説明

抗セレクチン剤を用いる感染の治療および予防のための方法

肺感染症の治療および予防のための方法、特に、肺感染症と診断された患者に対する1種以上の抗セレクチン剤の投与を含む方法を開示する。肺への白血球動員を阻害する抗セレクチン剤は、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器候群(SARS)、サルコイドーシス、嚢胞性線維症(CF)、気腫、喘息、喫煙者の咳、アレルギー、アレルギー性鼻炎、洞炎または肺線維症と関連する感染症などの肺感染症の治療に有益であることが判明している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗セレクチン剤の投与により感染症、特に肺感染症を治療および予防するための方法を提供する。
【0002】
政府権利の表明
本発明は、一部、アメリカ国立衛生研究所(助成金番号AI43789)からの援助により成された。政府は、本発明に所定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
背景
呼吸器感染後、気道上皮細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球および好中球などの炎症細胞型の動員および活性化を促進する、ケモカイン類などの一連のサイトカイン類を産生する。メッセージおよびジョンソン(Message and Johnson)、2004年、J.Leuk.Biol.75:5−17頁。例えば、嚢胞性線維症の肺疾患は、しばしば慢性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染に関連する過度の炎症応答を特徴とする。健常者と嚢胞性線維症の肺疾患の罹患者における気管支肺胞洗浄により、嚢胞性線維症患者では、炎症誘発性サイトカイン類が上昇するが、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン−10は無視できる量であることが示されている。クミール(Chmiel)ら、1999年、Am.J.Crit.Care Med.160:2040−2047頁。他の炎症誘発性サイトカイン類もまた、肺感染症の病理に関係している。例えば、インターロイキン−1は、好中球浸潤をもたらし、IL−1のレベル上昇が気腫患者の胸膜液に見られた。シラ・メジアス(Sila−Mejias)ら、1995年、Chest 108:942−945頁。血液からの炎症細胞の浸潤は、白血球、内皮細胞および血小板上の細胞表面に発現される種々の接着分子により制御される。
【0004】
細胞表面の糖タンパク質の一ファミリーである「セレクチン類」は、幾つかの例において、炎症領域に対する白血球の動員と遊走のメディエータとして確認されている。ラスキー(Lasky)、1992年、Science 258(5084):964−9頁。例えば、セレクチン類は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(ノグエラ(Noguera)ら、2004年、Chest、125(5):1837−42頁)、喘息(スジョスワード(Sjosward)ら、2004年、Respiration 71(3):241−5頁)、反応性関節炎、リウマチ様関節炎(RA)および敗血症(クーリアラ(Kuuliala)ら、2004年、Scand.J.Rheumatol.33(1):13−8頁)などの病態の炎症過程に関係しており、ならびに皮膚、肺および消化管(レイおよびカンサス(Ley and Kansas)、2004年、Nat.Rev.Immunol.4(5):325−36頁)の炎症過程に関係している。さらに、炎症は、抗セレクチンブロッキングなどの抗接着ブロッキングによって減少することが示されている(米国特許第6,030,947号明細書を参照)。炎症誘発性サイトカイン類はまた、感染症治療に有益であることが示されている。(一般に、デューブ(Dube)ら、2004年、Infect.Immun.72(6):3561−70頁、リベイロ(Ribeiro)ら、2004年、Infect.Immun.72(6):3391−7頁、ケーデル(Koedel)ら、2004年、Brain、4月28日[印刷前の電子出版]を参照)。例えば、IL−1はまた、リステリア菌(Listeria monocytogenes、リーシュマニア属メジャー(Leishmania major)、および結核菌(Myocobacterium tuberculosis)による感染の封じ込めに関係している。例えば、ジャファーマンズ(Juffermans)ら、2000年、J.Infect.Dis.182(3):902−8頁を参照されたい。
【0005】
白血球動員はまた、感染症の根絶を助けるためにも有益である。例えば、創傷または感染部位への白血球動員は、感染範囲を制限することにより創傷または感染の寛解または根絶を助けるとの仮説が立てられている(米国特許第6,713,605号明細書、メッセージおよびジョンソン(Message and Johnson)、2004年、J.Leuk.Biol.75:5−17頁)。したがって、抗炎症治療および抗接着ブロッキングはいずれも炎症の軽減に有益であることが示されているものの、炎症誘発活性は抗炎症活性よりも感染症の治療に有益であるとの本分野の専門家によるこれまでの結論を前提とすると、感染症自体の根絶のために上記治療を使用することは、逆であるように感じられるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
肺感染症は、致命的になり得る。1979年〜1994年まで、米国における肺炎およびインフルエンザに関する全体の死亡率は、おおむね100,000人当り20.0人から31.8人へと59%増加した。1979年〜1992年までに、1980年の標準的人口に対する調整年令における肺炎およびインフルエンザの死亡率は、20.4人から24.8人へと22%増加した。Centers for Disease Control,Morbidity and Mortality Weakly Report、1995年7月21日。結核、肺真菌感染症および非定型肺感染症の発生率は、約20年前のAIDSの出現以来、着実に上昇している。肺感染症を治療する新規な方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明者らは、驚くべきことに白血球動員を阻害する抗セレクチン剤が、感染症、特に肺感染症の治療および予防に有用であることを見出した。本発明は、抗セレクチン剤の治療的有効量を、肺感染症の治療または予防を必要とする患者に投与することを含む、肺感染症を治療または予防する方法を提供し、前記治療は肺内の病原体負荷を減少させる。
【0008】
一実施形態において、本発明は、該抗セレクチン剤が、E−セレクチン、L−セレクチンまたはP−セレクチンもしくはそれらの組み合わせに結合する競合的結合剤である、肺感染症を治療する方法を提供する。一実施形態において、該抗セレクチン剤は、E−セレクチン、P−セレクチンまたはL−セレクチンもしくはそれらの組み合わせに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントである。好ましい実施形態において、該抗セレクチン剤は、0.05mg/kg〜5mg/kgの用量範囲で有効であるモノクローナル抗体である。該抗セレクチン剤は、約1mg/kgの濃度で有効なモノクローナル抗体であることがより好ましい。好ましい一実施形態において、該抗セレクチン剤は、モノクローナル抗体、EL246である。
【0009】
ある実施形態において、本発明は、病原菌により引き起こされた肺感染症を治療する方法を提供する。ある実施形態において、本発明は、細菌、ウィルス、真菌またはそれらの組み合わせにより引き起こされた肺感染症を治療する方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、緑膿菌により引き起こされた細菌性肺感染症の治療方法および予防方法を提供する。より好ましい実施形態において、本発明は、肺疾患の急性増悪の頻度または重症度を予防または軽減する方法を提供する。
【0010】
ある実施形態において、本発明は、対象の肺感染症を治療する方法を提供する。本発明の方法が有効であると思われる哺乳動物は、ウシ、ウマ、ヒツジおよびブタなどの農業用動物および家畜、ならびにイヌおよびネコなどのペット、また動物園で展示飼育されている外来動物を含む。より好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0011】
ある実施形態において、本発明は、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、サルコイドーシス、嚢胞性線維症(CF)、気腫、喘息、喫煙者の咳、アレルギー、アレルギー性鼻炎、洞炎または肺線維症を患っている対象における肺感染症を治療する方法を提供する。本発明はまた、接触伝染性および病原性が高い感染症の治療および予防のための抗テロリズムプラットフォームにおいて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
定義。以下の用語は、本明細書に記載された意味を有する。
【0013】
用語「肺」とは、肺組織、特に気道上皮における任意の部分を意味する。
【0014】
用語「感染」とは、少なくとも1種の病原体の症候性コロニー化を意味する。症候性コロニー形成は、発熱、咳、痰の産生、痰の色の変化(通常透明から緑色)、痰の粘度増加、白血球数の増加、呼吸困難、倦怠感、胸の締付け、低酸素および/または胸膜炎胸痛など、感染症の他覚的または自覚的指標として顕れ得る。肺感染症は、例えば、パルス酸素飽和度測定法および動脈血ガスにより測定された血液のガス交換および酸素負荷の他覚的指標により評価できる。肺感染症はまた、気管支肺胞洗浄(BAL)時に回収された指標の存在および数により評価できる。指標は、肺感染症を患っているか、またはその疑いのある対象からBALを用いて回収された細胞、サイトカインまたはタンパク質であり得る。例えば、指標は、好中球、インターロイキン−8、インターロイキン−1ベータ、ミエロペルオキシダーゼ、タンパク質および全細胞数であり得る。
【0015】
用語「症候性」は、感染した対象によって、または通常医療提供者若しくは介護者である他者によって、観察された、または認められた疾患または傷害の徴候である。
【0016】
用語「コロニー形成」は、肺組織における病原体の確立である。
【0017】
用語「治療する」、「処置する」、「治療すること」および「治療」とは、感染症の根絶、寛解、または軽減が意図されている処置または適用である。
【0018】
用語「肺の病原体負荷を軽減する」または「肺の病原体負荷を減少させる」とは、コロニーの形成された対象における症状を引き起こす対象の気道内の病原微生物(細菌、ウィルスまたは真菌)数の相対的減少を意味する。病原微生物数の相対的減少とは、治療前の病原体負荷と比較して、治療後の罹患対象における病原体負荷の減少を意味する。
【0019】
用語「IC50」とは、増殖または活性が50パーセント(50%)阻害される阻害濃度を意味する。用語「EC50」とは、ベースラインと最大応答との間で中間の応答を引き起こす有効濃度を意味する。
【0020】
用語「急性増悪」および「複数の急性増悪」とは、肺疾患の重症度の急激な増大を意味する。急性増悪は、疾患症状の悪化、肺機能の有意な低下、咳嗽の増加、呼吸困難、痰の産生または痰の化膿として典型的に顕れる。COPDの急性増悪の約80%は、例えば、環境の変化、汚染、医療措置のノンコンプライアンスなどの非感染性原因を伴う感染源(例えば、細菌またはウィルスにより引き起こされる)のものであり、他の約20%がアレルギー因子によるものと推定されている。セチ(Sethi)、2002年、J.Resp.Dis.23(4):217−25頁。
【0021】
用語「動員」とは、白血球が、ローリング、シグナリングおよびスティッキングにより内皮細胞と相互作用する段階的過程を意味し、内皮細胞を介して感染部位への遊走をもたらす。白血球は、リンパ球、マクロファージ、単球、好中球、好酸球またはそれらの組み合わせであり得る。
【0022】
本発明は、肺感染症の治療を必要とする対象に、治療的有効量の抗セレクチン剤を投与することを含む対象の肺感染症を治療する方法であって、前記治療が肺内の病原体負荷を減少させる方法を提供する。本発明は、抗感染治療をより少なくまたはまったく使用せずに、感染症を除去する身体能力を増加させることにより肺生理機能を改善させる方法を提供する。さらに本発明は、肺疾患の急性増悪の頻度または重症度を予防するかまたは軽減させる方法を提供する。
【0023】
哺乳動物系における感染性病原生物の存在は、多くの宿主応答を開始させる。第1の防御系は、皮膚、粘膜および絨毛などの物理的障壁に由来する。この防御に続いて、一般に病原体を直接溶解し、病原体を破壊する多数のメディエーターが放出される。動員された炎症細胞は、オプソニン作用化および非オプソニン作用化細胞の食作用を介して病原体のクリアランスまたは分解をも促進する。適応される免疫応答には、中和抗体の産生およびリンパ球、マクロファージ、単球、好中球および好酸球などの種々の免疫細胞の応答が含まれる。
【0024】
