説明

投光器

【課題】ブレ防止機能に優れた投光器を提供する。
【解決手段】投光器であるレーザーポインタ10は、光源14及びこの光源14からの光を投影面Iに投影する投影光学系15を有する筐体11と、筐体11のブレを検出するブレ検出部である角度センサ16と、筐体11に対して、光源14若しくは投影光学系15の少なくとも一部を移動させることにより、ブレを補正する防振機構部であるアクチュエータ19と、角度センサ16から出力される信号に基づいて、アクチュエータ19の移動を制御する制御部18と、角度センサ16と制御部18との間に設けられ、角度センサ16から出力される信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタ部17と、を有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、会議や講演会などプレゼンテーションの場において、投影面上に映し出された図などを指し示したい場合に、指示棒やレーザーポインタ(投光器)といった器具が広く利用されている。また、手ブレ防止機能を備えたレーザポインタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−284220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のレーザーポインタは、投影面から離れた位置でも指し示すことができる一方、指示棒に比べて視認性が悪く、特にレーザポインタの支持者の手ブレによる光点のちらつき(ブレ)が起きやすいという欠点がある。これに対して、特許文献1に記載のような手ブレ防止機能を有するレーザーポインタでは、角度の変位量を測定して手ブレ補正を行おうとするものであるが、この角度の変位量を測定しただけでは、手ブレか否かを適正に判断し手ブレ成分のみを除去するのは困難であると言う課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、指示用の光点の移動が、手ブレによるものか任意に移動させたものかを適正に判断し、手ブレ成分のみを検出して除去することが可能な投光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る投光器は、光源からの光を投影面に投影する投影光学系を有する筐体と、筐体のブレを検出するブレ検出部と、筐体に対して、光源若しくは投影光学系の少なくとも一部を移動させることにより、ブレを補正する防振機構部と、ブレ検出部から出力される信号に基づいて、防振機構部の移動を制御する制御部と、ブレ検出部と制御部との間に設けられ、ブレ検出部から出力される信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタ部と、を有する。
【0007】
このような投光器において、フィルタ部は、通過させる周波数帯域を変化させるように構成されることが好ましい。
【0008】
また、このような投光器は、投影面までの距離を測定する測距部と、フィルタ部と制御部との間に設けられ、測距部により測定された距離に基づいて、フィルタ部から出力される信号のゲインを調整するゲイン調整部と、を更に有することが好ましい。
【0009】
このとき、ゲイン調整部は、距離の増加に応じてゲインを大きくするように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る投光器を以上のように構成すると、指示用の光点の移動が手ブレによるものか意図的に移動させたものかを適正に判断し、手ブレ成分のみを検出して除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係るレーザーポインタの構成を示す概略図である。
【図2】第2の実施形態に係るレーザーポインタの構成を示す概略図である。
【図3】フィルタ部における周波数とゲインの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。なおここでは、投光器の一例としてレーザーポインタについて説明する。まず、図1を用いて第1の実施形態に係るレーザーポインタ10の構成を説明する。この第1の実施形態に係るレーザーポインタ10は、筐体11と、以下、この筐体11内に収納された、電源12と、この電源12の電力を各部に供給するための安定化回路などからなる電源供給部13と、レーザー光Lを放射する光源14と、この光源14から射出されるレーザー光Lを集光して投影面Iに平行光を投影する投影光学系15と、投影光学系15の光軸及びその直交方向からなる2軸方向の角度の変位量を検出するブレ検出部としての角度センサ16と、角度センサ16で検出した変位により出力される信号のうち、所定の低周波成分及び高周波成分を有する信号を除去するフィルタ部17と、このフィルタ部17を通して伝達された角度センサ16の変位量の信号に基づいて、レーザー光Lの投影角度を演算する制御部18と、この制御部18で演算された投影角度に基づいて、光束の向きを補正する(ブレを打ち消すためのフィードバック制御により作動する)防振機構部としてのアクチュエータ19と、を有して構成されている。なお、制御部18は、例えば、ICチップ等の半導体素子で構成され、投影角度の演算を行うだけでなく、レーザーポインタ10の各部の制御をも行う。
【0013】
ここで、投影光学系15は、光源14からのレーザー光Lを平行光に変換して、スクリーンなどの投影面Iに投影できるものであれば、従来公知の何れのものを使用してもよく、例えば、図示しないミラー、集光レンズ、リレーレンズなどで構成される。
【0014】
