説明

抄紙機における抄紙の地合調整装置及び地合調整方法

【課題】 抄紙機で製造する紙の地合の状態をオンライン地合計で捕捉し、その地合データを基に抄紙機上の紙匹に対して所定の機器装置の操作を行って、地合の良化を図る抄紙機における抄紙の地合調整装置及び地合調整方法を提供する。
【解決手段】 プレドライヤ4以降の工程であって巻取紙Sに完成する前の紙匹Pの走行域にオンライン地合計15を設置し、紙匹Pの地合の状態を捕捉し、地合データを制御手段16に提供する。制御手段16は対向脱水ブレード12をワイヤ2aに対して進退させる駆動チューブ13への圧力を変更して、ワイヤ2aに対する押付力を調整しながら、オンライン地合計15により検出される地合データを参照しながら、地合の状態が良好となるように、前記押付圧を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抄紙機で製造される紙の地合を、該抄紙機の運転中に調整することができるようにした抄紙機における抄紙の地合調整装置及び地合調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程における長網式あるいはツインワイヤ式の抄紙機は、主としてワイヤパートとプレスパート、ドライパート、カレンダパート、リールパートとから構成されている。水にパルプ繊維が分散している製紙原料をストックインレットから無端循環移動する網状のワイヤへ供給し、ワイヤの走行中に脱水されながら紙層を形成し、プレスパートでこの紙層から搾水され、ドライパートで乾燥され、カレンダパートで紙厚の調整や平滑性が付与され、リールパートでリールに巻き取られて巻取紙として完成する。
【0003】
ところで、紙の品質を評価する一つの指標として地合の良否がある。これは、紙を構成するパルプ繊維の分散状態を評価するもので、一部に偏ることなく紙の全体に均一に分散されていることが良好な地合とされる。前述したように、紙の製造工程ではワイヤパートにおいて製紙原料からの脱水が行われて紙層が形成される際に、このワイヤパートにおいて地合が決定される。このため、地合を良好なものとなるように、ワイヤパートの各脱水装置を走行中の湿紙に作用させて地合を調整することが要求される。
【0004】
地合を良好なものに調整するためには、製造工程中の紙の地合の状態を把握することが必要となり、例えば、特許文献1に開示さている紙の品質モニタリング装置等が抄紙機に設けられている。この品質モニタリング装置は、一枚のワイヤと接して走行する湿紙の走行ラインを挟んでビデオカメラと発光装置とを対向配置し、ビデオカメラにより湿紙を静止二次元画像として取り込み、この画像を画像処理装置によって処理して、処理された画像から湿紙の品質を解析し、その解析結果を表示装置に時系列に表示するようにしたものである。
【0005】
また、前記品質モニタリング装置により取得された地合指数に基づいて、紙種やパルプ薬品の性状、紙原料液の濃度、ヘッドボックスの噴出速度、ワイヤの走行速度、脱水機器の脱水圧力或いは脱水機器を構成するブレードの押付圧力等のパラメータを調整することにより、地合を調整する。
【0006】
また、抄紙機上を走行する紙について地合の状態を把握して、その状態に基づいて地合を調整する装置として、特許文献2や特許文献3に開示されたツインワイヤ装置やツインワイヤフォーマ等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−213585号公報
【特許文献2】特開平6−235184号公報
【特許文献3】特許第3241193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に開示された紙の品質モニタリング装置では、ワイヤの走行域にて地合を反映させる二次元画像を取得するものであるから、前記ビデオカメラでは、前記発光装置から発せられて湿紙と共にワイヤを透過した光が捕捉されることになる。このため、ワイヤに関する画像をノイズ成分として除去する補正を行うようにしている。
【0009】
また、ワイヤの走行域にて地合に関するデータを取得するため、例えば、取得位置では良好な地合のデータを得られたとしても、該取得位置の下流におけるワイヤの挙動によっては、地合が損なわれてしまうおそれがあり、製造された紙の品質が低下してしまうおそれがある。
