説明

投票装置

候補者選択用紙から候補者情報を選択して記録媒体に電磁的に記録する電子投票において、投票者が選択した候補者の確定や取消を安心して行うことができる投票装置を提供する。候補者選択用紙1に印刷した候補者情報をコード化した画像11を読み取って投票を行う投票装置において、上記候補者選択用紙には、選択を確定するための画像12、及び、選択を取消すための画像13が印刷され、これら画像は、候補者情報をコード化した画像とは視覚的な違いが明白で、かつ、論理的な意味を推測できる画像を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、選挙、住民投票、アンケートなどにおける投票装置に関する。特に、投票の候補となる候補リストの中から選択的に投票を行う装置に関する。
【背景技術】
選挙での投票について、投票所での投票用紙を用いた方法では、投票の意思があるにもかかわらず十分な筆記がかなわないといった理由や、都合により投票所に出向くことがかなわないといった理由で、有効投票を行うことができなかった有権者(投票者)が少なからず存在していた。これに対して、投票所での電子投票では、前者の理由(投票の意思があるにもかかわらず十分な筆記がかなわない)によって無効投票となっていた有権者(投票者)の票が有効になることが期待される。
投票所での電子投票の従来技術としては、例えば日本国特許庁の公開特許公報である特開平8−16862号公報(以下、従来技術1)がある。従来技術1によれば、受付窓口で選挙人名簿との照合を終えた投票者は、投票カードを受け取り、それを投票装置に挿入して投票可能な状態にし、投票装置のタッチパネル画面上に表示された候補者リストの中から投票したい候補者の部分を、投票者がタッチ選択することによって投票を行うものである。投票内容は所定の記憶装置内に電子的に記録される。
従来技術1では、画面上の候補者などを投票者がタッチ選択するのみで投票を行うことができるため、投票の意思があるにもかかわらず十分な筆記がかなわない有権者(投票者)でも、有効投票を行うことが容易である。また、選挙管理者からすると、投票の集計が迅速になり、疑問票の確定に費やしていた作業を大幅に軽減できる。
【発明の開示】
しかしながら、上記従来技術1に示される投票装置では、市議会議員選挙など定数が60名、候補者数が80名近くに及ぶような選挙の場合、投票者への視認性を確保したまま、候補者の公平性を担保するには、それなりの工夫が必要となる
本出願人等は、上記従来技術1の問題を解決する発明について、日本国特許出願(特願2002−050667号)および日本国特許出願(特願2002−163704号)を行っている。また、2003年2月26日に、これらの特許出願を優先権の基礎とするPCT出願(出願番号: )を行っている。
特願2002−050667号は、投票装置の操作機器を投票者が操作することで、候補者のリストを印刷した候補者選択用紙から候補者情報を取得し、投票装置の表示画面で選択した情報を確認し、投票の記録原本となる記憶媒体に記録する発明を開示している。該投票装置では、表示画面に表示すべき情報が選択した候補者情報、及び、付随情報に限られるため、投票装置全体をコンパクトにすることが可能となる。加えて、候補者選択用紙上において候補者のリストを一覧表示できるので、投票者への視認性を確保したまま、候補者の公平性を担保することが可能である。また、候補者情報を取得する手段として、選挙種別、候補者の氏名、所属政党をパラメータとして、ある関数Fによってコード化した画像を印刷し、該画像を読みとってコードを取得し、関数Fの逆関数であるGによって、該コードから選挙種別、候補者の氏名、所属政党を取得する手段を開示している。このようにすると選挙毎にプログラムや設定情報の入れ替えなどの作業が発生しないため、運用上有利である。
また、特願2002−163704号は、特願2002−050667号の一部を改良したものであり、候補者選択用紙と操作機器との間の接触手段を、点的ではなく面的とすることで、操作機器の使い勝手の操作安定性を増すようにした発明を開示している。また、候補者情報や確定/取消コマンドをコード化した画像としてQRコードのような2次元コードを採用することを開示している。さらに、候補者情報と確定/取消コマンドのコード化画像とが混同されないように工夫することについても開示している。
