説明

投写型映像表示装置

【課題】 投写面上に投写される映像の品質を向上することを可能とする投写型映像表示装置を提供する。
【解決手段】 投写型映像表示装置100は、固体光源20と、固体光源20から出射されるスポット光を投写面上で走査する投写素子10とを備える。投写型映像表示装置100は、映像入力信号に基づいて、投写素子10の走査速度を制御する投写素子制御部230と、投写素子制御部230によって制御される投写素子10の走査速度に基づいて、映像入力信号を補正する信号補正部240とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体光源から出射される光を投写面上で走査する投写素子を有する投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体光源から出射されるスポット光を投写面上で走査する投写素子を備えた投写型映像表示装置が知られている。投写面上に投写される映像の品質を向上する方法としては、映像の高解像度化が考えられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、ファクシミリやデジタル複写機において、被走査面上でスポット光を走査することによって、被走査面上に情報を記録する技術が知られている(例えば、特許文献2)。具体的には、このような技術では、スポット光のスポット径を小さくすることによって、高階調化が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−343397号公報
【特許文献2】特開平5−107496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、投写面上に投写される映像において、走査方向における画素(ドット)数は一定であり、投写面上に投写される映像は所望のサイズに設定される。従って、例えば、上述した技術を転用して、単に、スポット径を小さくしても、高解像度化を実現することができない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、投写面上に投写される映像の品質を向上することを可能とする投写型映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の特徴に係る投写型映像表示装置は、固体光源(固体光源20)と、前記固体光源から出射されるスポット光を投写面上で走査する投写素子(投写素子10)とを備える。投写型映像表示装置は、映像入力信号に基づいて、前記投写素子の走査速度を制御する素子制御部(投写素子制御部230)と、前記素子制御部によって制御される前記投写素子の走査速度に基づいて、前記映像入力信号を補正する信号補正部(信号補正部240)とを備える。
【0008】
第1の特徴において、投写型映像表示装置は、前記素子制御部によって制御される前記投写素子の走査速度に基づいて、前記固体光源から出射されるスポット光のスポット径を制御する光源制御部(光源制御部250)をさらに備える。
【0009】
第1の特徴において、投写型映像表示装置は、前記映像入力信号に基づいて、画像内において高周波成分を含む領域である高周波領域を特定する特定部(走査速度算出220)をさらに備える。前記投写素子の走査速度として、基準走査速度が定められている。前記素子制御部は、前記高周波領域において、前記投写素子の走査速度を基準走査速度よりも遅い速度に制御し、前記高周波領域以外において、前記投写素子の走査速度を基準走査速度よりも速い速度に制御する。
【0010】
第1の特徴において、投写型映像表示装置は、前記素子制御部によって制御される前記投写素子の走査速度に基づいて、前記固体光源から出射されるスポット光のスポット径を制御する光源制御部(光源制御部250)をさらに備える。前記光源制御部は、前記高周波領域において、前記固体光源から出射されるスポット光のスポット径を小さくする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、投写面上に投写される映像の品質を向上することを可能とする投写型映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る投写型映像表示装置100を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る投写素子10の走査を示す図である。
【図3】第1実施形態に係るフィルタを示す図である。
【図4】第1実施形態に係る走査速度制御係数αを示す図である。
【図5】第1実施形態に係る投写素子10の走査速度を説明するための図である。
【図6】第1実施形態に係るスポット径を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の実施形態に係る投写型映像表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0014】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
[実施形態の概要]
実施形態に係る投写型映像表示装置は、固体光源と、固体光源から出射されるスポット光を投写面上で走査する投写素子とを備える。投写型映像表示装置は、映像入力信号に基づいて、投写素子の走査速度を制御する素子制御部と、素子制御部によって制御される投写素子の走査速度に基づいて、映像入力信号を補正する信号補正部とを備える。
【0016】
実施形態では、素子制御部は、映像入力信号に基づいて、投写素子の走査速度を制御する。また、信号補正部は、投写素子の走査速度に基づいて、映像入力信号を補正する。従って、高解像度化が実現され、投写面上に投写される映像の品質を向上することができる。
【0017】
[第1実施形態]
(投写型映像表示装置の構成)
以下において、第1実施形態に係る投写型映像表示装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る投写型映像表示装置100を示す図である。
【0018】
図1に示すように、投写型映像表示装置100は、投写素子10と、固体光源20と、制御ユニット200とを有する。
【0019】
投写素子10は、固体光源20から出射されたスポット光を投写面(不図示)上で走査する。なお、投写素子10の走査速度としては、投写面上に投写される映像のサイズに応じて、基準走査速度が予め定められている。
【0020】
例えば、投写素子10は、図2に示すように、y軸方向(垂直方向)に沿ってスポット光を走査する。なお、図2では、投写面は、水平方向のx軸及び垂直方向のy軸によって定義される。なお、投写素子10の走査方向は、y軸方向(垂直方向)に限定されるものではなく、x軸方向(水平方向)であってもよい。
【0021】
固体光源20は、LED(Laser Emitting Diode)やLD(Laser Diode)などの固体光源である。固体光源20は、赤固体光源と、緑固体光源と、青固体光源とによって構成される。赤固体光源は、赤スポット光を出射する。同様に、緑固体光源は、緑スポット光を出射し、青固体光源は、青スポット光を出射する。なお、各色の固体光源は、複数の固体光源によって構成されるアレイ光源であってもよい。
【0022】
制御ユニット200は、投写型映像表示装置100に設けられた各構成を制御する。具体的には、制御ユニット200は、映像信号受付部210と、走査速度算出220と、投写素子制御部230と、信号補正部240と、光源制御部250とを有する。
【0023】
映像信号受付部210は、DVDやTVチューナなどの外部機器から、1フレーム(画像)を構成する複数の画素毎の映像入力信号を取得する。映像入力信号は、赤入力信号R、緑入力信号G及び青入力信号Bによって構成される。
【0024】
走査速度算出220は、映像入力信号に基づいて、投写素子10の走査速度を算出する。具体的には、走査速度算出220は、高解像度化すべき領域(以下、高周波領域)を特定して、高周波領域に基づいて、投写素子10の走査速度を算出する。
【0025】
第1に、走査速度算出220は、映像入力信号に基づいて、高周波成分を有する画素を抽出する。走査速度算出220は、高周波成分を有する画素を含む領域を高周波領域として特定する。すなわち、高周波領域は、1フレーム(画像)内において高周波成分を含む領域である。
【0026】
例えば、走査速度算出220は、図3に示すフィルタを用いて、対象画素(m、n)の周波数成分F(m,n)を算出する。図3に示される値は、画素(m−1,n−1)〜画素(m+1,n+1)の画素値に乗算される係数である。
【数1】