また、角度センサ16は、講演者など、レーザーポインタ10の支持者により、このレーザーポインタ10が動かされた際に、その変位量を検出することができれば、従来公知の何れのものを用いてもよく、例えば、角速度検出センサであってもよいし、角加速度検出センサであってもよい。1つの実施態様としては、レーザー光Lの光軸方向、及び、これに直交する方向の2軸方向の角速度を検出する角速度検出センサで構成される。
【0015】
また、アクチュエータ19は、制御部18で演算されたレーザー光Lの投影角度に基づいて、投影光学系15を制御して、筐体11に対するレーザー光Lの向きが所定の角度に保たれるよう補正することができるものであれば、従来公知の何れのものを用いてもよく、例えば、電動アクチュエータが用いられる。
【0016】
さらに、フィルタ部17は、角度センサ16で手ブレを検出することにより出力される信号のうち、上記アクチュエータ19の不安定な動きを誘発する可能性のある低周波成分の信号及び高周波成分の信号を除去するためのものであり、例えば、図3に示す特性を有するように、低周波成分を除去するハイパスフィルタと高周波成分を除去するローパスフィルタとから構成される。あるいは、必要な周波数のみを通過させるバンドパスフィルタを用いてもよい。なお、図3の例に示すフィルタ部17は、ハイパスフィルタを用いて0.05Hz未満の低周波成分を除去し、ローパスフィルタを用いて30Hzを超える高周波成分を除去するように構成した場合を示している。これは、実際の操作者の手振れ領域は2〜15Hz程度と考えられているので、電気的ノイズなどの不安定なブレ領域との境界を0.05〜2Hzとし、操作者が任意の位置にパニングさせている領域との境界を15〜30Hz程度と考えたためである。もちろん、この周波数帯域は一例であって、レーザーポインタ10の使用状況に合わせて最適な周波数帯域を設定することができる。
【0017】
フィルタ部17を用いて、角度センサ16から出力される信号のうち、高周波成分を有する信号を除去するのは、非常に速い振動(電気的ノイズ)をフィードバックしないことにより、アクチュエータ19の作動を安定させるためである。一方、低周波成分を有する信号を除去するのは、例えば、投影面Iにおいて、光点Sにより小さな円を描いて指し示すような場合、すなわち、手ブレではなく支持者が意図的にレーザーポインタ10を比較的ゆっくり動かしているときに、手ブレ補正が働かないようにするためである。
【0018】
以上のような構成のレーザーポインタ10において、フィルタ部17が手ブレを検出して、この手ブレが原因で発生する投影面I上での光点Sのブレを除去する仕組みについて説明する。まず、図示しないスイッチなどを押下すると、レーザーポインタ10が作動し、制御部18の制御により、光源14からレーザー光Lが放射され、投影光学系15により、レーザー光Lが平行光に変換されて、投影面Iに投影される。この投影面I上に投影された光点Sにより、支持者は図表など特定箇所を指し示すことができる。このとき、支持者が保持している筐体11に振動が加わると(すなわち、手ブレが発生すると)、角度センサ16がレーザーポインタ10の変位(変位量)を検出し、信号を出力する。この信号に基づいて制御部18が筐体11に対するレーザー光Lの投影角度を演算し、この演算された投影角度に基づいて、アクチュエータ19が変位を打ち消す方向に投影光学系15を作動させてレーザー光Lの投影方向を補正する。このように補正することにより、手ブレにより、図1において矢印で示すように投影面I上で光点Sが移動しようとしても、この光点Sを現在の位置に留めることができる。そのため、ブレによる余分な成分が除去されているので、レーザー光Lの光点Sのちらつきを抑えて、この光点Sを良好に視認することができる。
【0019】
このとき、上述のように、角度センサ16と制御部18との間にフィルタ部17が設けられているため、電気的ノイズ等の非常に早い小刻みな振動によりアクチュエータ19の作動が不安定になることが避けられ、また、支持者が意図的にこのレーザーポインタ10をゆっくり動かしているときに、手ブレ補正を働かさないようにすることができる。そのため、視認を困難にする光点Sの手ブレだけを効率良く除去することができる。
【0020】
なお、以上の説明では、アクチュエータ19により筐体11に対して投影光学系15の角度を変化させるように構成した場合について説明したが、光源14若しくは投影光学系15の少なくとも一部を移動させる(角度を変化させる)ように構成すればよい。すなわち、投影光学系15を筐体11に固定し、筐体11に対する光源14から放射される光の角度を変化させるように構成しても良い(第2の実施形態でも同様である)。
【0021】
また、フィルタ部17は、使用状況に応じて通過させる周波数帯域を変化させるように構成されていても良い(第2の実施形態でも同様である)。これは、光点Sの指示動作を手ブレと認識して補正しないように、フィルタ部17に対して、指示動作の緩急により予め制御周波数帯域を変更設定できる構成とすることが好ましいためである。すなわち、指示動作が緩い時は、手ブレ補正を行う制御周波数帯域を低く設定し、指示動作が急な時は、制御周波数帯域を高く設定できる構成とする。なお、制御周波数帯域の設定変更は、例えば、レーザーポインタ10の筐体11に設けられた切り替えボタンにより行う構成とすることができる。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るレーザーポインタ110について説明する。図2に示すように、この第2の実施形態に係るレーザーポインタ110の基本構成は、第1の実施形態と同様の構成を有しており、筐体11と、電源12と、電源供給部13と、光源14と、投影光学系15と、角度センサ16と、フィルタ部17と、制御部18と、アクチュエータ19と、を有して構成されている。そして、この第2の実施形態では、更に、スクリーンなどの投影面Iまでの距離(距離情報)を測定する測距部(測距機構)20と、フィルタ部17と制御部18との間に設けられ、測距部20から出力される距離情報に基づいて、フィルタ部17から出力される信号のゲインを調整するゲイン調整部21と、を備えている。なお、この第2の実施形態でも、制御部18は、測距部20や、その他のレーザーポインタ110の各部の制御を行う。また、第1の実施形態と同様の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0023】
