説明

投写型映像表示装置

【課題】投写型映像表示装置の動作中に安全対策を実施すべき状況が発生した場合にて、的確で効率的な安全対策処理を実行したい。
【解決手段】検知部150は、少なくとも投写空間への侵入物体を検知する。制御部170は、第1検知部150により侵入物体が検知された場合、当該投写型映像表示装置100自体にエラーが発生した場合に発動されるセーフティ処理より、軽度なセーフティ処理を発動する。たとえば、制御部170は、侵入物体が検知された場合、黒画像の投写に切り替えるよう制御するとともに、その切り替えを除き、当該投写型映像表示装置の状態を維持するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影面に画像を投写する投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源に放射エネルギーが大きいレーザを使用するプロジェクタの開発が進められている。このようなプロジェクタから投写された光が通過する投写空間に、誤って人が侵入してしまわないよう十分な対策を講じる必要がある。そこで、スクリーン方向からの赤外線を検出するためのセンサなどを設け、侵入物体を検知する手法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−194302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロジェクタにて、光源などの内部構成要素に不具合が発生した場合、DMD(Digital Micro-mirror Device)などの光変調素子、冷却機構など、主要な構成要素すべての動作を停止させる安全対策処理が実行されることが一般的である。その不具合が他の構成要素に伝搬することを抑制したり、その後の修理作業を円滑に行うためである。
【0005】
一方、上述したような侵入物体が検出された場合も、何らかの安全対策処理を実行する必要があるが、上記プロジェクタ自体の不具合の場合と異なり、侵入物体が監視領域から外れた後、すぐに通常処理に復旧させることが望ましい。上記プロジェクタ自体に不具合が発生した場合に実行される安全対策処理を、侵入物体が検出された場合にも適用すると、通常処理に復旧する際に、冷却機構の再起動などが必要となり、通常処理に戻るまでに、ある程度の時間がかかってしまう。この時間は投写画像を見ている観察者のストレスとなる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、投写型映像表示装置の動作中に安全対策を実施すべき状況が発生した場合にて、的確で効率的な安全対策処理を実行することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の投写型映像表示装置は、投影面に画像を投写する投写型映像表示装置であって、少なくとも投写空間への侵入物体を検知するための検知部と、検知部により侵入物体が検知された場合、当該投写型映像表示装置自体にエラーが発生した場合に発動されるセーフティ処理より、軽度なセーフティ処理を発動する制御部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、投写型映像表示装置の動作中に安全対策を実施すべき状況が発生した場合にて、的確で効率的な安全対策処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】短焦点の投写型映像表示装置の設置例を示す図である。
【図2】図1に示した投写型映像表示装置の側面断面を、概略的に示す図である。
【図3】図1に示した投写型映像表示装置の光学系の構成例を示す図である。
【図4】図1に示した投写型映像表示装置の筐体に、第1検知部を設置する例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態に係る投写型映像表示装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図7】通常終了処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】侵入物体検知用のセーフティ処理の第1例を示すフローチャートである。
【図9】侵入物体検知用のセーフティ処理の第2例を示すフローチャートである。
【図10】複数の光源がアレイ化された光源ユニットを示す図である。
【図11】内部エラー検知用のセーフティ処理の第1例を示すフローチャートである。
【図12】内部エラー検知用のセーフティ処理の第2例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を短焦点の投写型映像表示装置を例に説明する。なお、本発明は短焦点の投写型映像表示装置に限るものではなく、フロント投写の投写型映像表示装置、レーザ走査の投写型映像表示装置など、いずれの投写型映像表示装置にも適用可能である。
【0012】
図1は、短焦点の投写型映像表示装置100の設置例を示す図である。図1(a)は、投影面200および投写型映像表示装置100を正面からみた図であり、図1(b)は、投影面200および投写型映像表示装置100を上からみた図である。
【0013】
