説明

把持操作入力装置

【課題】把持対象物を把持した状態で誤操作を生じにくい操作を検出するための把持操作入力装置を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール9の内部には、印加用コイル11が巻回された円環状の印加用コア12と、印加用コイル11を介してステアリングホイール9を把持するユーザの手に電気信号を印加する印加部13と、計測用コイル14が巻回された円環状の計測用コア15と、計測用コイル14に流れる電流を計測する電流計測部16とが設けられている。このため、電流計測部16によって計測された電流に基づいて、ステアリングホイール9を把持する指先同士がステアリングホイール9を挟んだ両側から接触した状態であるか否かを検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持対象物を把持した状態で行われる操作を入力するための把持操作入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、ラジオ/テレビ受信装置、オーディオ装置、空調装置、追従走行制御装置など、運転者が運転中に操作する車載装置が搭載されている。ただし、車両の運転中は、運転者がステアリングホイールから手を離さないことが好ましい。そこで、こうした車載装置の操作を、運転者がステアリングホイールを把持した状態で行うことができるようにするための構成が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ステアリングホイールのリング部に所定の間隔で複数の圧力センサを配置し、圧力センサの出力からリング部を握る指の配置を検出し、指の配置に応じて車載装置の操作機能をメニューとして表示し、メニューに応じて選択された項目を実行するように車載装置に指令する構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ステアリングホイールの裏面に、運転者の操作を検出する入力検出機構(圧力センサ)を円周状に分割して複数個設け、ステアリングホイールの表面に、運転者が入力検出機構を操作するときの当該表面に対する運転者の接触領域を検出する接触面検出機構(圧力センサ)を設けた構成が開示されている。この構成では、接触面検出機構で検出された接触領域の位置及び形状に基づいて運転者の把持位置を判定し、判定した把持位置に対して所定の位置関係となっている入力検出機構に対して、車載装置が実行する機能を割り当てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−95038号公報
【特許文献2】特開2006−341729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示された構成のように、ステアリングホイールを押圧して車載装置の操作を行う構成では、ステアリングホイールに対して基準値以上の押圧力を加えることで操作が有効となる。しかしながら、運転者は、そのような基準値を明確に把握することができないため、運転操作においてステアリングホイールに対する押圧力を強めることで、車載装置を意図せずに操作してしまう(誤操作が生じる)可能性がある。かといって、基準値を高く設定すると、車載装置の操作が検出されにくくなり、操作性が悪化するという不都合が生じる。
【0007】
なお、特許文献2に記載の構成は、ステアリングホイールに対する押圧力が、運転操作によるものか車載装置の操作を意図したものかを、ステアリングホイールの握り方によって区別しようとしているが、ステアリングホイールの握り方には個人差があるため、やはり誤操作が生じ得る。また、このような問題は、車両のステアリングホイールに限ったものではなく、ユーザが何らかの把持対象物を把持した状態で他の操作を行う構成であれば同様の問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、把持対象物を把持した状態で誤操作の生じにくい操作を検出するための把持操作入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の把持操作入力装置では、信号印加手段が、把持対象物を把持するユーザの手に電気信号を印加する。また、物理量計測手段が、把持対象物を把持するユーザの手の指同士が把持対象物を挟んだ両側から接触した接触状態と接触していない非接触状態とで値の異なる電気的物理量を計測する。そして、把持状態検出手段が、物理量計測手段による計測結果に基づいて、把持対象物を把持するユーザの手が接触状態及び非接触状態のいずれであるかを検出する。
【0010】
このような把持操作入力装置によれば、把持対象物を把持する手の指同士を把持対象物を挟んだ両側から接触させる又は接触させないという簡単な操作を検出することができる。そして、このような操作によれば、把持対象物に対する押圧力を考慮する必要が無く、しかも、指同士を接触した際の皮膚の感覚が触覚フィードバックとして得られるため、運転者の意図しない誤操作を生じにくくすることができる。
【0011】
ここで、信号印加手段は、例えば請求項2に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項2に記載の信号印加手段は、接触状態においてユーザの手に形成される環状導体路と鎖交するように把持対象物の内部に設けられた環状の印加用コアと、印加用コアに巻回された印加用コイルと、印加用コイルに電流を流すことによる電磁誘導によって、把持対象物を把持するユーザの手に印加用コイルを介して電気信号を印加するコイル用印加手段とを備える。このような把持操作入力装置によれば、ユーザの手が印加用コイルに接触しない形で電気信号を印加可能であるため、把持対象物の把持の仕方(把持対象物に対する手の皮膚の接触の仕方)のばらつきによる影響を受けにくく、電気信号を安定して印加することができる。
【0012】
そして、このような構成を前提にした場合、例えば請求項3に記載のように、把持対象物に複数の印加用コアが配置され、コイル用印加手段は、複数の印加用コアのそれぞれに巻回された印加用コイルを介して特徴量の異なる電気信号を印加し、把持状態検出手段は、物理量計測手段により計測される電気的物理量の特徴量に基づいて、把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出するようにしてもよい。このようにすれば、把持対象物を把持するユーザの手が接触状態及び非接触状態のいずれであるかに加え、把持対象物におけるユーザの手の把持位置についても検出することができる。
【0013】
また、信号印加手段は、例えば請求項4に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項4に記載の信号印加手段は、把持対象物を把持するユーザの手に直接接触するように設けられた複数の電極を有する印加用電極と、把持対象物を把持するユーザの手に印加用電極を介して電気信号を印加する電極用印加手段とを備える。このような把持操作入力装置によれば、ユーザの手が印加用電極に接触した形で電気信号が印加されるため、電気信号を効率よく印加することができる。
【0014】
そして、このような構成を前提にした場合、例えば請求項5に記載のように、把持対象物に複数の印加用電極が配置され、電極用印加手段は、複数の印加用電極を介して特徴量の異なる電気信号を印加し、把持状態検出手段は、物理量計測手段により計測される電気的物理量の特徴量に基づいて、把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出するようにしてもよい。このようにすれば、把持対象物を把持するユーザの手が接触状態及び非接触状態のいずれであるかに加え、把持対象物におけるユーザの手の把持位置についても検出することができる。
【0015】