しかしながら、炎症応答は、全体的に役立たない。免疫細胞の流入はまた、さらなる炎症を誘導する種々のサイトカイン、および反応性酸素種などの毒性化合物の放出により組織損傷を負わせ得る。気道において、この炎症過程は、特に破壊的であり得る。肺の構造は、下記により詳細に考察されているように薄い肺胞膜を通過してガス交換を可能にする。過度のまたは不適切な炎症応答の代償として、肺胞表面積が減少し、ガス交換が減少され得る。したがって、呼吸器感染症に対する免疫応答は、迅速かつ効率的でなければならない。
【0025】
多くの場合、炎症減少および正常な細胞生理機能へ回復後、身体は感染症を除去するであろう。例えば、ハンタウィルスの病原学的原因による感染は、好中球の動員を引き起こす。好中球の流入により、血管壁が損傷され、肺の胸膜腔への血清漏れおよび肺内における体液蓄積を生じさせる。ハンタウィルスに関して許容される療法は、身体が感染ウィルスを消去する一方での対症療法からなる。
【0026】
同様の病理が、カリニ肺炎(Pneumocystis carinii)による感染中に働く。カリニ肺炎感染の際、好中球は迅速に動員され、肺内の液体蓄積のために肺損傷が生じる。身体が感染ウィルスを消去する間やはり、対症療法が施される。しかしながら、これらの例のいずれの場合も、対症療法を攻撃的に遂行しなければならず、死亡が生じることが依然として多い。
【0027】
肺解剖学および生理機能
肺は、ガス交換を担っており、その重要な機能により、精密な構造が要求される。肺の各々は、肺胞として知られている二重の膜に囲まれている。右肺は、より大きく、3枚の葉に分けられるが、左肺は、2枚の葉に分けられている。これらの葉は、気管支区域にさらに分けられ、その各々は、区域気管支を有する。気管は、肺の2つの主要管−右気管支および左気管支に分岐する。肺内の気管支は、再び分岐され、第2および第3の気管支を形成し、次いでより小型の細気管支、最後に末端細気管支を形成する。末端気管支の末端に肺胞がある。全体で気管と肺胞との間に約25の区分があり、管構造は、気管から末端細気管支へ漸次変化している。(メルク(Merck)マニュアル、第17版、63章、Textbook of Medical Physiology、第10版、グイトンおよびホール(Guyton and Hall)編集、2000年、エルセビア(Elsevier)、Human Physiology、シルバーソーン(Silverthorn)、2000年、プレンティス・ホール(Prentice−Hall)、およびPrinciples of Human Anatomy and Physiology、第10版、トートラ(Tortora)ら編集、2002年、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)を参照)。
【0028】
上気道は、軟骨および平滑筋を含む壁、絨毛および粘膜分泌ゴブレット細胞を有する上皮内層、ならびに内分泌細胞がある。下気道には、軟骨はなく、漸次薄くなる筋肉層、絨毛細胞の単層はなく、ゴブレット細胞および界面活性剤様物質を産生する粒状クラーラ細胞はごくわずかしかない。
【0029】
肺胞嚢は、末端細気管支の末端に肺胞群から形成される。各肺は、約3億の肺胞を含有し、全表面積は約40〜80mとなる。肺胞の上皮内層は、主としてガス交換のための薄層を備えるI型肺細胞からなる。それらは、密な結合によりII型肺細胞に結合している。これらの密な結合により、肺胞内外の流体移動が制限される。II型肺細胞は、I型肺細胞よりも多いが、覆っている上皮はより少ない。それらは、肺界面活性剤を産生する液胞を含有する。肺胞はまた、マクロファージを含有する。(メルク(Merck)マニュアル、第17版、63章、Textbook of Medical Physiology、第10版、グイトンおよびホール(Guyton and Hall)編集、2000年、エルセビア(Elsevier)、Human Physiology、シルバーソーン(Silverthorn)、2000年、プレンティス・ホール(Prentice−Hall)、およびPrinciples of Human Anatomy and Physiology、第10版、トートラ(Tortora)ら編集、2002年、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)を参照されたく、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0030】
ガス交換は、細気管支のレベルで生じる。肺胞には、ガス交換のために約30mの大きな表面積を供するキャピラリの拡散ネットワークが備わっている。(一般に、米国特許第6,175,755号明細書、ラビリスおよびドロビッチ(Labiris and Dolovich)、2003年、Br.J.Pharmacol.56(6):588−99頁、ラビリスおよびドロビッチ(Labiris and Dolovich)、2003年、Br.J.Pharmacol.56(6):600−12頁を参照)。
【0031】
吸入された空気からの酸素は、肺胞を通過して血流内に入る。次に血液は、肺静脈を経て心臓の左側に入り、そこから全身にポンプで送り込まれる。身体の全ての領域から心臓右側に戻る脱酸素化された血液は、肺動脈を経て肺にポンプで戻る。二酸化炭素は、肺胞を囲んでいる毛細管を通って肺胞空間内に入り、呼気される。
【0032】
対象の酸素負荷度は、肉眼観察および客観的手段の双方により評価できる。肉眼観察としては、特に四肢および爪床における色の変化を挙げることができる。客観的手段としては、パルス酸素飽和度測定法または動脈血ガスレベルによる酸素飽和度判定を挙げることができる。パルス酸素飽和度測定法および動脈血ガス(ABG)の双方とも、血中酸素の部分大気圧(PaO)の目安である。パルス酸素飽和度測定法は、PaOを測定する好適な間接的方法であり、一般に利用できる。肺疾患のない安静状態の個体は、一般に約95〜100%のパルス酸素飽和度測定器の読取を有する。97%のパルス酸素飽和度測定器の指標は、約97mmHgのPaOに相関する。90%のパルス酸素飽和度測定器の指標は、危険な低さである約60mmHgのPaOに相関する。80%のパルス酸素飽和度測定器の指標は、重篤な低酸素症を示す約45mmHgのPaOに相関する。(一般に、ビアマン(Bierman)ら、1992年、Chest、102(5):1367−70頁、ゲイ(Gay)、2004年、Resp.Care 49(1):39−51頁、デイビーズ(Davies)ら、2003年、N.Z.Med.J.116(1168):U297頁、ケイシー(Casey)、1997年、Nurs.Stand.15(47):46−53頁およびミドルトンおよびヘンリー(Middleton and Henry)、2000年、Int.J.Clin.Pract.54(7):438−44頁を参照されたく、それらの各々は参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0033】
ある実施形態において、肺感染症の治療により、感染対象における≧約90%、≧約93%、≧約95%、≧約97%のパルス酸素飽和度測定レベルを提供できる。ある実施形態において、肺感染症の治療により、約60mmHg、約70mmHg、約75mmHg、約80mmHg、約85mmHg、約90mmHg、約95mmHg、または約97mmHgのPaOを提供できる。
【0034】
気管支肺胞洗浄(BAL)は、光ファイバースコープを対象の肺に入れ、滅菌水(生理食塩水)を肺に注入し、引き続き水を除去することによって実施される診断法および治療法である。除去された滅菌水は、下気道からの分泌物、細胞、およびタンパク質を含有する。BALにより得られたサンプルは、下記の実施例1に記載されているように、肺で進行する可能な疾患過程についてさらなる情報を得るために分析できる。さらに、確認される炎症細胞および免疫細胞の補体ならびに炎症伝達物質もまた、肺の病態を評価する上で有用であり得る。(一般に、サンチェズ・ニート(Sanchez Nieto)ら、1995年、Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.14(10):839−50頁、アロラ(Arora)ら、2002年、Anaesth.Intensive Care 30(1):11−20頁、フィオリニ(Fiorini)ら、2000年、Biomed.Pharmacother.54(5):274−8頁、ジャージョア(Jarjour)ら、2000年、J.Allergy Clin.Immunol.105:1169−77頁、およびバレス(Valles)ら、1994年、Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.13(7):549−58を参照されたく、それらの各々は参照としてその全体が本明細書に援用される)。
【0035】
肺活量測定法は、本発明の方法と関連して肺機能をモニターするために使用できる。肺活量測定法は、対象が周期性呼吸から全肺容量(TLC)まで最大に吸引し、次いで、さらなる容量が、残容量(RV)で吐き出されなくなるまで素早く最大限に吐き出す操作である。この操作は、努力肺活量(FVC)測定を生じさせる強制様式で、または緩徐肺活量(SVC)測定を生じさせる緩和様式で実施する。正常な個人において、吸気性肺活量、呼気性SVC、および呼気性FVCは、本質的に等しい。しかしながら、閉塞性気道疾患患者においては、呼気性SVCは、一般にFVCよりも高い。肺容量曲線から生じた値により、空気流量(1秒間の強制呼気容量、または他の時限容量でのFEV)および呼息肺容量(FVCまたはSVC)など、肺の力学的性質に関するデータを提供する。この測定は、一般的に容量に関してはリットルまたは流量に関しては1秒当りのリットルで表され、体温および水蒸気で飽和されるガス圧に関しては補正できる。(Pulmonary Function Testing:Basics of Physiology and Interpretation、ギルデア(Gildea)ら編集、クリーブランド・クリニック出版社(Cleveland Clinic Publishers)2002年、Anerican Thoracic Society、1995年、Standardization of Spirometry、1994年Update,Am.J.Respir.Crit.Care Med.152:1107−1136頁、Pulmonary Function Testing,Guidelines and Controversies:Equipment,Methods,and Normal Values、クラウセンおよびザリンス(Clausen and Zarins)編集、ニューヨーク:アカデミックプレス(Academic Press)、1982年、ベックレーク(Becklake)ら、Am.Rev.Respir.Dis.144:1202−1218頁、クラポ(Crapo)ら、1981年、Am.Rev.Respir.Dis.123:659−664頁およびクヌードソン(Knudson)ら、1983年、Am.Rev.Respir.Dis.127:725−34頁を参照されたく、それらの各々は参照としてその全体が本明細書に援用される)。
【0036】
痰サンプリングおよび培養もまた、診断を補助し、治療を導くために、本発明の方法と関連して使用できる。痰サンプルは、喀痰法または痰誘導法により採取できる。さらに、呼気凝縮法は、炎症伝達物質などの呼気の非ガス状成分の非侵襲的採取に有用であり得る(エコスクリーン(EcoScreen);Jaeger,Wuerzburg、独国))。採取痰からの微生物単離体は、当業界に周知である標準的な方法により同定できる。(ボガート(Bogaert)ら、2004年、Infect.Immun.72(2):818−23頁、クソマ(Csoma)ら、2002年、Am.J.Respir.Crit.Care Med.166(10):1345−1349頁、ヘニッグ(Henig)ら、2001年、Thorax 56(4):306−11頁、ギブソン(Gibson)、1998年、Can.Respir.J.5 Suppl A:22A−6Aを参照されたく、それらの各々は参照としてその全体が本明細書に援用される)。
【0037】
肺感染症
ある実施形態において、本発明は、肺感染症を治療する方法を提供する。肺感染症は、任意の病原体または肺感染症を引き起こす病原体の組み合わせに由来し得る。ある実施形態において、病原体は、細菌、ウィルス、真菌またはそれらの組合せであり得る。
【0038】
