説明

抄紙機の歩留まりおよび濾水性を向上させるデンプンの変性方法

金属ケイ酸塩を用いてデンプンを変性する方法、およびセルロース繊維組成物の製造における変性されたデンプンの使用を開示する。本方法はさらに、金属ケイ酸塩によって変性されたデンプンを組み入れたセルロース繊維組成物、例えば紙および板紙に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ケイ酸塩を用いるデンプンの変性、およびセルロース繊維組成物の製造における変性されたデンプンの使用に関する。本発明はさらに、金属ケイ酸塩により変性されたデンプンを組み入れたセルロース繊維組成物、例えば紙および板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維シート、特に、紙および板紙の製造は、1) セルロース繊維の水性スラリーを製造する工程;前記水性スラリーは、無機鉱物増量剤(extender)または顔料も含み得んでいてよい;2) このスラリーを、移動しつつある製紙用ワイヤまたは製紙用ファブリック上に堆積させる工程;および3) 濾水することによって、スラリーの固形成分からシートを形成する工程を含む。
【0003】
上記の工程に次いで、シートをプレスおよび乾燥してさらに水を除去する。製紙方法をより低コスト化、迅速化するために、および/または最終紙製品に特定の性質を付与するために、シート作製工程の前に、有機および無機の化学薬品がスラリーに添加されることが多い。
【0004】
製紙業界は、紙の品質を向上させ、生産性を上げ、また製造コストを下げるよう絶えず努力している。濾水/脱水および固形分の歩留まり(solid retention)を向上させるために、繊維スラリーが製紙用ワイヤまたは製紙用ファブリックに達する前に、繊維スラリーに化学薬品が添加されることが多い。これらの化学薬品は、歩留まり向上剤および/または濾水性向上剤と呼ばれている。
【0005】
製紙用ワイヤまたは製紙用ファブリック上での繊維スラリーの濾水すなわち脱水工程は、しばしば、より速い工程速度を達成することを制限する工程となる。また、脱水性が向上すると、プレス工程および乾燥機工程において、より乾燥したシートを得ることもできるため、結果的に、エネルギーまたはスチームの消費が少なくなる。さらに、シート最終特性の多くを決定するのは、製紙方法におけるこの工程である。
【0006】
製紙歩留まり向上剤は、ペーパーウェブを濾水し形成するタービュラント(turbulent)工程の間に、完成紙料(furnish)の微細固形分のウェブへの保持を増加させるために用いられる。微細固形分の歩留まりが不十分であると、それらは、工程流出物へと失われるか、または白水循環ループ中に高濃度で蓄積されて析出物の成長を引き起こす潜在的な要因となるかのいずれかである。さらに、歩留まりが不十分であると、それぞれの紙の不透明度、紙力、またはサイジング性を付与するために繊維に吸着させようとする添加剤の損失が起こることから、製紙メーカーのコストが増大する。
【0007】
カチオン化デンプンは、製紙業界において広く利用されている。カチオン化デンプンは、繊維間結合を増すためおよび紙力特性を得るために、合成内部サイジング剤〔例えば、アルケニル無水コハク酸(ASA)〕を乳化させるために、または濾水性を付与するために、パルプスラリーに導入される。
【0008】
金属ケイ酸塩(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、およびメタケイ酸ナトリウムを含む)は、紙および水処理を含む多くの産業において広く利用されている汎用化学製品である。
【0009】
米国特許第5185206号には、Rushmereは、製紙のための改良された濾水性向上剤および歩留まり向上剤が教示されている。この濾水性向上剤および歩留まり向上剤は、パルプを含む水性完成紙料に添加され、ケイ酸塩化されたカチオン化デンプン組成物(この組成物は、約1〜25質量%のシリカを含み、かつ、カチオン化デンプンの顆粒であって、その表面に堆積された水溶性ポリシリケートミクロゲルの状態のシリカを有する顆粒から本質的になる乾燥固体であり、場合により、ケイ酸塩化されたデンプン顆粒との混合物として、シリカミクロゲルの離散型凝集体をさらに含む)を含む。この1成分形の製品は、大量の水の輸送を回避することができるので、コロイダルシリカの配合を凌ぐ利便性および経済性をもたらす乾燥固体である。この発明の実施においては、できるだけ多量のミクロゲルを、デンプン顆粒の各々の表面に堆積させることが好ましい。これにより、デンプンが後で、使用される直前に水中で加熱される時に、ミクロゲルの最も望ましい再分散が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5185206号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「Perry's Chemical Engineers' Handbook」、第7版(McGraw-Hill、ニューヨーク、1999年)、18〜78頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
予想外にも、カチオン化デンプンに金属ケイ酸塩を添加すると、歩留まりおよび濾水性能が著しく向上することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、金属ケイ酸塩を用いて変性されたカチオン性もしくは両性の多糖または多糖誘導体を添加することによって、製紙プロセスにおける歩留まりおよび濾水性を向上させる方法を記載する。
【0014】
本発明の方法は、金属ケイ酸塩の添加によって、カチオン性もしくは両性の多糖または多糖誘導体を変性する方法も提供する。
【0015】
本発明は、金属ケイ酸塩によって変性された、カチオン性もしくは両性の多糖または多糖誘導体も提供する。