ここで測距部20は、レーザポインタ110から投影面Iまでの距離を測定することができるものであれば、従来公知の何れのものを用いてもよく、例えば、電磁波、不可視光、音波などを投影面Iに投影し、その反射情報を受信して、投影面Iまでの距離を演算するものなどが挙げられる。
【0024】
それでは、第2の実施形態に係るレーザーポインタ110で、手ブレを除去する仕組みについて説明する。この第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、手ブレの検出により角度センサ16から出力される信号のうち、低周波成分及び高周波成分の信号をフィルタ部17で除去するように構成されている。また、この第2の実施形態では、更に、測距部20及びゲイン調整部21を用いた制御により、手ブレの補正を効果的に行うように構成されている。
【0025】
測距部20で測定された投影面Iまでの距離情報は、ゲイン調整部21に入力される。ゲイン調整部21は、角度センサ16から出力されフィルタ部17を通過した信号が入力さてゲインが調整されるが、このゲイン調整部21において、この信号に対するゲインを測距部20で測定された距離情報に基づいて変化させるように構成されている。具体的には、距離が短いときにはゲインを小さくし、距離が長いときにはゲインを大きくするように構成されている。そして、制御部18は、このように調整された信号に基づいて、投影角度を演算し、アクチュエータ19に指令を出して、投影光学系15を制御することにより、レーザー光Lの筐体11に対する投影方向を決定する。なお、以上のように距離情報に応じてゲインを変化させるのは、レーザーポインタ110と投影面Iとの距離が近ければ、アクチュエータ19により投影光学系15を大きく移動させなくても、手ブレによる光点Sの移動(振動)は目立たず、反対に、投影面Iまでの距離が比較的長い場合は、手ブレによるレーザーポインタ110の振動が光点Sに大きく現れるため、アクチュエータ19により投影光学系15を大きく移動させる必要があるためである。
【0026】
なお、ゲイン調整部21において、測距部20から出力される距離情報に対応して、ゲインを連続的に変化させても良いし、距離情報を所定の値で区切り、例えば、近距離、中距離、長距離の3段階でゲインを変化させるように構成しても良い。また、ゲイン調整部21の機能をフィルタ部17に持たせ、測距部20の出力をこのフィルタ部17に入力させるように構成しても良いし、あるいは、ゲイン調整部21の機能を制御部18に持たせ、測距部20の出力をこの制御部18に入力させるように構成しても良い。
【0027】
第2の実施形態にレーザーポインタ110を以上のように構成すると、投影面Iまでの距離に応じてアクチュエータ19による投影光学系15の移動量を変化させることができるので、より効果的に手ブレを補正することができる。
【符号の説明】
【0028】
10,110 レーザーポインタ(投光器) 11 筐体 14 光源
15 投影光学系 16 角度センサ(ブレ検出部) 17 フィルタ部
18 制御部 19 アクチュエータ(防振機構部) 20 測距部
21 ゲイン調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を投影面に投影する投影光学系を有する筐体と、
前記筐体のブレを検出するブレ検出部と、
前記筐体に対して、前記光源若しくは前記投影光学系の少なくとも一部を移動させることにより、前記ブレを補正する防振機構部と、
前記ブレ検出部から出力される信号に基づいて、前記防振機構部の移動を制御する制御部と、
前記ブレ検出部と前記制御部との間に設けられ、前記ブレ検出部から出力される前記信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタ部と、を有する投光器。
【請求項2】
前記フィルタ部は、通過させる周波数帯域を変化させるように構成された、請求項1に記載の投光器。
【請求項3】
前記投影面までの距離を測定する測距部と、
前記フィルタ部と前記制御部との間に設けられ、前記測距部により測定された前記距離に基づいて、前記フィルタ部から出力される信号のゲインを調整するゲイン調整部と、を更に有する請求項1又は2に記載の投光器。
【請求項4】
前記ゲイン調整部は、前記距離の増加に応じて前記ゲインを大きくするように構成された請求項3に記載の投光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−221341(P2011−221341A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91331(P2010−91331)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】