説明

投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器

【課題】投入抵抗接点部の開閉動作時に過大な衝撃力が発生しないようにするとともに振動を抑制する。
【解決手段】投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器は、電力を投入又は遮断する主接点部Aと、この主接点部Aと電気的に並列に接続された投入抵抗接点部Bを備える。可動側投入抵抗接点15と可動側電気シールド16との間の摺動部分における可動側投入抵抗接点15の外周には、可動側電気シールド16の内面と摺動する摺動リング17a,17bと、通電リング18を設ける。対向側投入抵抗接点21と電気シールド20との間の摺動部分において、対向側投入抵抗接点21の外周には、電気シールド20の内面と摺動する摺動リング22a,22bを設ける。摺動リング22a,22bの間に、電気シールド20の内面と摺動する通電リング23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電所、開閉所などに用いられる投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、送電系統の大容量化に伴い、変電所や開閉所に用いられる遮断器においては、必要な遮断容量の増大と、高い信頼性が求められている。そのため、例えば、550kV級のような高電圧遮断器においては、投入時の高いサージ電圧を抑制するために、投入抵抗方式が採用されている。この投入抵抗方式は、遮断器の主接点部に対して電気的に並列に投入抵抗を有する投入抵抗接点部を設け、この投入抵抗により投入時のサージ電圧が抑制された状態で、主接点部を投入する方式である。
【0003】
この投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器は、故障などにより送変電系統に停電などの重大な問題が発生する可能性があり、より高い信頼性が要求されている。また、電力自由化の時代背景などにより、近年では電力機器への小型化及びコスト低減の要求が高まっている。そのため投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器においても、小型かつ簡易な構成で機能を果たすことが必要とされている。
【0004】
このような要求を満たすために、投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器の投入抵抗接点部には、以下の性能が必要となる。
(1)機械強度上の高い信頼性を維持するために、開閉動作時の振動が小さく抑制され、過大な衝撃力が発生しない構造であること。
(2)電気的な性能を維持するために、開閉動作の繰返しに対して良好な摺動性能と通電性能を有すること。
(3)投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器全体の小型化のために、投入抵抗接点部の構成が簡易で小型であること。
【0005】
これらの性能を得るために、投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器に対して様々な提案がなされている。その一例として、投入抵抗接点用電極の動作方向にダンパを設けて力のモーメントを低減することで、開閉動作時の衝撃力を小さくして遮断性能を安定させた投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−282522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器は、送変電系統での使用において長期の寿命と信頼性が要求されている。しかし、従来の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器、例えば前記ダンパを設けたものであっても、開閉動作の繰返しを伴う長期間の使用において、摺動部や通電部に過大な摩耗や変形が発生する。
【0008】
この過大な摩耗や変形の原因は、摺動部への異物の噛み込みのような不正規な現象や開閉動作時の振動などである。この開閉動作時の振動は、経年による摺動部の材料劣化や使用状態に影響を受ける複雑な現象であって、この影響に対しては、摺動部や通電部の振動を抑制する必要がある。
【0009】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、投入抵抗接点部の開閉動作時に過大な衝撃力が発生しないようにするとともに振動を抑制し、開閉動作の繰返しに対して投入抵抗接点部が良好な摺動性能と通電性能を有し、小形かつ信頼性の高い投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器は以下のような特徴を有する。