【0016】
本発明の一実施形態において、カチオン性もしくは両性の多糖または多糖誘導体は、カチオン化デンプンもしくは両性デンプンである。
【0017】
製紙用スラリーに、少なくとも1種の多糖または多糖誘導体を添加する工程を含む製紙方法も開示する。ここで、前記多糖または多糖誘導体は、少なくとも1種の金属ケイ酸塩により変性されており、前記少なくとも1種の多糖または多糖誘導体は、カチオン性窒素基を有する多糖誘導体、カチオン性多糖とアニオン性多糖とのブレンド、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
カチオン化デンプンに金属ケイ酸塩を添加すると、濾水性の劇的な向上をもたらすことが見出された。最良の結果は、デンプンが蒸煮(cook)された後でデンプンに金属ケイ酸塩を添加する場合に得られる。金属ケイ酸塩は、デンプンがまだ高温の状態にある間に、あるいは、デンプンが周囲温度まで冷めた後で、添加することができる。歩留まりおよび濾水性能の向上は、デンプンを添加し蒸煮する前に、水に金属ケイ酸塩を添加することでも認められた。本発明の一実施形態において、金属ケイ酸塩はケイ酸ナトリウムである。金属ケイ酸塩は、ケイ酸カリウムまたはメタケイ酸ナトリウムであってもよい。
【0019】
本発明の方法において用いる材料は、セルロースパルプと、金属ケイ酸塩により変性された少なくとも1種のデンプンとを含む。1種または複数の追加の材料(これらに限定されないが、追加の未変性デンプン、フィラー、無機もしくは有機の凝結剤、通常の凝集剤、および少なくとも1種の有機もしくは無機の濾水性向上剤を含む)も、本発明の方法において用いることができる。
【0020】
本発明の一実施形態において、カチオン性もしくは両性の多糖または多糖誘導体は、カチオン化デンプンもしくは両性デンプンである。
【0021】
異なる材料が本発明の方法に導入される順序は、上記議論において前述した順序に限定されないが、一般に、それぞれの特定の用途に求められる実用性および性能に基づく。
【0022】
本発明の方法に適するセルロース繊維パルプには、伝統的な化学パルプなどの従来の製紙用紙料が含まれる。例えば、漂白および無漂白の硫酸塩パルプおよび亜硫酸塩パルプ、機械パルプ(例えば、砕木など)、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、古紙パルプ(recycled pulp)(例えば、古い段ボール容器、新聞紙、オフィス廃紙、雑誌および他の非脱インク廃棄物、脱インク廃棄物など)、ならびにこれらの混合物を用いることができる。
【0023】
フィラーは製紙に用いられる。フィラーはセルロース製品に光学的性質を付与する。それは、仕上がったシートに、不透明性および明るさを付与し、その印刷性を向上させる。好適なフィラーには、炭酸カルシウム(粉砕した天然に産する炭酸塩と、合成により製造された沈降炭酸塩との両方)、二酸化チタン、タルク、クレー、および石膏が含まれる。用いるフィラーの量は、パルプの乾燥質量に対して最高で約50質量パーセントまでのフィラーのセルロース製品が結果的に得られる量であってよい。
【0024】
凝結剤は、歩留まりおよび濾水性を向上させるために用いられる。凝結剤は、無機または有機のいずれであってもよい。最も一般的な無機凝結剤は、アルミナ類である。適切な例には、これらだけに限定されないが、工業用グレード硫酸アルミニウム(alum)、ポリ塩化アルミニウム、ポリヒドロキシ塩化アルミニウム(polyhydroxy aluminum chloride)、ポリヒドロキシ硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムなどが含まれる。有機凝結剤は、典型的には、合成ポリマー材料である。好適な例には、これらだけに限定されないが、ポリアミン、ポリ(アミドアミン)、ポリDADMAC(ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド))、ポリエチレンイミン、N-ビニルホルムアミドポリマーおよびコポリマーの加水分解物および四級化加水分解物などが含まれる。
【0025】
凝結剤は、一般に、パルプの乾燥質量に基づいて、セルロースパルプ1トン当たり約0.05ポンド(0.35 kg)から1トン当たり約50ポンド(350 kg)までの比で用いられる。凝結剤の濃度は、パルプの1トン当たり約0.5ポンド(3.5 kg)から、1トン当たり約20ポンド(140 kg)まで、または、パルプの1トン当たり約1ポンド(7 kg)から、1トン当たり約10ポンド(70 kg)までであってよい。
【0026】
イオン性凝集剤は、製紙技術において従来から用いられている。カチオン性、アニオン性、ノニオン性、および両性の凝集剤、特に、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、および両性のポリマーを使用することができる。凝集剤として好適なポリマーには、これらだけに限定されないが、ノニオン性のエチレン性不飽和モノマーのホモポリマーが含まれる。2種以上のノニオン性エチレン性不飽和モノマーを含むモノマーのコポリマーも用いることができ、少なくとも1種のノニオン性エチレン性不飽和モノマーと、少なくとも1種のカチオン性エチレン性不飽和モノマーおよび/または少なくとも1種のアニオン性エチレン性不飽和モノマーとを含むモノマーのコポリマーも用いることができる。適切なノニオン性エチレン性不飽和モノマーには、これらだけに限定されないが、アクリルアミド;メタクリルアミド;N-アルキルアクリルアミド(例えば、N-メチルアクリルアミドなど);N,N-ジアルキルアクリルアミド(例えば、N,N-ジメチルアクリルアミドなど);メチルアクリレート;メチルメタクリレート;アクリロニトリル;N-ビニルメチルアセトアミド;N-ビニルメチルホルムアミド;酢酸ビニル;N-ビニルピロリドン;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートもしくはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど);前述したいずれかの混合物などが含まれる。前述したものの中で、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびN-アルキルアクリルアミドが好ましく、アクリルアミドが特に好ましい。