【0010】
そこで、この発明は、抄紙機を走行中の紙の地合に関するデータを取得して、取得された地合データに基づいて調整を行うことにより、完成された紙の品質を一定に保つことができるようにする抄紙機における抄紙の地合調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置は、紙匹の地合をモニタリングするオンライン地合計と、ツインワイヤフォーマ部に設けた、ワイヤにパルス状の圧力を与える対向脱水ブレードとを有する抄紙機において、前記オンライン地合計で取得した地合の状態に関する地合データと、前記対向脱水ブレードのワイヤへの押付圧とを取得する制御手段を備え、前記対向脱水ブレードによる押付圧を調整するブレード進退手段を備え、前記地合データをもとに地合を良化させる前記対向脱水ブレードによる押付圧を求め、求められた押付圧により前記ブレード進退手段を駆動してワイヤへの押付圧を調整することにより地合の良化を行うことを特徴としている。
【0012】
抄紙機上を走行する紙匹についての地合の状態に関する地合データを前記オンライン地合計で測定し、その地合データを前記制御手段に提供する。また、前記対向脱水ブレードを駆動させるブレード進退手段の動作から得られる該対向脱水ブレードによる押付圧を前記制御手段に提供する。制御手段は、提供された地合データを基にして、該地合データに係る地合よりも良化する地合となるように、前記ブレード進退手段を駆動して対向脱水ブレードによる押付圧を変更させる。
【0013】
また、請求項2の発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置は、前記対向脱水ブレードによる押付圧は、前記ブレード進退手段による移動の前後における地合データを比較し、より良化された地合データを取得できる大きさとすることを繰り返すことにより最適な大きさを求めることを特徴としている。
【0014】
前記制御手段は、前記ブレード進退手段を駆動して対向脱水ブレードによる押付圧を変更させ、この変更による地合データと先に提供されている地合データとを比較し、良好な地合を示す押付圧を選定する。すなわち、対向脱水ブレードによる押付圧を変更させて変更前後の地合を比較し、良好な地合となる押付圧で対向脱水ブレードをワイヤに押し付けるものである。
【0015】
また、請求項3の発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置は、前記対向脱水ブレードを複数基設置し、それぞれの対向脱水ブレードに各別に前記ブレード進退手段を連係させて、それぞれの対向脱水ブレードの押付圧を各別に調整することにより最良の地合に調整することを特徴としている。
【0016】
前記対向脱水ブレードは複数基がワイヤの走行方向に沿って並設され、しかも、この対向脱水ブレードにワイヤを挟んで反対側には脱水ブレードが並設され、これら脱水ブレードと対向脱水ブレードとが交互に配される。そして、複数基の対向脱水ブレードのそれぞれに連係させてブレード進退手段を設けて、これら対向脱水ブレードのそれぞれのワイヤに対する押付力を調整できるようにしたものである。
【0017】
また、請求項4の発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置は、前記複数基の対向脱水ブレードについて、任意の順番でそれぞれの対向脱水ブレードの押付圧を、地合が良化する大きさに順次調整することを特徴としている。
【0018】
複数基の対向脱水ブレードを具備させて、それぞれの対向脱水ブレードの押付力を調整できるようにした場合に、これらの対向脱水ブレードの押付力の調整を行うに際し、予め調整を行う順番を定め、その順番で地合が良化する状態を求めて調整を行うようにしたものである。すなわち、第1の対向脱水ブレードについて地合が良化した押付圧を求め、その押付圧を維持して第2の対向脱水ブレードについて地合が良化した押付圧を求める。これら第1、第2の対向脱水ブレードの押付圧を維持して第3の対向脱水ブレードについての押付圧を調整する。このように、複数基の対向脱水ブレードの押付圧を順番で調整することにより、地合を最適な状態に調整するようにしたものである。