(1)対向側電極と、前記対向側電極と接離自在な可動側電極と、を有する主接点部を有する。
(2)前記主接点部と電気的に並列に接続されている投入抵抗接点部を有する。
(3)前記投入抵抗接点部は、対向側投入抵抗接点と、前記対向側投入抵抗接点と直列に接続された投入抵抗体と、前記対向側投入抵抗接点を摺動するように内部に収納するシリンダである電気シールドと、前記対向側投入抵抗接点に接離自在な可動側投入抵抗接点とを有する。
(4)前記投入抵抗接点部において、前記シリンダと前記対向側投入抵抗接点との間に、復帰用ばねと複数の摺動リングを設け、前記複数の摺動リングの間に、1つ又は複数の通電リングを設ける。
(5)前記投入抵抗接点部に、前記可動側投入抵抗接点を摺動可能に収納する可動側電気シールドを設け、前記可動側投入抵抗接点と前記可動側電気シールドとの摺動部に複数の摺動リングを設け、前記複数の摺動リングの間に1つ又は複数の通電リングを設ける。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器を示す側面図である。
【図2】本実施形態の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器の対向側投入抵抗接点を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器(以下、ガス遮断器という)の実施形態について説明する。
【0013】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態のガス遮断器の遮断状態を示している。このガス遮断器は、絶縁性の媒体である六フッ化硫黄などの絶縁ガスを封入した図示しない容器内に収納されている。
【0014】
図1に示すように、このガス遮断器は、電力を投入又は遮断する主接点部Aと、この主接点部Aと電気的に並列に接続された投入抵抗接点部Bを備える。
【0015】
まず、主接点部Aの可動側電極について説明する。前記絶縁ガスを封入した容器内には、この容器に固定されている絶縁筒1が設けられている。この絶縁筒1には、可動側の部材を支持するためのベース2が固定されている。このベース2の先端には、パッファピストン3が固定されている。このパッファピストン3の外周にパッファシリンダ5が摺動可能に嵌合され、このパッファシリンダ5とパッファピストン3とで囲まれた空間がパッファ室6になっている。
【0016】
パッファシリンダ5の後端部には絶縁操作ロッド4が連結されている。この絶縁操作ロッド4は、操作機構が接続されており、その駆動力によってパッファシリンダ5が図中の水平方向に往復して開閉動作をする。
【0017】
パッファシリンダ5の先端部には主接点用可動側電極7が設けられ、この主接点用可動側電極7の外周側に絶縁ノズル8及び可動側通電接触子9が、それぞれ同心円状に設けられている。
【0018】
一方、主接点部Aの対向側電極においては、前記主接点用可動側電極7に対向して対向側の通電用導体10が設けられている。この通電用導体10の中央部分に、主接点用対向側電極11が固定されている。この主接点用対向側電極11の外周側には可動側通電接触子9と接触する対向側通電接触子12が設けられている。
【0019】
次に、投入抵抗接点部Bの可動側について説明する。投入抵抗接点を駆動するためのレバー13が、前記主接点部Aの絶縁操作ロッド4に連結され、投入抵抗接点用の絶縁操作ロッド14は、前記レバー13と連結されている。このレバー13を介して主接点部Aと投入抵抗接点部Bは同期して動作する。
【0020】
可動側投入抵抗接点15は、投入抵抗接点用の絶縁操作ロッド14に連結されている。この可動側投入抵抗接点15が摺動可能となるように可動側電気シールド16が設けられている。可動側電気シールド16は電気的なシールド機能を有するように角部が曲面状の形状で形成され、可動側投入抵抗接点15が内部を摺動しながら動作可能となるように支持する。この可動側電気シールド16が、請求項に記載した可動側支えである。
【0021】
可動側投入抵抗接点15と可動側電気シールド16との間の摺動部分には、摺動リング17a,17bと通電リング18が設けられている。すなわち、可動側投入抵抗接点15の外周には可動側電気シールド16の内面と摺動する摺動リング17a,17bが設けられ、この摺動リング17a,17bの間には同じく可動側電気シールド16の内面と摺動する通電リング18が設けられている。
【0022】
一方、投入抵抗接点部Bの対向側は、主接点部Aの通電用導体10に対して絶縁スペーサ19を介して支持されている。すなわち、絶縁スペーサ19に可動側が開口した筒状の電気シールド20が支持され、その内部に対向側投入抵抗接点21が摺動自在に組み込まれている。この電気シールド20は電気的なシールド機能を有するように角部が曲面状に形成されている。この電気シールド20と電気的に直列に投入抵抗体25が接続されている。