一方、物理量計測手段は、例えば請求項6に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項6に記載の物理量計測手段は、接触状態においてユーザの手に形成される環状導体路と鎖交するように把持対象物の内部に設けられた環状の計測用コアと、計測用コアに巻回された計測用コイルと、計測用コイルに流れる電流を電気的物理量として計測する電流計測手段とを備える。このような把持操作入力装置によれば、ユーザの手が計測用コイルに接触しない形で電気的物理量を計測可能であるため、把持対象物の把持の仕方(把持対象物に対する手の皮膚の接触の仕方)のばらつきによる影響を受けにくく、電気的物理量を安定して計測することができる。
【0016】
そして、このような構成を前提にした場合、例えば請求項7に記載のように、単一の計測用コアに複数の計測用コイルが巻回され、電流計測手段は、複数の計測用コイルのそれぞれに流れる電流を計測し、把持状態検出手段は、複数の計測用コイルのそれぞれから計測される電流の大小関係に基づいて、把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出するようにしてもよい。このようにすれば、把持対象物を把持するユーザの手が接触状態及び非接触状態のいずれであるかに加え、把持対象物におけるユーザの手の把持位置についても検出することができる。特に、計測される電流の大小関係に基づいて把持位置を検出するため、計測用コイルの数よりも細かい精度で把持位置を検出することが可能となる。
【0017】
また、例えば請求項8に記載のように、把持対象物に複数の計測用コアが配置され、電流計測手段は、複数の計測用コアのそれぞれに巻回された計測用コイルに流れる電流を計測し、把持状態検出手段は、複数の計測用コイルのうち、接触状態を表す電流が計測された計測用コイルに基づいて、把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出するようにしてもよい。このようにしても、把持対象物を把持するユーザの手が接触状態及び非接触状態のいずれであるかに加え、把持対象物におけるユーザの手の把持位置についても検出することができる。
【0018】
また、物理量計測手段は、例えば請求項9に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項9に記載の物理量計測手段は、把持対象物を把持するユーザの手に直接接触するように設けられた複数の電極を有する電圧計測用電極と、電圧計測用電極が有する複数の電極間の電圧を電気的物理量として計測する電圧計測手段とを備える。このような把持操作入力装置によれば、ユーザの手が電圧計測用電極に接触した形で電圧が計測されるため、低い電圧であっても効率よく計測することができる。
【0019】
そして、このような構成を前提にした場合、例えば請求項10に記載のように、把持対象物に複数の電圧計測用電極が配置され、電圧計測手段は、複数の電圧計測用電極から電圧を計測し、把持状態検出手段は、複数の電圧計測用電極のうち、接触状態を表す電圧が計測された電圧計測用電極に基づいて、把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出するようにしてもよい。このようにすれば、把持対象物を把持するユーザの手が接触状態及び非接触状態のいずれであるかに加え、把持対象物におけるユーザの手の把持位置についても検出することができる。
【0020】
また、物理量計測手段は、例えば請求項11に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項11に記載の物理量計測手段は、把持対象物を把持するユーザの手に直接接触するように設けられた複数の電極を有するインピーダンス計測用電極と、インピーダンス計測用電極が有する複数の電極間のインピーダンスを電気的物理量として計測するインピーダンス計測手段とを備える。このような把持操作入力装置によれば、ユーザの手がインピーダンス計測用電極に接触した形で電圧が計測されるため、インピーダンスを効率よく計測することができる。
【0021】
そして、このような構成を前提にした場合、例えば請求項12に記載のように、把持対象物に複数のインピーダンス計測用電極が配置され、インピーダンス計測手段は、複数のインピーダンス計測用電極からインピーダンスを計測し、把持状態検出手段は、複数のインピーダンス計測用電極のうち、接触状態を表すインピーダンスが計測されたインピーダンス計測用電極に基づいて、把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出するようにしてもよい。このようにすれば、把持対象物を把持するユーザの手が接触状態及び非接触状態のいずれであるかに加え、把持対象物におけるユーザの手の把持位置についても検出することができる。
【0022】
一方、請求項13に記載の把持操作入力装置では、信号印加手段は、接触状態においてユーザの手に形成される環状導体路と鎖交するように把持対象物の内部に設けられた環状の印加用コアと、印加用コアに巻回された印加用コイルと、印加用コイルに電流を流すことによる電磁誘導によって、把持対象物を把持するユーザの手に印加用コイルを介して電気信号を印加するコイル用印加手段とを備え、物理量計測手段は、印加用コイルに電気信号が印加された際のインピーダンスを電気的物理量として計測する。このような把持操作入力装置によれば、印加用コイルを電気信号の印加とインピーダンスの計測とに用いるため、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0023】
そして、このような構成を前提にした場合、例えば請求項14に記載のように、把持対象物に複数の印加用コアが配置され、コイル用印加手段は、複数の印加用コアのそれぞれに巻回された印加用コイルを介して特徴量の異なる電気信号を印加し、把持状態検出手段は、物理量計測手段により計測されるインピーダンスの特徴量に基づいて、把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出するようにしてもよい。このようにすれば、把持対象物を把持するユーザの手が接触状態及び非接触状態のいずれであるかに加え、把持対象物におけるユーザの手の把持位置についても検出することができる。
【0024】
一方、例えば請求項15に記載のように、把持状態検出手段は、接触状態を維持したまま把持対象物におけるユーザの手の把持位置を移動させる操作を検出するようにしてもよい。このようにすれば、把持対象物に沿ってユーザの手をスライド移動させるような直感的な操作が可能となる。
【0025】
また、例えば請求項16に記載のように、把持状態検出手段は、接触状態において指同士の接触圧を変化させる操作を検出するようにしてもよい。このようにすれば、指同士を接触させたまま接触圧を変化させるアナログ的な操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)は、第1実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図であり、(B)は、運転者によって把持された状態でのステアリングホイールの模式的な断面図であり、(C)は、3つの計測用コイルが配置された計測用コアを示す図である。
【図2】ステアリングホイールを把持する運転者の手の把持状態を説明するための図である。
【図3】(A)は、ステアリングホイールにおける把持状態を検出可能な領域を複数に分割した例を示す図であり、(B)は、3つの印加用コアが設けられたステアリングホイールを示す図であり、(C)は、3つの計測用コアが設けられたステアリングホイールを示す図である。
