説明

投与量の加圧流体を投薬する計量デバイス

加圧流体の投与量を投薬するための、新規な計量デバイス(1)が記載される。投薬バルブ本体(3)は、加圧容器(5)の蓋(4)に液密式に取り付けられ、バルブ要素(9)を取り囲む。バルブ送出管(10)は、バルブ要素(9)に連結されている。チャンバ(13)は、バルブ本体(3)を取り囲み、その中で、ピストン(17)が上方位置と下方位置との間を往復でき、これが、投薬量を決定する。ピストン(17)とチャンバ(13)の内壁(23)との間には隙間が設けられ、加圧流体は、容器(5)とチャンバ(13)との間の圧力差に基づいてチャンバに流入し、ピストン(17)は、上位置にあるとき、バルブ本体(3)を密封するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による、投与量の加圧流体を投薬する計量デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
投与量の加圧流体を投薬する計量デバイスは、圧力下の容器から加圧流体が投薬される計量投与量バルブとして一般的に知られている。通常、計量バルブによって投与される液体の調合物は、液化ガス噴射剤を含み、エアゾールのスプレーとして患者に送出される。投与される調合物の投与量は、所望の生理的な応答を生み出すのに充分でなければならない。それぞれの連続する投与において、患者には、調合物の適切な量が投薬されなければならない。かくして、あらゆる投薬システムは、治療の安全性及び有効性を確保するために、正確に且つ確実に、投薬量の液体調合物を投薬することができなければならない。
【0003】
そのような計量投与バルブは、例えば、国際公開第2004/0022143号によって知られており、バルブ開口部に向けてばね付勢されたバルブ軸を具備している。内部チャンバは、エアゾール容器からの1つ又は複数の入口を有しているばねのケージによって構成される。バルブ軸の上端は計量ガスケットを具備し、この計量ガスケットは作動位置にあるならば、計量チャンバを密封する。作動位置においては、バルブ軸の長手方向放出通路における横断横孔が、計量チャンバ内に放出を行い、調合物の計量された投与量が投薬される。
【0004】
そのような計量投与バルブによって投薬される液体の体積は、典型的には、各作動毎に70〜140マイクロリットルの範囲である。しかしながら、ある種の用途、例えば、いびきを防ぐために喉の奥に液体スプレーを適用するような場合には、例えば、各作動毎に、およそ1.5mlといった多量の調合物が必要である。そのような多量は、公知の計量投与バルブによっては投薬できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/022143号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/082744号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、上述した計量投与バルブはエアゾール容器のために開発されている。環境に関する規制が、エアゾールの使用は大幅に抑制されるべきであること、あるいは、完全に止めるべきであることを要求するので、本発明の目的は、患者に投与されるべき流体調合物の噴射剤として環境的に問題点のあるエアゾールを用いることなく使用できる計量デバイスを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、現在利用可能な計量投与バルブ、又は、手動操作式のポンプスプレーシステムと比較して、各作動毎に多量体積の液体スプレーを送出することができる計量デバイスシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、請求項1の特徴を有する計量デバイスによって達成される。
【0009】
本発明の1つの側面によれば、投薬バルブを有する、加圧流体の投与量を投薬するための計量デバイスが提供され、この計量デバイスは、加圧容器の蓋に液密式に取り付け可能なバルブ本体を備え、バルブ本体はバルブ要素を取り囲み、バルブ本体と蓋との間に取り付けられたガスケットに向けて弾性的に押圧されている。バルブ要素は、さらに、バルブ送出管を有する。チャンバが設けられ、チャンバは、バルブ本体を取り囲み、バルブ本体に向けた第1の開口部と、加圧容器に向けた第2の開口部とを有している。ピストンは、チャンバ内で上位置と下位置との間を往復可能であり、それにより、投薬する投与量を決定する。ピストンは、第2の開口部を密封し、ピストンは、容器からチャンバへ流体通路を提供し、容器とチャンバとの間の圧力差に基づいて加圧流体がチャンバに流入する。さらに、ピストンは、上位置にあるとき、第1の開口部を密封するようになっている。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態においては、液体通路が、ピストンと、チャンバの内壁との間の隙間によって提供される。液体通路は、ピストンに設けられた孔によって提供される。