本発明の方法により処置される細菌病原体は、地域感染型、日和見感染性またはバイオテロリストの薬剤であり得る。グラム陽性、グラム陰性、桿菌、球菌および異型細菌として分類された細菌は、本発明の範囲に包含される。このような細菌病原体としては、限定はしないが、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表在性ブドウ球菌(S.epidermidis)、サプロフィチカスブドウ球菌(S.saprophyticus)などのブドウ球菌(Staphylococci)種;肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、サングイス連鎖球菌(S.sanguis)、オラリス連鎖球菌(S.oralis)、唾液連鎖球菌(S.salivarius)、ミュータンス連鎖球菌(S.mutans)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)などの連鎖球菌(Streptococci)種;バークホルデリラ・セパシア(Burkholeria cepacia)、肺炎クラミジア(C.pneumoniae)などのクラミジア(Chlamydia)種、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)などのアシネトバクター(Acinetobacter)種;カルジオバクテリウム・ホミニス(Cardiobacterium hominis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、カタル球菌(Branhamella catarrhalis)(また時には、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)として分類される)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)、緑膿菌(P.aeruginosa)などのシュードモナス菌(Pseudomonas)種;大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター(Enterobacter)種、プロテウス(Proteus)種、霊菌(Serratia marcescens)、インフルエンザ菌(H.influenzae)およびパラインフルエンザ菌(H.parainfluenzae)などのヘモフィラス(Haemophilus)種;レジオネラ・ニューモフィラ菌(L.pneumophila)、エル・ミクダデイ(L.micdadei)、エル・ボゼマニ(L.bozemanii)およびエル・デュモフィ(L.dumoffii)などのレジオネラ(Legionella)種;肺炎マイコプラズマ(M.pneumoniae)、結核菌(M.tuberculosis)およびウシ型結核菌(M.bovis)などのマイコバクテリウム(Mycobacterium)種;およびアリカリゲネス(Alkaligenes)種、カルジオバクテリウム(Cardiobacterium)種およびエイケネラ(Eikenella)種などのグラム陰性桿菌、が挙げられる。また、例えば、肺炎マイコプラズマ(M.pneumoniae)を含むマイコプラズマ(Mycoplasma)種などの異型細菌が挙げられる。(メルク(Merck)マニュアル、第17版、ビアーズおよびバーコウ(Beers and Berkow)編集、2004年、メルク(Merck)社、Critical Care Infections Disease Textbook、グローエンウェーゲンおよびウォーターズ(Groenewegen and Wouters)、2003年、Respir.Med.97(7):770−7頁、レロ(Rello)ら編集、2001年、クルーワー・アカデミック出版社(Kluwer Academic Publishers)、ボストン、Krugman’s Infectious Disease of Children、第10版、カッツ(Katz)ら編集、モスビー(Mosby)、セントルイス、これらは、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0039】
本発明の方法に包含されているウィルス感染症としては、限定はしないが、リノウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、パラインフルエンザウィルス、インフルエンザAおよびBウィルス、アデノウィルス、ピコルナウィルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、コクサッキーウイルス、SARS−関連コロナウィルス(SARS−CoV)などのコロナウィルス、シン・ノブレ(Sin Nombre)ウィルス、(ハンタウィルスに関する原因物質)およびサイトメガロウィルスが挙げられる。(フィートおよびノイエス(Fete and Noyes)1996年、Pediatr.Ann.25:577−84頁;フェルドマンおよびストークス(Feldman and Stokes)、1987年、Semin.Respir.Infect.2:84−94頁;フランクおよびフリードマン(Frank and Friedman)1988年Ann.Intern.Med.109:769−71頁;グラマンおよびホール(Graman and Hall)、1989年、Semin.Respir.Infect.4:253−60頁;グリーンバーグ(Greenberg)1991年、Infect.Dis.Clin.North Am.5:603−21頁;ジャコブソンおよびミルズ(Jacobson and Mills)、1988年、Clin.Chest Med.9:443−8頁;ラタム・サドラーおよびモレル(Latham−Sadler and Morell)1996年、Prim.Care.23:837−48頁;リュングマン(Ljungman)1995年、Semin.Respir.Infect.10:209−15頁;website for Centers for Disease Control,National Center for Infectious Disease;セチ(Sethi)、2002年、J.Respir.Dis.23(4):217−25頁、タン(Tan)ら、2003年、Am.J.Med.115(4):272−7頁、ホッグ(Hogg)、2001年、Am.J.Respir.Crit.Care Med.164(10Pt2):S71−5頁を参照されたく、それら各々の内容は、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0040】
ある実施形態において、本発明の方法により処置された肺感染症は、真菌により引き起こされる。本発明の方法により包含される真菌類としては、カリニ肺炎(Pneumocystis carini)(現在、原虫よりも真菌として考慮されている)、ブラストミセス・デルマティティディス(B.dermatitidis)などのブラストミセス(Blastomyces)種;クリプトコッカス(Cryptococcus)種、カンジダアルビカンス(Candida albicans)などのカンジダ(Candida)種;アスペルギルス(Aspergillus)種、エイチ・カプスラーツム(H.capsulatum)などのヒストプラズマ(Histoplasma)種;コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、スポロトリクス・シェンキー(Sporothrix schenkii)およびアンフィビオラム(amphibiorum)ケカビ、シルシネロイデス(circinelloides)ケカビ、ヒエマリス(hiemalis)ケカビ、インジカス(indicus)ケカビ、ラセモサス(racemosus)ケカビ、およびラモシッシムス(ramosissimus)ケカビなどのケカビ(Mucor)種が挙げられる。(アルノウ(Arnow)ら、1991年、J.Infect.Dis.164:998−1002頁;レンチノ(Lentino)ら、1982年、Amer.J.Epidemiol.116:430−437頁;ディクソン(Dixon)ら、2004年、Pharmacoeconomics 22(7):421−33頁;チラー(Chiller)ら、2003年、Infect.Dis.Clin.North Am.17(1):41−57頁、viii;Introductory Mycology第4版アレクソポウロス(Alexopoulos)ら編集、1996年、ジョン・ワイリー(John Wiley)、ニューヨーク;アナイシー(Anaissie)ら編集、1986年、Cancer、57:2141−2145頁;デレシンスキー(Deresinsuki)2003年、Semin.Respir.Infect.18(3):216−9頁を参照されたく、それら各々の内容は、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0041】
本発明の方法は、バイオテロリズムの行動によって与えられる肺感染症の治療に使用できる。バイオテロリストの薬剤となる可能性のあると確認された作用物質は、バイオテロリズムの脅威より前から知られているものであるが、それらの患者数は、高い病原性にもかかわらず比較的低かった。このような感染作用物質としては、炭疽菌(Bacillus anthracis)、天然痘、サル痘ウィルス、ブルセラ症(Brucellasis)種、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病の原因物質)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ペストの原因物質)およびエボラ(Ebola)ウィルスが挙げられる。ジョーンズ(Jones)ら、2003年、Clin.Microbiol.Infect.9(9):984−6頁、シュリーワー(Schriewer)2004年、Methods Mol.Biol.269:289−308頁、グイホット(Guihot)、2004年、Press Med.33(2):119−22頁、ハンおよびズント(Han and Zunt)、2003年、Curr.Neurol.Neurosci.Rep.(3):476−82頁、クルグ(Krug)2003年、Antiviral Res.2003年、57(1〜2):147−50頁、ホィットリー(Whitley)、2003年、Antiviral Res.57(1〜2):7−12頁およびクンハ(Cunha)、2002年、Clin.Microbiol.Infect.(8):489−503頁を参照されたく、それらの各々は、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される。
【0042】
本発明の方法は、肺感染症の治療を提供し、該治療は、肺中の病原体負荷を減少させる。一定の肺疾患およびアレルギーは、対象が彼らの病態を悪化させ得る肺感染症に罹りやすくする。これらの肺疾患およびアレルギーを有する対象は、本発明の方法により利益を得ることができる。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または慢性気管支炎に患っている対象は、感染症になると疾患の急性増悪を経験する可能性がある。これらの疾患における急性増悪は、しばしば対象の生活の質および肺機能に重大な負の影響を与える。例えば、COPDに患っている対象は、典型的に1年に1回から3回の悪化を経験し、米国だけで毎年約500,000人の入院の原因となっている。急性増悪は、細菌、真菌またはウィルス病原体、またはそれらの組合せにより発生し得る。COPDまたは慢性気管支炎の対象においてこのような急性増悪の原因となる細菌病原体としては、典型的にインフルエンザ菌(Haemphilus influenzae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が挙げられ、一方、ウィルス病原体としては、典型的にリノウィルス、呼吸器合胞体ウイルスおよびインフルエンザウィルスが挙げられる。アーロン(Aaron)ら、2000年、Am.J.Respir.Crit.Care Med.163:349−355頁、バンジ(Bandi)ら、2003年、FEMS Immunol.Med.Microbiol.37(1):69−75頁、ボガート(Bogaert)ら、2004年、Infect.Immun.72(2):818−23頁、カーン(Khan)ら、2003年、J.Pak.Med.Assoc.53(8):338−45頁、グローエンウェーゲンおよびウォーターズ(Groenewegen and Wouters)、2003年、Respir.Med.97(7):770−7頁、ソトおよびバーキー(Soto and Varkey)、2003年年Curr.Opin.Pul.Med.2003年、9(2):117−24頁、ミラビトルズ(Miravittles)、2002年、Eur.Respir.J.Suppl.36:9s−19s頁、リーバーマン(Lieberman)ら、2002年、Eur.Respir.J.19(3):392−7頁を参照されたく、それらの各々は、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される。
【0043】
急性増悪はまた、多くの場合、呼吸器ウィルス(リノウィルス、アデノウィルス、ピコルナウィルスおよびインフルエンザウィルス)または細菌(肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)およびレジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila))感染により引き起こされる喘息に患っている対象に生じる。喘息に患っている対象における急性増悪は、肺への好中球および好酸球双方の浸出に関係するが、好中球応答が典型的に優勢である。ワーク(Wark)ら、2001年、Monaldi Arch.Chest.Dis.56(5):429−35頁、ジャージャー(Jarjour)ら、2000年、J.Allergy Clin.Immunol.105:1169−77頁、ワーク(Wark)ら、2002年、Eur.Respir.J.19(1):68−75頁、ワーク(Wark)ら、2002年、Eur.Respir.J.20(4):834−40頁、ギブソン(Gibson)ら、1999年、Pediatr.Pulmonol.28(4):261−70、タン(Tan)ら、2003年、Am.J.Med.115(4):272−7頁、ツワッデル(Twaddell)ら、1996年、Eur.Respir.J.9(10):210−8頁を参照されたく、それらの各々は、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される。