【図4】制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図5】(A)は、第2実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図であり、(B)は、運転者によって把持された状態でのステアリングホイールの模式的な断面図であり、(C)は、複数の印加用電極が配置されたステアリングホイールを示す図であり、(D)は、複数の計測用電極が配置されたステアリングホイールを示す図である。
【図6】(A)は、第3実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図であり、(B)は、運転者によって把持された状態でのステアリングホイールの模式的な断面図であり、(C)は、複数の印加用電極が配置されたステアリングホイールを示す図であり、(D)は、3つの計測用コアが設けられたステアリングホイールを示す図である。
【図7】(A)は、第4実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図であり、(B)は、運転者によって把持された状態でのステアリングホイールの模式的な断面図であり、(C)は、3つの印加用コアが設けられたステアリングホイールを示す図であり、(D)は、複数の計測用電極が配置されたステアリングホイールを示す図である。
【図8】(A)は、第5実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図であり、(B)は、運転者によって把持された状態でのステアリングホイールの模式的な断面図であり、(C)は、複数の印加用電極が配置されたステアリングホイールを示す図であり、(D)は、複数の計測用電極が配置されたステアリングホイールを示す図である。
【図9】(A)は、第6実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図であり、(B)は、運転者によって把持された状態でのステアリングホイールの模式的な断面図であり、(C)は、3つの印加用コアが設けられたステアリングホイールを示す図である。
【図10】把持状態検出部における計測系の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
図1(A)は、第1実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図である。また、図1(B)は、運転者によって把持された状態でのステアリングホイール9の模式的な断面図である。
【0028】
把持操作入力装置は、車両において運転者(ユーザ)がステアリングホイール9を把持した状態で行う操作を入力するためのものであり、把持状態検出部1及び制御部7を備える。把持状態検出部1は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手の指先の状態(以下「把持状態」という。)を検出するためのものであり、ステアリングホイール9の内部に組み込まれている(図1(B))。そして、制御部7は、把持状態検出部1による検出内容に基づいて制御対象(車載装置)8を制御する。
【0029】
第1実施形態の把持状態検出部1は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に電気信号を印加するための印加用コイル11を備える。ステアリングホイール9は、円環状のリング部及びそのリング部を回転軸に接続するT字部から形成されており(図3参照)、リング部の内部には、そのリング部に沿った円環状の印加用コア12が設けられている(図1(B))。つまり、印加用コア12は、運転者の指先同士がステアリングホイール9を挟んだ両側から接触した状態において運転者の手に形成される環状導体路と鎖交するように、ステアリングホイール9の内部に設けられている。そして、印加用コイル11は、その印加用コア12に巻回されている。
【0030】
また、把持状態検出部1は、印加用コイル11に電流を流すことによる電磁誘導によって、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に電気信号(三角波)を印加する印加部13を備える。なお、印加する電気信号は、三角波以外の交流信号としてもよい。
【0031】
さらに、把持状態検出部1は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に流れる電流を計測するための計測用コイル(電流センサ)14を備える。具体的には、ステアリングホイール9のリング部の内部には、そのリング部に沿った円環状の計測用コア15が設けられている(図1(B),(C)。つまり、計測用コア15も、印加用コア12と同様、運転者の指先同士がステアリングホイール9を挟んだ両側から接触した状態において運転者の手に形成される環状導体路と鎖交するように、ステアリングホイール9の内部に設けられている。そして、計測用コイル14は、その計測用コア15に巻回されている。
【0032】
また、把持状態検出部1は、計測用コイル14に流れる電流を計測する電流計測部16を備える。具体的には、図1(C)に示すように、単一の計測用コア15に、複数(本実施形態では3つ)の計測用コイル14が、計測用コア15の円周方向において等間隔に配置されており、電流計測部16は、3つの計測用コイル14のそれぞれに流れる電流を計測する。
【0033】
電流計測部16によって計測された電流には、把持状態が反映される。すなわち、図2に示すように、ステアリングホイール9を把持する運転者の手の親指の先端部と同じ手の他の指(例えば人差し指)の先端部とがステアリングホイール9を挟んだ両側から接触した状態(以下「接触状態」という。)では、ステアリングホイール9の周囲に人体による閉じた環状導体路(閉ループ)が形成される。一方、親指の先端部と他の指の先端部とが離間した(非接触の)状態(以下「離間状態」という。)では、ステアリングホイール9の周囲に人体による閉ループが形成されない。このため、ステアリングホイール9を把持する運転者の手の指に電気信号を印加し、その指に流れる電流を計測することで、把持状態(接触状態及び離間状態のいずれであるか)を検出することができる。具体的には、接触状態で計測される電流をIon、離間状態で計測される電流をIoffとすると、Ion=Ib(>0),Ioff=0となる(図1(B))。
【0034】
把持状態検出部1は、このようにして把持状態を検出することで、例えば、運転者によるステアリングホイール9を把持した状態でのクリック操作(指先同士を1回短時間接触させる操作)を検出することができる。また例えば、指先同士を接触させる回数や時間により、ダブルクリック操作(クリック操作を短時間で2回繰り返す操作)や、モールス信号のような二値パターンの入力操作などを検出することができる。さらに、接触状態において指先同士の接触面に加える押圧力(接触圧)を変化させると、電流計測部16により計測される電流も変化するため、このような接触圧操作を検出することも可能となる。
【0035】
特に、本実施形態では、3つの計測用コイル14が、計測用コア15の円周方向において等間隔に配置されているため(図1(C))、各計測用コイル14の出力値(例えば電圧値)に基づいて、把持状態だけでなく、ステアリングホイール9における把持位置(接触状態にある手の位置)を検出することができる。図1(C)に示す例では、把持位置Aで接触状態になると、計測用コイル14の出力値がV1>V2>V3の関係となり、また、把持位置Bで接触状態になると、計測用コイル14の出力値がV3>V2>V1の関係となる。なお、計測用コア15として透磁率の低い材質のものを用いると、各計測用コイル14の出力値の差分が大きくなるため、把持位置を検出しやすくすることができる。
【0036】
このため、ステアリングホイール9における把持状態を検出可能な領域を複数に分割し、複数の制御対象8や操作内容などに割り当てるといったことが可能となる。また、接触状態を維持したまま把持位置を移動させる接触スライド操作を検出することも可能となる。
【0037】