【0019】
また、請求項5の発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置は、前記複数基の対向脱水ブレードを任意の個数で組み合わせ、該組み合わせについて任意の順番でそれぞれの組み合わせに含まれる対向脱水ブレードの押付圧を、地合が良化する大きさに順次調整することを特徴としている。
【0020】
複数基の対向脱水ブレードを具備させた場合に、これらで適宜な数の組となる組み合わせを形成し、第1の組に含まれる対向脱水ブレードの押付圧をほぼ同時に変更させてこの第1の組における地合を良化させる押付圧を求め、該第1の組に含まれる対向脱水ブレードの押付圧を維持して、第2の組に含まれる対向脱水ブレードの押付力をほぼ同時に変更させて調整する。次いで、第3の組以後を順番で押付圧の調整を行って最適な地合を求めるようにしたものである。
【0021】
また、請求項6の発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置は、前記複数基の対向脱水ブレードまたは複数基の対向脱水ブレードの組み合わせた組について、任意の順番でそれぞれの対向脱水ブレードまたはそれぞれの組に含まれる対向脱水ブレードの押付圧を地合が良化する大きさに順次調整することを継続的に繰り返して、地合をより良化させることを特徴としている。
【0022】
すなわち、複数基の対向脱水ブレードのワイヤに対する押付圧の調整を、最適に地合の状態を得ることができるまで繰り返すようにしたものである。
【0023】
また、請求項7の発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置は、前記オンライン地合計は、投光手段と、該投光手段から発せられて紙匹を透過した検出光による画像を撮影する画像取得手段とからなり、前記画像取得手段で検出光の光量の二次元分布を求め、前記光量の変動を基に地合指数を算出するものであることを特徴としている。
【0024】
オンライン地合計としては、レーザー光源と受光センサとで構成し、これらを抄紙機の幅方向に往復移動させながらレーザー光を紙匹に照射し、紙匹を透過した光量を受光センサで捕捉して、該光量の一次元的分布で地合を評価するものがあり、この一次元的なオンライン地合計を本願発明に利用できることは勿論である。さらに本願発明では、投光手段と、該投光手段から発せられて紙匹を透過した光量の二次元分布を求める画像取得手段とを組み合わせたオンライン地合計を用いるようにしたものである。画像取得手段としてはビデオカメラを用いることができる。また、前記投光手段と画像取得手段とを紙匹の幅方向に往復移動させるもの、定位置に固定したもののいずれであっても構わない。
【0025】
なお、地合指数は、紙の品質の良否を評価するものとして、例えば、単位面積当たりの透過光量の平均値に対する実際の透過光量のばらつき値(標準偏差)との比で表され、値の小さい方が地合は良好なものとされる。
【0026】
また、請求項8の発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置は、前記オンライン地合計を、プレドライヤの出口よりも下流側に設置したことを特徴としている。
【0027】
ワイヤパートの途中で地合データを取得する場合には、データの取得位置よりも下流側で地合の状態が変化するおそれがある。製品としての紙の地合の良否を確実に評価するには、完成された紙について行う必要がある。抄紙機では、ワイヤパートでほぼ地合が決定されることになるから、ワイヤパート以降の走行域であれば構わないが、ある程度水分が除去された状態にあるプレドライヤの出口以降とすることにより、より完成品に近い紙について地合データを取得するようにしたものである。
【0028】