ところで、これらの特許出願の発明では、候補者選択用紙に、候補者情報の他に、選択した候補者を確定するためのコマンド、および、選択した候補者を取消するためのコマンドをコード化した画像も併記している。しかし、これら画像が混同されないように工夫することについて言及しているのみであり、具体的手段を与えるものではなかった。コード化した画像としてバーコードや2次元コードを利用する場合、通常、投票者にはその論理的意味を画像情報だけで識別することは不可能であり、また、各画像の違いを見分けることも不可能に近い。投票者はコード化した画像の近くに表記された文字情報などを信用するのみであり、投票の際に不安になりやすい。
そこで、本出願人等は、これらの特願出願に対して、以下の点で更に改良することにした。すなわち、本発明では、候補者情報を表すコード化した画像としては、依然としてバーコードや2次元コードを用いるものの、確定、または、取消コマンドについては、候補者情報のコード化画像とは異なるものであることを、投票者が容易に判断することができる投票装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、候補者選択用紙の確定、または、取消コマンドを意味する画像として、「○」や「×」などの視覚的に容易に投票者が論理的意味を確認できる図形を用いる。投票者が操作機器の操作によって、候補者情報を表すコード化した画像か、上記図形のいずれかを選択したとき投票装置のプログラムは以下の制御を行う。まず、候補者が選択されていない状態のとき(以下、状態1という)は、候補者情報を表すコード化した画像のみ受付けるようにする。例えば、2次元コードの1つであるQRコードを採用している場合には、プログラムは取得画像がQRコードであるものとして処理する。正常に処理が完了したときには、プログラムは、確定、または、取消のコマンドを受付ける状態(以下、状態2という)に遷移する。状態2のときは、確定、または、取消コマンドを意味する画像のみ受付けるようにする。例えば、上記の例のように「○」や「×」などの図形を採用している場合には、プログラムは取得画像が「○」か「×」かエラーのいずれかであるものとして処理する。「○」のときは投票を完了する状態(以下、状態3という)に遷移する。「×」のときは状態1にもどる。エラーのときは、状態2のまま待機する。この処理を達成するために投票装置内には「○」や「×」を識別するための画像データベースをもたせる。
上記目的を達成するために、本発明の第2の態様は、上記第1の態様の「○」や「×」などの視覚的に容易に投票者が論理的意味を確認できる図形に、簡単な図形を組み合わせたものを用いる。これは、「○」や「×」だけでは必要な図形識別精度が得られない場合の補足手段である。投票装置のプログラム処理、及び、画像データベースについては上記第1の態様に準ずる。
上記目的を達成するために、本発明の第3の態様は、候補者情報をコード化した画像とは視覚的に陽に識別できるコード体系で、確定、または、取消コマンドを意味するコード化した画像を用いる。例えば、候補者情報にはQRコードを用い、確定や取消コマンドには一次元バーコードを用いる。これは、「○」や「×」などの図形では、必要な図形識別精度が得られない場合の代替手段である。投票者には、論理的意味は不明のままだが、候補者情報のコード体系と、確定/取消コマンドのコード体系が異なることが明らかになる。投票装置のプログラム処理、及び、コードデータベースについては上記第1の態様に準ずる。
上記目的を達成するために、本発明の第4の態様は、上記第1の態様乃至上記第3の態様で説明した確定、または、取消コマンドに、印刷時に他の色を割り当てる。例えば、候補者情報には黒、確定コマンドには緑、取消コマンドには赤の色を割り当てて印刷する。これは、投票者により安心してもらうための措置である。投票装置のプログラム処理、及び、画像データベースについては上記第1の態様に準じ、さらに、各処理において、色情報の識別処理も合わせて行う。
上記目的を達成するために、本発明の第5の態様は、上記第1の態様乃至上記第4の態様のように、確定、または、取消コマンドを候補者選択用紙に印刷するのではなく、これらコマンド入力を投票装置の表示画面に表示して選択ボタンから受付ける。投票者が操作機器の操作によって、候補者情報を表すコード化した画像を選択したとき、および、上記画面上に表示した選択ボタンを選択したとき、投票装置のプログラムは以下の制御を行う。まず、状態1のときは、操作機器からの候補者情報を表すコード化した画像のみ受付けるようにする。例えば、QRコードを採用している場合には、プログラムは取得画像がQRコードであるものとして処理する。正常に処理が完了したときには、プログラムは状態2に遷移する。状態2のときは、投票装置の表示画面に、選択した候補者情報、および、確定、または、取消コマンドの表示を行う。状態2において、投票者が画面(表示画面)上の確定コマンドを選択したときは状態3に遷移する。取消コマンドを選択したときは状態1に遷移する。