例えば、図3(A)に示すように、ステアリングホイール9における上半分の領域をオーディオ操作部とし、下半分の領域を空調操作部とすることができる。そして、オーディオ操作部では、クリック操作が曲再生/停止、ダブルクリック操作が曲送り、左方向への接触スライド操作がボリュームアップ、右方向への接触スライド操作がボリュームダウン、指先同士の接触圧を高くする接触圧操作が再生速度アップ、接触圧を低くする接触圧操作が再生速度ダウン、といったように、オーディオ装置の操作を割り当てることができる。同様に、空調操作部では、クリック操作が空調のオン/オフ、ダブルクリック操作が冷房/暖房の切り替え、接触スライド操作が設定温度の調整、接触圧操作が風量の調整、といったように、空調装置の操作を割り当てることができる。
【0038】
ここで、制御部7が実行する処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、ここではオーディオ操作部での操作内容を判定する処理について説明するが、空調操作部についても同様に実現することができる。
【0039】
制御部7は、まず、S101で、接触状態であるか否かを判定し、接触状態であると判定した場合には、S102へ移行して、把持位置及び指先同士の接触圧の情報を把持状態検出部1から取得する。そして、S103で、前回の(処理周期が1つ前の)判定結果も接触状態であったか否か(つまり、接触状態が継続しているか否か)を判定し、前回の判定結果は接触状態でなかった(離間状態であった)と判定した場合には、S104へ移行し、把持位置及び接触圧の情報を保持してS101へ戻る。
【0040】
一方、S103で、前回の判定結果も接触状態であったと判定した場合には、S105へ移行し、前回の把持位置に対する今回の把持位置の変化を判定する。
このS105で、同じ位置であると判定した場合には、S106へ移行し、前回の接触圧に対する今回の接触圧の変化を判定する。そして、接触圧が同じである(つまり、把持位置も接触圧も変化していない)と判定した場合には、S101へ戻る。一方、今回の接触圧が前回の接触圧よりも高いと判定した場合(つまり、接触圧を高くする接触圧操作を検出した場合)には、S107へ移行し、再生速度アップを制御対象(オーディオ装置)8へ要求した後、S101へ戻る。逆に、今回の接触圧が前回の接触圧よりも低いと判定した場合(つまり、接触圧を低くする接触圧操作を検出した場合)には、S108へ移行し、再生速度ダウンを制御対象8へ要求した後、S101へ戻る。
【0041】
また、S105で、今回の把持位置が前回の把持位置よりも左寄りであると判定した場合(つまり、左方向への接触スライド操作を検出した場合)には、S109へ移行し、ボリュームアップを制御対象8へ要求した後、S101へ戻る。逆に、今回の把持位置が前回の把持位置よりも右寄りであると判定した場合(つまり、右方向への接触スライド操作を検出した場合)には、S110へ移行し、ボリュームダウンを制御対象8へ要求した後、S101へ戻る。
【0042】
一方、S101で、接触状態でない(離間状態である)と判定した場合には、S111へ移行し、前回の判定結果が接触状態であったか否かを判定する。そして、S111で、前回の判定結果も接触状態でなかった(離間状態であった)と判定した場合には、S101へ戻る。一方、S111で、前回の判定結果は接触状態であったと判定した場合(つまり、1回以上のクリック操作を検出した場合)には、S112へ移行し、ダブルクリック操作であるか否かを判定する。
【0043】
このS112で、ダブルクリック操作でない(つまり、通常のクリック操作である)と判定した場合には、S113へ移行し、曲の再生(再生中であれば停止)を制御対象8へ要求した後、S101へ戻る。一方、S112で、ダブルクリック操作であると判定した場合には、S114へ移行し、曲送りを制御対象8へ要求した後、S101へ戻る。
【0044】
このような第1実施形態の把持操作入力装置によれば、運転者は、ステアリングホイール9を把持する手の指先同士をステアリングホイール9を挟んだ両側から接触/離間させるという簡単な操作で、制御対象8を操作することができる。このため、ステアリングホイール9を握り締めたり押圧したりするといったような、余分な力を必要とせず、ステアリングホイール9に対する押圧力を考慮する必要が無い。しかも、このような操作によれば、指先同士を接触した際の皮膚の感覚が触覚フィードバックとして得られるため、運転者の意図しない誤操作を生じにくくすることができる。したがって、車両の運転中にも安全に操作を行うことができる。
【0045】
また、運転者の手が印加用コイル11に直接接触しない形で電気信号を印加可能であり、しかも、運転者の手が計測用コイル14に直接接触しない形で電気的物理量を計測可能である。このため、ステアリングホイール9の把持の仕方(ステアリングホイール9に対する手の皮膚の接触の仕方)のばらつきによる影響を受けにくく、ステアリングホイール9を把持する運転者の手が接触状態及び離間状態のいずれであるかを安定して検出することができる。
【0046】
さらに、把持状態だけでなく、ステアリングホイール9における運転者の手の把持位置についても検出することができ、特に、計測される電流の大小関係に基づいて把持位置を検出するため、計測用コイル14の数よりも細かい精度で把持位置を検出することができる。加えて、接触スライド操作や指接触圧操作によって直感的かつアナログ的な操作を行うことができる。
【0047】
また、印加用コイル11による電磁誘導では、離間状態において運転者の手に電流が流れないため、離間状態においても運転者の手に電流が流れる構成と比較して、電流が流れる期間を少なくすることができ、その分、電流値を上げて検出精度を高めることができる。
【0048】
なお、第1実施形態では、印加用コイル11、印加用コア12及び印加部13が信号印加手段の一例に相当し、特に、印加部13がコイル用印加手段の一例に相当する。また、計測用コイル14、計測用コア15及び電流計測部16が物理量計測手段の一例に相当し、特に、電流計測部16が電流計測手段の一例に相当する。また、制御部7が把持状態検出手段の一例に相当し、ステアリングホイール9が把持対象物の一例に相当する。
【0049】
ちなみに、上記第1実施形態では、3つの計測用コイル14が、計測用コア15の円周方向において等間隔に配置された構成を例示したが(図1(C))、2つの計測用コイル14であっても、計測用コア15の円周方向において等間隔(又は等間隔の位置よりも少し片寄った位置)に配置することで、把持位置を検出することは可能である。ただし、2つの計測用コイル14では、2つの計測用コイル14を結ぶ線を挟んで対称となる把持位置が区別しにくいため、把持位置を精度よく検出するためには、3つ以上の計測用コイル14を用いることが好ましい。
【0050】
また、印加用コア12及び計測用コア15のうち少なくとも一方を複数設けることにより、把持位置を検出するようにしてもよい。例えば、図3(B)に示すように、ステアリングホイール9のリング部及びT字部によって上部、左下部及び右下部に形成される3つの穴に沿って、3つの環状の印加用コア12を配置し、各印加用コア12に巻回された印加用コイル11を介して特徴量(例えば周波数や振幅)の異なる電気信号を印加するようにしてもよい。このようにすれば、計測される電流の特徴量に基づいて、把持位置がステアリングホイール9の上部、左下部及び右下部の3箇所のうちのいずれであるかを検出することができる。同様に、図3(C)に示すように、ステアリングホイール9の3つの穴に沿って、3つの環状の計測用コア15を配置し、各計測用コア15に巻回された計測用コイル14に流れる電流を計測するようにしてもよい。このようにすれば、3つの計測用コア15に巻回された計測用コイル14のうち接触状態の電流が計測された計測用コイル14に基づいて、把持位置がステアリングホイール9の上部、左下部及び右下部の3箇所のうちのいずれであるかを検出することができる。