また、この発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整方法は、紙匹の地合をモニタリングするオンライン地合計と、ツインワイヤフォーマ部に設けた、ワイヤにパルス状の圧力を与える対向脱水ブレードとを有する抄紙機において、前記オンライン地合計で地合の状態に関する地合データを取得し、前記対向脱水ブレードのワイヤへの押付圧を取得し、前記地合データをもとに地合を良化させる前記対向脱水ブレードによる押付圧を求め、求められた押付圧により前記対向脱水ブレードによるワイヤへの押付圧を調整することにより地合を良化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置及び地合調整方法によれば、抄紙機上の紙匹の地合の状態を把握して、対向脱水ブレードのワイヤに対する押付圧を調整することにより地合の良化を図ることができる。したがって、製造中の紙の地合を常に良好なものとすることができる。
【0030】
また、複数基の対向脱水ブレードのそれぞれを順番に、あるいは複数基の対向脱水ブレードを組み合わせて適宜数の組を作り、同じ組に含まれる対向脱水ブレードを同時にして、押付圧を変更することにより、当該時における最良の地合となるように該押付圧を調整することを順次行うようにしたから、確実に最良の地合となる紙を得ることができる。
【0031】
また、オンライン地合計に投光手段と二次元分布を取得する画像取得手段とを備えたものとすることにより、紙の地合の評価精度を高めて、より地合の良好な紙を製造することができる。
【0032】
また、オンライン地合計をプレドライヤの出口以降に設置することにより、紙の乾燥が促進された状態となり、地合の状態が安定した位置の紙について地合を評価するから、製造された紙の地合を確実に良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明に係る抄紙の地合調整装置を備えたツインワイヤフォーマ式抄紙機を説明するための側面図である。
【図2】この発明に係る地合調整装置を備えた抄紙機のツインワイヤフォーマ部の概略を示す側面図である。
【図3】この発明に係る地合調整装置により地合を調整する手順を説明するためのグラフである。
【図4】この発明に係る地合調整装置により地合を調整する他の手順を説明するためのグラフである。
【図5】この発明に係る地合調整装置により地合を、図3に示す手順による調整を実行する場合の例を説明する表である。
【図6】この発明に係る地合調整装置により地合の調整を実施した際のデータを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置を具体的に説明する。なお、併せて地合調整方法も説明する。
【0035】
図1は、この発明に係る地合調整装置を具備させるのに適したツインワイヤフォーマ式抄紙機を説明するための概略の側面図である。この抄紙機は、ストックインレット1から噴射された製紙原料が、ワイヤパート2とプレスパート3、ドライパートのプレドライヤ4、サイズプレス5、アフタードライヤ6、カレンダパート7の順に走行して、リールに巻き取られて巻取紙Sとなる。
【0036】
前記ワイヤパート2は、前記ストックインレット1から噴射された製紙原料を載置して無端循環移動する下側ワイヤ2aと該下側ワイヤ2aの途中で該下側ワイヤ2aと並走すると共に、下側ワイヤ2a上の製紙原料を該下側ワイヤ2aと協働して挟持することにより紙層を良好なものに形成するツインワイヤフォーマ部を構成する上側ワイヤ2bとを備えている。図2に示すように、前記上側ワイヤ2bの製紙原料と接触する走行域には製紙原料が接する面と反対側の面に脱水ブレード11が設けられている。また、下側ワイヤ2aの製紙原料が接する面と反対側の面であって、前記脱水ブレード11が配設さている間位置に臨んで対向脱水ブレード12a、12b、12cが設けられている。これら対向脱水ブレード12a、12b、12cには、ブレード進退手段としての駆動チューブ13を連係させてあり、この駆動チューブ13の膨張と収縮とにより対向脱水ブレード12a、12b、12cを下側ワイヤ2aに対して進退させることができ、その移動量によって下側ワイヤ2aに対する押付圧が変更させることになる。
【0037】