【0011】
本発明による計量デバイスが有する利点は、少数の異なる部品を用いて、正確な且つ効率的な、例えば、いびきの防止等の液体調合物の比較的多量の投与量の計量が得られることである。更なる利点は、従属請求項及び以下の説明において説明される。
【0012】
以下、本発明について、例示的にのみ、添付図面を参照して、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】容器に組み込まれた計量デバイスを示している。
【図2】バルブが開かれた第1の位置の計量デバイスを示している。
【図3】計量チャンバが空であり、医薬調合物の投与量が送出された、第2の位置の計量デバイスを示している。
【図4】計量チャンバが、空になったときの、計量デバイスを示している。
【図5】バルブが閉じられた、第3の位置における計量デバイスを示している。
【図6】ピストンが最初の位置に戻って、計量チャンバが再び流体で充填されている、第4の位置における計量デバイスを示している。
【図7】計量デバイスを備えた容器を示した斜視図である。
【図8】図8aと8bは、キャップシュラウドの容器への取付部分を示した、2つの異なる斜視図である。
【図9】図9aと9bは、キャップシュラウドのアクチュエータ部分を示した、2つの異なる斜視図である。
【図10】図10aと10bは、計量チャンバを示した、2つの異なる斜視図である。
【図11】図11aと11bは、ピストンを示した、2つの異なる斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、計量デバイス1は投薬バルブ2と共に示されており、細長いバルブ本体3を、加圧容器5の蓋4に液密式に取り付けられて備え、図面においては、容器5の上半分だけを示している。蓋4は、カップ状の形態を有し、直立した内側フランジ6と、巻き上がった縁7とを備えている。本実施形態においては、バルブ本体3は、蓋4によってプレス嵌めされて、容器5に対して液密式の結合を形成している。しかしながら、他のタイプの結合、例えば、溶接、スナップ、ねじ止めなども可能である。巻き上がった縁7と、バルブ本体3の上縁部との間には、ガスケット8が圧入されている。送出管10に固定的に結合されているバルブ要素9は、コイルばね11によって、ガスケット8に抗して押される。バルブ本体3は、円筒形のチャンバ13に入り、これは、バルブ本体3を取り囲む。このチャンバ13は、第1の上開口部12を備えた、内側管14を備えるカップ状の形態を有し、バルブ本体3がプレス嵌め結合によって取り付けられる。チャンバ13は、第2の下開口部15を有し、これは、加圧流体を含む容器5の中へ入っている。チャンバ13内で、円筒形ピストン17は、コイルばね18によって、下位置へと押され、コイルばねは、内側リング20によってチャンバの上ルーフ19に保持されている。円筒形ピストン17は、上シールリップ21と、下シールリップ22とを有しており、これらのリップは、チャンバ13の内壁23に向けて押圧されている。ピストン17の下位置は、リング形状のストッパ要素24によって定められる。ピストン17の中心には、円筒形の隆起部25が設けられ、これが、バルブ本体3の下開口部12と協働し、すなわち、上方位置において、円筒形の隆起部25は、下開口部12を密封する。
【0015】
容器5の外側縁部26、すなわち、蓋4のリム部分には、スナップ嵌め結合によって、キャップシュラウド27が取り付けられ、これは、下取付ピース28と、上アクチュエータピース29とからなり、これらのピースは、板状のストッパ要素31を備えた、マウスピース又はくちばし30を具備している。図1から容易に理解できるように、送出管10には、可撓性のL字形の管状ジョイント33が取り付けられ、送出ノズル又はくちばし30をバルブ要素9に結合している。アクチュエータピース29は、ヒンジ部分34とハンドル35とを有している。取付ピース28は、くちばし30の領域に、通路36を有している(図8aも参照のこと)。
【0016】
計量デバイス1の機能は、以下の通りである。
【0017】