【0044】
嚢胞性線維症肺疾患は、過度の炎症応答を特徴とし、慢性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染を伴うことが多い。健常な対象および嚢胞性線維症に患っている肺疾患対象における気管支肺胞洗浄液で、嚢胞性線維症に患っている対象では、炎症誘発性サイトカイン類が上昇するが、抗炎症サイトカインインターロイキン−10の量は無視できるものであることが示された。チミール(Chmiel)ら、1999年、Am.J.Respir.Crit.Care Med.160:2040−2047頁、また、シルバ・メジアス(Silva−Mejias)ら、1995年、Chest 108:942−945頁を参照されたい。
【0045】
ある実施形態において、本発明の方法は、COPD、慢性気管支炎、肺炎、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症の急性呼吸器症候群(SARS)、サルコイドーシス、嚢胞性線維症、気腫、喘息、喫煙者の咳、アレルギー、アレルギー性鼻炎、洞炎または肺線維症に患っている対象の治療を提供する。
【0046】
本発明のある実施形態において、該方法は、COPD、慢性気管支炎、肺炎、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症の急性呼吸困難症候群(SARS)、サルコイドーシス、嚢胞性線維症、気腫、喘息、喫煙者の咳、アレルギー、アレルギー性鼻炎、洞炎または肺線維症に患っている対象における肺症状の急性増悪の軽減を提供する。
【0047】
肺感染症の指標としては、気管支肺胞洗浄液中のインターロイキン−1、インターロイキン−8、インターロイキン−10、タンパク質およびミエロペルオキシダーゼ(MPO)細胞の増加を挙げることができる。ある実施形態において、本発明の方法は、処置がBALを介して評価できる肺感染症の治療を提供する。ある実施形態において、該方法により、感染対象からの気管支肺胞洗浄液中のインターロイキン−1、インターロイキン−8、タンパク質およびMPO細胞の減少が提供される。ある実施形態において、該方法により、咳の減少、痰着色の消去、痰量の減少、呼吸困難の減少または除去、皮膚または爪床の色またはパルス酸素飽和度測定により示される酸素負荷の改善により顕れる、肺疾患における急性増悪の減少が提供される。
【0048】
抗セレクチン剤
多くの細胞接着分子は、炎症過程に関与していることが知られている。炎症部位において、白血球は、血管外遊出の前に先ず血管内皮細胞に結合する。糖タンパク質細胞接着ファミリーのメンバーであるセレクチン類は、内皮細胞に対する白血球の最初の接着に重要な役割を演じるが、インテグリン類およびIgスーパーファミリーのメンバーなどの他の接着分子は、後期過程に関与すると考えられている。セレクチン類およびそれらの炭水化物リガンド類により媒介される細胞接着は、内皮層への白血球の結合およびローリングを引き起こすことにより、第2の堅固な接着および内皮細胞表面に存在するインターロイキン(IL−8)またはMIP1−ベータなどの炎症ケモカイン類の作用により活性化されるインテグリン類により媒介されるシグナル伝達がもたらされる。(ラスキー(Lasky)、1992年、Science 258(5084):964−9頁)。
【0049】
該セレクチン類は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(ノグエラ(Noguera)ら、2004年、Chest 125(5):1837−42頁)、喘息(スジョスワード(Sjosward)ら、2004年、Respiration 71(3):241−5頁)、反応性関節炎、リウマチ様関節炎(RA)、および敗血症(クーリアラ(Kuuliara)ら、2004年、Scand.J.Rheumatol.33(1):13−8頁)などの疾患状態の炎症過程、ならびに皮膚、肺および腸管の炎症過程(また、レイおよびカンサス(Ley and Kansas)、2004年、Nat.Rev.Immunol.4(5):325−36頁、クーリアラ(Kuuliara)ら、2004年、J.Leukoc.Biol.2004年3月3日[印刷前の電子出版]を参照)に関係があるとされている。
【0050】
セレクチンファミリーは、3つのメンバーE−、P−およびL−セレクチンからなる。E−セレクチンリガンドとP−セレクチンリガンドとの間には特性に幾つかの重要な違いがある。例えば、白血球上のP−セレクチンリガンドはプロテアーゼ感受性であるが、一方、E−セレクチンは、プロテアーゼ処理に対して高い耐性がある。L−セレクチンが、炎症での白血球動員においてE−およびP−セレクチンと同じように重要な役割を演じるかどうかは依然として論争の的になっている。L−セレクチンは、主として白血球の末端リンパ節への生理的ホーミングに関与することが示唆されている。P−セレクチンは軽症喘息の感受性マーカーとして使用できる。(ノグエラ(Noguera)ら、2004年、Respiration 71(3):241−5頁、スジョスワード(Sjosward)ら、2004年、Scand.J.Rheumatol.33(1):13−8頁、米国特許第6,204,007号明細書)。
【0051】
本発明の方法は、抗セレクチン剤の投与による肺感染症の治療を提供する。本発明のある実施形態において、抗セレクチン剤は、好中球、単球および好酸球の動員および遊走など、白血球の動員または遊走を阻害する。本発明のある実施形態において、抗セレクチン剤は、セレクチンとそのリガンドとの相互作用をさえぎるためにセレクチンに競合的に結合する薬剤であり得る。本発明のある実施形態において、抗セレクチン剤は、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、小型分子、セレクチンアンタゴニストの遺伝子送達またはそれらの組み合わせであり得る。
【0052】
白血球の動員または遊走の阻害は、in vitroアッセイにより測定できる。一実施形態において、該アッセイは、下記に詳細に記載されているProteoFlow(登録商標)アッセイであり得る。ある実施形態において、該方法は、約40%のローリング阻害、約50%のローリング阻害、約60%のローリング阻害または約70%のローリング阻害を提供する。
【0053】
ある実施形態において、Biacore(登録商標)を、本発明の方法に使用できる。Biacore(登録商標)アッセイは、表面プラズモン共鳴技術を用いて生体分子結合の検出およびモニタリングを提供する。これらのアッセイにより、生体分子間の結合相互作用に関するリアルタイム定量データが提供される。Biacor AB、Piscataway、ニュージャージ州。
【0054】
ある実施形態において、抗セレクチン剤は、抗セレクチン抗体またはそのフラグメントである。抗セレクチン抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、またはそれらの組み合わせであり得る。抗セレクチン抗体は、ヒト化、キメラまたはそれらの組み合わせであり得る。抗体類およびそれらのフラグメントを作製または製造する方法は、当業界に公知であり、本明細書に記載された抗セレクチン抗体を作製するために使用できる。
【0055】
好ましい実施形態において、抗セレクチン抗体はEL246であり、ハイブリドーマにより分泌されたモノクローナル抗体が、抗セレクチン剤として選択される。EL246を分泌するハイブリドーマのサンプルは、ATCC登録番号HB 11049としてブダペスト条約に従って寄託されており、参照としてその全体が本明細書に援用される米国特許第5,756,095号明細書に記載されている。本発明の方法に有用な他の抗セレクチン抗体としては、米国特許第6,204,007号明細書と米国特許第5,632,991号明細書に記載されているE−セレクチン抗体および米国特許第6,210,671号明細書に記載されているL−セレクチン抗体が挙げられる。本発明の方法に有用な他の抗セレクチン剤としては、米国特許第6,111,065号明細書に記載されているペプチド類およびペプチド類縁体、米国特許第5,962,660号明細書と米国特許第5,830,871号明細書に記載されている炭水化物および炭水化物類縁体、または米国特許第6,280,932号明細書に記載されている核酸リガンド類が挙げられる。前述の特許の各々の教示は、参照としてその全体が本明細書に援用される。
【0056】
幾つかの場合において、マウス、げっ歯類、霊長類、ヒトなどの種々の哺乳動物宿主からモノクローナル抗体を調製することが好ましい。このようなモノクローナル抗体の調製方法の記載は、例えば、スチテス(Stites)ら編集、Basic and Clinical Immunology(第4版)、ランジメディカル(Lange Medical)出版社、ロスアルトス、カリフォルニア州、およびそれに引用されている文献;ハーローおよびレーン(Harlow and Lane)(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、CSH Press;ゴーディング(Goding)(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版)アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク;および特にコーラーおよびミルステイン(Kohler and Milstein)(1975)Nature 256:497−497頁に見ることができ、モノクローナル抗体を生成する方法の一方法を考察している。これらの引用文献の各々は、参照として本明細書に援用される。簡単に要約すると、この方法は、動物に免疫原を注入することを含む。次に動物を殺処理し、次いでその脾細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合する。これにより、in vitroで再生できるハイブリッド細胞または「ハイブリドーマ」が生じる。次にハイブリドーマの集団を、個々のクローンを単離するためにスクリーニングし、それらの各々は、免疫原に反応性の単一抗体種を分泌する。この様式で得られた個々の抗体種は、免疫原性物質上で認識された特異的部位に応答して生成される免疫動物からの固定されたクローン化単一B細胞の産物である。
【0057】
他の好適な技術は、抗原種あるいはファージまたは類似のベクターにおける抗体ライブラリーの選択物に対する、リンパ球のin vitro曝露を含む。ヒューズ(Huse)ら、1989年、「Generation of a Large Combinational Library of the Immunoglobulin Repertoire in Pharge Lamda」、Science 246:1275−1281頁;およびワード(Ward)ら、1989年、Nature 341:544−546頁を参照されたく、それらの各々は、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される。本発明の抗セレクチン抗体は、改変を有しても有しなくてもよく、キメラ抗体またはヒト化抗体を含む。種々のモノクローナル抗体の作製を教示する特許としては、米国特許第4,828,991号明細書、米国特許第5,665,357号明細書、米国特許第4,741,998号明細書、米国特許第5,863,796号明細書および米国特許第6,056,957号明細書が挙げられる。これらの特許は、参照として本明細書に援用される。
【0058】
抗セレクチン抗体は、抗体全体(例えば、FabおよびFcの双方)を含む組成物または抗体の抗原結合性フラグメントを含む組成物であり得る。抗体またはその一部は、例えば、E−セレクチンおよび/またはL−セレクチンなど、1種以上のセレクチン上の抗原決定基に結合する。あるいは、抗セレクチン抗体は、モノクローナル抗体EL246と同じセレクチン(例えば、E−セレクチンおよび/またはL−セレクチン)上のエピトープに結合できる。
【0059】
投与方法および製薬組成物
本発明の方法は、抗セレクチン剤を含む製薬組成物の投与による肺感染の治療を提供する。本発明の方法は、感染部位(例えば、肺および下部気道)に抗セレクチン剤の有効量を供する任意の投与経路により実施できる。抗セレクチン剤の用量は、感染部位(例えば、肺および下部気道)に抗セレクチン化合物の有効量を提供するのに十分である。
【0060】
本発明の方法は、抗セレクチン剤の投与を提供する。該投与は、抗セレクチン剤の薬物動態パラメータ、対象における同時罹患病態の存在、投与経路および疾病の重症度など、多くのパラメータによって、毎日の単回投与または毎日の分割投与とすることができる。(Pharmacotherapy:A Pathophysiological Approach、第5版、ジピロ(DiPiro)ら編集、2002年、McGraw Hill and Applied Therapeutica Handbook、コダ・キンブル(Koda−Kimble)ら編集、第7版、リッピンコット(Lippincott)、ウィリアムス(Williams)およびウィルキンス(Wilkins)を参照されたく、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)。数日毎または数週毎の薬剤の周期的投与を含む措置もまた、本発明の範囲に包含されている。