また、図1に示すように、カレンダパート7の下流であって巻取紙Sが完成する直前にはオンライン地合計15が設けられている。このオンライン地合計15は、投光手段15aと画像取得手段としてのビデオカメラ15bとが、紙Pを上下方向で挟む位置に配されており、投光手段15aから発せられて紙匹Pを透過した検出光をビデオカメラ15bで捕捉するものとしてある。なお、このオンライン地合計15の設置位置は、プレドライヤ4の出口以降であれば、いずれの位置であっても構わない。すなわち、前述したように、紙匹Pの地合はワイヤパート2を通過した後でほぼ安定し、ある程度乾燥が進んだ状態となるプレドライヤ4の出口よりも下流側とすることが好ましい。
【0038】
前記オンライン地合計15のビデオカメラ15bで捕捉された検出光の二次元画像は、制御手段16に提供される。また、この制御手段16には前記対向脱水ブレード12a、12b、12cのそれぞれに連係した前記駆動チューブ13へ加えている圧力値が提供されており、また、この制御手段16からはこの駆動チューブ13を作動させる圧力を調整して供給するよう、この駆動チューブ13へ圧力を供給するレギュレータの動作を行わせる動作信号を送出する。
【0039】
以上により構成されたこの発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置の作用を説明する。
【0040】
ストックインレット1から噴射された製紙原料は下側ワイヤ2a上に拡散して、該下側ワイヤ2aの走行により搬送させる。下側ワイヤ2aがツインワイヤフォーマ部に達すると、製紙原料が該下側ワイヤ2aと前記上側ワイヤ2bとに挟持される。この上側ワイヤ2bは前記脱水ブレード11を擦過しながら走行することにより、製紙原料が含有する水分が掻き取られる。また、下側ワイヤ2aは前記対向脱水ブレード12を擦過しながら走行することにより、製紙原料が含有する水分が掻き取られる。このとき、脱水ブレード11と対向脱水ブレード12とが上下のワイヤ2a、2bに押し付けられているから、これらワイヤ2a、2bとこれらに挟持されている製紙原料にはパルス状に圧力が加えられることになる。このため、製紙原料が脱水されながらパルプ繊維をさらに分散させて、地合の均一化が図られることになる。このとき、対向脱水ブレード12のワイヤ2a、2bに対する押付圧が変化することにより、製紙原料に加えられる圧力が変化されるから、パルプ繊維の分散状態が変化し、地合の状態が変化する。
【0041】
前記ワイヤパート2で紙層が形成された紙匹Pは、プレスパート3、プレドライヤ4、サイズプレス5、アフタードライヤ6、カレンダ7を通過することにより、順次搾水と乾燥、塗工、乾燥、仕上げの処理が施されて、巻取紙Sとして完成する。この巻取紙Sとして巻き取られる際に、前記オンライン地合計15を通過することになる。このオンライン地合計15では、前記投光手段15aから紙匹Pに向けて発せられ、該紙匹Pを透過した検出光が前記ビデオカメラ15bで捕捉されて、検出光が紙匹を透過した状態の光量の二次元分布で捕捉される。
【0042】
前記オンライン地合計15のビデオカメラ15bで捕捉された検出光の分布が前記制御手段16に提供される。制御手段16では提供された検出光の光量の二次元分布より地合指数を求める。また、このときの前記対向脱水ブレード12のワイヤ2a、2bに対する押付圧は、前記駆動チューブ13に対する作動圧として制御手段16に記録されている。
【0043】
制御手段16は、前記対向脱水ブレード12の駆動チューブ13へ加える圧力の大きさを変更するようレギュレータを作動させる。例えば、加圧すると、駆動チューブ13が膨張するから前記対向脱水ブレード12を前進させて、ワイヤ2a、2bに押し付けられて押付圧が増加する。また、減圧すると、駆動チューブ13の収縮により対向脱水ブレード12が後退して、ワイヤ2a、2bに対する押付圧が減少する。
【0044】
ワイヤ2a、2bに対する押付圧が変更されることにより、製紙原料中のパルプ繊維へ付与されるパルス状の圧力の振幅が変更される。これにより、該パルプ繊維が製紙原料中への分散態様が変化して、地合が変更させることになる。したがって、前記オンライン地合計15により捕捉された検出光の光量の二次元分布から地合を良化させることとなる対向脱水ブレード12のワイヤ2a、2bに対する押付圧を求めて、当該押付圧で対向脱水ブレード12をワイヤ2a、2bに押し付けることにより地合を良好なものとすることができる。
【0045】