上記目的を達成するために、本発明の第6の態様は、上記第1の態様乃至上記第4の態様のように、確定、または、取消コマンドを候補者選択用紙に印刷するのではなく、これらコマンド入力を投票装置に具備した選択ボタンから受付ける。選択ボタンを具備する場所は、表示装置、または、投票カードのリーダライタ、または、操作機器、または、システム本体のいずれでも良い。投票者が操作機器の操作によって、候補者情報を表すコード化した画像を選択したとき、及び、上記投票装置に具備した選択ボタンを選択したとき、投票装置のプログラムは以下の制御を行う。まず、状態1のときは、操作機器からの候補者情報を表すコード化した画像のみ受付けるようにする。例えば、QRコードを採用している場合には、プログラムは取得画像がQRコードであるものとして処理する。正常に処理が完了したときには、プログラムは、状態2に遷移する。状態2のときは、投票装置の表示画面には、選択した候補者情報の表示を行う。状態2において、投票者が投票装置に具備した確定ボタンを選択したときは状態3に遷移する。取消ボタンを選択したときは状態1に遷移する。
上記目的を達成するために、本発明の第7の態様は、上記第6の態様で示した選択ボタンに、点字、または、「○」「×」の図形の凹凸をもたせる。例えば、確定ボタンには、「確定」を意味する点字か、「○」の図形の凹凸を施す。取消ボタンには、「取消」を意味する点字か、「×」の図形の凹凸を施す。これは、視覚障害を持つ投票者などへの配慮である。視覚障害を持つ投票者は、候補者選択用紙上の候補者名を読むことが困難な場合もあるため、候補者選択用紙の候補者名も点字とする。また、コード化した画像にも凹凸をつける。さらに、表示画面上の選択した候補者名を確認することが困難な場合もあるため、表示装置の代わりにイヤホンを用い、視覚障害を持つ投票者は、イヤホンを介して音声で読み上げた選択候補者名を聞くことができるようにする。視覚障害を持つ投票者が操作機器の操作によって、候補者情報を表すコード化した画像を選択したとき、及び、上記投票装置に具備した選択ボタンを選択したとき、投票装置のプログラムは以下の制御を行う。まず、状態1のときは、操作機器からの候補者情報を表すコード化した画像のみ受付けるようにする。例えば、QRコードを採用している場合には、プログラムは取得画像がQRコードであるものとして処理する。正常に処理が完了したときには、プログラムは、状態2に遷移する。状態2のときは、投票装置のイヤホンには、選択した候補者名の音声が流れる。状態2において、投票者が投票装置に具備した確定ボタンを選択したときは状態3に遷移する。状態3のときは、投票装置のイヤホンには、投票が完了した旨の音声が流れる。取消ボタンを選択したときは状態1に遷移する。状態1のときは、投票装置のイヤホンには、候補者の選択を促す旨の音声が流れる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態における投票装置の候補者選択用紙を示している。
図2は、本発明の第1実施形態における投票装置の全体構成を示している。
図3は、本発明の第1実施形態における投票者の操作手順を示している。
図4は、本発明の第1実施形態における投票装置の処理手順を示している。
図5は、本発明の第1実施形態における投票装置の表示例を示している。
図6は、本発明の第1実施形態における候補者選択用紙の投票確定領域を示している。
図7は、本発明の第1実施形態における候補者選択用紙の投票確定領域を示している。
図8は、本発明の第1実施形態における候補者選択用紙の投票確定領域を示している。
図9は、本発明の第2実施形における投票装置の候補者選択用紙を示している。
図10は、本発明の第2実施形態における投票装置の処理手順を示している。
図11は、本発明の第2実施形態における投票装置の表示例を示している。
図12は、本発明の第2実施形態における投票装置の確定ボタン、取消ボタンの変形例を示している。
図13は、本発明の第2実施形態における投票装置の確定ボタン、取消ボタンの変形例を示している。