【0051】
[第2実施形態]
図5(A)は、第2実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図である。また、図5(B)は、運転者によって把持された状態のステアリングホイール9の模式的な断面図である。
【0052】
第2実施形態の把持操作入力装置は、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と基本的な構成は共通する。ただし、第1実施形態の把持状態検出部1では、印加用コイル11及び計測用コイル14を用いて電気信号の印加及び電流の計測を行うのに対し、第2実施形態の把持状態検出部2では、3つの電極21〜23を用いて電気信号の印加及び電圧の計測を行う点で相違する。その他の共通点については、第1実施形態で用いた符号を流用し、説明を省略する。
【0053】
第2実施形態の把持状態検出部2は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に直接接触するようにステアリングホイール9のリング部の内側表面に露出して設けられた3つの電極21〜23を備える。
【0054】
そして、把持状態検出部2は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に、印加用電極としての電極21,22を介して電気信号(三角波)を印加する印加部24を備える。なお、印加する電気信号は、三角波以外の交流信号又は直流信号としてもよい。
【0055】
また、把持状態検出部2は、計測用電極としての電極22,23間の電圧を計測する電圧計測部25を備える。電圧計測部25によって計測された電圧には、把持状態が反映される。具体的には、接触状態で計測される電圧をVon、離間状態で計測される電圧をVoffとすると、Von=Va+Vb,Voff=Vaとなり、Von>Voffとなる。
【0056】
把持状態検出部2は、このようにして把持状態を検出することで、前述した第1実施形態と同様、運転者によるステアリングホイール9を把持した状態でのクリック操作、ダブルクリック操作、二値パターンの入力操作、接触圧操作などを検出することができる。
【0057】
また、電極(印加用電極)21及び電極(計測用電極)23のうち少なくとも一方を複数設けることにより、把持位置を検出するようにしてもよい。例えば、図5(C)に示すように、ステアリングホイール9のリング部に沿って印加用電極21を複数に分割(複数の印加用電極21を配置)し、各印加用電極21を介して特徴量(例えば周波数や振幅)の異なる電気信号を印加するようにしてもよい。このようにすれば、計測される電流の特徴量に基づいて、把持位置を検出することができる。同様に、図5(D)に示すように、ステアリングホイール9のリング部に沿って計測用電極23を複数に分割(複数の計測用電極23を配置)し、電圧計測部25は、複数の計測用電極23のそれぞれについて電圧を計測するようにしてもよい。このようにすれば、複数の計測用電極23のうち接触状態の電圧が計測された計測用電極23に基づいて、把持位置を検出することができる。この場合、ステアリングホイール9における把持状態を検出可能な領域を複数に分割し、複数の制御対象8や操作内容などに割り当てるといったことが可能となる。また、接触状態を維持したまま把持位置を移動させる接触スライド操作を検出することも可能となる。
【0058】
このような第2実施形態の把持操作入力装置によれば、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と同様の効果が得られる。特に、運転者の手が電極21〜23に直接接触するため、電気信号を効率よく印加することができるとともに、低い電圧であっても効率よく計測することができる。
【0059】
なお、第2実施形態では、電極21,22及び印加部24が信号印加手段の一例に相当し、特に、印加部24が電極用印加手段の一例に相当する。また、電極22,23及び電圧計測部25が物理量計測手段の一例に相当し、特に、電極22,23が電圧計測用電極の一例に相当し、電圧計測部25が電圧計測手段の一例に相当する。また、制御部7が把持状態検出手段の一例に相当し、ステアリングホイール9が把持対象物の一例に相当する。
【0060】
[第3実施形態]
図6(A)は、第3実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図である。また、図6(B)は、運転者によって把持された状態のステアリングホイール9の模式的な断面図である。
【0061】
第3実施形態の把持操作入力装置は、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と基本的な構成は共通する。ただし、第1実施形態の把持状態検出部1では、印加用コイル11及び計測用コイル14を用いて電気信号の印加及び電流の計測を行うのに対し、第3実施形態の把持状態検出部3では、2つの印加用電極31,32及び計測用コイル34を用いて電気信号の印加及び電流の計測を行う点で相違する。その他の共通点については、第1実施形態で用いた符号を流用し、説明を省略する。
【0062】
第3実施形態の把持状態検出部3は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に直接接触するようにステアリングホイール9のリング部の内側表面に露出して設けられた2つの印加用電極31,32を備える。
【0063】
そして、把持状態検出部3は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に印加用電極31,32を介して電気信号(三角波)を印加する印加部33を備える。具体的には、図6(C)に示すように、印加用電極31は、ステアリングホイール9のリング部に沿って複数に分割されており(複数の印加用電極31が配置されており)、印加部33は、各印加用電極31を介して特徴量(例えば周波数や振幅)の異なる電気信号を印加する。なお、印加する電気信号は、三角波以外の交流信号又は直流信号としてもよい。
【0064】
また、把持状態検出部3は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に流れる電流を計測するための計測用コイル(電流センサ)34を備える。具体的には、図6(D)に示すように、ステアリングホイール9の内部には、ステアリングホイール9の3つの穴に沿って、3つの環状の計測用コア35が設けられている。つまり、各計測用コア35は、接触状態において運転者の手に形成される環状導体路と鎖交するように、ステアリングホイール9の内部に設けられている。そして、計測用コイル34は、3つの計測用コア35のそれぞれに巻回されている。
【0065】
さらに、把持状態検出部3は、3つの計測用コア35に巻回された3つの計測用コイル34のそれぞれに流れる電流を計測する電流計測部36を備える。電流計測部36によって計測された電流には、把持状態が反映される。具体的には、接触状態で計測される電流をIon、離間状態で計測される電流をIoffとすると、Ion=Ib(>0),Ioff=0となる。なお、計測用コイル34に代えて(又は計測用コイル34とともに)、ホール素子などの定常磁界を検出するセンサを用いて電流の計測を行うようにしてもよい。
【0066】
把持状態検出部3は、このようにして把持状態を検出することで、上記各実施形態で説明したように、運転者によるステアリングホイール9を把持した状態でのクリック操作、ダブルクリック操作、二値パターンの入力操作、接触圧操作、接触スライド操作などを検出することができる。また、ステアリングホイール9における把持状態を検出可能な領域を複数に分割し、複数の制御対象8や操作内容などに割り当てるといったことも可能となる。
【0067】