図3を参照して、効率よく対向脱水ブレード12による押付圧を求める手順を説明する。同図は、縦軸を地合指数とし、横軸を押付圧としたグラフであり、例えば、当初の地合指数と押付圧との関係が座標t0で示す値を示しているものとする。この状態から押付圧を座標t1で示す値まで増加させ、そのときの地合指数が同じく座標t1で示す値に変化する。この変化は地合指数が減少しているものであるから、地合指数が良化していることを示す。このため、さらに押付圧を増加させる。これにより押付圧と地合指数とが、座標t2で示す値まで移行したとすると、地合指数が減少して座標t1の状態よりも良化している。このため、さらに押付圧を増加させる。これにより押付圧と地合指数とが、座標t3に移行したとすると、さらに地合が良化されている。このため、さらに押付圧を増加させて、座標t4で示す値の押付圧と地合指数となった。このとき、地合指数が座標t3の値よりも増加した。すなわち、座標t3の値よりも地合が劣化したことを示している。すなわち、前記座標t3で示す押付圧で対向脱水ブレード12をワイヤ2a、2bに押し付けることにより、最良の地合の状態を得ることができる。
【0046】
ところで、前記対向脱水ブレード12は、脱水ブレード11と共に複数基が設置されている。このため、対向脱水ブレード12a、12b、12cのそれぞれの押付力を調整することにより、より地合の状態を良化させることができる。図4を参照して、複数基の対向脱水ブレード12a、12b、12c、……、12nを備えた場合に最良の地合を求める手順を説明する。対向脱水ブレード12a、12b、12c、……、12nのいずれも押付圧を一定とした状態で、例えば対向脱水ブレード12aによる押付圧を変化させて、その変化による地合指数の変化を、図3で説明した手順で求める。図4において、対向脱水ブレード12aについて前述の手順を実行した場合には、曲線L1に示す状態で押付圧と地合指数とが変化し、t10において最も良好な地合指数が得られたものとする。この際の対向脱水ブレード12aによる押付圧を固定した状態で、対向脱水ブレード12bについて前述の手順を実行する。対向脱水ブレード12bについて最良の地合指数を求める場合には、図4における曲線L2に示す状態で押付圧と地合指数とが変化するものとする。対向脱水ブレード12bによる押付圧を曲線L1上の座標t10で示す値とした場合には、曲線L2上では座標t11となって地合指数が減少して地合の状態がさらに良化している。そして、対向脱水ブレード12bの押付圧を増加させて曲線L2の座標t12で示す値とした場合に、地合指数が減少しており地合が良化している。このため、押付圧を増加させて地合の状態を確認するように前述と同様の手順を行って、地合の状態が最良となる対向脱水ブレード12bによる押付圧を求める。そして、これら対向脱水ブレード12a、12bの押付圧を固定して、対向脱水ブレード12cから対向脱水ブレード12nまでの順で前述した手順を行って、最良な地合指数と示すこととなるこれら対向脱水ブレード12a、12b、12c、……、12nによる押付圧を求めて、当該押付圧によりワイヤ2a、2bを押し付けて抄紙機を運転する。
【0047】
図3を参照して説明した手順では、対向脱水ブレード12a、12b、12c、……12nを1基ずつについて押付圧を変更するものとして説明したが、複数基の対向脱水ブレード12a、12b、12c、……12nを適宜な数で組み合わせて適宜数の組をつくり、一つの組に含まれる対向脱水ブレード12については同時に押付圧を変更することにより良化された地合の状態となるように押付圧を調整するようにしても構わない。すなわち、図5は、例えば10基の対向脱水ブレード12を備えた場合に、これら対向脱水ブレード12の押付圧を調整する手順を例示した表である。なお、対向脱水ブレード12には製紙原料の走行方向の上流側から順に1から10までの番号を付してある。すなわち、同図において例1では、1番から10番までの対向脱水ブレード12について地合の状態が良化するときの押付圧を求めるものである。また、例2では、10番から1番まで、すなわち例1の場合とは逆の順番で対向脱水ブレード12の押付圧を変化させて地合を良化させる押付圧を求めるものである。
【0048】