図1において、投薬バルブ2は閉じられており、ピストン17は、コイルばね18によって内側リング又はストッパ20に対して押されて、下方位置にある。図2においては、ハンドル35が容器5に向けて押され(矢印40参照)、アクチュエータピース29は傾斜されて、投薬バルブ2が開かれている(矢印41参照)。従って、チャンバ13は、ノズル又はくちばし30に開いて結合され、圧力低下を生じ、過剰圧力を有する流体は、チャンバ13からノズル30へと流れ、容器5の中の過剰圧力の力が、ピストン17を上方に押して、ついには、バルブ本体3の下開口部12は閉じられる(図3の矢印42を参照)。コイルばね18は、容器5の過剰圧力に対して、弱いばね力を有するように設計されている。従って、チャンバ13は、投与量の流体だけ空になり、この投与量は、チャンバ13内のピストン17の下位置と上位置とによって定められ、矢印43によって示すように、ノズル30から射出される。ピストン17が、バルブ本体3の下開口部12を閉じている間、流体の流れは、自動的に停止する(図4)。流体投与量の送出の後、ハンドル35を解放すると、投薬バルブ2は閉じられ(図5の矢印44を参照)、一方、ピストン17は、矢印45に示すように、依然として、開口部12を密封する。ピストン17の上シールリップ21及び下シールリップ22の設計は、完璧な密封が存在しないように、すなわち、シールリップ21及び22と、チャンバ13の内壁23との間に、わずかな隙間が存在し、容器5内の過剰圧力に起因して、図6の矢印45にて示すように、流体が、容器5からチャンバ13へ流れるようになっている。コイルばね18は、ピストン17が、内側リング又はストッパ20に向けて完全に下方に押し付けられることを確保する。従って、チャンバ13は、流体で再充填され、ついには、チャンバ13内の圧力は、容器5内の圧力と等しくなる。その結果、計量デバイス1によって次の投与量を消費することができる。
【0018】
ピストン17と、チャンバ13の内壁23との間に、わずかな隙間を設けることに代えて、ピストン17に小さな孔を設けてもよく(図示せず)、孔は軸線方向に設けられる。孔の直径に依存して、流体は、チャンバ13の中に速く又は遅く流れ、再充填速度を決定できる。従って、計量デバイス1は、例えば、約10秒後など、特定の時間間隔の後にのみ使用でき、過剰投与は防止される。
【0019】
計量デバイスのすべての構成要素は、硬質プラスチック材料、好ましくは、PET又はPPから作られる。
【0020】
図7の斜視図には、加圧容器5を有する計量デバイス1を示している。国際公開第2005/082744号に記載されているように、容器の下部分50は、圧力制御システムを組み込む。特に、その図5及び図6においては、圧力制御デバイスと、さらにピストンとを有する容器が示され、ピストンは、所定の過剰圧力のガスによって押し上げられ、ピストンと計量デバイス1との間には、液体だけが存在する。そのようなシステムにおいては、容器5内の流体圧力は、一定レベルに保たれる。従って、流体の過剰圧力は、流体を計量チャンバ13の中に流れさせる。従って、計量デバイス1によって消費される投与量は、一定なままに維持される。
【0021】
国際公開第2005/082744号の図5及び図6に示される、付加的なピストンに代えて、国際公開第2005/082744号の図7に示されるように浸漬管を設けてもよく、この浸漬管は、計量デバイス1のチャンバ13に入り、圧力制御デバイスの上方にて、容器5の底部で終端している。そのような場合には、計量デバイス1のピストン17によって、なんらの液体通路も設けられない。
【0022】
図8a及び図8bには、キャップシュラウドの取付部分が、2つの異なる斜視図において示されている。約0.5mmの小さい直径を有する通路36が設けられ、所定の流体圧力にて流体を投与し、投与は、患者の喉の充分深くに入ることができる。図8bから分かるように、下取付ピース28を容器5に適切に位置決めするために、さらにいくつかの内側フィン51がある。
【0023】
図9a及び図9bには、ヒンジ部分34を有する上アクチュエータピース29が、2つの異なる斜視図において示されている。さらに、通路36の開始部分には、円筒形の凹部52が設けられ、微細な霧を発生させるために、小さな貫通孔を備えたインサートを収容している。変形例としては、凹部52は、通路36の端部に、すなわち、くちばし30の端部に設けることができ、インサートは、所定の空間角度を有する微細な霧を発生できる。
【0024】
図10a及び図10bには、計量チャンバ13を、2つの異なる斜視図において示している。コイルばね18を所定位置に保持する内側リング20と、内側管14とが見えている。
【0025】
図11a及び図11bには、シールリップ21及び22と、円筒形の隆起部25とを有するピストン17が、斜視図において示されている。
【0026】
当業者は、投薬バルブ2の容器5への取り付けは、溶接、スナップ、又はねじ止めによっても行うことができることを認識するであろう。さらに、ピストン17の設計を変更して、隆起部25による密封は、代わりに、内側管14を部分的に取り囲む外側リングによって提供される。
【0027】
本発明についての様々な変更例及び変形例が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投薬バルブ(2)を有する、加圧流体の投与量を投薬するための計量デバイス(1)であって、