【0027】
ここで、走査速度算出220は、周波数成分F(m,n)が所定閾値よりも大きい場合に、高周波成分を有する画素として、対象画素(m、n)を抽出する。
【0028】
なお、高周波成分を有する画素の抽出方法は、図3に示すフィルタを用いる方法に限定されるものではなく、フーリエ変換を用いた周波数解析方法を用いてもよい。
【0029】
第2に、走査速度算出220は、高周波領域に含まれる画素の周波成分の値(以下、高周波成分値)に基づいて、走査速度制御係数αを取得する。なお、高周波成分値は、例えば、高周波領域に含まれる画素の周波成分の平均値である。また、走査速度制御係数αは、投写素子10の走査速度を遅らせるための係数である。走査速度制御係数αの値は、最小値MIN(>0)〜最大値MAX(=1)の範囲である。
【0030】
例えば、走査速度算出220は、図4に示す関係に基づいて、走査速度制御係数αを取得する。図4に示すように、高周波成分値が閾値Th1よりも小さい場合には、走査速度制御係数αが最大値MAXで一定である。高周波成分値が閾値Th2よりも大きい場合には、走査速度制御係数αが最小値MINで一定である。高周波成分値が閾値Th1と閾値Th2との間である場合には、高周波成分値が大きいほど、走査速度制御係数αが小さい。
【0031】
第3に、走査速度算出220は、走査速度制御係数αに基づいて、投写素子10の走査速度を算出する。具体的には、走査速度算出220は、高周波領域以外における投写素子10の走査速度及び高周波領域における投写素子10の走査速度を算出する。ここで、高周波領域以外における投写素子10の走査速度と高周波領域における投写素子10の走査速度との比率は、最大値MAX(=1):走査速度制御係数αで保たれる。
【0032】
例えば、走査速度算出220は、以下の式に基づいて、高周波領域以外における投写素子10の走査速度(A1)及び高周波領域における投写素子10の走査速度(L1)を算出する。
【数2】