【0061】
医師は、臨床技術および本明細書に提供された説明により適量を見分けることができる。典型的な毎日の用量は、1日当り約0.001mg/kg体重から、1日当り約100mg/kg体重までであり得る。ある実施形態において、毎日の用量は、1日当り約0.01mg/kg体重から、1日当り約10mg/kg体重までであり得る。ある実施形態において、毎日の用量は、1日当り約0.1mg/kg体重から、1日当り約1gm/kg体重までであり得る。例えば、COPDに患っている対象における急性増悪時の、呼吸作用の増加、効果のない咳、粘液分泌抑制、進行性低酸素血症または高炭酸血症、錯乱、および疲労は、過剰医療または過少医療という結果になり得るが、これらは、医師により用量調整を行うことによって防ぐことができる。
【0062】
記載された方法は、肺感染症を治療するために十分な期間、抗選択剤の投与を提供する。ある実施形態において、治療期間は、1回投与または一定期間の計画投与であり得る。ある実施形態において、治療期間は、複数日、複数週またはさらに複数月であり得る。ある実施形態において、該治療は、ルーチン(例えば、毎日、3日毎、毎週、2週毎など)または定期的(例えば、急性増悪時または危険性の増加した期間、例えば、インフルエンザ時期)に投与できる。ある実施形態において、抗セレクチン剤の「パルス化」または「ボーラス」用量を、特に例えば、急性増悪の際、必要とする対象に投与することができる。このようなパルス化またはボーラス用量およびその期間は、医師により決定できる。
【0063】
本発明の方法は、抗セレクチン剤が、他の薬物、療法および治療と共に投与することができるように提供する。ある実施形態において、抗セレクチン剤は、セファロスポリン類、ペニシリン類、フルオロキノロン類、エリスロマイシン類、テトラサイクリン類薬、抗ウィルス薬(アマンチジン類、リバビリンなど)および抗真菌剤(アゾール抗真菌剤およびアンホテリシンなど)などの抗感染薬と共に投与できる。ある実施形態において、ベータアゴニスト類(アルブテロール)、ステロイド類、抗不安薬、および鎮痛剤などの呼吸困難の症状を治療または寛解する薬物または療法と共に、抗セレクチン剤を投与できる。さらに、呼吸療法は、肺感染症の治療を提供するために抗セレクチン剤の投与と関連して使用できる。(Drug Facts and Comparisons、最新の月刊誌、ウォルターズ・クルワー(Wolters Kluwer)社、セントルイス、Physicians Desk Reference、第58版、メディカルエコノミックス(Medical Economics)社、2003年、を参照されたく、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0064】
投与経路は、典型的に活性化合物の製薬製剤により規定される。本発明により、製薬製剤が、in vivo投与およびin vivo送達に好適な製薬的に許容できる担体中に活性成分として抗セレクチン剤を含むことができるように提供する。抗体タンパク質は、酸性および/または塩基性末端および/または側鎖を含有し得ることから、該タンパク質を、遊離酸または塩基の形態で、または製薬的に許容できる塩類の形態で製剤中に含ませることができる。(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、レミントンおよびジェンナロ(Remington and Gennaro)編集、1990年を参照されたく、参照としてその全体が本明細書に援用される)。
【0065】
注射製剤としては、水性または油性媒体中、抗セレクチン剤の滅菌した懸濁剤、液剤または乳濁剤を挙げることができる。該組成物はまた、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含むことができる。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは複数用量容器中に提供され、添加の保存剤を含有できる。
【0066】
あるいは、注射製剤は、限定はしないが、滅菌した無発熱物質水、緩衝液、デキストロース液などの好適な媒体によって使用前に再構成するために粉末形態で提供できる。最後に、抗セレクチン剤は、凍結乾燥できる。保存製剤は、単位剤形で供給でき、in vivo使用前に再構成できる。
【0067】
送達の時間を延長するために、活性成分は、移植、例えば、皮下注射、皮内注射、または筋肉内注射による投与のため、デポー製剤として製剤化できる。したがって、例えば、活性成分は、好適なポリマーまたは疎水性材料(例えば、許容できる油中の乳濁剤として)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは少溶解誘導体として、例えば、抗セレクチン剤の少溶解塩形態として製剤化できる。
【0068】
一実施形態において、抗セレクチン剤は、鼻腔または経口吸入を経て肺に投与できる。吸入による投与のため、活性成分は、加圧パックまたは吸入器、例えば、慢性疾患の周期的治療のために都合よく使用できる計量吸入器、または急性増悪をきたしている対象の治療のために使用できる噴霧器による送達のためにエアロゾルスプレーの形態で好適に送達できる。このような吸入器または加圧パックは、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスを使用できる。加圧エアロゾルの場合、計量装置は、計量を送達させるためにバルブを備えることによって定量できる(例えば、計量吸入器)。吸入器または注入器に使用のため、送達媒体、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたは澱粉などの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化できる。(また、クーリエ(Courrier)ら、2002年Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.19(4〜5):425−98頁を参照されたく、参照としてその全体が本明細書に援用される)。
【0069】
あるいは、経皮吸入のために抗セレクチン剤を、徐々に放出する接着ディスクまたはパッチとして製造された経皮送達系を使用できる。最後に、活性成分の経皮透過を促進させるために透過エンハンサーを使用できる。
【0070】
経口投与のため、製薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉または澱粉グリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの製薬的に許容できる賦形剤を用いる従来の手段により調製された錠剤またはカプセル剤の形態をとることができる。錠剤は、当業界に周知の方法によりコーティングできる。経口投与のための液体製剤は、例えば、液剤、シロップ剤または懸濁剤の形態をとることができるか、使用前に水または他の好適な媒体よる構成のために乾燥製品として提供できる。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用油);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル類、エチルアルコールまたは分画植物油);および保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルまたはソルビン酸)などの製薬的に許容できる添加物と共に従来の手段により調製できる。該製剤は、適切な場合、緩衝剤塩類、風味剤、着色剤および甘味剤も含有できる。経口投与のための製剤は、活性化合物を制御放出させるために好適に製剤化できる。
【0071】
舌下錠投与に関して、該組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤または舐剤の形態をとることができる。直腸および膣の投与経路に関して、活性剤は、液剤(保持浣腸に関して)座薬または軟膏として製剤化できる。
【0072】
該組成物は、所望ならば、活性成分を含有する1種以上の単位剤形を含有できるパックまたはディスペンサー装置内に提供できる。該パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチックフォイルを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与に関する取扱い説明書を添付することができる。
【0073】
好ましい実施形態において、抗セレクチン剤は、再構成に利用できる凍結乾燥散剤の複数回使用または単回使用バイアルにおいて提供できる。単回使用バイアルは、平均サイズの成人または小児対象に適切かつ好適な用量を含有できることが好ましい。
【0074】
ある実施形態において、抗セレクチン剤は、抗セレクチン剤の1個以上のバイアルおよびシリンジ、または抗セレクチン剤の典型的な用量(例えば、単位用量または使用単位)を予め充填したシリンジを含むキットに用いることができる。該キットは、抗セレクチン剤の他の組成物、例えば、噴霧器または注入器による使用のために液剤または散剤の1つ以上の計量吸入器またはパッケージを含むことができる。該キットは、専門家による使用およびシリンジの適切な廃棄のための教育用ビデオ類、DVD類または取扱い説明書をさらに提供できる。
【実施例】
【0075】
実施例
実施例1:ヒツジ肺における緑膿菌のクリアランスに対するEL246の効果
序文
EL246mAbは、エンドトキシンにより誘導された肺炎症を効果的にブロックすることから、肺炎症疾患の治療のために有効な薬物であり得ることが示唆される。抗炎症薬の使用で懸念されることは、それによって患者が二次感染に罹り易くなることである。EL246が、緑膿菌による肺感染症を除去するヒツジの能力を変化させるかどうかを判定するために、それを試験した。この実験的方法は、ヒツジにおける肺感染症を確立し、試験抗体または対照抗体による静脈内処置をし、1週間にわたって採取された肺洗浄サンプルにおける白血球浸出レベルおよびシュードモナス数の双方をモニターすることであった。
【0076】
方法
生物および培養条件。緑膿菌株PAO1(モンタナ州立大学Center for Biofilm Engineeringから得られたCF臨床単離体)ストック培養物を−80℃に維持した。接種製剤に関して、新鮮なR2A寒天(ジフコ(Difco)#1826−17)線条接種からの1つから2つのコロニーを、50mlの滅菌Trypticase Soy Brothに移し、エアレーションしながら一晩インキュベートした(16〜18時間、180rpm、37℃)。培養物を遠心分離し(5,000xgで10分、4℃)、滅菌ダルベッコ燐酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1回洗浄し、st−DPBSに懸濁した。懸濁液中のコロニー形成単位(CFU)数は、R2A寒天プレート上に二重に接種した連続10倍希釈液(0.500mlを4.5mlの希釈ブランクに移し、45〜60秒間ヴォルテックスで撹拌した)からの表面塗抹法を経て測定された。一晩インキュベーション(37℃)後、コロニーをカウントし、一晩冷凍保存した元のシュードモナス懸濁液を、0日目にヒツジに投与するために所望の接種濃度にするためにさらに希釈した。
【0077】
気管支鏡接種および洗浄サンプリング
動物は1才のヒツジとした。好中球細胞数の初期値を測定するために各動物から気管支鏡を用いてベースライン洗浄サンプルを採取した。予め存在する感染症の存在を、下記のようにベースライン洗浄サンプルを平板培養することにより判定した。好中球数が少なく、予め存在する感染のない全動物を、少なくとも1週間休息させてから、0.25%(最終濃度)寒天に乳濁させた上記シュードモナス属単離体の5×1010CFUを肺の各下部葉内に感染させた。感染後、1日目、3日目および6日目に洗浄サンプルを採取した。血液サンプルもまた採取した。
【0078】
リンパ球分析のための肺洗浄サンプルの処理
総白血球数を、各サンプルについて測定し、好中球のパーセンテージは、ヒツジ好中球に対して特異的なmAbsを用いてFACsにより測定した。
【0079】
微生物数に関する肺洗浄サンプルの処理
各ヒツジからの2つの肺洗浄サンプル(気管支鏡アシストにより1つは右肺および1つは左肺)を、移送用の氷上に置き、採取4時間以内で処理した。サンプルを連続希釈し(0.500mlを4.5mlの希釈ブランクに移した)、R2A寒天プレート上に二重に接種し、プレートを37℃で一晩インキュベートした。生じた微生物コロニーを評価し、外観により緑膿菌(PAO1単離体はR2A上緑黄色に出現)または非シュードモナス属(グラム染色により確認)として分類した。細菌cfu/ml洗浄液は、可能ならばいつでも30〜300のコロニーを含有するR2A寒天プレートから測定した。各ヒツジの洗浄液サンプルは、実験前(例えば、6日前から0日目)、1日目、3日目、および6日目に処理した。
【0080】
抗体投与
1日目の細菌数が、2日目に利用できるようになったら、緑膿菌感染の確立したヒツジを、2日目に1mg/kg mAb EL246で静脈内処置するか、対照の無関係なmAb(GD3.5)で静脈内処置するか、またはなにも処置をしなかった。
【0081】