このような第3実施形態の把持操作入力装置によれば、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と同様の効果が得られる。特に、運転者の手が印加用電極31,32に直接接触するため、電気信号を効率よく印加することができる。
【0068】
なお、第3実施形態では、電極31,32及び印加部33が信号印加手段の一例に相当し、特に、印加部33が電極用印加手段の一例に相当する。また、計測用コイル34、計測用コア35及び電流計測部36が物理量計測手段の一例に相当し、特に、電流計測部36が電流計測手段の一例に相当する。また、制御部7が把持状態検出手段の一例に相当し、ステアリングホイール9が把持対象物の一例に相当する。
【0069】
[第4実施形態]
図7(A)は、第4実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図である。また、図7(B)は、運転者によって把持された状態のステアリングホイール9の模式的な断面図である。
【0070】
第4実施形態の把持操作入力装置は、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と基本的な構成は共通する。ただし、第1実施形態の把持状態検出部1では、印加用コイル11及び計測用コイル14を用いて電気信号の印加及び電流の計測を行うのに対し、第4実施形態の把持状態検出部4では、印加用コイル41及び2つの計測用電極44,45を用いて電気信号の印加及び電圧の計測を行う点で相違する。その他の共通点については、第1実施形態で用いた符号を流用し、説明を省略する。
【0071】
第4実施形態の把持状態検出部4は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に電気信号を印加するための印加用コイル41を備える。具体的には、図7(C)に示すように、ステアリングホイール9の内部には、ステアリングホイール9の3つの穴に沿って、3つの環状の印加用コア42が設けられている。つまり、各印加用コア42は、接触状態において運転者の手に形成される環状導体路と鎖交するように、ステアリングホイール9の内部に設けられている。そして、印加用コイル41は、3つの印加用コア42のそれぞれに巻回されている。
【0072】
そして、把持状態検出部4は、印加用コイル41に電流を流すことによる電磁誘導によって、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に電気信号(三角波)を印加する印加部43を備える。具体的には、印加部43は、3つの印加用コア42のそれぞれに巻回された印加用コイル41を介して特徴量(例えば周波数や振幅)の異なる電気信号を印加する。なお、印加する電気信号は、三角波以外の交流信号としてもよい。
【0073】
また、把持状態検出部4は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に直接接触するようにステアリングホイール9のリング部の内側表面に露出して設けられた2つの計測用電極44,45を備える。
【0074】
さらに、把持状態検出部4は、計測用電極44,45間の電圧を計測する電圧計測部46を備える。具体的には、図7(D)に示すように、計測用電極45は、ステアリングホイール9のリング部に沿って複数に分割されており(複数の計測用電極45が配置されており)、電圧計測部46は、複数の計測用電極45のそれぞれについて電圧を計測する。電圧計測部46によって計測された電圧には、把持状態が反映される。具体的には、接触状態で計測される電圧をVon、離間状態で計測される電圧をVoffとすると、Von=V(>0),Voff=0となり、Von>Voffとなる。
【0075】
把持状態検出部4は、このようにして把持状態を検出することで、上記各実施形態で説明したように、運転者によるステアリングホイール9を把持した状態でのクリック操作、ダブルクリック操作、二値パターンの入力操作、接触圧操作、接触スライド操作などを検出することができる。また、ステアリングホイール9における把持状態を検出可能な領域を複数に分割し、複数の制御対象8や操作内容などに割り当てるといったことも可能となる。
【0076】
このような第4実施形態の把持操作入力装置によれば、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と同様の効果が得られる。特に、運転者の手が電極44,45に直接接触するため、低い電圧であっても効率よく計測することができる。しかも、電極44,45は、電圧を検出するためのものであり、電圧計測部46のインピーダンスを上げることが可能であるため、皮膚との接触面積が小さくても支障がない。
【0077】
なお、第4実施形態では、印加用コイル41、印加用コア42及び印加部43が信号印加手段の一例に相当し、特に、印加部43がコイル用印加手段の一例に相当する。また、電極44,45及び電圧計測部46が物理量計測手段の一例に相当し、特に、電極44,45が電圧計測用電極の一例に相当し、電圧計測部46が電圧計測手段の一例に相当する。また、制御部7が把持状態検出手段の一例に相当し、ステアリングホイール9が把持対象物の一例に相当する。
【0078】
[第5実施形態]
図8(A)は、第5実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図である。また、図8(B)は、運転者によって把持された状態のステアリングホイール9の模式的な断面図である。
【0079】
第5実施形態の把持操作入力装置は、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と基本的な構成は共通する。ただし、第1実施形態の把持状態検出部1では、印加用コイル11及び計測用コイル14を用いて電気信号の印加及び電流の計測を行うのに対し、第5実施形態の把持状態検出部5では、3つの電極51〜53を用いて電圧の印加及びインピーダンスの計測を行う点で相違する。その他の共通点については、第1実施形態で用いた符号を流用し、説明を省略する。
【0080】
第5実施形態の把持状態検出部5は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に直接接触するようにステアリングホイール9のリング部の内側表面に露出して設けられた3つの電極51〜53を備える。そして、把持状態検出部5は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に、電極51,53を介して電圧を印加する印加部54を備える。
【0081】
また、把持状態検出部5は、電極51,53間に流れる電流値及び印加した電圧に基づいて、電極51,53間のインピーダンスを計測(算出)するインピーダンス計測部55を備える。インピーダンス計測部55によって計測されたインピーダンスには、把持状態が反映される。具体的には、接触状態で計測されるインピーダンスをZon、離間状態で計測されるインピーダンスをZoffとすると、Zon=Z1+Z2,Zoff=Z1となり、Zon>Zoffとなる。
【0082】
なお、印加部54が電極51,52間に電圧を印加し、インピーダンス計測部55が電極52,53間を同電位に保ちつつ、電極51,52間に流れる電流を計測し、その電流値及び印加した電圧値から、電極51,53間のインピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合、Zon=Z2,Zoff=無限大となるため、接触状態と離間状態とで計測されるインピーダンスの差を大きくすることができる。
【0083】
また、前述した図5(C)及び図5(D)と同様、図8(C)及び図8(D)に示すように、電極51,53のうち少なくとも一方を複数設けることにより、把持位置を検出するようにしてもよい。
【0084】