【0033】
なお、L、L1及びA1の関係が図5に示されている。図5に示すL、L1及びA1の傾き、すなわち、y軸方向の印可電圧の増加率は、投写素子10の走査速度に対応することに留意すべきである。
【0034】
投写素子制御部230は、投写素子10を制御する。具体的には、投写素子制御部230は、高周波領域については、走査速度(A1)で投写素子10を制御する。一方で、投写素子制御部230は、高周波領域以外については、走査速度(L1)で投写素子10を制御する。
【0035】
信号補正部240は、投写素子10の走査速度に基づいて、映像入力信号を補正する。例えば、信号補正部240は、y軸方向(垂直方向)における画素の間引き処理、y軸方向(垂直方向)における画素の補間処理を行う。具体的には、信号補正部240は、高周波領域以外については、走査速度(L1)が基準走査速度(L)よりも速い(高い)ため、走査速度(L1)に基づいて、画素の間引き処理を行う。一方で、信号補正部240は、高周波領域については、走査速度(A1)が基準走査速度(L)よりも遅い(低い)ため、走査速度(A1)に基づいて、画素の補間処理を行う。
【0036】
光源制御部250は、固体光源20を制御する。第1に、光源制御部250は、信号補正部240によって補正された映像入力信号に基づいて、固体光源20から出射されるスポット光の強度を制御する。第2に、光源制御部250は、投写素子10の走査速度に基づいて、固体光源20から出射されるスポット光のスポット径を制御する。
【0037】
具体的には、光源制御部250は、図6に示す関係を用いて、固体光源20から出射されるスポット光のスポット径を制御する。図6に示すように、走査速度が速いほど、スポット径が小さい。
【0038】
すなわち、光源制御部250は、高周波領域以外については、走査速度(L1)が基準走査速度(L)よりも速いため、スポット径を基準スポット径よりも大きくする。一方で、光源制御部250は、高周波領域については、走査速度(A1)が基準走査速度(L)よりも遅いため、スポット径を基準スポット径よりも小さくする。なお、基準スポット径は、基準走査速度(L)で適用されるスポット径である。
【0039】
(作用及び効果)
第1実施形態では、投写素子制御部230は、映像入力信号に基づいて算出された走査速度(L1、A1)で、投写素子10の走査速度を制御する。また、信号補正部240は、投写素子10の走査速度に基づいて、映像入力信号を補正する。従って、高解像度化が実現され、投写面上に投写される映像の品質を向上することができる。
【0040】
具体的には、第1実施形態では、高周波領域において、基準走査速度(L)よりも遅い走査速度(A1)で、投写素子10の走査速度が制御される。従って、高周波領域において高解像度化が実現され、投写面上に投写される映像の品質を向上することができる。
【0041】
なお、高周波領域以外において、基準走査速度(L)よりも速い走査速度(L1)で、投写素子10の走査速度が制御される。従って、高周波領域以外では、解像度が低下する。しかしながら、高周波領域以外では、画素間の差が小さいため、映像全体としては、品質劣化が生じにくい。
【0042】
第1実施形態では、光源制御部250は、投写素子10の走査速度に基づいて、固体光源20から出射されるスポット光のスポット径を制御する。従って、高解像度化の効果を高めることができる。
【0043】
具体的には、第1実施形態では、高周波領域については、走査速度(A1)が基準走査速度(L)よりも遅いため、スポット径が基準スポット径よりも小さい。高周波領域以外については、走査速度(L1)が基準走査速度(L)よりも速いため、スポット径が基準スポット径よりも大きい。従って、高周波領域において、高解像度化の効果を高めることができる。
【0044】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0045】
上述した実施形態では、スポット径を変更する構成について触れていない。スポット径の変更は、特開平5−107496に示されるように、可変アパーチュア素子によって構成された光束径可変装置によって実現される。
【0046】
上述した実施形態では、高周波領域が1つであるケースについて例示したが、実施形態は、これに限定されるものではない。具体的には、複数の高周波領域毎に、投写素子10の走査速度が算出されてもよい。例えば、高周波領域#1及び高周波領域#2が設けられているケースでは、以下の式に従って、投写素子10の走査速度が算出される。
【数3】

【符号の説明】
【0047】
10・・・投写素子、20・・・固体光源、100・・・投写型映像表示装置、200・・・制御ユニット、210・・・映像信号受付部、220・・・走査速度算出、230・・・投写素子制御部、240・・・信号補正部、250・・・光源制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体光源と、前記固体光源から出射されるスポット光を投写面上で走査する投写素子とを備えた投写型映像表示装置であって、
映像入力信号に基づいて、前記投写素子の走査速度を制御する素子制御部と、
前記素子制御部によって制御される前記投写素子の走査速度に基づいて、前記映像入力信号を補正する信号補正部とを備えることを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記素子制御部によって制御される前記投写素子の走査速度に基づいて、前記固体光源から出射されるスポット光のスポット径を制御する光源制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記映像入力信号に基づいて、画像内において高周波成分を含む領域である高周波領域を特定する特定部をさらに備え、
前記投写素子の走査速度として、基準走査速度が定められており、
前記素子制御部は、前記高周波領域において、前記投写素子の走査速度を基準走査速度よりも遅い速度に制御し、前記高周波領域以外において、前記投写素子の走査速度を基準走査速度よりも速い速度に制御することを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記素子制御部によって制御される前記投写素子の走査速度に基づいて、前記固体光源から出射されるスポット光のスポット径を制御する光源制御部をさらに備え、
前記光源制御部は、前記高周波領域において、前記固体光源から出射されるスポット光のスポット径を小さくすることを特徴とする請求項3に記載の投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−164845(P2010−164845A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8066(P2009−8066)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】