【0027】
用いることができるカチオン性エチレン性不飽和モノマーには、これらだけに限定されないが、ジアリルアミン、ジアルキルアミノアルキル化合物の(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル化合物の(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミドのN-ビニルアミン加水分解物、ならびにこれらの塩および四級化物が含まれる。N,N-ジアルキルアミノアルキルアクリレートおよびメタクリレート、ならびにこれらの酸および四級化塩が好ましく、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物が特に好ましい。
【0028】
適切なアニオン性エチレン性不飽和モノマーには、これらだけに限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの塩;2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホネート;スルホエチル(メタ)アクリレート;ビニルスルホン酸;スチレンスルホン酸;マレイン酸および他の二塩基酸、ならびにこれらの塩が含まれる。アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの塩が好ましく、アクリル酸のナトリウム塩およびアンモニウム塩が特に好ましい。
【0029】
カチオン性ポリマー凝集剤は、一般に、1種または複数の上述したカチオン性モノマーを含む。カチオン性モノマーの合計量は、モル濃度に基づいて、約1から約99%、好ましくは約2から約50%、より一層好ましくは約5から約40モル%のカチオン性モノマーの範囲にあることができ、残りのモノマーは、前記非イオン性モノマーの1つである。
【0030】
アニオン性ポリマー凝集剤は、一般に、1種または複数の上述したアニオン性モノマーを含む。アニオン性モノマーの合計量は、モル濃度に基づいて、約1から約99%、好ましくは約2から約50%、より一層好ましくは約5から約40モル%のアニオン性モノマーの範囲にあることができ、残りのモノマーは、前記非イオン性モノマーの1つである。
【0031】
両性ポリマー凝集剤は、1種または複数の上記カチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーの組合せを含む。少なくとも1種のカチオン性モノマーおよび少なくとも1種のアニオン性モノマーを用いること条件として、カチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーの任意の組合せを用いることができる。ポリマーは、過剰のカチオン性モノマー、過剰のアニオン性モノマー、または、カチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーの両方の等量を含むことができる。イオン性モノマーの合計量(カチオンおよびアニオンモノマーの両方を合わせた量)は、モル濃度に基づいて、約1から約99%、好ましくは約2から約80%、より一層好ましくは約5から約40モル%のイオン性モノマーの範囲にあり、残りのモノマーは、前記非イオン性モノマーの1つである。凝集剤は、パルプの乾燥質量に基づいて、セルロースパルプの1トン当たり約0.01ポンド(0.007 kg)から、1トン当たり約10ポンド(70 kg)までの比の活性ポリマー質量で使用することができる。凝集剤の濃度は、より好ましくは、パルプの1トン当たり約0.05ポンド(0.35 kg)から、1トン当たり約5ポンド(35 kg)、より一層好ましくは、1トン当たり約0.1ポンド(0.7 kg)から、1トン当たり約1ポンド(7 kg)である。
【0032】
従来の凝集剤に加えて、無機もしくは有機の濾水性向上剤(当技術分野において、ミクロ粒子、ミクロポリマー、有機ミクロビーズ、または会合性ポリマーとして知られているもの)も用いることができる。
【0033】
用いる無機ミクロ粒子には、シリカ系粒子、シリカミクロゲル、コロイダルシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸塩、ポリケイ酸塩ミクロゲル、アルミノケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ポリホウケイ酸塩、およびゼオライトからなる群から選択される任意の材料が含まれる。無機ミクロ粒子は、膨潤性クレー(これらだけに限定されないが、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、サウコナイト(sauconite)、ホルマイト(hormite)、アタパルジャイト、およびセピオライトと呼ばれることが多いクレーを含む)であってもよい。
【0034】
ミクロポリマーまたは有機ミクロビーズは、架橋されたカチオン性もしくはアニオン性の有機ポリマーミクロ粒子であり、約750ナノメートル未満の数平均非膨潤粒子径、およびポリマーに存在するモノマー単位に対して約4モルppmを超える架橋剤含量を有し、一般に、前記架橋剤の存在下で、少なくとも1種のエチレン性不飽和カチオンもしくはアニオンモノマーおよび任意選択で存在していてもよい少なくとも1種の非イオン性コモノマーの重合によって形成される。ミクロポリマーの1つの例は、Polyflex(登録商標)(CIBA Corporation、Tarrytown、ニューヨーク州)である。