把持状態検出部5は、このようにして把持状態を検出することで、上記各実施形態で説明したように、運転者によるステアリングホイール9を把持した状態でのクリック操作、ダブルクリック操作、二値パターンの入力操作、接触圧操作、接触スライド操作などを検出することができる。また、ステアリングホイール9における把持状態を検出可能な領域を複数に分割し、複数の制御対象8や操作内容などに割り当てるといったことも可能となる。
【0085】
このような第5実施形態の把持操作入力装置によれば、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と同様の効果が得られる。特に、運転者の手が電極51〜53に直接接触するため、電気信号を効率よく印加することができるとともに、インピーダンスを効率よく計測することができる。
【0086】
なお、第5実施形態では、電極51,52及び印加部54が信号印加手段の一例に相当し、特に、印加部54が電極用印加手段の一例に相当する。また、電極51〜53及びインピーダンス計測部55が物理量計測手段の一例に相当し、特に、電極51〜53がインピーダンス計測用電極の一例に相当し、インピーダンス計測部55がインピーダンス計測手段の一例に相当する。また、制御部7が把持状態検出手段の一例に相当し、ステアリングホイール9が把持対象物の一例に相当する。
【0087】
[第6実施形態]
図9(A)は、第6実施形態の把持操作入力装置の構成を示すブロック図である。また、図9(B)は、運転者によって把持された状態のステアリングホイール9の模式的な断面図である。
【0088】
第6実施形態の把持操作入力装置は、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と基本的な構成は共通する。ただし、第1実施形態の把持状態検出部1では、印加用コイル11及び計測用コイル14を用いて電気信号の印加及び電流の計測を行うのに対し、第6実施形態の把持状態検出部6では、印加用コイル61を用いて電気信号の印加及びインピーダンスの計測を行う点で相違する。その他の共通点については、第1実施形態で用いた符号を流用し、説明を省略する。
【0089】
第6実施形態の把持状態検出部6は、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に電気信号を印加するための印加用コイル61を備える。具体的には、図9(C)に示すように、ステアリングホイール9の内部には、ステアリングホイール9の3つの穴に沿って、3つの環状の印加用コア62が設けられている。つまり、各印加用コア62は、接触状態において運転者の手に形成される環状導体路と鎖交するように、ステアリングホイール9の内部に設けられている。そして、印加用コイル61は、3つの印加用コア62のそれぞれに巻回されている。
【0090】
そして、把持状態検出部6は、印加用コイル61に電流を流すことによる電磁誘導によって、ステアリングホイール9を把持する運転者の手に電気信号(交流信号)を印加するとともにインピーダンスを計測するインピーダンス計測部63を備える。インピーダンス計測部63は、印加用コイル61に電気信号を印加した際の電流値及び電圧値に基づいて、印加用コイル61から先(印加用コイル61及び運転者の手)のインピーダンスを計測(算出)する。なお、インピーダンス計測部63は、3つの印加用コア62に巻回された3つの印加用コイル61のそれぞれに、特徴量(例えば周波数や振幅)の異なる電気信号を印加する。
【0091】
図10は、把持状態検出部6における計測系の等価回路図である。図10に示すように、インピーダンス計測部63は、定電圧駆動又は定電流駆動されて、印加用コイル61の両端に交流信号(交流電圧)を印加する印加部631と、印加用コイル61の両端電圧を計測する電圧計測部632と、印加用コイル61を流れる電流を計測する電流計測部633とを備えており、電圧計測部632により計測された両端電圧Vと、電流計測部633により計測された電流Iとから、印加用コイル61のインピーダンスを計測する。
【0092】
図10に示す抵抗Rは、接触状態において運転者の手に形成される環状導体路の電気抵抗を表す。また、スイッチSWは、接触状態/離間状態をオン状態/オフ状態として表現したものである。離間状態では、印加用コイル61に電流を流すことによる電磁誘導によっても、運転者の手に電流が流れない。これに対し、接触状態では、運転者の手に閉じた環状導体路が形成されて、電磁誘導により運転者の手に電流が流れるため、インピーダンスが変化する。このような原理により、インピーダンス計測部63によって計測されたインピーダンスには、把持状態(接触状態/離間状態)が反映される。なお、電流値、電圧値、電流値及び電圧値を用いて算出されるパワーなどから、指先同士の接触圧を計測することも可能である。
【0093】
把持状態検出部6は、このようにして把持状態を検出することで、上記各実施形態で説明したように、運転者によるステアリングホイール9を把持した状態でのクリック操作、ダブルクリック操作、二値パターンの入力操作、接触圧操作、接触スライド操作などを検出することができる。また、ステアリングホイール9における把持状態を検出可能な領域を複数に分割し、複数の制御対象8や操作内容などに割り当てるといったことも可能となる。
【0094】
このような第6実施形態の把持操作入力装置によれば、前述した第1実施形態の把持操作入力装置と同様の効果が得られる。特に、印加用コイル61を電気信号の印加とインピーダンスの計測とに用いるため、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0095】
なお、第6実施形態では、印加用コイル61、印加用コア62及びインピーダンス計測部63が信号印加手段の一例に相当し、特に、インピーダンス計測部63がコイル用印加手段の一例に相当する。また、インピーダンス計測部63が物理量計測手段の一例にも相当する。また、制御部7が把持状態検出手段の一例に相当し、ステアリングホイール9が把持対象物の一例に相当する。
【0096】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0097】
(1)上記実施形態では、片手で可能な操作を例示したが、両手で行う操作を検出してもよい。例えば、ステアリングホイール9における所定の2つの位置(例えば10時10分の位置)を両手で把持する(それぞれ接触状態とする)操作を検出した場合には、設定をリセットするようにしてもよい。
【0098】
(2)ステアリングホイール9の操舵角に基づいてステアリング操作中(ステアリングホイール9が回転されている状態)であるか否かを判定し、ステアリング操作中は把持状態に基づく制御対象8の操作を検出しないようにしてもよい。このようにすれば、ステアリング操作による制御対象8の誤操作を生じにくくすることができる。
【0099】
(3)上記実施形態では、本発明を車両のステアリングホイール9に適用した例を示したが、他の把持対象物に適用してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1〜6…把持状態検出部、7…制御部、8…制御対象、9…ステアリングホイール、11,41,61…印加用コイル、12,42,62…印加用コア、13,24,33,43,54…印加部、14,34…計測用コイル、15,35…計測用コア、16,36…電流計測部、21〜23,31,32,44,45,51〜53…電極、25,46…電圧計測部、55,63…インピーダンス計測部、631…印加部、632…電圧計測部、633…電流計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を把持するユーザの手に電気信号を印加する信号印加手段と、
前記把持対象物を把持するユーザの手の指同士が前記把持対象物を挟んだ両側から接触した接触状態と接触していない非接触状態とで値の異なる電気的物理量を計測する物理量計測手段と、