結果
感染後、全ての動物で数時間以内に体温が上昇し、不活発になった。感染後少なくとも3日間、体温が上昇したままであった。接種後、最初の2,3時間内の発熱応答は、全ての動物は24時間目で感染活性状態の予測とはならなかった。そのため、24時間目での洗浄サンプル中のCFU数が、動物における感染の確立を確認する唯一の方法であり、これらの動物を引き続きmAbで処置した。
【0082】
感染洗浄サンプル中の白血球数は、各葉のサンプリングのばらつきのために、極めて変動が大きかった(データ非表示)。そのため、好中球のパーセンテージの変化が、種々のサンプルにおける炎症の比較に用いられた。動物は、EL246処置後、細菌のクリアランスの増強を示した(図1)。さらに、感染6日後、対照と比較してEL246処置群における好中球のパーセンテージが僅かに減少した。
【0083】
mAb EL246処置群は悪化せず、幾つかの場合において、肺からの緑膿菌のクリアランスを促進した。全てのEL246処置動物が、感染を除去し、6日目までには、感染の明らかな臨床的徴候を示さなかった。
【0084】
統計
ヒツジ肺における緑膿菌のクリアランスに対する抗炎症mAb EL246の効果
これらのデータ(図1)は、日と処置は固定効果として考慮され、ヒツジとヒツジ内の側面はランダム効果として考慮される混合効果線形モデルを用いて解析した。実験前の洗浄液のカウントは、すべての値がゼロであるという事実から解析に含めなかった。統計的有意性を求めるために直線の勾配を処置群間で比較した。このモデルを用いて、抗炎症mAb EL246に対応する直線は、未処置に対応する直線の勾配(p=0.0001)および無関係なmAb処置に対応する直線の勾配(p=0.0007)双方とは統計的に有意に異なる極めて強い負の勾配を有する。
【0085】
要約
本出願人らは、1mg/kg用量でのEL246が、驚くべきことにヒツジ肺において確立された緑膿菌感染のクリアランスを増強させることを本明細書に示す。EL246処置動物は、未処置動物またはイソタイプ−マッチド陰性対照mAb処置動物と比較して、統計的有意性を有して感染を除去した。
【0086】
実施例2 ヒツジにおける非緑膿菌細菌のクリアランスに対するEL246の効果
肺からの緑膿菌以外の細菌生物のクリアランスに対するEL246処置の効果が、ヒツジにおいて認められた。ヒツジのシュードモナス属接種による肺感染症モデルおよび微生物表面塗抹法による細菌数モニタリングは、実施例1のとおりで行った。緑膿菌PAO1株コロニーは、R2A寒天上の塗抹縁に明瞭な半透明の緑青色コロニー増殖として出現した。他の細菌コロニーの出現が、幾つかのヒツジ洗浄液サンプルに見られ、他の属の細菌生物も同様であることを示した。これら他のコロニーを、抗体処理の存在下でのこれら非緑膿菌細菌タイプのクリアランスを評価するために別個にカウントし、記録した。幾つかの場合において、特定の洗浄液サンプルから単離された細菌は、非シュードモナス属だけであった。コロニータイプの2つの例、およびサンプル中に見出された非シュードモナス属生物について記録されたグラム染色反応が以下に記載されている。これら試験に利用された緑膿菌PAO1単離体のグラム染色は、シュードモナス属に予想された古典的グラム陰性形態:白色断続小円形コロニー−細長いスレンダーグラム陽性桿菌;白色星状で粘液性のコロニー−サフラニンカウンター染色によりピンクに染色する極めて明らかなエキソポリサッカライドハロを有する極めて大型の長いグラム陽性桿菌を示した。洗浄サンプルからの強いエキソポリサッカライド産生株の単離により、in vivoで生体膜を形成する可能性が示唆されている。
【0087】
結果
mAb EL246処置により、シュードモナス属のクリアランスと同様に感染ヒツジからの非シュードモナス属生物のクリアランスが促進された。対照抗体または緩衝剤のみで処理したヒツジは通常、mAb EL246で処理されたヒツジよりも多い非シュードモナス数および実験過程の後期に多い数を示した。これら非シュードモナス属クリアランス効果を示す結果を、図2に示す。例えば、図2に示された7匹の対照動物(無関係mAbまたは未処置)のうちの5匹は、1日目または3日目と比較して6日目に細菌数の増加を示したが、一方、EL246処置の動物全ては、1日目または3日目と比較して6日目により少ないcfu/ml洗浄液を示した。
【0088】
実施例3 非ヒト霊長類の急性肺悪化モデル
要約
カニクイザルの肺への急性増悪関連炎症細胞の動員に対するEL246処置の有効性を評価するために肺におけるLPSエアロゾル誘発応答を使用した。
【0089】
背景
COPDおよび喘息の急性増悪時に、好中球およびマクロファージが肺に動員されることが知られている。大腸菌のリポ多糖類(LPS)を用いるこのモデルにより、一次的エンドポイントとして気管支肺胞洗浄液(BAL)中の炎症細胞の量および相対数の評価を提供する。このために、炎症細胞、好中球およびマクロファージの全数を、12時間時点で測定した。さらに、IL−8、ミエロペルオキシダーゼ、血清タンパク質およびIL−1ベータなどの他の二次的パラメータを測定した。IL−8は、炎症細胞動員を促進するケモカインの;ミエロペルオキシダーゼは、好中球駆動組織損傷の可能性の程度;血清タンパク質は、肺への血清漏れを生じる実際の血管壁損傷;およびIL−1ベータは、全体的前炎症状態の測定値を提供する。総括して、これらの測定値は、炎症の相対的重症度指標を提供し、肺の前炎症状態を示す。
【0090】
実験デザインおよび方法
LPS誘発の15分前に、また再度LPS誘発1時間後に1mg/kg mAb EL246でサルを処置した。大腸菌LPSを、エアロゾルを介して「0」時間目に0.4mg/kgの濃度で送達した。サルは、mAb処置をせずにLPSにより1ヵ月前に誘発された彼ら自身の内部対照として用いた。一次的および二次的パラメータの測定のためにBALをLPS誘発12時間後に採取した。炎症細胞を、フローサイトメトリーによりカウントし、二次的指標は、ELISAおよび生化学的アッセイにおいて定量した。
【0091】
結果
BAL判定に関する12時間の結果を図3に示す。一次的エンドポイントの測定は、対照に比して炎症細胞動員の大きな減少を示した。細胞全体では、2/3超、好中球では70%、マクロファージでは80%超減少した。この減少は、ミエロペルオキシダーゼもまた、約70%減少することが示された二次的パラメータで支持される肺に対する細胞媒介の酸化的損傷の可能性の大きな減少を示している。他の二次的指標であるIL−8および血清タンパク質もまた、60〜70%減少した。驚くべきことに、IL−1ベータもまた25%減少し、炎症細胞動員減少が、前炎症状態の増幅減少も促進し得ることを示した。
【0092】
要約
EL246は、COPDおよび喘息のような疾患の急性増悪に通常見られる、好中球およびマクロファージの動員を減少させるのに極めて有効である。これは、EL246を用いるE−およびL−セレクチンブロッキング法が、急性増悪の重症度の軽減に大いに寄与し得ることを示唆している。
【0093】
実施例4 接着分子およびケモカイン阻害剤を検証するためのリアルタイムのin vitroせん断アッセイ、生理的関連アッセイシステムであるProteoFlow(登録商標)
本出願人らは、白血球接着のアンタゴニストおよびケモカインシグナリングの確認および検証のために、進行性スクリーニングプラットホームであるProteoFlow(登録商標)を記載する。血管を模擬するために毛細管の内面に固定した接着分子、毛細管内で増殖した形質移入体を発現する内皮細胞または組換え接着分子を用いる。生理的せん断速度で、これらの基質は、ヒト細胞および細胞系の結合およびローリングを媒介する。このアッセイは、白血球輸送を妨害する可能性のある新規な薬物化合物の予防的(接着前処置)および治療的(接着後処置)有効性を試験するために有用である。ProteoFlow(登録商標)システムの有用性の例として、炎症性内皮細胞に対するケモカイン誘導T細胞接着を確立することにより達成できる商標付きセレクチン阻害剤の有効性および複雑さのレベルにおける僅かな差を識別する能力を本出願人は立証する。最初の例において、本出願人は、抗E+Lセレクチン抗体(EL246)が、E−セレクチンを発現するCHO細胞系と比較した場合よりも、精製E−セレクチンキメラ上のヒトミエロイドU937細胞ローリングの反転においてより有効(IC50<1μg/ml)であったことを示す。ProteoFlow(登録商標)システムが、完全にヒトのものである場合、すなわち、HUVEC類上のヒト好中球ローリングである場合、IC50は、2μg/ml超であった。ProteoFlow(登録商標)システムの有用性の第2の例において、ケモカイン、CXCL12(SDF−1α)の固定化により、αインテグリン類を介してTNFα活性化HUVEC類へのジャーカット細胞の接着が誘導された。これらの実施例において立証されたように、ProteoFlow(登録商標)システムは、候補薬物の有効性をランク付けするために肉視上でかつ定量可能な証拠を提供でき、IC50などの用量評価を判定できる。
【0094】
白血球の血管外遊出物は、効率的な免疫的監視にとって必要な正常な生理的過程であり、かつ傷害、感染ならびにアレルギーに対する炎症応答の必須成分である(バッチャーおよびピッカー(Butcher and Picker)、1996年Science272:60−66頁、フォン・アンドリアンおよびマッケイ(Von Andrian and Mackay)、2000年N.Engl.J.Med.343:1020−1034頁)。血中白血球および内皮細胞の双方により発現される接着タンパク質は、これらの相互作用を制御する(バッチャー(Butcher)、1991年Cell 67:1033−1036頁、ベビラッカ(Bevilacqua)1993年、Ann.Rev.Immunol.11:767−804頁)。in vivo測定により、血中細胞は、驚くべきことに高速度で移動することが示されている。毛細管および毛細管後のベッドに関連する減少した流量でも、500〜5000μm/秒の速度が普通である。白血球/内皮細胞相互作用の分析により、接着タンパク質の特定のクラスは、静止条件下に対して、せん断条件下で優先的に結合を媒介することが実証されている。(バッチャー(Butcher)、1991年Cell 67:1033−1036頁、レイ(Ley)ら。1991年、Blood 77:2553−2555頁、ラスキー(Lasky)、1992年、Science 258:964−969頁、アバッシ(Abbassi)ら、1993年、J.Clin.Invest.92:2719−2730頁、フォン・アンドリアン(Von Andrian)ら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7538−7542頁、ローレンスおよびスプリンガー(Lawrence and Springer)、1991年、Cell 65:859−873頁、スプリンガー、1990年、Nature346:425−434、ローレンスおよびスプリンガー(Lawrence and Springer)、1993年、J.Immunol.151:6338−6346頁、トゼレンおよびレイ(Tozeren and Ley)、1992年、Biophys.J.63:700−709頁)。例えば、血流を反映するためにデザインされた高せん断条件下でのin vitroアッセイで白血球と内皮細胞との間、十分に特性化された静的接着性相互作用の多くは、ベータ−2インテグリン類(LFA−1、MAC−1)により媒介されるものであるが、セレクチン相互作用が先行しない限り、起こらないことが判明した(ローレンスおよびスプリンガー(Lawrence and Springer)、1991年、Cell 65:859−873頁、フォン・アンドリアン(Von Andrian)ら、1992年、Am.J.Physiol.:Heart Cir.Physiol.263:H1034−H1044頁)。対照的に、せん断下で優先的に機能する接着分子が確認されている。
【0095】
せん断依存の接着タンパク質の最良の例は、セレクチン類と呼ばれる、白血球および内皮細胞分子のファミリーである(ベビラッカ(Bevilacqua)1993年、Ann.Rev.Immunol.11:767−804頁、ラスキー(Lasky)、1992年、Science 258:964−969頁、ベビラッカ(Bevilacqua)ら、1991年、Cell 67:233頁)。1種の白血球セレクチン(L−セレクチン)および2種の血管セレクチン(E−およびP−セレクチン)が確定されている。内皮細胞に加えて、血小板もまたP−セレクチンを発現する。L−セレクチンは、白血球により構成的に発現されるが、一方、E−およびP−セレクチンを誘導するためには、免疫サイトカイン類、ヒスタミンまたは外傷性侵襲による内皮細胞の刺激が必要とされる。セレクチン類に加えて、サイトカインに刺激された内皮細胞上のVCAM−1(ベルリン(Berlin)ら、1995年、Cell 80:413−422頁)、消化管の高内皮小葉脈上のMADCAM−1、抹消リンパ節の高内皮小葉脈上のPNAd−1(ベルリン(Berlin)、1993年Cell 74:1−20頁)、高炭水化物含有ムチン様分子(レビノビッツ(Levinovitz)ら、1993年、J.Cell.Biol.121:449−459頁、ムーア(Moore)ら、1992年、J.Cell Biol.118:445−456頁)、および幾つかのインテグリン類(αβおよびαβ)(バーグ(Berg)ら、1993年、Nature 366:695−698頁、アロン(Alon)ら、1995年、J.Cell Biol.128:1243−1253頁)などの他の接着タンパク質もまた、せん断依存相互作用を媒介する。多くの場合、内皮単層に沿った白血球のローリングは、せん断依存の接着相互作用を示す。これらのローリング相互作用は、白血球速度の>1000倍の減少を引き起こすことができる。血管内皮に沿う白血球のローリングは、内皮細胞の提示した、ケモカインをその同族受容体に結合させることによって、他の接着相互作用を誘導し、血管内皮に白血球の結合を「固定化する」と仮定されている(スプリンガー(Springer)、1994年、Cell 76:301−314頁)。次に血管内層を介して遊走が生じる。したがって、以下の3つの段階が、血管壁に沿った白血球の首尾よい捕捉に関与している:1)せん断依存性捕捉およびローリング、2)活性依存性接着強化(緩徐なローリング)、次いで堅固な接着、および3)経内皮遊走。内皮上の誘導可能な接着分子は、これらの段階の各々に関与している。3つの段階全てが、炎症白血球の傷害または感染部位への有効な動員、またはリンパ組織の接種にとって必要である(スプリンガー(Springer)、1994年、Cell 76:301−314頁およびボックナー(Bochner)、2000年、J.Allergy Clin.Immunol.106:817−828頁)。このモデルは、一部労多く費用がかかる動物実験から確立されたものである。