【0035】
本発明において有用な会合性ポリマーは、水溶性コポリマー組成物として記述することができ、ここで、逆相エマルジョンアニオン性コポリマーの会合性は、ジブロックおよびトリブロックポリマー界面活性剤から選択される乳化界面活性剤によって付与される。会合性の逆相エマルジョンアニオン性コポリマーは、少なくとも1つのノニオン性ポリマーセグメントと、少なくとも1つのアニオン性ポリマーセグメントとを含み、0.01MのNaCl中で求めて、0.75を超えるハギンス定数(k')、および、4.6Hzで、175Paを超える、1.5wt%の活性ポリマー溶液での貯蔵弾性率(G')を有する。会合性ポリマーの例には、これらだけに限定されないが、PerForm(登録商標)9232およびPerform(登録商標)7200(Hercules Incorporated、ウィルミントン、デラウェア州)が含まれる。
【0036】
デンプンは、セルロース製品の紙力特性を高める。特に、繊維間結合を強化することによって乾燥紙力を高める。デンプンは、濾水性にも影響を及ぼす。デンプンは、α-1,4結合を含むグルコースのポリマーの一般的名称である。デンプンは、天然に産する材料であり、この炭水化物は、ほとんどの陸上植物の葉、茎、根および果実に見出すことができる。デンプンの商業的供給源には、これらだけに限定されないが、穀物の種子(トウモロコシ(corn)、コムギ、米など)、および特定の根(ジャガイモ、タピオカなど)が含まれる。デンプンは、その植物原料によって記述され、例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、およびコムギデンプンが参照され得る。デンプンはグルコースの縮合ポリマーであると考えることができる。
【0037】
デンプンは、一般に、2つのタイプの多糖:本質的に線状のポリマーであるアミロース、および高度に分岐したポリマーであるアミロペクチンの混合物からなる。アミロースおよびアミロペクチンの相対量は供給源によってさまざまであり、アミロースおよびアミロペクチンの割合は、典型的には、タピオカでは17:83、ジャガイモでは21:79、トウモロコシ(corn)では28:72、またワキシートウモトコシ(waxy maize corn)では0:100である。これらは、典型的なデンプンに見られる割合であるが、本発明は、アミロースおよびアミロペクチンの任意の割合が本発明において有用であり得ることを想定する。本発明の目的では、ワキシートウモロコシはトウモロコシデンプンの1つのタイプであると考える。
【0038】
デンプンは植物によって合成され、各植物に特有である顆粒中に蓄積する。デンプン顆粒は、粉砕プロセスおよび微粉砕プロセスを通して植物から分離される。顆粒は冷水に不溶であり、その顆粒が膨潤し、壊れ、ポリマーが溶液に溶解するためには臨界温度を超えて加熱されなければならない。
【0039】
デンプンは、選択した用途において有用な特定の性質をもたらすように変性を施することができる。こうした変性には、物質の物理的構造または化学的構造、あるいはこれらの両方に対する変性が含まれる。物理的変性には分子量の低減が含まれ、これは、加水分解によって達成されることが最も多い。このような変性した物質は、誘導体化デンプンまたはデンプン誘導体と呼ばれることが多い。
【0040】
本発明は、カチオン性もしくは両性の多糖または多糖誘導体を、金属ケイ酸塩により変性する。カチオン性もしくは両性の多糖または多糖誘導体は、好ましくは、カチオン化デンプンもしくは両性デンプンまたはデンプン誘導体である。
【0041】
本発明の方法において使用し得るデンプンには、カチオン化デンプンおよび両性デンプンが含まれる。適切なデンプンには、トウモロコシ、ジャガイモ、コムギ、米、タピオカなどに由来するものが含まれる。カチオン性は、カチオン性基の導入によって付与され、両性は、さらにアニオン性基を導入することによって付与される。例えば、カチオン化デンプンは、デンプンを、第三級アミンまたは第四級アンモニウム化合物(例えば、ジメチルアミノエタノール、および3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)と反応させることによって得ることができる。カチオン化デンプンは、好ましくは、約0.01から約1.0、より好ましくは約0.01から約0.10、より好ましくは約0.02から0.04のカチオン置換度(D.S.)、すなわち、アンヒドログルコース1単位当たりの、ヒドロキシル基を置換したカチオン性基の平均数を有する。
【0042】
両性デンプンは、カチオン化デンプンにアニオン性基を加えることによって得ることができる。好ましい両性デンプンは、正味のカチオン性を有するものである。例として、アニオン性リン酸基が、リン酸塩またはリン酸エーテル化反応剤との反応を通じて、カチオン化デンプンに導入され得る。カチオン化デンプン出発材料が、ジエチルアミノエチルエーテル化デンプンである場合、変性に用いるリン酸反応剤の量は、好ましくは、1モルのカチオン性基当たり、0.07〜0.18モルのアニオン性基を提供する量である。
【0043】
使用し得る他の両性デンプンは、カチオン化デンプンに、スルホコハク酸基を導入することによって製造されるものである。この変性は、カチオン化デンプンにマレイン酸半エステル基を付加し、マレイン酸二重結合に硫酸水素ナトリウムを反応させることによって達成される。
【0044】
カチオン化デンプンは、また3-クロロ-2-スルホプロピオン酸によってもエーテル化することができ、カルボキシル基を、クロロ酢酸ナトリウムとの反応によって、または次亜塩素酸塩酸化によってデンプンに導入することができ、プロパンスルホンを、カチオン化デンプンを処理して両性を付与するために用いることができる。
【0045】