図14は、本発明の第2実施形態における投票装置の確定ボタン、取消ボタンの変形例を示している。
図15は、本発明の第2実施形態における投票装置の処理手順を示している。
図16は、本発明の第2実施形態における投票装置の確定ボタン、取消ボタンの変形例を示している。
図17は、本発明の第2実施形態における投票装置の確定ボタン、取消ボタンの変形例を示している。
図18は、本発明の第3実施形態における投票装置に設けられた音声による操作確認装置を示している。
図19は、本発明の第3実施形態における投票装置の処理手順を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
上述したように、本出願人等は、日本国特許出願(特願2002−050667号)および日本国特許出願(特願2002−163704号)を優先権の基礎とするPCT出願(出願番号: )を2003年2月26日に出願している。このPCT出願は、本願において、必要に応じて参照のために引用される(Incorporation by Reference)。
以下、本発明を図面に示す実施形態によって詳細に説明する。
先ず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における投票装置の候補者選択用紙を示している。候補者選択用紙1は、当該選挙を示す領域2、候補者選択領域3、投票確定領域4とを有する。候補者選択領域3には、くじなどにより決定された並び順に従い、当該選挙の全候補者が公平に表示される。各候補者の欄は、候補者名及び党派を表す文字列5とともに、これら情報をコード化した画像11を併記する。コード化画像としては、1次元バーコードや2次元コードなどを利用する。以下の説明では、2次元コードを採用することを前提とする。このとき、投票確定領域4の確定欄は、確定を表す文字列6とともに、確定を意味する画像として、「○」の図形12を採用し、併記する。一方、取消欄は、取消を表す文字列7とともに、取消を意味する画像として、「×」の図形13を採用し、併記する。「○」「×」は2次元コードと比較すると視覚的に明らかに異なるものであり、また、論理的意味も容易に想像がつく。なお、「○」「×」の組み合わせは例であり、その他の画像を用いても良い。例えば、「確」「消」の組み合わせ、「Y」「N」の組み合わせ、「はい」「いいえ」の組み合わせ、あるいは、「→」「←」の組み合わせなども考えられる。
図2は、本発明の第1実施形態における投票装置の全体構成を示している。投票装置20は、候補者選択用紙1と、候補者選択用紙から情報を取得する操作機器21と、操作結果を確認する表示装置24と、記録媒体28に投票内容を記録する記録装置25と、情報処理及び各機器・装置の制御を行う情報処理装置23と、を有する。その他に、操作者が、有権者で、かつ、未投票の者であることを確認するための投票カード27に読み書きするカードリーダライタ26を具備する場合もある。図2では、これら各装置・機器が配線によって接続されている図を示しているが、これらの一部が一体化している場合もある。例えば、情報処理装置・表示装置・記録装置・カードリーダライタが一体化する。
図3は、本発明の第1実施形態における投票装置に対する投票者の操作手順を示している。
ステップ301:投票者は当該選挙に有効な一票の権利を確認するための投票カードを選挙人名簿の対照後に受け取り、投票装置に該投票カードを挿入する。
ステップ302:投票者は候補者選択用紙から候補者を選択する。選択する方法は候補者情報をコード化した画像を操作機器を使って読み取る。
ステップ303:投票者は画面に表示される候補者情報を確認する。
ステップ304、305:投票者は候補者選択用紙で確定操作か取消操作を行う。操作方法は、確定、または、取消を意味する図形の画像を操作機器を使って読み取る。確定を操作した場合(ステップ304)には、投票装置は候補者情報を記録媒体に格納される。取消を操作した場合(ステップ305)には、ステップ302にもどる。
ステップ306:投票カードを回収する。
なお、上記投票者の操作手順は、当該選挙がひとつの場合であり、複数選挙の場合は、ステップ302〜305を繰り返す。
図4は、本発明の第1実施形態における投票装置の処理手順を示している。また、図5は、本発明の第1実施形態における投票装置の表示例を示している。
ステップ401:投票カード挿入待ちで待機する。