図1に示す投写型映像表示装置100の筐体は、高さおよび奥行きより幅が長い、直方体の形状で構成される。図1では、スクリーンや壁などの投影面200が床面に接している例を示しており、当該投写型映像表示装置100(図1(a)ではPJと表記している)はその床面に設置され、その筐体の前面が投影面200と実質的に接する位置に設置されている。投影面200内には、投写型映像表示装置100から投写された投写画像が投影されるべき、投影領域250が設けられる。投写型映像表示装置100の筐体の上面には投写口110が設けられ、その投写口110から出射された光が、投影領域250に導かれる。
【0014】
図1の斜線で描かれている領域は、侵入物体を検出するべき検出領域(監視領域と考えてもよい)300を示す。ここでは、投写口110から出射される光が通過する投写空間350と、その投写空間350から一定の距離(たとえば、1.0m)にある範囲と、投写型映像表示装置100本体から一定の距離(たとえば、1.0m)にある範囲と、を含んだ領域に設定している。
【0015】
図2は、図1に示した投写型映像表示装置100の側面断面を、概略的に示す図である。投写型映像表示装置100内に設けられる光学系90は、反射ミラー80を含み、後述する投写レンズから出射された光は、当該反射ミラー80に反射され、投写口110を通過して投影面200に導かれる。
【0016】
図3は、図1に示した投写型映像表示装置100の光学系90の構成例を示す図である。この構成例では、三原色のレーザ光源(赤色光源10R、緑色光源10Gおよび青色光源10B)が設けられる。赤色光源10R、緑色光源10Gおよび青色光源10Bは、それぞれ複数設けられてもよい。各光源は光ファイバに接続される。各光源に接続された光ファイバは、ファイババンドル20により束ねられ、各光ファイバの終端から出射された光は、ロッドインテグレータ30、第1リレーレンズ41、第1ミラー42、第2リレーレンズ43、第2ミラー44および第3リレーレンズ45を介して、色分離合成プリズム50に入射される。
【0017】
色分離合成プリズム50に入射された光は、それを構成する、赤色プリズム50R、緑色プリズム50Gおよび青色プリズム50Bによって、赤色光、緑色光および青色光に分離される。分離された赤色光、緑色光および青色光は、反射型の、赤色光変調素子60R、緑色光変調素子60Gおよび青色光変調素子60Bにそれぞれ入射される。たとえば、赤色光変調素子60R、緑色光変調素子60Gおよび青色光変調素子60Bには、DMD(Digital Micro-mirror Device)を採用することができる。赤色光変調素子60R、緑色光変調素子60Gおよび青色光変調素子60Bは、後述する画像信号設定部65から設定される、それぞれの色の画像信号に応じて、入射された赤色光、緑色光および青色光をそれぞれ変調する。
【0018】
赤色光変調素子60R、緑色光変調素子60Gおよび青色光変調素子60Bによって変調された赤色光、緑色光および青色光は、赤色プリズム50R、緑色プリズム50Gおよび青色プリズム50Bによって光路が統合され、各色光が合成された光が、色分離合成プリズム50から投写レンズ70に入射される。
【0019】
投写レンズ70は、色分離合成プリズム50から入射された光を広角化して、反射ミラー80に出射する。反射ミラー80は、投写レンズ70から入射された光をさらに広角化して、投写口110から投影面200に導く(図2参照)。反射ミラー80は、非球面ミラーが採用されてもよい。投写レンズ70および反射ミラー80は、一体型のハイブリット投写光学系で構成されてもよい。
【0020】
図4は、図1に示した投写型映像表示装置100の筐体に、第1検知部150を設置する例を示す図である。投写型映像表示装置100の筐体の上面に、少なくとも投写空間350(図1(b)参照)への侵入物体を検知するための第1検知部150が設けられる。第1検知部150は、侵入物体を撮影するためのカメラであってもよいし、侵入物体に反射される赤外線を検知するための赤外線センサであってもよいし、侵入物体が発する赤外線を検知する赤外線カメラであってもよい。ここでは、二つのカメラ(第1カメラ150a、第2カメラ150b)が設置される例を示している。図4の点線は、第1カメラ150aおよび第2カメラ150bの視野を描いている。
【0021】
第1カメラ150aおよび第2カメラ150bは、互いに向き合うように、投写型映像表示装置100の筐体の両側端に設置される。より具体的には、第1カメラ150aは当該筐体の背面側の左上角に設置され、第2カメラ150bは当該筐体の背面側の右上角に設置される。これにより、投影面200に投写された投写画像の、より広い領域を視野に含めることができる。
【0022】
図4に示す配置例では、第1カメラ150aは、上記投写画像の少なくとも右半分、当該筐体の右側面方向および当該筐体の背面方向の少なくとも右半分を視野に含む。第2カメラ150bは上記投写画像の少なくとも左半分、当該筐体の左側面方向および当該筐体の背面方向の少なくとも左半分を視野に含む。第1カメラ150aおよび第2カメラ150bにより撮影された画像を組み合わせると、上記投写画像全体を視野に含めることができる。
【0023】
したがって、第1カメラ150aおよび第2カメラ150bは、投影面200に投写された投写画像、ならびに投写空間350およびその近傍に侵入した物体を撮影することができるとともに、当該筐体の側面方向および背面方向に侵入した物体も撮影することができる。すなわち、検出領域300に侵入するすべての物体を撮影することができる。