有用なさらなる両性デンプンは、ジエチルアミ-および2-(ヒドロキシプロピル)-トリメチルアンモニウムデンプンエーテルのキサントゲン酸エステル化によって得ることができる。
加えて、変性は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドによる処理によるノニオン基もしくはヒドロキシアルキル基の導入によって拡張することができる。
【0046】
使用する場所で糊化すること(gelatinizing)もしくは「蒸煮(cook)」することが必要であるデンプン、または、予備糊化された冷水分散デンプンを使用することができる。デンプン顆粒は水に不溶である。高温でのデンプンの糊化により、水のデンプン顆粒への浸透が引き起こされ、顆粒が壊れ、溶液中にデンプン分子が放出される。デンプン分子が溶液中に放出されると、結果的に溶液粘度が増加する。デンプンは、デンプンの水溶液を、50°から98℃の温度で、濃厚で透明な溶液が得られるまで10から90分間加熱することによって蒸煮される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態において、デンプンの水溶液は、典型的には、1から5%の範囲の濃度で調製する。デンプンは、パルプの乾燥質量に基づいて、セルロースパルプ1トン当たり約1ポンド(7 kg)から1トン当たり約100ポンド(700 kg)までの比で、セルロースパルプに添加される。デンプンの濃度は、より好ましくは、パルプ1トン当たり約2.5ポンド(17.5 kg)から1トン当たり約50ポンド(350 kg)まで、より一層好ましくは、1トン当たり約5ポンド(35 kg)から、1トン当たり約25ポンド(175 kg)までである。これらの質量は、デンプンを変性するために用いる金属ケイ酸塩の質量を含まない。本発明において、デンプンもしくはデンプンの一部は、セルロースパルプに添加される前に、金属ケイ酸塩によって変性される。
【0048】
本発明の方法において、金属ケイ酸塩は、好ましくは、パルプの乾燥質量に基づいて、セルロースパルプの1トン当たり約0.1ポンド(0.7 kg)から1トン当たり約10ポンド(70 kg)までの比で用いる。金属ケイ酸塩の濃度は、より好ましくは、パルプ1トン当たり約0.5ポンド(3.5 kg)から1トン当たり約5ポンド(35 kg)まで、より一層好ましくは、1トン当たり約1ポンド(7 kg)から1トン当たり約2ポンド(14 kg)までである。
【0049】
カチオン化デンプンと金属ケイ酸塩(SiO2として)との質量比は、1:10から100:1までさまざまであってよく、あるいは、1:1から50:1までさまざまであってよい。好ましい質量比は、約20:1から約2:1まで、15:1から2:1まで、10:1から2:1まで、または10:1から3:1までである。
【0050】
他の多糖も、金属ケイ酸塩による変性に用いることができる。これらには、以下に限定されないが、グアー、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなど)、キチンなどが含まれる。これらの他の多糖は、無置換であっても、カチオン性基、アニオン性基、またはカチオン性基もしくはアニオン性基の組合せによって置換されていてもよい。これらの多糖は、パルプの乾燥質量に基づいて、セルロースパルプ1トン当たり約1ポンド(7 kg)から、1トン当たり約100ポンド(700 kg)まで、好ましくは、パルプ1トン当たり約2.5ポンド(17.5 kg)から、1トン当たり約50ポンド(350 kg)まで、より一層好ましくは、1トン当たり約5ポンド(35 kg)から、1トン当たり25ポンド(175 kg)までの比で存在する。これらの質量は、多糖を変性するために用いる金属ケイ酸塩の質量を含まない。
【0051】
金属ケイ酸塩は、一般的に用いられる任意のアルカリケイ酸塩〔例えば、ケイ酸ナトリウム(別称「水ガラス」)、ケイ酸カリウム、およびメタケイ酸ナトリウム、または金属ケイ酸塩の任意の組合せを含む〕であってよい。ケイ酸ナトリウムのSiO2:Na2Oの質量比はさまざまであってよく、これは、2つの反応物の比によって製造時に制御される。市販のケイ酸ナトリウムのSiO2:Na2O比は、約3.22から約2.0までさまざまであってよい。ケイ酸カリウムのSiO2:K2O質量比は、約1.65から約2.50までさまざまであってよい。金属ケイ酸塩は、水溶液として、または乾燥粉末に作り変えたものとして入手できる。好ましい金属ケイ酸塩は、SiO2:Na2Oの比が3.22:1であるケイ酸ナトリウム溶液である。
【0052】
本発明において、多糖または多糖誘導体化を、少なくとも1種の金属ケイ酸塩によって変性させる。次いで、少なくとも1種の金属ケイ酸塩により変性された、変性後の多糖または誘導体化された多糖を、製紙プロセスに加える。
【0053】
本発明の一実施形態において、多糖または多糖誘導体は、カチオン化デンプンまたは両性デンプンである。デンプンを蒸煮した後、デンプンがまだ暖かい(>65℃)間に、かなり冷却された(30から65℃)後に、あるいは雰囲気温度まで冷却された(<30℃)後に、金属ケイ酸塩を、カチオン化デンプンまたは両性デンプンに添加することができる。蒸煮されたデンプンに金属ケイ酸塩を添加すると、デンプン溶液の濁り度および粘度のわずかな増加がもたらされる。
【0054】
金属ケイ酸塩は、デンプン顆粒が金属ケイ酸塩の存在下で糊化されるように、デンプンが蒸煮される前にデンプン水性スラリーに添加することもできる。この実施形態では、次いで、デンプンを、金属ケイ酸塩の存在下で蒸煮する。この方法でも、金属ケイ酸塩を添加することなく蒸煮したデンプン溶液より、濁っているが、粘度が低いデンプン溶液が製造される。
【0055】
金属ケイ酸塩により変性されたデンプンは、マシンチェスト(machine chest)またはブレンドチェストにおいて、濃厚紙料に添加することができる。あるいは、金属ケイ酸塩により変性されたデンプンは、任意の典型的な希薄紙料添加ポイント、すなわち、ファンポンプ(fan pump)、クリーナー、またはスクリーンの後または前で、希薄紙料に添加することができる。