また、図5における例3では、1番から4番までの対向脱水ブレード12については、それぞれ1基ずつで押付圧の調整を行った後、5番と6番、7番と8番、9番と10番のそれぞれを2基ずつ組み合わせた3組について、同じ組に含まれる対向脱水ブレード12の押付圧をほぼ同時に変更することで良化した状態の地合となる押付圧を求める。この手順を全ての組について行って最良の地合となる押付圧を求めている。
【0049】
また、図5における例4では、10基の対向脱水ブレード12を2基ずつ組み合わせて5組にして、それぞれの組に含まれる対向脱水ブレード12の押付圧をほぼ同時に調整することにより地合が良化した状態となる押付圧を求める手順を、各組で順次実行するようにしたものである。また、図5における例5は、対向脱水ブレード12を1基ずつで押付圧を、地合が良化するように調整するものであるが、その順序は、製紙原料の流れ方向に沿った順番でなく、適宜な順序としてある。
【0050】
さらに、前記図3で説明した手順または図4で説明した手順を、繰り返すことで、より良化した地合の状態を確保できることになる、対向脱水ブレード12のそれぞれの押付力を得ることができる。例えば、対向脱水ブレード12aについて最適な押付力が求められたとしても、対向脱水ブレード12bや対向脱水ブレード12c等について最良の押付力が求められた場合に、対向脱水ブレード12aについてさらに地合を良化することができる押付力が存在する可能性がある。このため、複数の対向脱水ブレード12の全てについて押付力が求められた状態で、再び最初の手順に戻って、押付力を求める手順を繰り返しても構わない。
【0051】
(実施例)
6基の対向脱水ブレードについて、地合指数を良化させる押付圧を求めたので、その結果を図6に示す。この操作は、対向脱水ブレード12を1基ずつで順番に押圧力を調整したものである。
6基の対向脱水ブレード12の押付圧を10(kPa)で等しく設定して抄紙機を運転した時に得られた地合指数が「95.0」となった。この状態で、第1の対向脱水ブレード12(#1)の押付圧を12(kPa)に増加させると、地合指数が「96.2」となり地合の状態が劣化した。このため、対向脱水ブレード12(#1)の押付圧を8(kPa)に減じた。このとき、地合指数が「94.8」となり地合が良化した。次いで、押付圧を、6(kPa)、4(kPa)の順で減じたところ、4(kPa)では地合が劣化した。このため、地合指数が「93.7」となって地合が最良となった6(kPa)に第1の対向脱水ブレード12(#1)の押付圧を固定した。この状態で、第2の対向脱水ブレード12(#2)の押付圧を、前述と同様に、順に変更させたところ、6(kPa)の時に地合指数が「92.1」となって地合が良化された。このため、第2の対向脱水ブレード12(#2)の押付圧を6(kPa)に固定した。この状態で、第3の対向脱水ブレード12(#3)について、同様の手順で地合が最良となる押付圧を求め、同様に、第4から第6までの対向脱水ブレード12の押付圧を求める。その結果、図6の最下欄に示すように、第1の対向脱水ブレード12から順に、6、6、8、10、14、14(kPa)の押付圧とした場合に、地合指数が「90.2」となって最良の状態の地合を得ることができた。
【0052】
なお、前述した手順で、図6の最下欄に示すように得られた押付圧の状態から、さらに第1の対向脱水ブレード12(#1)の押付圧を調整することにより地合を良化することができる可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明に係る抄紙機における抄紙の地合調整装置及び地合調整方法によれば、完成された紙の地合が最良な状態となるための対向脱水ブレードによる押付力を、迅速に、しかも確実に求めることができるから、最良の状態の地合を備えた紙を製造することに寄与する。
【符号の説明】
【0054】
1 ストックインレット
2 ワイヤパート
2a 下側ワイヤ
2b 上側ワイヤ
3 プレスパート
4 プレドライヤ
5 サイズプレス
6 アフタードライヤ
7 カレンダ
11 脱水ブレード
12a、12b、12c 対向脱水ブレード
13 駆動チューブ(ブレード進退手段)
15 オンライン地合計
15a 投光手段