ステップ402:投票カードが挿入されたとき、投票カードが正当なものかどうかを確認する。もし、不当な場合は、ステップ413で投票カードを排出する。
ステップ403:投票カードより、当該選挙を取得して、プログラム内で保持する。
ステップ404:候補者情報の選択待ちで待機する。
ステップ405:操作機器が操作されることによって、画像を得たとき、取得画像が候補者情報画像がどうかを判定する。本発明の実施の形態では、正しい2次元コード画像がどうかを判定する。2次元コード画像でないと判定されたときは、ステップ404にもどる。
ステップ406:2次元コード画像から抽出した情報が、ステップ403で抽出した当該選挙の候補者情報であるかどうかを判定する。正当な候補者情報で判定されたときは、ステップ404にもどる。
ステップ407:ステップ406で抽出した候補者情報をプログラム内で保持するとともに、図5に示したように表示装置24の画面に候補者情報52を表示する。
ステップ408:確定か取消待ちで待機する。
ステップ409:操作機器が操作されることによって、画像を得たとき、取得画像が確定を意味する図形画像「○」がどうかを判定する。確定を意味する図形画像でないと判定されたときは、ステップ410にすすむ。
ステップ410:ステップ409で取得した画像が取消を意味する図形画像「×」がどうかを判定する。取消を意味する図形画像と判定されたときは、ステップ411にすすむ。取消を意味する図形画像と判定されないときは、確定とも取消とも判定されなかったことを意味し、ステップ408にもどる。
ステップ411:プログラム内で一時保持していた候補者情報、及び、表示装置の画面上に表示した候補者情報をクリアする。
ステップ412:プログラム内で一時保持していた候補者情報を記録媒体に記録し、かつ、投票カードの当該選挙に対する投票の無効化を行う。また、プログラム内の候補者情報をクリアする。
ステップ413:投票カードを排出する。
なお、上記投票装置の処理手順は、当該選挙がひとつの場合であり、複数選挙の場合は、ステップ404〜412を繰り返す。
図6〜8は、本発明の第1実施形態における候補者選択用紙の変形例を示している。
図6では、確定を意味する図形として、「○」の他に図形画像領域の3隅に特殊なマークの図形を付加した図形62を用いる。取消しを意味する図形として、「×」の他に図形画像領域の対角2隅に特殊なマークの図形を付加した図形63を用いる。投票者は論理的な意味は「○」や「×」が含まれていることで理解でき、さらに図形の補助として特殊なマークを隅に配置することで、図1のような単純な図形に比べると、画像処理精度が向上する。これら図形を採用した場合、例えば、2次元コードのものや、「○」だけのものや、「×」だけのものや、「○」+対角2隅のものや、「×」+3隅のものは、「確定」、「取消」とは判定されない。このように、特殊なマークを隅に追加する図形を用いると、1隅、隣り合わせ2隅、対角2隅、3隅、4隅の5通りを表現できる。
図7では、確定を意味する図形として、「○」や「×」のような図形ではなく、候補者情報とは異なる体系のコード化画像を用いたもので、候補者情報に2次元コードを採用している場合、確定、取消には1次元バーコード画像72、73を用いる。1次元バーコードを用いた場合、画像の処理精度は高いものの、投票者には論理的意味が不明確で、表示領域の制約を受けるなどの欠点をもつ。
図8では、確定や取消しの印刷82、83、86、87を、候補者の印刷の色(例えば黒)とは異なる色(例えば、確定は緑、取消は赤)で行うものである。この場合、確定や取消しに用いる画像72、73は、図1、図5、図6、または、候補者情報と同じ体系のコード化画像のいずれでもよい。ただし、操作機器21のカメラや、情報処理装置23は、色情報を取り扱えることが必要になる。投票者は確定や取消しを色でも識別することが可能になり、さらに論理的意味がわかりやすくなる。これら色情報を利用した場合、例えば、黒の「○」や、黒の「×」や、緑の2次元コードや、赤の2次元コードや、赤の「○」や、緑の「×」は、「確定」、「取消」とは判定されない。
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、投票者は候補者情報を選択するときの画像と、確定や取消操作を行うときの画像が視覚的に容易に識別でき、安心して投票を行うことができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、候補者情報の選択は候補者選択用紙から行うものの、確定や取消を候補者選択用紙から行わないようにしている。なお、本実施形態において、上述の第1実施形態と共通する部分については別段説明を行っていない。