【0096】
動物実験の難しさおよび費用のため、幾つかの実験室では、in vitroせん断アッセイの開発を追究している。大部分の研究室では、内皮細胞を増殖させるために平面チャンバを用いており、次いでこのチャンバをシリンジポンプに接続して細胞または他の試薬を送達する(ジョーンズ(Jones)ら、1994年、J.Clin.Invest.94:2443−2450頁、ルシンスカス(Luscinskas)ら、1994年、J.Cell Biol.125:1417頁、アロン(Alon)ら、1994年、J.Cell Biol.127:1485−1495頁)。ProteoFlow(登録商標)は、下記のとおり、また以前の刊行物(ベルリン(Berlin)ら、1995年、Cell 80:413−422頁、バーグ(Berg)ら、1993年、Nature 366:695−698頁、バルガツエ(Bargatze)ら、1994年、J.Immunol.152:5814−5825頁、エーガー(Egger)ら、2002年、J.Pharmacol.Exp.Ther.302:153−162頁、グリー(Glee)ら、2001年、Infect.Immun.69:2815−2820頁、バルガツエ(Bargatze)ら、1994年、J.Exp.Med.180:1785−1792頁、ジュチラ(Jutila)ら、1994年、J.Immunol.153:3917−3928頁、これらは参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)に記載されたプロトコルに従ってヒトの血管流条件を正確にシミュレートするin vitroアッセイシステムである。このシミュレートされた微小環境は、炎症および感染性疾患に関連する分子、細胞、および血管表面の相互作用を評価するための優れた手段である。
【0097】
ProteoFlowシステム
ProteoFlow(登録商標)せん断アッセイシステムの中心的な特徴は、内皮細胞の増殖、単独または複数接着分子を発現する形質移入細胞系の増殖、または小径のガラスキャピラリ管の内面に精製接着分子を接着することにより創製される人工血管である。該「血管」は、液体が蠕動運動ポンプを経て再循環できるループシステムに援用される(図4)。細胞をシステムに注入し、内皮細胞の単層とそれらの相互作用が、ビデオ顕微鏡によりモニターされる。薬剤をアッセイに注入し、白血球−内皮細胞の相互作用に対するそれらの効果を容易に測定できる。キャピラリ管内で発生したせん断力は、血管で測定されたせん断因子と同様である(ペリーおよびグランガー(Perry and Granger)1991年、J.Clin.Invest.87:1798−1804頁)。
【0098】
アッセイの設定
白血球/内皮細胞の相互作用:白血球/内皮細胞せん断に依る相互作用の分析を、先に記載されたとおり実施した(バーグ(Berg)ら、1993年、Nature 366:695−698頁、バルガツエ(Bargatze)ら、1994年、J.Immunol.152:5814−5825頁、バーグ(Berg)ら、1991年、J.Cell.Biol.114:343−349頁、これらは参照としてそれらの全体が本明細書に援用される)。ヒト前単球細胞系、U937(ATCC)は、ヒト白血球を試験するための代用物として広範に使用される。U937細胞は、E−、P−およびL−セレクチンリガンドPSGLを発現し、セレクチン上でロールする(ノルガード(Norgard)ら、1993年、J.Biol.Chem.268:12764−12774頁、ヒラタ(Hirata)ら、2000年、J.Exp.Med.192:1669−1676頁、ヤング(Yang)ら、1999年、Thromb.Haemost.81:1−7頁、ラーセン(Larsen)ら、1992年、J.Biol.Chem.267:11104−11110頁)。EL246は、L−およびE−セレクチン双方上の保存エピトープに結合する新規な抗体である(ジュチラ(Jutila)ら、1992年、J.Exp.Med.175:1565−1573頁)。因子VIIIおよびLDL−受容体陽性[内皮細胞増殖培地(クローンティックス(Clonetics)、EGM)中で培養]またはP−またはE−セレクチンcDNA形質移入されたCHO細胞である、ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC;キャンブレックス(Cambrex)社)を、せん断実験24時間前に滅菌ガラスキャピラリ管(ドラモンド・サイエンティフィック(Drummond Scientific)、Broomall,ペンシルバニア州)の内面に集密するように増殖させた。アッセイ4時間前に、内皮細胞を、TNFα(1μg/ml)で処理してE−セレクチン、ICAM−1およびVCAM−1発現を誘導した。ガラスキャピラリ管の末端に結合した配管により、培地および細胞が再循環できる閉鎖ループを形成し;次に管を倒立顕微鏡に据えた。種々のスピードの蠕動運動ポンプを用いて(図4を参照)、流量を制御してin vivo血流せん断条件(1〜3ダイン/cm)をシミュレートした。循環ループにより、HUVECの相互作用面を通過して白血球の連続再循環中、注入ポートを介した種々のmAbs/他の試験化合物の複数注入が可能になる。
【0099】
倒立顕微鏡−ビデオ捕捉システム(図4)が、HUVEC単層の全長を測定するために用いられ、相互作用領域を記録する高分解能相コントラストを次の分析のために実施した。滅菌Ca++、Mg++含有HEPES緩衝(20mM)DMEMまたはRPMI(pH7.0)プラス2%FBSまたはヒト血漿中、白血球細胞系を4x10細胞/ml濃度でこのシステムに注入した。ローリング相互作用を確立し、ビデオテープをとりながら少なくとも8分間連続モニターし;その時間中、対照条件または実験条件を確立し、維持した。白血球/内皮細胞の相互作用を観察し、さらに8分間ビデオテープをとった。基質(キメラ接着細胞)上にローリングする細胞数を、接着修飾因子の注入前後にモニターし、その記録を個々のフレーム分析により測定した。セレクチン形質移入体および活性化HUVECによる実験において、対照または試験化合物を、相互作用する細胞に注入し、その相互作用を全部で10分間モニターした。データを、視野内のローリング細胞数の実地検分対時間として記録した。
【0100】
結果と考察
ProteoFlowシステムにおけるU937細胞のE−セレクチン媒介ローリング
組換えキメラ上のU937のローリングに対する抗E−プラスL−セレクチンmAb、EL246の効果:生理的再循環およびインフレーム部位への遊走双方における白血球の動員において早期段階の1つは、流れの速い白血球の捕捉および緩徐なローリング相互作用の確立である(バッチャー(Butcher)、1991年、Cell 67:1033−1036頁)。この捕捉およびローリングは、接着分子のセレクチンファミリーにより媒介される(ベビラッカ(Bevilacqua)1993年、Ann.Rev.Immunol.11:767−804頁、ラスキー(Lasky)、1992年、Science 258:964−969頁)。この第1の段階の阻害により、内皮層を通って堅固に接着し、遊出する白血球の能力が抑止され、したがって治療標的を提供する(フォン・アンドリアン(Von Andrian)ら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7538−7542頁、バルガツエ(Bargatze)ら、1995年、Immunity 3:99−108頁)。ProteoFlow(登録商標)システムは、この最初のin vitro相互作用をモデル化し、この相互作用のモジュレーターを評価することを可能にする。E−セレクチンリガンド、PSGL34(ノルガード(Norgard)ら、1993年、J.Biol.Chem.268:12764−12774頁、ヒラタ(Hirata)ら、2000年、J.Exp.Med.192:1669−1676頁、ヤング(Yang)ら、1999年、Thromb.Haemost.81:1−7頁、ラーセン(Larsen)ら、1992年、J.Biol.Chem.267:11104−11110頁)を発現するヒト前単球細胞系、U937をせん断下で、組換えヒトE−セレクチンと相互作用する能力に関して評価した。組換えE−セレクチンヒトIgGキメラ(R&Dシステムズ)を、抗ヒトIgGによりコーティングされたガラスキャピラリ管の内面に固定化した。キャピラリ管を、図4に記載されたようにProteoFlow(登録商標)システムに援用された。
【0101】
流動は、2ダイン/cmの生理的細静脈のせん断応力を生じさせるように確立した。ループに注入されたU937細胞は、in vivoで生じることが知られている「ローリング」挙動を示す固定化E−セレクチンと相互作用した。ローリング細胞数は、注入時間から約6分まで次いでプラトーまで増加する(図5)。EL246mAbまたはイソタイプ対照mAbを、細胞注入8分後に注入し、さらに8分間相互作用をモニターした。代表的な実験を図5に示し、図6に要約しているように、EL246は、5μg/mlでローリング相互作用を完全に反転させた。この反転は、用量依存であり、イソタイプのマッチド無関係mAbにより影響を受けなかった。EL246は、約0.6μg/mlのIC50で組換えE−セレクチン上のU937のローリングを反転させた(図6)。したがって、ProteoFlow(登録商標)システムは、セレクチン媒介白血球のローリングの視覚化およびこの相互作用のモジュレーターの評価を可能にする。基質として規定されたセレクチンキメラを用いるこのin vitro設定において、L−およびE−セレクチンの阻害剤は、非常に効力があると思われる。
【0102】
ヒトE−セレクチンを発現するCHO細胞上のU937細胞ローリングに対するmAb EL246の効果:E−セレクチンは、活性化された内皮細胞の内面に発現する(ラスキー(Lasky)、1992年、Science 258:964−969頁)。したがって、in vivoで生じると想定されるセレクチン−白血球相互作用を、より現実的に反映させるために、ヒトE−セレクチンcDNAを形質移入したCHO細胞を、ProteoFlow(登録商標)ループ内の基質として用いた。ヒトE−セレクチンを安定に発現するCHO細胞を、ProteoFlow(登録商標)システム内の滅菌ガラスキャピラリ管の内面に増殖させた。U937細胞とCHO細胞に発現されたE−セレクチンとの相互作用は、組換えセレクチンに生じるものとは異なる。U937細胞がロールされ、次いでそれらの大部分が形質移入されたCHO細胞に固着する。この固着は、恐らくCHO細胞上のカウンター受容体に結合するU937細胞に対するヒトインテグリン類の交差反応性のためであった。抗セレクチン抗体は、インテグリン媒介接着を反転させないことから、U937細胞は、ProteoFlow(登録商標)ループ内への注入前にmAb EL246で前処理した。図7に示されるように、mAb EL246は、CHO−E−セレクチン形質移入体へのU937細胞の結合を阻害した。しかしながら、阻害IC50は、精製接着分子(約0.6μg/ml)に対する結合反転と対比すると、細胞ベース接着事象の阻害に関してより大きかった(1μg/ml超)。これらのデータは、接着分子阻害剤の有効性が、せん断下で試験された場合、評価に選択された接着分子の提示の性質およびタイプに依って変わり得ることを示唆している。
【0103】