【0024】
なお、図4に示す第1検知部150の数および配置は一例であり、その数および配置に限るものではない。
【0025】
図5は、本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置100の構成を示すブロック図である。投写型映像表示装置100は、光源10、画像信号設定部55、光変調素子60、冷却部35、第1検知部150、第2検知部160、制御部170、表示部180および操作部190を備える。
【0026】
第1検知部150は、少なくとも投写空間350への侵入物体を検知するためのものである。上述したように第1カメラ150aおよび第2カメラ150bを設置した場合、第1カメラ150aおよび第2カメラ150bは、入射光を電気信号に変換して制御部170に供給する。
【0027】
画像信号設定部55は、図示しない画像信号保持部から入力される画像信号をそれぞれの色の画像信号(たとえば、赤用画像信号、緑用画像信号および青用画像信号)に分離して、赤色光変調素子60R、緑色光変調素子60Gおよび青色光変調素子60Bにそれぞれ設定する。
【0028】
冷却部35は、投写型映像表示装置100の筐体内の温度(とくに、光源10の近傍の温度、光変調素子60の近傍の温度)を所定の温度範囲内に抑えるために設けられる。冷却部35はチラー機構であってもよいし、ファン機構であってもよい。冷却部35は、主に、光源10および光変調素子60の温度上昇を抑制することにより、当該筐体内の温度を上記閾値温度以下に維持する。
【0029】
第2検知部160は、投写型映像表示装置100自身のエラーを検知するためのものである。本実施の形態では、当該エラーとして筐体内の温度が上記温度範囲の上限の閾値を超えてしまった状態を想定する。この状態が発生する要因としては、主に、光源10から出射される光の強度が強すぎるか、冷却部35の冷却能力が低すぎるかが考えられる。すなわち、光源10または冷却部35の不具合に起因することが多い。
【0030】
第2検知部160は温度センサであってもよい。当該温度センサは、光源10の近傍および光変調素子60の近傍の少なくとも一方に設置される。当該温度センサは、検知した温度を制御部170に供給する。また、第2検知部160として、光源10から出射される光の強度を検知するための照度センサを、光源10の近傍に設置してもよい。当該照度線センサは、上記温度センサと、代替的または追加的に設置されることが可能である。
【0031】
また、光源10の温度変化または照度変化を検出することにより、光源10の不具合を検出することができる。光源10の温度または照度が急激に変化した場合、光源10が機能停止したと推測することができる。
【0032】
制御部170は、第1検知部150により侵入物体が検知された場合、第2検知部160により上記エラーが検知された場合のいずれの場合も、セーフティ処理を発動する。制御部170は、侵入物体が検知された場合、当該エラーが検知された場合より、軽度なセーフティ処理を発動する。当該軽度なセーフティ処理は、上記エラーが検知された場合に発動されるセーフティ処理より、復旧処理が簡素な処理である。当該軽度なセーフティ処理は、投写型映像表示装置100に搭載される複数の構成要素のうち、必要最低限の構成要素の動作を実質的に停止させ、できるだけ多くの構成要素の動作を維持する処理である。セーフティ処理の具体的内容は後述する。
【0033】
表示部180および操作部190は、ユーザインタフェースである。両者はタッチパネルディスプレイで構成されてもよいし、表示パネルと操作ボタンの組み合わせで構成されてもよい。表示部180は現在のステータスやメッセージを表示する。操作部190はユーザからの指示を受け付け、制御信号に変換してして制御部170に供給する。
【0034】
図6は、実施の形態に係る投写型映像表示装置100の全体動作を示すフローチャートである。ここでは、第2検知部160により検知される内部エラーとして、光源10の不具合を例に挙げる。
【0035】
まず、ユーザにより電源が投入されると、制御部170は初期起動処理を実行する(S10)。たとえば、光源10、冷却部35および光変調素子60のキャリブレーションを実行する。ユーザにより所定の画像ファイルの投影が指示されると、制御部170はその画像ファイルに含まれる画像信号を、投影面200に映像として表示させるよう、各構成要素を制御する(S11)。
【0036】
操作部190がユーザから終了指示を受け付けると(S12のY)、制御部170は通常終了処理を発動する(S18)。当該通常終了処理の具体的内容は後述する。操作部190がユーザから終了指示を受け付けない間(S12のN)、第2検知部160からの信号を参照して、内部エラーが発生したか否かを判定する(S13)。内部エラーが発生した場合(S13のY)、内部エラー検知用のセーフティ処理を発動する(S14)。当該セーフティ処理の具体的内容は後述する。内部エラーが発生していない場合(S13のN)、当該セーフティ処理を発動しない。
【0037】