図1〜図8を用いて説明した本発明の第1実施形態では、候補者情報の選択も、確定や取消も全て候補者選択用紙1に印刷された画像から情報を取得するようにしている。しかし、図5に示したように、候補者を確認するための表示装置24は、該候補者選択用紙とは多少離れた位置に設置することになるため、投票者の視線が移動することになる。つまり、表示装置には候補者情報52が表示されているにもかかわらず、この表示を確認せずに確定を行うことが考えられる。一方、確定や取消は、本来各選挙で共通的に使用できるコマンドであり、選挙ごとにカスタマイズされる候補者選択用紙に印刷されている必然性はない。
図9は本発明の第2実施形態における投票装置の候補者選択用紙を示している。図1の候補者選択用紙1と異なる点は、図9の候補者選択用紙91には、投票確定領域4が印刷されていないことである。それ以外は同じである。
図10は本発明の第2実施形態における投票装置の処理手順を示している。また、図11は本発明の第2実施形態における投票装置の表示例を示している。なお、図10において、図4に示す第1実施形態と同じステップには、同じ符号を付している。
ステップ401:投票カード挿入待ちで待機する。
ステップ402:投票カードが挿入されたとき、投票カードが正当なものかどうかを確認する。もし、不当な場合は、ステップ413で投票カードを排出する。
ステップ403:投票カードより、当該選挙を取得して、プログラム内で保持する。
ステップ404:候補者情報の選択待ちで待機する。
ステップ405:操作機器が操作されることによって、画像を得たとき、取得画像が候補者情報画像がどうかを判定する。本実施形態では、正しい2次元コード画像がどうかを判定する。2次元コード画像でないと判定されたときは、ステップ404にもどる。
ステップ406:2次元コード画像から抽出した情報が、ステップ403で抽出した当該選挙の候補者情報であるかどうかを判定する。正当な候補者情報で判定されたときは、ステップ404にもどる。
ステップ407:ステップ406で抽出した候補者情報をプログラム内で保持するとともに、図11に示したように表示装置24の画面に候補者情報52を表示する。
ステップ1001:確定ボタン111、取消ボタン112を上記と同じ画面上に表示する。
ステップ408:確定か取消待ちで待機する。
ステップ1002:投票者によって操作機器が操作されて、上記のいずれのボタンが押されたかを判定する。確定ボタンと判定されたときは、ステップ412に進み、取消ボタンと判定されたときは、ステップ411に進む。
ステップ411:プログラム内で一時保持していた候補者情報、及び、表示装置の画面上に表示した候補者情報をクリアする。
ステップ412:プログラム内で一時保持していた候補者情報を記録媒体に記録し、かつ、投票カードの当該選挙に対する投票の無効化を行う。また、プログラム内の候補者情報をクリアする。
ステップ413:投票カードを排出する。
なお、上記投票装置の処理手順は、当該選挙がひとつの場合であり、複数選挙の場合は、ステップ404〜408、411、412、1001、1002を繰り返す。
このように候補者を確認する画面上に確定ボタン、取消ボタンを表示し、それを投票者に操作させることによって、視線が確認表示画面に確実に移動する。
図12〜図14は本発明の第2実施形態における投票装置の確定ボタン、取消ボタンの変形例を示している。
図12は、投票カード27のリーダライタ1226に確定ボタン121、取消ボタン122を具備するものである。一般にリーダライタは、投票記載台上の手前に設置されるため、投票者はこれらボタンを操作しやすい。ボタンには、「○」「×」などを示すか、または、「確定」「取消」の文字を示す。
図13は、表示装置1324に確定ボタン131、取消ボタン132を具備するものである。表示装置には、確認のための候補者情報が表示されるので、投票者はこれらボタンを操作する際に、選択した候補者情報が視線に入りやすい。
図14は、操作機器1421に確定ボタン131、取消ボタン132を具備するものである。投票者は操作機器を使用して候補者選択を行うが、図11、図12、図13の確定操作や取消操作では、操作機器をいったん記載台上におくことになる。ただし、操作機器をそのまま使って操作することも可能である。これに対して、操作機器にボタンが具備されていれば、投票者は操作機器を握ったまま一連の操作を行うことができる。