【0056】
本発明において、金属ケイ酸塩は、デンプンの全体に添加しても、デンプンの一部分を変性するために、デンプンの側流を処理してもよい。好ましい実施形態では、金属ケイ酸塩をデンプン全体に添加する。金属ケイ酸塩により変性されたデンプンを、従来のウェットエンド添加剤、未処理デンプン、凝結剤、凝集剤、サイジング剤、濾水性向上剤、フィラーなどのいずれかと同時に、これらの前に、または後に添加することもできる。
【0057】
以下に、専ら例示と見なされるべきであり、本発明の範囲を限定しない、かなりの数の具体的実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0058】
本発明の方法の達成能力を評価するために、一連の濾水試験を、真空濾水試験(VDT)を用いて実施した。この試験の結果は、金属ケイ酸塩により変性されたデンプンの系の濾水性を向上させる能力を実証している。装置の構成は、様々な濾過の参考書〔例えば、「Perry's Chemical Engineers' Handbook」、第7版(McGraw-Hill、ニューヨーク、1999年)、18〜78頁を参照されたい〕に記載のブフナー漏斗試験に類似している。VDTは、300mlの磁気ゲルマン(Gelman)濾過漏斗、250mlのメスシリンダー、クイックディスコネクト、ウォータートラップ、ならびに真空計およびレギュレータを備えた真空ポンプからなる。VDT試験は、先ず真空を10インチHgに設定し、漏斗をシリンダー上に適切に置くことによって実施した。次に、250gの0.5質量%の紙料をビーカーに入れ、次いで、処理プログラムに応じて必要とされる添加剤(例えば、デンプン、alum、凝集剤、および濾水性向上剤)を、オーバーヘッドミキサーで撹拌しながら紙料に加えた。次に、この紙料を、濾過漏斗に注ぎ、真空ポンプの運転を始め、同時に、ストップウォッチを始動させた。濾水効率は、230mlの濾液を得るのに必要な時間として記録する。
【0059】
濾水時間の値がより小さいことは、濾水性または脱水性が高いことを表し、これは望ましい反応である。報告した値は、2回の試験の平均値である。
【0060】
ブリットジャー(Britt jar)歩留まり試験(Paper Research Materials, Inc.、Gig Harbor、ワシントン州)は、当技術分野において知られている。このブリットジャー歩留まり試験では、特定の体積の完成紙料(furnish)を動的条件下で混合し、保持された微細材料の量を定量化できるように、完成紙料のアリコートをジャーの底のスクリーンを通して濾水した。本試験で用いたブリットジャーは、乱流混合を生じるようにシリンダー壁面に3枚の翼板を装備し、また底板には76μmのスクリーンを装備していた。
【0061】
ブリットジャー歩留まり試験を、0.5%の全固形分濃度を有する500mlの合成完成紙料を用いて実施した。試験は、1,200rpmで実施し、デンプン、その後、alum、次にalum、次にポリマー凝集剤、次に濾水性向上剤を順次加えた。これらの材料は、全て、特定の時間間隔を置いて混合した。濾水性向上剤を導入し、混合した後、濾液を捕集した。
【0062】
算出する歩留まり値は、微細物の歩留まりである。ここでは、500mlの完成紙料を10リットルの水により混合条件下に洗って、全ての微細粒子(ブリットジャーの76μmスクリーンより小さい粒子として定義される)を取り出すことによって、完成紙料中の全微細物量を最初に求める。次いで、各処理での微細物歩留まりを、上述した添加シーケンスの後で100mlの濾液を抜き取り、濾液を、予め秤量した1.5μmの濾紙を通して濾過することによって求めた。微細物の歩留まりは、次の式に従って計算する:
微細物の歩留まり%=(濾液質量−微細物質量)/濾液質量
式中、濾液および微細物の質量は、どちらも100mlに規格化されている。得られる歩留まりは、2回の反復試験の平均を表す。
【0063】
一連の試験に用いた完成紙料は、アルカリ性の合成完成紙料である。この完成紙料は、硬材および軟材の市販の乾燥ラップパルプ、ならびに水およびさらなる物質から調製した。最初に、硬材および軟材の市販の乾燥ラップパルプを、実験用バレービーター(Valley Beater)(Voith、Appleton、ウィスコンシン州)で、別々に細かくした。次いで、これらのパルプを、水性媒体に加えた。完成紙料の調製に用いた水性媒体は、地域の水道水を含み、これを無機塩の添加によりさらに変性させた。無機塩の添加量は、この媒体に、NaHCO3として75〜100ppmのMアルカリ度、および750〜1000μS/cmの全溶液電導度を付与するような量である。完成紙料を調製するために、水性媒体に、硬材および軟材を、約67%の硬材および約33%の軟材の質量比で分散させた。沈降炭酸カルシウム(PCC)(Albacar(登録商標)5970、Minerals Technologies、Bethlehem、ペンシルベニア州)を、パルプの合計乾燥質量に対して25質量パーセントで完成紙料に導入して、80%の繊維および20%のPCCフィラーを含む最終完成紙料を得た。この完成紙料は0.5%のコンシステンシー(100ポンドの水当たり0.5ポンドの全固形分)を有していた。
【0064】