活性化HUVEC上のヒト好中球ローリングに対する抗E−セレクチンmAbの効果:白血球と内皮との間の重要な接着相互作用は、セレクチン媒介ローリング、次いでインテグリン媒介固着の双方を含み、その双方とも、遊出に必須である(バッチャー(Butcher)、1991年、Cell 67:1033−1036頁、フォン・アンドリアン(Von Andrian)ら、1992年、Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.263:H1034−H1044頁)。上記の2つのin vitroせん断アッセイは、in vivoで生じる白血球と内皮との相互作用に必要な接着分子の完全補体を有さない。したがって、アッセイは、HUVECを「血管」に似せたガラスキャピラリ管の内面に増殖させ、代用炎症刺激として4時間TNFα(1ng/ml)で細胞を活性化させるように設定した。4時間の活性化により、E−セレクチンならびにHUVEC上のインテグリンリガンドICAMおよびVCAM−1の発現が誘導される(データは示さず)。in vivoでの白血球−内皮相互作用を完全にシミュレートするために、末端血好中球(PMNs)を、健全なドナーから単離し、活性化HUVECを含有するProteoFlow(登録商標)ループ内へ注入した。次にこのin vitroシステムにおける抗E−/L−セレクチンmAb EL246の有効性を、in vivoで生じる条件に、より現実的に似せて試験した。CHO形質移入体に関して記載(上記)されたように、PMNsは、暫時ロールし、活性化HUVECに固着した。EL246は、用量依存様式でHUVECへのPMN結合を阻害した(図8)。無関係なマッチドmAbは、PMN−HUVEC相互作用に対して効果はなかった。しかしながら、PMN−HUVEC相互作用を阻害するIC50は、>2μg/mlであった(図8)。このように、in vivoで白血球−内皮相互作用にとって必要であることが知られている大部分の接着成分の再現により、薬物有効性における微差の識別を可能にする。これらのデータは、同じ阻害剤が、異なるIC50値(約0.6μg/mlから約2μg/ml)を有し、ProteoFlow(登録商標)は、in vivoで生じると考えられる条件により典型的にシステムが複雑になるにつれて、その有効性がより低くなることを示している。
【0104】
結論
極めて重要な細胞−細胞相互作用が生じる最も動的な微小環境の1つは、動物の血管系である。細胞−細胞接着分析における現行のアプローチは、多くの場合、in vivo微小環境を反映していない古典的なin vitroアッセイおよび/または公的な支持が急速に失いつつある時間と経費がかかる動物試験に頼っている。古典的なin vitroアッセイは、主として静的アッセイにおける接着を測定するが、発生する相互作用の十分な理解を得るためには、in vivoで規定されたものに近似した、せん断力下で測定する必要があることが現在知られている。
【0105】
最近のin vitroせん断法が、研究室で用いられるまで、所与の接着事象の生理的関連性を判定する主要な手段は、広範な動物試験を実施することであった。このin vivo法での結果は、間接的なエンドポイント測定値のみを提供するか、または直接的なin saitu視覚化を用いる場合は、統計的に有意な結果を得るためにさらに多くの動物を必要とする。しかしながら、これら困難なin vivo試験から、血中の細胞−細胞相互作用の十分な理解を得るためには、血流に伴うせん断力下で相互作用を調べなければならないことが極めて明白となった。静的条件下で規定された多くの例の接着システムがあるが、せん断が適用される場合、機能しないことが後に示された。本明細書には、進歩的薬物スクリーニング手段であるProteoFlow(登録商標)が記載されているが、これは、ヒトの血管流条件を正確にシミュレートするin vitroアッセイシステムである。このシミュレートされた微小環境は、炎症疾患および感染性疾患に関連する分子、細胞、および血管表面の相互作用を評価するための優れた手段である。
【0106】
シミュレートされた血管流動モデルにおけるヒトの生細胞の使用により、ProteoFlowシステムは、候補薬物の有効性について肉視により、かつ定量可能な証拠を提供できる。この微小環境における候補化合物を調べることによって、研究者は、極めて低コスト様式で薬物有効性を迅速かつ正確に判定できる。ProteoFlow(登録商標)は、炎症疾患および感染性疾患のために候補化合物を迅速かつ低コストで確認および最適化できる。
【0107】
実施例5 推定されたヒト静脈内投与量の判定
ヒトにおける好中球駆動の肺感染症をヒト化EL246 mAbにより治療する上で有効と考えられる投与量レベルの推定値を提供するために霊長類に吸入されたLPS肺炎症全身モデルと関連させてヒト好中球HUVEC動員ProteoFlow(登録商標)分析モデルが共に使用された。
【0108】
ProteoFlow(登録商標)における実験操作により、EL246の有効量は、シミュレートされた生理的血流条件下で好中球のローリング動員を完全に中断させるためにin vitroで達成できることが確立された。用量応答プロトコルにおいてこの同じ方法を用いて、EL246 mAbに関して2.5μg/mlのIC50を確立できた。並行して、1mg/kgの用量で霊長類の肺炎症モデルで試験されたEL246は、LPS炎症刺激に応答して、好中球肺動員を平均50%阻害することが示された。
【0109】
これら双方の試験からの推定用量の比較により、決定されたProteoFlow(登録商標)の有効量対確立された霊長類のin vivo有効量比の確立が可能になった。ProteoFlow(登録商標)システムの測定値は、薬物量/単位容量に基づくので、この比率の確立は、血液量/霊長類の体重の推定値に大いに依存する。許容される基準値(霊長類体重(kg)x60=mLs全血液容量)に基づく推定方法を用いると、算出された比率は6.75である。したがって、ProteoFlow(登録商標)IC50および6.75の算出された乗数を確立することによって、該手段は、ヒト肺感染症の治療のために用いられるEL246に由来するヒト化抗体のEC50を予測するための手段が確立されている。ヒト対霊長類では血液容量推定値に対する標準体重が変わるので(ヒト体重(kg)×71.43=mLs全血液容量)、ヒトEC50を確立するためにヒト変換因子は、ProteoFlow(登録商標)IC50の測定値の5.6倍の比率で僅かに低下すると考えられる。
【0110】
【表1】

【0111】
上記の実施例を参照にして本発明を詳細に記載したが、種々の修飾が、本発明の趣旨から逸脱することなく成し得ることが解される。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。本出願に参照された全ての引用された特許、特許出願および刊行物は、参照としてそれらの全体が本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】ヒツジ肺からの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のクリアランスに対するモノクローナルEL246の効果を示すグラフである。
【図2】ヒツジ肺からの非シュードモナス(non−Pseudomonas)菌のクリアランスに対するEL246の効果を示すグラフである。
【図3】LPS誘導炎症後のサルにおける全細胞、好中球、マクロファージ、インターロイキン−8(IL−8)、ミエロペルオキシダーゼ、タンパク質およびインターロイキン−1ベータに対するEL246の効果を示す7つのグラフである。
【図4】ProteoFlow(登録商標)のせん断アッセイシステムを示す系統図である。
【図5】ProteoFlow(登録商標)アッセイにおける種々の用量のEL246のローリング相互作用を示すグラフである。
【図6】EL246用量の関数として組換えE−セレクチンに対するU937細胞の平均阻害パーセントを示すグラフである。
【図7】EL246用量の関数としてCHO E−セレクチンに対するU937細胞の平均阻害パーセントを示すグラフである。
【図8】EL246用量の関数として活性化HUVEC類に対するU937細胞の平均阻害パーセントを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的有効量の抗セレクチン剤を、肺感染症の治療または予防を必要とする患者に投与することを含む、肺感染症を治療または予防する方法であって、前記治療が肺内の病原体負荷を減少させる方法。
【請求項2】
前記薬剤が、E−セレクチン、L−セレクチンまたはP−セレクチンに特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤が、抗体、またはその抗原結合性フラグメントである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体、またはその抗原結合性フラグメントが、E−セレクチンおよび/またはL−セレクチン上の抗原決定基に特異的に結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、E−セレクチン上の抗原決定基およびL−セレクチン上の抗原決定基に特異的に結合し、前記結合により、E−セレクチン作用およびL−セレクチン作用が同時にまたは個々に阻害される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、0.05mg/kgから5mg/kgの用量範囲で有効である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、約1mg/kgの用量で有効である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、ATCC登録番号HB 11049を有するハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体EL246である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体、またはその抗原結合性フラグメントが、L−セレクチンまたはE−セレクチンのいずれかあるいは双方に対してモノクローナル抗体EL246と同等の結合特異性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体、またはその抗原結合性フラグメントが、E−セレクチンまたはL−セレクチンのいずれかあるいは双方との結合に関してモノクローナル抗体EL246と競合する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体、またはその抗原結合性フラグメントが、モノクローナル抗体EL246と、E−セレクチンおよび/またはL−セレクチン上の同じエピトープに結合する、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、成人患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記感染が、細菌感染、真菌感染またはウィルス感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記感染が、細菌性である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌が、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、およびバークホルデリラ・セパシア(Burkholderia cepacia)からなる群より選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、サルコイドーシス、嚢胞性線維症、気腫、喘息、喫煙者の咳(Smoker’s Cough)、アレルギー、アレルギー性鼻炎、洞炎または肺線維症からなる群より選択される疾患と診断された、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤が、少なくとも約10μg/kgの投与量で前記患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
抗菌薬、抗ウィルス薬または抗真菌薬も前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、慢性気管支炎、COPDまたは喘息の急性増悪をきたしている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
E−セレクチン上の抗原決定基およびL−セレクチン上の抗原決定基に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合性フラグメントの治療的有効量を、肺感染症の治療または予防を必要とする患者に投与することを本質的に含む、肺感染症を治療または予防する方法であって、前記結合により、E−セレクチン作用およびL−セレクチン作用が同時にまたは個々に阻害され、前記治療により肺内の病原体負荷が減少する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−508293(P2008−508293A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523741(P2007−523741)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/026529
【国際公開番号】WO2006/083322
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507028479)リゴサイト ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド (6)
【出願人】(504256394)モンタナ ステート ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】