図15は本発明の第2実施形態における投票装置の変形例の処理手順を示しており、投票装置が図12〜図14で示したような物理的な確定ボタン、取消ボタンを具備する場合の処理手順を示している。なお、図15において、図4に示す第1実施形態と同じステップには、同じ符号を付している。
ステップ401:投票カード挿入待ちで待機する。
ステップ402:投票カードが挿入されたとき、投票カードが正当なものかどうかを確認する。もし、不当な場合は、ステップ413で投票カードを排出する。
ステップ403:投票カードより、当該選挙を取得して、プログラム内で保持する。
ステップ404:候補者情報の選択待ちで待機する。
ステップ405:操作機器が操作されることによって、画像を得たとき、取得画像が候補者情報画像がどうかを判定する。本発明の説明では、正しい2次元コード画像がどうかを判定する。2次元コード画像でないと判定されたときは、ステップ404にもどる。
ステップ406:2次元コード画像から抽出した情報が、ステップ403で抽出した当該選挙の候補者情報であるかどうかを判定する。正当な候補者情報で判定されたときは、ステップ404にもどる。
ステップ407:ステップ406で抽出した候補者情報をプログラム内で保持するとともに、図5に示したように表示装置24の画面に候補者情報52を表示する。
ステップ408:確定か取消待ちで待機する。
ステップ1502:投票者によって確定ボタンか取消ボタンのいずれかが押されたかを判定する。確定ボタンと判定されたときは、ステップ412に進み、取消ボタンと判定されたときはステップ411に進む。
ステップ411:プログラム内で一時保持していた候補者情報、及び、表示装置の画面上に表示した候補者情報をクリアする。
ステップ412:プログラム内で一時保持していた候補者情報を記録媒体に記録し、かつ、投票カードの当該選挙に対する投票の無効化を行う。また、プログラム内の候補者情報をクリアする。
ステップ413:投票カードを排出する。
なお、上記投票装置の処理手順は、当該選挙がひとつの場合であり、複数選挙の場合は、ステップ404〜408、411、412、1502を繰り返す。
図16〜図17は本発明の第2実施形態における投票装置の確定ボタン、取消ボタンの他の変形例を示しており、投票装置の投票者が視覚障害をもつ場合にも対応できるようにしている。
図16は、確定を意味する図形「○」、取消を意味する図形「×」をボタン上に凹凸を持たせることによって、視覚障害のある投票者が触覚によって、容易に確定ボタン、取消ボタンの存在を知ることができるようにしたものである。なお、このボタンであれば、視覚障害のない投票者も、その論理的意味を容易に理解することができる。
図17は、確定を意味する点字、取消を意味する点字をボタン上に取り付けることによって、視覚障害のある投票者が触覚によって、容易に確定ボタン、取消ボタンの存在を知ることができるようにしたものである。ただし、点字を理解できる投票者のみに有効である。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、表示装置24に代えて確認装置を設け、この確認装置により投票操作の確認を行うようにしている。なお、本実施形態において、上述の第1、2実施形態と共通する部分については別段説明を行っていない。
図18は本発明の第3実施形態における投票装置に設けられた、表示装置に代わる投票操作の確認装置を示している。
視覚障害のある投票者は、画面の表示を確認することができないので、音声によって投票操作を確認する方法は一つの有効な方法であると言える。そこで表示装置1824にヘッドホン181を取り付けて、選択した候補者情報を音声で読み上げるようにする。なお、ヘッドホンを具備する表示装置を用いる場合には、全ての音声ガイダンスはヘッドホンを介してのみ聞くことができるようにする。また、表示装置1824の画面には候補者情報52そのものを表示しない。
図19は、本発明の第3実施形態における投票装置の処理手順を示している。なお、図19において、図4に示す第1実施形態と同じステップには、同じ符号を付している。
ステップ401:投票カード挿入待ちで待機する。
ステップ402:投票カードが挿入されたとき、投票カードが正当なものかどうかを確認する。もし、不当な場合は、ステップ413で投票カードを排出する。
