッチ付着量をブランク値とした(この値をYとする)。そして、下記式に基づき、ピッチ付着抑制率(%)を算出した。
【0037】
【数1】

【0038】
(実施例1)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量2,000のポリエチレングリコール81.77gと、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール2.53gと、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル15.70gとを、窒素ガス雰囲気下で反応容器に入れ、さらにエステル交換反応触媒としてテトラ−n−ブトキシチタン0.05gを添加した後、攪拌しながら150℃に昇温してテレフタル酸ジメチルを溶解させた。テレフタル酸ジメチルが完全に溶解した後、180℃に昇温して2時間反応させ、副生したメタノールを除去しながら攪拌を続けた。その後、さらに230℃に昇温するとともに真空度を0.1kPaとして3時間反応させ、ポリエーテルエステル重縮合体(1)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(1)の25℃におけるDMF溶液粘度は28mPa・sであり、その軟化点(Sp)は42.8℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(1)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量2,000のポリエチレングリコール77.73gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール3.61gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル18.66gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(2)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(2)の25℃におけるDMF溶液粘度は33mPa・sであり、その軟化点(Sp)は41.0℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(2)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例3)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量2,000のポリエチレングリコール74.07gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール4.59gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル21.33gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(3)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(3)の25℃におけるDMF溶液粘度は23mPa・sであり、その軟化点(Sp)は39.2℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(3)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例4)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量2,000のポリエチレングリコール70.75gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール5.48gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル23.77gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(4)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(4)の25℃におけるDMF溶液粘度は13mPa・sであり、その軟化点(Sp)は40.5℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(4)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例5)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量2,000のポリエチレングリコール67.70gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール6.30gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル26.00gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(5)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(5)の25℃におけるDMF溶液粘度は19mPa・sであり、その軟化点(Sp)は40.0℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(5)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例6)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量4,000のポリエチレングリコール85.11gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール2.64gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル12.26gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(6)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(6)の25℃におけるDMF溶液粘度は35mPa・sであり、その軟化点(Sp)は51.6℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(6)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0044】
(実施例7)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量6,000のポリエチレングリコール89.55gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール1.85gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル8.60gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(7)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(7)の25℃におけるDMF溶液粘度は56mPa・sであり、その軟化点(Sp)は57.3℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(7)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例8)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量10,000のポリエチレングリコール93.46gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール1.16gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル5.38gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(8)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(8)の25℃におけるDMF溶液粘度は80mPa・sであり、その軟化点(Sp)は54.7℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(8)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例9)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量4,000のポリエチレングリコール76.80gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール4.76gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル18.43gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(9)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(9)の25℃におけるDMF溶液粘度は43mPa・sであり、その軟化点(Sp)は49.7℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(9)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例10)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量1,000のポリエチレングリコール66.25gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール5.13gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル28.62gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(10)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(10)の25℃におけるDMF溶液粘度は30mPa・sであり、その軟化点(Sp)は31.2℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(10)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例11)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量1,000のポリエチレングリコール61.11gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール6.63gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル32.26gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(11)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(11)の25℃におけるDMF溶液粘度は16mPa・sであり、その軟化点(Sp)は34.6℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(11)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例12)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量6,000のポリエチレングリコール80.41gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール4.15gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル15.44gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(12)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(12)の25℃におけるDMF溶液粘度は185mPa・sであり、その軟化点(Sp)は58.6℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(12)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例13)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量2,000のポリエチレングリコール62.34gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール7.73gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル29.93gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(13)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(13)の25℃におけるDMF溶液粘度は390mPa・sであり、その軟化点(Sp)は37.5℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(13)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例14)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量1,000のポリエチレングリコール58.82gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール7.29gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル33.88gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(14)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(14)の25℃におけるDMF溶液粘度は34mPa・sであり、その軟化点(Sp)は35.2℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(14)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例15)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量10,000のポリエチレングリコール78.54gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)としてエチレングリコール4.87gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル16.59gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(15)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(15)の25℃におけるDMF溶液粘度は19mPa・sであり、その軟化点(Sp)は28.1℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(15)を本発明の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量200のポリエチレングリコール51.02gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル48.98gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)は用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(c1)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(c1)の25℃におけるDMF溶液粘度は8mPa・sであり、その軟化点(Sp)は20℃以下であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(c1)を比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量600のポリエチレングリコール75.76gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル24.24gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)は用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(c2)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(c2)の25℃におけるDMF溶液粘度は20mPa・sであり、その軟化点(Sp)は26.5℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(c2)を比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(比較例3)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量1,000のポリエチレングリコール83.89gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル16.11gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)は用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(c3)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(c3)の25℃におけるDMF溶液粘度は18mPa・sであり、その軟化点(Sp)は35.7℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(c3)を比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例4)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量2,000のポリエチレングリコール91.24gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル8.76gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)は用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(c4)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(c4)の25℃におけるDMF溶液粘度は37mPa・sであり、その軟化点(Sp)は45.5℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(c4)を比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例5)
ポリオキシアルキレングリコール(A)として数平均分子量4,000のポリエチレングリコール95.42gを用い、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)としてテレフタル酸ジメチル4.58gを用い、ジヒドロキシル化合物(B)は用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリエーテルエステル重縮合体(c5)を得た。このポリエーテルエステル重縮合体(c5)の25℃におけるDMF溶液粘度は12mPa・sであり、その軟化点(Sp)は55.8℃であった。
得られたポリエーテルエステル重縮合体(c5)を比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例6)
塩化ジメチルベンジルラウリルアンモニウムを比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例7)
ポリオキシエチレン(20モル)ステアリルアミンを比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例8)
ジシアンジアミドホルマリン重縮合体を比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例9)
ジメチルアミンエピクロルヒドリン重縮合体を比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例10)
塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムを比較用の抄紙ワイヤー汚れ防止剤とし、ワイヤー汚れ防止試験を行った。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果から、実施例1〜15のワイヤー汚れ防止剤は、比較例1〜10のワイヤー汚れ防止剤に比べ、ピッチ付着抑制効果が格段に高いことがわかる。
【符号の説明】
【0065】
1:抄紙ワイヤー、2:ブレストロール、3:クーチロール、4:ターニングロール、5:ストレッチロール、6:テンションロール、7:ガイドロール、8:紙料、9:湿紙、10:ウェッティングシャワー、11:ブレストロールシャワー、12:潤滑シャワー、13:ヘッドボックス、14:ハイドロフォイル、15:ワイヤーサクションボックス、16:ピックアップフェルト、17:ピックアップサクションロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレングリコール(A)と、ジヒドロキシル化合物(B)と、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)とを含む単量体成分を重縮合して得られるポリエーテルエステル重縮合体を含有することを特徴とする抄紙ワイヤー汚れ防止剤。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレングリコール(A)の数平均分子量が1,000〜10,000である、請求項1に記載の抄紙ワイヤー汚れ防止剤。
【請求項3】
前記単量体成分におけるポリオキシアルキレングリコール(A)、ジヒドロキシル化合物(B)、および芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(C)の含有割合(モル比)は、(C)を100とした時に(A):(B)=50:50〜10:90である、請求項1又は2に記載の抄紙ワイヤー汚れ防止剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の抄紙ワイヤー汚れ防止剤を、抄紙ワイヤーの表面に適用することを特徴とする抄紙ワイヤー汚れ防止方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−248662(P2010−248662A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99788(P2009−99788)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(502264991)株式会社日新化学研究所 (11)
【Fターム(参考)】