【0023】
図2に示すように、前記電気シールド20には、内部と外部とを貫通する貫通孔26が設けられている。前記電気シールド20と前記対向側投入抵抗接点21との間に投入抵抗接点を可動側に付勢する復帰用ばね24が設けられている。
【0024】
対向側投入抵抗接点21と電気シールド20との間の摺動部分には、摺動リング22a,22bと通電リング23が設けられている。すなわち、対向側投入抵抗接点21の外周には電気シールド20の内面と摺動する摺動リング22a,22bが設けられ、この摺動リング22a,22bの間には同じく電気シールド20の内面と摺動する通電リング23が設けられている。
【0025】
なお、前記摺動リング17a,17b,22a,22bを形成する材料は、PTFE系の摺動性能の良好な樹脂を用いるが、これに限定されず摺動性能の良好なものであれば良い。また、通電リング18,23は、銅系の通電性能の良好な金属製リング、羽形状の突起を持つリング、リング状のコイルバネなどを用いるが、これに限定されず通電性能の良好なものであれば良い。
【0026】
(実施形態の作用)
このように構成された本実施形態のガス遮断器の作用を以下に説明する。図1に示す絶縁操作ロッド4は、操作機構などの駆動力によって、軸方向に往復駆動をする。この往復駆動により主接点部Aと投入抵抗接点部Bとが同期して、往復移動をすることにより、このガス遮断器は開閉動作をする。
【0027】
図1に示すガス遮断器の開路状態において閉路動作が開始されると、まず、対向側投入抵抗接点21と可動側投入抵抗接点15が接触し、これらは閉路となる。続いて、主接点用対向側電極11と主接点用可動側電極7とが接触し、これらは閉路となる。このときのサージ電圧を発生させるエネルギーは、対向側投入抵抗接点21と可動側投入抵抗接点15が閉路となっていることにより、投入抵抗体25によって吸収される。この吸収により、主接点用対向側電極11と主接点用可動側電極7への過電圧の印加は防止される。
【0028】
対向側投入抵抗接点21と電気シールド20との摺動する部分には摺動リング22a,22bが設けられていることにより、開閉動作による振動が抑制される。すなわち、対向側投入抵抗接点21は、可動側投入抵抗接点15に押されて移動するときに、電気シールド20の内面を摺動リング22a,22b及び通電リング23が摺動する。
【0029】
このような摺動によりこの部分で発生する振動は、抑制され過大な衝撃力も発生しない。また2つの摺動リング22a,22bの間に通電リング23が設けられているため、開閉動作が繰返されても通電性能は維持される。
なお、可動側投入抵抗接点15と可動側電気シールド16の間に設けられている摺動リング17a,17bと通電リング18の作用は、前記摺動リング22a,22bと通電リング23と同じである。
【0030】
(実施形態の効果)
以上説明した本実施形態のガス遮断器によれば、摺動リング17a,17b,22a,22b及び通電リング18,23を有していることで次のような効果を有する。
(1)投入抵抗接点部Bの開閉動作時の振動が小さく抑制され、過大な衝撃力が発生しないことにより機械強度上の高い信頼性を維持することができる。
(2)開閉動作の繰返しに対して良好な摺動性能と通電性能を有する投入抵抗接点部Bを実現できる。
(3)小型かつ簡易な構成で信頼性の高い投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器とすることができる。
【0031】
(他の実施形態)
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような他の実施形態も含有する。
【0032】
(1)図2に示す電気シールド20の内部と外部とを貫通する貫通孔26において、この貫通孔26の断面積S1が、電気シールド20の内部断面積S2の5%以下となるように形成しても良い。この場合、電気シールド20の内部のガス圧を適切に上昇させて対向側投入抵抗接点21に対するダンピング効果により開閉動作時の振動を抑制することができる。
【0033】
(2)対向側投入抵抗接点21及び可動側投入抵抗接点15には、制振合金を材料として用いても良い。制振合金は、金属でありながら振動を吸収する特性を有している。この制振合金を用いることにより、対向側投入抵抗接点21及び可動側投入抵抗接点15に発生する振動を吸収することができる。
【0034】
(3)図1に示す投入抵抗接点絶縁操作ロッド14の全長L1は、可動側投入抵抗接点15の全長L2よりも長くなるようにしても良い。このようにすることにより、金属に比較して剛性が小さい絶縁材料で形成されている投入抵抗接点絶縁操作ロッド14が、開閉動作時に可動側投入抵抗接点15に発生する振動を吸収することができる。
【0035】