加圧容器(5)の蓋(4)に液密式に取り付け可能なバルブ本体(3)を備え、
バルブ本体(3)はバルブ要素(9)を取り囲み、バルブ要素(9)は、バルブ本体と蓋との間に取り付けられたガスケット(8)に向かって弾性的に押圧され、バルブ要素はバルブ送出管(10)を有している計量デバイスにおいて、
チャンバ(13)が設けられ、チャンバは、バルブ本体(3)を取り囲み、バルブ本体に向けた第1の開口部(12)と、加圧容器(5)に向けた第2の開口部(15)とを有し、ピストン(17)は、チャンバ内の上位置と下位置との間を往復可能であり、この上位置と下位置とが、投薬量を決定し、ピストン(17)は、第2の開口部(15)を密封し、容器(5)からチャンバ(13)へ流体通路が設けられ、容器(5)とチャンバ(13)との間の圧力差に基づいて、加圧流体がチャンバ中に流入し、ピストン(17)が、上位置にあるとき、第1の開口部(12)を密封するようになっている、
ことを特徴とする計量デバイス。
【請求項2】
流体通路は、ピストン(17)と、チャンバ(13)の内壁(23)との間の隙間によって提供されている、ことを特徴とする請求項1に記載の計量デバイス。
【請求項3】
流体通路は、ピストン(17)に設けた孔によって提供されている、ことを特徴とする請求項1に記載の計量デバイス。
【請求項4】
弾性要素(18)が設けられて、ピストン(17)を下位置へ押す、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の計量デバイス。
【請求項5】
チャンバは円筒形であって、バルブ本体(3)に結合されたルーフ(19)を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の計量デバイス。
【請求項6】
内側シリンダ(14)は、ルーフ(19)に取り付けられ、バルブ本体(3)に密封結合されている、ことを特徴とする請求項5に記載の計量デバイス。
【請求項7】
弾性要素は、コイルばね(18)である、ことを特徴とする請求項4に記載の計量デバイス。
【請求項8】
アクチュエータ(35)が容器(5)に取り付けられ、細長いマウスピース(30)と、弾性的な結合管要素(33)とを備え、結合管要素(33)は、送出管(10)に取り付けられている、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の計量デバイス。
【請求項9】
アクチュエータ(35)は、容器(5)に対して傾動可能に取り付けられている、ことを特徴とする請求項8に記載の計量デバイス。
【請求項10】
細長いマウスピース(30)は、板状のストッパ要素(31)を有している、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の計量デバイス。
【請求項11】
マウスピース(30)は、アヒルのくちばしの形状を有している、ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の計量デバイス。
【請求項12】
所定の過剰圧力のガスで充填された第1のピストンを有する第1のシリンダと、前記第1のシリンダを取り囲み、所定の過剰圧力よりも高い圧力のガスで充填され、デバイスの外部への通路を有する第2のシリンダと、第1のシリンダの第1のピストンに結合された、前記通路を解放及び閉鎖するためのバルブとを備えている、
所定の過剰圧力を維持するための圧力制御デバイスを有する容器(5)における、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の計量デバイスの使用。
【請求項13】
容器(5)には、圧力制御デバイスの上方に、ピストンが設けられている、ことを特徴とする請求項12に記載の計量デバイスの使用。
【請求項14】
流体通路は、計量デバイスのチャンバ(13)に入り、且つ圧力制御デバイスの上方で、容器(5)の底部にて終端する、浸漬管によって設けられている、ことを特徴とする請求項12に記載の計量デバイスの使用。

【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−516419(P2010−516419A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547771(P2009−547771)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050317
【国際公開番号】WO2008/093172
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509217703)アイピーエス パテント アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】