操作部190がユーザから終了指示を受け付けない間(S12のN)、制御部170は上記内部エラーが発生したか否かを判定するとともに、第1検知部150から供給される信号を解析して、上記検出領域に侵入物体が存在するか否かを判定する(S15)。侵入物体が検知された場合(S15のY)、侵入物体検知用のセーフティ処理を発動する(S16)。当該セーフティ処理の具体的内容は後述する。侵入物体が検知されない場合(S15のN)、当該セーフティ処理は発動されない。
【0038】
制御部170は侵入物体検知用のセーフティ処理を発動した後、復旧可能か否かを判定する(S17)。復旧可能な場合(S17のY)、復旧後、通常の映像表示処理に戻る(S11)。ここで、復旧可能な場合とは、上記検出領域に侵入物体が検出されなくなった状態をいう。制御部170は、その状態になった後、自動的に通常の映像表示処理に復旧させてもよいし、ユーザからの再生指示を待って、復旧させてもよい。復旧不能な場合(S17のN)、復旧可能な状態になるまで待つ。
【0039】
図7は、上記通常終了処理(S18)の一例を示すフローチャートである。制御部170は、第一段階として、光源10および冷却部35を現状の状態で作動させつつ、第1検知部150(第1カメラ150a、第2カメラ150b)および光変調素子60を待機状態に遷移させつつ、画像信号設定部55に黒画像を光変調素子60に設定するよう、制御する(S181)。ここで、黒画像とは全画素の画素値が実質的にゼロの画像であってもよい。
【0040】
制御部170は、第二段階として、光源10、冷却部35、第1検知部150、光変調素子60および画像信号設定部55をすべてオフ状態に遷移させる(S182)。画像信号系の構成要素を段階的に電源オフしていくことにより、回路に不具合が発生したり、次回起動時に前回の起動時の画像信号が残存している事態を抑制することができる。
【0041】
図8は、上記侵入物体検知用のセーフティ処理(S16)の第1例を示すフローチャートである。制御部170は、侵入物体が検知された場合、黒画像の投写に切り替えるよう制御するとともに、その切り替えを除き、当該投写型映像表示装置100の状態(より具体的には稼働状態)を維持するよう制御する。より具体的には、制御部170は、光源10、第1検知部150、光変調素子60および冷却部35を作動させつつ、画像信号設定部55に黒画像を光変調素子60に設定するよう、制御する(S161)。
【0042】
これにより、復旧処理を簡素化することができる。すなわち、画像信号設定部55が光変調素子60に設定する画像信号を、黒画像信号から、侵入検知時に表示していた画像信号に戻すだけで足りる。投写型映像表示装置100の構成要素自体の不具合ではないため、それら構成要素の動作を停止させる必要性は存在しない。
【0043】
図9は、上記侵入物体検知用のセーフティ処理(S16)の第2例を示すフローチャートである。制御部170は、侵入物体が検知された場合、光源10の動作を停止させるよう制御するとともに、その停止を除き、当該投写型映像表示装置100の状態を維持するよう制御する。より具体的には、制御部170は、第1検知部150、光変調素子60および冷却部35を作動させつつ、光源10をオフに遷移させるよう制御する(S166)。画像信号設定部55が光変調素子60に設定する画像は、黒画像であってもよいし、侵入検知時に表示していた画像であってもよい。
【0044】
これにより、復旧処理を簡素化しつつ、光源10からの発光を停止させることにより、より安全性を高めるすることができる。
【0045】
図10は、複数の光源10がアレイ化された光源ユニット12を示す図である。光強度が大きいレーザ光を出射するため、各色(R、G、B)のレーザ光源を、それぞれ複数搭載する投写型映像表示装置100も開発されている。この場合、図9に示した上記侵入物体検知用のセーフティ処理(S16)の第2例を示すフローチャートでは、そのステップS166にて、制御部170は、複数の光源10の動作を段階的に停止させるよう制御する。その他の処理は、図9のフローチャートと同じである。
【0046】
このように、複数の光源10を段階的に(たとえば、1秒に1個)消灯させることにより、光源ユニット12の近傍の急激な温度変化を抑制することができる。したがって、復旧を待つ間の、冷却部35による冷却しすぎも抑制することができる。
【0047】
図11は、上記内部エラー検知用のセーフティ処理(S14)の第1例を示すフローチャートである。制御部170は、光源10、第1検知部150、光変調素子60および冷却部35をオフに遷移させるよう制御する(S141)。画像信号設定部55が光変調素子60に設定する画像は、黒画像であってもよいし、侵入検知時に表示していた画像であってもよい。
【0048】
このように、内部エラーが発生した場合、通常終了処理と異なり、できるだけ早く主要構成要素のすべての電源をオフすることにより、不具合が発生した構成要素が他の構成要素に悪影響を及ぼす可能性を低減することができる。
【0049】
図12は、上記内部エラー検知用のセーフティ処理(S14)の第2例を示すフローチャートである。第2例では、図10に示したように複数の光源10が設置されることを前提とする。また、温度センサが各光源の近傍に設置され、各光源の温度が検知可能な構成を前提とする。
【0050】