ステップ403:投票カードより、当該選挙を取得して、プログラム内で保持する。
ステップ404:候補者情報の選択待ちで待機する。
ステップ405:操作機器が操作されることによって、画像を得たとき、取得画像が候補者情報画像がどうかを判定する。本実施形態では、正しい2次元コード画像がどうかを判定する。2次元コード画像でないと判定されたときは、ステップ404にもどる。
ステップ406:2次元コード画像から抽出した情報が、ステップ403で抽出した当該選挙の候補者情報であるかどうかを判定する。正当な候補者情報で判定されたときは、ステップ404にもどる。
ステップ1901:ステップ406で抽出した候補者情報をプログラム内で保持するとともに、図5に示したように表示装置24の画面に候補者情報52を表示する
ステップ408:確定か取消待ちで待機する。
ステップ1502:投票者によって確定ボタンか取消ボタンのいずれかが押されたかを判定する。確定ボタンと判定されたときはステップ412に進み、取消ボタンと判定されたときはステップ411に進む。
ステップ411:プログラム内で一時保持していた候補者情報および表示装置の画面上に表示した候補者情報をクリアする。
ステップ412:プログラム内で一時保持していた候補者情報を記録媒体に記録し、かつ、投票カードの当該選挙に対する投票の無効化を行う。また、プログラム内の候補者情報をクリアする。
ステップ413:投票カードを排出する。
なお、上記投票装置の処理手順は、当該選挙がひとつの場合であり、複数選挙の場合は、ステップ404〜406、408、411、412、1901、1502を繰り返す。
以上説明したように、本発明の第3実施形態によれば、候補者情報を表す画像として、2次元コードのような論理的意味が視覚的にわからないものを使用したとしても、確定や取消コマンドとは異なることが視覚的に容易に識別できるため、投票者は安心して一連の投票操作を行うことができる。
なお、上記の各実施の形態においては、日本の公職選挙の制度をもとに、説明してきたが、投票装置の仕組みにおいては、日本以外の国や地方においても有効である。また、公職選挙の投票に限らず、住民投票やアンケートなどにも本発明は有効である。
以上、説明したように本発明によれば、投票者は候補者情報を選択するときの画像と、確定や取消操作を行うときの画像が視覚的に容易に識別でき、安心して投票を行うことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙に印刷した候補者情報をコード化した画像を読み取って投票を行う投票装置において、
上記紙には、選択を確定するための画像及び選択を取消すための前記候補者情報をコード化した画像とは視覚的な違いが明白で、論理的な意味を推測できる画像が印刷され、
当該投票装置で読み取った画像が確定であると判定されるとき、選択した候補者情報を記録媒体に記録し、取消と判定されるとき候補者情報をコード化した画像を再選択できる状態にすること
を特徴とする投票装置。
【請求項2】
紙に印刷した候補者情報をコード化した画像を読み取って投票を行う投票装置において、
当該投票装置で上記コード化した画像を読み取ったとき、投票装置の表示画面に読み取った候補者情報を表示するとともに、選択を確定するためのボタン及び選択を取消すためのボタンを同一画面上に表示し、
これらボタンが操作されることによって、確定ボタンを押したと判定されるとき、選択した候補者情報を記録媒体に記録し、取消ボタンを押したと判定されるとき候補者情報をコード化した画像を再選択できるようにすること
を特徴とする投票装置。
【請求項3】
紙に印刷した候補者情報をコード化した画像を読み取って投票を行う投票装置において、
上記投票装置は、選択を確定するためのボタン、及び、選択を取消すためのボタンを具備し、
これらボタンが操作されることによって、確定ボタンを押したと判定されるとき、選択した候補者情報を記録媒体に記録し、取消ボタンを押したと判定されるとき候補者情報をコード化した画像を再選択できるようにする
ことを特徴とする投票装置。

【国際公開番号】WO2004/023362
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−534084(P2004−534084)
【国際出願番号】PCT/JP2003/002791
【国際出願日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】