前記物理量計測手段による計測結果に基づいて、前記把持対象物を把持するユーザの手が前記接触状態及び前記非接触状態のいずれであるかを検出する把持状態検出手段と、
を備えることを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持操作入力装置であって、
前記信号印加手段は、
前記接触状態においてユーザの手に形成される環状導体路と鎖交するように前記把持対象物の内部に設けられた環状の印加用コアと、
前記印加用コアに巻回された印加用コイルと、
前記印加用コイルに電流を流すことによる電磁誘導によって、前記把持対象物を把持するユーザの手に前記印加用コイルを介して前記電気信号を印加するコイル用印加手段と、
を備えることを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の把持操作入力装置であって、
前記把持対象物に複数の前記印加用コアが配置され、
前記コイル用印加手段は、複数の前記印加用コアのそれぞれに巻回された前記印加用コイルを介して特徴量の異なる前記電気信号を印加し、
前記把持状態検出手段は、前記物理量計測手段により計測される前記電気的物理量の特徴量に基づいて、前記把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項4】
請求項1に記載の把持操作入力装置であって、
前記信号印加手段は、
前記把持対象物を把持するユーザの手に直接接触するように設けられた複数の電極を有する印加用電極と、
前記把持対象物を把持するユーザの手に前記印加用電極を介して前記電気信号を印加する電極用印加手段と、
を備えることを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項5】
請求項4に記載の把持操作入力装置であって、
前記把持対象物に複数の前記印加用電極が配置され、
前記電極用印加手段は、複数の前記印加用電極を介して特徴量の異なる前記電気信号を印加し、
前記把持状態検出手段は、前記物理量計測手段により計測される前記電気的物理量の特徴量に基づいて、前記把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の把持操作入力装置であって、
前記物理量計測手段は、
前記接触状態においてユーザの手に形成される環状導体路と鎖交するように前記把持対象物の内部に設けられた環状の計測用コアと、
前記計測用コアに巻回された計測用コイルと、
前記計測用コイルに流れる電流を前記電気的物理量として計測する電流計測手段と、
を備えることを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項7】
請求項6に記載の把持操作入力装置であって、
単一の前記計測用コアに複数の前記計測用コイルが巻回され、
前記電流計測手段は、複数の前記計測用コイルのそれぞれに流れる電流を計測し、
前記把持状態検出手段は、複数の前記計測用コイルのそれぞれから計測される電流の大小関係に基づいて、前記把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項8】
請求項6に記載の把持操作入力装置であって、
前記把持対象物に複数の前記計測用コアが配置され、
前記電流計測手段は、複数の前記計測用コアのそれぞれに巻回された前記計測用コイルに流れる電流を計測し、
前記把持状態検出手段は、複数の前記計測用コイルのうち、前記接触状態を表す電流が計測された前記計測用コイルに基づいて、前記把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項9】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の把持操作入力装置であって、
前記物理量計測手段は、
前記把持対象物を把持するユーザの手に直接接触するように設けられた複数の電極を有する電圧計測用電極と、
前記電圧計測用電極が有する複数の電極間の電圧を前記電気的物理量として計測する電圧計測手段と、
を備えることを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項10】
請求項9に記載の把持操作入力装置であって、
前記把持対象物に複数の前記電圧計測用電極が配置され、
前記電圧計測手段は、複数の前記電圧計測用電極から電圧を計測し、
前記把持状態検出手段は、複数の前記電圧計測用電極のうち、前記接触状態を表す電圧が計測された前記電圧計測用電極に基づいて、前記把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項11】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の把持操作入力装置であって、
前記物理量計測手段は、
前記把持対象物を把持するユーザの手に直接接触するように設けられた複数の電極を有するインピーダンス計測用電極と、
前記インピーダンス計測用電極が有する複数の電極間のインピーダンスを前記電気的物理量として計測するインピーダンス計測手段と、
を備えることを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項12】
請求項11に記載の把持操作入力装置であって、
前記把持対象物に複数の前記インピーダンス計測用電極が配置され、
前記インピーダンス計測手段は、複数の前記インピーダンス計測用電極からインピーダンスを計測し、
前記把持状態検出手段は、複数の前記インピーダンス計測用電極のうち、前記接触状態を表すインピーダンスが計測された前記インピーダンス計測用電極に基づいて、前記把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項13】
請求項1に記載の把持操作入力装置であって、
前記信号印加手段は、
前記接触状態においてユーザの手に形成される環状導体路と鎖交するように前記把持対象物の内部に設けられた環状の印加用コアと、
前記印加用コアに巻回された印加用コイルと、
前記印加用コイルに電流を流すことによる電磁誘導によって、前記把持対象物を把持するユーザの手に前記印加用コイルを介して前記電気信号を印加するコイル用印加手段と、
を備え、
前記物理量計測手段は、前記印加用コイルに電気信号が印加された際のインピーダンスを前記電気的物理量として計測する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項14】
請求項13に記載の把持操作入力装置であって、
前記把持対象物に複数の前記印加用コアが配置され、
前記コイル用印加手段は、複数の前記印加用コアのそれぞれに巻回された前記印加用コイルを介して特徴量の異なる前記電気信号を印加し、
前記把持状態検出手段は、前記物理量計測手段により計測されるインピーダンスの特徴量に基づいて、前記把持対象物におけるユーザの手の把持位置を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項15】
請求項3、請求項5、請求項7、請求項8、請求項10、請求項12又は請求項14に記載の把持操作入力装置であって、
前記把持状態検出手段は、前記接触状態を維持したまま前記把持対象物におけるユーザの手の把持位置を移動させる操作を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。
【請求項16】
請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の把持操作入力装置であって、
前記把持状態検出手段は、前記接触状態において指同士の接触圧を変化させる操作を検出する
ことを特徴とする把持操作入力装置。

【図4】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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