(4)本実施形態においては、2つの摺動リング17a,17bと1つの通電リング18、及び、2つの摺動リング22a,22bと1つの通電リング23で構成されているが、これに限定されない。例えば、前記のそれぞれの組み合わせが、3以上の複数の摺動リングと2以上の複数の通電リングで構成されても良い。
【0036】
(5)本実施形態においては、投入抵抗接点部Bの可動側の可動側電気シールド16が請求項に記載の可動側支えであるが、これに限定されない。例えば、この可動側支えは、電気シールドの機能を有しないものであっても良い。
【0037】
なお、上記の実施形態は、本明細書において一例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。すなわち、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
1…絶縁筒
2…ベース
3…パッファピストン
4…絶縁操作ロッド
5…パッファシリンダ
6…パッファ室
7…主接点用可動側電極
8…絶縁ノズル
9…可動側通電接触子
10…通電用導体
11…主接点用対向側電極
12…対向側通電接触子
13…レバー
14…投入抵抗接点用の絶縁操作ロッド
15…可動側投入抵抗接点
16…可動側電気シールド
17a,17b…摺動リング
18…通電リング
19…絶縁スペーサ
20…電気シールド
21…対向側投入抵抗接点
22a,22b…摺動リング
23…通電リング
24…復帰用ばね
25…投入抵抗体
26…貫通孔
A…主接点部
B…投入抵抗接点部
S1…貫通孔26の断面積
S2…電気シールド20の内部断面積
L1…投入抵抗接点絶縁操作ロッド14の全長
L2…可動側投入抵抗接点15の全長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向側電極と、前記対向側電極と接離自在な可動側電極とを有する主接点部と、前記主接点部と電気的に並列に接続されている投入抵抗接点部とを有し、前記投入抵抗接点部は、対向側投入抵抗接点と、前記対向側投入抵抗接点と直列に接続された投入抵抗体と、前記対向側投入抵抗接点を摺動するように内部に収納するシリンダと、前記対向側投入抵抗接点に接離自在な可動側投入抵抗接点とを備えた投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器であって、
前記シリンダと前記対向側投入抵抗接点との間に投入抵抗接点を可動側に付勢する復帰用ばねを設け、前記対向側投入抵抗接点の外周には前記シリンダの内面と摺動する複数の摺動リングを設け、前記複数の摺動リングの間には同じく前記シリンダの内面と摺動する1つ又は複数の通電リングを設けたことを特徴とする投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器。
【請求項2】
前記シリンダは、電気シールドであることを特徴とする請求項1に記載の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器。
【請求項3】
前記シリンダ又は前記電気シールドの内部と外部とを貫通する貫通孔を設け、前記貫通孔の断面積が、前記シリンダ又は前記電気シールドの内部断面積の5%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器。
【請求項4】
前記可動側投入抵抗接点を摺動可能となるように内部に収納する可動側支えを設け、
前記可動側投入抵抗接点の外周には前記可動側支えの内面と摺動する複数の摺動リングを設け、前記複数の摺動リングの間には同じく前記可動側支えの内面と摺動する1つ又は複数の通電リングを設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器。
【請求項5】
前記可動側支えは、可動側電気シールドであることを特徴とする請求項4に記載の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器。
【請求項6】
前記対向側投入抵抗接点と可動側投入抵抗接点との、両方又はどちらか一方は、制振合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器。
【請求項7】
前記可動側投入抵抗接点に投入抵抗接点絶縁操作ロッドを接続し、この投入抵抗接点絶縁操作ロッドの全長が可動側投入抵抗接点の全長よりも長いことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の投入抵抗接点付きパッファ形ガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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