本発明の系において用いた変性デンプンを、表1に示す。Stalok(登録商標)400は、カチオン化ジャガイモデンプン(A. E. Staley、Decatur、イリノイ州)である。金属ケイ酸塩は、Silicate Oであり、3.22:1のSiO2:Na2O比を有する液体ケイ酸ナトリウム(PQ Corporation、Valley Forge、ペンシルベニア州)である。全ての実施例における金属ケイ酸塩の投入量は、活性SiO2に基づく。alumは、50%溶液として入手可能な硫酸アルミニウム・十八水和物(Delta Chemical Corporation、Baltimore、メリーランド州)である。Perform(登録商標)PC 8138は、カチオン性エマルジョン凝集剤(Hercules Incorporated、Wilmington、デラウェア州)である。Perform(登録商標)SP 7200は、最新の構造化有機ミクロ粒子(Hercules Incorporated、Wilmington、デラウェア州)である。
【0065】
2%のデンプン溶液を、4グラムのStalok(登録商標)400カチオン化デンプンを、196グラムの脱イオン水に加え、透明の粘性溶液が得られるまで95℃にて30分間加熱することによって調製した。このデンプン溶液を周囲温度まで放冷した。
【0066】
カチオン化デンプンとケイ酸ナトリウムとの指定した比のブレンドを、指定した量の金属ケイ酸塩をこの蒸煮したデンプン溶液に加えることによって調製した。例えば、10:1のデンプン:金属ケイ酸塩の溶液を、100グラムの2%デンプン蒸煮済みデンプン溶液に0.68グラムのSilicate O(29%の活性ケイ酸ナトリウム)を加えることによって調製した。
【0067】
溶液は、金属ケイ酸塩の存在下でデンプンを蒸煮することによっても調製した。この実施例では、10:1の蒸煮済み溶液を、1.38グラムのSilicate O(29%の活性ケイ酸ナトリウム)を、198.62グラムの脱イオン水と混合することによって調製した。4グラムのStalok(登録商標)400カチオン化デンプンを加え、この溶液を、濁った粘性溶液が得られるまで95℃で30分間加熱した。このデンプン溶液を周囲温度まで放冷した。
【0068】
表1のデータは、本発明の歩留まりおよび濾水性能の向上を例証している。金属ケイ酸塩により変性されたデンプンは、未変性デンプンと比較して、より良好な濾水性をもたらす。さらに、このデータは、金属ケイ酸塩を、蒸煮後にデンプンとブレンドすることができ、あるいは蒸煮前にデンプンスラリーに添加することができることを例証している。
【0069】
【表1】

【0070】
デンプンは、パルプスラリーへの添加前に、金属ケイ酸塩により変性した。投入量♯は、変性およびそれに続くパルプスラリーへの添加の前のデンプンおよび金属ケイ酸塩の個々の量を示す。金属ケイ酸塩を含む変性デンプンの全投入量♯/Tは、デンプンの投入量と金属ケイ酸塩の投入量とを加えることによって算出する。金属ケイ酸塩の投入量は、活性金属ケイ酸塩として求める。
【0071】
添加シーケンスは次の通りであり、各添加の間に、10秒の混合時間がある:
デンプンまたは変性デンプン;
5ポンド(35 kg)/トンの投入量で、alum;
0.4ポンド(2.8 kg)/トンの投入量で、Perform (登録商標) PC 8138;
0.4ポンド(2.8 kg)/トンの投入量で、Perform (登録商標) SP 7200。
【0072】
一連の濾水試験を、VDTを用い、指定した比で金属ケイ酸塩とブレンドしたデンプンを用いて実施し、データを表2に示す。材料、方法、および添加シーケンスは、表1で指定した通りである。表2のデータは、金属ケイ酸塩により変性されていないデンプンと比較した、本発明の方法の濾水性の向上を例証している。濾水性の向上は、より高い量の金属ケイ酸塩で顕著である。
【0073】
【表2】

【0074】
デンプンは、パルプスラリーに添加する前に、金属ケイ酸塩により変性した。投入量♯は、変性およびそれに続くパルプスラリーへの添加の前のデンプンおよび金属ケイ酸塩の個々の量を示す。金属ケイ酸塩を含む変性デンプンの全投入量♯/Tは、デンプンの投入量と金属ケイ酸塩の投入量を加えることによって算出する。金属ケイ酸塩の投入量は、活性金属ケイ酸塩として求める。
【0075】
一連の濾水試験を、VDTを用い、指定した比で金属ケイ酸塩とブレンドしたデンプンを用いて実施し、そのデータを表3に示す。Cato(登録商標)232は、カチオン化ワキシートウモロコシデンプン(National Starch、Bridgewater、ニュージャージー州)である。Stalok(登録商標)300は、カチオン化トウモロコシデンプン(A. E. Staley、Decatur、イリノイ州)である。材料、方法、および添加シーケンスは、表1で指定した通りである。表3のデータは、ワキシートウモロコシデンプンおよびトウモロコシデンプンの例を用い、未変性デンプンと比較した、本発明の方法により得られる濾水性の向上を例証している。
【0076】
【表3】

【0077】
デンプンを、パルプスラリーに添加する前に、金属ケイ酸塩により変性した。投入量♯は、変性およびそれに続くパルプスラリーへの添加の前のデンプンおよび金属ケイ酸塩の個々の量を示す。金属ケイ酸塩を含む変性デンプンの全投入量♯/Tは、デンプンの投入量と金属ケイ酸塩の投入量を加えることによって算出する。
【0078】
一連の濾水試験を、VDTを用い、指定した比で金属ケイ酸塩とブレンドしたデンプンを用いて実施した。データを表4に示す。Silicate Oは、3.22:1のSiO2:Na2O比を有するケイ酸ナトリウムであり、Silicate Mは、2.58:1のSiO2:Na2O比を有するケイ酸ナトリウムであり、また、Silicate Dは、2.00:1のSiO2:Na2O比を有するケイ酸ナトリウムである(PQ Corporation、Valley Forge、ペンシルベニア州)。材料、方法、および添加シーケンスは、指定したPerform(登録商標)SP 7200投与を例外として、表1で指定した通りである。表4のデータは、未変性デンプンと比較した、本発明の方法により得られる濾水性の向上を例証している。良好な濾水活性は、様々な比率のSiO2:Na2Oを有するケイ酸ナトリウムにより得られる。
【0079】
【表4】

【0080】