15b ビデオカメラ(画像取得手段)
16 制御手段
S 巻取紙
P 紙匹

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙匹の地合をモニタリングするオンライン地合計と、ツインワイヤフォーマ部に設けた、ワイヤにパルス状の圧力を与える対向脱水ブレードとを有する抄紙機において、
前記オンライン地合計で取得した地合の状態に関する地合データと、前記対向脱水ブレードのワイヤへの押付圧とを取得する制御手段を備え、
前記対向脱水ブレードによる押付圧を調整するブレード進退手段を備え、
前記地合データをもとに地合を良化させる前記対向脱水ブレードによる押付圧を求め、
求められた押付圧により前記ブレード進退手段を駆動してワイヤへの押付圧を調整することにより地合の良化を行うことを特徴とする抄紙機における抄紙の地合調整装置
【請求項2】
前記対向脱水ブレードによる押付圧は、前記ブレード進退手段による移動の前後における地合データを比較し、より良化された地合データを取得できる大きさとすることを繰り返すことにより最適な大きさを求めることを特徴とする請求項1に記載の抄紙機における抄紙の地合調整装置。
【請求項3】
前記対向脱水ブレードを複数基設置し、それぞれの対向脱水ブレードに各別に前記ブレード進退手段を連係させて、それぞれの対向脱水ブレードの押付圧を各別に調整することにより最良の地合に調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抄紙機における抄紙の地合調整装置。
【請求項4】
前記複数基の対向脱水ブレードについて、任意の順番でそれぞれの対向脱水ブレードの押付圧を、地合が良化する大きさに順次調整することを特徴とする請求項3に記載の抄紙機における抄紙の地合調整装置。
【請求項5】
前記複数基の対向脱水ブレードを任意の個数で組み合わせ、該組み合わせについて任意の順番でそれぞれの組み合わせに含まれる対向脱水ブレードの押付圧を、地合が良化する大きさに順次調整することを特徴とする請求項3に記載の抄紙機における抄紙の地合調整装置。
【請求項6】
前記複数基の対向脱水ブレードまたは複数基の対向脱水ブレードの組み合わせた組について、任意の順番でそれぞれの対向脱水ブレードまたはそれぞれの組に含まれる対向脱水ブレードの押付圧を地合が良化する大きさに順次調整することを継続的に繰り返して、地合をより良化させることを特徴とする請求項4また請求項5に記載の抄紙機における抄紙の地合調整装置。
【請求項7】
前記オンライン地合計は、投光手段と、該投光手段から発せられて紙匹を透過した検出光による画像を撮影する画像取得手段とからなり、
前記画像取得手段で検出光の光量の二次元分布を求め、
前記光量の変動を基に地合指数を算出するものであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の抄紙機における抄紙の地合調整装置。
【請求項8】
前記オンライン地合計を、プレドライヤの出口よりも下流側に設置したことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の抄紙機における抄紙の地合調整装置。
【請求項9】
紙匹の地合をモニタリングするオンライン地合計と、ツインワイヤフォーマ部に設けた、ワイヤにパルス状の圧力を与える対向脱水ブレードとを有する抄紙機において、
前記オンライン地合計で地合の状態に関する地合データを取得し、
前記対向脱水ブレードのワイヤへの押付圧を取得し、
前記地合データをもとに地合を良化させる前記対向脱水ブレードによる押付圧を求め、
求められた押付圧により前記対向脱水ブレードによるワイヤへの押付圧を調整することにより地合を良化させることを特徴とする抄紙機における抄紙の地合調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74533(P2011−74533A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227553(P2009−227553)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】