制御部170は、第一段階として、第1検知部150、光変調素子60および冷却部35をオフに遷移させるとともに、複数の光源10のうち、不具合が発生した光源10のみをオフに遷移させるよう制御する(S146)。画像信号設定部55が光変調素子60に設定する画像は、黒画像であってもよいし、侵入検知時に表示していた画像であってもよい。制御部170は、第二段階として、不具合が発生していない複数の光源10を順次オフに遷移させるよう制御し、(S147)、すべての光源10がオフに遷移する(S148)。これにより、光源ユニット12の近傍の急激な温度変化を抑制することができる。
【0051】
以上説明したように実施の形態によれば、侵入物体が検知された場合と、投写型映像表示装置100自身のエラーが発生した場合とで異なるセーフティ処理を発動することにより、安全対策を的確で効率的に実施することができる。たとえば、侵入物体が検知された場合、黒画像の投写に切り替えるだけのセーフティ処理を発動することにより、侵入者の安全を確保しつつ、容易に復旧できる状態を維持することができる。
【0052】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0053】
たとえば、上記侵入物体検知用のセーフティ処理(S16)の第2例にて、検出領域300内の侵入物体が検知された位置に応じて、動作を停止させる光源の数を決定してもよい。すなわち、制御部170は、侵入物体が検知された場合、少なくとも一つの光源の動作を停止させるよう制御するとともに、その停止を除き、当該投写型映像表示装置100の状態を維持するよう制御する。その際、制御部170は、検知された侵入物体と投写空間350との距離に応じて、動作を停止させる光源の数を決定する。当該距離が短いほど、多くの光源の動作を停止させる。当該距離と当該光源の数との対応関係は、あらかじめテーブルに記述されて保持されてもよい。また、当該距離に所定の比例定数を乗算して、当該光源の数を決定してもよい。
【0054】
検知された侵入物体と投写空間350との距離は、第1カメラ150aおよび第2カメラ150bから供給される撮影画像に対して既存の画像解析技術を適用することにより、推測可能である。この変形例によれば、より最適化された安全対策処理を実施することができる。
【0055】
また、上記侵入物体検知用のセーフティ処理(S16)の第2例にて、検出領域300内の侵入物体が検知された位置に応じて、動作を停止させる光源の位置を決定してもよい。すなわち、制御部170は、侵入物体が検知された場合、その侵入物体が存在する方向に照射している光源の動作を停止させるよう制御するとともに、その停止を除き、当該投写型映像表示装置100の状態を維持するよう制御する。この変形例によれば、より最適化された安全対策処理を実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 光源、 35 冷却部、 60 光変調素子、 100 投写型映像表示装置、 110 投写口、 150 第1検知部、 160 第2検知部、 170 制御部、 200 投影面、 250 投影領域、 300 検出領域、 350 投写空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影面に画像を投写する投写型映像表示装置であって、
少なくとも投写空間への侵入物体を検知するための検知部と、
前記検知部により侵入物体が検知された場合、当該投写型映像表示装置自体にエラーが発生した場合に発動されるセーフティ処理より、軽度なセーフティ処理を発動する制御部と、
を備えることを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記侵入物体が検知された場合、黒画像の投写に切り替えるよう制御するとともに、その切り替えを除き、当該投写型映像表示装置の状態を維持するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記侵入物体が検知された場合、光源の動作を停止させるよう制御するとともに、その停止を除き、当該投写型映像表示装置の状態を維持するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
当該投写型映像表示装置は、複数の光源を備え、
前記制御部は、前記侵入物体が検知された場合、複数の光源の動作を段階的に停止させるよう制御するとともに、その停止を除き、当該投写型映像表示装置の状態を維持するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
当該投写型映像表示装置は、複数の光源を備え、
前記制御部は、前記侵入物体が検知された場合、少なくとも一つの光源の動作を停止させるよう制御するとともに、その停止を除き、当該投写型映像表示装置の状態を維持するよう制御し、
前記制御部は、検知された侵入物体と前記投写空間との距離に応じて、動作を停止させる光源の数を決定することを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−224316(P2010−224316A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72821(P2009−72821)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】