デンプンは、パルプスラリーに添加する前に、金属ケイ酸塩により変性した。投入量♯は、変性およびそれに続くパルプスラリーへの添加の前のデンプンおよび金属ケイ酸塩の個々の量を示す。金属ケイ酸塩を含む変性デンプンの全投入量♯/Tは、デンプンの投入量と金属ケイ酸塩の投入量を加えることによって算出する。
【0081】
別の一連の濾水試験を、VDTを用い、異なる置換度を有するデンプンを用い、指定した比で金属ケイ酸塩とブレンドしたデンプンを用いて実施した。データを表5に示す。Stalok(登録商標)430は、0.18の置換度(DS)を有するカチオン化トウモロコシデンプンであり;Stalok(登録商標)400は、DS=0.28を有するカチオン化ジャガイモデンプンであり;また、Stalok(登録商標)410は、DS=0.35を有するカチオン化ジャガイモデンプンである(A. E. Staley、Decatur、イリノイ州)。材料、方法、および添加シーケンスは、表1で指定した通りである。表5のデータは、様々な置換度を有するデンプンを用い、未変性デンプンと比較した、本発明の方法によって得られる濾水性の向上を例証している。
【0082】
【表5】

【0083】
デンプンは、パルプスラリーに添加する前に、金属ケイ酸塩により変性した。投入量♯は、変性およびそれに続くパルプスラリーへの添加の前のデンプンおよび金属ケイ酸塩の個々の量を示す。金属ケイ酸塩を含む変性デンプンの全投入量♯/Tは、デンプンの投入量と金属ケイ酸塩の投入量を加えることによって算出する。
【0084】
別の一連の濾水試験を、VDTを用い、多糖としてカチオングアーを用いて実施し、カチオングアーは、指定した比で、金属ケイ酸塩とブレンドした。データを表6に示す。N-Hance 319は、カチオン化変性されたグアーガム(Ashland Aqualon、Wilmington、デラウェア州)である。材料、方法、および添加シーケンスは、表1で指定した通りである。表6のデータは、未変性カチオングアーと比較した、本発明の方法によって得られる濾水性の向上を例証している。
【0085】
【表6】

【0086】
多糖は、パルプスラリーへの添加の前に、金属ケイ酸塩により変性した。投入量♯は、変性およびそれに続くパルプスラリーへの添加の前の多糖および金属ケイ酸塩の個々の量を示す。金属ケイ酸塩を含む変性多糖の全投入量♯/Tは、多糖の投入量と金属ケイ酸塩の投入量を加えることによって算出する。
【0087】
本発明を、その特定の実施形態に関連させて説明してきたが、非常に多数の他の形態および修正が当業者には明白であることは明らかである。添付の特許請求の範囲および本発明は、本発明の真の範囲内にある、このような明白な形態および修正の全てを包含すると、広く解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙用スラリーに、少なくとも1種の多糖または多糖誘導体を添加する工程を含み、前記多糖または多糖誘導体が、少なくとも1種の金属ケイ酸塩により変性されており、前記少なくとも1種の多糖または多糖誘導体が、カチオン性窒素基を有する多糖誘導体、カチオン性多糖とアニオン性多糖とのブレンド、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される、製紙方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の多糖または多糖誘導体が、少なくとも1種のデンプンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デンプンが、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、これらの誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属ケイ酸塩がケイ酸ナトリウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
多糖と金属ケイ酸塩の比が、1:10から100:1までである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
多糖と金属ケイ酸塩の比が、1:1から50:1までである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
製紙用スラリーに、少なくとも1種のデンプンまたはデンプン誘導体を添加する工程を含み、前記デンプンまたはデンプン誘導体が、金属ケイ酸塩により変性されており、前記少なくとも1種のデンプンまたはデンプン誘導体が、カチオン性窒素基を有するデンプン誘導体、およびカチオン化デンプンとアニオン化デンプンとのブレンドからなる群から選択される、製紙方法。
【請求項9】
デンプンが、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、これらの誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
デンプンと金属ケイ酸塩の比が、1:10から100:1までである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
デンプンと金属ケイ酸塩の比が、1:1から50:1までである、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2011−511178(P2011−511178A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545012(P2010−545012)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/000538
【国際公開番号】WO2009/097111
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】